夕暮れの海岸線に沿って、電車はゆっくりと進んでいた。車窓から見える景色はオレンジ色に染まった空と、それを映す穏やかな海面の輝いて綺麗だった。
「ああ、やっと週末だ…」
仕事を終えて帰宅する電車の中。疲れた体に鞄の重みを感じながらも僕の心は軽やかだった。今日は金曜日、明日からの休みでいつもの趣味に没頭できると思うと胸の奥がわくわくとしてくる。
駅に到着し僕は軽やかな足取りで電車を降りた。家までの道のりを歩きながらこれからのことを考えて僕は微笑む。
「誰にも言えないけど……これが僕の楽しみなんだよなぁ…」
誰にも言えない僕だけのイケナイ趣味。それは僕の心を躍らせ同時に少しばかりの罪悪感も感じさせる。その罪悪感さえも楽しみに変わってしまっている…。
自宅に着くと僕は落ち着いて部屋に入る。玄関で靴を脱ぎ、バッグを置く。胸の高鳴りを感じながらも、僕は深呼吸をして落ち着こうとする。まだ時間がある……。
あの趣味は夜が更けるまで待たなければならない…。
こうして僕は夜が更けるのを待ちながら胸の高鳴りを抑えつつ、普段通りの夜を過ごす。そして街が静まり近隣の住人たちが寝静まったであろう時間が訪れる。
僕は大きめのクローゼットの奥からある物を取り出した。僕のとっておきの秘密のモノ…。
慎重に取り出したのはフィギュアとしては大きすぎるゴム製の竜だった。外観は海竜のような巨大な尾びれと背びれがあり、角も巨大な姿をしたドラゴンのフィギュア。とても精巧に作られていて本物の生き物のようにも見える。
「今週もよろしくね」
おもわず僕はフィギュアに向かって囁く。
僕はフィギュアを抱えその質感を確かめる。指先で触れるとゴムの弾力性と共に不思議な温もりを感じた。背中には切れ目がありそこから中に手を入れることができる。
服をすべて脱いで僕は準備を始める。まず、右手をフィギュアの中に入れる。フィギュアが凄まじいほど伸び僕の腕全体を飲み込んでいったのだ。その感覚は奇妙な感じではあるが不快ではなかった。むしろ心地よさすら感じた。
「うわっ!……相変わらずよく伸びるなぁ」
少し驚きながら左手も同様に入れて足も入れていく。フィギュアは僕の体に合わせるように伸縮し、ぴったりと肌に密着していった。背中の切れ目から僕の体全体がフィギュアの中に吸い込まれていくような感覚。それは楽しくもあり、同時に深い興奮を覚えるものだった。
最後に顔を入れると完全にヘンシンが完了した。僕はもはや人間の姿ではなく、フィギュアの面影を残したラバースーツの竜人のような姿になっていた。鏡に映る自分の姿に僕は息を呑んだ。自然に股間も熱くなってしまう…。
ラバー越しの視界はぼんやりとしているが、周囲の状況を捉えるには十分だった。呼吸用の小さな穴があり、そのおかげで息苦しさを感じることはほとんどない。ただ、強いゴムの匂いが少しだけ息が詰まる感覚があるものの、それもまた僕にとっては興奮させる1つの要素でもあるのだった。
鏡に映る自分の姿に僕は息をのむ…。
「やっぱりこれだよなぁ……」
ラバースーツのなかで恍惚して表情を浮かべながら全身を観察する。
竜の特徴的な角、背びれ、尾びれが僕の体から生えているように見える。その姿は雄々しく、どこか美しくもあった。人間と竜の狭間に存在する、新たな生き物のような気がして高揚してしまう。今は尻尾はだらんとしているので少し残念だった。
動くたびにゴムの質感が全身を刺激し、それは僕に新たな感覚をもたらし興奮を覚える。ラバーに覆われている僕のあそこも大きくなり、ゴムの弾力に押し潰され、押さえつけられているにもかかわらず、その圧迫感からくる快感に僕は息を荒くしながら悶えていた。
「はあ……はあ……そろそろ我慢の限界かも…」
僕のあそこはヒクつき、熱い我慢汁がゆっくりとあふれ始めていた。
ラバー越しのあそこを僕はゆっくりと手で包み込み、上下に動かし始めた。
「ううっっ!………はあ、気持ちいい……」
手を動かすたびに僕は快感で声を漏らした。ラバー越しの僕のあそこは、まるで別の生き物かのように激しく脈打ち、その刺激に僕は興奮しさらに強くしごき始める。
息をするとラバーの匂いも同時に鼻腔を刺激し、それはより一層僕を興奮させる。
「はあ……はあ……うっ!!……ううぅ…」
快感で僕は頭が真っ白になり始めて上り詰めていく…。
「イクッ!!!!」
我慢できずに僕は体をのけぞらせて、ラバースーツの中に勢いよく射精してしまう。
皮膚とラバーの間に汗と白濁液に満たされていく…。
しかし、溜め込んだ性欲は満たされずしごいてイクを繰り返すが不思議と衰える様子はない。僕は無意識になりながらラバーを手でしごいていく。その刺激がまた新たな興奮を呼び覚ましていく。
しごいてイク、その繰り返しを僕は何度も続けた。
もう何回目だろうか? それでも僕のあそこはまだまだ元気でありさらに性欲が増していく…。
手を動かして上り詰めていき、射精の爆発するような快感をを繰り返すたび何かがせりあがっていき、背筋からゾワゾワとした感覚を感じながら自分の殻を脱ぎ、何かが変わる感覚が満たしていった…。
「…これだ!!……アレが来るっ!!!」
バチバチと視界が点滅するような感覚とともに凄まじい絶頂感が体の中を駆け巡る……。
「あああああああ!!イっっ…クゥゥゥ!!」
その絶頂がトリガーに足先から変化が始まった。そして、ミチミチという微かな音とともにラバーでできていたはずの爪の部分の光沢が薄れ始める。四肢の先から光沢を失ったラバーの表面が少しずつ本物の皮膚のような質感に変わっていく。そして爪は徐々に本物の爪のような硬質感と艶を帯びる。
足首から上へと新たな変化が始まった。最初はラバーの表面にうっすらと模様のようなものが浮かび上がり始めた。その模様は次第にはっきりとし、みるみるうちに艶やかで深い蒼色の鱗へと変化していった。
頭部にも変化が訪れた。今まで透明なラバー越しに曇って見えていた景色が突然クリアになる。まるで目の解像度が一気に上がったかのように、周囲の細部まではっきりと見えるようになった。
最後に、今まで生気のない状態で地面にへたっていた尻尾に変化が起きた。根元から一気に鱗が浮き出るのと同時に、尻尾全体がしなやかに動き始めた。
「んぁ!……尻尾………動くっ…」
この一連の変化は、僕に強烈な快感を与えながら本物の竜人のような姿に変化している。最後にラバーに包まれてていたあそこが一体となり竜の槍のようなペニスとして変化を遂げた。体が変わるその快感は想像を絶し、凄まじい快楽と満足感が体の奥底から湧きだし吹き上がる。
「ガァアアア!!……グゥウウウウウ!!!!!!」
僕は咆哮を上げながら、竜人への変貌を遂げた。荒ぶっていたペニスは落ち着きを見せスリットに収納されていく…。
鏡で自分の姿を見て動いてみる。体を動かすたびに艶やかでかすかにしっとりしている瑠璃色の鱗がキラキラと月光を反射する。
先ほどは生気がなかった尻尾を動かしてみると僕の思った通りに動き尻尾を左右に振る。振るうたびにお先のヒレで風が巻き上がる。瞳は縦に細長く裂けた黒い瞳孔を中心に、月の輝く金色の虹彩が広がっている。
この変化は単に外見だけのものではない。体の内側からも何かが変わっていくのを感じる。感覚が研ぎ澄まされ、聴覚も嗅覚も以前より鋭くなっているのがなんとなく理解する。
「よし!……今日はちゃんとこの姿になれたな!」
僕は新たな体に宿る力を感じながら窓辺に近づく。窓を開け、冷たい夜風が鱗で覆われた肌を撫でる。深呼吸すると磯の香りの匂いが鼻腔をくすぐった。
僕は躊躇なく飛び降りた。地面に着地する瞬間、強靭な筋肉が衝撃を吸収し、まるで小さな段差を降りたかのような感覚だった。そして走り出し暗い深夜の海へと近づいていく。
海岸線に到着すると波の音が聞こえ月明かりに照らされた海面が幻想的に輝いている。そして僕は海に飛び込む。水しぶきを上げながら体が海中へと沈んでいくが息苦しさはなく水中で呼吸ができているような不思議な感覚を感じる。
僕は尾を大きく振り一気に加速する。その速度は人間が想像できるものをはるかに超えていて水の抵抗さえほとんど感じることもなく大海を泳いでいった…。
[newpage]
海の中を自由に泳ぎながら僕はこの不思議な体験がどのように始まったのか、記憶が鮮明によみがえってきた。数ヶ月前、あの日のことを思い出す。
僕はいつものように、イケナイ趣味に興じていた。ラバースーツを着て、興奮しながらあれこれと楽しんでいた。
連続した自慰行為の果てに突然、背筋に走る不思議な感覚。まるで電流が走ったかのような、しかし痛みのないむしろ心地よいような感覚に身を任せていたらいつの間にか僕は本物の竜人のような姿になっていたのだ。
その日以来、この変身は僕の新たな習慣となった。特に連休前の息抜きとして、僕はこの変身を楽しむようになった。仕事のストレスや日常の重圧から逃れる特別な時間…。それは僕にとってイケナイ経験となっていった。
しかし、いつも上手くいくわけではなかった。
何回か変身を試みたが心が高ぶらないと変化できないことに気づいたのだ。単に興奮するだけでは足りず、強い性感の高まりが必要だった。失敗してラバースーツの中が汗と精液でベタベタになっただけということもあった。
「あの時は本当に落ち込んだな…」
しばらくは海を楽しんでいたが僕の中に新たな衝動が芽生えてきた。興奮が収まらずより強い刺激より大きな変化への渇望が心の奥底にあった。スリットからペニスも出てきている。それは、今日の自分ならさらに限界を超えて押し広げられるという確信であった。
「滅多にできないけど………今日ならアレまでいけるかも…」
僕は目を閉じ深く集中した。体の中に眠る力まだ解放されていない可能性を感じ取る。それは僕の中に眠る根本的な力で人間の形としての殻を破り真の姿を現そうとする力だった。
そして、感情、性感、みなぎる力のすべてを一気にその全てを解き放った。
バキバキという音とともに僕の体が急激に大きくなっていく。骨が伸び、筋肉が膨らみ、鱗が広がる。その変化は以前の変化をはるかに超えるものだった。痛みはなかったが体が引き裂かれるような快感に、僕は思わず声を上げそうになった。
首が長く伸び、頭部の角が巨大化していく。角の根元からは微かな光が放たれ、まるで何かをまとっているかのような神秘的な輝きを放つ。
尻尾は太く、そして長くなっていった。最終的には十数メートルもの長さになりその先端の尾びれも巨大化した。もはや人間の姿など想像もつかないほどの巨大な海竜へと変貌を遂げたのだ。
「ガァアアアアアア!!!!……グゥゥ!……グゥウウウウウオオォォン!!!!!!」
ペニスも相応になり、変化の快感に耐えられず竜として咆哮し海中がビリビリと揺れる。吐き出された先の海水が白く濁って見えなくなるほど、凄まじい量と勢いで射精が行われる。絶頂を迎えた僕は白目をむき、海面を仰ぎ見て激しい絶頂に酔いしれてしまっていた。
変化が終わった直後、僕は一時的に意識を失った。口を半開きにしたまま仰向けの状態で水中をゆっくりと漂う。しばらくすると徐々に意識が戻ってきた。長くなった首を左右に動かし、意識を覚醒させる。
「ふぅ……無事に完全な竜の形態になれたな……」
今の体の力を確かめるため、思い切り尻尾を振った。尻尾の一振りで海中に強烈な渦が巻き起こったのだ。口から強力な水流を吐き出せる。
その後、僕は海面近くに戻り大海原を駆け巡ることにした。その速さはどんな船よりも早く水しぶきを上げながら海を進む感覚は、まるで大空を飛んでいるかのような自由さがあった。
丸一日海を満喫し次の日の深夜になる。僕は元に戻るため家に近い海岸へ戻ることを決意した。
巨大な海竜の姿なのでこっそりと近くの岩礁で竜化を解除する必要があった。静かな月明かりの下、海面に大きな顔を出した僕はこの姿での深呼吸を繰り返した。
体の中心から、奇妙な感覚が湧き上がってくる。まるで体の中で何かが蠢いているようなしかし痛みはない不思議な感覚だった。その感覚に身を委ねながら僕は口を大きく開けた。喉の奥から何かが上がってくる。人間の姿の自分自身だと直感的に理解している。
まるでを吐き出すような動作を僕は何度も繰り返した。すると、口から磯臭い粘液と共に人間の姿の僕が吐き出された。
その瞬間、海竜としての意識が途切れる。視界が暗くなり巨大な体の感覚が遠のいていく。代わりに、水中に投げ出された人間の体の感覚が鮮明になってきた。
「うっ!…ごほっ、ごほっ!!」
海水を吐き出しながら、僕は必死で水面に顔を出した。やがて呼吸が落ち着いてくると僕は自分の人間としての体を確認し始めた。両手、両足、そして全身の感覚。全てが元通りになっていた。
「よし!…無事に人間に戻れた…」
安堵の息をつきながら僕は周りを見回した。目の前で巨大な海竜だった体が驚くべき速さで縮小していく。なにかの時間の逆再生を見ているかのようだった。自宅で大切に保管している大きめのゴム製フィギュアの姿に完全に戻った。
月明かりに照らされてフィギュアは静かに海面に浮かんでいる。僕はゆっくりと手を伸ばしそのフィギュアを抱える。
「今週もありがとう…」
僕はフィギュアに感謝の言葉を小さく呟いた。そして、岸に向かって泳ぎ始める。人間の体で泳ぐのは、海竜の時と比べると何とも心許ない。しかし、人に戻った実感を新鮮に感じられた。
家に戻った僕は、シャワーを浴びてベッドに横たわった。体は疲れているのに、心は不思議なほど軽かった。明日からの日常に新たな意欲すら感じていた。
週末にはまた神秘的な体験ができる。その思いが僕の心に静かな喜びをもたらしていた。明日からの一週間を頑張ろう。そう心に誓いながら僕は深い眠りに落ちていった…。