満月の夜、深い森の中に一人の青年が懐中電灯を片手に立っていた。青年は右肩を押さえながら、月明かりに照らされた木々の間をゆっくりと歩を進めている。夜の森は静寂に包まれ、夜行性の動物と虫の声だけがその静けさを破っていた…。
青年の右肩からは濃い茶色の粘液が滲み出しシャツを濡らしていく。その液体は独特の匂いを放っており科学的香りのようで獣臭さもある匂いを発している。それは鼻腔をくすぐり奇妙な心地よさと不安を同時に引き起こしていた。
「ううっ………この匂い……」
僕は自分の右肩に目を向ける。シャツをずらすと肩に何かに噛まれた後がくっきりと残っている。その大きな凹みから茶色の粘液少しずつ染み出していた。傷口のはずなのに痛みはほとんどない。むしろ、そこから広がる温かさを感じながら高揚感が時間が経つにつれて上がっていくのだった。
僕は開けた場所に立ち止まり深く息を吸い込んだ。冷たい夜の空気とケミカルな匂いが肺に染み渡る。月明かりに照らされた彼の表情には、期待と諦めなどの言い表せない感情が入り混じっていた。瞳には月光が映りその中に奇妙な輝きが宿っているようにも見えた。
「そろそろ始まる……僕はアレを纏って………」
その声にはどこか期待のような感情も混じっていた。青年は再び深く息を吸いゆっくりと吐き出した。
その呼吸に合わせるように、彼の意識は数か月前へと遡っていく…。
ソロキャンプが趣味の僕はこの日もいつものように人気のない場所でテントを張っていた。キャンプシーズンを外しているためキャンプ場には他の人の姿はなく彼一人きりだった。周囲には木々が生い茂りその間から青い空が覗いていた。
「今日は本当に最高の天気だな!」
テントを設営し終えた僕は満足げな表情で周囲を見回した。誰にも邪魔されず自然の中でゆっくりと時間を過ごせる。それが彼にとっての至福のひとときだった。
キャンプ用の椅子に腰掛け、木々のざわめきと小鳥のさえずりを聞きながら僕は大自然の世界に没頭していく。
時間が経つにつれ、日は傾き始めた。木々の間から差し込む光が徐々にオレンジ色に変わっていく。僕は途中から読んでいた本を閉じ伸びをする。そろそろ夕食の準備を始めようと思った矢先、彼の鼻をくすぐる奇妙な匂いがしてきた。
「この匂い、一体何だろう…」
最初は気のせいかと思った。しかし、次第にその匂いは強くなっていった。薬品をこぼした後のような、しかし同時に何か生き物の体臭のようなものが混ざった複雑な香りだった。僕は顔をしかめながらと匂いの源を探そうと周囲を見回した。
「これは……どこから来てるんだ?」
そうつぶやきながら僕は立ち上がる。匂いは林の奥の方から来ているようだった。好奇心に駆られた僕は匂いの源を探るべく林の中へと足を踏み入れた。
日が沈み始め森の中は徐々に暗くなっていった。木々の間から漏れる夕日の光が幻想的な雰囲気を醸し出している。しかし、彼の心の中には次第に不安が芽生え始めていった。
「なんだよこれ……さすがに静かすぎじゃないか…」
あまりにも静かすぎる。鳥の声も、虫の音も聞こえない。まるで森全体が息を潜めているかのようだった。それでも僕は歩みを止めなかった。匂いはどんどん強くなっていき僕の好奇心をさらに刺激した。
「危険かもしれないのに……でも……」
その香りには何か魅惑的なものがあった。理性では『危険かもしれない』と警告しているのに体は勝手に前に進むことを選択してしまう。それは好奇心か誘導されているかは僕にもわからなかった…。
暗くなりつつある森の中を進んでいくうちに、彼は何かが近づいてくる足音を聞いた。カサカサと枯れ葉を踏む音。しかしそれは人間の足音とは明らかに違っている。
僕の心臓が早くなる…。額に冷や汗が浮かび喉が乾いてくる。足音は次第に大きくなり、近づいてくる。彼は木の陰に身を隠し息を殺して様子をうかがった。
そして、僕はそれを見た。震える声でつぶやく…。
「あれは…狼…?いや、違う…」
月明かりに照らされた空き地に、得体の知れない生き物が姿を現した。それは狼のような姿をしていたが、普通の狼とは全く違っていた。体の大きさは通常の狼の倍以上はあり、その姿は威圧感に満ちていた。
しかし、最も異様だったのはその体から絶え間なく垂れ落ちる茶色のドロドロとした液体だった。怪物の体毛は常に動いているかのように見えていたが、それは粘度の高い液体が滲み出ていたからであった。
「逃げないと……でも、体が動かない…」
僕は恐怖で凍りついていた。逃げ出したい衝動に駆られたが、体が言うことを聞かない。目の前の光景があまりにも非現実的で、これが夢なのか現実なのか判断がつかなくなっていた。
怪物はゆっくりと辺りを見回した。その動きはまるで獲物を探す捕食者のようだった。そして突然、怪物の目が僕の方に向けられる。
「あっ……」
そして怪物の鋭い視線がこちらに固定され、その瞬間まるで時間が止まったかのように感じた。僕の心臓が止まりそうになるような感覚とヒヤリとした汗が背中を伝う…。
怪物の目は黄金色で獲物を食い尽くすかのように冷たく感じる。その奥には不気味な知性もちらついていた。それは単なる野生動物の目ではなく、何か別の存在の意志を感じさせるものだった。
突然、怪物は低く唸り声を上げた。その音は青年の骨の髄まで響き渡り、彼の全身に鳥肌が立つ。
次の瞬間、怪物は驚くべき速さで彼に飛びかかってきた。
「うわっ!」
重い衝撃と共に、青年は地面に押し倒された。背中が地面に叩きつけられ肺から空気が絞り出され息が詰まる。怪物の前足が彼の肩を押さえつけ彼は身動きが取れなくなった。
ゲホゲホと咳をしながら息を整える。
怪物は僕の体の匂いを嗅ぎ始めた。その鼻先からは熱い息が吹きかけられくすぐったさには思わず目を閉じてしまう。怪物の体から滴り落ちる茶色の粘液が僕の服を濡らしていく…。
(あれ?………食べられるわけじゃない…?)
ほんの少し安心していたが突然、怪物の牙が青年の右肩に食い込んだ。激しい痛みが走る。青年は思わず悲鳴を上げそうになったが恐怖で声が出ない。
しかし、不思議なことにその痛みはすぐに和らいでいった。まるで強力な麻酔薬を打たれたかのように、徐々に体の感覚が失われていく。
(あれ!?……体が動かない)
怪物の様子も少しおかしい…。徐々に息が荒くなり始めており、その口からは茶色の粘液が絶え間なく滴り落ち始めている…。
しばらくすると覆いかぶさるように怪物は密着してくる。そして、体をこすりつけるように動いてくる。動くたびにその茶色の粘液が僕の体にもかかりシャツやズボンに染み込んでいった…。
(何か固いものが股の上で擦られている……)
その感触は、まるで大きな棒が乱暴に擦り続けれているようだった。そして、それは次第に熱を持ち始めていく。
次の瞬間、怪物がビクンと震えながら遠吠えをする。
下半身側からさらに強烈な薬品と獣臭があるものが放たれた。一瞬顔をしかめてしまうが、不思議なことに僕は感触や匂いに嫌悪感を覚えなかった。むしろ、頭を白く染めて、その独特の香りに魅了されていくような感覚すら覚えた。
(なんだこの匂い……でも、気持ちがいいような不思議な感じが…)
怪物の体が激しく震え始めていた。その振動は僕の体にも伝わり全身が共鳴するかのように震えている。
そしてまるでろうそくが溶けるように怪物は溶け出していく…。怪物の体は形を失い大量の茶色の液体となって青年の上に降り注ぐ。
「なんだ…これっ!……んぐっ!!」
まるで意思を持っているかのように僕の体に吸い付いてくる。上半身は口や耳と鼻から体内に侵入してくる。下半身はお尻の穴からも粘液が侵入してきており、まして尿道からも入り込んでくる。前立腺を上下から挟み込んで、未知の快感は同時に押し寄せ普段感じない絶頂をして意識が飛びそうになる。
(ん゛あ゛ぁ…ッ!!!!)
意識を手放す直前に体中に広がる異質な感覚と自分の体が何かに侵食されていくような…、しかし同時にナニかと一体化していくような不思議な快楽のなか暗闇に沈んでいった…。
目を開けると僕は森の中で寝ていた。体は真夏の暑さで汗でびっしょりと濡れている。周囲を見回すと夜が明けかけているのが分かった。東の空がうっすらと明るくなり始めていた。
「夢…だったのか?」
僕は深呼吸をして落ち着こうとした。何が起こったのかはっきりとは分からないが、とりあえず今は無事のようだ。キャンプを続けるか帰るか迷ったが僕は混乱と戸惑いを感じながらもテントに戻ることにした。
[newpage]
あの奇妙な夜から時が経ち僕は日常生活に戻っていた。大学の講義に出席し、アルバイトをこなす。一見すると何も変わっていないように見えた。しかし、右肩に噛まれたところは凹んでいて牙の跡が鮮明に残っていた。
次の満月が近づくにつれ体の中で何かが目覚めていくのを感じがする。それは徐々に強くなっていく衝動だった。走り回りたい、遠吠えをあげたい、そんな野生の欲求が彼の中で膨らんでいった。
欲求が高ぶるたびに傷口から独特な匂いが漂ってくる。
数か月前の記憶を浸っているなか、あの匂いで再び現実に引き戻される。
僕の体は変わってしまったのが後悔はなかった。アレも一人が寂しかっただけで選ばれたのが僕だっただけなのだから…。
そろそろ日付が変わる頃に深夜に差し掛かろうとした時、突然待ち望んでいたものが到来する…。
「そろそろ………んっ!!………キタ!!」
傷口から化け物が纏っていた茶色のラバーが溢れ始めてきた。最初はゆっくりと、やがて勢いを増してその液体が彼の体を覆っていく。それは単なる粘液ではなく生きているかのように動き、僕の体に張り付いてくる。
僕は毎回ように戸惑いを感じながらも恐怖は感じない。むしろ、何回か体験するにつれてこれが自然な流れのように思えた。僕の体が眠っていた何かを受け入れようとしている。
粘液が体を覆っていくにつれ僕は久しぶりの感覚に包まれ高揚してしまう。まるで丈夫なゴムの皮を一枚着ているような感覚で窮屈さではなく、むしろ心地よい包まれ感だった。
(また…アレが体を包んで……)
やがて、ラバーは彼の全身を覆い尽くし狼っぽい全身タイツのような状態になり視界も見えなくなる。暗闇の中で彼は自分の鼓動だけが響いており、鼓動は通常の倍以上の速さで打ってこれから起こることを待ち望んでいるのが表れている。
そこで、突然体の自由が奪われたような感覚に襲われた。まるで何かに操られるように、彼の体は勝手に動き始めた。腕が上がり、足が動く。それは僕の意思ではなく別の何かが彼の体を制御しているかのようだった。
(体が勝手に……そうだね、あとは一緒に……)
ラバーそそり立つ棒を扱き出す。それは信じられないほど硬く勃起していた。僕の手は慣れた手つきでそれを上下に扱いていく。その快感は普段の自慰の比ではなく、擦れる度に僕は被膜の中で思わず声を漏らしてしまう……。
(うっ!………気持ち良すぎるっ!!!!)
絶頂が近づくにつれ、僕の体の中で何かと共鳴を始めていく。それは今までに感じたことのない感覚で、まるで自分の体と何かが一つになりつつあるのを感じて…。
(あっ!!!……クるっ………重なる!!!!)
頭が白く染まり全身の筋肉が硬直する。皮と肌が快感で縫われていき僕の体の中で何かが弾ける。
((グウォォォォアァァァァァン!!!!))
体が燃えるように熱くなり溶けているような錯覚を覚える。実際、僕の体は皮の中で溶けその皮の中身となり僕とアレが体と一体化していく。そして、僕は何かと混ざり合い自分が人間ではない何かになったことを感じながらすさまじい力の本流を受け入れていく。
右腕から変化が始まり筋肉が膨張し、肘が逆関節に変貌する。前足としての機能を得つつ、骨が軋むような音を立てながら伸長していく。手は指が短く太くなり鋭い爪が生え始め前足として力強く地面を叩き踏みしめる。
左腕も同様の変化を遂げ両前足が完成した。新たな四肢は力に満ち僕は思わず地面を力強く叩きつけた。その衝撃で周囲の小石が跳ね上がる。
大腿部の筋肉が膨れ上がり狼の後ろ足の形状へと変形していく。足首が持ち上がり足の指が融合、大きな肉球と鋭い爪を持つ狼の足へと姿を変えた。
全身の骨格が再構築されながら獣毛が生えそろい筋肉が急速に発達していく。肩と首の周りの筋肉が著しく成長し、たくましい首回りを形成していく…。
これらの変化は体の中で嵐が吹き荒れているような激しさを伴っていた。意識は自分の体が人間の姿から離れより強大な何かへと変貌していく過程を興奮とともに駆け抜けていくしていく。
「グォォォ……アオォォォォォォン!!」
そして、僕達の口から生まれ変わったが歓喜の遠吠えが漏れる。
その姿は以前の狼の怪物を彷彿させる姿であったが、それよりも一回り大きいものとなっている。気が付くと足元には白と茶色の液体が散乱していた。
「ふふっ……やはりこの姿になるのは最高だ……といっても夜の間だけだけどね」
僕はいつのまにか明け方には木の幹に寄りかかって人に戻っていることを知っている。なのでこの姿になったことを全く気にしていなかった。むしろ楽しんだほうが僕の中のアレも喜んでるようだし…。
「それに………」
巨大な狼の化け物となった主人公は、鋭敏になった嗅覚で近くの茂みに隠れている存在を感じ取った。その鼓動汗の匂い、息遣いまでもが明確に伝わってくる。
低く唸り、ゆっくりとその茂みに近づいていく。爪の生えた巨大な足が地面を踏みしめる音が、静寂な森に響く…。
この姿の僕は自分の力と、仲間を増やす方法を完全に理解していた。彼は茂みの前で立ち止まり隠れているものをじっと見つめた。
その圧倒的な存在感で相手を威圧しながら、人ならざる声で問いかけてくる。
「おびえなくてもいいよ、僕の仲間にならないかい?……この月明かりの下で駆け抜ける自由を、一緒に味わってみない?」
狼の口が少し開き、鋭い牙が月明かりに反射して光る。
「選ぶのは[[rb:キミ > ●●]]だ、仲間になるか、それとも……」
徐々に歩み寄ってきた大きな狼の化け物は粘液を滴らせながら見下ろしている……。