お狐様の祠を壊してしまって…

  山々に囲まれた静かな田舎町。夏の陽光が緑濃い木々の間を縫うように差し込む。僕、マモルは暑い日に全力で走っているので背中には大きな汗染みができるのを感じながら一本の山道を登っていく。

  幼馴染のミカから『明日の朝、昆虫採集するからいつもの学校近くの山で待ってるからヨロシク!』との一方的なメッセージから早起きして家を飛び出してきたのだった。

  「まったく……みーちゃんは本当にいつも唐突だよ…」

  ミカはマモルと同い年の女の子。小さい頃から一緒に育ちまるで兄妹のような関係だった。しかし、最近になって何かが変わり始めている。

  山道を登りながらマモルは自分とミカの関係について考えを巡らせていた。彼女の明るい笑顔、たまに強引なところもあってで負けず嫌いなことも含めて一緒にいる時間の心地よいものだった。そして、マモルの胸の内には友情とは少し違う名付けられない感情が芽生え始めていた。

  突然、頭上から声が聞こえた。

  「おーい、まも君!ここだよ!」

  驚いて上を見上げると大きな木の上にミカが腰掛けていた。彼女の姿を見つけたマモルは思わず息を呑んだ。ミカはバランスを保ちながら高い枝に軽々と座っていたのだ。

  相変わらずの身体能力の凄さに驚きながらも、僕は木に駆け寄りながら彼女に声をかけた。

  「みーちゃん、危ないよ!」

  「大丈夫だって!それより見て!この虫!」

  ミカが指差す先を見るとそこには虫かごに入った大きなカブトムシがもぞもぞと動いていた。

  「すごい……こんなの大きいの見たこと無いよ。どこで捕まえたの?」

  マモルは感心しつつも少し複雑な気持ちになった。ミカの身体能力の高さは昔から知っていたが、最近はもうちょっと恥じらいを持ってほしいとも思っていた。思春期のマモルには短パン姿で動くものだから目のやり場も困っていた…。

  ミカは軽やかに木から降りマモルの前に着地した。彼女の動きにはどこか野生動物のようだなと思ってしまい、マモルは言葉を失いながらもなんとか普段通りを装った。

  しばらく宿題につかう昆虫採集を終わらせたあと休憩していると空が急に暗くなり始めた。冷たい風が吹き雨の予兆を告げていた。

  「目的は果たしたし、今日は早めに帰ろうよ」

  ミカはまだ遊び足りないのか、虫かごを覗きこんでいたが仕方ないと割り切って顔を上げる。

  「ねえ、競争しない? 誰が先に山を降りられるか!」

  マモルが答える間もなくミカは風のように走り出した。その姿は瞬く間に木々の間に消えていった。マモルは呆然と立ち尽くした後、慌てて後を追った。

  見えなくなるミカの背中を見ながら、下り坂を全力で駆け下りながらマモルの胸の中に奇妙な胸騒ぎが広がっていった。それは単なる運動による動悸ではなく何か重大なことが起ころうとしている予感だった。

  かすかな雨粒が頬を打ち始める中、マモルは不安と心配が入り混じった感情を抱えながら山を下って行った…。

  一方ミカは雨粒が顔を打つ中全力で山道を疾走していた。彼女の長い黒髪は風に舞い、服は体にぴったりと貼り付いていた。競争心に駆られた彼女の目には、前方の道しか見えていなかった。

  「すごく早く帰って驚かせてやんだから!」

  その思いでミカの頭の中でいっぱいだった。しかし、急な下り坂で雨で地面がぬかるみ始めていた。ミカの足が滑った瞬間、彼女の体が傾いてしまった。

  「あっ!」

  短い悲鳴が漏れる。体のバランスを崩したミカはコントロールを失ったまま、脇道にある古びた祠めがけて突進していった。瞬間、激しい衝撃が全身を襲う。

  「痛っ……」

  ミカは地面に倒れ込みしばらく動けずにいた。ゆっくりと体を起こし自分の体を確認する。幸い、うまく転んだためかすり傷程度の怪我くらいだった。

  しかし、安心していたがミカは目の前の光景に愕然とした。激突の衝撃で祠が大きく傾いていたのだ。

  「あちゃー……直さなきゃ」

  慌ててミカは立ち上がり祠に手をかけた。しかし、その瞬間予想外のことが起こる。触れた途端祠の一部が崩れ落ち完全に倒れてしまったのだ。

  「ああっ…」

  驚きと後悔の声が漏れる中、異変が起きた。倒れた祠から黒い靄のようなものが湧き出してきたのだ。それは体に纏わりついてきて体が金縛りのように動けなくなってしまい、ミカは恐怖で硬直する。

  「な、何これ…助けて……」

  呼吸が苦しくなりパニックがミカを襲う。そして、最悪の事態が起起こる…。黒い霧がミカの口の中に勢いよく侵入し始めたのだ。

  ミカの頭の中に異質な存在感が広がっていく。それは、まるで自分の意識が何かに浸食されていくような感覚だった。抵抗しようとするがどんどん力が抜けていく。

  「んぐっ!!……んんっ…」

  心の中で叫びながらミカは必死に意識を保とうとした。しかし、黒い霧は容赦なく彼女の精神を蝕んでいき、手足の感覚が徐々に失われ恐怖が全身を支配する。

  次第に頭の中が黒く染まってきて思考にモヤがかかり視界も霞み始める…。ミカの意識は綺麗な女性の笑い声を感じながら、深い闇の中に沈んでいく…。最後に彼女は幼なじみの名前を呼ぼうとした。

  「まも君……」

  かすかな声が漏れる。そして、ミカの目から光が消える。

  しばらくすると微かな喘ぎ声と共にミカの体がビクッと震え、温かい液体が太ももから垂れ流れる。そして、ゆっくりと顔が上がる。雨に打たれた顔に不気味な笑みが浮かんだ。それはもはやいつものミカの表情ではなかった。

  「本当に久しぶりね…」

  新たな何かを宿したミカの体はふらりと立ち上がった。そして、まるで何事もなかったかのように静かに森の中へと歩み去っていった。後には、壊れた祠とミカ落とした虫かごだけが残されている。一瞬、後ろ姿からは透明な9つの尻尾と大きな狐耳が浮かび上がった…。

  [newpage]

  昨日の激しい雨の中でミカを見失った後、マモルは何とか自宅にたどり着いたもの胸中は不安で一杯だった。

  ミカの両親に電話をかけると彼女がまだ帰宅していないという衝撃的な事実を知らされた。すぐにでも捜索に向かおうとしたマモルだったが両親に夜の山に入ることを強く止められてしまった。

  一晩中、目を閉じれば雨に打たれるミカの姿が浮かびほとんど眠ることができなかった。そんな中、朝一番でミカの両親から連絡が入った。

  無事にミカが無事見つかったというのだ。

  「よかった…」

  その知らせを聞いた瞬間マモルの体から力が抜けた。自然に安堵の涙が出てしまう…。

  話を聞く限り同じ山にある神社の雨宿りできる境内で毛布に包まって眠っているところを朝早くから掃除をしていた神主さんに発見されたという。

  マモルは彼女の両親に翌日に僕の家でミカと会う約束を取り付けた。両親もマモルがミカのことを心配していたことを知っており快く了承してくれた。

  翌日自宅のベルが鳴りマモルは急いで玄関に向かった。ドアを開けるとそこにはミカの姿があった。しかし、マモルが安堵の笑顔を浮かべたのもつかの間、違和感を覚えるのだった…。

  「マモル君…先日は心配をかけて申し訳ありません…」

  ミカは確かにそこにいたが何かが違っていた。彼女の立ち姿が何も変わらないが、彼女が放つ雰囲気が以前のミカとは明らかに異なっていたのだ。

  その声は以前の勝気な調子ではなく落ち着いた上品さを帯びていた。マモルは違和感を覚えながらも平静を装った。

  山での出来事もあり今日は家でゆっくりゲームをして外で遊ぼうとマモルは提案した。

  「ねえ、今日はうちでゲームでもしない? また山で何かあったら嫌だし」

  「ええ、そうですね。二人きりでゲームを楽しみましょう」

  その返事の言葉遣いの丁寧さにますます違和感を覚え、僕は何かが起こっている予感も感じていた。

  二人はゲームに熱中していた。しかし、マモルの心の片隅では常にミカへの違和感が渦巻いている。しかも、彼女のゲームの腕前は以前より明らかに上達しておりその落ち着いた態度はまるで別人のようだった。

  「ちょっと休憩しよう。ジュース取ってくるよ」

  マモルが立ち上がろうとした瞬間、予想外の出来事が起こった。ミカの手が彼の腕を掴みそのまま彼をベッドに押し倒したのだ。

  「え? ミカ?」

  驚きの声を上げるマモル。しかし、ミカの力は尋常ではなかった。振りほどこうとしてもまるで縛られているかのように動くことができない。

  ミカの顔は気品がありつつも何か不気味な笑みが浮かんでいた。そして、マモルの目の前で信じられない光景を目の当たりにすることとなった。

  「んっ...」

  かすかな吐息と共にミカの体に変化が現れ始め、最初は微かな変化だったが次第にその速度を増していく。

  ミカの体が急激に大人の姿へと変貌を遂げていく…。身長が伸び、体つきが成熟し、顔立ちが大人びていき、その過程で彼女の服はみるみるうちにきつくなっていった。

  僕は唖然としながらその変化を見つめていた。そして、膨らむ胸に耐え切れずブチブチと音が鳴り、彼女の服が破れミカの大きな胸が露わになった。

  「っ!……」

  僕は焦りとっさに手で目を覆ってしまうが、指と指の隙間からちらちら見てもしまっていた…。

  変化は進みミカの頭に獣のような耳が生え始めた。彼女の腰の辺りからまるで生き物のように蠢きながら白い九本の尻尾が現れ始めた。

  最後にミカの髪の色が黒から純白へと変化していく。そのもともと長かった髪も増し、まるで滝のようにさらりと背中を流れ落ちていった。

  「ふふっ…捕まえた…」

  耳元で囁かれれる。

  マモルの目の前には妖艶な白い九尾の狐の姿をした女性が覆いかぶさっていた。その姿はかつてのミカの面影を残しつつもまったく別の存在のようにも見えた。

  体格差は歴然としていて成長した体と幾重にも重なる尻尾のせいで、マモルはすっぽりと覆われてしまったような形になっている。

  「みーちゃんはそんなに上品で丁寧な話し方はしないし、いったい何者なのお姉さん?」

  震える声ながらも覚悟のある声色でマモルは問いかけた。目の前の存在はミカの面影はあるが、明らかに別の何かだった。

  「まるで普段の私が口が悪いみたいではないですか……そんな悪いことを言う口は…」

  僕の口はミカの口で塞がれてしまう。初めてのキスだったがそれどころではなかった。舌を入れられ口内を蹂躙される。

  「んっ……んんっ……ぷはぁ……」

  息継ぎをするが、すぐに再び口を塞がれてしまう。そして今度はミカの舌が侵入してくる。

  舌を絡め取られるたびに頭が真っ白になっていく。その間も尻尾は僕の体を愛撫するかのように蠢いていた。

  ふわふわの毛でさわさわと撫でられるたびにビクビクっと体が反応してしまう。そして、快感に耐え切れず僕は股間の熱いものを放ってしまいズボンに染みができる。

  「あら……お漏らしとは情けないですね…」

  妖艶な微笑みを浮かべて見つめられ、僕は恥ずかしさのあまり目を逸らすことしかできなかった。

  「私は…ケムリ。長い間封印されていた妖狐よ」

  マモルの体にまたがったままケムリは不敵な笑みを浮かべる……。そして、その指先がマモルの顎をそっと持ち優しく頬を撫でる。

  「みーちゃんを…返してください…」

  震える声でマモルは懇願した。ケムリはマモルの頬を優しく撫でる。その指先が顎から首、胸から股間へとゆっくりと降りていく……。

  「う~ん…どうしましょう……返してもいいですけど条件があります」

  マモルは唾を飲み、恐怖と不安に押しつぶされそうになりながらもケムリの言葉に耳を傾けた。

  「私の封印解除はまだ中途半端……あと少し力があれば完全に自由の身になれるのだけど……坊やにそのお手伝いをして欲しいの」

  マモルは何を要求されるかと思うと心臓の音が加速してしまう…。そして、ケムリは耳元で甘く囁いた。

  「あと少し精ももらえばなんとかなるの……このやさしいやさしい狐様を助けてくれないかしら」

  にやりと微笑み、囁く彼女の言葉はまるで魔法のように心に染み込んでくる。僕は自分の意思とは関係なくゆっくりと頷いてしまった……。

  「ふふっ……良い子……」

  その瞬間、僕の体は9本の尻尾によってつけている衣類をはぎ取られてしまった。

  「ううっ……」

  羞恥心で顔が真っ赤になり思わず手で胸と股間を隠そうとするが、ケムリは妖しく微笑むだけだった。そして、彼女はゆっくりと体を僕に近づける。弱々しい声しか出すことができない僕に対してケムリは耳元で囁いた。

  「そうはいっても体は正直よ?それに……わたしの胸もさっきからみてましたよね?」

  大きな胸を僕の胸に押し付けながらケムリは耳元で囁き続ける。

  「ほら……私の胸が当たってこんなにドキドキしてますよ?もっと楽にして良いんですよ?」

  心臓が跳ね上がり息が荒くなってしまう。そんな僕を見てケムリは妖しく微笑むといきり立った僕の肉棒をたわわで大きな胸で包み込む……。

  「どう?あったかくて柔らかいでしょ?……我慢しなくて気持ち良くなっていいの」

  蒸れた胸の香りと柔らかで弾力のある感触に僕は一瞬で射精してしまった。濃厚な精子が勢いよくケムリの胸から顎にかけて飛び散る。彼女はそれを愛おしそうに舌で舐め取った。

  「うふふっ……若いっていいわね」

  白くて大きな胸が僕の股間を締め付け、そして胸を上下に動き始めると再び興奮と快感が高ぶっていく。

  タンッタンッと胸と腰がぶつかる音が部屋中に響き渡る。動くたびにくらっとする甘美な香りが波のように訪れ僕の鼻を刺激していく…。

  「イってもいいんですよ?ほら……このおっぱいで搾り取ってあげます……」

  甘い言葉が耳から脳内に入り込みさらに興奮を加速させていく。ケムリの胸の動きが少しずつ早くなっていき、それに合わせるように僕も再び射精してしまう……。

  びゅくびゅくと先ほどよりも多い白濁を吐き出し汚してしまう。それと同時に精気をとられているのか力が抜けていく…。

  「ふふっ……また、いっぱい出しましたね」

  とんでもない量の精子が胸から跳ね上がり体や顔に飛び散る。そして、最後の一滴まで搾り取ると、ケムリは僕の顔をじっと見つめた。

  「じゃあ……最後にしましょうか」

  妖しい笑みを浮かべながら彼女は再び僕の上に跨る。そしてゆっくりと純白の陰毛に隠された割れ目に僕に見せつけて、そのまま一気に腰を落とした。

  「あんっ…」

  「んぁ!…アァッ!!!!」

  ケムリは軽く喘ぎ、僕は強烈な快感が全身を襲い大きな声を上げてしまう。頭が真っ白になり体はガクガクと痙攣する。ケムリの尻尾は僕の手足に巻きつき暴れないように拘束し、耳元で甘美な誘惑の声が囁かれる。

  「ほらっ……まだまだですよ?」

  「…ぐぅっ!!!!」

  次の瞬間、僕は再び精気を搾り取られてしまう。僕の意思とは裏腹に体が勝手に動き彼女を求め始め、心とは反対に彼女の胸に手を伸ばした。そして、欲望のままに揉むと彼女は甘い声を上げて見つめてくる。まるですべて手のひらの上で踊らされているとわかっていても、その反応がさらに興奮を加速させていく…。

  「ふふっ……可愛い」

  ケムリは妖しく微笑み、腰を激しく動かし続ける……。僕はもう完全に彼女に魅了されてしまっていた。彼女の尻尾がまるで触手のように僕の全身を絡め取ると、魅惑的な香りがさらに強まっていく……。

  そして体を動かしながらケムリは話し始める。

  「封印の解除には精といいましたが、実はもう一つあります」

  僕は快楽に流されそうになりながらも、彼女の言葉に耳を傾ける……。

  「それは……魂…」

  「た、魂!?」

  僕は思わず声を詰まらせる。するとケムリは妖しく微笑んだまま囁くように話し続けた……。

  「そうです……精気を吐き出しきったら最後…あなたは私のモノになるんですよ…ヒトの形を保てないかもしれませんね…」

  その言葉を聞いた瞬間、僕は恐怖に震えた。しかし、彼女はそんな僕の反応を見て楽しんでいるようだった。

  「そんなに怖がることないですよ?…ただの眷属の狐になるだけですから」

  ケムリは妖艶に微笑むと僕にキスをした。そして、そのまま腰を振り続けた。全身から力が一気に抜けていき意識が遠のいていく……。

  「坊やは芯は強かったけど……わるーいお狐様に目を付けられたのは残念でしたね」

  その言葉と同時に腰を激しく動かし、僕の精気をすべて搾り取り始めた……。全身が痺れ始め力がどんどん抜けていく。最後の気力を振り絞り彼女の尻尾から逃れようとするが、 尻尾はまるで触手のように絡みつき僕を拘束する。

  「みーちゃん……ごめん!!……僕は…もう…」

  「お狐様に堕ちて……最後は気持ちよくなりましょう?」

  そして、とどめを刺すように彼女は腰を深く落とし膣を締め付けてくる。その瞬間、僕は耐えられず勢いよく射精してしまう……。どぴゅっどぴゅっと音を立てて精子が飛び散り、精気と共にケムリの膣内に注がれる。

  「ありがとう坊や、これで私は自由の身……眷属として優しくしてあげるから安心してくださいね…」

  僕は薄れていく意識の中で、彼女が嬉しそうな笑みを浮かべているのを見た。

  [newpage]

  全てが終わってから静寂に包まれた部屋の中で、ケムリはじっと目の前の光景を見つめていた。ベッドの上で横たわるマモルの体が、ゆっくりと変化していく様子に彼女の瞳は複雑な感情を宿していた。

  マモルの手足の先端から徐々に白い狐の姿へと変わっていく。人間の肌が柔らかな毛皮に覆われ指が短く丸みを帯びた爪に変化していき、新しい眷属の誕生を見届けていく…。

  「お互いの名前を最後に呼び合うなんて……二人の気持ちは……」

  二人の最後の言葉を思い出しケムリは幼なじみの二人がお互いを大切に思う気持ちがケムリの胸に深く刻まれていた。

  ケムリは昔々の時代を思い出す。恋も自由にできず厳しい掟に縛られていた時代。今の世の中は、何と贅沢なものになったことか。相思相愛でありながらすれ違ってしまったマモルとミカのことを考えると胸が締め付けられるような痛みを覚える。

  「昔々は自由に恋もできなかったというもの……贅沢な時代になったものですね…」

  一瞬、苦虫を噛み潰したような表情がケムリの顔に浮かべ、大きなため息をつくとほぼ狐の姿になっているマモルの額にそっと手を当てた。

  その手が触れた瞬間、狐への変化が逆再生するかのようにマモルの体が人間の姿へと戻り始めた。徐々に毛皮が引っ込み、顔の形が人間らしさを取り戻していく。

  「私も甘くなりましたわね…」

  ケムリは自分に言い聞かせるように呟いた。しかし、その声には後悔の色は見られなかった。

  マモルの体が完全に人間の姿に戻ったのを確認すると、ケムリの体にも変化が現れ始めた。白い髪が黒く染まり、九つの尻尾が消え、体全体がミカの姿へと戻っていく。

  「この体はいつでも乗っ取れますから別に急ぐこともないでしょう…」

  ミカの姿に戻ったケムリはマモルの服装を整え優しくベッドに寝かせ部屋から出ていった。

  数日後、マモルとミカは再会した。二人とも、あの日の出来事をうっすらと覚えているようだった。お互いに謝罪の言葉を口にしようとするものの、どこかぎこちない雰囲気が漂う。

  「あの...まも君」

  「みーちゃん、その...」

  二人の言葉が重なり、気まずい沈黙が流れる。

  「と、とりあえずゲームしよっか?」

  「そ、そうね!…ぼこぼこにしてあげる!」

  そんな中突如としてミカの目の光が一瞬失われた。そして、彼女の体がほんの少しだけ成長し胸が膨らみ、頭の上に小さな狐の耳が現れた。

  マモルが驚きの声を上げる前に、ミカ?は彼に近づき唇を重ねた。柔らかな唇が離れると呆れと少し怒ったような顔を浮かべる。

  「ほんっとじれったいですね…」

  その言葉と共にミカの姿は完全に元に戻る。

  二人は顔を赤くしながら呆然とした表情を浮かべるのであった…。