赤ずきんのおばあさんがでっぷり狸だった場合

  昔々あるところに、赤いずきんを被った女の子がいました。彼女は赤ずきん。病気になったおばあさんのお見舞いに、森の中のおばあさんの家に向かっているところです。赤ずきんのおばあさんは、何と、お腹がとっても大きな狸さん!森一番の食いしん坊で、いつも大きなお腹をゆっさゆっさと揺らしています。

  「ぐふふ、このスウィートな香りは……おお、これはアップルパイ!たまらんのお!」

  木の影からこっそり赤ずきんのことを覗いているのは、悪い狼です。彼もまた食いしん坊で、赤ずきんの持っているアップルパイを狙っています。

  「ぐふふ、ぐふふふ……」

  「ちょっと!何笑ってるんですか、気持ち悪い!」

  狼が笑っていると、赤ずきんに見つかってしまいました。食いしん坊な狼は、赤ずきんにアップルパイをねだります。

  「そのアップルパイをくれたら、見逃してやってもいいぞ?」

  「これはおばあちゃんのお見舞いの品です。あなたなんかにあげるわけにはいきません」

  「なら力づくで奪ってやろう!」

  狼は赤ずきんに向かって牙を剥き出しにして、大きな口を開けます。その迫力に、赤ずきんは一瞬身震いしてしまいます。しかし赤ずきんの側には、金色に輝くお芋が……!赤ずきんは咄嗟に近くにあった金色の芋を手に取り、狼の口に向かって放り投げます。

  「これでもくらえ!」

  金色の芋は狼の口にすっぽりと収まりました。すると、なんと狼のお腹はぶくんっ!と膨れ始めたではありませんか!

  「ふごっ!?な、何を食わせた……!むぐっ!腹が……くるじい……」

  狼のお腹はどんどん膨れていきます。赤ずきんは、金色のお芋が「これを一口食べると、たちまちお腹が膨れてしまう」という不思議な魔法がかけられた特別なお芋だったことを知らなかったので、狼のお腹を見て大笑いです。

  「あはは!何それ、おもしろーい!」

  お腹が膨れて無力感した狼にすっかり安心しきって、赤ずきんは狼のお腹をツンツンつつきます。むにゅっと柔らかい感触がクセになって、何度も何度もツンツンし続けます。

  「や、やめろ……!うぷっ!だ、だめだ……腹がはち切れて……」

  すると、ついに限界を迎えた狼のお尻から、大量のおならが吹き荒れ始めました。

  ぶうっ!ぶおおっ!ぶっすうううううっ!

  「きゃっ!?げほっ、ごほっ……ゲホッ……」

  赤ずきんは、突然おならを浴びせられて思わず咳き込んでしまいました。むせ返るような臭いに頭がくらくらとしてきます。

  「何するの……!」

  赤ずきんは怒って狼の方へ睨みますが、どういう訳か狼の姿はどこにもありません。

  「あれ?いなくなっちゃった?」

  キョロキョロ辺りを見渡しても、近くに逃げた様子はありません。

  「おかしいなぁ……ん?」

  赤ずきんは、足元に何か落ちていることに気付きました。拾って見ると、それは金色の芋でした。

  「これ、さっきのお芋だ!まだ持ってたんだ」

  狼のお腹に収まったと思っていた金色の芋が、何故か赤ずきんの手の中にあったのです。不思議に思いながらも、赤ずきんはおばあちゃんの家へと向かうのでした……。

  「ぐふふ、ぐふふ……」

  一方その頃、狼は森の中を歩いていました。どうしてもアップルパイが諦め切れなかった狼は、赤ずきんが向かうおばあさんの家に先回りしているのです。そして、丸太の家に辿り着きます。

  「よし、この家だな」

  狼は窓から家の中を覗き込みます。すると、中では狸のおばあさんがベッドで寝込んでいました。

  「ぐふふ、うまそうな婆さんだな……この俺が食ってやるぞ……」

  狼は窓に手をかけて、中へ入ろうとしたその時です。

  「ん……誰か来たのかしらぁ〜?」

  狸のおばあさんは起き上がり、窓の方へ近づきます。このままではバレてしまう、狼がそう思った矢先に、窓は開かれます。そして、おばあさんと狼は目が合ってしまいます。

  「狼……まさか、アタシを食べに……!?」

  狼狽えた狸のおばあさんは、その場で尻餅をついてしまいます。狼の優勢です。このまま食べてしまうこともできるのですが、狼は面白いことを思いつきました。先程食べさせられた金色のお芋を、狸のおばあさんにたらふく食べさせたらどうなるのだろうか……

  早速、狼は金色のお芋を持ってきて狸のおばあさんに渡します。

  「これを食べて、お腹が膨れるかどうか試してやろう!」

  「これは……お芋ですか?でもどうして……」

  狸のおばあさんは、訳も分からずに金色のお芋を受け取りました。そして、一口食べてしまいます。すると、どうでしょう!みるみるうちにお腹が大きく膨れていきます!

  「な、何これ……お腹が……苦しい……!」

  お芋を飲み込んだ後、すぐに変化は現れました。ぶくぶくとお腹が膨らんでいき、服もはち切れそうです。そして、お腹の膨らみはどんどん上へ上へと昇っていき……

  「きゃあっ!?」

  ボヨヨンッ!と大きな音を立てて、狸のおばあさんは巨大なおデブさんになってしまいました。

  「な、何でこんなお芋を食べちゃったのかしらぁ〜?うっぷ!」

  あまりの太り具合に、狸のおばあさんは身動きが取れない様子です。これには狼もゲラゲラと大爆笑!

  「ぐふふ!見ろよ、このお腹!デブすぎだろ!」

  狼はおばあさんの巨大なお腹を思いっきり踏みました。すると、ぼよんっとお腹が揺れて、狸のおばあさんに振動が伝わります。

  「あぅう!?げっぷ!ふ、太ってるぅ〜……」

  お芋を食べすぎて、すっかり重たくなった体を動かすことも出来ずに、狸のおばあさんはそのまま動けなくなってしまいました……

  「しばらくそこで大人しくしてることだ。喋ったら食っちまうぞ」

  狼はおばあさんにそう言うと、おばあさんの家に入っていき、おばあさんの格好をしてベッドに入りました。

  一方その頃赤ずきんはというと……

  「着いた!」

  おばあさんの家の前に辿り着いていました。お芋を食べさせられてぶくぶくに太った本物のおばあさんのことには気づかず、狼がいる家の中へ入っていきます。

  「おばあちゃん、お見舞いにきたよ!」

  赤ずきんは元気よく挨拶します。しかし、中からは返事がありません。不審に思って中に入ると……そこにはベッドの上で眠っているおばあさん……に変装した狼がいました。

  「あれ……?おばあちゃん?」

  赤ずきんはいつもと様子が違うおばあさんに戸惑ってしまいます。そんな赤ずきんを見て、狼はニヤリと笑います。

  「あらぁ?その声は赤ずきんかしらぁ〜?」

  狸のおばあさんの声を真似て、狼は赤ずきんに話しかけます。

  「おばあちゃん!お見舞いに来たよ!」

  赤ずきんはおばあさんに会えて大喜びです。そして、お芋を渡します。

  「これ、おばあちゃんが大好きな金色のお芋だよ!」

  「あらぁ〜?ありがとうねぇ」

  狼は嬉しそうにお芋を受け取りました。しかし、そのお芋には魔法がかかっていることを狼は知っています。そのため、狼はすぐに食べることはせず、おばあさんを太らせてしまおうと考えました。

  「ところで、おばあちゃん……いつもと何か違う?」

  「えっ!?な、何のことかしらぁ〜?」

  「なんか……声がおかしいような……」

  赤ずきんに言われて、狼は焦ります。おばあさんの声真似をしているつもりでしたが、気付かれてしまったのでしょうか……?

  「そ、そんなことないわよぉ〜」

  慌てて誤魔化す狼と、それをじぃーっと見つめる赤ずきん。家の中に、緊張が走ります。

  「それじゃあ、どうしてお耳がそんなにおっきいの?」

  「へっ……?そ、それは……赤ずきんの声をよく聞くためよぉ〜?」

  狼は苦し紛れの言い訳をします。しかし、まだ疑いは晴れていないようです。赤ずきんからの質問はまだまだ続きます。

  「どうして毛の色がちょっと黒いの?」

  「そ、それは……病気だからよぉ〜、」

  「どうして目がおっきいの?」

  「それは……赤ずきんをよく見るためよぉ〜?」

  赤ずきんは、まだまだ疑わしい目で狼を見つめています。

  「それじゃあ……どうしてお腹、いつもより小さいの?」

  「それは……えっ?」

  狼は一瞬、戸惑います。狼は森に住む動物の中でも、それなりにお腹は大きい方だと自負していました。それなのに、いつもより小さいと言われてしまったからです。

  「もしかして……狼さんなの?」

  赤ずきんはついに確信をついてしまいました!

  「ち、違うわよぉ〜?私は狸のおばあさんよ」

  「でも、お腹おっきくないもん。おばあちゃんはいつもお腹がぷくぷくしてるけど……」

  「そ、それは……病気だからよぉ〜」

  狼は何とか誤魔化そうとしますが、もう後の祭りです。赤ずきんはすっかり狼のことを疑っています。

  「それも嘘なんでしょ!あなた、本当はさっきの狼なんでしょ!」

  赤ずきんは、狼に掴みかかりました。しかし、狼は余裕の表情を浮かべています。

  「あーあ、全部バレちまった。こうなったら……お前を食っちまうぞぉ!」

  狼は大きな口を開けて、赤ずきんに襲いかかりました!

  「きゃああああ!!」

  その場に縮こまる赤ずきん。もうおしまいかと思ったその時……外から爆音が鳴り響きます。

  ぶうううっ!!!ぶぼおぉぉっ!!

  「な、何の音だ!?まさか……赤ずきん?

  「違うよっ!私、こんなにおならおっきくない!」

  こんなに大きなおならをするのは、狸のおばあさんくらいだろう。とすると、近くにおばあさんがいる!?赤ずきんは期待に胸を膨らませて、窓から外を覗きます。するとそこには、丸々と太った狸のおばあさんがいました。

  「おばあちゃん!」

  「赤ずきん!無事みたいねぇ〜」

  ぶくぶくに太っていますが、おばあさんは元気そうです。

  「おばあちゃん……そんなに太っちゃって大丈夫?」

  「ええ!だってアタシ、狸だもの!」

  おばあさんは大きく膨れたお腹をぼよんっ!と叩き、余裕な様子で微笑みます。

  「まだ動けたのか……」

  狼狽える狼を、狸のおばあさんは睨みつけます。

  「おっきな狸さんをナメないことねぇ〜?」

  おばあさんはその巨体をゆっさゆっさと動かし、開いている窓にお尻をねじ込みます。

  「赤ずきん!ちょっと家から出てきて!しっかり鍵をかけてね?」

  「わ、分かった!」

  窓から溢れるおばあさんの尻肉。もう隙間がないくらいにみっちりと詰め込まれています。赤ずきんは言われた通りに鍵をかけると、中にいる狼の声に耳を傾けました。

  「だ、出せぇっ!!ここから出してくれぇっ!!」

  狼は密室に閉じ込められ、パニックになっている様子です。しかし、本当の地獄はここからです。狸のおばあさんは、思いっきり息を吸い込み、お腹に力を入れます。

  「や、やめろ……今、ここでおならされたら……」

  涙目で訴えかける狼をよそに、おばあさんのお尻はぶうっ!と音を立てました。

  「ぶっすううぅぅーーーっ!!」

  巨大な音が鳴り響き、部屋が揺れます。すると、窓の隙間からとんでもない量のおならが噴き出てきました。

  ぶびいいぃいいいぃぃぃっ!!!ぼおおぉぉおっ!!ぶごおぉぉっ!!ぶばあぁっ!!

  「うぐうううぅっ!?く、くっせえええぇぇっ!!!」

  あまりの臭さに狼は悶絶します。そして、その臭いにつられて……

  ぶっ!ぷすぅ〜!!ぶびいいいぃぃっ!!

  「げほ……く、くるじい……」

  狼はおならの臭さに気絶してしまいました。そして、その隙におばあさんは窓からお尻をスポッと抜きました。

  「ありがとう!おばあちゃん!」

  「いいのよぉ〜」

  お礼を言う赤ずきんに、おばあさんは優しく微笑みました。

  「それにしても、どうしておばあちゃん太っちゃったの?」

  赤ずきんの質問に、おばあさんは笑顔で答えます。

  「お芋、いーっぱい食べたからねぇ〜」

  「そ、それだけで!?」

  おばあさんの答えに赤ずきんは驚愕します。狼があんなに太ってしまうほど食べたお芋を、大量に食べてしまっていたなんて……しかもそれで平気そうな顔をしているなんて……おばあさんってやっぱりすごいなぁと、しみじみ思いました。

  こうして、森には平和が訪れたのでした。めでたしめでたし。