先ほど電話があり、今日は天候があまりに悪く出社がなくなる連絡が入っていた。窓の近くに寄るとガラスに激しく当たる雨音が耳に飛び込んできた。外は見るも無残な有様で黒色の空から容赦なく雨が降り注いでいる。
僕は何をして一日を過ごそうかを考えながらスマートフォンの画面を眺める。
「こんな日は家でゴロゴロするしかないよなぁ…」
最近忙しく疲労も溜まっていたためベッドに身を投げ出した。柔らかな布団に包まれ雨音を聞きながらいつの間にか深い眠りに落ちていった。
目を覚ますと外は闇に包まれていた。
枕元の時計を見ると針は深夜0時を指している。
「やっちゃったな……こんなに寝てしまった…」
寝ていた時間に驚きながら体を起こす。お風呂に入り再び眠りにつこうとベッドに横たわるが、すっかり目が冴えてしまい眠気は一向に訪れない。
もどかしさを感じながら窓の外に目をやると、寝る以前の荒れ模様が嘘のように静かな空だった。満月の柔らかな光が部屋の中まで差し込みほのかに部屋を照らしている。
「こんないい夜だし少し散歩でも行くか!」
僕は衝動的に立ち上がり軽装で家を出ることにした。
外に出ると台風一過のような清々しい空気が肌を撫でる。潮の香りを含んだ風が心地よく僕は自然と近くの砂浜へと足を向けた。月明かりに照らされた海は昼間とは全く違く幻想的な雰囲気を醸し出していた。
波の音を聞きながら砂浜を歩いていく。しかし、その静寂な雰囲気とは裏腹に砂浜には先ほどの荒天の名残が散らばっていた。流木やプラスチックごみなどの様々なものが波に押し流されて打ち上げられている。
「さすがにあれだけ天候が悪かったら色々なもの流れ着いているよなぁ…」
そんな中、ふと目に留まったのは流木に引っかかった奇妙な物体だった。一見すると色合い的にダイバースーツか何かのようにも見えるがどこか違和感がある。テカテカと月明かりに反射する姿に僕は思わず足を止めた。
近づいてその物体を手に取ると予想以上に重みがあった。広げてみるとそれは人型をしているものの尻尾や角が付いておりまるで竜人のような姿をしていた。触れてみるとゴムのような質感だがどこか生き物の皮膚のような不思議なしなやかさも感じる。
「イベントか何かで使われていたのかな?」
何に使われていたのか考えながらも僕はその物体から目を離すことができなかった。単なる衣装とは思えないどこか超常的で神秘的な雰囲気を纏っていて、月の光を浴びて淡く輝くその不思議なスーツに僕は言いようのない魅力を感じずにはいられなかった。
僕は手の中のラバースーツをじっくりと観察すると不思議に荒波に揉まれたはずがほとんど汚れは見当たらない。月の光を浴びて表面は瑠璃色に輝いている。背中の部分に目をやると細い切れ目が確認でき中は角度で色合いが変わる不思議な群青色だった。
どうやらそこから中に入れそうだ…。
(今、ここで着てみたい…)
突然の衝動が僕を襲った。理性では『やめておけ』と警告しているのに体は勝手に動き出していた。近くの岩礁の陰に身を隠すと僕は急いで服を脱ぎ始めゆっくりとスーツに足を通す…。
ゆっくりとラバースーツに足を通すと冷たく滑らかな触感が足先から伝わってきて僕は思わずぞくりとした。内側は予想以上にしっとりとして太ももまで引き上げると勝手に僕の肌に吸い付いてきて自分の体にフィットするような不思議な感覚に襲われた。
「んっ?……なんかサイズがピッタリになったような…」
疑問を感じながらも僕はスーツを腰上まで引き上げるとほのかな磯の香りが鼻をつく。着こんだラバースーツはまるで第二の皮膚のようにしなやかにそして確実に僕の体を包み込んでいく。その感触は言葉では表現できないほど心地よく心臓の鼓動が早くなり期待と興奮が胸の内に広がっていく。
「あとは頭を入れれば……」
しかし期待と同時に漠然とした不安も頭をよぎっていた。『これを着てしまったら、何か取り返しのつかないんじゃないか…』という思いが心の片隅に残っていたが、好奇心と高揚感がその不安を押し流していった。
「まあ、もう後戻りはできないよな」
僕の手は止まらなかった。首元まで引き上げ最後に頭を通す。スーツが完全に僕の体を覆った瞬間、全身に何かを感じたような……気がした。
「おお!…結構カッコイイ?」
僕は岩礁の端まで移動して水面に映る自分の姿を見下ろした。月明かりに照らされた鱗のような表面が瑠璃色にテカテカ輝いている。僕は自分の新しい姿に興奮していた。
しかし、僕は重大な事実を見逃していた。スーツを完全に着用した瞬間、背中の裂け目がゆっくりと閉じていることを知らなかった…。
しばらく頭の角の作り物やだらんと垂れた尻尾を触ってみたり、なんとなくポーズを決めてみたりなどをしていたが、スーツの中がどんどんぬるぬるしてきたのだ。
「ん?…なんか体がぬるぬるしてきた……やっぱりまずいかも……」
急いで脱ごうとするが背中の裂け目が閉じているためどうやっても脱げない。必死に手を背中に回しさっきまであったはずの裂け目を探すが、どこを触っても滑らかな表面しか感じられない。
「……あれ?チャックが……ない!?」
パニックになりかけた僕は両手で皮を引っ張ってみるがゴムのように伸びるだけで裂け目は現れない。さらに追い打ちをかけるように体に異変が起き始めた。全身が熱くなり大量の汗が吹き出してきたのだ。それは単なる暑さや興奮からくる発汗とは明らかに違った。
「あうっ!……あそこがすれてっ!!」
中がぬるぬるしているせいかあそこが大きくなっており動くたびに内部のラバーに擦れて変な快感を与えてくる。最近忙しくのもあって発散していなかったのもあり、刺激に弱くなっていたあそこはあっという間に硬くなり今にもはちきれそうになってしまった。
「っ!…これ…やばいっ!!」
僕は必死にあそこの膨張を収めようとするが、あそこは膨らみスーツにきつくフィットしてその刺激を強めてくる。
「やば……もっ、もうダメだっ!……出るっ!!!!」
あそこから耐え難い快感が昇ってきた次の瞬間、僕のあそこからドクっと音を立てて白い液が中に出してしまった。それがトリガーになったのかスーツが脈動を始め僕の全身に刺激が走り始める。
「ああああぁぁぁ!!……なんだっ!…これっ!!」
全身がビクビクと痙攣しあそこの膨張は収まることなくさらに大きくなっていく。そして、スーツの内部が波打ちながら、まるで生き物のように蠢き始めた。
「イクッ!!…また出るっ!!!!」
僕は再び限界を迎え白い液をスーツの中に放ってしまった。しかし、スーツはそれを待っていたかのように全身を収縮させ染み込むようにその全てを蓄えながらさらに刺激を続けてられていく…。
何故か衰える様子はなく何回も何回もイッてしまい、そのたびにスーツが蠢きその刺激でさらに絶頂を迎えてしまう。
「あっ……なんでっ……止まらないんだっ!!!!」
僕はあまりの快感に耐えきれずその場にへたり込んでしまった。しかしそれでも快感の嵐は収まることなく僕の全身を襲い続けた……。
絶頂の熱は最高潮に達しもはや耐えられないほどの激しさになっていた。全身の筋肉が意志とは無関係に痙攣し僕は思わず背中を大きく反らせた。その瞬間、予想もしなかった事態が起こった。
「なんか体が……変になるっ!!!!」
スーツと僕の肌が、まるで融合するかのように一体化し始めたのだ。体中からパキパキという音が鳴り始め、まるで水に氷を入れたときのような大きな音がなる。ゴムのような質感だったスーツの表面が見る見るうちに変化していき、単なる質感の変化ではなくまるで生きた組織に変わっていくかのようだった。
「あっ!……グウウゥゥ!!!!」
最初に変化が始まったのは指先だった。作り物のように見えていた爪が、僕の体の一部であるかのような感覚を伴って浮き上がり鋭く、強靭な爪へと変貌を遂げていく。
手の甲から腕にかけて蒼い鱗が浮かび上がり始める。変化は徐々に体の中心部へと広がっていった。手足から肩や腰へと鱗が広がるにつれ筋肉の形状も変化していくのが分かった。より力強くしなやかな体つきへと変貌を遂げていく…。
それは恐怖を覚えるべき変化なのかもしれないが、変化するたびに流れる快感でそれどころではなかった…。
変化が下腹部に達したとき、背中から伸びる尻尾に突如として生気が宿った。それまで単なる装飾品のように感じていた尻尾が突如としてブンと大きく薙いだ。
「ンッ!!?」
思わず声を上げてしまう。尾てい骨から電流のようなものが走る感覚で尻尾の先端まで神経が繋がった感覚を覚える。まるで今まで使ったことのない筋肉を初めて動かしたようなそんな新鮮な感覚であった。
変化の波は頭部にまで及び口の中では歯が鋭く尖り、舌の感覚も変化していった。二本の角が頭から直接つながる感覚がする。そして隠れているスリットから竜の槍のようなペニスが飛び出て凄まじい快楽と共に竜人としての絶頂を迎えた。
「グゥウウウウウ!……イ゙グゥゥゥゥゥゥ!!!!!!」
その快感は今まで感じたどんな快楽よりも大きく、そして深く僕の中に刻み付けられた……。
全ての変化が終わったとき、僕は激しい呼吸を繰り返しながら砂浜にうずくまっていた。徐々に呼吸が落ち着いてくると同時に視界が明瞭になってくる。
「一体……なんだったんだ…」
ゆっくりと立ち上がり自分の体を見下ろす。ラバースーツを着ている感覚は完全に消え失せており、体の蒼色の鱗の感触や強靭な筋肉の動き、そして尻尾の重みをあたかも生まれたときからそうであったかのように自然に感じている。
「さっきのスーツを着ているって感じはしないよなぁ……この体自体が素肌みたいな感覚だし」
驚きのあまり口が閉じず夢を見ているかのような感覚だった。しかし、感覚は鮮明でこれが紛れもない現実だということを否応なしに突きつけられる。
試しに尻尾を目の前に持ってきてみたが意志どおりに自由に動く。指先の爪で触れてみると鱗の感触とともに、くすぐったさを感じた。間違いなくこれは自分の体の一部なのだ。
「信じられない……確か触れている感触あるし」
スーツを着ていたときには存在しなかった背びれの存在が今は鮮明に感じられる。好奇心に駆られるまま僕は自分の体のあちこちを調べ始める。腕の筋肉の隆起、指先の鋭い爪、そして頭部に生えた角。
この変化を受け入れるのにそれほど時間はかからなかった。むしろ、この新しい体に不思議なほどの馴染んでしまっている自分に驚いた。恐怖や戸惑いよりもむしろ解放感や好奇心のようなものが胸に広がっていた。
「まるで、生まれ変わったみたいだ…」
いつの間にか膝下まで海水に浸かっていたのだが、予想していたような冷たさは感じない。海水が自分の体に馴染むような不思議な感覚があった。
「あれ?…海水の中のほうがなんか心地いい…」
人間だった頃ならこんな夜の海に入ることなど考えもしなかっただろう。しかし今の体はむしろ海を求めているかのようだ。
僕はゆっくりと沖に向かって歩き始めた。波が胸元まで来ても息苦しさは感じなく足が海底から離れたとき本能的に泳ぎ始めていた。
「うわ!…これ、すごい!」
海の中でなぜか呼吸ができている。尾びれは水を強く押し僕の体は驚くほどのスピードで海中を進んでいく。僕は言いようのない高揚感を覚えた。人間としての制限が全て取り払われたかのようで海の中を自由に動き回れることに、僕はすっかり魅了されてしまった。
この姿になってしまったという悩みはすっかり忘れ去られていた。代わりにこの新しい体で大海原を探索することへの期待が僕の心を満たしていた。
[newpage]
水面に浮かんで星空を眺めたかと思えば、次の瞬間には深く潜って海底の不思議な生き物たちを観察する。時間の感覚を失いながら僕はしばらくの間大海原を楽しんだ。この新しい体で感じる解放感と自由を感じていて満足する。
「こんな体験、人間では絶対にできなかった…」
満足した僕は散歩していた海岸の近くまで泳ぎながら、ふと思った。
「もし…もっと大きくて海を感じれたら…」
海竜のような大海原さえも小さく感じさせるような存在感。神話や伝説の中でしか語られないような壮大な巨大な海竜の姿を思い描く。
僕はその姿を強く思い描く。嵐の中でも大海原を自由に泳ぎ回り、深海の秘密を探る。その姿は、あまりにも魅力的で現実の自分を忘れてしまいそうなほどだった。
そんな妄想に浸っていると突如として体の中から何かが湧き上がってくるのを感じた。それは、先ほどの変化の時とは比べものにならないほどの、圧倒的な力だった。
「はぁ…はぁ……いきなり体が熱くっ!」
激しい快感が全身を襲いまるで体の中の何かが、一気に目覚めようとしているかのようだった。全身の筋肉がビクビクと震え始め、熱を冷まそうと急いで海中と僕は潜るが、体に当たる水流がさらに敏感になった体を刺激してしまった…。
「!!!」
体中もむず痒くなってきて抑えきれない快感ともに股間のスリットから槍のようなペニスが飛び出てきて頭が白く染まる。突然訪れた絶頂に頭が真っ白になりながら巨大なエネルギーの本流に飲まれそうになる。
「グゥ!……なんかこれはヤバいかもっ!」
歯を食いしばり必死にこの衝動を抑えようとする。しかし、それは大海の潮流に逆らうようなものだった。僕の意志など物ともせずその力は着実に大きくなっていく。
「駄目……だ...抑えきれない...!」
ついに理性が決壊し、力が一気に溢れ出す。それは、まるで堤防が決壊したかのような激しさだった。
「ゔ………あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!!!」
胴体が膨張し始める。筋肉が隆々と発達し、あっという間に人間の体格をはるかに超える大きさになっていく。一枚一枚の鱗が大きくなり硬質な鎧のようなものとなっていく。
首も伸び始め、長くしなやかに伸びていく。それに伴って頭部も大きく変化しより海竜らしい形状へと変貌を遂げていき口内も牙はさらに鋭く大きくなる。
四肢も急速に変化を始めた。手足は太く大きくなり、爪は長く強靭になっていく。指の間には水かきが現れより効率的に泳ぐための適応が進んでいった。最後に尻尾が驚くべき速度で成長を始め、十数メートルほど長さに成長しそれ相応の尾びれとなる。
「グゥウウウウウオオォォン!!!!!!」
咆哮のような叫びと共に制御不能となった力に翻弄され、僕は巨大になった尻尾を無意識に振り回した。その一振りで、周囲の水が大きく動き、渦が形成される。口からは大量の水を高圧縮したの水流のよう噴き出す。
しばらく意識が朦朧としていたが変化に気づき、僕は自分が巨大な海竜へと変貌を遂げていたことを悟った。感覚からその大きさはかつての竜人としての大きさを遥かに凌駕していることを何となく理解する。
(うぅ……体が動かない……でも今の僕の姿って……)
巨大な海竜になった反動で体がほとんど動かせずゆらゆらと海を漂っているのが限界だった。
海竜になった余波で巨大な渦を作ってしまった影響でいろいろなものが海中に巻き上がっていた。
わずかに泳げるようになって海面に浮上するために移動していた時、僕は注意力が散漫になっていたため目の前の海中を漂うゴミに気が付かず大きなレジャーシートのようなものを吸い込んで喉に詰まらせてしまう。
「げほっ!ごほっ!」
反射的に大きな咳をする。その瞬間、僕の意識に異変が起きた。ほんの一瞬、意識が途切れ、体の中心に引き込まれるような感覚に襲われた。しかし、ビニール袋をなかなか吐き出せず大きく息を吸い込み全力で咳き込むように全身の力を振り吐き出す。
その瞬間、視界が真っ暗になった。意識が切り替わるような奇妙な感覚と共に水に叩きつけられるような衝撃が全身を走る。
「痛っ!!!!」
鋭い痛みと冷たさで僕の意識は一気に覚醒した。反射的に海から顔を出すと塩辛い海水が口に入り思わず咳き込んでしまう。
咳き込みながらも僕は自分の体を確認した。人間の手足があり元の姿に戻っていた。しかし吐き出されたときの背中がひりひりと痛む。
僕はゆっくりと後ろを振り返った。そこには、信じられない光景が広がっていた。十数メートルはある巨大な海竜が海面にぷかぷかと横たわり浮かんでいたのだ。日の出に照らされたその姿はまるで神々しく美しいものだった。
「あれが…さっきまでの姿だったのか…」
驚きの声が漏れるのもつかの間、海竜の姿が徐々に縮んでいった。元のスーツのようなに戻るのかと思ったがしかし、縮小は止まらず、最終的には大きなドラゴンのフィギュアのような姿になった。
「……」
開いた口がふさがらない。海竜から人間に戻れたことも驚きだったが、残された姿がスーツではなくフィギュアになったことにも驚かされる。
「うっ!……寒い……」
海の冷たさを強く感じ始めた僕は、急いでその大きなフィギュアを海から抱えながら泳ぎだす。疲れと寒さで体を震わせながら僕は自宅への帰路につくこととなった。
手に持ったフィギュアを確認すると背中に切れ込みがあるのに気がついた。覗き込むと中はスーツと内側と同じ群青色。手を入れる考えられないほど伸び着れるのではないかと思った。そして、そこに入れば再び海竜になれるだろう…。そのなぜか確信できる想像に僕は思わずにやりとしてしまった。
「新しい趣味が増えてしまいそうだ…」
それからというもの週末には息抜きとして変身を楽しむこととなり。今日の出来事は決して消えることのない体験と快感でイケナイ趣味を刻み付けられてしまっていた…。