狼は広々とした野原で、今日ものんびりとお芋を食べながら寝転がっています。この野原は狼の縄張りで、他の動物は近寄ることはできません。下手に近寄ろうものなら、狼の放つ大きなおならに吹き飛ばされてしまうのです。
「ん?何だぁ?」
狼の視界の端に、何かがちょろちょろと動いているのが映りました。近寄ってみると、それはウサギのようでした。
「これはこれは。俺様の縄張りだとも知らずに……」
狼はすかさず、ウサギに向けて大きなお尻を突き出します。
「んふふ。どうだ、怖いだろう」
しかしウサギはいっこうに逃げません。
「ふむ……どうやら俺様のおならの威力を知らんようだな……」
狼はそう呟くと、鼻をフゴフゴと動かし始めます。そして次の瞬間……
ぶおおおおおっ!!!
大きな音と共に、強烈な臭いのする空気がウサギに向けて発射されました。
「うおぉっ!?」
あまりに臭かったので、ウサギは慌てて逃げ出しました。狼の縄張りに近づこうとする動物たちは、大抵このおならに吹き飛ばされてしまうのです。
「ふふん、思い知ったか!」
狼は得意気にそう言うと、またのんびりと寝転がりました。
その翌日……
「……む?」
狼が目を覚ますと、開けた野原に三件の家が建っていました。一つは藁の家。一つは木の家。そしてもう一つは、レンガの家です。きっと狼が寝ている間に建てたのでしょう。しかし、狼は良い気分ではありません。
「全く、邪魔な家だ。俺様のおならで吹き飛ばしてやる!」
狼は起き上がると、早速藁の家を目がけてお尻を突き出し……
「ふんぬっ!!」
ぶおおぉっ!!
大きな音を立てて、おならが発射されました。その風圧に押されて、藁の家はあっという間に吹き飛ばされてしまいました。家の中にいたのは、一匹の子豚でした。
「あうわっ!?オイラの家が……!」
「ふんっ!俺様のおならの威力を思い知れ!」
狼はそう叫ぶと、子豚は木の家の方へ逃げ込みました。狼はすかさず、木の家にお尻を向けます。
「んふふ。逃げられると思うなよ?」
ぶおおおぉぉっ!!
また、おならが発射されました。その風圧に押されて、木の家も吹き飛ばされてしまいました。家の中には、先程の子豚と……背の小さい子豚がいました。
「あわわ……ボクの家までぇ……」
「急いでレンガの家へ逃げなきゃ!」
二匹は慌ててレンガの家へ駆け込みます。もしかすると二匹は兄弟なのでしょうか。しかしそんなことは狼にとってはどうでも良いことです。狼はすかさず、レンガの家にお尻を向けます。
「どこまで逃げても同じことだ!」
ぶおぉぉぉ!
狼の大きなおならがレンガの家にぶつかります。しかし、レンガの家はビクともしません。
「なっ……!?」
レンガの家は、狼の大きなおならにも耐え抜いたのです。二匹はほっと胸をなでおろしました。
「へへっ、俺の作ったレンガの家だぜ。簡単に吹き飛ばされてたまるものか!」
家の中から、もう一匹の子豚の声が聞こえます。どうやら、子豚は三匹の兄弟のようです。三匹はレンガの家の中で、安心した様子でくつろいでいます。
しかし狼はそうはいきません。
「このっ!くそぉぉ!」
ぶおおぉっ!ぶおおぉっ!!ぶうぅぅ!!ぶぼぼおっ!!
次々と放たれるおならが、レンガの家の壁を打ちます。しかし、レンガの家にヒビが入る様子はありません。それどころか、狼のおならの方が先に参ってしまいました。
「くふぅっ……こうなったら……!」
狼は懐から、金色に光る芋を取り出します。この芋を食べると、お腹が急激に風船のように膨れ、巨大なおならが出せるようになるのです。
狼は芋を一口で飲み込みます。するとあっという間に、狼のお腹はぶくんっ!ぶくんっ!と膨れていきます。
「ふふん。これであの家を吹き飛ばしてくれるわ!」
狼はレンガの家目がけて、お尻を向けます。そして……
ぶっすうぅぅぅぅぅ!!ぼおおぉぉぉっ!!ぶうぅぅぅぅぅうううう!!ぶおおおぉぉぉぉぉおおぉっっっ!!!
凄まじい音と共に、巨大なおならがレンガの家目がけて吹き付けられました。その風圧に押され、レンガの家がゆっくりと傾き始めました……が!
「ふんぬぅ!!」
それでも、レンガの家は吹き飛ばされません。あと少しで吹き飛ばされそうなのですが……たまらなくなった狼は、更に金色の芋を立て続けに5本飲み込みます。ぶくんっ!ぶくんっ!
狼はあっという間に、巨大な風船みたいに膨れきっていました。そのお腹の中には、大量のおならが溜め込まれています。
「げふっ……ふぅ……ふぅ……こんだけ溜めれば、うぷ……吹き飛ばせるだろ……」
規格外のおならを一度に溜め込んだので、狼は苦しそうです。しかし、狼は最後の力を振り絞って、レンガの家へおならを浴びせます。
「ふんぬぅ!!」
ぶううぅぅうぉぉっ!!ぼおおぉぉっ!!ばすうぅぅっ!!ぼぼぼおぉぉっ!!!
巨大なおならが発射されたかと思えば、次の瞬間、狼の体は空高くに飛んでいってしまいました。
「んあっ!?違っ……そっちじゃねぇ!くそっ、止まんねぇ……」
どうやら、照準が外れて地面に向けておならを発射していたようです。その勢いで、ロケットのように空高くに飛んでいったのです。
「んおおぉぉっ!!」
ぶびぃぃぃいいいっ!!ぼばあぁっ!ぶぶううぅっ!!どばああぁっ!
狼のおならは止まる気配がありません。それどころか、さっきよりも勢いを増して、空高く飛んでいっています。
「うわあぁぁっ!!」
ぶびぃぃいいい!!どばああぁっ!ぼぶっ……ぶうぅぅっ!
狼はとうとう大気圏を突破してしまい、宇宙空間に飛び出してしまいます。そして、その勢いでおならの勢いはどんどん増していきます。
「誰かぁぁぁ!止めてくれぇぇぇっ!!」
その様子を、三匹の子豚たちはレンガの家の中から呑気に眺めていました。
「おならロケット、すごーい!」
「これでもう安全だね!」
「狼さん、ばいばーい!」
やがて、おならは宇宙の闇に吸い込まれていきました。狼はもう、二度と戻ることはありません……