「ふぅ・・・」
水筒の中の水を一気に飲み干す。
シグレットは厳しい練習で汗まみれでグショグショだ。
龍人は種族的にあまり汗をかかないのだけど、このレスリング部の激しいトレーニングをした後は雨にでも降られたようになってしまう。
お気に入りの白いシグレットは漆黒の鱗の肌にぴったりと吸い付いて腹部の碧色が透けしまっている。
練習の後はいつもこうだ。
筋肉の形が外からバレバレになってしまって少し恥ずかしいけど、虎人や熊人に比べたらまだましだ。
アイツらは股間の一物の形もくっきりわかるほどべしょべしょになっている。
ほとんど丸出しみたいな状態でよく恥ずかしくないもんだ。
「リュウヤはまた動きが鋭くなったな。こりゃ、今年の七十二キロ級は期待できるなぁ」
狼人の神室ヒロシ監督が嬉しそうに俺の肩を叩いてくれた。
かつて百三十キロ級で戦っていた狼人は三十代後半になっても力強い。
溢れる活力をポロシャツにジャージズボンといういつものいで立ちで包んで、メンバーの背中を励ましがてら強く叩く。
他の部員からは馬鹿力と揶揄されるその衝撃も、好きな相手からなら天に昇る心地よさだ。
「はい、ありがとうございます」
友達から無愛想とよく言われる自分も自然と笑顔が浮かんでしまう。
監督は頷き返すと別の選手の所に行って指導を始める。
この大学はレスリングの強豪校だ。それだけ練習生も多い。大好きな人と話せる時間はごくわずかだ。
「お前、監督の事だと表情変わるよな」
熊人の同級生、クマイが俺の肩を小突く。
「別にいいだろ・・・好きなんだから・・・」
「ふーん、でもお前も知ってんだろ? 監督は老け專だって」
「・・・知ってる。しかも、デブ專でもあるし、ウチの学院長と付き合ってるって噂もある・・・」
「ひゅー、まじかよ。あのチビハゲデブでおまけに人間なのに俺らみたいに毛深い親父とかぁ・・・監督すげぇなぁ」
そうあのがっしりとした男らしい狼人の監督の好みは、チビでデブでハゲでよりにもよって毛深いオジサン・・・。
背が高くて、スリムで、立派なタテガミとツルツルの鱗の自分とは、全く違うタイプなんだ。
「なぁ、俺とかどうよ。お前のこと、満足させてやれると思うんだけどさぁ」
クマイが俺の手を掴んで汗で濡れたシグレットの股間に触らせる。
重量感のある熱い一物がビクビクと震えてそれだけで相当溜まっているのが分かった。
血走った瞳が俺の股間を凝視する。
こいつは別にゲイってわけじゃない。
龍人特有のスリットにチンポを突っ込みたいだけのただの性欲の塊だ。
このレスリング部にはこんな奴らがいっぱいいる。そのせいか自分のようなゲイにも寛容だった。
「タチるけど良い?」
「うっ、尻か・・・でも気持ち良いっていうしなぁ・・・」
「ばっか、本気にするなよ。自分は監督一筋なんだ」
少し残念そうな熊人を残して、練習が終わった同級生たちと共に真新しい更衣室へと向かった。
俺は監督に本気で惚れている。
監督の好みではないとわかっているけど・・・いつか振り向いてくれると良いなと思う。
練習が終わり、皆が思い思いに更衣室でくつろぐ中、俺と同じ一年生達はラフな格好に着替えると監督の周りにあつまっていた。
大好きな監督の話をすぐそばで聞きたくて俺はすぐ横に座り込む。
「良いかお前ら、旧校舎のロッカールームには亡霊が出る」
神室監督から注意事項として聞かされた話は、何だかオカルトチックな話だった。
それは二十年前、監督が学生の頃にこの大学で本当にあった話らしい。
「あれは俺が大学二年の頃だ。その時のレスリング部は弱小でな、それが悔しくて俺は良く閉門時間を過ぎてもこっそり練習していたんだ」
若い頃の監督もさぞかし男前だったんだろうなぁ。
などと若い監督を想像しながら話の続きを聞く。
どうも、練習が終わってロッカールームで着替えていると背後から視線を感じたらしい。
「ねっとりと舐めまわすような視線でな・・・背中の毛がぞわぞわして気持ち悪くってなぁ」
急いで着替えて帰ったのだが、翌日も、その翌々日も、深夜に着替えていると気持ち悪い視線を感じるようになったそうだ。
「んでな・・・ついに見ちまったんだ」
監督は皆の顔を確認するようにゆっくりと顔を動かす。
その瞳は当時を思い出してか、恐怖に濡れているように思えた。
「シグレットを脱いで素っ裸になったらよ。ケツに・・・何かがこすり付けられた感触がしてな。慌てて振り返ったらよ。チビハゲデブの人間の親父が裸で俺のケツにチンポを擦りつけてたんだ」
頭を抱える神室監督の姿が今日は子供のように小さく見えた。
「しかもそいつは、人間の癖に俺たちケモノみたいに毛深くてなぁ。いやぁその毛が油なのか汚れなのかぬめって気持ち悪いこと」
「あれ? でも監督ってデブ專でフケ專っすよね? それなら嬉しかったんじゃないっすか?」
お調子者の同級生の軽口に監督は首を大きく横に振る。
「ばっか、そりゃ生きてる人間ならいいけど死人にそんなことされても嬉しくねぇよ」
そりゃそうだ。
とういうかいくら好みの人でも、いきなりチンポを擦りつけられたら引く。
・・・まぁ監督だったら嬉しいけど。
「それでな、当時のレスリング部の監督・・・。いまの学院長に相談したんだ」
なんと、あの学院長はレスリング部の監督だったのか。
それにしては面影もないくらいに太って小さくなってしまっているけど。
「なんでもあのロッカールームにはな、学院長が現役選手だった時に変質者が侵入して頭を打って死んでしまったらしい」
あの学院長が現役って事は四十年以上も昔って事なのかな。
「どうも露出が趣味の変態親父だったらしくてな。死んだ後も亡霊になってたびたび現れては選手たちに己の裸体を晒したり触ったりしてきたんだと」
変態親父の亡霊。
亡霊が現れるだけでも恐ろしいのに、露出趣味の変態親父がそのままの姿で現れるなんてよけいに恐ろしい。
「それで有名な坊さんにお経をあげてもらってお札を張ってもらったら、ピタっと幽霊が出なくなったそうで今回もその坊さんに相談しようって話になってな」
学院長と監督は二人でそのお坊さんを訪ねると、数日前に亡くなってしまっていたことが分かったそうだ。
それでそのお弟子さんから新しいお札を貰い、学院長と監督がロッカールームに張ったらしい。
「それ以来、あのロッカールームでは視線を感じたりしなくなったんだが・・・今でもあのヌルっとした視線を感じることがあってな・・・」
監督はアラフォーとは思えない毛ツヤの体毛とフサフサの尻尾を震わせて、心底恐ろしい様子で俺たちに語る。
「だから、絶対にあそこには近づくなよ」
大好きな監督の言う事だ。
絶対に近づかないようにしようと心に決める。
「・・・なんで自分はここにいるんだ?」
塗装の禿げた壁。
チカチカと切れかけなのに取り換えられてない蛍光灯。
古い建物特有のカビの臭い。
ひび割れてくすんだ窓からは大きな月が見えている。
俺たちは先生の言いつけを聞かず、旧校舎のロカールームに肝試しに来ていた。
「お前だって、監督の私物が残ってるかもって言ったら乗り気になったじゃん」
俺とペアを組んだクマイがもはや使われずボロボロになった古いシグレットや筋トレ道具を物色する。
ロッカールームに行った証明として何か持ち帰らないといけないのだ。
「しかし、卒業した先輩たちの残していったモノって結構あるんだなぁ、おっエロ本みっけ」
熊人は幽霊が怖くないのか、ロッカールームを物色するのに夢中だ。
自分も監督の私物があるかもしれないと近くのロッカーを開く。
「うっ・・・」
少し開けただけだ中から年月とともに籠った臭いが漂ってきた。
閉めてしまおうかと思ったけど、古いシグレットの肩紐が見えたので手を止めた。
もしかしたら監督のものかもしれないと思ってしまったんだ。
ゆっくりと錆びたロッカーが開いていく。ツンっと鼻を刺す臭いに目を細める。
その視線の先に薄汚れた赤いシグレットが無造作に押し込められていた。
(もしかしたら監督の物かも・・・)
淡い期待とともにその汚れたシグレットを掴んで、ロッカーの外に引っ張り出す。
ビリリッ
「えっ?」
何か紙が破けるような音が聞こえた。
音を頼りにロッカーの奥をよく見ると、そこには破れたお札が張ってあった。
何かの理由でお札とシグレットがくっついていて、それを引っ張ったのでお札が敗れたのだ。
(もしかして悪霊を封じたお札ってこれ・・・?)
途端に背筋に気持ち悪い視線を感じた。
ねっとりと舐めまわすような。鱗の一枚一枚の裏側さえも観察するような。どす黒い情念。
「どうした?」
クマイがそんな自分の気配に気づいたのか、エロ本鑑賞をやめて声をかけてきた。
慌ててロッカーの中にシグレットごと破れたお札を入れて扉を閉じる。
「な、なんでもない。さっさと戻ろうぜ」
なんだかひどくマズい気がして隠してしまった。
大好きな監督が行くなといった旧校舎のロッカールームに行き、しかもお札を破いてしまったんだ。
神室監督と付き合う事は出来ないにしろ、嫌われたくはない。
「そうだな。とりあえず俺の戦利品はこのエロ本だな。お前はそのジョグストか?」
「えっ?」
熊人が指さす自分の手には、いつのまにか汚れたジョックストラップが握られていた。
こんなものを手に持った覚えはない。
「あ、ああっそうだな」
ここで慌てるとお札の事がばれてしまうと思いまた嘘をついてしまった。
自分たちは汚れたシグレットをポケットに突っ込んで仲間たちの元へと帰っていく。
「あー、疲れたぁ」
アパートに戻てベッドに倒れ込む。
あの後、特に何事も無く他の仲間達も旧校舎のロッカールームに行って戦利品を持ち帰ってきた。
その戦利品でバカ騒ぎしている仲間達を見ているうちにお札を破いたことが気にならなくなってきた。
何年も経っているんだから幽霊も成仏したんだ。きっとそうに決まっている。
お札を破いた時の気持ち悪い視線もいつの間にかなくなっていて、自分もそのバカ騒ぎの輪に加わって一晩中楽しんだ。
帰ってきたのは明け方近く。
今日は練習もない。
このまま昼まで眠ってそのあと自主練しよう。
心地よい眠りが身体を包んでいく、目をつぶればすぐにも眠れる・・・そのはずだった。
「・・・あれ?」
ふと手に何かが握られているのに気付いた。
眠い目をこすり手を開く。
「えっ・・・なんでこれが・・・」
それは汚れたジョックストラップだった。
旧校舎のロッカールームから持ってきた戦利品。
あのバカ騒ぎの中、他の戦利品と同じく新校舎のロッカールームに置いてきたはずなのに。
ポケットから出し忘れていた?
いや、クマイがふざけて身に着けようとしたのは覚えてる。だから、ポケットからは出したはずだ。
じゃあ、うっかり持ってきてしまったのか?
汚れたジョックストラップは、白い前袋に黄ばんだ染みも浮いていて、かなり臭う。
そう言うのが趣味な人なら喜ぶのだろうが、正直言って自分は汚いのは嫌いだ。
だからこんなもの持ち帰るはずがない。
手の暖かさのせいなのか、汚れたジョックストラップは先ほどよりも更に強い臭気を放って自分の鼻先を痺れさせる。
そのしびれが龍の髭を震わせ、自分の頭を震わせ、やがて全身を震わせた。
「うっ、なんか・・・」
下半身がムラムラする。スリットの奥まで痺れが届いて触りたくなる。
「はぁぁ」
空いていた手が別の生き物のようにハーフパンツの中に入っていった。
縦に線を引くように浮かぶ割れ目を指でなぞる。
「っく!」
快感で身体がビクリと跳ねてしまった。
一体どうしたんだ?
指を割れ目に這わせているだけなのに、普段してる自慰よりも感じてしまう。
こんな状態で中に指を入れたら・・・。
クプッ
「んっっ!!」
強烈なタックルを受けたような衝撃。
スリットと指の隙間から暖かくて気持ち良いのがこぼれてく。
「はぁぁっ」
中で固くなった自分のチンポが熱い。
自分のじゃないみたいにびくびく震えてもうイキそうだ。
ふと手に持った汚いジョックストラップの臭いをかぎたくなった。
いや違う、舐めたい。しゃぶりたい。
そのツンと臭う雄の香りを、汗と尿と恥垢の味を堪能したい。
絶対に嫌だ。
こんな汚いモノをなぜ口に入れたいと思ったのか。
ああ、でもスリットの中はその想像だけでグチュグチュに濡れてしまった。
二十年の時間経過によって汚れはバイ菌の温床になっているはずだ。
毒にも近いそんな汚物を口になんか入れたくない。
(せやけど・・・神室監督のジョクストかもしれへんで・・・)
悪魔の囁きが聞こる。
そんなはずない。監督が使っていたモノのはずがない。
あの逞しくてかっこいい笑顔が素敵な監督のジョックストラップの訳がない・・・。
でも、なんだか目の前の汚れたジョックストラップがとても美味しそうに思えてきた。
鼻を突く臭いも、熟成されたチーズにように香ばしく素敵な匂いに感じてくる。
「はぁはぁ・・・監督っ監督の・・・」
いつの間にかスリットから飛び出していたチンポを激しく擦る。
身体が燃えるように熱く、汗がベッドを濡らす。
クチュクチュクチュクチュ
汚いジョックストラップを見ながら自慰にふける。
その形状やシミのひとつひとつ、糸のほつれや、感触を脳に焼き付ける。
そしてそれを履いている神室監督を想像する。
二十年前と行くことは、いまのがっしりとした体形から少し脂肪が無くて、もっと筋肉の線が浮き出てる。
フサフサの尻尾をジョックストラップの後ろからたなびかせて、プリっとした尻を晒す後ろ姿。
そして監督の大きな一物を覆うサポートポーチ。きっとこれをパンパンに押し広げていたに違いない。
「あああっ監督っ!」
想像の中の監督のチンポに触れるように、自分はジョックストラップを舐め、そしてしゃぶった。
舌が壊れるような苦みも痺れもすべては監督のモノだと思うだけで幸せだった。
「んっんんんっんんっ!」
想像の中で監督のチンポがジョックストラップごと入って口内を犯す。
自分の顔を掴んでグポグポと激しく腰を動かしてくる。
(リュウヤは俺のチンポが好きなのか?)
想像の監督が話しかけてくる。
そうです、監督が、監督のチンポが好きなんです。
龍人の長く細い舌をジョックストラップの布地越しに巻き付けて懸命に奉仕する。
(おぉ・・・ええ気持ちや。これがフェラか)
そうですこれがフェラです。気持ち良いですか?
自分はあまりやった事が無いので監督を気持ちよくできてるでしょうか?
(おうおう、気持ちええでもう限界やっ)
良かった。監督が気持ち良いのが自分の幸せです。
ああ、もう自分も限界でっ。
(よっしゃ、一緒にいくでっ!)
「んんっ!」
頭の中が真っ白になった。
スリットから飛び出たチンポが爆発したように射精した。
口の中にも監督のザーメンが広がるのを感じる。
いや待てよ。
どうして想像の監督のザーメンが口の中に?
大体、監督はこんな大阪弁なんてしゃべらないぞ。
そんな疑問を押し流すように、ザーメンは勢いを増して喉奥に入り込み、ついには自分の胸まで届いた。
「ぐっああっ」
燃えるような熱が胸から広がっていく。
首筋に臍にそして射精したばかりの股間に向かって火が走る。
「んんっ」
自分の中で何かが変わっていく。
ザーメンが混ざりこんでそれが自分の漆黒の身体に熱とともに外に伸びていく。
「はぁっ」
それが着ていたシャツやハーフパンツの中で蠢いてる。
なんだかムズムズする。何かが自分の鱗を這いまわっている。
「んあっ」
シャツの胸元から金色の炎が溢れた。
それはワサワサと自分の胸板を覆っていく。
「なっ毛っ?」
金色の炎はゴワゴワの毛だった。それは燃えるような熱を感じた自分の身体から次々と生えていく。
龍人の自分にこんな体毛なんて・・・親戚でも見たことがない。
「うっくぅぅぅ」
金色の体毛は胸に生い茂り、割れた腹筋からスリットへと太い線を引いて股間にまるで人間族のような陰毛をはやす。
「あっががっ」
金色の炎は腕や脚に、そて脇にもその濃い体毛を生やした。
そして顔にも金色の体毛が生まれる感触がする。
「いったいどうなって・・・」
体毛が生えるとともに熱がひいていく。
全身をまさぐりながら急いで洗面台に向かう。
いつも見慣れた鏡の中には、金色の濃い体毛と無精ひげを称えた黒光りする肉体の龍人が映っていた。
(おうおう、最初の一発で俺の体毛がそっちにも移ったなぁ)
鏡の奥に気持ち悪い笑顔を浮かべた人間の男が現れた。
チビでハゲでデブで粗末な一物をぶら下げて自分の背後にピッタリとすり付いている。
「わわっ!」
慌てて振り払うけど何の感触もない。
振り返っても誰もいない。
再び鏡を見ると確かにこの不気味なオヤジはニヤニヤと笑って自分の身体に汗の浮かんだ肥満体を擦り続ける。
(はぁぁ兄ちゃん俺のタイプだわぁ。真面目そうで筋肉で引き締まってて・・・。長い事封印されてたかいがあったわ)
「な、なんなんですかっあんたはっ!」
(俺はあのロッカールームにいた悪霊や。兄ちゃんが札を剥がしてくれたからようやく自由になったわぁ)
そう言ってオッサンは恍惚な表情を浮かべて身体を小刻みに震わせた。
それはまるで小便をしたような射精したような・・・。
「ひっ、まさかイッたのか!?」
(うぅ、残念ながら憑りついた奴が射精しないと俺もいけんのや。兄ちゃんもっと射精してくれんか?)
「馬鹿なこと言うなっ!」
(ほら、兄ちゃんの手に持ってる神室監督のジョクストでオナニーしようや)
手の中にまた汚れたジョックストラップが現れた。
確かにベッドに放り投げてきたのに。
(ほれほれ、もっと気持ち良くなって俺と同じになろうや・・・)
さっきよりも強烈な臭いを放ち始めたそれに陰毛に覆われたスリットがジンジンと感じ始める。
これで割れ目を包み込んでチンポを擦ったらどんなに気持ち良いんだろうか。
(臭くて汚いので生まれ変わったオチンポのバージンとってもらおうや・・・)
陰毛の生い茂る割れ目から自分のチンポがムクムクと顔を出し始める。
さっきあんなに出したのにもうこんなに硬くなって暴発しそうだ。
だけど・・・。
「騙されないぞ・・・この悪霊め!」
台所に走り塩の瓶を掴んで周りに投げる。ついでにちょっともったいないけどジョッグストラップにも塩をドバドバとかける。
塩のせいかムラムラした気持ちも収まり、さっきまで魅力的に見えていた汚い下着もただの塩漬けになった布にしか思えなくなった。
(あらら、やっぱ龍人ってのは霊的に強いんかの)
まだあのオヤジの声が聞こえた場所に、手に持っていた塩を全てぶちまけた。
(こりゃたまらん)
その言葉を最後に、気持ちの悪い気配が消えていった。
しばらく身構えていたが戻ってくる気配はない。
「ふぅ・・・何とかなったのか・・・ああ、でもどうしようか」
塩まみれになった部屋と精液まみれのベッドを見つめる。
とりあえずひどく疲れた。
眠気がずっしりとのしかかり、瞼を重くする。
「・・・とりあえず寝るか」
精液まみれのベッドに倒れ込む。
意識を遠くに手放しながら、そのザーメンの臭いと感触がどこか心地よく感じた。
着信音が耳に刺さる。
寝ぼけた頭を左右に振って携帯を探す。
「・・・はい、もしもし」
「リュウヤか。神室だが練習出れるか?」
「練習・・・? げっ!」
テレビをつけて日付と時刻を確認する。
なんとあの日から丸一日眠っていたようだった。
「はいっ! すみません、すぐ行きます!」
「おうっ、待ってるぞ」
しまった。しまった。本当にどうしてこんなに眠ってたんだ。
急いで練習着とタオルを詰め込んで家を飛び出す。
普段ならシャワーを浴びてからでるけどそんな暇はない。
自転車に飛び乗り、大学へと急いで向かう。
「すみません、遅れました!」
更衣室に入る前に練習場で頭を下げる。
みんなびっくりしたようにこっちを見つめてくる。
「お前が遅刻なんて珍しいな」
休憩中のクマイが話しかけてきた。
しかし、すぐにその表情が曇る。
「・・・お前、すげぇ臭いぞ」
「え?」
慌てて自分の臭いを嗅ぐ。だけど別に臭いとは思わない。
「なんつうの・・・イカくせぇし、汗くせぇし・・・。 はやく、シャワー室でその毛深い身体洗ってこいよ。 そんなにくせぇと誰もお前と組んでくれねぇぞ」
いつもヘラヘラ笑っている熊人が顔をしかめながら注意したという事は相当臭いんだろう。
確かにザーメンまみれで寝てしまったし・・・ん、というか毛深い身体って言ったな。
慌ててたから忘れてたけど、自分の身体に金色の体毛が生えてる事にだれも驚いてない。
「一体どうして・・・」
呆然と練習に励むみんなを見渡す。誰も自分のTシャツから溢れるほど飛び出た体毛など気にも留めていない。
あまりにも無反応で何だか拍子抜けしてしまった。
「お前、男しかいないから良いけどよ。チンポってかスリット掻くなよ」
クマイのツッコミに手をハーフパンツの中に突っ込んでいるのに気が付いた。
またやってしまった。
昔から無意識にパンツの中に手を突っ込んで毛深いスリットをボリボリと掻くクセが抜けない。
だって毛が濃くて蒸れるんだから仕方ないじゃないか。
そう思った瞬間、自分がこの身体に慣れ始めているのに気が付いた。
勝手に記憶まで書き換わってる・・・。
驚く自分の表情を、クマイはさっきの言葉で傷つけてしまったのかと勘違いしたらしく「とりあえずシャワー浴びようぜ、なっ」と言って何だか優しく接してくれた。
うながされるままにシャワー室に入っていく自分を見届けて、クマイは自分の練習に戻っていく。
シャワー室は板だけで区切られていて、鍵なんてかけれるようなお上品な物じゃない。
プライバシーも何もないその一室にフラフラと入って、昨日から着ていた服をもぞもぞと脱ぎ捨ててコックを捻る。
ジョボジョボと弱々しい音が聞こえた後、勢い良く熱い湯が飛び出してきた。
汚れていた漆黒の鱗と金色の体毛が、湯によって綺麗に洗われていく。
改めて変わってしまった自分の身体を見つめる。
筋肉や体形には何の変化もない。ただ龍人にはありえない体毛がびっしりと生えたのだ。
脇をあげるとその肉の窪みに金色の塊がみっしりと群生し、鼻を近づけると湯をかけているのにツンとする臭いがする。
そして記憶だ。
突然体毛が生えた記憶はもちろんある。
だけどそれとは別に、中学から体毛が生え始め、そのケアと痒くなる股間につい手を入れてしまうクセを何度も注意された事を覚えている。
「悪霊のせいなのか?」
あの悪霊は、体毛が移ったと言った。こんなの移ったなんてレベルじゃない。
体毛が生えている事にされてしまった。
どうしてこんな事に?
もしかしてあの幽霊オヤジのザーメンを飲んでしまったから?
いやでもあのチビハゲデブ親父は自分じゃ射精できないとも言ってた。
もしかして、自分が射精してしまったから、こんな風に毛深くなったんじゃないだろうか。
そしてそれがまるで事実であるかのように現実が変わってしまったのだとしたら・・・。
(なかなか察しがええなぁ)
耳元で囁かれた。
周囲を見渡しても誰もいない。
慌ててシャワー室を飛び出して全身鏡の前に移動する。
「あっ!」
(へへっ、兄ちゃんよく眠れたか?)
鏡には自分の身体にぴったりとくっついているチビハゲデブで毛深い人間のオヤジがいた。
相変わらず脂肪がついた短い腰を卑屈に動かしてチンポを擦りつけている。
「くっそ。まだ居たのか」
(そりゃそうや。あんな塩ごときで簡単に成仏してたまるか)
気持ち悪い笑みを浮かべてヘコヘコと腰を動かし続ける。
よく見ればその身体に生えた真っ黒な体毛は、自分の今の体毛と全く同じ形な事に気づいた。
胸から股間にかけて繋がったギャランドゥ。脇から飛び出るほどのわき毛。
そして昨日は気づかなかったが、背中を鏡に向けたら自分の筋肉で盛り上がった尻肉に金色の濃いケツ毛が渦を巻いている。
「げげっなんだよこれ」
(いやぁ龍人に体毛が生えてるのもええもんやなぁ)
「くっそ、こんなの剃ってやる」
(はは、無駄無駄。俺だって何度も剃ったけどその度に力強く生えてきよる。我が身体ながら面倒なことやで)
「そんな・・・」
(なぁなぁそろそろムラムラせんか? 若いんやから一日で金玉パンパンやろ? いや龍人だから金玉ちゃうか)
言われてみれば何だかスリットがムズムズしてきた。
こんな誰が来るかもわからないロッカールームでチンポをいじりたくなってくる。
いやそれが凄くイイ。
自分の毛深い身体からそそり立つチンポを擦ってるのを見てほしい。
でもいくら性に寛容なこのレスリング部でもロッカールームでオナってたら引かれるのは間違いない。
さっき身体が臭いと言ったクマイのしかめっ面。あんな蔑んだ表情で自慰をする自分の姿を見てほしい。
「あっあぁっ」
(ええこや、オッサンもビンビンやで)
おかしい。おかしい。変だ。こんなの自分じゃない。
別の誰かの意思が、興奮が流れ込んでくる。
もしかしてこのオヤジなのか?
ああっ、そうだ。やばい、意識したら増々この変態オヤジが流れ込んでくる。
(ほれほれ、割れ目からチンポ出てきたで。オッサンと一緒に気持ち良くなろうや)
足がふらふらと動き。手がクマイのロッカーを開ける。
服やエロ本が散らかったその中から導かれたように靴下を手に取った。
「うっ・・・」
悪臭が鼻につく。いったいこのロッカーの中でどれくらい放置されてたのか。
ああでも・・・なんて美味しそうなんだろう。
クマイのどっしりした男らしい身体が頭の中にちらつく。
熊と狼の違いはあるけど、重量級の体格はどことなく監督と似ている。
(その美味そうな靴下つかって気持ち良くなろ?)
幽霊オヤジの声が頭の中に何重にも聞こえる。
何度も繰り返される言葉の波が、変態親父の意思なのか自分の意思なのかわからなくなってくる。
「ううぅ」
割れ目から覗くチンポの先端。透明な蜜が糸を引いて足に垂れ落ちる。
もうだめだ・・・チンポ、チンポこするぅぅ。
「リュウヤまだ着替えてたのか?」
ドアが無造作に開かれて狼人の顔がのぞき込んできた。
大好きな神室監督の男臭い顔に、自分は正気に戻り慌てて股間を隠す。
「あっ、はい。そうなんです。遅くなってすみません」
「・・・そこクマイのロッカーだろ?」
しまった。自分のロッカーは反対方向だ。
「あーえっと、獣毛用の制汗スプレー借りようと思って。ほら、自分は龍人のくせに毛深いから」
言い訳に忌々しい体毛を使うのが悲しくなる。
だけどそのおかげか、監督のいぶかしげな表情はほぐれ、その大きな尻尾を揺らしながらロッカールームに入ってきた。
「そうだなぁ。お前は龍人には珍しく体毛が凄いからな」
そう言って監督の大きな手が無造作に自分の胸毛を撫でる。
「か、監督・・・?」
「いやぁいつみても惚れ惚れするような胸毛だな。漆黒の鱗に金色の体毛・・・かっこよくて俺は好きだぞ」
え、いまなんて?
監督が。神室監督が、俺のことを好きって言った?
本当に?
「あー、なあ今度食事でもどうかな? 美味い焼肉屋を知ってるんだ」
えっえっえっ、これってもしかしてデートの誘い?
「あっあの、監督って学院長と付き合ってるんじゃ?」
「学院長とはその・・・まあ昔に付き合ってただけだ。いまは向こうも結婚してるしな」
「あ、そうなんですか」
「で、どうかな?」
監督の顔が近い。
いまにも口を奪われるようなその距離に胸が高鳴る。
(ええなぁ・・・青春やなぁ)
それに水を差すかのようにアイツの声が聞こえた。
鏡を見るとニヤニヤと笑いながら、監督にその汚い手を伸ばそうとしている。
「うわっよせっ」
慌てて後ろに下がり監督から離れる。
(ちっ)
オヤジは憎たらしそうに俺を睨むと、またヘコヘコと腰を動かしてチンポをこすり付け始めた。
どうやらこの悪霊は自分の身体から離れる事が出来ないみたいだ。
「すまん、ちょっと近すぎたか」
突然離れたことで監督が勘違いして、きまづそうに頭をかく。
違うんです。幽霊を監督から離そうと・・・。
でもこんなこと言っても信じてもらえないだろう。
くっ、折角良い感じだったのに。幽霊のせいで・・・。
とにかく、このオヤジを何とかしないと。
「あの・・・、監督。二十年前にお札を貰った人ってどこの誰なんですか? ちょっと興味があって」
「ん、お札ってあれか、旧校舎のロッカールームの事か? たしか白虎寺って名前の寺でな。寺の名前は白虎なんだが住職は人間でな。遺影の男臭い顔が俺好みでなぁ・・・」
なんだろ、先生って結構欲望に忠実なタイプなのかな。
「白虎寺ですね。ありがとうございます」
名前だけわかれば後は調べればなんとかなりそうだ。
電車で行けるところにあると良いんだけど。
「お前まさか幽霊とかに悩んでるのか?」
「あっ、えーっと」
どうしよう。言った方が良いんだろうか。あのロッカールームのお札を剥がしてしまった事。
でもそうすると、いま自分の身体に起こっていることも説明しないといけないだろう。
せっかく、監督が興味を持ってくれているのに・・・。
「じゅ、授業のレポートで仏教関係を調べてるんです。それで昨日の話にあったお札に興味があって」
「そうかレポートか。 結構遠いから俺が車で送ってやろうか?」
「あ、大丈夫です」
くっ、幽霊が関係なければ車デートができるチャンスなのに・・・。
少し残念そうな監督から離れて自分のロッカーへと行き、そそくさと練習用のシグレットに着替える。
後ろから監督の熱い視線が自分の尻に向けられているのが、ロッカー備え付けの小さな鏡で見えてしまった。
きっともしゃもしゃとジャングルのように尻の谷間に生い茂った金色の体毛を見ているのだろう。
その鼻先は伸びきっていて、これまでの自分には向けられたことの無いスケベな表情だ。
「それじゃ練習場に行きます」
「おう、俺も少ししたら向かうからよ」
「はい」
ロッカールームから出て少し歩く。
(なあ、そっと戻ってみい)
変態オヤジの声が耳元で聞こえた。
「なんだよ・・・、なんでだよ」
問いかけるが何の返事もない。
戻った方が良いのか。それとも何かの罠なのか・・・。
なぜか胸がドキドキと高鳴る。
足を止め、静かにロッカールームへと戻っていく。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い呼吸音。ロッカールームの中から聞こえる。
そっと扉を開け、その隙間からのぞき込む。
なかには神室監督しかいないはずだ。
「うっくぅぅ」
その細い隙間に神室監督があられもない姿をさらしていた。
さっきまで着ていたポロシャツとジャージズボンを脱ぎ捨てて、全裸になって屹立した一物を擦り上げている。
「リュウヤっ、くぅ・・・くっせぇ」
その手には自分がさっきまで着ていたザーメンと汗で悪臭のただようTシャツが握られていた。
それを鼻に近づけて深く息を吸いながらオナニーしている。
(どうや・・・ええもん見れたやろ?)
神室監督は自分に発情しているのだ。
どうしてだ。前の姿の時はそんなそぶり全く見せなかったのに。
身体から体毛が生えて、臭くなったからなのか。
監督のタイプに近づいたからなのか。
(なあ、オナニーしようや。そんでもっと監督好みの男になろうや)
アイツが囁く。スリットが疼く。
監督が太くて長い一物をギンギンにして自分をおかずにオナってる。
でもそれはいつもの自分じゃなくって・・・毛深くて臭い自分で・・・。
「絶対、祓ってやるからな」
悔しくて練習場まで走った。
こんな変態オヤジのせいで自分の恋が成就してたまるか。
(青春やなぁ・・・)
ぽつりと聞こえたその声を無視して、練習を始める。
「おいおい、何だか気合入ってんなぁ」
クマイの言葉も無視して、その日はいつもの倍も練習に打ち込んだ。
流れ落ちる汗が体毛を濡らし鱗にぴったりと張り付いても休むことはせず、ただひたすらに身体を苛め抜く。
「うおぉぉりゃぁぁ」
似合わぬ雄たけびを上げてクマイにタックルを仕掛け、見事に投げ飛ばした頃にはすっかり日が落ちて夜になっていた。
「もう今日は帰ろうぜ」
へとへとのクマイと共に汗を流し、ロッカールームで着替えをする。
新しい服に袖を通して、ザーメンと汗まみれの・・・監督が使ったTシャツはそのままゴミ箱に捨てた。
「クマイ、明日はちょっと練習出れないから」
「え、お前が休むなんて珍しいな」
きょとんとするクマイを残して、校門に向かって歩きながら携帯で白虎寺の場所を検索する。
電車を乗り継いでいけば何とか一日で帰ってこれそうだ。
お寺のサイトには今の住職さんの顔写真も載っていた。
どうも今の住職は寺の名前と同じく白い虎人のようで、年齢は六十歳。琥珀色の瞳が印象的な人だった。
「よし、朝一で行くぞ」
そう言って携帯から顔を上げると、校門の前にまさしく先ほど見たあの白虎が佇んでいた。
僧衣姿で誰かを待つように周囲を見渡している。
ふと、自分と目が合った。
「失礼ですが・・・何かに憑かれてませんか?」
開口一番。夕闇の中で琥珀色の瞳が怪しく光る。
それで分かった。この人には見えているんだ。
「あの、旧校舎のロッカールームのお札を破いちゃって・・・」
言った途端にその表情がにわかに曇り、強い力で手首を掴まれてしまった。
「詳しくお聞かせください。その霊は私の父の仇なのです」
琥珀色の瞳が闇の中でいっそう輝きを増す。
その強い決意のような光に気圧されて、ついつい自分の家まで住職を招いてしまったんだ。
「私は白雲と申します」
ザーメンの臭いが漂う部屋の中で、正座をし深々と頭を下げる白雲さんの身体からは線香とお茶の香りが漂っていてとても心が落ち着く。
「さて、貴方に憑りついている悪霊ですが・・・どんな姿をしていますか」
「えーっと、チビでハゲでデブの毛深い人間のオッサンです」
「・・・それはこのような姿ではないですか?」
そう言って一枚の古い写真を手渡される。
写っているのは幼い白虎とその傍らで笑うチビでハゲでデブの毛深い人間のオッサン・・・。
「えっ、こいつです! こいつが悪霊です!」
「やはりですか・・・この人は私の父。先代の住職の白水です」
「え、父親。あの悪霊は白虎寺の住職だったってことですか?」
「いえ、それは違います。あの悪霊は私の父親ではありません。・・・呪いによってこのような姿に変わったのです」
「え・・・?」
そう言って、白雲さんは語り始めた。
それは四十年前に遡る。
あの変態オヤジが旧校舎のロッカールームに侵入して足を滑らせて死んでしまった直後からの話だ。
「私の父である白水は、当時の学院長からの相談を受けてあの変態オヤジと相対したのです。あのような見た目ですが、なぜか霊力だけは異常に高く。現実すらも歪めるその力に苦労しましたが、父はようやく札を使って封印したのです」
遠い過去を見つめるように琥珀色の瞳が愁いを帯びる。
いったいその瞳の向こうで何を思い出しているんだろう。
「封印した次の日からです・・・。父の姿が日増しに変わっていくのです」
「変わっていく?」
「はい、元々は父も私のように逞しく精悍な白虎でした。しかし、その姿がブクブクと太り始めたかと思うと、背は腰ほどばかりに小さく縮み、雪のように白い毛は抜け落ち、あの悪霊と同じような醜い人間の姿に変わったのです・・・。しかも、この写真のように現実も改ざんして」
写真を見つめる。
その古ぼけた写真に写る幼い白虎と人間は確かに親子のようにも見えた。
話を聞くと、この写真は五十年ほど前に撮られた物。つまり悪霊と戦う以前の物だという。
「周りの者もみな変わり果てた父を、白虎寺の住職として何の違和感もなく受け入れていました。私自身も父は昔から人間だったと思ってしまうくらいに、その心やその笑顔は以前の父と変わりなかったのです・・・ですがそれは表面上だけの事だったのです。」
白雲さんは懐から袱紗を取り出すと、汚れたカーペットの上でゆっくりと広げた。
その中に包まれていたのは黄ばんだ越中ふんどしだった。
祖父が履いていたのをよく見ているが、黄ばんでいる以外に特に目立ったものはない。
「私の物です。あまりに臭かったので洗い清めました」
悲し気な顔で白雲さんは更に語った。
すっかり白水さんは呪いで変態オヤジそっくりの見た目になってしまったが、その精神は立派な住職のままで、檀家さんの家をよく回り、住民からの相談事に親身になって応えていたのだという。
父親が元々は白虎であったことを覚えているのは息子の白雲さんだけ。
彼が黙っていればすべてが丸く収まるとそう考えていたそうだ。
「とある満月の夜。その日、私は同級会で夜遅くに寺へと帰っていたのです。人気のない夜道を月明かりを頼りに歩いていると山の奥から呻き声が聞こえてきました」
白雲さんは不思議に思い。その声のする方に歩いて行ったそうだ。
木々と藪に覆われた山の中、呻き声は増々大きくなってそれが獣の嬌声だという事に気が付いたそうだ。
「そしてその声に私は聞き覚えがあったのです」
声を聴き、高鳴る鼓動を抑え込み、静かにその声の元をのぞき込むと、そこには全裸になった白水さんが口に褌を含みながら、大木の洞に腰を打ち付けていたんだそうだ。
「・・・あぁ、父は魔性に魅入られたのだと。深く絶望した事を覚えています」
父親にそれとなく聞いても本人は全く覚えていないようだった。
だけど父親の部屋を調べるとその時に使っていた褌。・・・白雲さんの汚れた越中ふんどしが出てきたのだそうだ。
彼はそれを涙を流しながら元の場所にそっと戻し、変わり果てた父親のための供物として亡くなるまでそのままにしておいたそうだ。
「あの日以来、私はあの霊の事を調べ続けました。二十年前はお札を渡して封印するしかなかったのですが・・・今ならあの悪霊を成仏させることができるかもしれません」
白雲さんは厳しい顔で自分の背後を睨んだ。
きっと彼には見えているんだろう。
ニヤニヤといまも俺の耳元で自慢げに囁く変態オヤジが。
「・・・二十年前にお札を使ったって事は、もしかしてまた誰か呪われたんじゃ」
「・・・はい、いまの学院長さんは元々はタテガミの立派な獅子人でした」
「え、じゃあ今の姿は呪いで変わった姿ってことですか」
確かに言われてみれば、あのチビハゲデブ学院長は憑りついている変態幽霊に似てる。
という事はそれに惚れてる監督は元々はその獅子人が好きだったって事なのか?
「私は札の破れた気配を感じ、いまが戦いの時だと山を下りてあなたに会いにきました」
「自分にですか・・・」
「教えてください。あの悪霊に何か言われませんでしたか」
自分はこれまであった事を全て話した。
肝試しでお札を破った事。
オナニーをしたら身体から体毛が生えた事。
悪霊はしきりに射精させたがっている事。
そして、身体が変わってから監督にアプローチされたことも話した。
「・・・そうですか。あの時の生徒さんが監督に。恐らくですが、あの生徒さんは私から見てもわかるほど獅子人の学院長に惚れていました。惚れた対象がオヤジ化してしまった事でその好きな事も改変されてしまったんだと思います」
「ってことはあれですか。神室監督のフケ專でデブ專なのって呪いのせいなんですか?」
「おそらくは」
なんてことだ。まさか監督の性癖が呪いによって生まれたものだなんて。
「あの・・・悪霊を消したら呪いって消えますか?」
「それはわかりません。しかし、可能性はあるでしょう」
なら・・・神室監督と真面目にお付き合いできるかもしれない。
身体だけじゃない。心からの恋愛。
(若いねぇ。まぁ俺は簡単には消えへんけどな)
幽霊オヤジが馬鹿にしたように笑うのが聞こえた。
くそっ、絶対に消してやる。
「しかし、射精か・・・。やはり生前の・・・」
白雲さんはブツブツと独り言を呟いて何か考え事をしていた。
壮年のようだけど白虎人だからか白髪などは見えず、修行で鍛えたのか逞しい身体に僧衣を身に着けた姿は絵になる。
というかカッコイイ。
(お、オナるか? こいつの目の前で、こいつの親父みてぇによ)
聞いた瞬間、腰のあたりがピクリと動き、そこからじんわりと欲求が広がる。
この人の目の前でオナニーなんて、そんな事・・・そんな気持ちよさそうな事・・・。
スリットが震える。チンポがひくつく。
この人の前で性器を晒してオナニーを始めたら、この精悍な虎人はどんな顔で自分を見てくれるのか。
シャワーを浴びたばかりなのに蒸れ始めた陰毛やわき毛にどんな軽蔑の眼差しを投げてくれるのだろう。
ああ、目の前にこの人の褌がある。綺麗に洗われてしまっているのが残念だけどこれを使ってチンポを擦ったら、琥珀色の瞳で射貫いてくれるだろうか。
「リュウヤさん。しっかりしてください」
顔に塩を投げられて意識がはっきりした。
気が付けばパンツを半ばずり下げて手には褌を掴んでしまっている。
「・・・どうやら悪霊はあなたに自慰行為をさせて己と同一の存在にしたいようですね」
「ううっ、すみません」
「謝らなくても良いんです。きっと私の父も学院長さんもそうやって性衝動に抗いながら、変わってしまったんでしょうね」
「どうすればいいんでしょうか?」
「この霊の生前の願いを叶えて成仏させてやることです」
「願いを・・・」
この変態オヤジの願いなんて碌な物じゃないのではないだろうか。
でもそれが出来なければ、自分はこの変態オヤジになってしまう。
「失礼します」
そう言って、白雲さんは自分の顔に近づくと整った形のマズルで髭面の顔に触れた。
「んっ!?」
突然のキス。しかも舌が入ってきた。
(おおっ、こりゃ最高やで!)
後ろで喜ぶ変態オヤジの声とその快感が伝わってくる。
舌は自分の舌と絡み合い唾液を飲み合うと、ツップリと糸を引きながら離れていった。
「石井タロウよ。私の声が聞こえますね。お前の望みは童貞を捨てる事でしょう」
(げえっどうして俺の名前を)
「警察の知り合いに調べてもらったのです。そしてその調査で生前のお前の日記を見つけたのです」
(ぐあぁぁぁ! そんなっくそっ)
凄い。この悪霊がこんなに苦しんでる。やっぱり日記を他人に見られるのって辛いんだなぁ。
あれ、でも白雲さんと変態オヤジが普通に会話できてるな。
「ふふっ、接吻した事で私にも悪霊の声が聞こえるようになりました」
「あっ、あのキスはそんな意味が」
「もちろんそれだけではありませんよ」
そう言って自分をベッドに押し倒した。
ベッドはザーメンの臭いが発酵して相当臭いはずだが、白雲さんは少しも気にしていないようだった。
「日記を読んでわかりました。この悪霊は自分の容姿を卑下し、溢れる性欲と仕事のストレスでもみくちゃにされながら、露出行為に走っていくのです。醜い己を求めてくれる人を探して」
白雲さんは話ながら僧衣を脱いでいく。
鍛えられた筋肉の隆起が純白の毛皮越しでもわかる。普段レスリングで鍛えている自分と同じ位発達していくんじゃないか。
とてもではないけど六十歳には思えない肉体だ。
「それは次第にエスカレートしていき。公園、路上、そしてとある大学に侵入した所で足を滑らせて死んでしまったのです」
ついには越中ふんどし一枚になると自分の割れ目の上に、薄布に覆われた尻の谷間をあてがう。
「・・・その日記にはつねに誰かを犯したい欲望が書かれていました。しかし、誰もタロウのことなど見向きもしない。その情念が彼の霊力を異常に高め、死後は現実すらゆがめる怨霊になってしまった」
ハーフパンツの中はギンギンになった肉棒が白雲さんを押し上げていた。
まさかこんな突然、襲われるなんて思ってもみなかった。
(お前が俺の童貞をもろてくれるんか?)
「ええ、貴方を成仏させるのが私の復讐。その為に修練を重ねてきました」
そう言って越中ふんどしを解く。
白雲さんの半分皮を被っている一物が自分の腹に垂れる。
「んっくぅ・・・」
艶っぽい声を出しながら腰を浮かせる。
白雲さんの身体で見えないけど、自分のチンポの上に何か固くて棒状の物が落ちてきたのが分かった。
(こいつ・・・こんなでけぇディルドを仕込んでたのか)
「霊木を削り作った張り型です。さぁお前の童貞をいただきますよ」
白雲さんが二人の間に敷かれた越中ふんどしを取り除き、ゆっくりと腰を下ろしていく。
割れ目から飛び出していたチンポの先端が、柔らかくて暖かい肉に包まれる。
「あぁぁぁっ」
「んんんっくぅぅぅ」
(おほぉぉぉ、これがケツマンコかっ!)
三人それぞれの嬌声が重なる。
凄い・・・気持ち良い。あの変態幽霊もよがっているのが分かる。
まるで別の生き物みたいにチンポをキュッキュッと締め付けて、自分のチンポを飲み込んでいく。
「くぅ、どうですか私の修行の成果」
「はぁぁ、白雲さん・・・すごいぃっ」
まだ半分だけなのにもう限界を超えてる。
それでもまだイかないのは、幽霊オヤジが射精しないように必死に耐えているからだろう。
(くぅぅぅ、俺はまだまだ現世に残って気持ちええことするんやぁぁ)
「観念なさい。お前を極楽浄土へ成仏させてやるぞ」
ケツが更に力み。隙間なくチンポに吸い付きながらジュブジュブと深く導いていく。
なかにミミズが無数にいるかのようにヒダのひとつひとつが自分のチンポを刺激して目の前がチカチカする。
もう早くいきたい。だしたい。ぶちまけたい。
「リュウヤさんを苦しませてしまってすみません。しかし、この悪霊を野放しにしては無辜の民が変質者に変わってしまうのですぅっっ・・・んんんっ!」
僧帽筋の浮き上がった腰を掴み。入りかけだったチンポを一気に奥へと打ち込んだ。
ようやく根元まで気持ち良くなった。
はやく、はやく、自分はもう限界だ。
この白虎の、この雄の中に、精液をザーメンを全てを出しつくしたい。ぶちまけたい。
「あっあっあっああっ」
パンパンパンパン
下から思いっきり突き上げる。チンポが肉ひだにゴリゴリ擦れて気持ち良い。
こんな名器を修行して手に入れたなんて、いったいどんないやらしい修行をしたんだろうか。
「ひっんぅすごっああっ」
その割には白毛越しに見える肌を真っ赤にして、尻穴からの快感に女の子みたいに悶えてる。
おまけに股間にそそり立つ仮性包茎のイチモツは缶ビールみたいにそそり立っていやらしい泡を流し始めた。
(くほぉぉっこんな・・・こんなん気持ちええに決まっとるぅぅ!)
チンポが感じる快感に幽霊オヤジも限界が近いようだった。
苦しそうに射精を我慢して自分のチンポの根元に力を込めてる。
こんなに気持ち良いのに我慢できるなんて、なんてしぶといんだ。
早く射精して成仏すればいいのに。
(いややぁぁ俺は青春を取り戻すんやぁぁっ)
強い抵抗と共にこいつの変態親父の石井タロウの人生を走馬灯のように体験する。
真面目に勉学に励んだ学生時代。
強い雄への憧れ。
猪人の体育教師への恋と失恋。
就活、仕事のストレス。
全てを諦め、露出へと目覚める。
そしてロッカールームでの突然の終わり。
(うぐぐぐぅぅぅ)
「あああああっっ」
混ざり合っていく。
自分と幽霊オヤジが流れ込んだ記憶とチンポの快感とでぐちゃぐちゃになっていく。
(うくぅぅ神室監督ぅぅ監督ぅぅぅ)
「あっええっチンポええっ!」
限界だ。もう耐えられない。いく、いくぞっいくっ!
「くぅぅぅぅああああっっ!!」
デュルルルルルっ
鉄砲水のように精子が尿道を駆けあがる。快感で意識がチカチカする。自分は俺なのかリュウヤなのかタロウなのか一瞬わからなくなる。
「んくぅぅぅ」
白雲さんもまた缶ビールのような仮性包茎のチンポから激しく射精した。
その濃くて大量のザーメンはまるで川のように自分の腹筋と金色のギャランドゥを横断する。
「んはっはぁぁ」
「ふぅぅ、ふうう・・・」
射精の余韻を味わいながら自分たちはどちらともなく口づけを交わした。
舌を絡め合いながら、このすっきりとした清々しい気持ちを互いに確かめ合う。
幽霊オヤジは成仏したのだから。
「うっ」
身体が熱い。
何かがおかしい。
あの全身を金色の体毛が覆った時のように。
火が自分の身体中から溢れてくる。
「・・・これは、なぜ霊力が。まさか成仏できていないのか?」
白雲さんは顔を強張らせながら、自分から吹き出る火を抑え込むように抱きついてきた。
火はチンポを入れたままの住職にも燃え移り、自分たちを熱で覆いつくしていく。
「んあぁぁぁっ」
腹が膨らんでいく。熱で膨張しているかのように六つに割れた腹筋がぷっくらと膨らむ。
胸も分厚い脂肪の層が付き、いままでの練習で鍛えた胸筋がかろうじてそれを支える。
腕がずっしりと重くなった。筋肉の数倍の脂肪が周りを覆い。垂れた二の腕は力士のように弛んでしまった。
ケツがエアジャッキのように自分の身体を押し上げた。胴から下はもはやレスリングの重量級と同じくらいに丸々と太っている。
「ふごっごひゅ」
息が苦しい。顔に大量の脂肪がついて鼻から息ができない。
口を開けて激しく呼吸をしないとこの太った身体に酸素を回せない。
「ごひゅごひゅぅ」
それは目の前にいる白雲さんも同じだった。
精悍な白虎の住職はぶくぶくと太った、デブ白虎に変わり果てていた。
まるで招き猫のようなシルエットに、琥珀色の瞳は頬と額の脂肪に挟まれて三日月のように細くなってしまっている。
「ご、ごれは?」
「の、のろいがわじにも?」
声が石でも削ったように低くなってしまった。
住職に至っては完全に老人の声で口調まで変わってしまっている。
(ひゃぁぁ! 俺はまだ成仏してへんでぇぇ!)
部屋の中をチビハゲデブの毛深い人間の霊がびゅんびゅんと飛び回る。
何だかさっきよりも元気がいい。
(いやぁやっと童貞が捨てられたわぁ。終わってみれば何だこんなもんかって感じやけど。めっちゃスッキリしとる。これが大人って奴なんかねぇ)
霊体が困惑する俺たちの頭上で止まる。
下から見上げるその租チンはいまだ勃起し続けている。
「そんな成仏しないなんて」
「お前は生前あれだけ性交渉を求めていたではないか」
脂肪で重い口から唾を吐いて幽霊オヤジに抗議する。
顔に互いの唾液が降りかかるけど知った事じゃない。
(いやぁ、やっててわかったんやけど。俺の望みは先生とのセックスだったんやな。先生の熱い肉棒を俺の中に激しく打ち込んで中に熱いザーメンを出してほしい・・・それが俺の望みや。爺の中に童貞捨てるのも気持ちよかったけど・・・ちごたんやなぁ)
「そ、そんな・・・わしの修行は・・・」
がっくりと肩を落とした住職の首は三重の顎肉で分厚い層ができていた。
もう先ほどまでの気力漲る白虎の姿はどこにもない。ただ太った白猫がその緩んだ身体を晒している。
きっと自分の身体も同じようになっているのだろうと恐る恐る身体を見ると、そこまで脂肪で弛んではいなかった。
クマイや神室監督のように百二十五キロ級の選手のように筋肉と脂肪に覆われている。
もちろんその肉には濃い金色の体毛が生い茂り、むしろ前よりもその密林は濃く力強くなっていた。
(兄ちゃんは若いからな。ジジイみたいに脂肪でブクブクにはならなかったんやろ)
幽霊オヤジが再び自分に張り付くと俺の身体に粗末なモノをこすり付けてきた。
全身にねっとりとした気持ち悪い感触が再び這い上がってくる。
「あぁ、どうしたら・・・」
事態はより悪化した。
成仏させる事はできず、助けようとしてくれた住職も自分もこの変態オヤジのようにデブになってしまった。
「・・・かくなる上はまた札で封印するしか」
「でも、そんなことをしたら白雲さんは完全に変態オヤジに」
互いを見つめ合う。
デブった身体はそれだけでも辛いのに、チビでハゲで変態のオヤジに変わってしまうのだ。
それは自らの死にも等しいのではないだろうか。
「どうすれば・・・」
一体どうすればこの悪霊から解放されるのか。
願いを叶えて成仏させるのはきっと間違っていない。問題は願いが違った事だ。
あの悪霊は『先生とのセックス』と言った。きっとさっき垣間見た学生時代の先生とやりたいのだろう。
でもそんな大昔の人なんて今生きているはずがない。
だけど、さっき混じり合った時のように誤認させる事は出来ないだろうか。
「あの・・・突拍子もない事なんですが自分の作戦を聞いていただけますか?」
落ち込む住職の手を取って、自分は思いつい除霊方法を白雲さんに伝える。
老人はそれを戸惑いながらも受け入れる。
(そんなんでうまくいくかねぇ。まぁ俺は気持ちええなら何でもええけど)
幽霊オヤジがまるで他人事のようにあざけわらった。
畜生、これでダメだったら自分はどんなことになってしまうんだろう。
でもこのままでは結局この変態オヤジになってしまう。
一か八かだ。
「わしも思いついた事がある。後で合流するからリュウヤは除霊を進めておいてくれ」
そう言って、ケツからチンポを抜くと脱ぎ捨てた法衣と越中ふんどしを着込んだ。
恐ろしい事にでぶでぶに太った身体にその法衣はあつらえた様にピタリと合う。現実が改変されているのだ。
「では、明日の夜。あの旧校舎のロッカールームで」
住職は太った身体を揺らしながら夕闇に溶けていった。
自分はその後ろ姿を見て先行きが増々不安になった。
これから行う除霊のことももちろん不安だ。だけどそれだけではない。
白雲さんが太った身体を締めた越中ふんどしがひどく汚れて黄ばんでいたのだ。
住職はまるで気にしていない様子だったが、確実に幽霊オヤジは住職の精神を蝕んでいる。
最悪、自分一人でこの作戦をやるしかないかもしれない。
「自分だけで出来るんだろうか・・・」
頭を左右に振る。試合前に不安に流されてはいけない。
「とりあえず部屋の掃除だな」
ザーメン臭い部屋。いまの自分にはそんなに臭いを感じないがきっと悪臭を放っているはずだ。
変態オヤジに抗うように夜半にもかかわらず掃除を始める。
明日の勝利を願って。
「ふぅ」
ドシンと新校舎のロッカールームが震える勢いでベンチに腰を下ろす。
このでかいケツは三人掛けのベンチを悠々と占拠してしまうが、いまは練習も終わり残っている部員もまばらだから別段気にしなくてもいい。
滝のような汗が乾いていたベンチと床にあっという間にツンと臭う水たまりを作る。
本当にこの巨体は良く汗をかくから二リットルのペットボトルが手放せない。
そして大量の汗は濃い体毛に溜まって蒸れる。
シグレットに手を突っ込んでボリボリと盛大に股間を掻くととても気持ちが良い。中にも指を入れてチンポの根元を掻いた。
「次期主将はこんな時間まで練習かよ。大変だな」
クマイはもう着替え終わってTシャツにハーフパンツとラフな格好になっている。
その視線は自分の太って汗だくになった全身を舐めまわすと、シグレットの中で股間を掻きつづける手をじっと見つめる。
「やっぱスリットってのは汗で蒸れたりするんだな」
「蒸れるぞ、そんですげぇくっせぇ」
「げげっ、入れてみてぇけどそれは勘弁だな」
そう言って、手を振ってロッカールームから出ていった。
デブで毛深い龍人として改変された世界は、自分を次期レスリング部の主将にし、雄臭くなったことでクマイの龍人族のスリットへの興味は成りを潜めた。
そして神室監督は・・・。
汗もそのままに鞄から携帯を取り出すと、メッセージに返信が着ていた。
【わかった。今夜、旧校舎のロッカールームで】
心臓が張り裂けそうだ。
今日の練習で神室監督はいつもと変わらないようにみえた。
だけどその視線。
デブって毛深い自分の身体を見つめるその視線は明らかに熱を帯びていた。
自分にはわかる。あれは恋する瞳だ。
きっとチビハゲデブの学院長の姿と自分を重ねている。
それを確信して。神室監督にメッセージを送った。
そして思惑通りに大好きな監督は応えてくれた。
それが呪いのおかげでもあることがチクリと胸に刺さったけど。
皆が帰った事を確認するとシグレットのまま旧校舎を目指す。
シャワーはもちろん浴びてない。
きっととんでもなく汗臭いはずだ。
それに昨日あれだけ射精したのにムラムラが治まらない。
溢れる性欲はフェロモンとなって汗と共に雄臭を振りまいているだろう。
旧校舎の奥、古ぼけたドアを開ける。
数日前、肝試しに訪れたことが随分と昔に思える。
もしかしたら自分は元々こんな巨デブで毛深くて臭かったんじゃないかと錯覚することすらある。
(げひひ、チーンポチンポ。もっと気持ちええことしようや)
その度にこいつの声が現実を思い出させる。
そうだ自分は違う。こいつみたいな変態じゃない。
だけど、今回だけは変態にならないといけない・・・。
旧校舎のロッカールームは相変わらず埃っぽく。依然来た時よりも荒らされていた。
恐らく他の部員が戦利品を探すときに荒らしたままになっているんだろう。
ひび割れた窓ガラスからはスポットライトのように月の光が差し込んでいる。
自分の作戦はこうだ。
より深く変態オヤジと繋がって、神室監督と悪霊の初恋の先生と誤認させる。
その状態で神室監督に犯してもらえればきっとこいつは成仏する。
「よしっ、やるぞ」
幽霊オヤジと繋がるには、こいつみたいな変態にならないといけない。
それには哀れな幽霊が四十年前にこの旧校舎のロッカールームでしようとしたこと、それを再現するのが一番だ。
月光の中心で汗だくのシグレットを脱ぐ。
肩紐を外し、胸から腹へぴったりと吸い付く合成繊維を剥がすように脱いでいく。
まるで脱皮するような気分だった。
元の自分から違う自分へ。身にまとっていた制約から自由になる。
「はぁぁっ」
突き出た腹より下。股座が埃っぽい空気に触れた時、声が出てしまった。
性的な快感とも違う。
解放だ。自分は解放されたんだ。
月明かりに照らされて金色の陰毛がキラキラと光る。
それに隠された割れ目の中でチンポがムクムクと大きくなるのをグッと我慢する。
まだその時ではない。
シグレットを膝下までずらすと、そのまま自分の胸を揉む。
背後にいる変態オヤジはそうやって己を刺激しながら獲物を待ち構えていたのだ。
だから自分も乳首から感じる甘い刺激を堪能しながら神室監督を待つことにした。
「はぁ、はぁ、先生・・・先生・・・」
割れ目から蜜がしたたり落ちていく。
きっと月明かりに反射して糸を引いて垂れていくのがわかるだろう。
胸を揉み、雫を垂らし、旧校舎とはいえ他の誰かが来るかもしれない校内で性欲を高ぶらせる。
嗚呼、自分はもう立派な変態だ。
デブで臭い露出狂だ。
そう思えば思うほど、興奮が高まり変態オヤジと深く繋がっていく。
「ええぞぉ、これやぁぁ」
口が勝手に動く。いや自分の発言かも。
わからない。気持ち良い。はやく着て、神室監督。
いや、もう誰でもいい。
クマイでも、白雲さんでも、学院長でも。レスリング部の誰か、いやもう雄だったら誰でもいい。
浅ましく悶える醜い自分を見て、その瞳にその記憶に解放された姿を焼き付けてほしい。
「あっあああっ」
陰部から脳天まで何かが貫いた。
チンポも萎えてるし射精もしていない。でも何かとても気持ち良いモノが走り抜けてコンコンと湯が沸くように気持ち良いのが続いていく。
「あへぇぇ四十年ぶりやぁぁ」
汚い床にへたり込んでしまった。快感で立っていられない。
でもそれでも胸を揉み、勃起を我慢して、神室監督を待ち続ける。
ふと、遠くから足音が近づく。
警備員かも、他の職員かも、いやきっと神室監督のはずだ。
恐怖と期待が盛り上がりより興奮を増していく。
足音がドアの前で止まる。
もはやだれであろうと自分の喘ぎ声は聞こえているはずだ。
はやく、はやく、その扉を開けて、自分を、俺を見てくれ。
扉が開いていく。
ああ、広がっていく隙間からフサフサの毛皮、優しくて大きな瞳、雄臭い太眉と狼のマズル。
「リュ、リュウヤ!?」
逞しい巨躯の狼人。神室監督がポロシャツにジャージズボンのいつもの姿で俺を見ていた。
その驚いた表情。見開いた瞳。
その一瞬の間のあとで興奮に鼻の穴を開き、舌なめずりをする。
性欲が捕食者の笑みとして顔からこぼれた。
監督は黙って中に入り扉を閉める。
月のスポットライトを浴びて喘ぐ俺を上からジッと見下ろして、脂肪で膨らんだ胸や腹。そして愛液をしたたらせる割れ目を無言で見つめる。
それがたまらなく良い。
俺の呼吸音だけが壊れたレコードのように何度も何度も繰り返される。
永遠のような時間。
やがて監督は我慢できなくなったのかその大きな手を俺の胸へと伸ばす。
「あんっ」
狼の手が胸を揉みしだいた。
自分の手よりも何倍も気持ちが良い。
あっ、また漏れた・・・。
「話ってのはこういう事か?」
胸を痛いほど掴まれる。
痛いのに気持ち良い。
頭がおかしくなりそうだ。
「んうっ」
乳首をつままれた。
いいぃ、こんなのチンポをいじられてるのと同じだ。
「俺にこうしてほしかったのか?」
神室監督がしゃがみこんで俺の顔を見つめる。
涎が垂れ落ちる口をパクパクと開いて「そうです」と答えたのは俺なのか変態オヤジなのか。
いやもうその境界は曖昧になってる。
「ふー、次期主将がこんな変態では伝統あるレスリング部に傷がつくかもしれんな」
監督はジャージズボンをパンツごと脱ぎ捨てると子供の腕ほどもあるペニスをさらけ出した。
ズル剥けでカリ高のチンポ。
こんなすごいモノが俺の初めてになるのか。
「俺が飼ってやる。その変態性が外に漏れないようにな」
口元に監督のチンポが差し出された。
ああ、しゃぶれと言われてる。大好きな監督の大好きなチンポを。
俺は我慢できずに食いついた。
龍人の尊厳や誇りをかなぐり捨てて、犬のように舐めしゃぶった。
美味しい大きなソーセージ。
臭いがきつくて喉奥を突かれるとえずいてしまう。
でも、それでもフェラを止めなかった。
ベロベロ、ジュブジュブ。
涎まみれになるまでその肉棒を味わう。
「気持ち良いぞ。俺のチンポが好きか?」
監督の問いに上目遣いで頷く。その間も奉仕は続ける。
「そうか、ならもっと良い場所に入れてやる」
チンポが引き抜かれた。
ああ、ついについにこの時が来た。
先生の身体が俺に覆いかぶさる。
その手が膨らんだ腹をなぞり、肉厚な下半身に伸ばされた。
「はぁぁん」
割れ目に武骨な指が入ってきた。
龍人族特有のスリットは中にチンポが収納されているとはいえ、肉穴であるには違いない。
クマイや同級生たちが狙っていたそこを神室監督もまた狙っていたのだ。
「へぇ、ケツとはまた違った締め付けだな。それに中でピクピク動いてるチンポ・・・。兜合わせも楽しめるってわけか」
「あっ、あっ、ひっ」
クチュクチュクチュクチュ
中を丹念に解される。
刺激にチンポが固くなる。
だが、入り口を塞がれているので外に飛び出すことができない。
「チンポ固くなってきたな。それじゃそろそろ入れてみるか」
「ひうっ」
手を引き抜かれてチンポが外に飛び出してしまった。
外気に晒されたチンポを監督は嬉しそうに見つめると、それに巨根を重ねる。
「このまま押し込んでやるな」
「んぐぅぅ」
チンポがチンポで押し戻された。
狭いスリットの中に二本のチンポがギチギチに詰め込まれる。
「ひぎぃぃぃ」
「おー、全部入ったぞ」
信じられない。
あのデカいチンポと俺のチンポがスリットの中でギュウギュウとぶつかり合って汁を垂らしている。
肉で膨らんでいた股座は、監督のチンポよって更にポッコリとチンポが浮き上がっている。
「俺のが全部入るなんて、流石は次期主将だな。卒業まで可愛がってやるぞ」
ズシン
下腹部が殴られたような強い衝撃。
監督の腰が打ち付けられたのだと分かったのは激しいピストン運動が始まった時だった。
「おっごっぐぅっ」
「おおっ、気持ち良いぞリュウヤ」
現役を引退したとはいえ監督はトレーニングも欠かしていない。
強靭な足腰が生み出す前後運動にスリットの中はグチョグチョで。
「きもぢえええぇぇ!!!」
チンポがチンポに当たる。
中が刺激されて敏感な場所に当たる。
デブった腹に監督の腹が当たる。
「んふっんんんっ」
監督が俺の口を吸う。
舌が入り込んで上も下も先生でいっぱいになる。
胸を揉まれる。乳首を刺激される。
俺の身体のあらゆる場所を監督が蹂躙する。
脳みそが溶けそうだ。これがセックスなのか。これが犯されるという事なのか。
白雲さんの中に入れた時とは違う。
これが求められる喜びなのか。
「リュウヤ、リュウヤっ」
愛しい監督が名前を呼ぶ。違う、俺はリュウヤじゃない。
いや、違う。俺は誰だ。
ダメだ。神室監督が自分の名前を呼びながらチンポを打ち込まれるたび、幽霊オヤジの・・・石井タロウと離れていく。
しかし、そんな事を先生がわかるはずがない。
腰の動きはより強くより早くなっていき、その激しい動きでもう自分も限界が近い。
「だすぞっだすからなっイクッイクッくぅぅぅぅ!」
「んあぁぁぁっ!」
割れ目の中で同時に射精した。
ドロドロのザーメンが重く溜まってチンポの隙間から漏れていく。
「はぁぁっ」
火が自分の身体から溢れはじめた。
これは鬼火なのだ、悪霊の霊力が常人には見えない火となって自分の身体を包み込む。
「くっ監督だけは・・・」
その火が監督に燃え移る前にスリットからチンポを引き抜き、神室監督から離れる。
「リュウヤ・・・?」
「うっ、くぅぅぅ」
身体が熱い。
今度はいったいどんな風に変わってしまうんだろう。
そんな恐怖とともに呪いは訪れた。
最初は脚だった。
熱が骨を溶かすように二本の脚は太さはそのままに短くなった。
腕も縮んでいく。
胴体はそれほどでもないがやはり低くなりより寸胴体形になる。
「ぐぇぇっふっ」
溶けた物が空気になってゲップと共に外に出ていった。
体毛が生えて、デブになり、そして自分はチビになった。
これではほとんどあの変態オヤジと変わらない。
「リュウヤ?」
不安げにのぞき込む監督を見上げる。
チビになった自分の背丈は監督の腰ほどしかない。
ただでさえ巨体な神室監督がより大きくなった。
それに自分はときめいてしまっている。
「マネージャーのお前も少しは筋トレしないとな。小さな身体じゃあいつらを毎日受け止めるのも大変だろ」
現実改変されデブチビ龍人になった自分はレスリング部マネージャーになっているようだった。
マネージャーと言っても変態の自分はもっぱら部員の精処理道具だ。
今日もクマイや他のメンバーのチンポをすすり、そして最後に神室監督の性欲をスリットで受け止めた所だ。
そんな記憶が元々の記憶を上書きしていく。
ダメだ。そんな。これじゃあ神室監督と恋人になんかなれやしない。
「失礼するぞ」
しゃがれた老人の声と共にロッカールームの扉が開いた。
そこにはデブの白猫、いや白虎の白雲さんが立っている。
その手には古ぼけた赤いジャージが握られていた。
「御免」
そのジャージを神室監督の顔にかけた。
白雲さんは丸々とした指で空気を切って何か念仏のようなものを唱える。
「喝っ!」
見えない波動が神室監督に浴びせられた。
ジャージを被った神室監督の身体は痙攣し、しばらくすると静止する。
白雲さんがジャージをスッと引くと、神室監督の顔は狼人の鋭い顔ではなく、猪人の豚鼻と牙。そしてクリっとした丸い瞳に変わっていた。
(先生・・・?)
幽霊オヤジの声が震えていた。
喜びと少しの恐怖。
それはそうだ、自分もこの猪人を知っている。
この人は、悪霊である石井タロウの初恋の人。そして失恋した相手でもあるのだから。
「口寄せじゃ。遺品を探すのに手間取ったが、これで悪霊の望みは叶うじゃろう」
白雲さんが言葉は悪霊に届いているのだろうか。
呆然と目の前に現れた思い人の顔を凝視しているのがわかるのだ。
「・・・タロウか?」
やがてその猪人は自分を見た。
いやより正確にいえば、自分の背後にいる悪霊を見つめている。
丸い瞳は優しく微笑むと分厚い神室監督の手で自分の頭を撫でた。
「お前、こんな所で何しとるんだ。一人で辛いときは先生のとこに来いって言っただろう」
「先生っ!」
自分の身体が勝手に動いて目の前の神室監督。いや先生に抱きついた。
抱きついている内にフワフワの狼の獣毛と鍛えられた筋肉が、ゴワゴワの猪の毛皮と柔らかな脂肪に変わっていく。
先生に憑依された事で神室監督も変わっているのだ。
「先生っなんでなんで死んじゃったんだよぉ。俺ずっと寂しくて寂しくて」
「すまんなぁ。寂しい思いをさせて悪かったなぁ」
「・・・先生、約束覚えてる? 返事を聞かせてくれるって、俺ずっと待ってたんだ」
先生を誘うように太短い脚を広げ、小さな手で尻肉を開く。
柔らかく湿った肉壺を引くつかせて、俺は先生を誘惑する。
「こいつめ、先生を誘うとは悪い子だ」
猪人の大きな身体がのしかかってくる。
その猪鼻が俺のマズルと触れ合い数十年ぶりの口づけを交わす。
熱い吐息とあふれる唾液。
それを互いに交換し合う。
舌が絡み合い。互いの口内を優しくなめ合う。
さっきの神室監督とのセックスとは違う。いたわり合うような絡み合いだった。
「愛してるぞ、タロウ」
「俺も」
長く深い口づけが終わると、二人は互いの言葉で愛を確かめ合う。
ギンギンに硬くなった先生の肉棒は火のように熱く、尻の谷間で濡れ始めていた。
「いれるぞ?」
「うん、きてっ」
太く長いチンポが尻穴を広げながら入ってくる。
前立腺も何もかもを押し潰し、強烈な圧迫感と快楽に頭が痺れる。
「先生のふとっいっ」
「そんなに急ぐなゆっくりいれてやる」
「やっ、もっと奥まで」
苦しくきついのに自ら先生のチンポを飲み込もうと身体を動かす。
なにせ石井タロウにとってはようやく大好きな先生と結ばれたんだ。
その気持ちは痛いほどよくわかる。
「ふぅぅ・・・全部入ったぞぉ」
「先生っ」
口と口が触れ合う。
繋がったままお互いを抱きしめ合い口づけを交わす。
たまらない幸福感が悪霊の中にくすんだ黒い感情を押し流していく。
「動くぞ」
「はい」
先生は俺をいたわる様に静かに腰を動かし始めた。
ピタンっピタンっ
勢いはなく、脂肪と脂肪がぶつかり合って餅つきのように間抜けな音だが、それがたまらなく心地よかった。
「あっ・・・あふっ・・・」
「ふぅ、ふぅ、どうだタロウ。良いか?」
「いいですっ、先生のがっ・・・気持ちいぃ」
パチュンパチュンと音が湿り気を帯びていく。
死して分かたれた二つの魂が月光に照らされて一つに重なり合っていく。
「もう離れんぞ」
「はい、一緒に・・・」
チンポからせり上がってくる。
尻穴の先生のチンポもこれ以上ないくらいに大きくなって。
「ああっ!」
「ぐぅぅ!」
噴水のようにザーメンが吹きあがった。
分厚い尻の中にも熱い塊が注がれるのが気持ち良い。
「さぁ行くぞ・・・」
先生の手が俺の手を掴んで引っ張り上げる。
するりと幽霊オヤジが自分の太った身体から抜け、猪人の先生もまた神室監督から抜け出ていく。
二人は手をつないで天へと昇っていく。
「ちょっと待ってください・・・」
幽霊オヤジが振り向いた。
その表情はあの気持ち悪い笑みではなく、少し照れたように見えた。
「迷惑かけてすまんかったな。おかげで先生とまた会えた。その礼だけ置いてくわ」
幽霊オヤジの手から火が、鬼火が、自分の身体へと入ってきた。
「人生は短いで。しっかり楽しめな」
そう言って先生と共に消えていく。
後にはザーメンの臭いと、それにまみれた三人を残して。
「成仏したようじゃ」
「・・・呪いは、呪いはどうなったんですか?」
自分と白雲さんは互いを見つめ合う。
その姿は先ほどと変わらない太ったままだ。
「変わってない・・・そんなっ、あっ、ぐぅぅ」
鬼火が身体から燃え上がった。
今までよりも激しい。全身が火の塊になったようだ。
「なんと凄い霊力だ・・・そうかタロウの莫大な霊力と龍人の神聖性が結びついて」
「アアッ!」
火が止まらない。
身体を飛び出して周りに飛び火していく。
放置されたシグレット、筋トレ道具、エロ本。汚れたジョックストラップ。
旧校舎のロッカールームに放置してある物達を燃やしてもまだ火の勢いは止まらない。
気絶している神室監督を飲み込み、そして戸惑う白雲さんすらその火に飲み込んでいく。
「おおーい、リュウヤ。やっぱ俺、尻に興味あるわ・・・おわっ!?」
なぜか旧校舎のロッカールームの扉を開いたクマイまで鬼火は飲み込んだ。
それでも勢いは止まらず、大学の旧校舎全てを火が、自分と変態オヤジの霊力が飲み込んでしまう。
「アアアアアアアアッ!!!」
火が全てを変えていく。
それは自分が望んだことなのか。
それともあの変態オヤジの残滓なのか。
今となってはわからない。もうすべてが手遅れなのだから。
「おはよう」
すれ違った二人組の学生に笑顔で挨拶をすると、学生達も「学院長、おはようー」と笑顔で挨拶を返してくれる。
キャンパスの中は活気に溢れ、様々な性別や種族や年齢の異なる人々が行きかっている。
ふと、女子グループの一団が構内を散歩する私を見つけて近寄ってきた。
「学院長先生、今日も可愛いー」
「ははっ、こんなチビハゲデブのオジさんが可愛いかね」
「うん、コロコロしてぬいぐるみみたい。あ、この前は香水教えてくれてありがとう。クソ親父もこれでちょっとは臭いを気にしてくれればいいんだけど」
「娘さんから香水をプレゼントされたら気を付けるようになるさ」
「そうだと良いんだけど、あっそろそろ行くね」
活発な彼女たちは明るい笑顔を浮かべて教室のある新校舎へと向かっていく。
もうすぐ各教室で講義が始まる。人の波もしばらくは落ち着くだろう。
私は旧校舎へと足を向けることにした。
きっと今頃はレスリング部のメンバーが真面目に練習に励んでいるだろう。
それに・・・神室監督の様子も見たいしな。
あの晩、古ぼけてボロボロだった旧校舎は鬼火に焼かれて生まれ変わった。
まるでその建物にこびりついていた情念が火によってあぶりだされたように、劣化していた木材は漆を塗ったように怪しく光。白く日に焼けたレンガは鮮やかな朱色に変わった。
その入り口をくぐると、使われていない無数の教室の中から湿り気を帯びた声が聞こえる。
廊下のすりガラス越しに中を伺えば、柔道部の獅子人と相撲部の豚人が互いの性欲をぶつけあっていた。
「へへっお前しゃぶるのうめぇな」
「お前こそっ」
二人は互いのイチモツを再びしゃぶり合い始めた。
その手が互いの尻穴に伸び始めたのを確認して、次の教室へと向かう。
「くっすげっ」
「ああっ、んなとこ舐めんなよっ」
「先輩っ気持ち良いっす」
「イクッイクッイクッ!」
どの教室でも雄同士が盛り合う。
それが我が校の校風だ。性欲を正しく処理し、快楽に溺れない様にする。
また身体を重ねる事で互いの理解も深まり、コミュニケーション能力の向上も見込める。
良いことづくめだ。
ただ、それでもムラムラが治まらず、性の捌け口を求めて堕ちてしまう者が居る。
そんな時は我々の出番だ。
旧校舎の一番奥、完全防音の部屋がある。もとはあのロッカールームのあった場所だ。
その重い扉をゆっくりと開ける。
二重扉になっているそこは、もう一枚奥にある扉を開けねば中には入れない。
その扉から興奮と快楽と声が既に漏れている。
内側へと歩みを進め、一枚目の扉をピッチりと閉める。
そして二枚目の扉を開いていく。
嬌声が老いた耳を震わせる。
今日も二人は良い声で鳴いている。
「学院長、おいでになられたのですね」
扉の側で仁王立ちしていた神室監督が私に頭を下げた。
それを手で制しながら、目の前のレスリング部たちの痴態を隅々まで観察する。
「ああっ、くっそ。やべぇ」
「次、俺な」
「早くしてくれよ俺まだ三発しか出してねぇんだ」
「やっぱ弟の方がケツマンコ良いわ」
「そうか? 兄の方も締まりがよくて気持ち良いけど」
激しい練習後の汗もそのままにシグレット姿のまま彼らはこの『肉便所』にやってきていた。
どんなに激しく扱っても何度も使っても決してその欲望が枯れない二人の肉便器。
「あひっチンポチンポもっと」
「しりっ、しりきもちいぃぃよぉぉチンポくれよぉぉ」
レスリング部の輪の中心に二人のチビハゲデブで毛深い人間のオヤジがチンポを求めて鳴いていた。
その姿はそっくり同じだが、よく見れば一人は琥珀色の瞳をし、もう一人は体毛が熊のようにより濃い。
この二人は、白雲さんとクマイだ。
いやもうだった者と言っていい。
いまは私の親戚の双子の兄弟。チンポ遊びで身を持ち崩した変態オヤジだ。
幽霊オヤジが成仏し、その霊力と私の龍人の神聖が結びつき、鬼火が全てを燃やした。
その時、鬼火は巻き込んだものすべてを変えていったのだ。
まずは、自分を完全な人間のオヤジに変えた。
黒い鱗が肌色の皮膚に、金色の体毛は真っ黒な体毛に。
マズルは縮み、猿のような顔になると頭髪が抜け落ち、老化が始まった。
スリットからチンポが飛び出すと割れ目が消えて、股間に大きく重い睾丸が垂れて、陰茎が小さくなって皮かむりになってしまった。
老いて人間になった自分は、なぜかこの大学の学院長になっていた。
そして私の意をくみ取る様に鬼火は旧校舎を若い性欲のるつぼに変えてしまう。
次に鬼火は白雲さんとクマイを変え始めた。
私と同じ、チビハゲデブの毛深い人間のオヤジに。しかしいくらか私よりも若く。そして二人を兄弟という事にして、完全なチンポ狂いの変態にした。
彼らの役目はこの旧校舎で肉便器となって性欲の治まらない血気盛んな学生たちに奉仕を続けることだ。
「学院長のおかげで今年も優勝が狙えそうです」
そして神室監督。
どうやらまだ生徒の前では真面目な監督のふりを続けるらしい。
そんな態度に私はムラついてしまう。
「・・・どうもレスリング部の人数に対して肉便器の数が少ないようですね。神室監督も手伝っていただけますか」
「やっ、それはその」
「ふふっ、少し素直にしてあげましょうか」
私は手のひらに鬼火を生み出し、それを神室監督に投げた。
常人には見えないその火は、狼人の監督を燃やして別の存在に生まれ変わらせる。
「ぐへへっ」
火が消えると、そこには私と同じようにチビハゲデブで毛深い人間の雄が立っていた。
神室監督の巨大なチンポは粗末な短小包茎へと変わり、その尻穴はどんな肉棒も飲み込める名器に生まれ変わる。
「おらっ俺にもハメやがれ」
監督は嬉々としてレスリング部の輪に飛び込んでいった。
あの時、監督もまたチビハゲデブの変態オヤジに変わったのだが、自分が狼人でなくなった神室監督に残念がっていると、なんと元の姿に戻すことができたのだ。
どうやら私はこの呪いをコントロールできるようである。
「あっあっああっ」
「もっともっと奥までっチンポ最高っ!」
恐らく浅ましく盛るあの兄弟も元の姿に戻すことができるのだろう。
しかし、それを彼らは望むのだろうか。
性の快楽に堕ちた人間は元の生活に戻れるのだろうか。
それは自分も同じだった。
三人の乱交を見ていると自分の中に火がともる。
快感を求め、喜びを漏らし、昇天していく。
あんな体験をしてはもう元には戻れない。
私はネクタイを解き、ベストを脱ぎ、シャツを地面に落とす。
黄ばんだブリーフを足首までずり下げると、逞しい雄たちの群れに入っていく。
「さぁ、先生も気持ち良くしておくれ」
ギラついた瞳が私を射貫く。
ああ、これだ。ケダモノ達が私を求める。
前戯もなしに突っ込まれた熱い火のような肉棒を感じながら、私は意識を白く染めていくのであった。