悪者(わるもん)の恋

  ドスっ!ゲシっ!バゴっ!

  ワシはアスファルトの地面にうずくまり嵐が通り過ぎてのをただ祈るように頭を押さえながら熊獣人も太い足から繰り出される猛烈な蹴りに耐えていた。いくら普通の猪獣人より多少頑丈にできてるワシでもそろそろ限界だ。

  「う、うぅ、もう勘弁してくれ…」

  「ふざけんじゃねえぞ、ヒトの男に手ぇ出しといてこの程度で済むわけねえだろ。」

  「し、知らんかったんや…彼氏持ちなんて…」

  ワシがどんなに必死に言い訳しても頭に血の上った熊は聞く耳を持たない。分厚い脂肪に覆われた腹に熊の足が鋭く突き刺さり、胃の中の物が口や猪鼻からベシャっと吐き出された。

  この熊半グレっぽいしワシこのまま蹴り殺されるんかなあ…?こんなことになったのも全部ワシの自業自得やけど、我ながら情けない人生やったわ。

  ***

  ワシの正体はとある組織に属する改造獣人…仮面ライダーなんかに出てくるいわゆる悪の怪人みたいなもんや。属する、なんてカッコつけた言い方したけど、実際のところ廃棄処分寸前のポンコツ怪人なんやけどな。

  ちょっと自分語りさせてもらうわ…

  もともと頭のデキが悪くて高校出てすぐに工場に就職したんやけど、物覚えが悪いせいでぜんぜん仕事できんくて最初の職場をあっちゅうまにクビにされた。それから色々な仕事に就いた…建設や建築現場、営業、飲食、コンビニ、パチ屋…と職を転々としたけどどこにいっても半年と持たんかったなあ。そんな状態がずーーーーっと続いて気がついたら41歳…立派なオッサンになっとった。

  これっちゅう趣味もなかったからストレス発散のためにドカ食いしてるうちにブクブク太って、身長は160くらいやのに体重は150kgを超えて、不細工だった顔は肉でパンパンに膨れてますますひどくなった。言うまでもないが恋人はおろか友達の一人もできんかったわ。

  自分が嫌になって自暴自棄になったワシはギャンブルに手を出した。もちろん何やってもダメなワシが勝てるわけもなく、足りなくなった生活費のために借りた借金は雪だるまみたいに膨らんでいった。で、とうとうどこのサラ金でも借りれんくなって、最後に行き着いたのがヤミ金やったんやが…よりにもよってそこが"組織"と繋がりのある業者やったんや。

  すぐに首の回らなくなったワシは負債の帳消しと引き換えに治験のアルバイトとかの名目で組織の実験施設に無理矢理連れていかれた。身寄りも定職もないワシがいなくなったところで心配する者もおらんにも奴らにとっちゃ都合がよかったんやろうな。

  そこでワシは獣人改造の実験に利用されることになったんやが…幸か不幸か、99パーセント失敗すると言われていた手術でワシは生き残ってしまった。ワシの胸には"デビルコア"っちゅう改造獣人の核のようなもんが埋め込まれたんやが、コイツが奇跡的にワシの体に順応したらしい。

  そのまま組織の一員として迎えられたんやが…しっかし、ダメなヤツはほんまに何やってもとことんダメなもんやな。組織の能力検査の結果、ワシの戦闘能力は並のおっさん猪とほとんど変わってなくて、ただ体がほんのちょびっと頑丈になった程度らしい。(それってただ太って脂肪が分厚いだけやないの…?)立ち会った組織の研究員も呆れとったで。

  しかし唯一、デビルコアの影響でワシには特殊な能力が身についた。それは…その、うー、口に出すのも嫌なんやけど…セックスして中出しした相手を隷属させられるっちゅう力やった。

  あー、自分で言ってて嫌になるわほんま。こんなんはヤリチンのイケメンに与えられるべき能力やろ。デブで不細工な童貞オッサンが持ってたってなーんの役にも立たん、豚にワンタン…いや豚に真珠やろ。何の嫌がらせや?

  それでも一応改造獣人にしてしまった以上、組織としてはほっとくわけにもいかずワシにも任務が与えられる。能力を使って1人でもいいから洗脳して組織に忠実な人間にしてこい、期限は1ヶ月、できなきゃ廃棄処分だと一方的に告げられ、ワシは街に放り出された。ちなみにこれにはワシの総合的な力をテストする意味もあるとかで、風俗や立ちんぼを使うのはあかんと釘を刺されてる。

  ワシは途方に暮れた…何しろこれまでの人生でただのいっぺんもモテたことがないんや、突然誰でもいいから種付けしてこいなんて言われてたってそんなん無理に決まってるやんけ。なあ、一体どうすりゃセックスってできんの?そういうの教えねえから少子化解消しないんちゃう?

  あっちを見ればチャラチャラしたにいちゃんがキラキラ着飾ったねえちゃんを口説いとる…こっちを見れば、獣人と人間のカップルが幸せそうに手ぇ繋いで歩いとる…なんでみんな、こんな簡単にナンパできてしかも相手が見つかるんや?

  何も思いつかんまま、ただふらふら夜の街を歩いていると、一人の兎獣人の男の子が目に止まった。歳は二十歳くらいで小柄で痩せ型、長い耳にピアスしててちょっとチャラい感じや。ベンチに腰掛けてスマホをぽちぽちいじっとった。気も小さそうやし力も弱そうやし、最悪人気のないところに連れ込めば無理矢理にでも…そんな考えが一瞬頭をよぎったが、頭をブルブル振って否定する。…そんな度胸ワシにあるわけがない。

  ワシは兎のにいちゃんの隣に腰掛ける。ワシの体重でベンチがぐわっと沈み込み、驚いたにいちゃんがこっちを見た。

  えっと…ど、どないしよ…ナンパのやり方なんて見当もつかん。でもせっかくきっかけができたん、えーい、破れかぶれや、どうにでもなれ!

  「こ…こんばんは。えっと…何してるん?」

  「は?誰っすか?」

  にいちゃんは明らかに不審がっている。いきなりこんなオッサンが声掛けたらそりゃそうなるよな。

  「あ…あ、あのワシは怪しいモンじゃなくて、ただお話がしたいなあって…」

  「客引きかなんかっすか?こっちは話すことなんかねえよ。」

  兎のにいちゃんはプイッとそっぽを向いてベンチを立ってしまった。ど、どうしよう…怒らせてもうた。頭真っ白になって慌てたワシはついにいちゃんの腕を掴んでしまった。

  「待って、話だけでも…」

  「何だよ、離してくれ!」

  そうして揉みあっていると、後ろから物凄い力で肩をガシっと掴まれる。振り返ってみると、2m近くありそうなデカい熊獣人がワシを睨みつけていた…

  「おいあんた、俺の男に何してんだ?」

  「へ…?」

  ワシはそのまま熊に引っ張られて裏路地に連れ込まれた…

  [newpage]

  こうして、ワシは熊にボコボコにやられて今に至ってる。ちゃんと確かめもせず声掛けたワシが悪いんやけどさ…なんであんな小柄な兎の子によりによってこんなデカくて凶暴な彼氏がおるんや?

  「う、うぅ、もう許じて…くだざい…」

  鼻血ダラダラ流して情けなく震える。熊が足を振りかぶって重い一撃がくると覚悟した瞬間…

  「おい、そこで何やってる!」

  表通りの方から叫び声が聞こえ、熊の動きがピタッと止まった。

  「警察が来やがったか。…二度と顔みせんじゃねえぞオッサン。」

  熊はワシの顔にぺっと唾を吐いて、彼氏の兎と二人で足早に去っていった。

  「大丈夫か、君?」

  駆け寄ってきた犬獣人の警官にワシは体を起こして作り笑いして見せた。

  「うぅ…すんません。もう、大丈夫ですから。」

  「そうか。このへんも最近妙な連中がうろついてるらしいから気をつけるんだ。」

  ドキっ。妙な連中ってワシんとこの組織じゃないやろうな…ワシの正体はバレてへんと思うけど。

  警官の後ろから、一人のヒト種の男の子が顔を見せた。ボロボロのワシを心配そうみ見つめていた。

  「彼がパトロール中の本官に君が乱暴されてることを知らせてくれたんだ。」

  ヒトのにいちゃんはワシにぺこっと会釈する。歳は20代前半くらいやろか…ヒト種はワシら猪に比べたら全体的に幼く見えるけど、まだあどけなさの残る気の優しそうなにいちゃんや。背はワシよりちょっと高いくらいやけど、体はシュッとしてて、スタイルええなあ…

  「よくお礼を言っておいてくれ。それじゃ本官はパトロールに戻るから。」

  警官が去っていくと、にいちゃんはワシにハンカチを差し出してくれた。

  「大丈夫ですか?鼻血が…」

  「だ、大丈夫やから気にせんといて、ハンカチが血で汚れてまうよ。」

  「ハンカチは汚すためにあるんですよ。」

  彼はワシの言うことを気にせず豚っ鼻を優しく拭いてくれた。…こんな世知辛い世の中にも親切な子はいるもんやなあ。柔和な笑顔に人柄が出とるわ。

  「ありがとう。おかげで命拾いしたで。」

  「災難でしたね。怪我は大丈夫ですか?」

  「ああ、これでも体は丈夫な方なんや。何かお礼がしたいんやけど…」

  その時、ぐううううと盛大にワシの腹の虫が鳴いた。こんなボロボロの格好で腹まで鳴らして…ワシどこまでカッコ悪いんや。恥ずかしいの誤魔化すために出っ腹をポコン叩いた。

  「ははは…安心したらなんか腹減ってたきたわ。せや、お礼に飯でも行かへん?」

  「お礼されるほどのことじゃないですよ…でも俺も晩飯まだなんで一緒に行きましょうか。」

  思いがけず食事に誘ってしまったけど、ワシ懐具合がかなり厳しいんよなあ…こんないい歳して高い店もよう知らんし…

  結局ワシは恥を忍んでチェーン店のハンバーガー屋に入ることにした。

  「ごめんな、お礼するなんて言っといてこんな店で。」

  「気にしないですよ、俺ハンバーガー大好きですから。」

  「そ、そうか…好きなだけ頼んでええから。」

  ワシとにいちゃんはそれぞれ好きなハンバーガーのセットを注文した。ところが…会計しようとポッケに手をいれたんやが…

  「な、ない…財布がない…」

  まさか、さっき熊にボコられてた時ドサクサに紛れた抜き盗られた…顔から血の気が引いていく。ど、どないしよ…

  「財布、無くしちゃったんですか?」

  「そうみたいや…」

  「じゃあ、ここは俺が出しますよ。」

  「ほんまにごめん。後で必ず返すから。」

  お礼するつもりが金出させてしまって、情けなくて恥ずかしくて…穴があったら入りたかった。ワシなんでいつもこうなんやろ。

  「今日は大変だったんですから、ご馳走させてください。」

  にいちゃんは笑ってワシの分まで会計してくれた。怒り出してもおかしくないのに、この子はなんで見ず知らずのワシになんでこんな良くしてくれるんやろ…にいちゃんの優しい笑顔にドン底だった気分も救われた気がする。

  ワシとにいちゃんは注文したセットを受け取って席に着いた。夜も遅い時間で客はワシら2人だけやった。

  「「いただきます。」」

  にいちゃんに感謝しながら、自慢の大口でバクっとハンバーガーにかぶりつく。さっき殴られたせいで口の中切ってたけど、肉の旨みが体に染み渡っていくようやった。

  考えてみたらワシ、誰かと食事するなんてどれくらいぶりなんやったやろ。

  「そういやまだ名前言ってなかったな。ワシは猪久場 重光(いくば しげみつ)や」

  「瀬尾 礼(せお れい)です。」

  「礼君かあ、いい名前や。」

  ワシと礼君はハンバーガーを頬張りながら自己紹介をしていった。

  礼君は現在21歳で、高校を出てから建設会社で働いてるんやって。顔や腕がちょっと日焼けしとるのもオモテで働いてるからか。言われてみれば結構肩幅もあるし胸板もしっかりしとる。

  出身高校を聞くと、工業高校出のワシでも名前知っとる超有名な進学校やった。

  「なんで大学行かなかったん?頭ええのに勿体ない。」

  「実は母さんが…」

  礼君ちは母子家庭で、礼君がまだ物心つく前にお父ちゃんが事業で失敗して借金残して蒸発してしまったらしい。なんちゅう無責任な父ちゃんやと怒りが湧いてきたが…よう考えたらワシ、礼君のお父ちゃん責めるいっこも資格なかったわ。むしろギャンブルで借金作ったワシの方が質悪い。

  お母ちゃんは「人様に迷惑かけるわけにはいかない」って自己破産もせず、女手一つで礼君育てながら借金返していったんやと。

  礼君はお母ちゃん楽させたくて子供の頃から必死に勉強して難関高校に合格したそうや。お母ちゃんは泣いて喜んでくれてたそうやが…無理が祟って礼君の受験の前にとうとう体壊して入院してしまった。お母ちゃんは奨学金借りてでも大学行けって勧めてくれたそうやが、礼君はお母ちゃんの入院費と生活費稼ぐために、少しでも給料の高い仕事探して卒業後すぐ今の会社に入ったそうや。

  「う、うぅ…グスッ…礼君…偉いなぁ。」

  「な、泣かないで猪久場さん。」

  礼君の頑張りに心打たれたのも大きいが、ワシは自分が情けなくなって泣いていた。どれだけ不運に見舞われても挫けない礼君に比べて、ワシの人生は嫌なこと投げ出して逃げてばっかりで、落ちて落ちてとうとうまともな人生を外れてしまったんや…

  ボロボロ涙を流すワシに礼君はまたハンカチ貸してくれた。

  「ごめんなさい、つまらない話聞かせちゃって。」

  「そんなことないで。礼君は若いのに立派や。」

  礼君は気を遣ってなのか、今度は明るい話題…スポーツとか音楽とか映画とか趣味の方面に話を振ってくれた。

  最近の曲はあんまり知らんけど昔のアーチストの曲を口ずさめば「その曲母さんがよく車でかけてました」とか、古い映画の話でも「続編から見始めたけど、シリーズ全部見ました。」とか…二回り近く歳離れてるけど、そのジェネレーションギャップも話のタネになった。

  若い子がこんなオッサンに話合わせるのも大変やと思うけど、礼君はワシの話を興味深そうにちゃんと聞いてくれる。食事自体もそうやけどこうやって誰かと話して笑うのも随分久しぶりな気がするわ。

  ただの夜中のガラガラのハンバーガー屋が二人だけの特別な空間のようにすら感じてまう。

  ワシ…この子のことがもっと知りたい。話してるうちに自然とそう思えることなんてこれまで感じたことのない感覚やった。

  だいぶ話し込んで飲みもんの氷もすっかり溶けきったころ、礼君が少しキョロキョロしながら小さな声で聞いてきた。なんだか少し顔が赤うなっとる気がする。

  「ところで…猪久場さんは、ご結婚してるんですか?」

  「結婚?無理無理、こんなデブ全然モテへんよ。嫁さんどころか恋人もおらんわ。」

  ワシが笑いながら腹をポンポン叩くのを見て礼君はなぜかほっとしような顔を浮かべた。

  「そう…なんですか。こんな魅力的な人なのに…」

  「ははは、礼君お世辞がうまいねえ。嘘でもおっちゃん嬉しくなってまうよ。礼君はどうなん?ハンサムやし、彼女の一人や二人いるんちゃう?」

  「そんな、いないですよ。」

  「へー、意外やな。ワシがギャルならほっとかんでこんな色男。」

  「本当に?」

  礼君は少し身を乗り出して声を顰める…

  「あの…猪久場さんは…ヒト種の男は…恋愛の対象になりますか?」

  「そりゃまあ…いけるけど。」

  礼君の目が大きく見開いた。胸を押さえて息を飲むと、ワシの顔を見つめて顔を真っ赤にして搾り出すような小さな声で聞いてきた。

  「あの…よかったら…このあと、お、俺と…ほ…ホテル、行きませんか?」

  「へ…?」

  [newpage]

  どうやってここまで来たのか全然覚えとらん…酒も入ってへんのにフラフラと浮ついた足取りでただ礼君の後を追ってきてたらいつの間にかこの寂れたホテルに着いとった。ヒト、獣人カップル、男同士OKで値段もお手頃らしい。「あの、ワシ今一文無しなんやけど…」って言ったら「分かってますよ。」って礼君は笑って入っていった。

  人生で初めてのラブホテル…想像してたより広くてベッドもフロもデカくて驚いた。「シャワー先にどうぞ」と礼君が言うので、ワシはそそくさと風呂場に入っていった。

  ワシは風呂場の鏡を覗き込む…いつもどおりのでっかい豚鼻にぷくぷく膨れたほっぺたの猪顔が映っとった。でっぷり突き出た腹に垂れた胸がだらしなく乗っかってなんだか鏡餅みたいやわ。

  どっからどう見てもデブで不細工なオッサンやのに、なぜか礼君に言われた「魅力的」だなんてお世話がいまだに頭にこびり付いて離れん。

  本気になんてしとらん、本気したらあかん…なのに、どうして鏡の中のデブ猪は膨れたほっぺ綻ばしてニタニタとニヤけてるんや。

  だがこの状況、ワシにとってはまさに渡りに船やった。まさか、相手の方から誘ってくれるなんて…こんな都合のええこときっと二度とない。これはきっと神様がモテないワシを憐れんで与えてくれた最後のチャンスなんや。ここで礼君に種付けして洗脳してしまえば、ワシの命は助かる。礼君には悪いが、この千載一遇の大チャンスを逃す手はない。ワシは風呂場で尻尾の先まで念入りに体を洗って、牙までしっかり歯磨きして風呂を出た。

  礼君は入れ替わりで風呂に入っていった。体に合うサイズのバスローブがなかったんでデカい縞柄のパンツ一丁のままベッドに腰掛けてワシは悶々としとった。

  …この後どうしたらいいんや?

  たまに抜いてたお気に入りのエロ動画では、いきなりキスしてた気もするし、相手の胸こねくり回してた気もするんやが…ほんとにええんか、ワシみたいなオッサンが若者にそんなことして?

  あーでもないこーでもないと、頭の中で"シュミレーション"してるうちに風呂場のドアが開いた。

  「猪久場さん、お待たせ。」

  バスローブ身を包んだ礼君を見て思わず息を飲んだ…少し日焼けした顔と比べて胸元にチラッと見える素肌からもとが色白だったことが伺える。獣人と違って当然スベスベで手触りが良さそうで…思わず触れてみたいと思ってまう。乾かしたばっかのふんわりした髪をかき上げるとシャンプーの匂いが優しく漂い、幼さの残る顔もぐっと大人びて見える。ああ、色っぽいってのはこういうことを言うんやな…

  礼君はワシの隣に腰掛けた。ほんのちょっとで触れる距離…心臓の鼓動がどんどん速くなってく…

  「あ、あの…礼君…ワシ、まだ言ってないことがあったんやけど…」

  「どうしたの?」

  「実は、ワシ…こんな歳やけど、まだ、その…一回も経験がなくて…どないしていいかわからんのや…」

  ああ、言ってもうた…こんなオッサンが童貞やなんて、笑われるやろうか、気持ち悪いがられるやろうか…

  ワシの心配を察してか、礼君は優しく微笑んだ。

  「俺も自慢できるほど経験豊富じゃないよ。でも一緒に気持ちよくできるようにリードするから。」

  「は、はい、よろしゅう…たのんます。」

  「そんなかしこまらないでリラックスしよう。

  じゃあ、猪久場さんが大事な秘密を打ち明けてくれたんだし、俺もとっておきの秘密、教えちゃおうかな…」

  「秘密?」

  「うん、実は俺…子供の頃、獣人になりたかったんだ。」

  「え、そうなん?」

  「うん、尻尾とか耳とか工作してお腹にクッションで詰め物したりしてよく一人で獣人ごっこもしてたんだ。いつか獣人になりたいって本気で考えてた時期もあったよ。」

  「それほんま?」

  ごっこ遊びなんて、礼君にもそんな時期があったんや。子供らしくてかわええなあ。ん、腹に詰め物ってどういうこっちゃ?

  「本当だよ。それに今でも…」

  礼君はベッドに置いてたワシの手に自分の手を重ねた。初めて触れた手は細くて繊細で温かかった。礼君の指がワシの太い指に絡んでいく…

  「え、あの…」

  「大きくて分厚い…毛皮もフサフサで…やっぱり獣人さんの手はいいなぁ…」

  突然のことで体がぴくっと跳ねてまった。解れかけていた緊張の糸がピンと張り詰めて、心拍数が一気に上がるのを感じる。手を握られただけでにこんなにドキドキしてまうなんて、青春時代になんもなかった反動やろか。

  「あ、あ…」

  礼君の手つきが大胆になっていく…ワシの指をマッサージするように一本一本くにくにと揉みほぐす。始めはびっくりしたけど、そのうち不思議とちょっとずつワシの気持ちも落ち着いてきた。ワシが手を握り返すと、礼君もギュッと握り返してきた。ワシらは見つめ合って自然と笑った。

  スキンシップってこんなに心の距離が近づくものなんや。

  「…お腹、触っていい?」

  「お、おう、こんな腹でよけりゃいくらでも触ってや。」

  握っていた手をするりと解いて礼君がワシの腹にぽんと手を置いた。

  「うわ…柔らかい…」

  礼君の手はワシの腹の出っ張りに沿って上から下へ撫でるようにゆっくりと動いていく…ちょっとくすぐったいが、毛皮の流れに沿って丁寧に撫でられるのがブラシかけてもらってるようでだんだん心地よく感じてきた。

  「面白いんか、こんなブヨブヨの腹なんか。」

  「ああ、柔らかくてあったかくてすごく気持ちいい。落ち着くよ。」

  礼君は目を瞑って手のひらの感覚に集中しとるようやった。確かに撫でられてるうちに腹がぽかぽかしてきた気がするわ。

  「なあ…よかったらワシも…礼君の体触ってみてええか?」

  「どうぞ。」

  礼君は一旦手を止めてするりとバスローブを脱いだ。ヒト種特有の体毛のない肌が露わになりワシはゴクリ息を飲んだ。

  「綺麗な…体やな。」

  恐る恐る、手を伸ばす…細く括れた腹周りも、腹筋の形が浮き出た引き締まった腹も、何もかもがワシと違ってたけど、なぜかそこに惹きつけられる。着地した手をすーっと下ろしていけば、張りのあるすべすべした感触と弾力が感じられる。服の上からじゃわかりにくいが普段肉体労働しとるだけあって、結構ガッチリしとる。

  「はぁあ、ええなあ。」

  「そう?俺は猪久場さんのお腹好きだな。」

  礼君も再びワシの腹を撫で始める。ベッドに腰掛けたワシらの手が交差し、お互いに腹を弄り合う。礼君の指先にだんだん力が入って、弛んだ腹の肉を揉みほぐすような動きになってきた。さらに膝に乗っかった下っ腹の下に手を潜り込ませて持ち上げるようにして揉み始める。

  「重たくないん?」

  「ずっしりして気持ちいい。」

  全部脂肪なんやが、マッサージされてるようで気持ちええ。それにお互いに触れ合ってるっちゅう感覚が無性に嬉しくて、心まで温まっていくようやった。

  もっと礼君の体を知りたい…そう思った矢先、ワシの腹肉もムニムニと弄んでいた礼君の手がすーっと上がってきて、腹に乗っかったワシの垂れた胸を持ち上げるように包み込んだ。

  「ひゃ、礼君?」

  「ごめん、驚いた?」

  そう言いつつ指がゆっくりとワシの胸の脂肪に沈み始めた。

  ムニムニ、ムニムニ…

  「はぁ…片手から溢れちゃいそうだ。いいおっぱいだね。」

  「た、ただデブなだけや。ぶふぅ…」

  思わず鼻から変な声が漏れてまう。最初はびっくりしたけど、誰かに優しく揉まれるのがこんな気持ちええなんて知らんかった…雄にとっちゃこんなもんただの重くて邪魔な脂肪の塊やと思っとったのに。

  ワシもお返しに礼君の胸をペタペタ触ってみる。線の細さの割に厚みのある胸板は、脂肪とは違う弾力があって気持ちよかった。お互い胸触りあってるうちに、気づくとワシの鼻息が荒くなってきとった。興奮しとるんか、ワシ…

  「胸、感じるんだ。それじゃ…」

  ワシの様子を見て、今度は乳首を摘んできた。

  「ひぎっ!」

  乳首の先から駆け抜ける短く鋭い針みたいな電気信号に短く叫んでもうた。な、なんなんこれ…さっきまでとは刺激の種類が違う…

  礼君は少しずつ指に力を入れてクリクリと弄ぶように乳首を摘み続けてくる。どんどん激しくなっていくビリビリとした刺激にワシは喉をゴフゴフ鳴らして喘ぐことしかできんかった。

  「お、おお…おぉおん!」

  「だめだ、猪久場さんが可愛いすぎて止められない。」

  礼君はいきなりワシの体にガバッと抱きついた。体重は半分もないはずやが、ワシは勢いのままコロンとベッドに押し倒される。おっぱい揉まれて押し倒されて…女の子ってこんな感じなん?

  礼君はワシの体に乗っかったまま左胸を手で揉んで、反対の胸に吸いついて乳首をぺろぺろ舐め始めた。

  「お、おぉおん、あ、あかん。」

  さっきまでワシの体の調子を整えながらちょっとずつ慣らすように愛撫してくれてたんやろう。でも今は力いっぱいワシの体をしゃぶって味わって楽しんどる。あったかくて涎がたっぷり纏わり付いたぬるぬるの舌が乳首をころころ転がす。こんなん始めてや、気持ち良すぎる。

  乳首を吸うジュルジュルという音とワシの喘ぎ声が部屋に響き、胸の毛皮が涎でしだいにビチャビチャになってく…

  ワシはしがみ付くように礼君の体を抱きしめた。腹の贅肉に沈みながも礼君の乳首責めは止まらずおんおん鳴かされながらワシは礼君の体を弄った。頭を、背中を、尻を…どこをどうすりゃ礼君が喜ぶかわからんから、自分のやりたいように揉んだり撫でたり繰り返す…礼君はその動きに合わせて大きき鼻を鳴らしたり、一瞬ぴくっと動きを止めたりする。

  どのくらいそうしていたか…礼君の動きが止まり、腕一本ベッドについて体を起こした。

  ねちゃ…礼君の胸のあたりから透明な粘液の糸が伸びる。

  「猪久場さんのチンポ…デカい…」

  ワシのちんちん、ガッチガチ勃起するとパンツからごっそりはみ出してへそのあたりまで伸びてきてまうせいで、ワシの腹も礼君の胸も我慢汁でべちゃべちゃになっとった。

  「すまん、汚してもうたな。」

  「ううん、こんなにいっぱい出るくらい興奮してくれて嬉しいよ。」

  礼君はうっとりした顔でワシのちんちんの裏筋を撫でる…

  「ぶごっ!?」

  「血管がボコボコ浮き出て裏筋まで太い…獣人チンポエロすぎ…」

  そのまま顔を近づけたかと思うと、千歳飴でも舐めるように裏筋をペロリと一舐めしてパクッと口いっぱいに頬張った。

  亀頭が唾液に包み込まれる…こんなん始めてや。生まれてから今まで人肌を知らんかったワシのちんちんには刺激が強すぎた。舌を使って雁首舐め回されると敏感なそこからビリビリと刺激に波が押し寄せる。

  「ぶぎいいい、だ、だめや礼君!」

  ワシはシーツをギュッと掴んだ。礼君は頭を前後に動かしてグポグポ言わせながらちんちんしゃぶっとる。

  「お願い、い、一旦止めて、もう出てまう!!」

  ストローク5回分もいってないと思うがギブアップ宣言に礼君は口を大きく開けてワシのちんちんを解放してくれた。

  「はぁはぁ…」

  「口の中でビクビク跳ねて凄かったよ。大きすぎて顎疲れたけど。…もうイキそう?」

  「う、うん。」

  「じゃあそろそろ…」

  礼君は立ち上がってボクサーパンツを脱ぐ。ヒト種が勃起してるの始めて見たわ…ワシに比べたらだいぶ小さいが、多分ヒトにしたら標準的な大きさなんちゃうかな?元気で形のいい綺麗なちんちんやと思った。

  そのままベッドに横たわると、枕を腰の下に敷いて体を曲げてワシの方に尻を向けた。

  「もう慣らしてある。そのまま挿れて…」

  ドクン!

  ワシの胸が大きく脈打った。おそらく目の前の"獲物"を認識して胸の中に埋め込まれとるデビルコアが反応しとるんやろう。

  やったことはないが、礼君の中に押し込んでさえしまえばあとは体が勝手に動いてくれるという確信があった。

  これできっとワシは助かる。

  礼君と目が合った。まさかワシが自分を洗脳しようとしているだなんて微塵も考えず、期待するような切ないような目でワシを見つめとる…

  ゴクン…いいんか…ほんまにそれで?

  ワシらはほんの3、4時間前に会ったばかり…それもただ偶然通りすがっただけや。

  なのに、礼君は見ず知らずのワシを助けてくれた。寸借詐欺を疑いもせずメシを食わせてくれた。…そういえば、お母ちゃん助けるために大学諦めたって言ってたな。今どきの子にしちゃ信じられんくらいの根っからのお人好しや。

  …洗脳ってどんな感じなんやろう?組織のゆうこと何でも聞くロボットみたいになってまうんやろうか。礼君の優しいところも無くなってまうんかな。大好きなお母ちゃんのこともよう分からんようになってしまうんかな。

  礼君と過ごしたほんのひと時の時間…ワシにとって掛け値なしに人生で一番楽しかったと思う。だけどそれも騙して食っちまうための芝居だったことになってまうんかな。

  そして何より…ワシをまっすぐ見つめる眼差し、この目の光も永遠に無くなってまうんかな。今のワシにはそれがとても悲しいことに思えてしかたなかった。

  ワシは…ベッド脇に手を伸ばした。

  「…付けてくれるんだ、ゴム。」

  「こ、こういうのは、その、やっぱ衛生面大事かなって。」

  「優しいなぁ。じゃあ付けてあげるよ。」

  何も知らん礼君は獣人用XXXL(サイズ豊富やなこのウチ…)のゴムを受け取る。ワシはやりやすいように垂れた腹肉を両手で持ち上げると、礼君は慣れた手付きでガチガチになったワシのちんちんに当てがってクルクルと下ろしていく。埋もれた部分も多く土手肉の中に指突っ込んでいった。…最近またちょびっと太ったか?なんか埋もれてる部分が増えとる気がする。…しかしなんでワシこんなに貧乏やのにブクブク太っていくんやろう?世界不思議発見やでほんま。

  礼君は器用に根本までぴっちり装着させると、ローションをたっぷりと垂らし、改めてコロリと寝転がった。

  「できた。それじゃ改めて…猪久場さん、来て…」

  [newpage]

  その夜のそこから先のことは正直あんまり覚えとらん。たぶんいろんな感情と強すぎる快感で脳がオーバーヒートしてもうたんやろうな。せっかくの童貞喪失の瞬間、一生の思い出になるかと思っとったのになあ。礼君にどうやったか聞いても『凄かった…』としか答えてくれんかった。

  朝になってあんまりにもあっさり別れたもんやったから、ワシはてっきり礼君との関係はこれっきりやと思っとった。一応ラインは交換したけど、こんなおっさんに連絡する用事もないやろと形式的なもんやと思っとった。

  礼君と別れた後一人ぼっちの家に帰った時は、心にぽっかり穴が空いたようやった。

  「また会いたいなあ…」

  他に誰もおらん部屋で一人呟いたとき、スマホにメッセージが届いた。

  …誰や、借金ならもうないぞ。

  『今度の休み、どこか遊びに行きませんか?』

  このメッセージが届いた瞬間から、ワシの日常がガラッと変わった。

  組織に属してるゆうても、ワシみたいな半端もんの下っ端に金なんか支給されない。自分で日雇いの仕事でも見つけて稼がにゃならん。ワシは礼君に会えることだけを楽しみに、必死に働いて金を稼いだ。

  そして待ちに待った休日、前の日はワクワクしすぎてよう眠れんかったけど礼君の顔見たら眠気も吹き飛んだ。ワシは日雇いやし、礼君もお母ちゃんの生活費稼いどる身やしでお互い懐が厳しいっちゅうことで、あんまり金かからず過ごせるとこがええなって公園に行くことになった。ただ噴水眺めたり近所の子供が野球したりしてるの眺めながら礼君の作ってきてくれたおにぎり食って話するだけやったけど、ワシにはたまらなく楽しい時間やった。

  一日の終わりには始めて会った日と同じホテルにしけこんで礼君を抱いた。今度はワシがホテル代出したし、匂いも味も手触りも…記憶もちゃんと残っとる。もちろんゴムはちゃんと付けた。

  それからというもの、ワシと礼君は休みになると連れ立って出掛けるようになった。

  仕事は相変わらず辛いし賃金は低い、それは以前と何にも変わっとらん。せやけど、今のワシには礼君に会えるっちゅう何よりの希望がある。この仕事で金稼いだら、礼君と一緒に飯が食ったり出掛けたりできる…そう思ったら仕事にも精が出るしダラダラした生活に張りが出た。

  礼君とのデートはあんまり金のかからないとこばっかりやったけど、どこで何をしても礼君は楽しそうに笑ってくれる。

  ボウリングでカッコつけてズッコケても、カラオケで音痴なダミ声披露しても、ホラー映画でビビって半泣きで礼君の手握っても、礼君の笑顔が見られるだけでワシには最高の時間やった。

  好きな人が出来るだけで人生はこんなにも瑞々しく色付いて見えるもんなんや…

  こんな簡単なことに今更気づくなんて…せめて礼君と出会うのが1年早かったら、ワシの生活は決定的におかしくなる前に踏み止まることができたかもしれん。訳の分からん組織に入れられることも、改造手術なんて受けさせられることもなかったやろう。

  そして…与えられた任務の期限に怯えて暮らす必要も。

  ***

  任務の期限の日…

  ワシは朝から自分の部屋で布団被って息を潜めておった。

  今日一日、何も起こらなけえばやり過ごせるかもしれん。もしかしたら、ワシのことなんて組織はとっくに忘れとるかもしれん。そんな淡い期待を抱きつつ体はブルブル震えとった。

  午後11時…さすがにもう誰も来ないやろ、と布団から出かけた時、玄関の扉がドンっと一回叩かれた。ワシはガバッと布団に潜り、心の中で念仏を唱えた。

  「猪久場、出ろ。隠れても獣は匂いで分かる。」

  機械のような感情のこもらない声…ワシは隠れても無駄だと悟りおとなしゅう出ていくことにした。

  玄関を開けると、立っていたのは黒いコートに身を包んだ狼獣人の大男やった。顔には大きな傷があり鋭い目で見つめられるだけで背筋が凍りつきそうやった。背丈は2m近くあり、鍛え上げた肉体がコートの上からでもはっきり分かる。

  「上がるぞ。」

  狼はワシの返事も聞かず土足で部屋に上がり込んできた。ワシは借金取りの事務所に呼び出された時のように狼の前で小さくなっとった。

  「あ、あの…お茶でも出しましょか?」

  「いらん。要件は分かっているな。」

  「あ、あの…」

  ワシは狼に前に跪いて、腹肉で曲げにくい体を必死に小さく丸めて頭を畳に擦り付けた。

  「すんません。あと一週間…いや、3日待っていただけないですか。」

  「だめだ。」

  「そこをなんとか…お願いします。」

  「この一月、おまえの行動を見ていた…ホテルにまで連れ込んだ小僧がいただろう。なぜ能力を使わない?」

  「そ、それは…あんなヒョロヒョロのガキ、捕まえたところでお役には立たないと思いまして…」

  「それはおまえの判断することではない。おまえはただ与えられた任務を遂行すればいい。」

  「う、うぅ…お願いです、時間をください。もうちょっとだけでいいんです。」

  ワシは精一杯頭を下げたが、狼の声は感情の一切乗らない声で呟いた。

  「埒があかん。」

  ドスっと首筋に雷が落ちたような衝撃を感じ、ワシはその場で意識を失った…

  [newpage]

  「うぅ…」

  ワシが目を覚ますと、コンクリートの床の上に倒れておった。高い天井と積み上がったコンテナ…どこかの倉庫か?

  そして目に前には、手足と口を縛られた礼君が横たわっておった。

  「礼君!」

  ワシは礼君に駆け寄った。手足を縛った縄を解こうとしたが、固く縛られて解くことが出来んかった。

  「起きたか。」

  後ろを振り向くと狼が立っとる。デカい図体やのに全く気配を感じんかった。

  狼は礼君に近づくと鋭い爪で縄を切り裂いた。

  「礼君、大丈夫か?」

  「俺は何ともないよ。猪久場さんこそ気絶させられてたみたいだけど。」

  ワシたちはお互いの無事をとりあえず喜んだが、狼から逃れることは出来なそうやった。

  「猪久場、やれ。」

  「え…でも…」

  礼君が庇うようにワシの前に出て狼を睨みつけた。

  「ちょっと、あんた何なんだ。早く俺たちを解放してくれ。警察呼ぶぞ。」

  「礼君、こいつは危険や。ワシに任せてくれ。」

  「猪久場さん、この狼のこと知ってるの?」

  「そ、それは…」

  ワシがそれ以上何も言えんでいると、狼が口を開いた。

  「時間の無駄だ、俺が説明してやる。」

  「や、やめてくれ!」

  「黙れ。今すぐ小僧を殺してもいいんだぞ。」

  ワシはそれ以上何も言えんかった。

  狼は自分とワシが組織に所属する改造獣人であること、ワシの能力のこと、ワシに与えられた任務のことを淡々と簡潔に述べた。

  もうお終いや…礼君の中でワシはもう自分を利用するために近づいた汚い悪人になったやろう。きんなことに巻き込んだワシを恨んで当然や。

  ワシは狼の方を向き、もう一度土下座した。

  「お願いです。ワシは処分されてもかまいません。この子だけは助けてください。」

  「だめだ。秘密を知った者を生かしておけん。」

  「この子は口の堅い子です、けして秘密は漏らしません。ワシが命に代えても保証します。」

  「くどい。おまえに選べるのは小僧を犯すか、二人で死ぬかの二つに一つだ。あと10分で日付が変わる。それまでにできなければ二人とも殺す。」

  「そんな…お願いです。どうか、どうか礼君だけは見逃してください…」

  ワシは何度も頭を擦り付けて頼んだが、狼はそれ以上の返事をしなくなった。

  どうにか礼君だけでも助けられんやろうか…だめや、何も思いつかん。

  打ちひしがれ背中を丸めて這いつくばるワシに背中にぽんと手が置かれた。

  「もういいよ、猪久場さん。顔上げて。」

  ワシは体を起こして礼君の方を見た。怒っても悲しんでもいない…穏やかないつもの顔やった。

  「礼君?」

  「猪久場さん、一つ教えて。どうして初めて会った日、ホテルでゴム付けてくれたの?」

  「それは…」

  言葉がうまく出てこない。いや、この後に及んでワシはまだ恥ていた。

  だって…だってこんなオッサンやで?下手したら親子くらい歳離れとるんやで?大デブやし、ブサイクやし、貧乏やし、おまけにケンカも弱い…好かれる要素いっこもないやんか。どう考えても釣り合わんやんか。こんなワシが、ワシなんかが…

  意気地のないワシは縋るように礼君を見た。礼君はワシをじっと見つめて答えを待ってる。

  はっとした。あの時…ワシが礼君に能力を"使わないこと"を決めた時の礼君の眼差しを思い出す。…そうだ、あの時ワシはとっくに選んどったんや。

  礼君の真っ直ぐな眼差しがあの時と同じようにワシに勇気をくれる。背中を押してくれる。

  礼君は命の代えてもワシが守るんや。

  「ワシ…礼君のこと本気で好きになってしもうたんや。もし力使うたら、礼君の心が消えてなくなってまう、そんなの…絶対に嫌や。」

  こんな時やのに礼君はぱっと嬉しそうに笑った。

  「ありがとう。ねえ猪久場さん、お願いがあるんだけど…俺に種付けしてくれない?」

  「だめや…そんなことしたら、君が君でなくなってまう。だから…」

  礼君は指で"しーっ"とワシの言葉を遮った。

  「猪久場さんにだけ告白させておいて、俺が返事しないのはずるいよね。俺も猪久場さんのこと、好きだよ。」

  「へ…?」

  「だからきっと大丈夫。もし洗脳されたって、その気持ちが変わることはないよ。」

  「でも…」

  「それに、このままじゃ二人とも殺されちゃうよ?例え洗脳されてたって二人で生き残った方がずっといいよ。その結果どんなことになっても俺はあなたを恨まない。」

  「…いいんか、ほんまに?」

  「もちろん。それに俺、猪久場さんに生で犯してもらえるのずっと楽しみにしてたんだ。」

  「礼君、けっこうスケベやね。」

  「ははは、今更?出会ったその日にラブホ誘っちゃう男だよ?

  ほら時間がない、サクッとヤッてよ。」

  礼君は軽口叩きながらするすると服を脱いでいく。ワシも覚悟決めて拭きを脱ぎパンツを捨て去った。

  すぐさま礼君は硬いコンクリの床に膝を付いてワシの乳首に吸い付きペロペロと舐めて刺激し始める。

  「れ、礼君、いきなり飛ばしすぎや。」

  「ベロベロ…猪久場さん、ベロベロ…ここ責めたら一発でしょ…」

  この1か月でワシがどうしたら気持ちよくなるかすっかり覚えたようや。スイッチの入ったワシは鼻息も荒く心拍数も一気に高まり、ちんちんに急激に血が集まりだす。

  「ぶふぅん…はぁん、ええわ、もっと…もっと激しく!」

  礼君はワシの胸を涎でベトベトにしながら、ワシの股間に手を伸ばしズリュズリュ手コキし始める。「ぶもぉ!」そ、そんなんされたらワシ…

  ワシのちんちんがムクムクと膨らみ硬さを増していく…

  完全に勃起するまで時間はかからんかった。ガチガチ硬くなったちんちんを礼君がさらに擦り上げればビュルビュルと我慢汁が溢れ出す。

  「はぁはぁ…もう辛抱たまらん…」

  ワシはガバッと礼君の体を抱きしめると、硬い床で痛くないよう背中と頭をしっかり腕で支えながら、体重をかけてそのまま床に押し倒した。

  「痛くなかった?」

  「平気だよ。さあ、早く挿れて…」

  礼君は仰向けのまま腰を曲げて尻を突き出した。慣らす暇なんかなかったはずやのに、ピンク色の肉穴がヒクヒク蠢いとる。

  「そのまま挿れて大丈夫か?」

  「この一か月で猪久場さんの極太にだいぶ拡張されたから…なんとかいけるよ。」

  かわええこと言うなあ。この子がすっかりワシの雌になってくれた、そんなふうに感じられてワシのちんちんは最高潮にギンギンに滾った。

  ドクン…胸が大きく鼓動する。

  「よし…挿れるで。」

  初めてに生交尾…こんな形で実現するなんて思いもしなかったが、ワシの獣としての本能は確実にこの状況を歓喜し、ダラダラと涎を垂らしていた。

  ワシは出っ張った腹のせいでよう見えんが感覚で穴の位置に当てがって、ゆっくりと差し込んでいった。

  「ぐ、うぐぐ…」

  我慢汁でヌルヌルになってるとはいえさすがにキツかったか。礼君は深呼吸して肛門の力を抜いとるようやった。

  「だ、大丈夫か?このまま慣らそうか?」

  「平気、続けて。」

  ワシのちんちんはそのままズブズブと飲み込まれていき、とうとう根本まで入ってしまう。礼君は少し苦しそうやったが苦笑いして見せた。

  「全部、入ったで。」

  「いいよ、そのまま、動いて…」

  ワシは体を押さえつけゆっくり動き始める。おお、これが生のセックスの感触か…ゴムの膜のないダイレクトな温かさとヌルヌルした感触がめっちゃ気持ちええ。

  じゅぼじゅぼ…ぐぽぐぽ…

  礼君の尻からいやらしい音が静かに響く。

  「はぁはぁ…だんだん慣れてきた。」

  礼君も感じてきているのか、ちんちんがムクムクと勃ち始めている。ワシは少しずつストロークを速めながら有り余る体重をかけてぐっと押し込むように腰を振った。

  「あ、あぁん、いい、デッカい獣チンポ、いい。」

  「ぶふぅー…ぶふぅー…もっと激しくしたるからな…」

  劣情に火が付いたワシはダブついた腹肉が大きく揺れるほど激しく腰を振りまくった。

  ダッポンダッポンダッポン!!

  腹肉が盛大に音を奏でる。ワシはますます興奮してコンクリの打ちっぱなしに寝とる礼君の負担もお構いなしにぐぐっと体重をかけた。

  半ば義務で始めたセックスやけど…今までで一番楽しくて気持ちよくて高揚しとった。きっとそれは礼君も同じやと思う。普段はキリッとした賢そうな顔が、気持ち良さそうに涎垂らして快感に喘いどる。かわええヒトちんもすっかりギンギンになっとる。

  「そろそろ…イクで…」

  「お、俺も、イキそう…」

  「礼君、愛してるで!!」

  「俺もだよ、猪久場さん!!」

  ワシはたまらずラストスパートをかける。腹が腰の動きに合わせて激しくブヨブヨと波打っとるのが見える。礼君の中でワシのちんちんがブクっと膨れ上がっていく…

  「「いぐうううう!!!」」

  ドビュッーーー!!!ドビュドビュドビュッ!!ビュルビュルビュルビュル!

  礼君の体内にワシの精液が大量に注ぎ込まれ、同時に礼君の腹に彼自身の精液が叩きつけられた。

  「はぁはぁ…」

  疲労感と同時に急激に頭が冷える。

  とうとう、やってしまった。ワシは一番大事な人に取り返しのつかんことをしてしまったんやな…だが、これでええ。

  さて…あとはワシが死ぬだけや。

  ワシが死んで胸の中に埋め込まれとるデビルコアが停止すれば、もしかしたら礼君は洗脳から解放されるかもしれん。その可能性の賭ける。はぁ…もうギャンブルはやらんって誓ったのに、最後の最後に大博打やな。

  この一月、礼君と過ごした時間が頭の中を駆け巡る。どんな小さな出来事も、ワシにとってはキラキラ光る宝石みたいに大切な思い出や。

  ありがとう礼君。こんなどうしようもないワシの人生の最後にこんな素晴らしい時間をくれて。お別れや…

  [newpage]

  ワシが覚悟を決めた、その時やった。

  ドクン!!!

  ワシの胸が突然大きく脈打った。

  ビクン!!!

  それに呼応するように、礼君の体が大きく跳ねた。ワシは驚いて飛び退いた。

  礼君はむくっと体を起こした。その体が…みるみる膨らんでいく。

  い、一体礼君の体に何が起こってるんや!?

  「グルルルルル…」

  礼君は喉の奥から獣のような低い唸り声上げた。

  全身からゴキゴキ、バキバキと骨の軋む音が鳴りだし、急激に背が伸びていった。目測で2mをとっくに超えてもまだ伸び続けとる。

  体はますます太く膨れていき、腕も足も強靭な筋肉が発達していき、同時に体表を焦茶色のゴワゴワした体毛が覆っていく…

  胸の筋肉もどんどん厚さを増していき、腹が風船を膨らませるように丸く膨張していき…括れていた礼君のウエストは見る影もない巨大な太鼓腹になっていく。盛り上がった肩の筋肉と太くなった首が一続きになってずんぐりした猪首を形作る。

  そして、顔…小さなヒトの鼻が潰れて大きく広がり、上顎と一体になって前へ迫り出し、獣人宛らのマズルを形作っていく。頭蓋骨に形まで変形しとるのか、耳が頭部に移動して三角になってピンと立ち、下顎からは鋭く太い牙が伸びていった。

  礼君の体の変化が止まった。その姿はまるで…

  「ぶごおおおおおおおお!!!」

  巨大な猪はデカい腹の底から大きく咆哮した。

  背丈は狼より遥かにデカく、2m半はあるように見える。全身が厚い脂肪と毛皮に覆われながらも内側に途轍もなく太く強靭な筋肉が備わっているのが容易に見て取れた。腹はデーンと大きくまん丸に突き出しているが、ワシと違って垂れ下がっておらず巨大な球体のようやった。巨体を支える足はまるで大木みたいで、腕なんかそこらのプロレスラーの何倍もあり筋肉の形がはっきり見えるほどやった。

  例えるなら相撲取りのような体…だがワシはこんな巨大な相撲取り見たことないで。

  「な…こ、これは…同族化!?」

  人がセックスしとる横ですら表情一つ変えなかった狼が、目ん玉ひん剥いてわなわな震えて驚いとった。

  「おい猪久場、おまえの能力は洗脳ではなかったのか?」

  「知らん、ワシが聞きたいわ!」

  狼がワシに詰め寄ろうとすると、突然猪獣人が動き出した。

  「ぶごおおおおおおおおおお!!!」

  猪獣人は盛大な鼻息とともにまた大きく吠えると、いきなり狼に向かって突進していった。

  「ぐっ…」

  狼の体を掴むと、猪はそのまま壁に突っ込んでいった。その勢いは正しく猪突猛進。まるで過積載の10トントラックがが全速力で暴走しとるようやった。

  ドゴーーーン!

  「ぐはぁ!」

  そのままトップスピードに乗った状態で壁に突っ込み、狼はコンクリの壁と猪の間で押し潰された。激突の瞬間建物全体が地震のように大きく揺れ、コンクリの壁面に蜘蛛の巣みたいな亀裂が走った。

  猪がその場を退くと、狼の体といっしょにデカいコンクリの破片がボロボロと床に剥がれ落ちた。壁は鉄筋が剥き出しになっとる。…こりゃ死んだな。

  ワシは走って巨体の猪の元へ駆け寄った。

  「礼…君?ワシが分かるか?」

  「猪久場さん。」

  「意識ははっきりしとるか?」

  「うん、イッたばかりで頭冴えてる。」

  「大丈夫か?洗脳されてへんか?…ってこんな聞き方しても分からんよな。えーっと…ワシのために尽くしたいとか、ワシの望み何でも叶えてやりたいとか、そんなこと考えてへんか?」

  「考えてるよ。」

  「ああ…なんてことや…礼君が洗脳されてもうた…」

  「それは元からだって。大丈夫、俺は正気だよ。」

  「え、そうなん…?」

  猪…礼君はすっかり高くなった目線からワシを見下ろす。その目は間違いなくいつもの穏やかな礼君のものやった。

  [newpage]

  「う…うぅ…」

  瓦礫の下で狼が呻き声を上げた。嘘やろ、まだ生きとるんか?並の獣人やったら確実に内臓ぺちゃんこになっとるはずやのに…まともな改造獣人ってこんなにタフなんやな。

  礼君は素早く動いて狼の体を後ろから羽交締めにした。

  「くそ…離せ…」

  狼は抵抗して暴れたが礼君の体はびくともせんかった。改造獣人は並の獣人の何倍もの筋肉があるらしいが全然勝負になってへん、まるでチビッ子力士と関取の力比べや。

  「猪久場さん、こいつどうしよう?折る、首?」

  「いや、それはだめや。こいつが死んだら組織から別の追手がかかる。

  ワシに考えがある。礼君、その狼の尻、こっちに向けてくれんか。」

  礼君はワシの意図を理解してくれたようで、狼を羽交締めにしたまま床に腰を落とし、狼の体を自分の突き出た腹に乗っけた。そして足を器用に使うて狼の股をM字にパカっと開かせてガッチリ固定した。

  「礼君、ちょうどいい位置や。」

  「ぐ、何をする…」

  「ぶへへ、お察しのとおり、今から君を犯して洗脳するんや。」

  「よせ!やめ…むぐっ…」

  礼君が喋っとる途中の狼の口を手で閉じた。狼はもう喉の奥でグルグル唸ること以外何もできへん。

  ワシは牙を使うて狼のズボンの尻をビリビリ引き裂いた。狼のケツが丸出しになる。

  「ぶへへへ…泣こう喚こうがが助けはこないでぇ。」

  ワシこんな能力やし、いっぺんコレ言ってみたかったんや。悪玉に浸っとったら何だか興奮してきたみたいや。

  ワシは指先を口に入れて唾液を絡ませると、自分で乳首をコリコリ刺激し、反対の手で萎えかけた竿をゆるゆる扱き始める。

  狼は声も出せないまま顔を引き攣らせて必死で暴れるが、礼君に筋力と体重の前には無駄な抵抗や。そんな狼に様子を見てると、胸の奥から劣情が溢れ出してちんちんに注がれていくようやった。

  ワシの中のデビルコアが喜んでるんやろうか?きっとこれが"本来の使い方"なんや。ワシの竿はムクムクと硬度を取り戻し、勃ち上がって腹肉にビタっとくっついた。

  「いくで。」

  ワシは泣きそうな狼の尻に先っぽを当てがった。だが、狼はケツの穴をきつく締めてワシのちんちんが挿れられんよう最後の抵抗をしとる。

  その様子を見て、礼君が狼の首を太い指でぐっと締め上げた。

  「ぐ、が、がぁ…」

  礼君ナイスや。

  首の動脈を締め付けられ脳への血液が極端に制限された狼は口をパクパクさせ、しだいに体の力が抜けていっとるようやった。

  狼のケツが程よい締まり具合になってきたところで、ワシのちんちんをぶち込んだ。礼君ならともかく、この狼に遠慮はいらん。最初から全力でドチュドチュ掘ったった。

  この狼、ケツは初めてか?程なく穴から血が滴りだし、ヌルヌルあったかくなり出す。この感触がけっこう気持ちよくワシは夢中になって突きまくった。

  面白いことに礼君が狼の首の動脈をコリコリ動かすと狼のケツがギュッと締まった。体が無意識に反応して筋肉を収縮させとるらしい。狼は礼君の操り人形のようにワシのちんちんを締め付けて気持ちよくさせた。

  「さあ、そろそろ出すで。狼君、グッバイやで。」

  「んんんーーー。」

  半死半生の狼は最後に目でやめてくれと訴えたが、もう遅い。ワシは思いっきり腰を突き出して狼の体内の深いところを突き刺した。

  ドップン、ドプンドプンドプンドプン!!

  精液が、狼の体内に注入されていく…ゆっくり、ながーく、でも大量に。狼の腹がポコっと膨れてきたとこでようやく射精が収まると、胸がドクンと大きく鳴った。

  ワシは能力の発動を確信し、狼の体内から萎えたちんちんをズルっと引き抜いた。

  「礼君、もう離してええで。」

  礼君が手を離すと、狼はドサっと床に倒れこんだ。…さて、どうなることやら。

  呼吸を取り戻した狼はうずくまってゲホゲホ咳き込んでたが、やがてゆらーっと体を起こした。

  礼君も一応警戒してくれとるが、ワシも思わず身構える。

  ガバッ!

  狼はいきなりワシの足元に顔を近づけてきた。一瞬、噛み付くつもりかと思ったんやが…ワシは爪先に生暖かい、ねっとりとした感触を覚える。

  「な…何しとるんや?」

  「古くより足の甲へのキスは隷属の証なのですよ、ご主人様。」

  「それは足の甲でもキスでもない、足に指の股ベロベロしゃぶっとるだけや。」

  「はぁ…何という芳醇な香り…我が主人に相応しい。」

  狼は犬科特有のデカいベロで足の指の一本一本をチュパチュパしゃぶりながらうっとりした顔しとる。あの鉄面皮がこんな変態になってまうなんて、我ながらなんちゅう恐ろしい能力なんや…

  というか、これじゃワシが能力使うて足舐めさせとるみたいやんけ。ち、違うんや礼君、これは狼が自主的にやっとるだけなんや、そんな目しないで…

  「わ、分かったからもうやめーや。」

  ワシが足を引っ込めると狼は名残惜しそうに口の周りに涎を拭った。

  「ところで…狼君?」

  「私のことは犬とお呼びくださいご主人様。」

  「犬だか狼だかややこしいわ。

  聞きたいんやけど、どうして礼君は猪になったんや?何か知らんか?」

  「申し訳ございません。詳しいことは私も存じ上げないのです。これは推測ですが、ご主人様にお力が一時的に変質したのではないでしょうか。」

  「変質?」

  「はい、ご主人様がこぞ…礼様にお力を使われた時に何か条件を満たしたのでは?」

  「条件?それは一体…」

  「愛だよ!」

  礼君が叫んだ。

  「猪久場さんの愛が奇跡を起こしたんだよ。」

  礼君…ワシも何となくそんな気はしとったんやが、そんな一点の曇りもない純粋な目してはっきり言われたら…照れるやんけ。

  「ご主人様の能力について、私も調査してみましょう。」

  「お、おう、頼んだわ。それと、狼君にはもういっこ頼みたいことがあるんや。」

  「はい、何なりと。」

  「ワシらは組織と関わらずただ静かに暮らしたい。君は組織に戻ったら、ワシらは死んだと報告してくれ。」

  「承知しました。組織が持つご主人様の情報も出来る限り消去するよう試みます。」

  「そんなことできるん?」

  「諜報とは潜入工作は私の得意分野ですから。その代わりと言ってはなんですが…」

  「なんや?」

  「またご主人様の子種を、私めに種付けしていただけないでしょうか。」

  「え、なんで?」

  「お願いです。定期的に子種をいただけないと私は発狂してしまいます。せめて週1回は私のケツにその逞しい巨根をぶち込んでいただきたく。」

  「週1かぁ…どうする礼君?」

  「うーん、秘密守るためなら仕方ないよね。でも、猪久場さんとのエッチは俺が最優先だからね。」

  「あ、ありがとうございます。礼様の足も舐めさせていただきます!」

  「だからそれやめーや。」

  狼は今いる倉庫の場所をワシらに教えると、偽装工作のために組織へ引き上げていった。ちょびっと変態やけど仕事はできそうやし任せて大丈夫やろ。

  [newpage]

  二人きりになった倉庫で改めて礼君の巨体を見上げる…元のヒト種の礼君の体とは似ても似つかない筋肉と脂肪でできた山みたいな体や。

  「礼君…ほんまにすまん。」

  「どうして謝るの?」

  「どうしてって…そんな体にしてしもうて…」

  「俺、この体気に入ってるよ。」

  「え…?」

  「前に話したでしょ。俺、子供の頃から獣人に憧れてたんだ。それに、猪久場さんと同じ猪になれてすごく嬉しいんだ。」

  礼君は床に散らばってたリンゴ大のコンクリの破片を掴むと手の中でバキバキと握り潰してみせ、丸太並にぶっとい腕をぐっと曲げてブクンと岩石みたいなでっかい力瘤作った。

  「力だってこんなに強くなれた。これからは俺が猪久場さんを守るから。」

  やばい…どないしよ…カッコ良すぎる…

  ヒトだった頃のかわええ礼君ももちろん好きやったが、ワイルドで逞しい猪の礼君もめっちゃ素敵やん。

  「猪久場さんは…どうなの。俺、こんなにデブになっちゃったけど…お腹だってこんな出っ張っちゃったし…顔はまだ見てないけど猪久場さんのタイプかな?」

  礼君は心配そうに下を向いて大玉みたいな腹を両手で抱えるように撫でた。

  「何言うてるんや。デカくて強くてカッコええ、三拍子揃ったこんなええ嫁さん、どこ探したって他におらん。顔だってめっちゃ男前やで。ワシの好みの猪どストライクや。」

  「本当?」

  礼君の表情がぱっと明るくなり、膝付いてワシの目線の高さで目を合わせてくれた。

  「礼君、これからずっと一緒や。」

  「はい。」

  ワシらは抱き合い、唇を重ねた。

  匂いも、毛皮も、牙も、声さえもずいぶん低く太くなって、いろんなものが変わってしもうたけど、間違いなく礼君は礼君や。ワシの大事な大事な礼君や。

  唇を離すと、お互いの牙の間に涎の白い糸が引いた。

  「すごい…獣人同士キスってこんなに刺激的でエロいんだ…」

  「せやで。まあワシも猪獣人とちゅーするの初めてやけど。」

  「こんなキスされたら…ムラムラしてきちゃったよ。」

  「ワシも。ホテル行こか。」

  「そんなに我慢できない。ねぇ…ここでしようよ。」

  礼君は発情期の獣宛らに顔を紅潮させて呼吸も荒くなってきとった。我慢できないって言葉どおり、コンクリの床でも構わずゴロンと仰向けに寝そべると、いつもみたいに尻を突き出そうとした。ところが…

  「ん、んぐぐぐ…あれ、お腹が、つっかえて、体がうまく曲がらない…」

  まだヒト種で痩せて頃の感覚が抜けきってなかったみたいやな。出っ腹と太い脚が邪魔になってて、頑張ってお腹を引っ込めたりしてたけど、結局ギブアップして「だめだー」と大の字になってもうた。

  「さすがにその位置だとキツいなあ。ベッドとか段差ありゃいけそうなんやけど。バックでやろか?」

  「そうだね、せっかく獣人になれたんだしドギースタイルも悪くないかも。」

  礼君はムクっと体を起こすと、四つん這いになってワシの方に尻を向けた。で、デカい…腹もデカいが尻も筋肉込みで相当な分厚さや。その迫力に思わず圧倒されてもうた。体の方に目を向けると、礼君の丸い出っ腹は床にべったり付いてしまっとる。

  礼君が自分の尻を両側からぐっと引っ張ると、山壁が動くみたいにがガバッと開き、ぷっくりした肛門が丸見えになる。ムワッと汗と雄の匂いにわかに広がり、その拍子に穴からビュルっと白い粘液が噴き出した。ワシがさっき中に出したやつや。

  ゴクン…なんちゅうエロいケツしとるんや。ワシは巨大な尻の谷間に鼻を突っ込んで、わざと鼻を鳴らしてフゴフゴ嗅ぎまくった。

  「い、猪久場さん!?」

  「はぁ…礼君の匂い、フェロモン、たっぷり吸わせてもらうで。」

  「さすがに…恥ずかしいよ。俺、今日は洗ってないし…」

  「何言っとるんや、嫁さんのここが汚いなんてことあるかい。ワシは礼君の体で舐められない部分なんかないで。」

  ワシは舌を出して礼君の盛り上がった肛門をぺろりと舐めてみせた。

  「ひゃぁ!」

  でっかい体からは想像もできんかわええ声に、楽しくなってたっぷり涎を塗り込むようにベロベロ舐めまくった。精液の味も混じってるがまあ自分のやし。

  最初はびっくりしとった礼君もだんだん気持ち良くなってきたみたいで、尻の筋肉が緩んでリラックスしとるようやった。

  「あ、あぁん…猪久場さんの舌…あったかくてヌルヌルで…すごく気持ちいいよ…はぁん…もっとちょうだい…」

  予想以上の好感触と可愛いらしいおねだりにワシの興奮も高まっていく。ぺろぺろ舐めたり舌を肛門に突っ込んだりしとるうちにワシのちんちんは三たびギンギンに滾ってきておった。

  興奮していたのは礼君も同じだったようや。礼君の喘ぎ声に合わせてそのちんちんもブクンブクン…と急激に体積を増していってるようやった。

  「はぁはぁ…そろそろ…挿れてほしい。」

  「よし、ぶち込んだるで。」

  ワシは立ち上がって礼君の肛門にガチガチになった亀頭を当てがう。チビな上に短足なワシと四つん這いの礼君、わざわざ膝を折らんでもだいぶやりやすい位置に尻がきてくれてて助かるわ。

  チラッと礼君の股座を覗き込んで度肝を抜かれた。太すぎる足と腹肉に阻まれて全貌は見えんが、僅かに見えたそれは赤黒く腫れ上がったちんちんはワシの腕より太く、巻き付いた血管が礼君の鼓動に合わせてドクドク蠢きながら収縮し、腹の下ではとめどなく吐き出されとるのか透明の粘液が腹も太もももビチャビチャ濡らして床に染みを広げとった。ナマズのお化けや。

  ワシは礼君の尻に手を当てて、ゆっくり挿入を始めた。

  ヌプヌプ…ズブブブブ…

  トロトロになった肛門はさっきより格段にスムーズにワシのちんちんを受け入れる。軽く腰を押すだけでおもろいように中に飲み込まれていく。

  あったかくてヌルヌルして包み込まれるようでめちゃくちゃ気持ちええ…

  「ふあぁ、入って…きたあ…」

  ワシのちんちんはすっかりデカ尻に飲み込まれ

  、礼君は豚っ鼻をスピスピ鳴らして悦んどる。

  「全部入ったで。動いてええか?」

  「うん、たっぷり解してもらったから。」

  ワシは腕をいっぱいに広げてギリギリ届いた礼君の脇腹を左右から挟むように掴んだ。四つん這いになったこの巨大な猪のサイズ感…まるで軽自動車とセックスしとるみたいや。

  ワシは脇腹の肉に捕まりながら、ダイナミックに大きく腰を振ってみせる。

  ダッパンダッパンダッパン!

  ワシの腹肉と礼君の尻肉がぶつかって波打ち、弾けるような音が建物に響いた。これだけ重たい尻は押し返してくる反動もすごく、ワシは脇腹をしっかり掴み。

  「ぶぅー…ぶふぅー…」

  息が荒くなって汗がダラダラ流れる。けっこうハードな全身運動やわこれ、続けてたら痩せるんちゃう?

  全身汗だくやけど、猪の本能に任せて全力で交尾してる感あって気分は爽快や。

  「あぁあん、いい、猪久場さん、そこ、いい!!」

  礼君も獣人になったばかりの体を楽しんで、大きな体全部で快感を表現しとる。ワシの目に前で体の割に小さくチョロっと飛び出た尻尾まで嬉しそうや。

  全身が筋肉の塊みたいな礼君の熱量は半端じゃなく、汗が水蒸気になってそこらじゅうが雄の匂いで充満しとった。

  こんなにデカくて逞しいオスの中のオスと言っても過言でない立派な雄猪が、ワシのちんちんで善がり狂い涎垂らして喘いどる…最高の気分や。

  「い、猪久場さん、俺、もう…」

  「はぁはぁ…ワシもや、一緒にイくで。」

  礼君はワシの腰の動きに合わせて床と自分の腹で挟んだチンポをズリズリ刺激しとるようよった。大きさにも驚いたがなんちゅう硬いちんちんや…

  ワシも礼君の腰に抱きつき弛んだ胸をおっ被せる。腰の揺れで胸が刺激され、礼君のゴワゴワした体毛で乳首が擦れて気持ちええ。肌と肌が触れ合いお互いの鼓動まで伝わってくるこの体勢、ほんまに四つ足の獣の交尾みたいや。

  「「ぶもおおおおおううう!!」」

  雄猪二頭分の喘ぎ声とともに、ワシたちは同時に果てた…

  ドップン!ドップン!ドップン!ドップン!

  礼君が精を吐き出すたび、ポンプ車の放水みたいに一発一発反動がワシの体にも伝わってくる。床に叩きつけられた精液が弾けてそこらじゅうに飛び散った。

  全部出し切ったワシは完全に脱力して礼君の背にどっかりもたれ掛かる。一応ワシ150kg以上あるんやけど礼君の体は少しも揺らがなかった。

  ちょっと休んで、礼君の尻から萎えかけたちんちんを抜くと、ドロドロと精液が流れ出した。

  ワシが体から離れると、礼君は自分が作った精液の水たまりを気にすることもなく床にゴロンと仰向けになった。

  「はぁ、すっごく良かった…」

  「せやなあ。」

  ワシも隣に寝転ぶと、礼君は腕を伸ばして腕枕をしてくれた。

  「今日はいろいろあり過ぎて疲れたわ。もう一歩も動けん。」

  「このまま寝ちゃおう。後のことは…起きたら…考えよう…ふぁーーー…」

  礼君は大きなあくびをすると、腕の中でぬいぐるみでも抱くようにワシに抱き付いてくうくう寝息立て始めた。礼君の毛皮と体温が温かくて、ワシもすぐに眠気に襲われる。お互い脂肪の分厚い猪どうし、こうして毛皮と毛皮、肉と肉が触れ合っていると妙に落ち着く。

  一時はどうなるかと思うたが、これからも礼君と二人で一緒に生きていける…安らかな寝顔を見とるだけで、そんな幸せを噛み締めることができた。

  「ありがとう。おやすみ、礼君。」

  礼君のほっぺたにおやすみのちゅーをして、愛しい感触を全身に感じながら可愛い寝顔見守りながらワシも眠りについた。

  [newpage]

  次の休日…

  ワシは駅の近くで礼君との待ち合わせていた。ちょびっと早く着いてしもうたんで、ベンチに腰掛けて今日のデートコースについて思いを巡らしとった。

  すると、後ろからぬーっと大きな影が差しワシの体を覆った。

  「おいオッサン!」

  振り返ると、いつかワシをボコボコにシバき倒した熊獣人が睨んどった。思えばこいつのおかげでワシと礼君が知り合うきっかけができたんよな。癪に障るがこの熊がワシらの恋のキューピーさんってことになるんかな。

  「二度と顔見せんなっていったよな。」

  「何言っとるんや、君の方から話しかけてきたんやろ?」

  「口答えはいいんだよ、俺の視界に入った時点で有罪だ。迷惑料をいただくぜ。」

  「むちゃくちゃやな君、ジャイアンか。」

  熊はワシに胸ぐらを掴んでぐっと掴んだ。そのまますごい力で持ち上げられワシはつま先立ちになってまう。周りのに通行人もおったがみんな見て見ぬフリやった。

  「忠告しといたるけど、止めといたほうがええで。」

  熊は自分の背後に、デカい影が迫ってたことに気づいておらん様子やった。

  「はぁ?忠告だと?デブオヤジが生意気言いやがって。ムカついたからとりあえず一発殴らせてもらうぜ…」

  ワシをぶん殴ろうと振りかぶった熊の肩を大きな手が叩いた。

  「あ、誰だ?」

  ワシを吊り上げたまま振り返った熊はそのままの姿勢で固まって絶句した。自分より遥かにデカい小山のような猪と、人2、3人殺してそうな狼が熊を睨みつけとった。

  「何してるの、俺の大事な人に。」

  「その手を離せ。」

  「は、はい…」

  ワシは解放されたが、熊は二人に引き摺られて人通りのない裏路地へ連れて行かれた。

  「て、手加減したってな。」

  しばらくすると二人が戻ってきた。

  「お待たせ、猪久場さん。」

  「あの熊には二度とご主人様に近づかぬよう厳しく指導しておきましたのでご安心ください。」

  「あぁ…ありがとね。」

  「じゃあ行こうか。

  ところで…せっかくのデートなのに、なんで九狼(クロン)さんが付いてくるの?」

  「用心のためです、礼様。偽装工作が成功しご主人様はすでに組織から除籍されておりますが、組織の手の者がどこをうろついているか分かりませんので、私がお側で警戒しているのです。」

  狼…九狼君は戦闘タイプの改造獣人やが、嗅覚が鋭く周囲300mくらいの匂いのするものならだいたい探れるらしい。

  「私のことは荷物持ちとお考えください。もちろん、各種乗り物の運転、レストランやホテルの手配、靴磨きなど、何でも喜んで致しますのでお申し付けください。」

  「…九狼君の靴磨きは靴磨きやない、靴ベロベロ舐めとるだけや。」

  もうええと言うとるのに、九狼君はすっかりワシの奴隷になってもうた。…ほんま恐ろしい能力やで、二度と使わんとこう。

  必然的に礼君以外とはもうセックスできなくなるが(九狼君を除く)、ワシはそれで十分やと思っとる。ワシなんかがそれ以上を望んだらバチが当たるで。

  でもその分、礼君をたっぷり可愛がってやるんや。今夜も…うへへ…

  「猪久場さん、何ニヤニヤしてるの?」

  「な、何でもないって。ほな行こか。」

  身長差1m近くある礼君が差し出した大きな手を握り返し、ワシらは歩き出した。

  終わり

  ***

  猪久場 重光

  猪 160*160*41

  最近小さな町工場で働き始めた。礼との同居を目標にコツコツ貯金している。

  瀬尾 礼

  ヒト 175*65*21 → 猪 250*600*21

  猪獣人になったことを母に説明したところ、案外あっさり受け入れてくれた(九狼の偽造した"獣化症"の診断書が役立った)。猪久場との交際も認めてくれている。

  九狼

  狼 190*100*29

  感情を顔に出さないが仲間思いな面もある。組織からは猪久場を始末するよう命令されていたが、生き延びる最後のチャンスを与えるために独断で二人を倉庫に閉じ込めた。最近の趣味は首絞め靴下オナニー。