「はぁ…これからどうしよ…」
平日の繁華街を溜め息を吐きながら重たい足取りを歩く一人の青年がいた。
彼の名前は[[rb:中筋太輔 > なかすじだいすけ]]。彼はごく普通に居るしがない会社員だったのだが、日々毎日日付けが変わる残業と嫌味を言ってくる上司に耐えかね、今し方退職届けを提出すると共に会社を辞めたばかりであった。
それだけならば良いのだが、今後の生活のことを考えると不安で胸が押し潰されそうだった。
(うーん、明日ハローワークに行ってそれから…ん?)
これから先、今後の展望を頭の中で考える太輔の視界の端にある物が見えた。
「なんだあれ…?」
ビルとビルの間の路地裏に現れた其れは自然現象では有り得ない、不自然に空いた穴だった。
しかも其の穴の奥には森や山などの大自然が広がっている。蜃気楼にしたっておかしな話だ。
最初は自分の目を疑った太輔、何度も瞬きをしたり目を擦ってみたが結果は変わらなかった。
彼は恐る恐る、その穴に近寄った。
其の穴の奥からはほのかに男の汗臭さを蒸せた空気が漂って来ている。穴の奥は明かりのない暗闇だ。
ゴクリ、太輔の喉が鳴った。
この先に何があるのか、太輔は興味をそそられた。
(ちょっと覗くだけなら……)
そう考えた太輔は穴の中に足を踏み入れた。まるで意思とは関係なく自然と何かに導かれる様に。
そうして穴の中へと踏み入れた瞬間、穴は自然と消滅して元の路地裏の光景になった。
「―――はっ!?ここは…」
太輔は我に帰ると、自分が今居る場所を確認する為に周囲を見回した。
其処は先程まで居た路地裏では無く畳の床の部屋に居た。
室内には火鉢に行灯、箪笥や枕屏風、そしてかまどと木製の流しが置いてある。
「なっ、俺っ、なんで裸!?」
ひんやり冷たい空気が肌に直接感じる感覚に自分の体を確認する、すると今の彼は一糸纏わぬ生まれたままの姿となっていた。
太輔は慌てて股間を両手に隠しながら箪笥へと駆け寄る。
「なんだこれ…褌か…?」
だが箪笥の中に入っていたのは太輔が普段から穿いている様な普通のパンツでは無く、神社の鳥居の如く赤い六尺褌だった。
初めて手にした褌にどうやって穿けば良いのか分からずに狼狽える太輔。
すると……
「あ、あれ…身体が勝手に…?」
考えるより先に手が動いて慣れた手付きで六尺褌の締め込みを始めたのだ。
六尺褌を尻に食い込ませ、股間の逸物の玉袋が布越しにくっきりと形が分かる様に褌を締め上げていく。
「うわぁ…」
ごわごわとした晒生地の感触が直接逸物と尻穴に伝わり、中肉中背の身体の背筋がぶるりと震える。
そうして六尺褌の締め込みを終えた太輔は鏡台に映った自分の姿をまじまじと見つめた。
「ばっちいし、似合わないな…これ、どうやって外す…んっ!?」
中肉中背の体型とあまり洗濯していないのか、薄汚れた黒い染みと股間に何かの液体の跡の染みが赤色の布地に相俟って目立ち、尚且つ異臭が放っている褌を外そうと手に掛けた瞬間、どくりと心臓が脈打ちどくんどくんと全身に血液が駆け巡る、そうして全身の筋肉に血液が行き渡るにつれて太輔の身体の様子が変わっていく。
むわぁ……っ♡ 芳しい雄の体臭が部屋の中に充満する。
その匂いが鼻腔を擽った瞬間、太輔の背筋にぞくりとした電流の様な感覚が迸った。
先程まではそんなでも無かった筈なのに。
自身の股間も何故か熱く反応し始めていて、それにつられて太輔の感覚もおかしくなっていた。
もじっ、もじっ……
「はぁ…はぁ…ん"ん"っ!!!!!」
玉の汗が滝の如く流れる、肩で息をしながら太輔は身体の捩らせ悶える。
身体の芯からの火照りに耐え切れず腰を抜かし膝をつく。
すると彼の身体がぼこりぼこりと身体の上からありとあらゆる筋肉が必要以上に膨らむと比例してごきりごきりと音を大きくたてて背丈が伸び、中肉中背の身体つきから巨大な岩肌と連想されるような強靭かつ精悍な身体つきになっていく。
「あぁ〜っ!あ"ぁ〜っ!」
肌の全身がごわごわの焦茶色硬い毛がちろちろと生えた頃には彼の吐息も次第に太ましく野性味溢れる雄の喘ぎへと変わっていった。
「あっ、あがっ、あががっっっ」
ばきばきっと頭の骨格も変形し始まる。
「あがっ、ががっ」
口と鼻が前に細長く伸び始め、半開きになった口からは何本か平たい歯が覗かせる。
顔の正面に付いている双眸が見渡せる程の視野を広げる様に移動する。
耳の形が平べったくなって頭頂部の方へと移動していく。
すると次に全身の肌の色が段々と濃いめの皮毛に覆われていき、それに伴って体毛の密度が濃くなっていく。
ばきっ、ばきっ、ばきばきばき……っ 太輔の肉体が馬親父のものへと変貌するにつれて彼の身体から骨が軋む音があちこちで鳴り響き、それと同時に全身から力が溢れてくるのを太輔は感じ取っていた。
「おっ、おおおん"ん"っ!!」
尻が太い大腿筋とがっしりとした胴体を支えるようにどっぷりと筋肉を蓄えると、尾骨辺りから勢いよく尻尾が生えた。
「はぁ…はぁ…ど、どうなっているんだ…?」
初老の嗄れた声色でそう呟いた太輔の声は既に野太く低く掠れていた。
鏡台には中肉中背だった頃の自身の姿は無く、代わりに筋骨隆々で逞しい肉体に赤褌を食い込ませた飛脚の親父が映っていた。
その鏡に映った自分の姿を見て太輔は酷く戸惑う。
「な、なんで俺は……!?」
鏡に映っている自分が本当の自分なのか?まるで誰か別人と入れ替わってしまったかの様だ。
混乱で頭が一杯になる太輔、すると彼の下半身から強烈な熱が集まってゆき、其の熱は下腹部の、いや正確に云えば逸物から一点へと集まって行く。
「んっ!?」
熱は其処に集中するとぐつぐつとその熱を帯びて硬さを増していく。
下腹部に顔を向けて見ると、彼の肉棒は馬並と云うのに相応しい肉棒になっていた。十分な程大きい肉棒は熱によって更に硬くなって大きく勃起していく。
「んんん……っ♡なんだぁ……♡チンコがやけに熱いぞぉ♡」
肉棒の変化に伴う快感に太輔の呼吸は荒くなり、其れに呼応するかの様に彼の股間はムクムクと盛り上がっていき、野太く赤黒い男根が褌を押し上げながら我慢汁が漏れて元々付いてあった液体の跡の染みと重なる。
「なんでチンコが勃ってんだぁ……俺ぇ……」
童の腕程に大きくなった己の巨根に困惑する太輔。薄暗い室内に一人、赤褌を締めている馬親父……中筋太輔が立っている。
褌を締め込んでいても尻穴がはっきりとわかるほどに逞しい馬尻を晒すことに味わったことのない羞恥と、鶏卵の大きさの陰嚢の中から精液とは違う『何かが』蠢いている感覚を覚えるものの、今の彼にはそんな事はどうでもよかった。
「でもそんなんどうでもいい……鎮めないと…」
今、彼の頭の中にあるのは、苛まれる快楽の牢獄からの解放。逸物を中心としたふつふつと沸き上がっている全身の発情を発散したい。節くれてごつくなったこの手で、数え切れぬほど切なく屹立した肉棒を擦り倒したい。只其れだけしかなかった。
「出す……俺の全てを、出す……」
太輔は譫言でそう呟くと、窮屈になった褌の前生地をずらす。
ぶるんっと勢い良く飛び出して来た己の逸物が太輔の腹部をべちんべちんと鞭の如く叩き、複数の血管が浮かび上がり、皮から完全に剥けて立派な雁首をした赤黒い亀頭は、その先端から透明な我慢汁を滴らせていた。
その我慢汁は竿を垂れて床へぼたりぼたりと落ち、畳に染みを作っていく。
そして太輔の左手に腰を当てて、右手が自身の逸物を握り締める。
「はうんっ!」
肉棒を握り締めた瞬間、脳に電気が奔る様な衝撃が駆け巡る快感につい太輔は乙女の様な嬌声を上げる。
そのままの体勢で竿を包み、くちゅくちゅと厭らしい水音を立てながら上下に激しく動かす。
太輔が肉棒を扱く度、彼の口からは獣の様な野太い喘ぎ声が洩れる。
「んおっ♡お"っ♡おほぉぉっ♡」
普段ならば有り得ない程に野太く低い声。
人間の言葉ではない獣の様な喘ぎ声が口から出ている事に太輔は不思議に思ったのだが、最早そんなものはどうでも良かった。
ぬちゃあ……ぐちゅぐちゅ……。
鈴口から溢れる我慢汁を潤滑油代わりにしながら太輔はそのごつごつとした掌で肉棒を扱き続けていた。
「お"お"っ"、おほぅ」と素っ頓狂な声で唸り声をあげる今の彼の姿に、もうかつての青年の面影は在りはしない。
太輔の脳味噌は完全に快楽に溺れており、もう正常な判断を行う事が出来ない。己の身を焦がす悍ましい性欲に思うが儘に身を委ねる事しか彼の選択肢にはなかった。
陰嚢の中でお玉杓子の如く精液が激しく蠢いて絶頂の時を今か今かと待ち望む。
「あぁ、キンタマの中でザーメンが作られているぅ、すげぇっ、これ、全部イッたら、めちゃくちゃ気持ちいいんだろうなぁっ。」
太輔は甘い吐息を吐きながらそう呟く。
そして扱く速度を上げると肉棒の鈴口からは我慢汁が溢れ出し、太輔の逸物をてらてらと厭らしく光らせる。
今、太輔の精巣の中では異常なまでの数の精子が作られていた。彼の中の有るものを栄養源とし、太輔の陰嚢はせっせと己の分身である子種を製造する。
しかし、その精子の材料は、文字通り『彼の全てで』出来ていた。
「うほぅ!気持ちいい!!馬並チンポシコって、めっちゃ気持ちいいっ!!早くザーメンぶっ放して、気持ち良くなりてぇ゙ぇ゙ぇ゙!!!」
逸物を扱く度、節だらな言葉を口にする度に己の精神は快楽の沼に深く深く沈んでいくのを感じる。その快楽が最高潮に達した時だった。
(あぁ?俺が…俺じゃない何かが棲み着いている……そうか、俺は、俺じゃない誰かになるのか…)
太輔の頭の中では最後の“整理”が行われていた。これまでに培った『経験』や『回想』といったもの記憶の仕分け。これからの彼にとって不要となったものは、全て精巣の栄養に変換して必要なわずかな要素だけを残していく。
(中筋太輔、不要。両親との思い出、不要。友人との思い出、不要。学生時代の思い出、不要。会社のクソ共の思い出……要らねぇな。あぁ、今まで俺を散々バカにしやがって……!!怒鳴り散らすクソ上司も、仕事を押し付けるクソ先輩も、全部全部要らねぇ!!全部ザーメンと一緒にぶっ放せば良いんだ……!)
不必要な記憶を整理している太輔の頭の中で何かが弾け飛ぶ。
その過程を終える毎に、徐々に涎を垂らし呆けていた顔が若気けるへと変わり、同時に手淫が早くなる。
「嗚呼、早く! 早く不要な俺の全てを吐き出して、新しいワシへと生まれ変わりてぇ!嗚呼、早く早く! キンタマの中のいっぱいのザーメン、ワシの魔羅から盛大にぶっ放させておくれ!」
太輔の心はすっかり馬親父獣人の精神に支配され、自分を『出して』しまう事にも最早躊躇いはない。寧ろ早く出したいと思っているほどだ。
もう彼の中では、中筋太輔としての過去の記憶など穢らわしい残滓でしかなかった。薄明かりに照らしている剛健な筋肉と焦茶色の獣毛、股座に聳える褐色の巨塔さえあれば、もう何もいらないのだ。
さあ、全てを吐き出そう。必要ない人間の記憶など、精液の雨にしてしまおう。
「出す!出す出すぞぉ!!儂の中の中筋太輔が射出て、道馬進之介へと生まれ変わるぅ!!!!!」
不気味なまでににやりと笑みを浮かべ、高らかに宣言する太輔。そして遂に太輔は絶頂を迎える。
「あ、あ、あ! 出るっ、出るっ!出ますっ!! 儂の魔羅から、精液が、どぴゅどぴゅとぉ……!!ひんっ、ひひっ、ひひひぃぃぃぃぃん!!!!!」
絶頂と共に太輔は嘶くと、鈴口からは濁流のように濃い白濁色の精液が噴き出し続ける。
湧き上がった間欠泉の様に射精する精液は、ものの数分に渡って続いた。彼の陰嚢の中に溜めこんでいた精液の量は生涯一生分程だったのだ。
「はぁ……ふぅ……」
萎えてても尚、棍棒の様な太さと長さを保っている肉棒からぽたぽたと精液の残滓を垂れ流しながら、太輔は恍惚とした表情で天を仰ぐ。
暫く快楽の余韻に浸ると、白い歯を見せる様ににかっと笑い力瘤を両腕に作る。
「がっはっはっ!年甲斐も無く元気に出したのぅ!!いい気分じゃぁ!儂は此れで立派な馬親父へと成れたわい!!」
下品に呵々大笑すると太輔、いや進之介は、ふと鏡に映る自身の姿を見つめる。
そこには中筋太輔の面影など微塵も無い、野性味溢れる赤褌の飛脚馬親父が立っていた。
その姿を見て進之介は満足そうに頷く。
「ふむ…ワシはまだまだ現役で通用しそうだのぅ!!……さぁて、出す物も出したし一仕事するかの!!!」
進之介は立派な肉棒を前生地で収納して整い、畳や身体に付いた精液を布巾で拭き取ると、腹掛と法被、手甲を身に着けて麻縄で括り付けた分箱の棒を肩に担ぎ草履を履いて、仕事に出かけるのだった。