「あんた……どうしたんだよ、こんなとこに」
マジカルスノーランド、スタッフ用の控室のひとつ。特別なシフトを持つ彼のため、ほぼ専用となっているそこに他の者の姿はない。その特別な……本日の「フロスティ」を終えて着替えていたところ。
白熊獣人ジャック・フロストは、やってきた人物を見とめて眉をひそめた。
「おつかれーぃ。新オープンしてからも上手くいっとるようぢゃの?」
「まあ……そうだな」
[[rb:得真道 > うまみち]]学園教師、ダオジュン。珍しく一人らしい。パレードとか大好きな超絶パリピ。昼夜逆転してそう。未成年に手出してそう(超偏見)。
キャラが違いすぎて、正直に言ってジャックの苦手なタイプだ。毎度ながら、えげつない[[rb:衣装 > かっこう]]に頭痛も覚える。見慣れたとは言え。
その自称チョイ悪オヤジ、やけに上機嫌で手にした紙袋を掲げてみせた。
「差し入れ。今日も頑張っとるお前さんに、先生からのご褒美ぢゃ」
「――――」
覗いてみれば、中には薄紙に包まれた桃まんに、お茶の入ったらしき水筒。
以前だったら突っぱねていただろうけど、いくらかの逡巡を見せたうえでジャックは受け取った。まだひねくれているというより、以前のツンケンしていた自分が思い起こされるがゆえの照れ隠しだ。
「……ありがたく」
「おうおう。冷めないうちに食べなさい」
視線は逸らしつつも礼は言う彼に、嫌味のない笑みも応答する。ひねくれ者を自称するジャックだが、素直なところもちゃんとあるのだ。
――ただそれは同時に、少々世慣れしていないということでもあるのだが……。
「あんたが監修したアトラクションも、結構人気じゃないか」
年季の入ったソファに座って、ほんのり温かい桃まんにさっそくかぶりつきながらジャックから話を振る。
本音では、仕事上がりの空腹に差し入れはかなりありがたかった。――うまい。しかもいい香り。これが桃の香りかと知る。このヘンなオヤジ、恰好はともかくいいところもあるんじゃないか、なんて思ったりもする。
「おかげさまでぢゃ。で、ちっとお前さんの意見が聞きたくてな」
「そういう話かよ。……ふたりで、がウリなんだろ? だったら――」
ダオジュン監修の新施設に意見を交わす両者。遊び人の視点はジャックにとってかなり新鮮で、仕事に関してなら有意義だった。悪くはないと素直に思える。
と、その遊び人がテーブル越しに急に顔を寄せてきた。とびっきりの秘密の相談をするみたいに。
「……でな、どうぢゃ? 今からサモナーも誘って三人で遊ばんか」
「いやもう閉園……それになんで、あいつが出てくるんだよ……」
「お前さんに会いたいって言っとったから」
「ほ、ほんとかよ……ふん、まあ、今度な。気が向いたら」
悪い気はせずモゴモゴ言う彼を、今度はニヤけた笑みが見る。
……このオッサンにはなんでもお見通しみたいで悔しい。また照れ隠しもコミコミで、ジャックはぷいっと横を向いて水筒を開ける。カップに注――がずに、口を外して一気に中身を飲み干した。
「あっ」
「…………“あっ”?」
ダオジュンが目を丸くして固まっている。おちゃらけたのとは違う、マジ反応。
――――ジャックを襲う猛烈に嫌な予感。
「そんな……いっぺんに飲んでは、ダメだったの……ぢゃ、が……」
「おい、なんだ……これ。変な味する」
「あの……うふ、あっワシ用事思い出しちゃった。かえる」
「ひっぱたくぞ、言えよ」
明らかに、水筒の底にはお茶とは異なる味のナニかが入っていて。妙に口に残る感じと、このオヤジやっぱりロクなことしねえと凄むジャック。さすがに観念したらしくダオジュンは目を伏せて……きゅるりんと反転させた。[[rb:誤魔化しモード > かわいいは正義]]。
「ホウライ製のとびっきりの媚薬☆」
「マジでなにやってんだアンタ!!???」
[chapter:ひねくれシロクマ、春を知る?]
「う…………!」
「水、水飲みなさい!」
身体の中心に急激な反応。ぞくん、と何かが蠢くみたいな感覚。思わず腹を押さえて身を折るジャックに、テーブルの上にあったペットボトルが渡される。じろりと睨み返す……その意味を理解してかまた慌てるチョイ悪オヤジ。
「いやいや、さすがにこれになんかしてたらコンプラがあれぢゃろ!?」
「どの口で……」
ともかくそれは控室にあったものなので。むしり取るように蓋を開けて二本飲み干せば喉のイガイガは収まった。だが身体の熱さは少しも収まる様子を見せず、ジャックは更に力を込めて耐える。腹、正確にはそれより少し下……。
「ぐう……おい、媚薬って……」
「うん、とびっきりのな」
「だから、なにが……」
「身体に悪影響はない……ぢゃが思いっきりエッチして出すまで治まらないという」
「[[rb:都合良すぎるだろ > アホかーー]]!!」
さすがにソファごとひっくり返して張り倒した。
「なんで、そんなことっ、してんだよ……!」
「あたたた……お前さん、本気で[[rb:殺す > ヤル]]気ぢゃったろ……!?」
後頭部を強かに打って涙目なダオジュンに詰め寄るジャック。サンタスクールでは不良で名の知れている(知れていた)身である。ガンつければなかなかの眼光。さすがにいつも飄々としている仙人もあわあわと、
「ちょっとずつ飲めば、だんだんエッチな気分になる程度だったのぢゃ……それで……」
「それで……?」
「そこにサモナー呼んで……そしたらお前さん、『あれ、なんかドキドキするな? もしかして俺、こいつのこと……』みたいなみたいな! お前さん、自分の気持ちにも全然素直ぢゃないぢゃろ。儂、ハッピーの伝道師ぢゃから……」
「だからそういうのがっ、余計なお世話なんだよ!」
「それであわよくば3Pしちゃおうかと」
「やっぱぶっ飛ばす!」
もう一回ソファを持ち上げようかと立ち上がった瞬間。
今度こそ全身からがくんと力が抜けて、ジャックは膝をついていた。
「……!?」
「おおっ、そんな急に動いてはいかん、クスリが回るぞい」
「触ん、な、って……!」
力が入らない。入れても入れても抜けていく感覚。掴む砂が指の間から零れるような。ナントカ製の媚薬の効果たるや、である。
ただそれでも、ここは自身のホームベース。テリトリーなのだ。相手がどれだけの海千山千だろうと、ここでならプロ意識でも負ける気はない。
そう思っていた。その時までは。
「――――!?」
伸ばされた手を払おうとした瞬間、視界がぐるんと反転していた。
そうして見える、灰色の天井、規則的に並ぶ照明、逆光――視界を覆う人影。
自分が仰向けになって床に腰をついていると理解したのは、その後だ。
「――ジャックよ。この際ぢゃから、儂がいーこと教えてあげようかの」
「なに、を……」
腰をついた自分に[[rb:跨 > またが]]っているのは当然、ダオジュン。
ジャックは思わず息を呑む。おちゃらけたエロオヤジのはずなのに、その顔に差す、どこか超然とした[[rb:表情 > ひかり]]。読めず定まらない揺らぎ……あるいは、揺らぎそのもの。そこにいるのが、遥かに長い時を生きた存在なのだと思い知らされる。
で、そんな雰囲気を纏いながらもふざけた恰好をしたホウライの仙人は、春を知らない[[rb:霜の精 > ジャック・フロスト]]の上に跨ったまま、ぺろりと舌なめずりをした。
「忘れとったけど――今の儂、ハッピー大魔王ぢゃからのう?」
◆◆◆
ぐいっと腹に体重がかけられてジャックは呻く。ダオジュンが乗っかっているのは下腹部付近だ。すぐ下には圧迫されて既に痛いほど硬くなっている――その部分を、カーゴパンツの上から指が這う。
「あッやめっ、この……!」
「おうおう。口では何と言っても体は正直ってやつぢゃのー?」
「よくそんな恥ずかしい台詞っ――!」
上を取られているものの、体格ならジャックのほうが大きい。思い切り身をよじれば[[rb:退 > の]]かすことくらいと――けれど、気づく。腰を両側から絞める太腿はぎっちり肉が締まって丸太のように太い。しかも硬くて重い。筋肉の塊だ。捕まえた獲物を放す気配など、微塵もない。
下からの抵抗を易々いなして、黒シャツの下に容赦なく手が突っ込まれる。
「うっ! あッ…………!!」
「おお、外はひんやりしとるのに、[[rb:身体 > こっち]]はあったかいのう」
「やめ、あっ、ううぅっ――!!」
シャツの下に潜り込んでくる指。毛の生えた太くて丸い成人男性のごつい指。それが信じられないほど繊細に動いて、白い獣毛と下の肉体に触れる。強く爪を立てたかと思えば、春風が抜けるみたいに軽やかに。雄の身体を熟知した愛撫。
「ッ、んっんん――――グぅ――――――!!」
甲高い声を上げそうになって、ぎりぎり歯を食いしばるジャック。媚薬の効果か身体が異常に熱を持っている。しかも触れられるたび、未知の性感に勝手に跳ねてしまう。股間にさらに血流が集まるのもわかる。
更に最悪なことに、跳ねるたび[[rb:股間 > そこ]]が、ダオジュンの破廉恥な衣装の尻を下から何度も突き上げていて。
「おほっ♡ そんなにがっついてはいかんぞ♡ エッチじゃのージャック?」
「くっ……っ、くそ、くそぉ……!」
「ほーれもっと素直にならんかい」
「ひっ、ぐ……!! だれ、が――――っ」
ハッピー大魔王らしく(?)、煽るダオジュン。ただその指は親身なマッサージでもするかのように艶めかしく。羞恥や辱めではなく快楽を与えてようとしている――それがわかって、なおさら湧き上がる反骨心。顔を腕で覆い隠しながら、ジャックは駄々をこねるように大きな身体をひたすらよじる。
「っとと……お前さん、ほーんとに強情ぢゃのう」
「媚薬っ、なんか飲ませてっ……素直になれるわけっ、ないだろ……!」
「ウン……それは、ごめん。反省しとる」
一転しおらしく手を止め、白熊の大きな胸にそっと置く自称大魔王。少しだけ顔を近づけて、そっとささやく。
「ぢゃがな、お前さん、自分のキモチにも素直にならんといかんぞい。――特に、これからはな」
「…………それ、が目的、かよ……」
顔は隠したまま少しトーンを落として返すジャックに、
「儂、ハッピー伝道師ぢゃからね。迷う者にはお節介したくなっちゃうの」
「余計なんだよ、クソ……」
「ぢゃから仲直りエッチしよ?」
「マジクソ…………」
マジクソ。ともかく……いい加減呆れ尽くしたのか諦めが勝ったか。ジャックの身体からは抵抗する力がわずかに抜けた。
察したダオジュンが動きを再開させる、先刻よりもゆっくり、より深く。両の手が白い毛皮に埋もれるくらいに、その下の逞しい熱い肉体たっぷりと愛撫する。
「ふっ……うっあっ、ぁっ――」
「うーむ恵体恵体。おっぱいもおっきいのージャック。こうすると気持ちいいぢゃろ?」
「うる、せぇ……」
悪態にもさっきほどの力はなく。白熊の頬は桃色に染まり、身体全体にも汗がにじんでいる。媚薬の効果がはっきりあらわれてきたことも合わせ、興奮しているのは明らかだった。
――ジャック・フロストは、その性質と性格で、転光してから他者との関わりを自ら避けていたこともあり、他者との密接な接触にはとんと疎かったのだ。だから、普段は自分で自分を慰めるばかりで。
いやらしく動く指が、荒い呼吸で大きく上下する胸の突起に触れる。
「あっ――うあっ!!」
「おお……ここがいいのか、どれ、もっとしてあげような……」
「やめっ、あッ――――!!」
シャツがめくりあげられて露わになる分厚い胸板。白い獣毛から覗く乳首は肉球と同じで黒い。つんと立った先端、そこをきゅうっとつままれた瞬間、若い雄熊の身体が比喩抜きで爆発的に跳ねた。
「ッ――――――っ! ッッ!!!」
「おっ、おお――!?」
ガクガクッと激しい痙攣。暴れ馬もかくやという動き。しばらく続いて引いたあとには、太い腕で隠した奥で、嗚咽にも似た喘ぎだけが続いている。
なだめるようにまだ熱い身体をそっと撫でてから、ダオジュンは身体をずらして下りた。ベルトに指をかけ、がちゃがちゃ言わせて外す。抵抗はない。ずり下げるカーゴパンツが、大きな尻と床に引っかかったところで太腿をとんとんすれば、弱々しいながらも腰が持ち上がる。
そうして露わになる、飾り気のない黒いボクサーパンツ。芸術家気質ながら、実際的な彼らしいとも言えるそれの前面は、ぐっしょり濡れていた。
「――すまん。着替えとか、あるか?」
「ある、って…………ああもう、最悪……」
ぐったりしつつもジャックは絞り出すように応えた。ひどい現実に、もはや諦めの境地。なのに下半身のそれは未だに硬く、快不快がないまぜになった感覚を持て余してもいる。
ダオジュンがボクサーに指をかけてひと息に下ろせば、雄の象徴がブルンと跳ねて飛び出した。艶やかな肉色の亀頭は、濡れてぬらぬら光を放っている。
「……おい、まだ……する気なのかよ」
「モチのロンぢゃ。だってお前さんも、ぜんぜんこれからって感じぢゃぞい?」
「誰のせいだと思ってんだよ……」
「儂……けどお前さん、エッチなこと大好きぢゃろ? 儂といっしょ♡」
「――――――――」
眉間をヒクつかせながらも、またぷいと横を向くジャック。そんな若熊を好ましそうに見、脚に手を置いても抵抗も拒絶もないことをよくよく確かめてから、ダオジュンは巨根の付け根に思い切り鼻を付けた。
「おほっ、イったばかりの若い雄のニオイ、最高ぢゃ……♡」
「っ、この変態。クソ変態オヤジ。いつか逮捕されろ」
容赦ない悪態にもむしろ嬉しそうに、たっぷりの精を溜めた袋に頬ずりするダオジュン。何しろ札付きが揃う学園で教師を務める身である。この程度の罵倒はヘでもない。慈しむように太い肉茎を両手で包んで玉袋を揉み上げれば、すぐにもっと硬くなる雄の欲望に「わっかいのう♡」とニンマリしてみせる。
ジャックもまた、そんなヒゲ面オヤジの剥き出しの欲と情に感応している自身に気づいていた。だからせめて最後にひと言は、とチクリと告げた。
「[[rb:オーナー > コロポックル]]にバレたら、氷漬けじゃすまないからな……」
「……うん、そこは全力で回避しような」
それが、同意の合図になったのだろう。
ジャックは横を向いたまま、自ら足を開いた。ほんの少し。数センチくらい。
それにフッと笑って、ダオジュンは口を開ける。肉厚な舌をよく見えるように出す。まるで肉でできた芋虫のような舌。チラリと視線を上げてから、今度は容赦もなく遠慮もなく、若い雄の欲棒を咥え込んだ。
「ふっ……! うぅおっ――!」
「はむっ……んむ……[[rb:ほっひい > おっきい]]のう♡ クチんナカでビクビクしちょる……♡」
「あっ、お゛っ……っぐぅ……!」
「んんぅ……イイ反応ぢゃ♡ ほーれ、ここか? ここがイイのかー?」
「ッ、ッッ!! ッッッッ~~~~!!!」
たっぷりの唾液まみれにした後は、[[rb:唾液 > それ]]と先走りを絡ませた指先で亀頭を刺激する。さらに舌の先で鈴口をちるちる舐めて、溢れ出す愛液を美味そうに吸う。その姿はさながら本物の淫魔。
弄ばれる若い雄熊はもはや腕を上げることすらできず、ただただ両手で口を抑えて耐えるしかない。うぶな少女のような反応に好色な笑みで、
「こんなのはじめてぢゃろ? ほれ、どこがいい? 言ってみなさい」
「言わッ、いわ、なぃ……!!!」
「……お前さん、そのツンデレムーブちっとプレイ入っとらんか。いいもん、ぢゃあ、言いたくなるまでやっちゃうから。そーれ、ほれほれ♡」
「や、め――も、クソォッ……! もうっ! チンコっ……チンコ気持ちいい!!」
「んー、いい子ぢゃ♡」
満足げに性器にチューっとキスをして、舌を大きく下から上へ。指で作った輪っかで大きく扱きだせば、涙目が必死に訴える。
「ダオ、ジュン……っ!」
「イきそうか?」
こくこくうなずく白熊。解放されたいと訴える瞳に、だが、
「んぢゃ、次は儂の番な」
「ハ…………? いやおい、ちょっと!!」
目を剥いたジャックが上げた声は悲鳴に近い。だって小汚いオッサンが自身の性器を握りしめてその上に跨ろうとしているのだ。
いつのまにか破廉恥な衣装の前は開いていて。止める間もなく、剥き出しの臀部が熱い雄茎をひと息に呑み込んだ。
「ぅッ――ハ、あッ――――!!!?」
「んぉっ……! オぉッ♡ 硬い……♡ 白熊ちんぼ硬いぃ……!!」
媚薬の効果と、男を知り尽くした肉体がもたらす体感したことのなかった刺激に、ジャックの意識はほぼトんだ。がくんと仰け反って、床に仰向けになる体躯。
その若くて青い反応に魔王は満足そうに笑って、汗だくのシャツも脱がせて全裸にする。投げ出された両手を掴んで自身の手を絡め、肉球の感触を楽しむみたいにぎゅうっと握る。ロデオみたいに引っ張って、若いオスを乗りこなすアピール。
魔王の配役の通りに意地悪く笑うも、その肌も紅く染まって汗の珠がいくつも浮かんでいる。ぐっちゅんぐっちゅん水音を立て、前後する尻肉ですべて絞りつくそうと貪る。
「はっ――ァはッ、んっ? ほれどうぢゃジャック? ジジイの、ンッ、ケツに搾り取られる気分はぁ?」
「ッ、ッッ、ッッッッ――!!」
「儂、もーっとすごいこと、んっ、教えてあげられるんぢゃけど……どうぢゃ?」
「も……む、りぃ……も、ぅ…………」
「っんとに、カワイイのぉ……」
もはやろくな返答もできず、快感に震える白熊の口の端からは、涎が垂れて床に液だまりさえ作っている。
さすがにやりすぎたか、とダオジュンは力を抜いて顔を寄せ、そっと言った。
「――ジャック。これからの人生、たっぷり楽しめよ」
ふと交差する目線。顔はほぼ間近。何らかの交感。
ジャックが、命じてもいないのに、自ら口を開いて舌を差し出した。舌と舌の交わりがもたらす快楽も知りたいと言うように。快楽を知って完堕ちする霜の精の姿に、魔王も繋がったままブルリと身体を震わせて、舌を出した。
更に寄って舌が触れようかという瞬間――だがさっと[[rb:躱 > かわ]]したのはダオジュンだった。そして意地悪く、そっと耳元でささやくのだ。
「みんなのフロスティが、こーんなエッチなシロクマぢゃったなんて知れたら、お友達はがっかりしちゃうのう?」
「っ……! こ――――このっ、このクソジジイ!!」
「おおっ――――!?」
媚薬の効果も峠を越えていたのか、ともかく自分の矜持、クリティカルなところに触れられたジャックは自身でも意図しないほどの力で跨る体をひっくり返していた。
「あだー!! 頭打ったぞい!」
「うるっ――せえ! さっきから――さっきからいいようにしやがって!」
なんか流されそうだった自分にもムカついて吼えている。八つ当たりである。
そうして仰向けになったダオジュンの丸々した尻に、自身のペニスを思い切り突き入れた。体格で勝っていることだけは事実だったから、あとは他に突っ込むものもなかったから。
「はひッ!!? ジャッ――そんっ、なデカいのいきなり[[rb:挿入 > い]]れてはいかん――!」
「うるせえ! こういうのがいいんだろ変態ジジイ!」
そのまま全体重をかけての全力プレス。陰茎が付け根まで食い込んで、肉壁を容赦なく拡げる。本物の熊のごとき唸り声をあげながら、本能的に雄としてのマウントを取るべく力任せに出し入れ。
お返しとばかりの力技に、ダオジュンの方が今度は仰け反って目を剥く。
「お、ほぉっ――!! そこ♡♡ そこしゅごい!! ジャックちんぽしゅごいい!♡♡♡」
「この、この……っ! どうだ、参ったって言えよッ!!」
「うんっうん!! 参ったジャック、ジャック……アッ♡ そこイイ!!」
「感じてんじゃねえー!!」
床で乱れる男達の身体が、ソファや壁にぶつかって立てる激しい音。肉の擦り合いで生まれた熱と匂い。肌を伝ってぼたぼた垂れる汗、混じって垂れる体液。
あらゆるものに本能を刺激されて本能のまま腰を打ちつけていれば、すぐに限界がきた。
「あ゙ッ……クソっ、クソクソクソ! こんなっこんなオヤジで……グッ……くっ、クソォイクッ!!!」
「ア――ッ♡♡♡ 白熊ちんぽで、ジャックのちんぽでイかされうォッ――!!」
獣のような唸りと共に達する両者。
肉壁が食いつく感覚にジャックの腰が砕ける。性器の中心をぞろりと引き抜かれるみたいなエグい快感に放出が止まらない。一番深い所まで突っ込んでいたはずなのに、結合部からは大量の精液がごぼごぼ溢れた。
「ぉっ……ごっ、ぐぅっ、んんっ……あ、はぁっ…………!」
放出が止まってからも、射精の快感に身体が震えて動けない。言葉にもならない呻きと共に、ジャックはひたすらに、ぜえぜえと荒い息を繰り返す。
同時に、体の中で激しく渦巻いていた熱が引いていくのも、確かに感じていた。
◆◆◆
「最悪だ……」
もはや本日何回目かの悪態をつきながら、ジャックはふらふら半身を起こした。
ダオジュンはと言うと、未だに潰れたカエルみたいに床に沈んでいる。
「さす…………がに、最後のは、腰にキた、わい……………………おこして」
「ふざけんな」
その姿にいくらか溜飲は下がって、ロッカーから取り出したタオルを投げつけてやる。気遣ったわけではなく、こんなみっともないもんをいつまでも控室に転がしておきたくなかったのだ。ついでに小汚い尻をブーツの先で蹴っ飛ばして、
「早く出てけ! あと床掃除しろ! 俺の記憶も消せよ!」
「そんなんホウライの仙人だって同時にできるかい……!? けどケド、気持ちよかったぢゃろ?」
「うっ――るせえ!」
床に散らばったシャツやパンツをかき集めながら、相変わらず悪びれるようで悪びれていないオヤジに半ギレで返す。涙目な自覚がある。めちゃくちゃ気持ち良かったのも、媚薬を盛られたとはいえ流されて恥ずかしい言動をしたことも。
しかし、しかし――、
「俺、俺っ――――初めてだったんだぞ……!!」
「うん。そうぢゃと思っとったけど――待て待てまてぇい!」
今度こそソファを持ち上げてジャイアントスイングの構えに入る白熊を慌てて止めるダオジュン。そのまま睨み合う。両者まだフルチンである。
「ま、まあまあそこは安心せい!」
「……なにがだよ」
さんざんこのオヤジの甘言に振り回されているのに聞いてしまうジャック。なんといっても根が素直なので。
で、そんな白熊をコマす悪いオトナはゴホンと咳払いをひとつ。悠久を生きる仙人らしく……もとい、大魔王の笑みでまた言った。バチコンとウィンクまでして。
「お尻ぢゃ童貞は卒業したことにならないのぢゃ☆」
「マジでいっぺん死んどけクソジジイーーー!!」
――その控室は、冬の嵐でもやってきたかという惨状で、しばらく使用不可になったそうな。結果的にフロスティ……ジャックは別の控室を使うことになり、他のスタッフとの会話も増えたとか。なおダオジュンはジャックの一存で関係者室には出禁となった。
それでも。彼の新しい好物の一つに、桃まんが追加されたのもまた事実である。
多くの奇跡により冬を超えたひねくれシロクマ。
これからが、彼にとって本当の春のはじまりなのだ。
◆ひねくれシロクマ、春を知る?
――了。