「そうしていると、まるで本物の慈愛に満ちた女神だ。」
私が天使の中庭のベンチで可愛い娘を抱いていると、疲れた顔をしたダミアンがのそりと現れた。最近は仕事が立て続いていて、中々愛娘と触れ合える時間も持てないと昨夜愚痴を聞いたばかりだった。
「ダミアン!休憩が貰えたのね?良かったわ。丁度キャロルもご機嫌で目を覚ましているのよ?」
ダミアンはいそいそと私の隣に腰を掛けると、腕の中のキャロルを覗き込んだ。まだ生まれて半年のキャロルは形の良い淡い色の唇をモゴモゴと動かしてダミアンをじっと見つめた。
私と同じ淡い空色の瞳と、ダミアン譲りの真っ黒な柔らかな巻き毛のキャロルは、そのコントラストで将来多くの人々を惹きつけるだろう。
「いつ見ても美しい赤ん坊だ。この子が私の元にやってきて、なんて言うか未だに信じられない気持ちなんだ。君も良く無事に美しいこの子を産んでくれたね。
出産の時は、君の事も心配で死にそうだったが、今の君を見ていると以前よりももっと美しさが増して見える。私はなんて幸せ者なんだろう。」
相変わらずのダミアンに私はクスクス笑って言った。
「よっぽど出産の事が響いているのかしら。確かに大変なお産だったけれど、この子に会えたのだからもうすっかり記憶の彼方だわ。さぁ、キャロル。お父様よ。」
私はダミアンの腕の中にキャロルを渡した。まだ少し緊張気味のダミアンだけれど、大きな腕の中は心地良いのか、キャロルは大きな欠伸をして何か声を出しながら安らいでいる。
「…キャロルを見ていると、姉を亡くした母上の辛い気持ちが今更ながら分かる気がするんだ。それはきっと父上も同じだっただろう。こんなに美しい娘がスクスクと成長して、ある日突然二度と目を開けなかったら…。
私はきっと身が引き裂かれる気がするだろう。これは親になってみないと分からない感覚なんだろうね。あの当時は頭では分かっていた気がしたけれど、本質的な部分では分かっていなかったのだよ。」
そう微かに声をきしませながら呟くダミアンの肩に、私はそっと頭を乗せた。私はお母様を亡くして悲しみにくれたけれど、親が死ぬ事と自分の子供が死ぬ事では、その死の与える重さは違うだろう。
自分より年嵩の親が先にこの世からいなくなる事は、誰もが無意識に自覚している事だわ。もちろん予期しない程それを早く迎えると、簡単には受け入れられないのは事実でも。
けれどもこうして輝く命を燃やしている自分より幼い、血のわけた子供が突然死んでしまったら?私も心が死んでしまうのではないかしら。その悲しみと不幸は時間が癒してくれるかもしれないけれど、決して無くなるものではないのかもしれない。
日々の生活に笑顔を浮かべて暮らしながらも、心のどこかでは滲み出る様な血を流して生きていくのかもしれない。
瘡蓋になったその傷が治りかけては、ふとした瞬間に瘡蓋が剥がれて新しい血が滲む様に、自分の人生が終わるまでその痛みと共に生きていくのだわ。
「…クレア、なぜ泣いているんだ。」
私は薄く微笑んで呟いた。
「近々お義母様とキャロルを会わせたいわ。きっとどんなにお喜びになるか。」
その言葉にダミアンは全てを理解して、私の顎を掬い上げて優しく唇を押し付けた。
「ああ、そうしよう。私も母上と話さなければならない事が出来たよ。」
その時中庭の噴水がバシャリと弾けて、私達は顔を見合わせた。天使になった彼女が私達を見て笑った様な気がした。
「クレアの身体に無理はさせたくないが、医者はもう大丈夫だと言ったのかな?」
ダミアンにのし掛かって、ベッドに仰向けたその逞しい身体からローブを剥ぎ取る私に、笑いを堪えたダミアンは尋ねた。
「前回も同じ事を私に尋ねたわね、ダミアン。それを証明したと思ったのだけど、納得できないのかしら。」
私がそう言ってダミアンの顔を上から覗き込むと、ダミアンが笑いを引っ込めて私を黒光りする眼差しで見上げた。
「納得しているさ。だが、前回は手加減したからね?今夜は本気を出しても良いのかな?」
私は思わず喉を鳴らして戸惑った。あれで手加減をしたと言うのかしら。お腹が大きくなり過ぎてから遠ざかっていたせいで、ダミアンの本気をすっかり忘れてしまったわ。
私は動揺を隠しながら言った。
「なるべくなら気を飛ばさない程度にして欲しいわ。その、ダミアンの本気ってどれ程だったかしら…?」
ダミアンが喉の奥で低く笑いながら私をベッドにひっくり返した。
「どうも思い出せない様だね、奥様。もっとも出産後、君はますます成熟して感じやすくなった気がするから、手加減しないと朝まで目を覚まさないかもしれないね。
それは私も寂しい。分かった。今夜はじっくりゆっくり楽しむとしようか。」
そう言って微笑むその瞳に情欲を滲ませるダミアンに、私は一気に身体が熱くなってしまった。ああ、この瞳は私を虜にするわ。私は思わず手をダミアンの首の後ろに伸ばして引き寄せて囁いた。
「早く…。待てないわ、ダミアン。」
ダミアンと私のクスクス笑いは、直ぐに甘い喘ぎ声に変わった。身体を撫でるダミアンの大きな手のひらは敏感になった身体を疼かせて、胸を張り詰めさせる。
今は乳母に乳をあげさせているけれど、最初だけ自分の乳を与えた私の胸はずっしりと重い。胸の先端も少し色が濃くなった気がする。
「この胸は私の大好きなものだ。甘く匂い立つ様な二つの膨らみはすっかり私の手にぴったりになった。感じやすいこの先端も美しく色づいたね。」
そう言いながらダミアンが胸に唇や舌を這わせて吸い付くので、私はビリビリとお腹に快感を走らせてしまう。耐えられなくて腰を揺らすと、当然の様にダミアンが指先を伸ばして、優しく私の切羽詰まった疼きをなだめた。
水音が部屋に響く頃には、私はすっかりダミアンの指を何本も呑み込んでいた。ゆっくりと中を撫でるダミアンの指が与える快感は僅かに物足りなくて、私はダミアンにしがみついて自分の舌を絡めながら懇願した。
「お願い…っ!ダミアンが欲しいの。あ、あああっ!ダミアンの逞しいそれで掻き混ぜて欲しいのっ!」
その言葉に何かブツブツ言いながら、ダミアンは私を四つん這いにした。それから自分のそれでゆっくりと私のヌルついた入り口を何度も焦らす様に撫でた。
「あぁ…、クレアのここが吸い付いてくるよ。随分と欲しがっているね。…ではお望み通り君に私をあげるよ。」
私の中にズブズブと入ってきたそれは、疼きを慰める様な動きで、私に嬌声をあげさせた。
「ああっ、いいっ、あんっ、あ、…あ、気持ちいいっ、ダミアンっ、もっと来て!」
私の願い通り、ダミアンは私の中を馬鹿みたいに抉った。それは私をあっという間に高みに連れて行って吹き飛ばした。けれども、そのまま、ダミアンは私をベッドに横倒しにすると、ゆっくりとなぞる様に腰を動かした。
「…ああ、クレアの中、まだヒクヒクと逝ってるね。堪らない…。もっとじっくりする約束だっただろう?可能な限り頑張るよ。」
私は終わらない快感に責め立てられて、時々息を止めて身体を止めるダミアンに振り回されながら、ジワジワと痺れる様な快感を貪った。もうどこが絶頂なのかそうでないのかも分からなくて、ただ止められない絶頂が直ぐそこにあるのに気づかされた。
「ああっ、ダメよ。もう…溢れちゃうわ。」
声を掠れさせてダミアンに許しを請うと、ダミアンも切羽詰まった様子で私を仰向けて、太腿を持ち上げて腰を突き出した。
「ああ、私も限界だ。クレア一緒に逝こう。」
そう言うと力強く私を揺さぶるから、私は身体が引き絞られる絶頂にダミアンを味わって、快感を吹き出した。ダミアンが突く度に飛沫を飛ばして、吠える様なダミアンの吐き出しに私は一緒に呻いて仰け反る事しか出来なかった。
ぐったりとした私を優しく布で拭きながら、ダミアンは耳元でクスクス楽しげに笑った。
「クレアがこんなに楽しんでくれると、私も堪えた甲斐があったよ。君の悦びは私の喜びだ。まぁ私もすっかり楽しんでしまったが。大丈夫かい?」
私は重くなった瞼を閉じたまま囁いた。
「ああ、酷いわ…。こんなに感じさせて。…今度もう一度してくれる?」
笑うダミアンの唇を頬に感じて、私は口元を緩ませた。ああ、本当に私の幸せはここにあるんだわ。ダミアンの逞しい腕の中にいれば、何も不安はない。あるのは二人の真っ直ぐな愛だけ。
目を開ければ、同じ気持ちを滲ませた青黒い瞳が私を見つめている。
「「愛してる。」よ。」
【 完 】
~あとがき~
完結です!
この作品はそれぞれの生い立ちにまつわる葛藤も丁寧に描いて、二人の関係の成長を見つめてみました。楽しんで頂けたら嬉しいです。
BL作品が多い中、男女のイチャイチャも、だいぶ書き慣れてきました😆そこも楽しんで頂けたら頑張った甲斐があります😍
最後まで読んでいただきありがとうございました🥹