[chapter:逞しく敬虔な辰年代表龍お兄さんが、次の干支の白蛇にお尻を好き放題されてしまうの巻]
大晦日の某所の山間で、滝行を終えた龍人が、ゆったりとした足取りで滝壺から川辺に戻ろうとしていた。全身を覆う青海波文をした薄緑色の鱗はしとどに濡れて、辺りを照らす月明かりに照らされて艶やかな光沢を放っている。
冬至を過ぎた今の季節の寒さはひとしおである。そんな折りに敢えて滝で勤行などしている龍人のカラダは当然のごとく、筋骨隆々としているのである。1時間あまり、滝に打たれ続けた筋肉は、みっちりとジムでのトレーニングをこなしたかようにな仕上がりだった。鱗の薄い胴は筋肉の鎧で覆われてい、大胸筋は空気を入れたかのようにぱんぱんに膨れ上がっいて、谷間など薄い文庫本一冊楽々に挟んでしまえそうである。脂肪の存在を微塵も感じさせない腹筋の割れ方も周囲を感嘆させるに十分で、あたかも山門の阿吽像がそのまま生命を得たかのような図体である。
龍人の身を包むのはただ白の六尺褌のみ。当然ながらぐっしょりと濡れそぼちて、もはや修行着の要を成していない。鱗のない白くすべすべとした股ぐらに糊のようにくっついて、透けた布地から下腹部の雄の割れ目が浮かんでいる。そんなあられもない姿を見られるなどとは思いも寄らない風情で堂々として、時折、強靭な爪を持った両手で顔面を覆って水気を拭う仕草も雄々しく、やけに艶美である。
こんなことをするのは干支の一員たる役目であるからこそ——少なくとも龍人はそう考えていた。12年に1度の辰年には、古からのしきたりを墨守して、この秘めやかな場所で毎日滝行を行って世の安泰を祈らんと、殊勝にも元旦よりこの晦日まで、1日たりとも欠かすことなく続けてきたのは何とも甲斐甲斐しいことであった。何といっても、他の干支どもと比べて信心深いところのある龍人である。それに自分の行いが何かのためになれば、といういささか自己犠牲的な精神も相まって、毎日の滝行はむしろ喜びであった。滝に打たれまくった肉体はもはや寒さなど感じておらず、ただ霊験あらたかな御滝の力を一身に受けて、生まれ変わったような心持ちであった。
山の向こうの名刹から除夜の鐘と思しき音が響む。龍人はその場に佇み、うっとりと目を瞑ると、その低くも清らかな音をありがたげに拝聴する。年越しの参拝の賑わいが目蓋の内に浮かぶようだ。細やかながら我が御祈りが、少しでも人々の平穏な一年に貢献することができたのならば、この上ない幸いではあるのだが。こうして、鐘の音を聴きながら年越しの時を迎えるのが龍人にとっての倣いになっていたのである。
がさごそと、不審な音が混じった。しかも、その音は間近に発しているようである。龍人は辺りを見回したが、山中のおよそヒトの立ち入ることのない一帯で、人気はもちろんない。滝打たれたばかりの清められた神経の全てを動員させ、龍人は音の出どころを見極めようとした。滝壺を取り囲む茂みの一点が、一瞬だけ不自然に揺らめいた、かと思うと、
「龍さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
藪の中からいきなり飛び出してきたのは白蛇。其奴は龍人が身構えるよりも遥かに早く、くるくると輪を描くように回転しながら、勢いよく龍人目がけて飛来した。輪投げの要領で、白蛇は龍人の首に見事に引っかかった。
「よっ! 龍さん! 12年ぶりだなぁ! 会いたかったぜえ、よぉ!」
白蛇は陽気に龍人の首を支柱にぶんぶんと回る。ふとましい胴をしている故、龍人の首といえども油断するとあらぬ方へ筋を持っていかれそうになる。
「ったくもう! もうすぐ正月だってのに何してんのさ!」
龍人の逞しい首で激しくフラフープを続けながら、白蛇はまくし立てる。
「そんな格好してたら見てるこっちが寒くなっちまうぜー。なんでこんな時に滝に打たれてんの? なあ? なあ? なあ!」
「言われなくとも、わかるだろうが……」
龍人は凄んで見せるが、首元に絡みつく白蛇にとってはどこ吹く風である。
「えー、ナニナニナニナニ? 俺、ちょっとわかんないかも!」
しらばっくれる白蛇に驚きあきれる。知ったものを。いったい何巡目だと思っているんだ。
「何をしていると思う? 言ってみろ」
敢えて、意地悪く問いを返してみる。
「え、当たったらなんかくれる?」
「やるわけあるか!」
「……あ! もしかして、あれかあ?!」
わざとらしい言い方も白々しい。12年ぶりに聞く物言いとはいえども、懐かしいとかほっこりするとかいうよりも鬱陶しさが勝るのは、いっそ流石だと龍人は恐れ入った。
「それってつまり……年越しのための……『儀式』……ってコト?!」
「辰年になってから毎日やってるわ、阿呆!」
空いた手で蛇の頭を引っ叩こうとしたが、するりと交わされて、手の平は肩を強かに打ってしまう。勢いで爪が僧帽をぷすりと刺して地味に痛いのも業腹だった。
「何だよ龍さん、まだそんな迷信信じてんの? 100年前なら、まだしもさあ」
龍人は眉を顰める。同じ文句を去年の年越しに兎にも言われたのである。どいつもこいつも、世間擦れして、古式ゆかしい干支の役目を形骸化させてしまうとは情けない、と龍人は心の底から嘆かざるを得なかった。
「こんなことしようが、しまいが、どうせ変わるものは変わるし、変わんないものは変わんないと思うんだけどなー」
「そんなことはない!」
龍人は両手をパッドのようにぽっこりと膨らんだ斜腹に当てる。爪先が褌の捻った部分に触れ、弦のように揺らす。
「だいたい貴様らは時世に流されやすい。目を皿のようにして浮世を観察してみればわかることだが、今は科学万能の考え方が見直されつつある。なるほど、俺がやっていることはちっとも合理的でないといえばいくらでも言えるだろうが、古来生きとし生けるものは自然を支配するのではなく、一体であろうとしてきた。これからは、改めてその価値と意味とを考え直すに……」
躍起になって反駁している最中、白蛇はその太い蛇体で龍人の関節をおかしな方向へ捻じ曲げた。
「ぐっ……おおおおおおおっ……?!」
絞り上げるような悲鳴を漏らすのをよそに、白蛇は頭を龍人の耳元に近寄せて、二又に裂けた舌をちろちろと伸ばす。
「なるほどなるほど! ようくわかったぜ龍さん! 本当に! ようく!」
いかにも適当な受け答えに憤ろうにも、四肢を牛耳られてまるで操り人形の如き有り様。キリキリと骨節が軋む。馬鹿に強い蛇の万力は、龍人の頑丈な骨さえも容易く折ってしまえるほどである。
「生真面目すぎんだよなぁ、お前は! もう年も変わるんだから、リラックスしていこうって! ほら、そんなマジな顔してないで! 笑顔! 笑顔!」
「ぐぐぐぐっ!……こいつを、離せえっ!」
必死に全身を不自然なまでに捩らせながら白蛇の拘束から逃れようとするも、こっちを動かせばあっちが動かぬ。あっちがやっと動いたら今度はそっちが動けぬ、というまるで知恵の輪を解いているかのようなザマである。鍛え上げられた肉体も、白蛇の絡め手には情けないことにちっとも歯が立たないのはいかにも頼りない。
腕を力強く振り上げる格好を取ると、極限まで吊り上げられた大胸がぴく、ぴくと細かに痙攣する。背すじへと引き寄せられた肩甲骨が深い谷間を成した。突き出される形になった締まりの良い腹は、それでもきっぱりとした筋肉を見せ雄性を必要以上に見せつけている。辛うじて自由の効く首は意味もなくコントローラースティックのようにくりくりと動いていた。もぞもぞと軋みを立ててカラダが動くたびに、鱗にまとわりついた水滴が飛ぶ。
「ダメだって龍さん! そんなに暴れたら余計に絡みついちゃうんだぞお?」
「うっ……うおおおおおっ……!」
「言ってるそばから! 全然話、聞いてないな? もしかしたら、亥よりも猪突猛進? 馬よりも馬耳東風?」
「なに、上手いこと、言った気に、なってるんだ……うむむっ!……いいから……とっとと……離せえ!」
「えー、どうしよー」
白蛇は考えるふりをして、いっそうとキツく龍人の御体を締め付ける。不自然にまで収縮させられた筋肉は、次第に感覚を失って、龍人は四肢をもぎ取られるかのような心地であった。
「龍さん。俺、思うことあるんだけど、この際物言いしていい?」
「なんだ、なんだ、なんだ!」
「人さまのために滝に打たれる、っつってるけどさあ、実際さ……ただ滝に打たれたいからやってんじゃね?……って」
「んなわけあるものか! これは古式ゆかしい作法であって……」
「それ12年おきに聞いてるからー。いやさあ、そうじゃなくって、もっと言うと、なんか……さあ……」
ふふふふー。白蛇はそこでわざとらしく口をつぐむ。純白の艶かしい鱗がほのかに紅色に染まった。
「今日のお前、なんだかおかしいぞ、それで来年の干支を務めるつもりか?」
「もーっ、そんな話はどうでもいいじゃんか、今はー」
「今も何も、年越しのたびにずっと繰り返してきたことなのだぞ! お前というやつは……」
白蛇は反論する代わりに龍人の首もとに巻きついて、しばし締め上げてやった。唐突に窒息させられた龍人は、ぎゃっ! っと思いがけぬ驚声を挙げ、蛇を引き離そうと必死に爪を伸ばそうとするが、滑らかな蛇体は全身を油に浸したかと思われるほどにツルツルとして、鰻のように掴み難かった。
「!!!!!!!!……GRRRRRRRRRRRRRR!」
「龍さぁん、俺さ、っぱ、思うんだけど、さあ……」
締め付ける力とは対照的に、白蛇はもじもじとして意気地なさげな口振りである。言葉を継ぐ代わりに、伸ばした舌で龍人の頬を丁寧に舐め回した。そんなこそばゆさを感じている余裕は、当然ながら龍人にはない。
「うーん、何と言えばいいかなっ……」
「GRRRRRRRRRRRRRRRっ……ぅぉぉぉぉぉおおおおっ……!」
気を失いかけるギリギリのところで、白蛇は胴の力を緩めた。すんでのところで浮世から去りそうになった龍人は瞠目して鼻腔と口をめいっぱいに開いて、あらん限りの空気を取り込んだ。
「まず俺ってさあ、実は雄が好きでさー」
「はぁ!……はぁ!……はぁ!……」
「これまでずっと黙ってたけど、世の中も世の中だし、別にもうカミングアウト? しちゃっていいかなーとか思ったんだよねえ」
「ふぅー!……げほ、げほ!」
「おまけに龍さんって12年ぶりに会うたびに、どんどん仕上がっきてるっていうかー……その、カラダ、がさー」
「ごっほ!……おげええっ!……」
「だから、この際だから言っちゃうけど……お前、自分のカラダ、見せびらかしたいだけだろお?」
「げほ……げほっ……さっきから何を言ってるんだ貴様は……!」
「ナルシなんでしょ? わかるよー、俺は」
「げほっ! げほっ……」
「あ、図星かあっ?!」
白蛇は勝手に合点して雁首を振り子人形のように動かす。
「やっぱ、そーじゃん、そーじゃん! だって、いっつも修行着だっつって、そんな褌一枚だけの格好でいてさ。ちょっとは恥じらおうとか思わないのかって思うじゃん!」
「言ってることがよく理解できん! さっきから、貴様は何を?……」
「え? 無意識? マジに?……うわー! 逆にヤらしー! キャー! 龍さんのエッチー!」
「?!……?!……」
「いや、なんでそんな顔できるのか、六十干支回ってないわー! この、どスケベっ! 淫乱龍!」
「?……???……」
龍人は本気で首を傾げている。傾げる拍子に胸筋が電流を受けたようにびくびくと波打った。ちょうどその上に這っていた白蛇の頭も胸の動きに合わせてポップした。着々した胸筋はつきたての餅のような柔らかさだった。
「ああっ……ほんとそういうとこだから龍さん!……はあっ……はあっ……うううむ、これは教育が必要じゃないかあ?!」
「何だそれは……」
白蛇の鱗が心なしか紅色に染まったが、龍人は上の空である。
「龍さん! 俺、ぶっちゃけかまして、よかとっすか?」
しゅうしゅう、と口から音を立てながら白蛇は口ごもった。
「俺、龍さんのこと好き」
「……はあ」
龍人は爪先で鱗の密集する脇腹を掻いた。
「好きだし、隣の干支同士だし」
「……はあ」
「ってことで、今から俺、龍さんのこと犯すから」
「……はっ?」
白蛇はにっと牙を剥き、細長い舌を突き出し、きりきりと引き絞ったような音を立てた。
「だって俺……マジお前が誘ってるようにしか見えねえんだからよおなあっ!」
「……うおおおおおおっ?!」
再び全身を強く締め付けられた龍人は体幹のバランスを崩し、呻き声を漏らしながら前のめりに倒れ込んでしまった。咄嗟に腕を出して、丸みを帯びた河原の砂利がじゃらじゃらとやかましい音を立てた。辛うじて四つん這いの姿勢になった龍人のトルソーに、すかさず白蛇の豊満な蛇体がくるくると駆け巡る。
「何なんだ貴様は一体! 今日がっ……どんな日かわかっているのか?」
畜生め、と叫ぶと同時に除夜の鐘がまたひとつ鳴った。この騒ぎのせいで、これが何回目の響みか、龍人はわからなくなってしまっていることに気づき、困惑する。
白蛇は頭を高くもたげ、突っ伏した龍人を見下ろす。舌をチラつかせる音に、微かに唾液のねっちょりとしたリズムが合わさる。
「お前と会える日に決まってんじゃん?!」
「そういうことじゃない!……ぐあああっ……」
ぬめぬめと湿り気を帯びた蛇の鱗が、やんわりと龍人の体軀を締め付けてくる。肋骨が圧迫されて息苦しくなった龍人は、大きな背中を揺らしながら虚しくも白蛇を振り解こうとする。
「ああっ……龍さんのカラダ……ほんと好きだわー……好き好き……」
「やめろっ……今すぐ俺から離れろっ……う゛っ!」
「やだやだやだ! 今晩あんたは俺のものなんだからさ、龍さん?」
「ふざけた真似を! 神聖な年越しの時間に!」
「そんなことより大事なことが俺にはあるのっ!」
「罰当たりめっ!……ぎゃはっ!……」
「あー、やべ……龍さんのバカみてえに鍛えられた筋肉が虫みたいに蠢いてて可愛いよ……どんだけ筋トレしてたわけ?……こんなご立派な、カラダ見せびらかしちゃってさあ……どう考えたって誰かにエッチなことされるの待ち望んでたんだよなあ?……龍さん……ほらっ、もっと無様にエッチに抵抗して暴れてくれよおっ……あー、すっげ……ほおっ……」
「何を言ってる……き……気持ち悪いぞ、蛇! 止せっ、止せええっ!」
龍人は四つ脚で必死になって河原を這うが、徐々に強まる白蛇の緊縛に、とうとう息もしにくくなって、獣らしく喉を震わせ悶えるのがやっとだった。白蛇は勝ち誇ったように、龍のトルソーをスケーターのように滑った。
「やめないよ、もう」
そう言いながら、鼻先でちょんちょんと褌の捻れたところをつっつく。
「こんな申し訳程度の布っきれ、もう要らないよなー? じゃあ……えいっ!」
掛け声とともに、白蛇は褌の布地に噛み付いた。捻って細くした部位はあっさりと繊維が解れてしまい、蛇はぐっと鎌首をもたげて、一気にそれを引きちぎった。
「あ゛っ! ちょ、ちょっと待……!」
制止しても遅かった。白蛇は龍の下腹に張り付いて湯葉のようになった褌の残骸を、口で剥がし取ってしまう。
「うっ!」
雄の本能でつい股間を隠そうと両手を伸ばした弾みで、龍人はバランスを崩してしまう。上体が獅子おどしのように傾いて、丸々と筋肉と脂肪を程よく蓄えた臀部が付き上がるかたちとなった。
「えーまじ? いや、今更恥ずかしがるのも、どーかと思うんだけど?」
白蛇は苦笑する一方で、歪んだ悦びをもはや隠せないでいる表情。蛇体は今や無様に露わになった龍人の肉体の弱いところをぬめぬめと執念く這いずり回っている。
「蛇、貴様っ、不躾だぞ! 龍である、俺に、向かって!」
「そうだよ、いいじゃん、いいじゃん、不躾でえっ」
「開き直るな……!」
そう口では言いながらも、さっきから白蛇のぬらぬらとしたカラダが局部にしつこく密着して、なぜだかあらぬ情感が湧き立ってくる。否もうと躍起だったが、ぬらぬらとしたその感触が、実にいまさらなことではあるが、世のため人のためと祈念して滝に打たれた格好の、何とあからさまなことかをやっと意識させた。
蛇は器用に龍のカラダを這い回って、曝け出された股ぐらの鱗に微かに浮かんだ縦線に顔を近寄せていた。舌をしゅっと伸ばせば、割れ目にぴたとひっついて、
「ああ゛んっ!!」
などと、およそ龍人の雄らしからぬ声が、滝の轟音にも負けぬほど轟いた。やたら通る自分の喘ぎに龍人の恥の意識はこだまのように増幅する。
「ほらほら、どーしたの龍さぁん?」
割れ目に向かって白蛇は呼びかける。触れるか触れないかの間合いで円を描くように舌先を龍人の股ぐらで泳がせる。むわっとした臭気が漂ってきて、蛇は舌を揺らしながらぽうっとした顔つきをする。
「うお、くっせっ……龍さんの雄の臭い……やばやば……」
白蛇はうっとりとして、んー、と割れ目に口づけなどすると、魔法の豆を撒いたかのように、たちまちそこから充血したペニスが芽生えたかと思うと、ニョキニョキと砂利まで届かんばかりに勃起した。龍の名には確かに違わない、立派な逸物である。
「うほうっ!」
理性が飛んでいる白蛇から間の抜けた感嘆が飛ぶ。
「12年ぶりの龍さんのチンポやっぱクソほどでっけえな……血管バッキバキでめっちゃ主張してんじゃん……それに、めっちゃくっせえ……こんなにめちゃくちゃ溜め込んじゃって、いけなさすぎるチンポだろ……えへへっ……かわいー……」
「お……おいごらっ!」
「あー、ダメダメ、龍さんの筋肉ぴくぴくしちゃって……やだ、エッろ……エッチなことしたいされたいって、全身で雄弁に語ってんじゃん……ねーねー、これから僕が凌辱して、いいかな?……」
「そんなことして許されるわけがないだろっ……!」
「ふふふっ、胸がピクっと震えたな……左と、右が、交互にピク、ピク、って……筋肉もそうだ、そうだって言ってるぞお〜? 口答えするくせに、カラダはめちゃくちゃ欲しがってんじゃないのお?……おっ、もしや、こっちもかあ?!」
「……ん゛!」
蛇はするすると身をうねらせながら、すばやく龍人の臀部へ移る。そこには尾と二つのふっくらと丸みを帯びた肉が作る三角州のような窪みにある、きゅっとしぼんだアナル。蛇は子どものように眼をキラキラさせて、覗き込む。
「龍さん、何だよ、これはあ?」
蛇はやたらと口をパクパクさせてすっとぼけて言う。投げ出すように突き出した舌が、アナルにいくつも刻まれたシワをしゅんと掠める。排泄のためであるはずの穴にそんな風に触れられて、龍人の腰は不意に蛇よろしく、くねくね揺れる。
「ん? どしたの、龍さん? そんな淫らにお尻振っちゃってさあ……欲してんの? 欲してんだろ? なあ?」
「ち、違う! カラダが、勝手に……!」
「カラダが勝手に! いただきました! この、むっつり!」
揶揄いがてら、アナルをペロリと舐める。
「ん゛ん゛ん゛っ!!!」
面白いほどに嬌声を上げてしまい、龍人は狼狽した。
「い、いや、これはっ……!」
訊かれてもいないのに、龍人は何かを否定しようと躍起になっていた。首を無理に振り向いて見せる横顔は、屈強な男とも思われぬ、懇願するような奴隷にも似つかわしい顔つきであったのが、白蛇にはむしろ愉快だった。にこにこと、決死の形相を子どもの成長するさまのように微笑ましく見る余裕さえあった。アナルの芳しい、いかにも生物らしい有機的な臭気が、なおさらその気持ちを煽り立てた。
「へへへっ、ぷっくりとケツマンコ開かせちゃってよお……え、何? 挿入ってもらいたいって?……ふうん……どうしよっかなあ!」
「おい!……おい!……なに独り言言ってる……!」
「まあ、ただとは言わないけどさあ、こんな年越しにいい目の保養だったから、僕としてもやぶさかじゃないっていうかあ……」
「おい……ごらっ……!」
龍人が口を開こうとするたび、口吻でアナルの周りをぐるっとほじくって黙らせてしまう。シワの一つ一つを丹念に、会陰の筋を何重にもなぞっていくと、凝った筋肉はやわらかくなって、やがて開鑿されたような大穴が尻の谷間にぽっかり開いた。
「ごらっ……ああ゛っ……!」
白蛇にいいように巻き付かれ、四つん這ったままじっとしているのがやっと。蛇のぬめりを帯びた鱗が、鱗も薄い敏感なアナルと擦れ合うと、もうそれだけで、くすぐったさとも痒さとも言いがたい繊細微妙な感覚がして、訳もわからずカラダが内から燃え上がってくるのが、堪えられない。
「うん……いいよぉ……龍さん……どんどん立派で無様な雄になってきてんじゃん?……それでいいんだよ、ね?」
よくわからぬことを口走りながら、くねらせた胴で軽く触れたのは、さらに勃起した龍人のペニス。ありありて、ありあまるところは股下で宙ぶらりんし、もわっとした蒸気さえ立てている。
「やめっ……にや゛っ……めぇっ!」
「龍さん、そんなネコみたいな声出しちゃっていいの?……もしかして……つまり……ネコかぶってんの?……ネコが干支名乗ったらダメなんだよ、わかってるぅ? これはちょっと物言いじゃねえのお……?!」
白蛇はすっかり恍惚としていた。龍人のぷくりとしたアナルにねっとりと口付けし、蛇体で鈴口をさりげなく擦った。そのたびに龍人は何とか堪えようとして全身の筋肉を強張らせる。たまらなくて、何度もアナルに口付けをしていた。無駄な足掻きに腰が緩く左右に触れるのも、もう余計に白蛇の欲望を掻き立てる。
「お勤めのためにカラダ鍛えるのも結構だけど龍さんさあ……中までしっかり勤行しないと意味ないんじゃないのお?!」
「い、い、言ってる意味が! ちょっと待て! 待ってくれ! なに考えてる! 止せ! 今すぐ!……」
「くぅぅぅぅ! もう、いくっきゃねえよぉぉぉぉぉ! 龍さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「んふぉっ?!」
ほっそりとした顔をアナルにグイグイと押し付けると、括約筋の緩んだ一瞬の隙にそのまま白蛇は後ろの口から龍人の中に忍び込んでしまった。
「ぐっ!……うはぁぁぁぁぁぁぁ!」
ぬるぬるとした細長い蛇体が、直腸をもみくちゃにする。単なる棒を挿れられるのとはまったく違う感触に尻を襲われ、龍人の背筋がひやりとする。
「うおおっ……龍さんの中……超あったけえわあ……それに、うおっ……くさくてたまんねっ……極楽かよお」
「や゛……や゛……!」
白蛇がもきゅもきゅと抵抗する内壁を押し拡げるにつれ、直腸を内からこねくり回されることによる猛烈な排泄感を催して龍人は情けなくも物も言えない。何かが飛び出てしまいそうな気がして、ぴくりとも動けず、余計なことも口走れなかった。幼時でさえ味わったことのなかった恥じらいのために、自ずと四つん這いの全身がぞわっとした。
「出ろ゛!……出ろ゛!……や゛……やがっ!」
「だいじょーぶだって、龍さん!……人様のことなんて忘れちまって、今を楽しんでこうって!……ああっ、にしても龍さんのケツん中、雄臭すぎっ……んほうっ……やんべっ」
白蛇の声が体内からくぐもって響いてくる。そのやたらと通る声が、腹の裏側をいちいちくすぐるたび、そのたび得も言われぬ感覚に龍人は悶えそうになる。
「おっ……もしや、ここかな?」
蛇の頭がコリコリとした雄の弱みを腸壁ごしにかすった。
「ん゛」
「ここかな? かな?」
「ん゛! ん゛ん゛ん゛ん゛!!」
「あ、ここっぽいなー……へー……これが前立腺ってやつねえ……ほらほら、龍さん、どうよ?!」
「うーっ!……んーっ!……ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!」
呻き声を上げながらも、ただ腰をぶるぶると震わせるのが辛うじての抵抗で、込み上げてくる痛みとこそばゆさを混ぜに混ぜ合わせた触感に、すぐ組み伏せられてしまう。砂利に鼻先を埋めつつ、気怠げに首を振った。
「ほら、ほら、ほら!」
「ん゛う! ぞこっ! ぞこ、や゛め゛っ゛!」
「やめるかよお! ほら、もっと雌になっちまえって! 早くさ!!」
「みぇっ!……あ゛はっ!……あ゛……お゛う゛う゛う゛ぃっ!……ふぃっ……!」
龍人として考えうる最悪の陵辱を受けるものの、白蛇の雁首にぐいぐい腹の裏側を押されるたびに、じゅわっと溢れ出てくるこの気持ちが何なのか、言い表すことができなかった。ただ、催しそうな下腹の不快感が破裂する寸前で延々と我慢させられていることによる、もどかしさと切なさは、なぜだか白蛇の玩具となってしまった肉体をいやに火照らせるのである。実際、股ぐらから垂れ下がったペニスは血管を明確に浮き上がらせ、朽ちた柱に無造作に絡みつく蔦を思わせた。
「どうなんだよ龍さん! 気持ちいいか! 気持ちよくないのかって!」
「んぎ! んぎ、んぎ、んっっっぎ!!!!……」
「あー、でもここだけじゃ物足りねえよお……」
白蛇は龍人の腹から声を出して、まだ不平を垂れた、かと思うと、
「ん゛ん゛ん゛ん゛……ん゛っ……?!……?!?!?!……!!!!!!」
「なあ、この際、ちょっと俺、ずっと妄想してたこと……試しちゃおっかなあ?!」
たちまち、白蛇はにゅるにゅると龍人のカラダの中を上り始めた。直腸の角を折れて大腸に侵入すると、そのままやけにこなれた身のこなしで大腸を抜け、こんがらがった小腸も本能のままにしゅるしゅると抜けてしまうと、干支の小腸ならば胃酸も何ぞやと胃臓もあっさりと突き抜けた。
「あがっ!……ARRRRRRRRRRRRRRRRRRR!」
「おっしゃあぁぁぁぁぁぁぁ! なんか知らないけど、いけそう! このまんま龍さんの中全部俺が清めてあげるよぅ! ありがたく思えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「RRRRRRRRRRRRRR!」
蛇の頭部が食道を越して喉元までやってくると、龍人の口は自ずから開き、顎が外れそうになる。
「ARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR……GGGGGGGGGGGGGGGGGGGG……!」
言語に絶する叫びを上げる龍人を他所に、ぴんぴんとした白蛇が、ついに龍の喉を貫通し、ぱっくりと開かれた口からその無邪気な顔を覗かせたのは、107回目の鐘が鳴った瞬間であった。
「Hoooooooo! あ〜けましてお〜めでとぉー! いえぇぇぇぇぇぇぇぇぇい! 乙巳もよろしくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「ARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRっGぅあぁぁぁぁぁぁっ!」
「なー、今年はいい年になるといいなあ? 龍さぁん?」
「RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR……!」
文字通り全身を貫かれてしまった龍人はとんでもない不快感と快感のせめぎ合いの中で、ぶつかり合って、強烈な情動のうちに相殺される中で、心もはやここにあらずといった調子だった。年明けの星のくっきりと見える夜空も、鐘の音も、もはや何も見えず聞こえなかった。白目を剥いた表情は、まるで着ぐるみと化した風情。
「GG……GGGG……R、RRRRR……!!」
俄かに腹を下した時に出る、あの猛烈な排泄感が下腹から再び込み上げた。今度は本当の本当だった。叫びたくても無理くり口を開かれているのでまともに声を出すことができない。ぎゅるぎゅると鳴る腹を抑えたくても、腹を凹ませても膨らませても、消化器官をみっちりと満たした蛇体の圧迫感を覚え、事態はより悪化するばかりである。
こんな格好で、こんな神聖な御滝のある場所で、無様な真似をしたくないと、龍人は残されたわずかな正気を振り絞って思うが、思えば思うほど下腹はふかしたエンジンのような異音を立てた。
「G! G、G、G、G、G!……Gっぎゅ」
龍人は口をきつく閉じるが、後ろの口はすっぽりと突き挿さった白蛇の尾の隙間から、汚らしい音が鳴るのを止めようがない。
「お? もしかして? 龍さん? くるぅ〜?!」
「G! G! G! G!……」
「おっしゃあ! ばっちこい、龍さん!……」
「Gっにゅう゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」
括約筋が弛緩して、滝の音さえ凌ぐような猛烈な排泄音。内臓が全て裏返しになるのではないかというほどの勢いで、龍人は一気に蛇のカラダを放り出し始めた。瞬く間に龍人の体内に吸い込まれた蛇は喉元過ぎて、食道から胃へと逆戻りする。
「ひゃっ……ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」
白蛇は爽快なスリルを味わいながら、大腸の中をぐるんぐるんとした。上ったり下がったりして、平衡感覚を失っているのが無重力みたいで楽しかった。けれど、もうすぐ直腸まで戻ろうかというところで、勢いが、ぴたりと止まった。
「どした、どした!」
「Gっ……Gっ……Gぅ……!」
「最後まで踏ん張れって!」
「GGぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……!」
龍人は目を見開いていたが、ゴマ粒ほどに小さくなった瞳孔は何をも見つめていなかった。さながら酷い格好のまま石化させられ、末代の恥にさせられたかのような有様だった。
「なんだよ、ケツ疲れたのかあ?」
「Gっ……Gゅぅ……!」
「ほらほら、頑張れ、頑張れ、ケツ頑張れ、ほら!」
「……!!……?!……!……!!!!……!!」
とどめの一撃と、白蛇は思い切りのたうちまわった。好き放題された龍のカラダはたちまち根を上げた。下腹が、再びけたたましい音を立てて顫動をし始めた。
「G……G……ぐんっ……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……! うっ……ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっふょぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛!」
言葉にするのも憚られる絶叫と汚音が轟き、弄り尽くされて肛門というよりは砲口のようになったアナルから、弾丸よろしく吹き飛ばされた白蛇は、強かに砂利に叩きつけられた。
「うぉぉぉぉぉっ……絶叫マシンみたいで……龍さんの中……たっのしぃぃぃぃぃぃぃ!」
白蛇は興奮のあまり夢見心地になって、痛みなど感じるべくもなかった。最後の鐘の音が聞こえた。じんと鳴り渡ったら、後はいつまでも続く滝の音ばかりである。
「俺……今年は立派な巳年にできる気がするよ……はぁ……はぁ……龍さん……俺、頑張るよ……頑張るから……」
蛇は満足げに呟くと、猛烈な眠気に襲われそのままいい初夢を見始めた。夢の中で、まだ白蛇は龍人を好き勝手に犯し続けていた。
龍人は四つん這いの姿勢のまま気を失っていた。無様な一個の狛犬さながらであったが、なおも怒涛を撒き散らすペニスと、腑抜けたガス音を立てるアナルが、かろうじて此奴が曲がりなりにも雄であることを証していた……