軍人熊獣人から脱走したら、お仕置きと称して愛玩動物にされた話〜熊獣人ベアルドフ編②〜

  (熊獣人軍事基地内。爆発音が響き、基地内にアラートが鳴り響く)

  ちっ。またか。

  (ベアルドフは回転灯に照らされた部屋で辟易としたように溜息を吐いた)

  あいつは本当に懲りないな。その反骨精神には感服すらするぜ。

  だが……今回ばかりは地雷踏みやがったな。

  しかし、下等生物共め。俺の所有物を奪いに来るなんざ、いい度胸してやがる。

  (ベアルドフはギリと拳を握る。瞬間、身体にバチバチと電気が迸った)

  いいぜ、体に思い知らせてわからないなら……その希望を砕いてやるまでだ……。

  (ベアルドフは立ち上がり、どこかに去って行った)

  (一方、貴女はアラートが鳴り響く基地内を走っていた。貴女はパワードスーツを来た何者かに手を引かれていた。)

  「助けに来るのが遅くなってすまない……。だが、無事で良かった」

  (貴女は泣きそうになりながら、首を振った。貴方が助けに来てくれただけで嬉しいと)

  「ベアルドフに誘拐されたと聞いた時は、正直もう君に二度と会えないんじゃないかと思った。だから……無事で良かった……」

  (彼は貴女の最愛の人。誘拐された貴女を助けに来たのだ。しかし、貴女は一つ彼に隠していた。毎夜ベアルドフに抱かれ続けている事を)

  (恋人である彼は、小さな拳銃で正確に熊獣人達の眉間を狙い打ち倒していく。)

  (そうして、もうすぐ出口というところで)

  おい、俺の可愛いペットをどこに連れて行く気だ?

  (そう声が聞こえた瞬間、辺りの電気が消えた。暗がりから足音が響く。恋人は貴女を後ろに隠し、拳銃を足音の方に何発か打ち込む。)

  そんな鉛玉が俺に通用するとでも思ってるのか? なぁ。

  (バチバチという音と、光と共にベアルドフが現れる)

  (貴女はカタカタと震え、恋人の背中にピッタリくっついていた)

  「ちっ」

  (弾を使い果たした恋人は悪あがきに、拳銃をベアルドフに向かって投げつけ、ナイフを抜き、素手で戦う構えを取った。ベアルドフは投げられた拳銃をパシっと受け止めると、その場に捨てた)

  今回ばかりはお転婆が過ぎるんじゃねぇか? お前はいくら可愛がっても俺には懐かないなぁ。ま、そういう所も嫌いじゃないがな。

  だがよう……流石に今回のコレは見過ごせねぇなぁ……。

  おい、テメェ。

  俺の可愛い可愛いメス奴隷になんかようか? そいつは俺様の1番のお気に入りでな。連れて行かれると困るんだが。

  (ベアルドフは口調は冷静だが、怒っているのは一目瞭然だ。そして彼は滅多に使わない雷魔法の力が漏れて、身体を電光が駆け抜けていた)

  今ならまだ許してやるから、そいつを返しちゃくれねえか?

  「断る……」

  ハッ!! そうかよ。それならそれで構いやしねえ。だが……。

  (ベアルドフは急に声を低くして)

  後悔しても知らねえからな。

  (貴女の恋人が動く。姿勢を低くして、一直線にベアルドフの心臓へと向かう)

  馬鹿が……狙いが見え見えだ!! オラァッ!!

  (ベアルドフは彼が正面に来た瞬間、顔を狙って蹴りを繰り出す。パキンっという乾いた音がして、「くっ」という男の声が響いた。)

  いいことを教えてやるよ、下等生物。

  そのパワードスーツの事だが……。それが対魔力に特化した防御スーツで、お前等人族の叡智、科学の結晶だということは知っている。現に、魔法戦においては中々の戦果を上げてる。ああ、それは認めてやる。無い頭でよくやったと。

  だがな、俺の前では何の意味も持たない。

  それを今から教えてやるよ。

  (ガッとベアルドフは恋人の首を鷲掴んだ。貴女が止めるまもなく、ベアルドフは何か呪文の様な物を唱え始めた)

  

  ーー雷の神アルゲース。我、雷の信徒。この身はいと激しき雷雲ーー

  (詠唱に合わせ、ベアルドフの身体に纏っていた電気が次第に大きくなっていく)

  ーーこの身を貫き顕現せよーー

  (まるで吠えるように叫ぶ)

  サンダー・ボルト!!!!

  (ベアルドフがそう言った瞬間、激しい音が鳴り響き、暗かった基地内を照らし出した。貴女はその光景を見て、幼い日のトラウマを思い出す。そう、両親を殺された日のことを。頭を両手で抱えてその場に蹲る。足音が聞こえて、貴女に影が刺した)

  

  ……パワードスーツは電気で動いてる。となれば、動かすだけの電気より更にエネルギーの高い電気を流せば、パワードスーツは機能を失う。雷を扱う俺にしか出来ない芸当だ。

  なぁ? 惚れ直してくれたか?

  ちっ……。

  俺に、俺様に魔法を使わせやがって……大嫌いな魔法をよ。

  神に媚び諂わなきゃならないこの力が俺は大嫌いなんだよ。

  さて……。随分手こずらせてくれたな。

  あんなに可愛がってやった恩も忘れて、しかも浮気相手を連れてくるとは……お前にはお仕置きが必要だな……。

  (雷を纏った手で、首のあたりを軽く叩かれ、貴女は意識を失った)

  [newpage]

  ***

  よぉ? お目覚めか。

  (肩口にキスされ。貴女は慌てて起きあがろうとして……手を挙げた状態で縛られている事に気が付いた)

  ああ、拘束させてもらった。

  全く、お前は学習能力がないのか? 何度言ったらわかる? 何度抱けばわかる? 俺から逃げられないと。

  あぁ? あの人?

  あの愚かな人族のオスか?

  それなら……ほらあそこに居るだろう?

  (恋人が拘束と猿轡され椅子に座らされていた。顔を逸らせないようにされているのか、彼は血の涙でも流しそうなほど、憎悪の目でこちらを見つめていた)

  (貴女もベアルドフも裸で、更には組み敷かれているのを見られて、「見ないで」と無駄なのに叫んでしまった)

  あはははは!! なんだ、俺と愛し合ってるの見られて恥ずかしいのか?

  ん〜……チュ……オラ、顔を逸らそうとするな……アイツに見せつけてやれよ……(嫌々する顔を抑えキスをする)ンッ……

  (貴女はベアルドフの舌を噛む)

  ンッ!?

  チッ……。(床に向けて唾を吐く。)

  そうかよ……ここに来てまで俺を拒むかよ……。

  (ベアルドフはベッドから降り、恋人の前に立つ。そしておもむろに恋人のおでこ当たりを鷲掴みにする)

  お前がそういう態度なら、こちらにも考えがある……。

  (ベアルドフは腕に雷を纏わせる。そのまま電気を頭に流し込むように、力を入れた。)

  (恋人の絶叫がこだまする。)

  (貴女は手錠を鳴らして「やめてくれ」と懇願する。)

  あん?! やめろ? はっ、いいぜ? お前がいい子にすると約束するならな。

  (貴女はいい子にすると必死に謝り、何回も繰り返す)

  (パッと手を離すと、恋人の体から煙が出て、目は白目を向いていた。貴女は恋人の名を呼ぶ)

  ハァァ……

  (ベアルドフの溜息が聞こえるやいなや、気が付けば、彼は貴女の肩を押さえつけていた)

  俺の前で他の男の名前呼んでんじゃねぇよ。

  (耳元で)

  アイツ……マジで殺すぞ?

  (貴女はごめんなさい、ごめんなさいと謝る)

  ……お前……。

  (ベアルドフは不思議そうな顔をして、それから何かに気付く)

  ああ、ああ、そうか、そうだったのかよ。

  くっ……あはは……あははははははー!! あーーーヒャハハハハハハハハハハハハっ!!

  そうかよ!

  ずーっと不思議だった! お前の匂いに何故こうも心を掻き乱されるのか! 何故こんなに惹かれるのか! 何故お前に心地よさを感じるのか!

  ……お前……あの時のガキだな?

  (貴女はビクリと身体を震わせ、恐る恐るベアルドフを見る)

  ああ、その顔……よぉーく覚えてるぜ。

  あれは……まだ俺が一般兵の時の話さ。

  俺は人生初の戦争で……腹立たしい事に無様を晒した。俺は死にたくなくて逃げ出した、逃げて逃げて逃げて……。

  腹が減って、傷ついて、森の中で動けなくなった。

  死を覚悟した。

  もうどうでにでもなれと自暴自棄になった時だ。

  馬鹿な人の番に出会った。

  お人よしで、獣人の俺を恐れもせず、自分の巣に持ち帰りやがった。

  (貴女は思い出す。暗い目をした熊の耳を持つ青年の事を。そして、その青年が……自分の両親を……)

  ああ! お前の両親には感謝してもしきれねー弱っていた俺を愚かにも助け、世話を焼いて……最後には食料も提供してくれた!

  ああ、そうだ。

  俺が……お前が探していた……両親の仇さ!!

  (貴女は絶叫して、縛られてない足でめちゃくちゃ暴れ、ベアルドフを呪うように「殺す」と繰り返す)

  あは、あはははは! 美味かったぜ! お前の両親の肉は! 善性の甘さ、疑うことを知らない爽やかさ、そして絶望の辛さ!

  最高の味だったぜ!

  何故殺したか? ハッ。当たり前だろう? 人族は俺らの奴隷であり食料だぜ?

  それに……反吐が出そうだったんだよ。お前らの甘さに。

  平和? 平穏? 自由?

  そんなものはまやかしだ!

  だから、教えてやったんだよ。その身で持ってなぁ!!

  なら、何故私を殺さなかったか? ……覚えてねぇのか? お前が言ったんだろう? 殺さないで、ごめんなさい、いい子にするからって。

  だから、そうしてやった。

  あの時だ、初めて人に対して憐憫を覚えた。愛しさを覚えた。

  必死に懇願するお前を可愛く思った。

  無遠慮にベタベタと纏わりつかれるのは辟易したし、食い殺してやろうとも思った。

  だが、そんなガキが地獄を見て経験して純粋さを失って、ここで生かしたらどうなるのか知りたかった。

  結果は……ご覧の通りだ。

  お前は生きて、誰かも覚えていない仇を探して……俺に辿り着いた。

  最初からお前は俺に囚われていたんだよ。

  逃げるなんて、出来なかったんだよ。

  (暴れる貴女にベアルドフは、抑えつけた腕に電気を流す)

  (貴女は身体が痺れ動けなくなる)

  舌噛んで死ぬつもりだったんだろう? そんなのは許さねえ。

  なぁ、痛えか? 悔しいか? 憎いか?

  だがお前は何にも出来やしない。お前は俺に弄ばれて、俺の物に大人しくなるしかねぇんだよ。

  あはははは、その苦痛の顔堪らねー……。

  あぁ、人なんぞ気持ち悪いだけだというのに、お前は愚かで本当に愛らしいな。

  ん? 殺せ?

  嫌だね。

  俺はお前を生かして、活かし続けて、愛玩してやるって決めたんだよ。

  ……お前の呪われた運命に絶望しろ。そして黙って俺に孕まされろ。愛でられろ。

  それじゃあ、愛し合うか。

  (ベアルドフは獰猛に、まさに熊のように貪り食らうように、貴女に激しいキスをした。貴女の心にヒビが入る音がした)

  END