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三十代の中間管理職のケモおじさん(未婚)は研修にやってきた経営者一族の大学生に…
「いつまで学生のつもりでいんだよ?お前は、ここの
社員で社会人だろうが…いい加減しっかりしろよ!」
俺が放った怒号がフロアに響いて辺りは静まりかえる。
…たった一言じゃねぇか。それだけで黙っちまうなんざ
情けねぇな…。もっと骨のある奴は居ねぇのかよ。この
会社の勤めて、もう十年経つが世の中は腑抜けばかりが
増えちまって…これでどうやって仕事してくんだよ?
「仕事は遊びじゃねぇ。しっかり考えて働くんだな。」
このフロアを任されて二年…毎日、怒鳴ってばかりじゃ
ねぇかよ。部下たちも必要最低限しか俺には話しかけて
こねぇし、なんだよ?俺は真面目にやってるだけだぜ?
まあ、こいつ等も可哀相なもんかもしれねぇが…大企業
なんて名ばかりでこの部署は『なんでも屋』『雑用係』
頑張ったところで誰の目にも止まらねぇ。他の部署から
『人材の墓場』とまで言われる始末だしな…。それでも
仕事は仕事なんだ当たり前のことを当たり前にするのは
当然だろう?それなのに甘えたことばかり言いやがって
仕事が嫌なら辞めろって話じゃねぇかよ。
ここは、誰もが名前くらいは知ってる大手家電メーカー
…のクレーム処理を担当している部署だ。誰もが好んで
来たがらない場所ではあるがここでしっかりと対応して
おかないと顧客から見放されちまうからな大事な仕事を
任せられてる。俺は、この部署の仕事が嫌いではないし
誇りに思って仕事をしているんだ。まあ、だが…。
「頑張れば頑張るほど溝が出来ていく気がするな…。」
鬼の熊とか墓場の狼とか影で言われてるのも知ってるが
言いたい奴らには言わせておけばいい。気にもならない
…強いて言うなら俺は苗字が[[rb:熊狼 > くまおか]]っていうだけでどちら
でもなく犬の獣人ってことくらいか?…それにしたって
よくここまでの陰口を思い付くもんだ。仕舞いには俺の
焦茶色の毛並みや種族まで持ち出して煉獄のやら狂犬の
やらなんでもアリかよ?そんなこと考える暇があるなら
少しでも仕事をしやがれってんだ…。
「お、お疲れさまでした…!」
「お先に…し、失礼します…っ!」
「…おう。ご苦労さん。」
怯えながら退勤することねぇだろうが…そもそも昨今は
残業すんなって方針なんだから、定時になったら堂々と
帰りゃいいんだよ誰も咎めねぇんだから。むしろ残業を
させたら俺が咎められるわけだが…追い払うって言えば
聞こえが悪いが部下たちを早々に退勤させた。
[newpage]
「さて、俺の仕事はこれからが本番なんだが…。」
…去年から役が付いたおかげで残業代が付かないからな
俺の残業については問われない。サービス残業になるが
時間を気にせずに自分のやりたいことが出来る。
「日中の業務と使えねぇ部下たちの面倒を見てたんじゃ
新製品のプレゼン資料が作れねぇからな。それじゃあ
この会社に勤めてる意味がなくなっちまうだろう?」
どの部署に所属していようが自分のアイデアをプレゼン
することは許されてるんだ、やらないってのは勿体ねぇ
…まあ頑張ったところで製品化に辿りつけるアイデアを
起用してもらえるのは一握りなんだが…。
「俺の出したアイデアでも何個かは商品化もされたし
そこそこ売れたやつもあるんだ。いつかこの会社の
代名詞になれるようなのを作ってやるからな…。」
楽しくて時間を忘れちまうんだが今日は日付を跨がねぇ
ように気を付けねぇと流石に人事部から怒られちまう。
「こんなもんか?おっと、時間は…二十二時…危ねぇ
警備室から連絡貰っちまうところだったぜ。」
個人情報の入ったキャビネットの施錠を確認し業務用の
端末を全部落としてからタイムカードを打ち込んだ。
「飯はどうすっかな…そろそろ、店も閉まっちまうし
コンビニ行くか?何か残ってりゃいいんだが…。」
一人者の宿命だな。家に帰っても飯を作って待っていて
くれる奴もいねぇ。そもそも出逢いがねぇんじゃな…。
「同期のやつらもほとんど結婚しちまったしな…みんな
どこで見つけてくるんだよ?仕事してたら恋愛なんか
する暇なんかねぇだろうに…どうしたもんかな…。」
はっきり言って結婚願望はねぇんだが、両親をはじめ…
親戚連中の干渉が尋常じゃないくらいうるさいんだよ。
どうにかしたいんだが…適当な相手も見つけられねぇし
ってか適当ってなんだよ適当って…いくらなんでも失礼
すぎんだろ。こんなだからダメなのかもしれねぇな…。
結局コンビニに入るも弁当は売切れてて、腹に溜まるか
怪しかったが…申し訳程度おにぎりを二つ買って帰路に
着く。明日も仕事だ、風呂に入って早く休まねえと…。
[newpage]
「はい、ええ。承知しました。ご連絡をいただきまして
ありがとうございます。引き続き、今後の製品開発に
役立てていきたいと思います。失礼いたします…。」
「熊狼次長…対応を代わっていただい…。」
「この程度の受け答えが出来ねぇのかよ…もういい。
次は自分でやれ。同じことを二度も言わせんな。」
「…っ!?は、はい…わかりました…。」
出社して早速かよ…こいつ全然成長してねぇな…。まあ
次に同じことやったら始末書だな。俺はどんな案件でも
一度は待ってやることにしてるんだ。一回目から叱責を
するのは違う…それは性格の悪いやつのすることだから
って、こんなに優しいのになんでみんな怯えてんだよ。
「…じ、次長。専務から内線です。お繋ぎします。」
なんだよ?厄介事か?面倒な相手から掛かってきたな。
「熊狼です。はい、はい?研修ですか?うちに?」
厄介事には変わりないみたいだが、俺が想定していない
ところから振り掛かってきやがったな…。俺もまだまだ
経験も読みも浅いということなんだろうか。っていうか
本気なのかよ?この部署に配属していいような相手じゃ
ないだろうに何を考えていやがるんだ…?
企画兼総務部管理部門業務第三課なんて仰々しい名前が
付いているが…ここはメイン業務とはかけ離れた雑用係
なんだぞ?本当に受け入れて大丈夫なんだろうな?
[newpage]
「[[rb:御堂塚琥珀 > みどうづかこはく]]です。今日からよろしくお願いします。」
「ああ…よろしく頼む。部署の者を紹介しておく。」
御堂塚なんて滅多に聞かない苗字に金色にも見える毛色
疑うまでもなくこの会社を運営する狐の一族の血筋だ。
なんで経営者の一族がよりによってこの部署に来んだよ
もっと行くべき相応しい部署があるだろうが…。
「おい、業務連絡だ。よく聞いとけよ人事部の方からの
依頼で今日からここの部署で研修を受けることになる
御堂塚くんだ。簡単に自己紹介をしておくように。」
「…御堂塚だって?い、いや…まさか…?」
「経営陣の御堂塚一族が…?なんだってここに…。」
ざわついてんな…お落ち着けってんだよ。既に決定して
ここにいるんだから、もう…どうしようもねぇだろうが
なんで?どうして?なんて俺の方が聞きてぇんだよ…。
「お世話になります。名字は無駄に長いので琥珀って
呼んでいただければと思います。それでは、先輩方
改めてご指導ご鞭撻の方をよろしくお願いします。」
「…仕事の内容はこんな感じだ。うちは性質上受け身の
業務になる。クレームの対応もそうだが他部署の応援
なんかも急に連絡をもらうことが多い。すぐに…。」
…一通りの仕事内容を直接、俺が伝えることになった。
ってか、俺じゃなきゃ務まらねぇってのも問題だよな…
この程度のこと誰だって説明出来んだろうがよ。なんで
この部署はこんなに使えないやつらばかりなんだよ…。
「…報告等は社内用のスマホから入れてもらえば直接
してもらわなくていい。…あ~、琥珀って呼ばせて
もらうな。歓迎する。研修終了までよろしく頼む。」
「はい!熊狼次長!実務経験がなくご迷惑をお掛けして
しまうかと思いますが精一杯頑張りますのでよろしく
お願いします。ご指示などがあればお聞きしても?」
…へぇ、低姿勢だし意欲もある。大抵のやつは初めての
場所だと『借りてきた猫』職場の中で言えば手に付かず
時間を浪費しちまうことが多いがこいつはそれを避ける
ための選択が出来るみてぇだな?だが俺も遠慮の仕方は
知らねぇし経営者一族だからって特別扱いはしねぇから
覚悟しとけよ?まずは事務からか…それなら。
「それじゃあ早速だが、前日のクレーム処理の報告書を
まとめてもらおう。処理の仕方はマニュアルに書いて
ある。何かわからないことがあったら聞いてくれ。」
「わかりました!こちらのデスクの端末を使いますね。
お客さまの声を近くで感じることが出来るのはとても
有難いです。完了後に次長の端末に転送しますね。」
「ああ…。昼は交代で取るようになっている。資料なら
終わってなくても休憩に入ってもらっていい。時間に
なったら自由に取ってもらって構わない。」
量が量だからな、だが…まあ一日もあれば終わるだろ?
マニュアルを見ながらじゃ速度も上がらねぇだろうし…
こいつが『普通』だったならそのくらいの仕事をやって
みせるだろうと、俺はそう考えていた…。
[newpage]
「お客さま、お手数ですが取扱説明書を手元にご用意を
お願いできますか?…ありがとうございます。こちら
二十頁に操作方法がございまして…。」
「この度は貴重なお時間をいただきご報告を賜りまして
ありがとうございます。弊社としましてもこのような
不手際でご迷惑をお掛けすることがないよう…。」
「応援の要請ですか?本日の十四時から役員会議室に
二名程、はい大丈夫です。手配をいたします…。」
…おいおい、なんだよこいつ?化け物か?掛かってきた
電話ほとんど応対してんじゃねぇか…それも、ほとんど
完璧な受け答えで?資料には二十歳って載っていたが…
大学の夏季休暇に合わせて研修に来たって言ってたよな
…嘘だろ!?今朝振った資料がまとまって送られてきた
だと…こいつ、どうなってんだよ…。俺ならともかく…
この部署でここまで出来るやつなんていねぇぞ…。
「…熊狼次長。今朝いただいた仕事が終わりました。
ちょうど時間ですし、一緒にお昼にいきませんか?」
「あ、ああ…そうだな。…十三時まで席を外す。何か
あったら端末まで連絡を頼む…。待たせた。社食で
いいか?俺はすぐに戻れないと少々マズくてな。」
…この部署のやつらに留守を頼んでても頼りにならねぇ
何かあったら俺が対応しなきゃなんねぇんだから…。
「大丈夫です。一度行ってみたかったんですよ。社外に
いると中々行く機会がなくて…とても楽しみです。」
俺もこいつに聞きたいことがあるしな。昼休みだけじゃ
十分に聞き出せないかもしれねぇが…。
「どっちも美味しそうだなぁ…。うん!今日はAで!」
「俺もA定食で。こいつの分も俺に付けといてくれ。」
「えっ?いいんですか?次長ありがとうございます!」
経営者の一族なんだよな?謙虚で仕事も出来る好青年に
しか見えねぇ…演技?最悪な場合、秘密裏に監査するを
ために送り込まれてきてんじゃないかとも考えていたん
だが…判断に欠ける。それにしてもあの働きぶりは…。
「すみません。次長、僕こういうのに疎くて。ちょっと
お聞きしても?今日の定食、個人的に量も多くて味も
値段も妥当だと思うのですが…いかがでしょうか?」
「悪くねぇと思うぞ?この辺だと外に出ちまえば結構
値が張る店ばっかりだからな。これだけの味で量も
多い。強いて言うなら小食のやつらには厳しいか?」
小型の獣人には多いかもな。まあ、ほとんど大型か中型
それに少ないよりは多い方がいいし注文時に量を減らす
ことも出来るんだから問題はほぼねぇだろ。
「ありがとうございます!参考になりました…なるほど
でも、これで自信を持って社員のみなさんに提供する
ことが出来ます。アンケートも置いてみるかな…。」
経営者の一族…なんだな。だが、これだけ社員のことを
考えてくれるようなやつらだったか?以前、別の部署で
一緒に仕事をしたことがある一族関係者は常識もねぇし
控えめに言って最悪なやつだったからな…あんまり良い
印象がねぇんだよなぁ…。
「仕事熱心だな?それに恐ろしく仕事が出来るみてぇだ
午前中は驚かされたぜ?初日であそこまで出来る奴を
俺は見たことがねぇ。琥珀は優秀なんだな…。」
間違いなくうちの部署の中でも一番仕事が出来ることが
わかっちまうくらいには…これで現役学生なんだろう?
「…僕なんかまだまだですよ。それに次長が最初に案内
して下さったので、どの業務もマニュアル化されてて
わかりやすかったですし基本的なことしか…。」
普通は聞いただけじゃ出来ねぇはずなんだが…どうにも
積んでるスペックが違うらしい。…部下たちも琥珀ほど
とは言わねぇが見習ってもらいてぇもんだ…。
「…でも、近くのお店も良いところがあるのなら知って
おきたいですね。次長、機会があったら連れて行って
いただけませんか?接待先の会場候補として…。」
飲食の話題すら会社に絡めちまうなんて筋金入りだな。
「ああ、歓迎会は都合が付かなかったから代わりには
ならねぇが店の紹介がてら連れて行こうか。」
…その日は昼休み中に呼び出されることもなく、琥珀と
昼休みの最後まで雑談が出来た。まあ、わかったのは…
仕事に対する真摯な姿勢と本人の性格の良さくらいだが
十分な収穫だったと言えるだろう。それにしても昨今の
大学生は発育が良いらしいな?細身だが身長は高くて…
俺と並ぶと頭一個ぶんくらい背が高いんだから…これが
十歳の歳の差ってやつなのか…?
[newpage]
自主性については最早疑いようもなさそうだったんだが
自由に立ち回って良いと伝えておくと琥珀は午後からも
他部署の手伝いを率先的にこなしながら同時に午前中の
クレームについて問題点を書き起こした資料を各部署に
配って報告していたようだ。…昼飯に行く前にそこまで
やってのかよ?それにフロアに戻ってからもさり気なく
使えない俺の部下たちをフォローしていた。…あいつら
後輩におんぶに抱っこされてプライドとかねぇのか…?
それもあってか部署にもあっという間に馴染んじまうし
こいつ、コミュ力もお化けだな…。
定時までにやれることを全力でやりきっちまう姿を見て
多少はこの部署も奮起してくれると有難いんだがな…。
十七時を過ぎると琥珀は挨拶をして回っていた。…いや
お世話になりましたって、お世話してたの間違いだろ?
それで、気を良くしたのか笑顔でみんなタイムカードを
押して退勤していく。そうじゃねぇだろ…っ!って叫び
たくなったが…黙っておくことにした。
「熊狼次長。お疲れさまでした。…午後からは自由に
動く許可までいただけたので色んなことを学ばせて
もらえました。本当にありがとうございます!」
「いや、俺の方こそ…すまなかった。琥珀にフォローを
されるような部下ばかりだなんて先輩としての矜持を
疑われてしまうな。完全に俺の管理不行届きだ…。」
…こればかりは申し訳なさが勝ってしまって言葉が先に
出てしまったが研修生に初日から頭を下げる事態になる
とはな…どうやって改善したものだろうか…。
「…いえ、これは次長の責任じゃないです。我が社の
人事に問題があるのでしょう。この部署の仕事量を
考えると見合った人材を配属出来てないようです。」
琥珀って…けっこうバッサリ言うんだな?驚いたぜ…。
自分の会社を貶してはいるが、この部署の連中のことも
不出来なんだって言っちまうんだもんな…。
「明日からも自由に立ち回って良ければ研修が終わる
二週間後まで先輩方には遠回しに仕事の改善点等を
僕から伝えておきますが…いかがでしょうか?」
「…琥珀の優秀さは今日一日で見せてもらったからな
わかった。俺が許せる範囲でなら構わない、どの道
行き詰っていた案件だからな…任せてもいいか?」
「はい!それでは、そのように。少しでもこの部署の
…会社のためになるように、頑張りますので…!」
まさかこんな展開になるなんてな…だが心強いぜ。正直
諦めてたところもあった、琥珀みたいな優秀な奴に協力
してもらえるとは微塵も思っていなかったしな…。
…次の日から更に琥珀の実力を目の当たりにすることに
なった。役席に着いてから、人を動かすことの難しさを
感じていたからな…立ち位置が違うとはいえ俺の部下を
見事に誘導してみせる琥珀の有能さには舌を巻く…。
「あんなに下手から入っていって…仕事手伝いながら
褒めちぎって?俺には出来ねぇな…。」
統計上叱責するよりも褒めた方が伸びるってのも理解を
してるつもりなんだがあそこまでアメを与え続けるのは
胸焼けしちまいそうだ…。だが確実に部下たちの動きも
フロアの雰囲気も良くなっている。…もちろん、劇的に
仕事が出来るようになったわけじゃねぇが…成果として
文句の付けようがない結果だった。
[newpage]
研修も残り一週間というところで琥珀は段ボールを数箱
載せたカートを押して部署にやってきた。
「ふう、なかなか重たかったですね。あっ、次長これ
系列会社の方で作ってる飲料なんですよ。部署内で
配ってもいいですか?ご意見も聞きたくて…。」
「ああ、構わないぞ。えっと?これは…コーヒーか?」
「ええ、次長も是非。みなさんも試飲していただけたら
いっぱいあるのでここに置いておきますね~。」
確かこの間は茶菓子だったか?一族の中で色んなツテが
あるらしく琥珀は様々な物を部署に持ってきてくれる。
「いいですか?琥珀くん。ありがと~。」
「いつもすいません。私も一ついただきますね。」
「どうぞ~。あとで感想だけ教えて下さいね。」
まあ、誰でもタダで貰えるなら嬉しいもんだろう。俺も
そうだし…さっそくいただくか。どんな味なん…っ。
「…ぐっ。甘めぇ…悪い、俺には無理っぽいな…。」
「あっ、すみません。次長にはこっちが良さそうです。
ブラックもあるので、ここに置いときますね。」
「すまねぇ…。」
っていうか、あんな甘いのよく飲めんな?気が知れねぇ
…!ブラックの方は悪くねぇな。…俺の他に飲むやつが
いねぇみたいだが…まあいい。これだけあればしばらく
自販機の世話にならなくて済むだろ。…っと。
「ちょっと離席する。何かあったら鳴らしてくれ。」
「わかりました~。」
「コーヒー飲むと条件反射で吸いたくなっちまうな。」
身体に良くないとわかっていてもやめられねぇもんだ。
ピピピピっ ピピピピっ
「おいおい、せめて一本くらいは…専務から?…はい。
もしもし。ええ、順調ですよ。琥珀くんには私たちが
逆にお世話になっているくらいで…はい。…ええ。」
直接業務用の端末を鳴らされるとはな。まあ、たいした
案件じゃねぇ。琥珀の活躍について尋ねたかったらしい
…うちの部署に欲しいくらいの実力者だが、大学を卒業
して改めてこの会社に来たとして彼にはもっと相応しい
部署があるだろうしな。今回は運が良かっただけだ…。
「はい。あと一週間で、私たちも出来る限りの指導を
させていただきます。ええ、はい…失礼します。」
電話とはいえ常勤の役員と話すのは緊張するん…。
「専務でしょう?心配性ですよね。いつもなんです。」
「…うぉ!?琥珀…いたのか?ってかタバコは…。」
「吸わないんですけど…次長が美味しそうに吸うので
気になっちゃいました。一本だけもらっても?」
「…勧めねぇぞ。やめたくてもやめらんねぇし…。」
そう言いながら琥珀に一本渡して…火を点けてやる。
「…ん~。あんまり美味しくはないみたいですね。」
「ははっ、そりゃそうだ…全然美味くねぇ。」
「だったらやめていいんじゃないですか?僕は吸って
ない次長の方が良いと思いますけど…。」
「やめようとしてんだがな…これがなかなか…。」
俺も琥珀も一本だけ吸い終わって部署に…。
「…まあ、きっと近いうちにやめられますよ。」
「…?琥珀?それはどういうことだ?」
「ふふっ、なんでもないです。行きましょうか。」
「お、おう?そうだな…?」
いつもなら具体的かつはっきりと意見をいう琥珀なのに
なぜかこの時だけ急に曖昧なことを言いだしたんだよな
…まあ、気に留めるほどのことじゃなかったが…。
[newpage]
「職務交代?職員の職場離脱と合わせて年内に実施予定
だったが…第一課とか?…うちの職員なんかと交代を
させたら業務に支障が出ちまわないか…?」
「…もちろん、そうならないようにフォローします。
一つ上の仕事内容を体験することで先輩方にも成長
する機会をと思ってですね。話も通してあります。」
話が早いな。一課の承諾済みだと?相手側にしてみたら
メリットがあるかわかんねぇが…この部署にとってなら
有難すぎる話だ、断る理由もねぇな…。
「…わかった。琥珀、そこまで手を回してもらえるとは
思っていなかった。この話…喜んで受けさせてもらう
ことにする。本当にありがとうな…。」
「いえいえ、この会社のことを考えれば当然のことで…
第一課に連絡してきますね。早ければ明日から実施を
出来るらしいので先輩方には次長から伝達を…。」
「ああ、人員の選出と一緒にしておこう。」
少しずつだが部下たちも成長している。ここでもう一つ
もう一歩だけでも先に進めればあいつらにとっても良い
企画になるだろう。琥珀は企画力も行動力もすごいな。
「こんなもんかな…?っと、手元に飲み物があるのは
便利だが飲み過ぎちまう。トイレが近くなるな…。」
交代の人員を割り振ったところで俺はデスクを立つ。
「十分くらい席を外す。何かあったら言ってくれ。」
「はい。次長!わかりました~。」
…最近はこいつらも怯えて返事をすることもなくなった
本当に琥珀には感謝しないといけない。
「用も足したし一本だけ吸ってくか…。」
ついつい、テンションが上がっちまって職務交代の件を
進めてたら昼を食いそびれちまったからな…休憩がてら
喫煙所に寄らせてもらった。
「ブラックとはいえ飯も食わずにコーヒーだけってのも
身体には良くねぇな…。タバコもやめれるならやめ…
っ!?ごほっ!ごほ…っ!?…な、んだ…っ!!?」
苦い…?ちょっと吸っただけだろ?いやいや…そんな筈
…っ!?身体に入っていかねぇ、煙が苦すぎる…っ?!
「どう…なって、んだ…?こんなこと…今まで…っ。」
手にした一本がおかしかったのかと思って別のタバコを
試しても結果は同じ…古い箱にでも当たったのか…?
[newpage]
「それでは次長!いってきます!」
「一課の仕事、勉強させてもらいます!」
「おう、頑張ってこいよ。」
部下たちを見送って…といっても同じ建物内なんだがな
変わりに琥珀が第一課の精鋭たちを引き連れて第三課に
戻ってくる。大層不満そうな顔をしてるかと思いきや…
そうでもないらしい。ってか、このくらいのことで顔に
出してるようじゃ第一課に務められねぇか。…っと。
「わりぃ。ちょっと手を洗ってくる。」
「わかりました~。何かあったら連絡しますね。」
「はぁ…コーヒーをがぶ飲みしちまうからか…?」
タバコの煙が苦く感じたあの日から…何度も試すんだが
ダメなんだ…吸えねぇ。買い替えても銘柄を変えても…
どのタバコも苦くて身体が受け付けねぇ…。そのせいで
コーヒーばかり、バカみてぇに飲んじまうから…ずっと
トイレ行かねぇといけねぇし…くそ…っ。どうしてこう
なっちまったんだ…?
「あっ、熊狼次長お戻りになりましたね。交代中業務の
説明が終わりましたので僕は第三課の皆さんの様子を
見に行ってきます。何かあったら連絡しますね。」
「ああ、助かる。初日からトラブルがあったんじゃ目も
当てられないからな…助けてやってくれ。」
琥珀を見送りながら…俺はコーヒーを口に含む。…って
いい加減にしねぇとな…また行きたくなっちまうだろ。
そう思うのに飲むのをやめられねぇんだ…結局、何度も
トイレに立つことになっちまって…第一課の連中に来て
もらってんのにこれじゃサボってるみたいじゃねぇか…
しっかりしろよ。タバコ吸えねぇだけで…こんな…。
「どんだけ出んだ…。今日何回目のトイレだよ…。」
定時になって第一課の連中を帰したんだが…そこでまた
尿意が限界に達してトイレに向かうことになった…。
「これじゃ我慢の出来ねぇガキじゃねぇか…。」
「…えっと?熊狼次長?何の話でしょうか?」
「…っ!?こ、琥珀…っ!?いつから…。」
と、隣に立たれるまで気付かなかった…っ!?
「第一課から戻る時に次長の姿が見えたので…お声を
掛けたのですがお気付きにならなかったので…。」
「それは悪かった…。あ、あいつらは大丈夫だったか?
第一課の連中に迷惑を掛けたりなんかは…。」
「いえ?大丈夫でしたよ。いつもの仕事とは違いますが
…それぞれがちゃんと対応出来ていたようでしたので
僕が何かを手伝うこともほとんどなかったですよ。」
それなら良かったが…俺の方がちゃんと出来てねぇ…。
「…?どうかしましたか?…なんだか次長、最近調子が
悪い…んですかね?僕で良ければ相談に乗りますよ。
なんでも言ってくださいね?」
「だ、大丈夫だ…っ。そ、そうだ琥珀!今から予定が
空いてるなら前に話した店に連れて行こうか…?」
「えっ?いいんですか?やった!準備してきますね!」
咄嗟に話題を変えたくて言っちまったが…即決で返事を
するとは思わなかった…店に連絡しとくかな。入れねぇ
なんてことになったらそれこそ格好が付かねぇ…。
[newpage]
「…いいですね。会社からも近くて、個室の部屋で食事
料理も美味しいです。ここなら接待に使わせてもらう
ことが出来ます。経費で賄えれば完璧ですが…。」
「ちょっと経費だけじゃ厳しいかもな。料理にもよるが
酒まで入れると予算に納まんねぇから余程の相手じゃ
ないと連れてくるのは難しいだろう。」
立地良し料理良しなんだが…役員同士の集まりとかじゃ
ないなら使えねぇだろう。普通の商談相手じゃ頻繁には
連れてこれねぇ。予算が飛んじまうからな…。
やっと落ち着いてきたか…?恥ずかしい限りだぜ…禁煙
すんのって大変だと聞いてたがここまでとは…。それも
やりたくてやってんじゃねぇって…なんなんだよ?この
状況、意味がわかんねぇな…。
「…でも、そんな店に僕なんかを連れてきてもらって
良かったのですか?有難くはありますけど…。」
「い、いいんだよ。琥珀の働きっぷりに対する十分な
…いや、これでも足りねぇくらい助けてもらってる
気にせずに楽しんでくれよ。」
その場しのぎでセッティングしちまったが琥珀の貢献に
対してで考えれば、このくらいやって当然だろう。懐が
多少痛みはするが…必要な出費だと割り切れる。
「ありがとうございます。…それでは遠慮なくですが
僕からも少しばかりお礼を用意してるんですよ。」
「…礼?そりゃあ…いったい、何を…?」
トントントン 「失礼いたします。」
「せっかく美味しい料理なので多少のお酒はですね?
明日も出勤なので大量には飲めませんが付き合って
いただけますか?オススメのお酒なんですよ。」
…気遣いも演出も完璧だな。非の打ちどころがねぇ…。
小さめ瓶…冷酒か?これくらいなら大丈夫だろう。
「琥珀が用意してくれたんだ…いただこうか。」
「ありがとうございます。…それでは、どうぞ…。」
用意されたグラスに酒が注がれて…俺はそれを煽る。
「…良い酒だな。飲み過ぎそうで怖いな。」
「すっと入っちゃいますからね。でも大丈夫ですよ。
どんなに飲んでも量がこれだけですからね。」
「明日が出勤じゃなきゃもっと飲めるんだが…。」
琥珀と一緒に料理と酒と雑談を楽しんで俺は…。……。
[newpage]
「ふふっ、熊狼次長はお酒弱かったんですか?」
…?そん、な…はず、ねぇだ…ろ?このく、らい…?
「そうですか?…でも、僕はこのくらいで酔い潰れる
次長の方が好きですよ。可愛いじゃないですか。」
なに…言ってんだ…?こ、はく…?あ、あれ…?…?
「…お疲れなんですよ。ストレス発散出来てますか?」
つか、れ…?き、んえん…の…すと、れ…す…?
「かも…ですね?でも、僕が…ついてますからね。」
こ、はく…がいるな、ら…あ、んし…んだ…な…。
「次長…まぶたが閉じかけてますよ?おねむですか?」
おれ、は…まだ、おき、て…られ…る、ぞ…?………。
「おやすみなさい。次長、良い夢を…。」
[newpage]
ピピっ ピピピっ ピピピピっ
「う…?あ、あさ…か?何時…だ?」
視界がはっきりしねぇ…六時半か?まだ寝れる…?
「いや、起きねぇと…。…?あ?昨日は…どうやって
帰ってきたんだっけか?琥珀と飯に行って…酒を?」
少しだけ飲んだ気がすんな…だが、たったあれっぽちの
量で記憶が飛んだりなんかしねぇはずなんだが…。
「…しっかり着替えてるし、風呂も入ってんな?」
汗のニオイもしねぇし…それどころか石鹸の良い香りが
してる?下着も昨日穿いてたやつじゃねぇ…。
「…帰ってきたところも、風呂に入った記憶もねぇし
そもそも店で酒を飲んで…どうなったんだっけか?」
思い出せねぇ…琥珀に迷惑掛けたりしてねぇだろうな?
それだけがとんでもなく心配になってきちまう…。
「あっ、次長!おはようございます!昨日はお世話に
なりました。料理とっても美味しかったですね。」
出社すると琥珀は既に出勤してて…さて、訊ねるか…。
「あ、ああ…琥珀。おはよう…。あ、あのな…琥珀っ
店を出た後は…その、どうだった?俺は…い、いや
っ!?なんて…言うか大丈夫だった、か…?」
「えっと…大丈夫?でしたよ。次長も僕もそんなには
お酒を飲まなかったので現地で解散して…。」
とりあえずは安心して良さそうだな。記憶が無いだけで
迷惑を掛けたりはしてねぇみたいだし…。
「またご一緒したいですね?…部署の職場離脱も順調に
進んでいます。明日には全員が交代を出来そうですし
第一課でも先輩方の評判は悪くないみたいでした。」
「…いつも実施するのが悩ましい問題だからな。琥珀が
部下たちのスキルアップを含めて実施してくらたから
もう、この部署じゃ残りは俺だけになるな。」
上期のうちに終わらせられるのも大きい。それに俺一人
なら、残りの期間でなんとか出来るだろう。
「このまま熊狼次長の離脱先も斡旋しちゃおうかな?」
「ははっ、気持ちだけ受け取っておく。流石に役席者の
俺まで琥珀に頼るわけにはいかないだろうしな。」
「…ふふっ、冗談ですよ。…まあ、冗談にしなくても
いいですが。役員の秘書と交代してみますか?」
「か、勘弁してくれよ。っていうか琥珀ってそういう
冗談も言えるんだな…ブラック過ぎるんだが…。」
その日も琥珀には第一課まであいつらの様子を見てきて
もらって、俺の方は自分のデスクで今まで出来なかった
仕事に集中出来た。まあ、トイレこそは近かったがな…
第一課の連中だと任せてても特段に問題も起こらないし
難なく昼休みの時間を迎えたんだが…。
[newpage]
…どう、したん…だ?昨日の…酒が残って、んのか…?
やけに…身体がだるい?気、がする…な…?少し…だけ
寝る…か、電、話が…なった、ら…起き、るだ…ろ…?
「…う、ん?ここ…は?…っ!?寝過ごし…っ!ては
ないか…。こんな熟睡しちまうなんて…?いつぶり
だよ…。電話も取りそびれたりしてねぇよな…?」
時計の針はは十二時半を少し回ったところで、電話機の
着信履歴も不在のランプは点いていない。…危なかった
今の時間は第一課の連中も全員が昼に行ってるから俺が
取らねぇと誰も代わりに出てはくれねぇんだから…。
「第一課のやつらに任せきりで気が抜けてんのか…?
琥珀が良くしてくれるからって…俺まで甘えてちゃ
流石にダメだろ。しっかりしないと…。…ん?」
まだ寝てるような気がしちまって俺は席を立って身体を
伸ばすようにしたんだが…座っていた椅子がやけに…。
「濡れて…?飲み物…でも、零した?だがコーヒーの
香りはしねぇ…他の飲み物も持ってきてねぇしな?」
…それにこの感じで濡れてるなら俺のズボンも濡れてる
はずだろ?そんな感触は…なか、った?いや、気付いて
なかっただけで…濡らしちまってるみてぇだ。
「温かくて気付かなかった…いったいなんなんだよ?
人肌みてぇな温度の飲み物なんかどこにも…?」
デスク周りを見てもコップらしいものは見当たんねぇし
何を零したってんだよ…何か拭くもんはあったけか?
「…確か泊まりになってもいいように替えの服とかを
持ってきてたな。…えっと、タオルも…あった。」
ズボンを拭こうとすると思ったよりも濡れてるみたいで
下着までいってんじゃねぇか?誰かのいたずらか?いや
…んなわけねぇだろ。学生時代ならともかく会社だぞ?
誰もそんなことするわけがねぇじゃねぇか…。
「だったら…なんなんだっていうんだよ?…ん?この
ニオイどこかで?……?…っ!?嘘…だろっ!?」
そんなわけ…あるはずが…っ!!?だ、だが…状況的に
考えて…それにこのニオイは…っ!?最近、妙に近くて
薄くはあったと思うが…それでも鼻を刺すような独特の
ニオイは俺が知ってる限り一つしか思い浮かばない…。
「寝てる間にやっちまったのか…?ほんの三十分だぞ?
ってか、学校入る前が最後で、そんなことやらかした
ことないだろ?この年齢で失敗するわけ…。」
ピピピピピっ ピピピピピっ
「…っ!?と、取り込み中なんだよ!?ああ…もう!?
お、お電話ありがとうございます…。はい、こちらで
承ります。はい、ええ。左様でございますか…。」
こんな時に…っ!?ってか、ヤバくねぇか…?そろそろ
第一課の連中が帰ってくるぞっ!?それまでに片付けて
着替えて!?は、早く電話を終わらせないと…っ!?
だが…そういう時に限って長引くんだよ。やっと電話の
対応を終えた時には昼休みは残り十五分を切ってて…。
「と、とりあえず着替え…っ!?トイレに…だ、ダメだ
電話が掛かってきたら俺が取らないわけには…っ!?
ここで…?は、早くしないと帰ってきちまうぞ!?」
急いで靴を脱いで濡れたズボンと下着を脱ぐ…フロアで
下半身晒して俺は何をやってんだよ…っ!?情けねぇ…
だが…急がないと誰かに見られちまう。申し訳程度だが
タオル拭き取って持ってきていた替えの下着とズボンに
穿き替えはしたんだが…。
「ニオイ…大丈夫だよな?い、椅子も拭かないと!?」
バタバタしながら最低限の処置をして…汚れたズボンと
下着、タオルをバッグに詰め込んだ。なんとか第一課の
連中が帰ってくるまでには片付け終えたんだが…心労が
すごい、小便を漏らした事実も状況が落ち着いてくると
じわじわと俺の心をえぐるようにダメージが…っ!!?
それにちゃんと洗えてねぇからバレねぇかって…不安が
ずっと付きまってきやがるし…。マジで最悪だ…。
[newpage]
「や、やっと終わった…どうにか、なったな…。」
仕事の時間がこんなに長く感じるとは…定時になるまで
生きた心地がしなかったな…。俺はフロアに一人きりに
なってようやく肩の力を抜くことが出来たんだ…。
「本当にどうしちまったんだ…。ここまでの失敗をして
おいて、まだコーヒーをがぶ飲みするとか…。昼飯を
食ってないって言っても我慢出来なさ過ぎだろ…?」
何回繰り返すんだよ、昨日と同じじゃねぇか…。今日も
何度も、何度もトイレに行かなきゃなんねぇなんて…。
俺ってこんなに我慢が出来なかっただろうか…?そんな
はずは無いと思いたかったが、ここ最近の自分を思うと
自身が持てそうにない…。
「タバコもやめられなかったしな…自己評価が高過ぎ
だったのかもしれねぇ…あいつらにも偉そうなこと
言えねぇ。俺ももっと頑張らねぇと、…~~っ!?」
ま、また…小便に行きたく…っ!?さっき…行ったのに
くそっ…身体のだるさも抜けねぇし…どうなってんだ?
「あっ、次長。第三課から戻りました。…?次長?」
「わ、わりぃ…トイレに行ってくる。報告…その後で
いいか?なんだか…ここ数日近くて…~~っ!?」
か、格好が付かねぇ…足元もふらつきやがる…。…?
「やっぱり…体調良くないんじゃないですか。次長
無理しちゃダメですよ。肩…貸しますからトイレ
行きましょうか。…顔色も悪いですよ?」
「す、すまねぇ…琥珀。こんなとこ見せちまって…。」
「…熊狼次長は気負い過ぎなんですよ。もっと周りを
頼っていいんです。僕だっているんですから…。」
見た目こんな…細いのに…琥珀って、力強いんだな…。
「着きました…けど、次長?一人で立てますか?」
「だ、大丈…っ、あ…なん、で…あし、が…っ。」
どうして…力が入らねぇんだ…?こんなこと今まで…。
「ダメそうですね…失礼します。僕が支えながら…。」
「お、おい…っ!?自分で…出来っ、…~~っ!?」
「おしっこ我慢してたんでしょ?漏らしちゃいますよ
…ズボン脱がしますね。下着も…はい、大丈夫です
もう、おしっこ出しても良いですよ…次長。」
お、俺は…琥珀になにさせてんだよ…っ!?
「次長お腹の毛色は薄茶なんですね?可愛いなぁ…。」
「か、かわ…っ!?見んなよ…っ、こんな風にされて
たって…出るもんも、出ねえ、よ…っ!?」
「緊張してるんですか?あっ、そうですよね。僕とした
ことがすみません。おちんちんの向きが定まらないと
安心して出せないですよね?これで、どうですか?」
「こ、琥珀…っ!?どこ触っ…~~っ!?あ…っ!?」
俺の…琥珀に摘ままれて…っ!?
「熊狼次長、力を抜いて…リラックスですよ~。ほら
いっぱい出していいですからね?…し~し~ですよ
我慢しなくていいですから…。し~、しぃ~…。」
「や、やめ…っ!?俺はそんな、ガキじゃ…ねぇ!?
…っ!?あ…っ、もう…出…っ!?…~~っ!?!」
しゅぃぃぃぃぃ…
「次長…上手に、出せましたね?偉いですよ…。」
「あ、あ…っ。おれ…こ、んな…のっ…てぇ…っ!?」
耳元で琥珀に囁かれると…力抜けちまってそのまま…?
小便するところまで全部見られちまうなんて…っ!?
「このまま全部出し切っちゃいましょうね…。」
「も、もう…いい、から…っ!?うっ…~~っ!?」
「こんな我慢してたんですね…ダメじゃないですか。」
…小便器にポタポタと音を立てて、俺のそこから出なく
なるのを確認すると琥珀はそこを上下に軽く振ってから
下着とズボンを穿かせてくれたんだが…。
「…これからも体調が悪い時は言ってくださいよ?僕は
熊狼次長の為だったら、いつだって力になりますから
遠慮なんかしなくていいんですからね?」
「あ、う…でも…っ!?こ、んな…こと…っ!?」
俺はそのまま琥珀に支えられながら、フロアに戻るまで
付き添われちまって…さっきまでのあまりの出来事に…
頭は働かねぇし、身体も頭もどうかしちまったのか…?
[newpage]
「それでは…次長。気を付けて、無理はしないように
ゆっくり休んでくださいね?明日も体調が優れない
ようでしたら休まれても大丈夫ですから…。」
「すまねぇ…。だが、流石に会社休むのは…。」
琥珀が呼んでくれたタクシーに押し込まれながらそんな
ことまで言いだすもんだから意地で反論したんだが…。
「…そうでないと僕にまた面倒見られちゃいますよ?
それとも、熊狼次長は僕に面倒を見てほし…。」
「い、いや、もう結構だ。わかったよ…。」
そう言われてしまえばトイレでの光景が鮮明に浮かんで
俺は琥珀の言うことを聞かざるを得なかった…。
「タクシーの会計が済んでるって…琥珀のやつ…。」
自宅の前で降りる際に運転手から聞かされたんだ。
「そういうのは俺じゃなくてもっと大切な人に…。」
こういう気遣いが出来るやつがモテるんだろうな。俺が
結婚出来ない理由がわかった気がするぜ…。
なんとか体調も戻ってきたが…さっきまでの体調不良は
なんだったんだろう?急に身体がだるくなって?…力が
入らねぇなんて、そんなこと今まで経験がないことで…
そ、それに…会社のデスクで寝小便しちまうなんて…。
「…っ!?ふ、風呂に入らねぇと…小便漏らした時の
ままじゃねぇか!色が残っちまう前に洗うぞ…っ!」
着替えはしたがちゃんと拭けてもねぇし洗濯もしねぇと
替えのズボンは無事だが元々穿いてたやつはぐっしょり
しちまってたからな…早く洗っとかないと乾かねぇ…。
…幸いスラックスは乾きやすい生地だから夜中のうちに
着れる状態にはなんだろ。洗濯機を回してる間に風呂に
…主に下半身を入念に洗っといた。こんなに長い時間を
汚したまま過ごしたことなんてねぇから…ニオイとかが
しねぇか気になっちまってよ…。
「はぁ…やっと、一息付ける…散々な一日だった…。」
少なくとも俺自身のことについては…だがな。部署的に
言えば職務交代とスキルアップを同時に実施して業務も
第一課のフォローを受けられるしこれ以上ないくらいの
待遇だ…琥珀も手伝ってくれるしな。…思い出すなよ。
「洗濯も終わったし…早めに寝るか?だが…喉が…。」
コーヒー飲みてぇ…インスタントのでいいから作るか。
「一杯だけ…飲んで、それから寝よう…琥珀にも釘を
刺されちまったしな…ゆっくりしとかねぇと…。」
ケトルで沸かせばすぐに作れる…そういや家でコーヒー
淹れんの久しぶりだな?職場でだと…以前なら自販機で
タバコと一緒に…今はもう吸う気にもなれねぇが…。
「ここ数日は琥珀が持ってきてくれたブラックがあるし
そればっかり飲んでるから他のやつを飲まねぇしな…
どれ?…?なんか…苦い?美味くねぇな…。」
このインスタントコーヒーってこんな苦かったっけ…?
「職場に行けば飲めるし…それまで我慢するか…。」
せっかく淹れたのに全部は飲む気にならねぇな…寝よう
きっと、疲れてんだよ…で、なきゃ…あん、な…こと…
ある、わけな…いだ、ろ…?おれ、が…もら、す…わけ
ねぇ…ん、だか…ら…。……。………。
[newpage]
「ん…。…っ!?首が…痛てぇ、気が…?ん…?」
…ベッドじゃねぇ?ダイニングのテーブルに突っ伏して
寝たてたのかよ…やらかしたな…。そりゃ身体が痛い筈
…やけに冷えるし、夏場といってもこんなとこで寝たら
風邪引いちまう…冷房、入ってねぇな?なんでこんなに
身体が寒いんだよ…。寒いってか…水に入ったみてぇに
冷たいし…寝汗か?どうにも着てる服がぐっしょりして
…?なんだ…?この感覚…昨日もこんな感じで…っ!?
「ま、また…やらかした…っ!?な、んで…っ!?!」
椅子も木製だし床もフローリングだから…俺が漏らした
小便は何かに吸収されることもなくて、床には…大きな
水溜まりを作ってしまっていた…。
「お、俺は…昨日からどうしちまったんだよ…っ?!
部屋着までびっしょりしてんじゃねぇか…っ!?」
立ち直るのにしばらく思考が止まっちまった…その上に
こんな粗相の片付けやったこともねぇもんだから時間を
掛けて床掃除をするはめになるし…せっかく昨日風呂で
キレイに洗ったのに、それも洗い直しじゃねぇか…。
[newpage]
「…熊狼次長?おはようございます。」
「ああ、琥珀…おはよう。」
「早い…のですね?体調は大丈夫でしたか?」
「おう…見ての通りだ。昨日は迷惑を掛けたな…。」
…目覚ましが鳴る前に起きれて良かった。そうでなきゃ
確実に遅刻していただろう。床掃除だけでも大変だった
のにベッドで寝ていたらと考えると背筋が凍るようだ…
職場でも、居眠りしねぇようにしとかないと…着替えは
持ってきたが次に寝小便しちまうようなことがあったら
何回もは隠し切れねぇぞ…どうにかしねぇと…。
「いえ、そんなことは…でも、また調子が悪くなったら
僕に言ってくださいよ?昨日の今日ですから心配です
…なるべくここにも顔を出すようにしますから…。」
「琥珀も忙しいのに…すまねぇ。迷惑を掛ける…。」
正直言って体調は戻ってねぇんだ…もしかしたら、また
昨日みてぇに琥珀の世話になっちまうかもしれねぇ…。
「…気にしないでください。この部署には熊狼次長に
いてもらわないといけませんからね。それに…。」
ピピピピっ ピピピピっ
「…御堂塚です。…わかりました。すぐに向かいます。
ちょっと第一課の方でトラブルみたいです…昼には
戻れると思いますので、次長…いってきますね。」
「わかった、何から何までわりぃ…任せる…。」
琥珀は足早にフロアを出て行く…。頼もしい限りだが…
反面、俺はどうだ?寝る度に小便を漏らして社会人失格
じゃねぇか、情けねぇ限りだ…。
[newpage]
俺が機能してなくても琥珀がいねぇ状態でもこの部署の
仕事自体は滞りなく進む…。これなら、意地を張らずに
自宅で休んでた方がマシだったのか…?本当に第一課の
精鋭たちは優秀だな…自分たちだけで仕事を終えちまう
…~っ!?くそ…っ、またかよ…今朝からもう、五回も
行ってんのに…ずっと、小便がしたくて…っ!?時計の
針はまだ…十時過ぎだ。昼休みまでも長く感じられる…
それ、なのに…また、身体が…重たくなって…っ。
近くにいた第一課の職員に離席すると声を掛けて、俺は
トイレに向かう…。いい加減不審がられちまうだろ…。
「はぁ…、はぁ…っ!トイレ…まで、が…遠い…っ。」
壁に寄り掛かりながらなんとか進むのが精一杯なんだ…
力が…入らねぇ…。足が…もつれて、転びそうになるし
全然、前に進まねぇ…。どう、なってんだよ…っ。
「俺の…身体、本当に、どうしち…まったんだよ…。
これ、じゃ…トイレまで…あっ、…~~っ!!?」
や、やべぇ…こん、な…廊下で…?だ、誰が…通るか…
わかん、ねぇのに…っ!?だ、ダメだ…ここじゃ…!?
「で、出るな…っ!?あ、あぐっ、…~~~っ!?!」
水音とは無縁な筈の廊下で、俺は…漏らしちまった…。
「こん、なとこ…で…嘘だ、ろ…?お、俺…っ?!」
どうすれば…っ!?早く、トイレに…で、でも…力が…
入らねぇんだ…立ち上がれ、なく…て…こんな、ところ
見られ、ちまっ、たら…っ!?お、俺は…っ!?!
「次長…っ!」
「…っ!?こ、これは…違…っ!?こ、琥珀…?」
「熊狼次長…!探しましたよ!やっぱり、体調が良く
なかったんじゃないですか…!立てます?僕の肩に
捕まってください…ひとまず移動しますよ…。」
「こ、んな…琥珀…俺、おれは…っ、…~~っ!!」
あまりに自分が情けなくて惨めで…俺はそれ以上言葉を
口にすることが出来なかった…。
琥珀に多目的トイレに連れてこられて…俺は濡れたまま
便座に座らせられた…琥珀、怒ってるんだよな…。
「ここなら大丈夫ですね。どうしてこんな無理をしたん
ですか?…体調が悪いようなら休むようにって、僕は
何回も言ってましたよね?…熊狼次長?」
「だが…俺が管理者なんだ…っ、このくらいのことで
休むわけには…っ!?俺は…俺だって…っ!?!」
頭ん中がぐちゃぐちゃで…自分でも、何を言ってんのか
わかんねぇ…なんで…ちゃんと出来ねぇんだよ…っ!?
「…はぁ、もう…わかりましたよ。気は進まないですが
帰らなくて大丈夫なようにしてあげます。その代わり
熊狼次長は…僕の指示に従ってくださいね?」
「う、うぅ…わかった…琥珀の言うこと聞くから…。」
「…まずは、おしっこの残りを出し切りますよ。靴も
ズボンも…下着も脱がしますからね?」
言うが早いか…俺は琥珀に下の着衣を脱がされてしまい
…言うこと、聞かないと…だよな…。琥珀の目の前で…
座ったまま用を足し…そこで琥珀が硬く絞ったタオルで
俺の汚れた下半身を拭き上げてくれる…。
「着替えは持ってきましたけど…何度も僕が助けては
あげられませんからね?下着はこれを穿いてもらい
ますよ。僕の頭に抱き着いていいんで立てますか?」
「…?わかった…これ、で…いいか?」
「それじゃあ穿かせていきますね。動かないの上手に
出来て偉いですよ~。尻尾も通しますね。…最後に
テープで止めてっと…出来ましたよ。」
…なんだ?これ…可愛い絵柄だな?着心地は…あんまり
良くないけど琥珀の言うこと…ちゃんと聞かなきゃ…。
新しいズボンも穿かせてもらって…なんだかごわごわ?
するな…動く度にかさかさ音もするし…。
「これで夕方まではもたせてください。一度でも外すと
きっと次長一人では穿けないので…トイレは行ったら
ダメです。おしっこはこのおむつにしてください。」
「…わかった。…?おむつ?…っ!?なんだと…!?」
お、おむつだって…っ!?それもトイレに行っちゃダメ
だなんて…琥珀、冗談だよな…?おい!琥珀…っ!?
「…そんな目で見てもダメなものはダメです。僕だって
何度も第三課には来れないんですから定時になるまで
外さないでください…誰かに見られたいんですか?」
「それは…嫌だけど、だからって…おむつに…っ!?」
「十分に吸収出来るはずですよ。席に座って定時まで
待っててもらえれば僕が替えにきてあげますから…
それまで、良い子で待ってるんですよ?」
ありえない提案…だが、先程のように廊下で漏らしたり
頻繁にトイレに行かないでいいなら…悪くないと思えて
しまう。何より誰にもバレることがないのなら…。
「わかった…琥珀の言う通りにする…。」
「熊狼次長は賢いですね。では第三課に戻りましょう
…そこまでは僕が一緒ですから、安心して下さい。」
汚れものなんかの入ったバッグを、琥珀は肩に背負うと
空いた方の手で俺の手を握り、ゆっくりと歩き出した。
[newpage]
「…っ!?あ…っ、う~…っ、…~~~っ!?!」
な、慣れねぇ…俺、なんで…こんなことしてんだよ…?
でも…席から立てねぇし、トイレにいけねぇんだから…
ここでするしか…。ま、また…出る…っ、…~~っ!?
第三課の次長席で…俺は尿意に襲われる度おむつの中に
小便を漏らし続けてるんだ…。時間は十五時か、まだ…
琥珀が迎えに来るまで二時間もあるじゃねぇか…本当に
大丈夫なのか?溢れたり…しねぇよな?…そんな不安も
あるのに…喉が渇いて手元にあるコーヒーを飲んじまう
…そうしたら、また…小便…出ちまっ、…~~っ!!?
ずっと…下腹部が温けぇし濡れてる感触がしちまう…。
早く、十七時にならねぇかな…そしたら琥珀におむつを
替えてもらえんのに…。んっ、~~!?…~~~!?!
[newpage]
「熊狼次長、お待たせしました。迎えにきましたよ。」
や、やっと…定時、なの…か?やっと…おむつを…っ。
「こ、こはく…っ、お、おれ…がんばった、ぞ…っ?
はや…く、かえてくれ…おむつ…ぐしょぐしょで…
きもち、わるく…てぇ、もう…がまん…が…っ!?」
「そんな…泣くほどですか?わかりました…。早急に
取り替えましょう。椅子…倒しますよ?ごろんって
出来ます?…上手ですね。おむつ開きますよ…。」
「はやく、して…よ、こはく…おれ、ずっと…っ。」
「そうですね…こんなにいっぱい、おしっこをしてたら
気持ち悪かったですねぇ…。ちゃんとキレイに拭いて
新しいおむつを穿かせてあげますからね…。」
あったかいタオルで…こはくはキレイにしてくれて…。
「熊狼次長のおちんちんって立派ですよね~。…でも
僕は小さい方が可愛いと思いますよ?だって、ほら
こんなに硬くしちゃうと触りにくいですからね。」
「…ん、ふぁ…っ!?こはく…?そこ、は…~っ!?」
「…次長、ちょっと…念入りに拭いてただけですよ…?
でも、頑張ったご褒美にもう少しだけキレイに拭いて
あげますからね?そうだなぁ…ここはどうですか?」
さ、先の方…そん、な風…にされ、ら…っ、…~っ!?
「ん、んぁ…っ!?そこ…そんな、しちゃ…あ…っ!?
ダメ…なん、だ…あうぅ…っ!?…~~~っ!?!」
お、おれ…や、さしく…さわら、れると…っ!?へん…
になっ、ちゃ…こすっちゃ…だめぇ、も、もう…っ!?
「ビクビクしてきましたよ…そろそろ、限界ですかね?
いいですよ?熊狼次長…いっぱい出しちゃいましょう
白いおしっこ…お漏らししちゃいましょうね~。」
「あ、あっ!?こは、く…っ!?…~~~っ!?!!」
びゅっ、びゅう~っ、びゅう~~…っ
「はぁ…はぁ…でちゃ、った…。」
「…いっぱい出せて偉いですよ。それじゃあ…新しい
おむつに替えてあげますからね?」
新しいおむつは…気持ち良くて…俺は…。………。
[newpage]
ピピっ ピピピっ ピピピピっ
「…ん、う?あかる、い…あさ、か?ふぁ…っ。」
何時…六時半、いつもの時間だな?朝飯食って…えっと
会社に…行かなきゃな、琥珀が待っててくれるから…。
ぐしょ…
「…また、おねしょ…しちゃった…。おむつ、琥珀に
替えてもらわなきゃ…。早く、行こう…。」
[newpage]
「熊狼次長。おはようございます。」
「琥珀!おはよう…!えっと、な…俺…その…。」
「ええ、わかってますよ。まずはおむつからですね?」
「うん!こはく!…はやく、かえてくれよ…。」
すっきりしたぁ…。でも、てーじまで、またなきゃだ…
たいへんだけど、おしごと…だもんね!がんばるぞ…!
[newpage]
「すみません…。第三課の子たちのお世話が長引いて
遅くなっちゃいました…熊狼次長、大丈夫ですか?」
「だ、だいじょうぶじゃ…ないよ!こはく、おそい!
おしっこ…あふれ、ちゃった…。う、うえぇ…っ!」
「泣かないでください。今日も…ちゃんと、ご褒美を
あげますから機嫌を直してもらえますか?」
「ほんとか?…だったら、ゆるす!…ごほーび!」
おむつ…あふれ、ちゃったけど…こはくが、きもちいい
ごほーびくれるから…おれ、なかないもんね…!
[newpage]
「きょうも…おねしょ…しちゃった。よし!こはくに
かえてもらうぞ!はやく、かいしゃにいこう…!」
「こはく…おはよう?…?なに…してるの?」
「ああ、熊狼次長。今日で第三課は解体されるんですよ
今までお疲れ様でした。人員削減でですね…我が社も
不要な人材は切っていかないといけないんです。」
「…だいさんか、なくなっちゃうの…?おれ、やだよ
かなしい…ずっと、がんばって…きたのに…。」
「そうですね…僕も次長は頑張ってたと思いますよ?
でも…他があんなのばっかりじゃ成り立たないので
仕方ないですよ。…でも、大丈夫ですよ。次長!」
なみだがでそうだったけど…こはくがわらっていうなら
だいじょうぶかな??…はなしだけでも、きくかぁ!
「うん!どーしたの?こはく!」
「みんな再就職は決まってるので心配ないですから!
熊狼次長は優しいから部下たちの行く末が心配だと
思うんですよ。僕の方で斡旋しておきましたから!」
「そっか~。よかった。ん?でも…おれは?」
「熊狼次長は異動です。昇進ですよ!僕の専属秘書で
部長待遇です!なので…これからは、ずっと一緒に
お仕事が出来ますね!熊狼次長…いや、部長!」
みんなとはなれちゃうのも…だいさんかがなくなるのも
かなしいけど…しょうしんかぁ。うん、しかたないね!
おとこなら、うえをめざさなきゃだし…!よ~し!!
「こはく…!わかったよ!おれ…がんばるからな!」
[newpage]
…部長、熊狼部長!起きてください…!
「んぇ…?こ、はく…?おれ、は…どう、して…?」
「就任式じゃないですか。ほら、しゃんとして下さい
スーツ皺になっちゃいますよ…広報用の記念撮影も
あるので、しっかりしてもらわないと…。」
そう、だ…昨日から聞かされてたな…。
「…部長に昇進、だったな?…?琥珀も出るのか?」
「ええ、だって熊狼部長は僕の専属ですからね。」
「だったら安心だな…。俺一人だと…。…?あれ?」
就任式くらいなら…俺一人で…出れねぇはずは…?
「そうですよ…。僕が付いてないとですね?」
「い、いや…そんなはずは…おい、琥珀!」
「あ、時間ですよ。行きましょうか。」
[newpage]
就任式はホテルの大広間を貸し切っちまうあたり…この
会社は大企業なんだなって実感するよな。就任式自体は
無事に終わって、記念撮影後にそのままここで懇親会に
なった。ひとまずは挨拶回りをすることになったんだが
…なんだ?しっくりこねぇんだが…何かを忘れている?
ような…そんな気がしちまうんだが…?
「挨拶もほとんど終わりましたねぇ。そろそろ、料理を
いただきましょうか。これとか部長好きでしたよね?
せっかくなのでいっぱい食べていきましょう。」
「お、おう…ってか、琥珀って俺のことよく知ってる
よな?これが好きとか…話をしたっけか?」
「何言ってるんですか。全部、部長が話してくれたん
ですよ?忘れちゃったんですか?」
「そう…だった、か…?…?」
全然記憶にねぇんだが…おいおい三十二で?…冗談じゃ
ねぇぞ…っ!?そんなだったら流石に笑えねぇ…。
「あ、でも…お酒は弱いから飲めないんでしたね。」
「…?いや、そんなわけねぇだろ?このくらいは…。」
俺は近くにあったワイングラスを一気に煽る。
「あ~あ、ダメじゃないですか部長…美味しい料理が
いっぱいあるのに、そんなことしたら退室しないと
いけなくなりますよ?」
「何を言ってんだよ…琥珀?俺は、酒…よわ、く…な
んか…ねぇ?…ぞ?あ、あれ…?どう…し…?」
急に、目の前が…回って?こんな…はず、ねぇ…のに?
「もう…部長ってば、時々…変な無茶をしますよね?
まあいいです。挨拶は終わったので退席しましょう
…ホテル内に部屋を取ってあるので行きますよ。」
「わ、わりぃ…でも…俺、なんで?こんなに…?」
[newpage]
良い部屋…取ってんな。流石は経営者一族だ…。
「やっと、ゆっくり出来ますね。それに部長のそれも
そろそろ限界だし、ちょうど良いタイミングだった
かもしれません。溢れちゃったら大変ですから…。」
溢れる…?限界?琥珀は、なんのことを言ってんだ?
「…なあ、さっきから…変じゃねぇか?噛み合わねぇ
っていうか、俺が何か忘れてんのか…?……?」
「そうですね?今日は…ちょっと効きが悪いみたい?
まあ、すぐに思い出しますよ。さあベッドにごろん
ってしましょうか、いつもみたいに…。」
「はぁ…っ!?流石に琥珀でもふざけ過ぎだぞ!俺が
んなこと…す、する…わけ、あ…っ、なん…で…?」
「良い子良い子…ほら、あんよ上げてくださいね~。
ふふっ、上手ですね。じゃあ…脱がしますよ~?」
な、なんで…身体が、勝手に…っ!?どうなって…!?
「お、おい…冗談だろ…琥珀、や、やめるんだ…!」
「…え~?だって、もうこんなですよ?僕がおむつを
替えてあげないと熊狼部長おしっこが溢れちゃうん
ですからね?ちゃんと良い子にしてなきゃ…。」
「おむつなんか…穿いて、る…わけが…。…~っ!?」
お、俺…なんで…こんなの穿いてるんだ…それも…。
「こんなにたぷたぷになるまで…おしっこしておいて
おむつ使ってたことを忘れちゃったんですか?もう
…都合が良いことばかり言っちゃって。」
「そ、そんな…嘘、だろ…俺、こんな…っ!?」
「…?ああ、そうだ…部長、業務第三課がどうなったか
覚えています?どうして次長は部長になったんです?
ちゃんと答えられますかね?まさか忘れたりは…。」
「そんなわけ…。…?あ、あれ…?な、んで…だ…?」
頭ん中…霧がかかったみたいに…どうして?何も…俺は
なんで?第三課?…次長じゃなくて…部長…?
「ふふっ、そっか…今日は熊狼次長のままなんだ…。
だったら、ちゃんと…教えてあげないと、ですね?」
「な、何を…言って…っ!?琥珀?どうしたんだ!」
「えっと…あっ、あった。次長はこのコーヒーが好き
でしたよね?飲ませてあげますよ。…特別にこれで
ごろんってても飲みやすいでしょ?哺乳瓶なら…。」
哺乳瓶…?どうしてそんなものが、あんだよ…っ!?
「いい加減にしろよ…っ!?いくら琥珀でも…俺だって
我慢の限界ってもんがあんだからっ、…んぐっ!?」
「ほら…良い子だから、僕の話は最後まで聞こうね?」
こ、こんな…もん、吐き出して…っ!?え…なん、で?
「最近あげるの忘れてたもんね?でも、口にすると…
欲しくてたまらないでしょ?そういう薬がいっぱい
入ってるんですよ。美味しそうに飲みますねぇ?」
「ん、んん…っ!?んぐ…っ、う…っ、んん…っ!?」
どうし、て?飲み、たくな…いのに…っ!?吸うの…っ
やめ、らんねぇ…っ!?だ、ダメ、だっ、…~~っ?!
「おしっこ…漏らしちゃうくらい、美味しいんだ…?
次長だけじゃないよ?第三課のみんなに…この薬を
与えたんだ。そしたら…こんな風になってね…?」
…琥珀は俺にタブレット端末を見せる。そこには動画が
再生されていて…なん、だ…これ?部下たちが…みんな
赤ん坊みたいな服を着せられて…おむつまで…っ!?
「可愛いでしょ?みんな…新しい飼い主、失敬…里親の
元に貰われていったんだ。うちの会社にいても役には
立たなかったけど…これで社会貢献出来るね?」
信じられない…琥珀が、俺たちに…こんなことを…?
「首を切るだけで良いって言われてたんだけどそれじゃ
みんな就職先に困っちゃうでしょ?だから、僕が斡旋
してあげたんですよ?それに相応しい姿にしてね。」
最初から…第三課を解体する目的で近付いたのか…?
「だけど、熊狼次長だけは仕事が出来るし…気に入った
から手元に置いておこうと思ってね?でも少し好みと
違う所があったから…そこだけは変えたんだよ。」
だ、ダメだ…琥珀の言ってる意味がわかんねぇ…おい!
どうしちまったんだ…嘘だろ?本当のお前は…っ!?
「タバコもやめてもらったし…お酒も弱い方が可愛いん
だもん。それに…仕事が出来るのにおしっこの我慢が
出来ないとか最高じゃない?ギャップがあってさ。」
琥珀がタブレットを操作して、次の動画を再生する…。
映ってるのは俺か?…っ!?な、なんで…こんな…!?
「次長席に座って…おむつにずっとお漏らししてるんだ
…それで、僕にいっぱいになったおむつを替えられて
こんなに喜んでたんだよ?次長、忘れちゃったの?」
ど、どうして…そんな、嬉しそうな…表情してんだよ?
信じねぇぞ!嘘だ…!こんなの…俺じゃねぇ…っ!?
「あ、これが最初かなぁ…次長が連れてってくれた店で
ほら、お酒ちょっと飲んだだけでお漏らししちゃって
この後、僕がお風呂も入れてあげたんだよ?」
こ、こんなこと…なんで、俺は覚えてねぇんだ…?
「…飲み干しちゃったねぇ。おかわり、欲しいでしょ?
言うことを聞かせられる薬が入ってるんだけど…この
薬って強すぎて副作用がね。依存性も強いし…。」
「冗談じゃ…んぐ…っ!?んっ、んん…~~っ!?!」
これ…飲むと小便、止まら…ねぇ…のに…飲むの、やめ
ら、んねぇ…っ!?…だ、ダメ…だ、…~~っ!!?
「…また漏らしちゃったね?でも、そろそろ替えないと
溢れちゃうから、取り替えるね。ふふっ、熊狼次長の
おちんちん…すっかり可愛くなったなぁ…。」
…な、んだ、って?…っ!?お、俺の…なんで…っ!?
「だってさ、小さい方が可愛いでしょ?…触りやすいし
ほら、こんな風にさ。蒸しタオルでこすっても…。」
「んう…っ!?んっ、…~~っ!?んん、う…っ!?」
はげし、く…され、たら…っ!?あ、あたま…おかしく
なる…っ!?や、やめ…っ!?!…~~~っ!?!!
「次長…おちんちんぐしぐしされるの好きだもんねぇ?
もっと気持ち良くなっていいよ?黄色いのも白いのも
いっぱい出しちゃおうね?ほ~ら、ぐしぐし…。」
「ん、んう…っ!!?…~~っ!?!…~~~っ?!」
びゅう~っ、びゅくんっ、びゅっ
「…こんなに小さいおちんちんなのに…いっぱい出せて
偉いねぇ…?でもさ、また汚れちゃったから…もっと
いっぱい拭いてあげなきゃいけなくなっちゃたよ?」
「…~~~っ!?!んん、んう…っ!?~~っ!!?」
い、イった…ばかり、なの…に…っ、こんな、され…た
ら…っ!?ま、また…出るっ!?…~~~っ!!!?
「拭けば拭くほど汚れちゃうなぁ…熊狼次長?ちょっと
おちんちんが緩すぎるんじゃないですか?でも…その
くらいが可愛いかな。もう少し…出せますよね?」
[newpage]
…な、んか、い…イ、った…?わか、ん…ねぇ…もう…
で、ない…おれ、こ、れ…いじょ、う…は…っ。
「…記憶も飛んじゃって、おちんちんも…壊れちゃった
かな?まあ…おしっこも全然我慢が出来なかったから
全然問題ないかな?うん、大丈夫だよ。だって…。」
『僕が…ずっと、面倒を見てあげるんだから…。』
俺は…この時、初めて…琥珀の表情を…見た気が、した
…今まで見てきたものは、全部…嘘で、作り物で…俺は
きっと、こいつから…逃げることは、出来ないんだと…
ようやく、理解したんだ…。
「…お薬も美味しいねぇ?また、おむついっぱいだよ?
飲み終わったらキレイにしようか。ふふっ、そんなに
嬉しいんだ。僕も嬉しいなぁ…。熊狼次長…♪」
おわり
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