賞金首と賞金稼ぎ、時々魔術師 肉体交換の魔法の副作用 FANBOX069

  俺の名はタイガ、賞金稼ぎだ。

  獣人虎族の中でも珍しい白く輝く毛並みのため、仲間内からは白虎のタイガと呼び慣わされている。

  呑気で気ままな一人旅を続けているようにみられるが、これでも賞金稼ぎの中での実力はトップ層に肉薄していると自負している。

  だが、この時ばかりは本当に呑気でも気ままでもなかった。

  路銀がつきかけていたのだ。

  行く先々で賞金首を捕まえたり倒したりしては日銭を稼いでいたのだが、このところめっきり賞金首やその出没の噂を聞かなくなった気がする。

  以前は、どんな鄙びた場所でも賞金首や悪人が少なくとも1人や2人はいるもので、依頼や生活には困らなかったのだが。

  賞金首の噂をとんと聞かなくなったということはイコール世の中が平和になったということで良いことなのではあろうが、食い扶持が減ってしまうというのも困ったものだ。

  そこで俺は一念発起、一発逆転を期し、現在、牛族の賞金首ミノタウラを追っているところなのだ。

  ミノタウラは巨体揃いの牛族の中でも特に秀でた巨躯を誇り、全身を膨大な筋肉で隈なく鎧い、凄まじい膂力を持つだけでなく、卓越した戦技の技倆をも持ち合わせているという、賞金額の高さでも三本の指に入るとされる強者なのだ。

  そのミノタウラをアレスタの街付近で見掛けたとの、ある信頼できる情報筋からの言伝を頼りにここまで出向いてきたのだった。

  アレスタの街まで10ファルサンドのところまで来ているのだが、近付いているのにも関わらずあれ以降、ミノタウラの噂はうんともすんとも聞き及ばない。

  もしや空振りに終わるかも、と一抹の不安と共に俺はアレスタの街へと直向きに歩き続けた。

  なんたる僥倖。

  アレスタの街への道すがら、鬱蒼と生い繁る深い森の中で俺は発見した。

  ミノタウラだ。

  魔術師が着るような厚手の緑色のローブを羽織り、フードを目深に被ってはいるが、その規格外の巨体、そしてローブの上からでもわかる張り詰めた膨大な量の筋肉、ミノタウラに間違いない。

  俺は気取られない様に距離を十分に取り気配を殺しながら、決して速くはないミノタウラの歩みに歩調を合わせついていく。

  すると突然、光もまばらに届くだけの暗い森の中に豪壮な屋敷が現れた。そしてミノタウラはその中に当然の如く入っていく。

  俺はアングリと口を開けた。

  まさか、こんな森の中にこんな立派な建屋があるとは。しかもこの屋敷の主人はミノタウラの様だ。

  賞金首たるもの世を忍び、洞窟の様な粗末なところで寝泊まりしているものだとてっきり思い込んでいたのだが。

  辺鄙な場所ではあるが、街の大商人もかくやという程の大きく豪奢な屋敷。しかも庭は綺麗に手入れされており、屋敷の外観、佇まいは品の良さ、センスの良さが滲み出ている。極悪非道、ガサツで乱暴な賞金首のイメージとはあまりにもかけ離れており、しばし呆然としてしまった。

  ここで俺は本来の目的を思い出す。

  そうだ、奴を倒さねば。俺は屋敷の外で夜になるのを待った。

  夜陰に紛れて屋敷に忍び込む。

  王国の図書館もかくやという程に大量の書物が揃った書庫の中心にその巨大な人影はおり、その影は魔法のランプの光でユラユラと幻想的に揺れていた。

  緑色のローブを羽織ったままだが、流石にフードは外していた。そこから覗く顔は、間違いない、眼鏡をかけてはいるが紛れもなくミノタウラ本人だ。

  分厚い書物のページをペラペラとめくりながら、羊皮紙に何やら熱心に書き込んでいる。

  その様子はまるで学者のようでいずれにしても野卑な賞金首には似つかわしくない姿だ。

  「ミノタウラ!」

  俺は大きな声で呼んだ。不意打ちは俺の主義に反する。俺の矜持にも関わる。強者に対し正々堂々たる勝負の末での勝利でなければ意味がないのだ。

  ミノタウラが書物を覗き込んでいた顔をゆっくりとあげる。

  「俺は賞金稼ぎ、白虎のタイガ。賞金額一億ゴルダの賞金首ミノタウラ。お前を倒しにきた。いざ、尋常に勝負!」

  俺は愛用の剣を握り間合いをジリジリと詰める。

  「まっ、待て、待ってくれ。落ち着け。儂はミノタウラではないぞ」

  「何を世迷い言を」

  まるで老人の如き口振りで喋るミノタウラの叫びが命乞いのように聞こえた。

  胸中を占めていく興醒め感。コイツは強者でもなんでもなくただの卑怯者なのか。ならばいっそ一撃で楽にしてやろうと、首を狙って全速の剣を水平に振るう。

  だが、それは音高く弾き返された。いつの間にかミノタウラの手には大きなグレートアックスが握られており、それを軽々と振るって俺の渾身の一撃を弾き返したのだ。

  手にビリビリと痺れが伝わる。膂力はやはり奴の方が一枚も二枚も上手か、ならば。

  スピードを衰えさせることなく、手数を増やして連撃を繰り出す。

  凄まじい程の斬撃の応酬。

  力はあるものの鈍重そうに見えたミノタウラもそのタイガの速さについていく。

  五十合も打ち合ったところでお互い呼吸を整えるために間合いをとる。

  「待て、待て。話を聞けというに」

  「お前と話すことなどない」

  賞金首と賞金稼ぎが出会ったらやることは一つ。何を今さらというのだ。

  「全く最近の若いモンはせっかちじゃ喃」

  俺とほぼ変わらぬ年齢の癖にやけに年寄りじみた喋り方といい、俺の全力の斬撃に対しまだまだ余裕がある感じでいとも容易く撃ち返す様といい、一々癪に障る。

  「致し方ない」

  そう言いながらミノタウラはグレートアックスを腰のホルスターに戻し、俺に向けてその大きな手を翳した。そして唱えたのは呪文だった。

  「何っ?!」

  俺は衝撃波で壁にぶつかり意識を失った。

  消えゆく意識の中、「そんな馬鹿な!重戦士であるミノタウラが何故魔法を?」と疑問に思いながら。

  目覚めると俺は牢屋の中にいた。

  ここは屋敷の地下室だろうか。窓もなくユラユラと蠢く蝋燭の炎の薄明かりしかない。

  なんだか体が重い気がする。それと同時に力が漲っている感じもしたが。

  「ようやくお目覚めか喃」

  「ミノタウラか?」

  そう喋った己の声質に違和感を感じた。

  ゆらりと人影が近付いてくる。

  牢屋の格子越し、俺の目の前に現れたのは

  続きはFANBOXにて

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