[超短編]オスのイヌワシ鳥人が自慰するだけのお話

  両脇が高い山に囲まれ、深い谷になっている底に鳥人の集落があった。

  彼らはイヌワシの鳥人で、茶色い羽毛に、黄色いくちばし、

  太く強靱な足は鱗に覆われ、鋭いかぎ爪を持っていた。

  体格はおおよそニンゲンのそれに近いが、

  腕はなく、翼がそのまま手のようになっていた。

  ある新月の夜、狩りから戻って藁でできた家の中で一息つく青年の姿があった。

  彼の名はキース、群れの若いリーダー候補であった。

  蒼く透き通った瞳を持っており、『蒼眼のキース』と呼ばれ、群れの雄たちから信頼を置かれていた。

  そんな彼にも悩みがあり、少々性格が厳格すぎたためか、なかなか群れの雌たちに受け入れられず、

  少し距離を取られてしまっていた。

  将来にわたっての伴侶を……という時期であったが、彼自身の性格もあってか、

  なかなかそういった話にも発展することはなかった。

  「ふぅ……俺、もうちょっと性格が明るかったらな……」

  せっかく獲物も捕らえて成果は上々なのに、気分は重かった。

  そんなわけで独り身のキース、しかも体は成熟し、子孫を残す準備は整えられていた。

  しかし相手はいない。

  そうなると……独りで発散させるより他なかった。

  おもむろにそのまま土間に座り込み、脚を広げる。

  彼の股間には、いわゆる陰茎――ペニスは存在しない。

  総排泄腔となっており、糞や尿、そして生殖のための孔が全て一つにまとまって存在していた。

  そのためか、総排泄腔自体には、神経が集中し、とても敏感になっていた。

  彼は、そっと手――翼の先で、その敏感な孔の周りに触れる。

  「……くっ……!!」

  思わず押し殺したような声が漏れる。

  とても気持ちよかったのだ。

  羽根がそっと触れるだけで電撃が走ったような快感が彼を襲う。

  ここまで来て引き返す選択肢は存在しなかった。

  もっと――もっと、欲しい。

  彼は自らの羽根で繰り返し、孔をいじめていった。

  「はぁ……うっ……」

  くちばしの端からはだらしなく唾液が漏れる。

  いつもは鋭い自慢の蒼眼は、空を見つめ焦点が合わない。

  しかし、着実に〝その瞬間〟は迫ってきているようだった。

  だんだんと羽根の動きが激しくなっていく。

  孔からは透明で粘液質な液体が漏れ出てくる。

  「く、うあぁ……ッ!!」

  尾羽がピンと持ち上がる。

  そして、自らとどめを刺す。

  「イく……イくッ!!」

  『ぴゅっ!!』

  総排泄腔から空中に精液が放たれた。

  弧を描き、勢いよく発射された精液が土間に飛び散る。

  発射後、彼は腰が抜けたように崩れ落ちた。

  「こんなんじゃ、ダメだな……」

  キースは独り、秘め事を行い、

  これからの伴侶を得る努力をしていこうと決心した。