シエラとディモスの邂逅からおよそ一ヶ月が経ち、その出逢いが大きな変化を生んでいた。何より変わった点は、まだ駆け出しで新米の冒険者だったシエラに戦闘面で心強い相棒が加わった事だ。
以前は低級魔物のゴブリンに手も足も出なかった未熟なシエラだが、様々な属性の魔法を操れるディモスが共に戦ってくれるのもあってギルドに寄せられた討伐依頼を次々とこなし、以前は一番下だった冒険者ランクもこの期間に2つ上がった。これは間違いなくディモスのおかげと言えるだろう。
「そうだろう。感謝の印として我にスペルマを差し出すが良い」
「いや、急にどうしたんだよ。あと精液はまだお預けな。シャワー浴びて夜飯を食ってからだ」
「我にお預けを命じるとは、魔力が枯渇して干物になったら責任を取れるのか?」
「その表現の仕方って前に俺が言ったやつのパクリだろ。実は気に入ってるよな」
本日の依頼を達成したシエラとディモスは、いつも宿泊している宿屋までの道中に軽口を叩き合う。四六時中こうして一緒に行動している為、初対面の際と比べてかなり距離も縮まった。
たくさん汗をかいたシエラは部屋に入ってまずシャワーを浴び、さっぱりしてから一階に併設された食堂で空腹を満たす。尚、ディモスも付いてきて気まぐれにビールを飲んでいる。
「ディモスってアルコール摂取しても酔わないんだよな。でもたまに飲みたくなるのか?」
「そうだな、喉を通る瞬間のシュワシュワとした感覚が好きだ。味も苦味があって癖になるな」
「俺は苦いの好みじゃなくてビール飲めないんだよな。少し羨ましいよ」
「なら口移しで飲むか? 魔法で甘い味に変えられるぞ」
「ちょ、ちょっとそれは。他の人に見られてる前でやったらキスしてると思われるし、恥ずかしいから止めとく」
「ふむ、そうか。また飲みたくなったら申すが良い」
そして2人での食事が終わり、食器を返却してから再び部屋に戻る。シエラが振り向くとディモスは期待に瞳をキラキラと輝かせていた。
「⋯⋯ヤる、んだよな?」
「至極当然だ。ここまで来て再度お預けなどしてみろ、問答無用でチャームを食らわせるぞ」
「はぁ、分かったよ。服を脱ぐから少しだけ待ってくれ」
ため息を零しつつシエラは着衣が汚れない様に上も下も脱ぎ捨てていき、一糸まとわぬ素っ裸の格好で内股気味に立ち竦む。
「どうしたのだ? 我に裸体を晒すなど昨日今日の話では無いだろうに」
「だってさ、宿屋でこういう行為するのって背徳感あるんだよ。普通に寝泊まりしてる人からしたら、何かこう、エロい目的で利用してるみたいに思われそうだし」
「安心しろ、これは我の食事が主な目的だ。邪な思惑は微塵もない。この行為に物言いがある者は我の魔法で一切合切粛清してやろう」
「粛清は物騒だから控えてくれ。気持ちだけで十分だ」
「冗談だからそう慌てるな。では──精を頂くぞ」
「んっ⋯⋯!」
シエラの足元に潜り込んだディモスが口を大きく開け、ぶらぶらと揺れるずんぐりした太マラを根元まで咥え込む。舌に包まれるぬめぬめした感触にシエラは小さく喘ぎ、竿がビクビクと脈動して瞬く間に張り詰める。亀頭の鈴口からは我慢汁が止めどなく溢れ出す。
更にディモスは空いた手で二つの睾丸を下から持ち上げる様にふにふにと優しく揉みしだき、技術巧みに射精を促す。
淫魔として手淫や口淫などあらゆる前戯に精通しているディモスの責めを受け、疲れマラの尿道からザーメンが段々と迫り上がってくる。やがてシエラは甘美なる瞬間を迎えた。
「あッ、イクッ、イクッ! んうううぐうううううッ!!」
ディモスの後頭部に手を置き、絶頂の多大なる快感に心地良い痺れを浴びながらシエラは精液を口内に凄まじい勢いで射出する。
シエラの出した雄種をディモスが愛おしそうに全て飲み干し、吐精が済んだのを確認してから口に含んだ肉棒を解放する。
「ふぅ⋯⋯今回も美味だった。シエラ、汝のスペルマは日に日に練度が上がっているな。褒めてつかわすぞ」
「ハァッ、ハァッ⋯⋯。めちゃくちゃ上から目線な賛辞の言葉、どうもありがとう。搾精されるのにもたいぶ慣れてきたよ」
「その調子ならば人目がある場所でも問題なく行えそうだな。宿屋と森以外でも精を搾り取れたら便利だ」
「すまん、それは絶対に無理だ。俺は変態になりたくない」
と、そんなやり取りを経た後に2人はベッドへ入り眠りに就く。もはや恒例となったディモスの食事タイムも、シエラは日常の一部として受け入れていたのだった。
翌日、朝食を食べて身支度が完了したシエラとディモスは、寄せられた依頼をこなすべく冒険者ギルドを訪れる。すると受付に立つ小柄な兎人が明るく声を掛けてきた。
「シエラさん、ディモスさん、おはようございますっ!」
「ライノ、おはよう。今日も元気だな」
「えへへ、これが僕の取り柄ですから。そういえば最近お二人の活躍がギルド内で噂になってますよ。期待の冒険者コンビ現る! って感じで。僕もすっかり虜になってます!」
「おい、子兎よ。シエラは我のモノだ。万が一にも奪おうなどという不埒な考えは抱くでないぞ」
「ば、バカ! そういう話じゃないだろ!」
「あははっ、分かってますよぉ。朝からラブラブで羨ましい限りです」
「いやそんなんじゃ⋯⋯」
「ところで、お二人に折り入ってお頼みしたい依頼があります。ここから離れた場所の砂漠地帯に新種の魔物が出たという情報がありまして、真かどうか確めに向かって頂けませんか? 人型の魔物、との目撃情報しかなく申し訳ありませんが⋯⋯」
「新種の魔物か。よし、行ってくるよ。もし仮に危害を加えるタイプの魔物だったら討伐しないといけないしな」
「ありがとうございます。くれぐれもお気を付けてくださいね」
「⋯⋯人型か。もしや、可能性はゼロではないな」
「ディモス? どうしたんだ?」
「気にするな。砂漠地帯とやらに行くとしよう」
何か考え込む素振りを見せたディモスに疑問が浮かぶシエラだったが、ともかく遠征するにあたり食料や野営の道具など一通りの用意を店で揃え、2人は砂漠がある西の方角へ歩を進めた。
──街を出発してから三日目、ようやく目的地の砂漠へと到着した。辺り一面は砂だらけで建物等は一切なく、頭上からは灼熱の日差しが照りつけるがディモスの冷気魔法によって暑さは格段に和らいでいた。
「ディモスがいてくれてホント助かったよ。もしも生身でここを歩いてたら熱くて倒れそうだ」
「礼には及ばん。シエラをあらゆる面において支援するのは、使い魔である我の役目だからな」
「にしても⋯⋯新種の魔物なんて出没するのか? そもそも魔物自体が殆ど見当たらないし、誤った情報の可能性もあるよな」
「いや、それは違う。何故なら我は先ほどから感じ取っているのだ、同胞の魔力をな」
「同胞⋯⋯? って、うわわっ!?」
突如、地面から触手が伸びてきてシエラは足を掴まれバランスを崩す。咄嗟に剣を抜いて触手の根元を断ち切り、何とか事なきを得る。
「やはり貴様だったか。ファリゴ」
「え、え? し、知り合いなのか⋯⋯?」
「──とんだご挨拶じゃねぇか、あぁ!? オレ様の大事な触手を切り落としやがって! まぁすぐ生えてくるから良いけどよ、ガッハッハッハ!」
巻き上がった砂煙から姿を現したのは、筋肉質なシエラよりも体格で勝る巨漢の大男だった。否、ディモスと同じ頭に大きな二本の角を生やす淫魔だ。
「ディモス、久しぶりだなぁ。こうして会うのは数十年ぶりか? 再会を喜び合おうじゃねえか」
「悪いが我は喜んでなど微塵もいない。慇懃無礼な貴様とは昔から反りが合わないからな」
「相変わらずつれねぇな。んで、そっちの連れはどいつだ? お前のセフレか?」
「だ、誰がセフレだ誰が! 俺は冒険者のシエラだ!」
「ほう、つまりディモスがお前を選んだ訳か。そりゃ興味があるな。ちょいとつまみ食いさせてもらうか」
「つ、つまみ食いだって⋯⋯?」
「我を無視して勝手に話を進めるな。貴様の思い通りにはさせんぞ、ファリゴ」
「ディモスよぉ、忘れたのか? オレ様にはとっておきの魔術があるんだぜ。──[[rb:転移 > テレポート]]」
「しまっ⋯⋯!」
ファリゴが左手を前にかざした次の瞬間、シエラとファリゴが砂漠から消えてディモスだけがその場に残された。まんまと相手の目論見に嵌まったディモスは苦々しい顔で歯噛みしつつ、踵を返し急いで後を追うのだった。
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一方、ファリゴの能力によって飛ばされたシエラは先ほどまでと打って変わり、薄暗くジメッとした空気が漂う洞窟に瞬間移動していた。
「ここ、どう見ても砂漠じゃないよな。あのファリゴって奴の仕業か⋯⋯?」
「おう、その通りだぜ。ディモスに妨害されちまわない様に遠くまでお前を連れて来た。さて、どんな風に嬲られてぇんだ? オレ様が寛大な心で望みを叶えてやる」
「な、嬲られるつもりは更々ない! 俺はよく知りもしない魔物と戯れるなんてまっぴらごめんだ!」
「クク、可愛い野郎だな。こりゃディモスが気に入ったのも分かるぜ。ますますシエラ、お前が欲しくなった。手っ取り早く力で屈服させてやるよ」
「やれるもんならやってみろ! ディモスと同じ淫魔だか知らないが、俺だって一人前の冒険者だ! うりゃあああっ!!」
気合いの入った叫び声を上げてシエラは一直線に突っ込み、相手との距離を詰めて間髪入れずに両手で剣を振るう。
(よし、これは斬った⋯⋯っ!?)
しかし、シエラの剣はファリゴに届かなかった。その直前にファリゴが肩から伸ばす触手によって剣撃を止められ、空中で制止する格好となったのだ。
「おいおい、忘れたのか? オレ様が触手を自由自在に操れるって事をよ。お前の遅い剣なんざ当たる訳ねぇだろ」
「き、斬れないっ⋯⋯!」
「さっきは油断しちまったが、触手の強さは任意で変えられるんでな。で、こういう芸当もできちまうんだぜ」
剣を受け止めた触手はぐぐっと力が強まりシエラの身体ごと空中に浮かせ、そのまま両手両足首に枷の如く巻き付いて磔にする。シエラは武器を落として丸腰になり、苦悶の面持ちで拘束から逃れようとするものの一向に解かれない。
「うっ、くっ、び、びくとも、しない⋯⋯っ!」
「良い姿だせ、唆る表情しやがって。こんな布切れは邪魔だな。破いてやるよ」
シエラの着ている服が上下揃って破り捨てられ、瞬く間に全裸と化して肉体が全て余さず露わになる。その鍛え上げられたシエラの裸体にファリゴは舌舐めずりし、一歩ずつ近寄っていって至近距離に仁王立ちする。
「ほぉ、想像してたよりも立派なガタイだな。オレ様ほどじゃねえが、お前もなかなかのもんだと認めるぜ」
ファリゴの指が胸板に触れてつーっといやらしい手つきで乳首をなぞる。微かなこそばゆさにシエラは身体をよじり、固く引き結んだ口の代わりに鼻から息を漏らす。
「ん? 何だ、胸が感じるのか? もしやディモスの奴に開発されて敏感になったのかよ?」
「そ、そんな事ないに決まってるだろ⋯⋯」
「ヘッ、どうだかな。あいつは常にぶっきらぼうで何を考えてんのかイマイチ分からねぇが、案外ねちっこくて気を許した相手には自分からアプローチ掛けるんだぜ。大方お前が主人に選ばれたのもそういう理由だろうな」
「し、知らないっての⋯⋯。つか、いつまで胸を弄ってんだよ! ディモスを棚に上げといてねちっこいのはファリゴも同じだろ!」
「オレ様はねっとりと前戯を行うのが好きだからな。チンポを扱いてやるのは後のお楽しみだ、子猫ちゃん」
ニヤリとほくそ笑むファリゴはシエラの背後に回り、今度は左右の雄っぱいを手の平で鷲掴みする。そして感触を楽しむかの様にむにゅんむにゅんと下から上に揉みしだく。
「んっ、はっ、あうんっ」
「可愛い声で鳴きやがって、オレ様も滾ってきたぜ。つかお前のケツ筋肉で盛り上がっててめちゃくちゃエロいな。締まりも良さそうで犯すのが愉しみだ」
興奮を滾らせるファリゴが胸を揉みながら舌でシエラの首元をべろぉと舐め上げる。その感触にシエラは「ひっ」と情けない声を漏らしてしまい、底しれぬ恐怖で股間の逸物が縮む。完全に相手の術中へと嵌まってしまっていた。
(頼む⋯⋯助けに来てくれ、ディモス⋯⋯!)
無意識に最も頼れる存在の名前を心中で何度も呼ぶ。今のシエラにとっては冒険者のプライドよりも、邪悪な淫魔の魔の手から逃れる方が最優先事項となっていた。
だが無情にも助けは来ない。ファリゴの転移魔法はたとえディモスでも容易に後を追えない高度な術であり、どれだけ必死に探してもしばらく時間は掛かってしまう。
加えてファリゴは相手の探知から逃れる結界魔法を周囲に施しており、ディモスに場所を悟られるまでは随分と猶予がある。焦りは微塵も感じていなかった。
「よぉし、前戯はこの辺で止めにしてやるよ。腹が減ってきたんで景気付けにお前のスペルマを搾り取ってやる。オレ様の触手でなァ」
ファリゴがパチンと指を鳴らすとシエラの手足を緊縛する触手の側面から新たな触手が生え、股間に這い寄って無防備な肉竿めがけて意思を持つかの様に吸い付く。
男根が根元まで触手の挿入口に包まれ、うねうねと蠢く肉襞に覆い被される快感を享受するシエラはビクビクと肉体を跳ねさせ、甘美なる刺激に艶めいた喘ぎ声を漏らさざるを得ない。
「んああああーーーっ!! はあううんんんっ、ひううううっ、くおおおおおっ、あうんっ、ぐうううぅぅっ!」
「お前の亂れた表情とビンビンに膨れ上がったチンポと大きく揺れる金玉、最高にエロくて涎が出てくるぜ。シエラ、ディモスなんかの契約は断ち切ってオレ様のもんになれ。オレ様だったら今以上に戦闘面でサポートしてやるし、金もじゃんじゃん稼いで不自由ない生活を約束するぜ。なァ、良いだろ? オレ様からの愛を受け取ってくれよ」
シエラの頬をペロリと愛おしそうに舐め、悪魔ならぬ淫魔の囁きをシエラの耳元にする。絶え間なく与えられる性的快楽の連続にシエラは判断能力が鈍くなり、相手に誘われるがまま堕落してしまっても良いかとそんな考えが頭をよぎる。
──だがその時、シエラにはディモスと邂逅した日の事が鮮明に蘇った。あの日ゴブリンの罠にかかって絶体絶命だったところを救われ、契約を結び冒険者のパートナーになって力を合わせ戦い、ギルドでも評判のコンビとして名を挙げた。
(そうだ。俺には⋯⋯俺には、他の誰でもない──ディモスが必要なんだ。それは戦闘面だけじゃなく、普段の暮らしの中でもあいつがいてくれると安心する。心の支えになってくれる。きっといつからか俺は、ディモスに特別な感情を抱いてたんだ)
自分の嘘偽りない気持ちに気が付いたシエラの中から迷いが消え去る。そして眼前のファリゴに向かい、悦楽に打ち震えつつも言葉を放つ。
「俺はっ、お前なんかのモノに、な、ならないっ。俺のパートナーは、ディモス、た、ただ1人、だっ!」
「へッ、そう言うだろうと思ったぜ。なら別の方法でお前を陥落させるまでだ。イケ、早くイッちまえ、玉ん中に溜め込んだザーメンを思いっきりブッ放せ!」
「い、イクぅっ⋯⋯! うぐうううううううぅぅぅぅウウウウウウウッッッ!!」
全身の筋肉を痙攣させながらシエラは絶頂へと達し、亀頭の先端でクパクパと開く鈴口から精液が凄まじい勢いでビュルッビュルルルルッと迸り、透明な触手がたちまち白く濁っていく。濃い雄種を注入されたファリゴは恍惚とした面持ちと化し、興奮の最高潮にあるのを示すかの如く荒い鼻息を鳴らす。
「おぉ、おおおぉぉ⋯⋯ッ! こんなに美味ぇ精を食らったのは久方ぶりだ。堪んねぇぜ⋯⋯やっぱお前を狙って正解だった。ディモスの野郎に独り占めさせちゃおけねえ。こうなりゃ淫紋を刻んで無理やりにでも契約を──」
刹那、一筋の光がファリゴを襲い身体の中心部分を貫いた。大きなダメージを受けた事で触手の制御が不可能となり、拘束から解かれたシエラを下で受け止めたのは攻撃を繰り出した張本人であるディモスだ。
「テメェ⋯⋯どうやってこの場所を嗅ぎ付けやがった。探知阻止の結界を張っておいたはずだぞ」
「あぁ、そのせいで手間取った。実はシエラに存在共鳴の魔法を施してあってな、結界関係なく主人との距離が近くなると私の魔力を司るマナが知らせてくれる仕組みになっている。それを駆使して居場所を見つけ出した訳だ」
「なるほどな、油断したぜ。今日のとこはオレ様の負けだ。だがな、そいつは絶対に奪ってみせる。どんな手を使ってもな。せいぜい守ってやれよ、ナイト様」
そう言い残してファリゴは瞬間移動の魔法を使い、その場から跡形もなく消え去る。厄介な相手を退けたディモスは視線を落とし、疲弊したシエラの方に熱視線を送る。
「シエラ、大丈夫か。私が不覚を取ったが故にあやつの蛮行を食い止められなかった。どうか許してくれ」
「⋯⋯俺、ディモスは助けに来てくれるって信じてた。ありがとう。こういう場面で伝えるのも変って思われるかもしれないけど、俺はディモスが大好きだよ。パートナーとしても、種族の異なる淫魔としても。ディモスも、俺を愛してくれるか?」
「正直、私には人間の愛情や恋愛感情がよく分からない。しかし唯一分かっているのは、そなたと一緒に日々を過ごしたいという点だ。それでも構わないだろうか?」
「うん、それで十分だ。俺と日々を過ごしてくれよ、相棒」
「では帰るとしようか。街まで少々遠いが日暮れまでには着けるだろう」
ディモスはシエラを両手で抱えたまま洞窟を抜け、草原の道をひたすら駆け抜けて数時間後に見慣れた街へと戻ってきた。その頃にはシエラの体力も回復し、2人揃ってギルドの受付に立つライノへ報告する。
「お二人共お疲れ様です! 魔物退治は上手くいきましたか?」
「あぁ、今回もディモスのおかげで何とか達成できたよ」
「さすがですぅ! ではでは、こちらの報奨金をお受け取りください」
「いや、それには及ばない。金を受け取るのは遠慮させてもらう」
「えぇっ、どうしてですか? 依頼を達成したらギルドから報酬としてお金をお渡しするのが儀礼ですのに」
「ちょっと詳しくは言えないんだけど、今回のケースは特殊でまた新種の魔物が出るかもしれなくてさ。完全に撃退し終えたら受け取らせてもらうよ」
「そうですか⋯⋯。あ、でしたらこれを。ギルドじゃなく僕個人からの贈り物ですぅ!」
にぱっと顔を綻ばせたライノが2人に手渡した物は、いかにも手作り感のある可愛らしい兎の絵が刺繍されたお守りだ。
「これをくれるのか? ありがとうライノ、嬉しいよ」
「ふむ。こういう物をもらうのは初めてだが、悪い気はしないな。ありがたく受け取ろう」
「喜んでもらえて何よりです! 今日は何かと大変でしたでしょうし、明日1日お仕事を休んでごゆっくりデートでもなさってくださいね。街には恋人に人気のデートスポットがたくさんありますから、こちらパンフレットですぅ!」
と、観光協会の職員さながらにライノが街中のお出かけスポットが掲載された情報誌を差し出す。子兎の粋な計らいにシエラとディモスは目を合わせて微笑し、提案に乗っからせてもらう事にしたのだった。