雄妊娠が可能な世界でヤクザ紛いの強面巨漢は子種を欲する

  男性と女性、二つに分かれた性別の中で子を孕み出産するのが女性であるというのは誰もが知る常識だ。しかし、そんな常識が突如として引っくり返された。先天的と後天的で時期に差はあれど特異体質を持った男性であれば妊娠できる事が研究によって判明し、長年に渡り当たり前とされてきた人体の知識が丸ごと覆されたのだ。

  それによって男性同士の結婚も法的に認められ、ここ十数年で同性婚は急激に増加した。今や男女の性別で区切る風潮は終わりを迎え、これまでの概念が全く通用しない新たな時代へと突入しているのである。

  雄妊娠が可能になった事で長年の課題だった少子化問題も解決し、世間一般でも男の妊婦は違和感ない存在として社会に受け入れられている。

  ──そんな時代背景がある現代、路上の片隅でギター片手に弾き語りをする熊獣人の姿があった。彼はいつかミュージシャンとしてデビューする事を夢見て田舎から上京し、アルバイトで生計を立てながらこうして路上ライブに繰り出す日々を送る。

  しかしながら上京して半年あまりが経っても彼の歌を聴いてくれる通行人は1人もいない。通り掛かる人たちはスマホを見ているかイヤホンで耳を塞いでいるか、たまに視線を向ける者もいるがチラリと一瞥するだけで立ち止まってはくれない。

  何度も挫けそうになり夢を諦めて実家に帰ろうか迷った瞬間もあったが、彼にとって歌手活動は生活の全てでありそう簡単には捨てられないものだ。忙しいバイトから帰ってきてからも家で作曲に取り掛かり、カラオケボックスで歌と演奏の練習にひたすら打ち込む。大変だがとても充実した毎日に心が満ち足りていた。

  「〜〜〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜〜♪ ⋯⋯ありがとうございましたっ!」

  自身で作詞作曲したオリジナルソングを歌い終わり、観客がいない中であっても大きな声でお礼を告げ深々と頭を下げる。昼間から歌い始めて空は赤々とした夕焼け色に染まり、そろそろ本日の路上ライブを終了しようかとした頃──彼に近寄る大きな人影があった。

  「⋯⋯⋯⋯」

  「っ!? あ、あの⋯⋯」

  その男は頭から立派な角を生やし、鋭い眼光を放つ双眸と巨大な岩石の様な迫力ある図体を持つ牛獣人だ。強面とガタイの良さが合わさって凄まじい威圧感を放ち、熊人の彼は蛇に睨まれた蛙の如く気圧されて二の句を継ぐ事ができない。

  (こ、この人⋯⋯もしかしてヤクザ!? 場所代を払えとか誰の許可を取ってんだとか、そういう感じの因縁をつけられる!? や、ヤバい。せめて殴られるのだけはどうにか免れないと⋯⋯!)

  急に現れた牛人は何も言わず、ただ真正面から熊人を仏頂面で見据える。その無に等しい表情からどんな感情や考えを抱いているかはまるで窺い知れない。

  お互いに黙ったまま少しの間見つめ合っていると、不意に牛人の方から口を開き思いがけない言葉が飛び出た。

  「⋯⋯さっき歌っていた曲、あれは誰の曲なんだ?」

  「へ。え、えっと、僕の作った曲です。オリジナルソング、というやつでして」

  「オリジナル⋯⋯そうだったのか。たまたま前を通って聴いていたが、優しい歌声に穏やかなギターの音色が重なって耳心地が良かった。初めて音楽に心を揺さぶられたよ」

  「ほ、ホントですか! あ、ありがとうございます! 僕、路上ライブをやり始めてからしばらく経つんですけどそういう風に言ってもらえた事なくて。とても嬉しいですっ!」

  「路上ライブはいつもこの場所でやっているのか?」

  「はい、基本的には。昼過ぎから夕方頃まで弾き語りしてます。もし良かったらまた聴きに来てください」

  「分かった。楽しみにさせてもらう」

  熊人の返答に僅かながら口元を緩ませ、牛人は踵を返してその場から去っていく。

  当初は堅気でない者からいちゃもんを付けられるのではと心配していた熊人だったが、話してみると見た目に反して接しやすい人物だというのが判明し、ホッと胸を撫で下ろした。

  それどころか自らの歌を絶賛してくれた事にとてつもない喜びが胸の内側で広がる。己の歌声や曲作りに些か自信を抱き、また明日から頑張ろうと意欲を膨らませて家に帰るのだった。

  それからというものの、熊人の元に牛人が足繁く訪れては一等席で歌とギターの演奏を聴き、素直な感想を伝える。褒め言葉が多い一方で時折アドバイスも送り、熊人も的確な助言を聞き入れて音楽に落とし込みより良いものを貴重な観客に届けようと奮起する。

  そんな彼のひたむきな姿勢が遂に報われ、熊人が行う路上ライブには少しずつであるが観客も増えてきた。今までは見られなかった変化にライブ終わり、熊人は牛人と共に喜びを分かち合う。

  「やった、今日は聴きに来てくれた人たちが15人もいたよ! [[rb:丑尾 > うしお]]さんが親切にアドバイスしてくれたおかげだよ、本当にありがとう!」

  「何を言う、オレじゃなく[[rb:隈井 > くまい]]のこれまで続けてきた努力が実を結んだ結果だ。ところでこの後、時間はあるか?」

  「うん、大丈夫だよ。どうして?」

  「オレの行きつけの店でライブが上手くいったお祝いをしよう。是非とも奢らせてくれ」

  「良いの? じゃあ、お言葉に甘えて!」

  知り合ってからみるみるうちに仲良くなり、名前で呼び合うほど距離感が縮まった2人は揃って道を歩く。そして移動した先に辿り着いた一軒の居酒屋へ入ると、威勢の良い掛け声で猪人の店主が来客を歓迎する。

  「へいらっしゃい! って、丑尾じゃねーか! ん? そっちの初めて見る兄ちゃんは?」

  「この人は最近とあるきっかけで知り合った隈井だ。彼が頑張ったお祝いに行きつけの店まで連れてきてな」

  「ど、どうもはじめまして」

  「へーっ、こりゃ驚いた。丑尾が誰か連れてくるなんて一回も無かったもんなぁ。もしや⋯⋯アンタらもう付き合ってる?」

  「つ、付きっ!?」

  「おい、初対面で変にからかうのは止めろ。隈井も真剣に受け止めなくて良いからな、あいつはああやって軽口を叩くのが好きなんだ」

  「がははっ、すまんすまん。まぁ空いてるカウンター席にでも座ってくれ。2人ともまずは生ビールで大丈夫か?」

  「あ、はい。お願いします」

  「あとおつまみも何品か見繕って出してくれ」

  「あいよ、ちょっと待ってな」

  てきぱきと手際良く店主がビールとつまみ類を用意して提供し、隈井と丑尾は液体が注がれたジョッキを掲げてカツンと軽く当て乾杯する。

  「んくっ、んくっ⋯⋯ぷはーっ! あー、ライブ後に飲むお酒は美味しいなぁ〜」

  「お、兄ちゃんはミュージシャンなのか。したらそのケースに入ってる荷物はギター辺りか?」

  「そうです。実は僕、近場で路上ライブをちょくちょくやってまして。今日も弾き語りで2時間くらい歌いました」

  「そいつはお疲れさんだな。ん、て事は丑尾と出会ったのもライブの最中だった訳か?」

  「まさしくその通りです。丑尾さんは僕の歌とギター演奏について優しく穏やかだと言ってくださって、おかげで自信が持てる様になりました。非常に感謝しています」

  「オレは別に感謝されるほどの事はしてない。ただ、お世辞抜きに隈井の歌が心に響いたんだ。それで声を掛けずにはいられなかった。⋯⋯なぜニヤニヤしてる?」

  丑尾さんはカウンター越しにニヤついた笑みを浮かべる店主へと疑問の眼差しを向ける。対する店主は強面な相手に睨まれてもどこ吹く風で豪快に笑ったまま返す。

  「恋愛にてんで無関心だったお前がとうとうアプローチを掛けるとはなぁ。兄ちゃん、こいつヤクザ顔負けの顔面凶器で誤解されやすいがめちゃくちゃ良い奴だぜ。優良物件なのはこの儂が保証する。嫌じゃなきゃ恋人になってやってくれ」

  「こ、恋人ですかっ!? で、でも僕なんかが丑尾さんのお相手にふさわしいでしょうか。分不相応な気がして⋯⋯う、丑尾さんはどう思う? 僕と、お付き合いして頂けますか?」

  隈井からの問い掛けに丑尾が驚いた様子で目を見開く。まさか告白されるとは予想だにしていなかったという気持ちの面がまざまざと表れていた。

  「⋯⋯逆に聞きたいんだが、隈井はオレが相手でも構わないのか? 自分で言うのも何だが見てくれは悪いし、これといって特に魅力的な要素も持ち合わせていない。分不相応なのはむしろオレに違いない」

  「そ、そんな事ない! 丑尾さんには魅力がたくさんあるよっ! だって丑尾さんは、僕に音楽を続ける勇気を与えてくれただけじゃなく、心の支えにもなってくれてる。僕も丑尾さんにとって大切な存在になりたい。もっと一緒にいたいんだ」

  「⋯⋯隈井。そこまでオレの事を想っていてくれてるのか。ならばオレも、隈井の想いに応えたい。こちらこそよろしく頼む──オレと付き合ってくれ、隈井」

  「うんっ、喜んで! よろしくね、丑尾さん!」

  「カップル成立だな! よーし、儂からの大盤振る舞いだ。特別に今日の分は支払いチャラにしてやる! 思う存分飲んで食べろ、幸せなご両人!」

  猪人の店主は2人が恋愛成立したのを目撃して大層嬉しがり、営業時間であるにも関わらず自身もジョッキを掲げて黄金色の液体をグイッと呷る。お祝いムードで溢れる場の雰囲気は夜遅くまで最高潮に盛り上がった。

  [newpage]

  ──それから一年後、熊人のライブを観に来る人の数はどんどん増えて今となっては有名路上ミュージシャンとして名を馳せていた。

  そんな日々が続く中、熊人の元にとあるオファーが届いた。私共のレーベルからCDデビューしませんか、という音楽関係者からの誘いだった。スカウトから受け取った名刺に書かれた会社名は中堅どころの音楽レーベルであり、れっきとしたデビューの話に熊人は二つ返事で快諾してすぐさま牛人に報告する。

  「丑尾さんっ! 僕、長年の夢が叶ったよ、音楽事務所からCDデビューのオファーが来た! 丑尾さんが未熟な僕を傍で支えてくれたおかげだよっ!」

  「やったな、オレは隈井の歌が認められる日が必ず来ると信じてたぞ! これからますます忙しくなるな。ちなみに活動をするにあたってのマネージャーはどうするんだ?」

  「その件なんだけど⋯⋯丑尾さんにマネージャーをお願いできないかな? それなら仕事で各地を回っても離れ離れにならず付き添ってもらえるし、忙しくても会えなくならないから。もちろん無理にとは言わないよ、丑尾さんの意思を優先して尊重する」

  「奇遇だな、オレも同じ事を考えていた。業界に疎い素人だが精一杯マネージャーのノウハウを学んで君の力になってみせる。今後は公私共にパートナーとして酸いも甘いも噛み分けていこう」

  「うん、丑尾さんがいてくれたら百人力だよ!」

  そうして2人は次なるステージを歩み出した。プロの歌手として活動を始めた熊人は曲作りとレコーディングに追われる毎日を過ごし、そんな彼を牛人がマネージャーとして料理やら車での送迎やらと献身的なサポートを行う。二人三脚でデビューへの過酷な険しい道のりを乗り越えた。

  数ヶ月後、無事CDを発売して売れ行きも新人アーティストの基準に当てはめ上々といった中、初のコンサートを開催する運びとなった。

  コンサート当日、熊人は牛人が運転する車に乗って会場へと赴く。その車内にて助手席の熊人が不安げな声を発した。

  「⋯⋯今日のコンサート、ちゃんとやれるかな。前日に何度もリハーサルはしたけど、本番でトチっちゃわないかって思うと心臓が爆発しそうだよ」

  「だが隈井は過去に幾度となく路上ライブをこなしてきただろう? これまでの経験があるんだから自信を持って臨めば問題ないさ」

  「うん⋯⋯けど、コンサートは会場の広さも観に来てくれるお客さんの数も大違いだから。ステージ上で皆から送られる視線に圧倒されるかもっていうのがあるんだ。もし失敗して観客の人たちをガッカリさせちゃったらどうしよう⋯⋯あっ」

  プレッシャーに押し潰され俯いていた彼の手を、牛人が上からそっと重ねる。熊人が顔を上げると牛人は穏やかな笑みを浮かべていた。

  「隈井ならきっとやり遂げられる。オレは君と出会ってから現在に至るまで、どれだけの頑張りでひたむきに夢を叶えようとする姿があったかを知っている。だから隈井も自分自身を信じてくれ。プレッシャーすらも楽しみ原動力に変える強さが、君にはあるんだという事をな」

  「丑尾さん⋯⋯。ありがとう、丑尾さんの言葉が僕にとって一番のお守りだよ。コンサート会場で僕が届ける歌を聴いててね。丑尾さんが見守ってくれてるんだって思うと気持ちが安らぐんだ」

  「あぁ、もちろんだ。関係者席で隈井の奏でる音楽を聴かせてもらう。さぁ、そろそろ会場入りしようか」

  「オッケー、ここからは本番モードだね。初のコンサートを存分に楽しんでやる!」

  牛人に励まされ熊人の面持ちは晴れ晴れとしたものになる。かくして本日のコンサート会場へ足を踏み入れ、開演時間となって観客たちの待つステージに彼は堂々と降り立った。

  デビュー曲を含めた数曲の歌唱に加え、合間のMCも滞りなくこなしていく。そこに不安や緊張は一切なく、熊人は観客を喜ばせたい一心で己が出せるパフォーマンスを最大限に発揮した。

  「えー、では次が最後の曲になります。この曲は僕が路上ライブをやっていた時代に作った歌です。もしかしたら知っている人もいるかもしれませんが、どうぞ聴いてください。──〜〜〜♪」

  熊人がギターのみで弾き語りをする曲は、初めて牛人と言葉を交わし優しい歌声だと告げられた際のオリジナルソングだった。それを会場の一席で聴く牛人には当時の記憶が鮮明に蘇り、懐かしくも暖かい感情で胸がじんわりと埋め尽くされる。

  顔が厳ついのに加えて口下手だった牛人はいつも周りの人と孤立し、一言でも話し掛けると怖がらせてしまう為に接触するのは避けていた。そんな牛人があの日、熊人の歌に感動して自ら声を掛けた。それ自体が稀であり驚くほど大胆な行動だったのだ。

  今になってあの行動を選択したのは正解であったと牛人は確信している。勇気を振り絞ったからこそ熊人と恋人同士になれたのみならず、マネージャーとして歌手活動の手助けもできているのだから。牛人にとってその役割を担えるのが何よりの幸せであり誇りに感じる。

  一方の熊人も、牛人への恩と深い愛情を歌に込めて伝播する。コンサートは成功で幕を閉じ記憶に残る一日となった。

  会場を後にした熊人と牛人は車で住まいへと帰宅し、大人数の前でコンサートをやり遂げた緊張から解き放たれてリラックスした居住まいになる。

  「はぁ〜⋯⋯。ライブ中は歌ったり話したりしてて感じなかったけど、何だかんだで体力と気力を消費してたんだなぁ。お腹が減ってきちゃった」

  「あれだけ必死にやってたんだから疲れるのも無理はない。朝にカレーを仕込んでおいたから食べよう、今すぐに温めるから少しだけ待っていてくれ」

  「やったー! 丑尾さんが作るカレー大好き!」

  冷凍庫にストックしてあるご飯をレンジで解凍し、皿によそって上から具だくさんのカレーをたっぷりと回しかける。付け合わせに酢漬けしたピクルスを添えて食卓に並べられた。

  「いただきます! ⋯⋯ん〜、やっぱり美味しい! 相変わらず絶品だね、カレー屋さんを開いたら大繁盛するの間違いなしなクオリティーの高さだよ」

  「そこまで褒められると流石に照れ臭いな。まだカレーのおかわりあるから欲しかったら言ってくれ」

  嬉々として食事を味わう熊人の無邪気な姿に牛人は微笑んで目を細める。カレーは鍋にある分を含めて綺麗さっぱり平らげられ、2人はすっかり満腹になり食後は揃って皿洗いをした。

  それから熊人と牛人は同じく風呂に入って身体を流し、一日の溜まった疲れを程よい温度の湯に溶かす。

  「いやぁ、お風呂って本当に癒されるよね。丑尾さんもそう思うでしょ?」

  「あぁ、風呂は命の洗濯と言うくらいだからな。ここでリフレッシュして明日も頑張れそうだ」

  「うんうん、心機一転で明日から仕事に打ち込もっと!」

  「⋯⋯話題は変わるが、隈井。君は、男でも妊娠可能な人種が存在する件を認知しているか?」

  「あ、それ、学生時代に保健体育の授業で習ったよ。確か成人後に特別な検査をして発覚するケースが多いんだよね。でも丑尾さん、どうしていきなりその話をしたの?」

  「実は──オレも雄妊娠できる体質の持ち主なのが発覚したんだ。先週受けた健康診断の際、医師に勧められて検査をしたら妊娠用の子宮があるという結果が出てな。本来であれば隈井に一刻も早く共有すべき情報だが、コンサートの準備で忙しい時期に邪魔をしたくなくて報告が遅れてしまった。すまない」

  「丑尾さんが雄妊娠できる体質⋯⋯そうだったんだ、おめでたいね! 丑尾さんのパートナーとして僕すっごく嬉しいよ! それに、気遣ってくれてありがとう。僕が準備にてんてこまいなのを配慮した上での判断なんだから謝らなくて平気だよ」

  「許してくれて感謝する。それでここから先は、オレの中にある願いを吐露させてくれ。オレは、隈井との子を孕みたい。新たな家族を産んで育てたいと切実に望んでいる。隈井の方はどうだろうか? 嘘偽りない実直な気持ちを聞かせてほしい」

  牛人に促され、即答せずに考える素振りを見せる熊人。1分ほど経って彼は口を開きこう答えた。

  「夢だったプロのミュージシャンになれてCDデビューとコンサートもやれて、まだまだ先は長いしやりたい事もいっぱいある。けどそれとは別に、大切な家族を増やして丑尾さんと子供と一緒に幸せな家庭を築きたい。だから、僕に覚悟と責任を担わせて。丑尾さんが妊娠したら歌手活動を休止してでも全面的にサポートさせてよ」

  「隈井⋯⋯オレは、君が恋人で心から良かったと思う。2人で協力して笑いの絶えない家庭を築いていこう」

  湯船に浸かり見つめ合う2人はどちらともなく唇を重ね合わせ、口内で舌を絡める情熱的なディープキスに身を焦がす。それは長い夜の幕を開くのにうってつけな甘い口づけだった。

  [newpage]

  「んっ、くっ、ふっ、んおおっ⋯⋯」

  寝室にくぐもった低い声の喘ぎが響き渡る。声の主はベッドにあぐらをかいて座り、背後から豊満な張りのある乳房を揉まれている牛人だ。

  「丑尾さん、雄っぱい大きくなった? 手からこぼれ落ちそうだよ」

  「うあっ、そ、そうかもしれない。ホルモンバランスの関係で、んおっ、はっ、体型にも変化が起きると説明を受けて⋯⋯」

  「じゃあ前にも増してエッチな身体つきになってるんだ。しかもただでさえ胸が弱いのに一段と敏感になってる? 乳首を摘んでみようかなぁ」

  「ま、待っ⋯⋯うぐおおおおおオオオオオオッッッ!!」

  「わ、ビクビクッて全身が震えたね。触られてこれだと、雄っぱいを吸われたら丑尾さんどうなっちゃうんだろ。ミルクがビュービュー噴き出るかもね」

  「く、隈井⋯⋯。チンポが、チンポが苦しいんだ。胸を弄るだけじゃなく、オレのチンポも扱いてくれぇ⋯⋯」

  最大まで張り詰めたデカマラをぶるんぶるんと左右に振り回しながら牛人は瞳を潤ませ、熊人にはしたなくおねだりする。普段の真面目で質実剛健な彼とのギャップに熊人は激しい昂りと劣情を覚え、右手を伸ばしてガチガチに硬くそそり立つ肉竿を掴みゆるゆるとストロークして擦り上げる。

  「おあああああっっっ♡♡ んふおおっ♡ ふううううんんんんんんっっっ♡♡ チンポぉぉぉっ♡ 扱かれて、き、気持ちいいいいいぃぃぃぃっ♡♡♡」

  「こんなにも淫らな丑尾さんは僕しか知らないトップシークレットだね。いつか丑尾さんのエッチな一面を歌詞にして曲作りしようかな、なーんて」

  熊人が軽口を叩くも牛人の耳には届いていない。弱点である乳首をくにくにとこねくり回され、フル勃起した男根を徐々にスピードアップして艶めかしく手コキされる。上と下の性感帯を同時に愛撫され、牛人は呆気なく絶頂へと達する。

  「イッ、イグッ、イグッ、イッ⋯⋯ぐううううううううぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜ッッッ♡♡ んふおおおほお゛お゛っ♡♡」

  腰をガクガクと震わせながら盛大に雄汁を放出させ、至極のオーガズムに酔いしれる牛人は猛々しい汚喘ぎを連発する。

  「丑尾さんの射精って何回見ても圧倒されるなぁ。仮に僕が妊娠する体質だったら一発で孕まされるの間違いないね」

  「おっ⋯⋯ふっ⋯⋯ふおおおおおっ⋯⋯♡」

  「まだ蕩けるのは早いよ、丑尾さん。ここからがセックス本番なんだからね。丑尾さんのおまんこをズポズポして穿り倒すよ、良い?」

  「あ、当たり前だ⋯⋯。オレのマンコは、他ならぬ隈井専用のモノだ。オレを容赦なく犯して、膣内に子種を注ぎ込んでくれ⋯⋯! 隈井の遺伝子を体内に宿してくれぇっ!」

  「っ、ダメだよ丑尾さん。そんな風におねだりされたら僕、我慢できなくなっちゃう⋯⋯! 今日はコンドーム着けないからイヤになるくらい中出し交尾しようね、丑尾さんっ!」

  股を大きくおっ広げて催促する牛人の誘惑に辛抱堪らなくなり、熊人が怒張した己の逸物を尻穴にあてがい腰を突き出す。愛液が滲み出たアナルはすんなりと熊人のペニスを受け入れ、竿の根本まで突き込まれると亀頭の先端が子宮口まで到達する。

  「んふぅ⋯⋯分かる、丑尾さん? 僕のチンポと丑尾さんの赤ちゃん部屋がチューしちゃってるよ。それに雄膣がキツキツに締め付けてきて離さないね。ピッタリ吸い付いてくるよ」

  「んおおおっ⋯⋯♡ く、隈井のチンポが、オレのマンコを埋め尽くしている⋯⋯っ♡ 何とも、愉悦に満たされた感覚だ⋯⋯♡」

  「動くよ、丑尾さんっ! ふんっ! ふっ、ふっ!」

  威勢の良い掛け声と共に熊人が腰を前後に振ってバチュンバチュンバチュンッと叩きつける。牛人ほどではないにしろガタイの良い熊人は野性味溢れる激しいピストンを繰り出し、最愛のパートナーを孕ませようと一心不乱にケツマンコを掘り抜く。

  対する牛人はもはや正気を失って雄交尾の底知れぬ快感にヨガり狂う。その姿はさながら倫理と逸脱した淫猥な娼婦、あるいは人間としてのタガが外れた発情期の獣だ。

  「ほおおおおおおおっ♡♡ お、オレの子宮を、チンポがノックしているうぅぅぅぅぅ♡♡♡ くああああああっっっ♡♡」

  「丑尾さんっ、僕の子種で丑尾さんを孕ませるよっ! 2人で愛の結晶を育てていこう! 出るっ、イクうううううッッッ!!」

  「お゛お゛お゛お゛うううううっ♡♡ あっ、あっ、あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜〜〜〜っっっ♡♡♡」

  金玉がせり上がり雄膣内でより一層ペニスが硬く張り詰めた直後、子宮の中に濃く多量のザーメンが注ぎ込まれて隙間なく充満する。受精するのは確実といった密度の中出しだ。

  最愛の彼から熱烈な愛を注がれた幸福に身を焦がしながら牛人もメスイキに至り、肉茎から精液を打ち放つと同時に乳頭から乳白色の液体をピュッピュッと発射する。既に雌雄両性の身体へと適応しているのが絶頂から垣間見えた。

  この世で最上の悦びをしかと味わった2人は未だ繋がった状態で抱擁と接吻を交わす。互いの心に浮かぶ想いは、揃って「あなたが恋人で良かった」という純情な気持ちのみだった。

  ──それから一年と数ヶ月後、天からの恵である子宝を授かってつわりや痛みに耐えつつ出産した牛人は可愛い我が子を腕に抱き、優しい眼差しを向けながら胸から直接ミルクを与える。熊人は傍でその光景を微笑ましく見守っていた。

  「本当に赤ちゃん可愛いね。丑尾さんにそっくりだよ」

  「ふふ、隈井にもよく似ているぞ。例えば雄っぱいが好きなところとかな」

  「えー、何か僕も赤ちゃん扱いされてる様に聞こえるよそれ。まぁ否定できないけど」

  ミルクをたくさん飲み終えてけふっとゲップをし、すやすやと寝息を立て始めた子供の頭を優しく撫でてベビーベッドにそっと下ろす。そして牛人は熊人の肩に頭を寄り添い、横目で彼の顔を見つめ太ももに手を置いたまま控えめな口調で話す。

  「⋯⋯隈井、今夜辺りどうだろうか。シたくなってな」

  「ん? 何がシたいの? 僕ちょっと分かんないな〜」

  「い、意地悪をしないでくれ。隈井と、セックスを行いたいんだ。ほら、あの子を産んでから致してなかっただろう。それで、その、身体が疼いてしまってな⋯⋯」

  「へへ、照れながらおねだりする丑尾さんめちゃくちゃ可愛い。僕もいつお許しが出るか首を長くして待ってたよ。丑尾さんに負担を掛けたくないから頑張って我慢してたけどね」

  「そうだったのか、オレの体調を考慮してくれてありがとう。出産時と比べて体力も戻ったからもう安心だ。オレを抱いてくれ、隈井」

  「うん、喜んで。そしたら今日の夕飯は精力がつく物を作らないとね。料理の仕込みからガンガンに張り切っちゃうよ! 家事男子としてのスキルを歌手活動に匹敵するくらい磨いてきた僕にお任せあれ!」

  「オレが妊娠中に隈井は色々な面でサポートしてくれたからな、料理の腕前も格段に上がったのを承知している。そんな隈井の手料理が食べられるのは楽しみだ」

  胸を叩いてドヤ顔しながら得意気に告げる熊人。そんな少々うっとおしい彼に牛人は面倒臭さを微塵も抱かず、むしろ愛おしい気持ちを一段と膨らませてそう答えた。

  2人から3人に家族が増え、牛人と熊人は多大なる幸せを噛み締めながら尊い日々を過ごし、忙しく大変な時も支え合ってどんな困難が起きようとも乗り越えられると共に強く信じている。この先も彼らの愛に溢れた甘い同棲生活は末永く続いていく事だろう。