騒々しいレストランへようこそ!(2部)【殺人鬼編】4
──南極大陸にて
タツマ「寒ーーーーーーい!」
リミ「タツマがよく言えたわね、それ。いいわよね、あなたたちは。毛があって。うちはもう寒くて仕方ないんだから(怒)」
ユウリ(皆、寒いよ。)
ユウリ「早く行こう。日が暮れると面倒だから」
リミ「それにしても、どうして人は南極点に拠点を作るのかしら。寒いくせに。」
一行は、ガストを助ける為に、南極点にある拠点を目指していた。
翔「寒い…」
コウヨウ「大丈夫だよ」
翔も歩ける程度には治ったので一緒に向かっていた。そろそろ到着する頃になると、寒さは一段と強くなり、皆凍死するんじゃないかくらいの温度を体感していた。タツマが文句を言うたびにリミは憎たらしく愚痴を呟いていた。
ユウリ「そろそろ着くよ」
目の前に白い猛吹雪の中に黒い禍々しい建物が見えてきた。
ユウリ「あれが拠点【HEAVEN】」
リミ「まあ、凄いわ。あれがヘブンですって。あれのどこが『天国』よ。」
確かにまるであれは地獄みたいに聳(そび)え立つ。
リミ「あんなのただの地獄よ。そう、ヘルよヘル。」
翔「ユウリ、伏せて!」
ユウリ「え?」
ユウリが伏せたあと、鋭いナイフが地面を突き刺した。その軌道は完全に伏せる前のユウリの頭の位置を通過していた。そのナイフの来た軌道を辿るとそこには、ガストがいた。瞳がそれを表す。
タツマ「何か、ガスト先輩、怖い…」
オーラで解る。ガストの頭には殺意しかない。
火月『ハロー!エヴリワン!ウェルカムトゥーザ…ヘブーーーーン!♪』
超絶狂気的な、その声は唐突に放送された。
火月『みんな、来てくれて本当にありがとーう!』
翔「一体、何のつもり…」
火月『簡単だよー。君たちを殺す。尤(もっと)も僕が手を汚すことは絶対にないから、かわりにー、被験体10番君とー、17番君に君たちを殺してもらうようにしたよ!』
ユウリ「17番…?」
ガスト「…………」
牙を立て、今からぶち殺してやると言わんばかりの顔で翔を睨む。
翔「ガスト…俺を最初に殺すつもり?」
ガスト「………」
翔「いいよ、殺してみろよ。」
コウヨウ「翔君?!」
普通、人間が獣人に勝つことなど不可能。況(ま)してやただの少年が…
ガスト「ぐぅぅぅぅぅ」
まさに獣。理性が消えた獣。あれはまるであの時を思い描いているようだ。ガストが勢いつけて走り始めた。ターゲットを凶器の目で見る。
翔「【Converged Story】」
翔はある言葉を呟く。するとガストは、気絶してそのまま氷上に伏した。皆、呆然。ただ一言で恐怖の殺人鬼は伏せたんだ。続けて翔はカードを取り出して言った。
翔「タロット『9番/隠者』起動『Hermit』」
翔の周りに緑色に光り浮遊する文字が現れた。
翔「『文字具現化』束縛」
そうするとガストへ「束」と「縛」の文字が寄っていき、「束縛」という文字は鎖に姿を変えて、文字通りガストを束縛した。
翔「コウヨウ、危ない!」
コウヨウ「え?」
翔は仕方ないから、コウヨウに体当たりしてわざと倒した。その瞬間、電撃のような閃光が走った。残酷にもその軌道を辿れば、タクヤがいた。またこれも殺意に満ちた瞳をしている。彼も似たようなカードを持っていた。
タクヤ「タロット『8番/正義』起動『正義の剣』」
タクヤは魔法で先ほど撃ってきた閃光を再び発動させる。
翔「タロット『9番/隠者』起動『Protect』」
翔が叫ぶと半球状に青の半透明であるバリアが一同を覆うように広がった。閃光はまるで光のように進むが、バリアによって綺麗に反射された。
キリンッ
鎖が思い切り千切れた。
ガスト「ぐゎぁぁぁぁぁぁぁ!」
文字に起こせないくらいに狂気的な声でバリアを叩く。キリキリとバリアはガラスが割れるような不穏な音を出す。
タクヤ「タロット『8番/正義』起動『裁き』」
光の攻撃がタクヤの周りからバリア目掛け何十発も、撃ってくる。
ガスト「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ガストも相変わらず狂おしい喚(わめ)きをあげ、バリアに攻撃する。一同は絶望に包まれた。絶対的な力を持った殺し屋【破壊者(DESTROYER)】と圧倒的な力をタロットカードによって持ってしまった少年タクヤ【正義(VIII. Justice)】が一斉に襲うなら、まるで勝ち目はない。今それが起きてしまっている。バリアもそろそろ限界を迎える。
ユウリ「…仕方ない。タロット『0番/愚者』起動『収束』」
翔「待って!そんなことしたら!」
ユウリ「仕方ない!事を起こさなかったら殺されるだけだ!」
急激に膨大した光がバリアを壊し、その先にいるタクヤに突撃した。
リミ「ちょっと!」
ユウリ「仕方ない!もう実力行使しかないんだ!」
翔「大丈夫。2人は打たれ強いから。」
リミ「にしても…」
コウヨウ「やだーーー!」
翔「コウヨウ!」
コウヨウはガストに倒されて、今殺されようとしていた。
翔「クソッ!」
翔はガストを無理矢理に振りほどこうとする。が、無謀。呆気なく投げ飛ばされた。
ユウリ「タロット『0番/愚者』起動『GivE』」
光はガストに直撃して、ガストはコウヨウの横に横たわるようになった。コウヨウはすかさず立ち、軽く怯えながら、ガストから離れた。
コウヨウ「怖かった…」
翔「そりゃそうだ。あいつだもん。」
ユウリ「翔、ガストの方、お願い。」
翔「じゃあ、お前は、タクヤで。」
リミ「私たちは?」
ユウリ「待機」
リミ、タツマ、アスト「えー」
翔「頼んます…」
ガスタ「仕方ないよ…」
ユウリ「(小声)てか、アストさんが言う?」
翔「(小声)あーでも、活躍したいんだよ」
あーでも(臆病なのに)
翔「背中は預けたよ」
ユウリ「俺も」
リミ「(小声)小学生があんなこと言っちゃうんだ…」
ガスタ「(小声)盛り上がりって知ってる?」
翔「行こう」
ユウリ「うん」
タクヤ「タロット『8番/正義』起動『Justice』」
小さい光が一斉にユウリを襲う。
ユウリ「タロット『0番/愚者』起動『収束前の活動』」
ユウリも同じく小さな光を弾丸かの速さで数百発も撃っている。
ユウリ「悪いが、タクヤ。その正義とやらは間違っている。その正義を無理矢理でも直してやる…タクヤ…今、お前の戦いを終わらせてやるから。」
ガスト「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」
突進と言えばいいくらいの速さでガストは翔に向かって走る。
翔「タロット『9番/隠者』起動『拒絶』」
翔の目の前にガストがいた瞬間、ガストは倒れた。まるで一瞬。後に聞いた話だと、翔が一瞬で見えなくなって見えたら、ガストは倒れていたらしい。こんな異常な戦いが同時進行していて、観戦してるリミたちからすれば、もう何が何だか状態。
火月『ふ~ん。そんだけかな~?デストロイヤーさ~ん!』
その掛け声で、ガストはゆっくりと立つ。翔は気付いた。ある異変に。
翔「ガスト、酷い目に遇っただろ…」
よく見ると服がかすかにボロボロになっていて、若干目の下にクマがあって、明らかに右足を引き摺(ず)っている。
翔「火月、これはどういうことだ。」
火月『え~、ただ、可愛がってあげただけだよー、ペットとして。』
翔「ペット?」
火月『そう、ペット!飼われた狼と虎。どんなことしたって構わないでしょ?』
翔「ごめん、ガスタ、アスト。」
ガスタ、アスト「ん?」
翔「ガストのこと、お願い。」
ガスタ「あ、ああ。」
翔「許さねぇ…」
翔は一人で、拠点【HEAVEN】に入っていった。
ユウリ「翔…」
───【HEAVEN】内部
翔「ここが…【HEAVEN】…」
そこには重々しい空気が流れる。壁は白く、清潔な空間が広がっている。だが、奥に行くたび磨(す)り硝子の向こうに死んでしまってる実験体だっただろう獣人が横たわっていたり、時々残酷な事実を見せてきた。一番奥には階段があった。ゆっくりと階段をあがる。……その先にいたのは、夕日に陰る火月と得体の知れない少女だった。
火月「Welcome to the Heaven!」
エリ「ようこそ。エンディングへ。」