【フリー台本】吹雪の夜に出会ったのは、親切な狼女だった

  …ん。

  なんだこんな吹雪の夜にお客様たぁ…。

  あぁ…?

  人間じゃねえか。

  お、おい。

  そんな怯えなくてもいいだろ。

  腹も空いてねぇしオレはただ寝てただけだ。

  別に取って食ったりはしねえっての。

  つかさみいからとっとと、戸閉めやがれ。

  で?

  こんな夜に人間が何の用だ?

  遭難でもしたか?それともオレが目的か?

  それならそれ相応のおもてなしを…

  な、なんだよ…。

  さっきからこっちの方をじろじろ見やがって。

  …あぁ、さみいのか。

  そんな目で見たって、この毛皮は貸さねぇぞ。

  なんたって一族誇りの毛並みだからな。

  人間に触らせたことを知られたら集落のみんなに怒られちまう。

  …火をつけてやるからそれで我慢しろ。

  凍え死んだらお前の身体の弱さを恨むんだな。

  //吹雪が強くなってくる

  …ちっ。

  風が強くなってきやがった。

  この小屋もそろそろ改修しねえとダメか。

  隙間から雪が入ってくる…。少しさみい…。

  お前は…いかにもって感じ、だな。

  そんな装備でこの山に遊びに来るからだぜ。

  …自業自得ってやつだ。

  *SE:焚火の音

  …なぁ。

  ひとつだけ聞いていいか。

  なんでこんな天気の日に山に来た?

  お前たち人間もそこまで馬鹿じゃない。

  吹雪になることはわかってたはずだ。

  それなのに…お前の服装ときたらどうだ?

  とてもそれを耐えるような装備はしてねえ。

  まず討伐隊の線は薄いな。

  武器何も持ってねえし…まずお前からは殺意が感じられない。ま、そういう風に見せて首を刈ってくるのがずる賢い人間サマなんだけどよ。

  それ以外だと…

  まさか死に場所を求めて…なんてことはないよな?

  //妹が不治の病でこの山に咲く薬草を手に入れに来た。

  妹が病気で…?

  ほーん…。

  それでこの山に咲く薬草を採りに来たってわけか。

  なぁ…まさかとは思うけどよ…。

  …少し手見せてみろ。

  いいから。

  //手を差し出す

  はぁ…。

  お前手がしもやけになってるじゃねえか。

  もしかして、雪の中ずっと掘ってたのか?

  いやこれでお前の素性は大体わかった。

  …家族想いなんだな。

  あと確実に馬鹿だ。

  変に警戒して損したぜ。

  ちょっと待ってろ。

  えっと確かここに…お、あったあった。

  これ、やるよ。

  お前の欲しい薬草ってこれだろ?

  いいのか…って。

  …てか、人間が見つけられる代物じゃねえよこれは。

  オレのような鼻が利くやつじゃないと見つけられないんだ。

  この薬草はオレの一族だと一般的でよ。

  …何にでも効くってもんで、子供の頃から否が応でも匂いを覚えさせられるんだ。

  まぁ…この薬がお前の妹に効くかまでは保証できないけど──

  って、お、おい!外は吹雪だって…!うおっ…さみ…!

  早く戸閉めろバカッ!

  …ったく。

  すぐにでも妹を助けたい気持ちはわかるけどよ。

  この吹雪のなか村まで戻るのは、オレでも正直無理だぜ?

  せっかく目的の薬草を手に入れたのにってのよ。

  途中でおっちんじゃまったら元も子もねえ。

  この山小屋に来たってことは、夜を過ごすつもりだったんだろ?

  なら、休んでけよ。

  それよりも…だ。

  お前のせいで火が消えちまったじゃねえか。

  …いやいいよ。

  火はつけなくて。薪も有限だからな。

  しゃあねえ。

  …こっちこい。

  特別にオレの毛皮の中に入れてやる。

  さっきのでお前が他の人間と違うことは十分にわかった。

  オレはお前を信じるぜ。

  …妙な真似したら叩き出すからな。

  …どうだ?

  オレの毛皮は暖かいだろ。

  "さっきまでの寒さが嘘みたい"?

  …良いこと言ってくれるじゃねえか。

  ほらもっと手突っ込め。いてえだろそれ。

  …家族のために命張れるお前のような人間もいるんだな。人間のくせにこんなに頑張りやがって。

  オレは攻撃的な人間しかいないと思ってたぜ。

  ま、オレの牙と爪の前には無力だけどよ。

  あぁ…まぁ昔な。

  親が人間に連れ去られたんだよ。

  …あいつらは卑怯だった。

  鼻が利かない春ごろを狙ってきて…酒に薬を入れたんだ。子供の時だから記憶はあいまいだけどな。

  まぁ…この話はまた今度な。

  帰りの暇つぶしにでも聞かせてやるよ。

  //「ついてきてくれるの?そこまでお世話になるわけには…」

  いや…こっから山降りるつっても、半日はかかるぜ?

  ここで会ったのも何かの縁だ。

  いいよ、村の近くまで送ってってやる。

  そうだ。

  お前、朝は弱い方か?

  …ん、それならよかった。

  オレがわざわざ起こす必要はねえな。

  んじゃ、吹雪が収まった早朝に出発するからな。

  オレの背に乗るんだ。

  ちゃんと手、ケアしとけよ。

  振り落とされても知らねえから。

  わかったら、さっさと目瞑れ。

  …どうせ看病とかで疲れてんだろ?

  近くで見たら、ろくに睡眠とれてねえって顔してるもんな。

  今日ぐらいは、オレがお前の代わりに妹さんの健康願ってやるからよ。たまには、安心していい夢見ろよ。

  な?