【サンプル版】宙裂け、星崩るとも

  じんわり、よりも粘っこい。

  ほんのり、よりも明白な。

  むわり、やはり適切ではない。

  じっとり。それが木造の戸を開いた先、どんよりと濃い闇の中で感じたものだった。

  こいつに誘われて住まいに足を踏み入れたとき。これから拷問でもされるのかと思っていた。そんなことをする奴じゃないのは分かっていながらも、どこかほんの僅かにビビッてしまっていた。それは、なにか内に秘めたるものを感じていたからであった。案の定それは杞憂に終わり、ヤることはきっちりヤっただけの、知り合いの家へ赴くのとさして変わらなかったわけだが。

  邪魔させていただく回数を重ねていくに連れ、すっかり見慣れてしまった間取り。目にした回数でいえば仕事で使う工場には到底敵わないが、期間で争えばそうは変わらない。それぐらい、こいつとは短くない付き合いになる。その中でも、最近新しく拵えたらしいサウナへと侵入するのは初めてのことであった。

  「へえ」

  

  不定期・等間隔に紡ぐ同年代のつながり。その頻度は必ず月に一度。決まった日があるわけではない。やることなすことは単純で、それは側から見れば交尾をするためだけの関係みたいなもの。若者らしい言い回しをするならば、セックスフレンドとかいうやつ。

  それは、事実そうかもしれなかった。否定するための、愛なんて不確かなものが俺たちの間には存在しないから。たとえ目に見えるもの、残るものがなくとも、今まで生きてきた半分かそこら。なんというか、そんじゃそこらの者よりも長い時間をともに過ごしてきたという事実は変わらないのだから。それだけあるのなら別に良いのではないか。そう思うようになったのは割と最近のことだった。つい数十年前までは、まるで考えもしなかった価値観である。歳を食って落ち着いた、とも言うのだろうか。

  

  出身がどこの区域だの、どこに住んでいるだの。趣味・性格・性癖。ただまぐわうだけの関係にしては、俺たちはお互いのことをよく知りすぎているわけだが。たまに会ってメシを食って、ヤる。酒を飲み他愛ない話をして、時々愚痴を吐いて。ついでにまたヤる。時間が来たらまたなと別れ、ある程度期間が空けば、似たやりとりに手を変え品を変え繰り返す。必要なのは、それだけで事足りる。

  家族というにはなんだか違うような気がするのだけれど。裸同士で抱き合いはするし、十数分もの長いキスは当たり前、肉棒を頬張るなんて挨拶をするのとなんら変わりない。普通の交友関係ならば成り立たないだろう。だから親友とも少し遠い。腐れ縁。そのあたりの言い回しが一番正解に近いと思う。

  関係性については俺たちも重々分かっており、わざわざ口に出して確かめるようなこともしない。でなければ、番から見て浮気以外の何者でもないような行為を前に、まるで正義感が服を着て歩いているようなコイツが乗ってくるはずがないからだ。この関係性についてどう思うかなんざ、そんなバカバカしい問いを投げかけたことはない。

  「こりゃまぁ、立派なモンだな」

  宙に向かって打ち上げた感想は、案内された部屋に対してのものだった。

  「そう言われたら、作った甲斐があるな」

  街のはずれのほうへ行けば、これみたく蒸気が噴き出るサウナなんてものはある。が、そこは温度・湿度のうち、そのどちらもが高いのだろう。いかんせん喉が渇く。長居出来ないが故にあまり好き好んで足を運んだ記憶はない。

  それに比べてここはちょうどいい。入ってすぐにそう思った。身体がすぐに悲鳴を上げることはないだろうし、知らぬ存ぜぬの外野が入り込んでくることもない。整うための楽しみとは別に、本日これからの予定に思わず唇を舐めてしまう。ちろりと走らせた舌先には、ほんのりと塩味がした。

  

  「すげェな、どんぐれェかかったんだよ、これ」

  「そんなに驚くほどのものではないが」

  所狭しと積み上げられた煉瓦らしき壁。その隙間を覆うようなものは、石膏でも流し込んで接着剤にしているのだろうか。住まいの風呂に飽き足らず、こんな設備を作るやつが真っ当な考えを持っているとは思えない。一市民とは桁違いの稼ぎをしているからこそだろう。コイツにとってはお遊びのようなものだろうが、そもそも一般人には作ろうと言う発想に至ることも、実行しようと思うこともない。

  

  「よう作らせたな、こんなモン」

  「思っていたよりも、時間がかかってしまってな」

  「そりゃあ、そうだろうぜ」

  

  入浴の終盤といったタイミングで、とくに言葉なき手の誘導によって連れて来られたこの場所は、日々の生活には必ずしも必要なものではない。俺みたく並の生活に落ち着いている者からすると、一瞬でも欲しいと考えたことがない。それでもこんなことをしてみせるこいつには、なんとなく羨ましく思ってしまった。

  「やけに暗ェな」

  「あいにくだが、照明なら無いぞ」

  

  入り口の隙間から漏れ入る僅かな光を頼りに中を見回してみる。入室したきり、こちらを振り返りもせず答え続ける奴の表情は分からないままだった。湿気を含んでジメジメとしているのに、体感は体温よりも僅かに暖かい。他にもそこかしこの施工に小さなこだわりを感じるのに、どうしても視界が悪いのは気になるところであった。注意せねば、危うくつまづいてしまいそうになる。節々のつくりがあまりにも不親切に思えたのだ。せめて、間接照明のひとつでもつければ相応の過ごしやすさとなるであろうに。

  奥にある角を凝視すれば、そこにはぎゅうと詰めたところで座ることができる空間。せいぜい成人が三人かそこら、申し訳程度に腰掛けられるスペースだった。脚はのんびりと伸ばしても壁に当たるような窮屈さは無さそうだ。一度腰を預けると背中を伝うように流れてくる温水が、身体を冷やすことなく心地よさを生み出しそうで。そこに座りながら持ち込んだ酒を開けようものなら、さながら天国に早変わり。実にいい。

  やがて気づく。露骨といってもいいほどの暗がりに、やけに長居しやすい環境づくり。プライベートとはいえ外から覗かれない密室。衣服の着用なんざあるはずもない。それらに適したもうひとつの用途とやらに。適当八、冗談二ほど割合で鎌をかけてみる。

  「ははぁン……ここもヤリ部屋ってワケか」

  「阿呆、そんなワケが……」

  「って言いながら、ツガイとはもうヤッたんだろ。ここで」

  「む……」

  いとも簡単に、分かりやすく詰まってみせるところを見るに、どうやら既にお試し済みらしい。新婚同然のような雄どもが、ベッドという愛の巣から早々に離れこのような場所でまぐわうなんざ、どれだけ性欲を持て余しているのだと揶揄いたくなる。他人のことをとやかく言える立場ではないが、大して歳なんざ変わらないというのにお盛んなことである。この勢いでさらに深掘ってやればベッドやサウナに限らず、住処の至るところでおっ始めた過去でも聞き出せそうなモンだが。精力旺盛な狼サンのことだから、もしかすると試していない場所のほうが少ないのかもしれない。

  「まぁ……そうだな」

  「ほれみろ」

  

  ヤリ部屋。その用途として使っているのであれば納得できる。敢えて不親切な設計にしたのは、行為そのものに没入しやすくするため。入口となる扉。つけようと思えばそこに窓のひとつでもつけられたはずなのだが、それはない。なんの変哲もない吸水性の低い素材で作られた木製の扉だ。防水加工を施す手間はあれど、天井に電球のひとつくらい造作もないはずなのに、それもない。目が慣れぬうち、下手に動けば転んでしまうだろう。奥で朧げに見える入切式のスイッチでそれを未然に防げると思っていたのだが、照明のくせして奥に備え付けてあるというのは変だし、もくもくと蒸気を吐き出し続けるヒーターの、すぐ近くにある。そこから思うに、どうやらスイッチは噴き出る蒸気を調整できるもの。

  

  この密閉空間自体がコイツの私的な領域の中にある。そもそもが客を歓迎するためのものではないのだ。効率よく発汗を促すを重きを置いているわけでもない。一糸纏わぬをドレスコードとした雄を連れ込んで、汚れを気にすることなく淫靡の限りを尽くすこと。それらを達成するために造られた設備。随分に欲望に合理的というか、一朝一夕の思いつきで建てようとは思えぬ恐怖にも近い執念。そしてこうして完成させているのだから猪突猛進さ。それをそこはかとなしに感じる。

  「どこのどいつに頼んだんだ、この施工」

  「知り合いの伝手だが、詳しくは覚えていない」

  「値段と納期重視ってやつか、まあ軍人サマのお給金を考えたらこのあたりになるモンかね」

  

  「お前に設計を任せられたら、もっと立派なものが出来ていたのかもしれんが」

  「馬鹿言え、加工屋に風呂工事の設計を任せるやつがあるか」

  「そんなものなのか」

  「そんなモンだよ、そもそも畑違いだっての」

  

  入室のために扉を開けたため、少なからず多少の外気が入り込んでいるはずだが今や気にならない。熱の循環についてはおおよそ優秀なようだ。木板一枚からなる床の上を一歩、また一歩と二匹の獣たちがその身体を進ませるたび、きしきしと木の造りからしなる音が際立つ。はじめのほうこそ、瞳を閉じるとなんら変わらないほど暗かった。慣れとは素晴らしいもので、やがては壁と椅子がどこにあるのか。真っ直ぐ歩いてぶつかるようなものはないか。その程度なら分かるようになるのである。多少、安全に考慮してかヒーターには直接手を触れることのできない構造になっていることに気がついた。

  「……にしても」

  「ん」

  「新しい割には、なんだか脆そうじゃねェか」

  「お前が太ったんじゃないか」

  

  入ってからものの数歩。奥へ行くにつれ、空間の中で唯一腰を落ち着けられる椅子に近づきこそすれど、漆黒の影は座ろうと動く素振りはない。聴覚に頼ってみても椅子に体重がかかるような物音もしない。体格の近い巨体は、ただそこに突っ立っているだけだった。無礼な口ぶりだけが飛んでくるだけ。

  「じゃかしい、お前と大して変わらんだろうが」

  「それもそうか」

  ゆらりゆらりと左右に靡く狼獣人の尻尾の部分。そこには虎獣人にはない密度の毛量がある。平静さを保ちながらその実、世間話どころではなさそうだと思ったのだ。目の前にある灰色狼の尻尾がそう口にしている。待てと命じられた者が先走る気を抑えきれずにいるよう。急いている、そわそわしていると言ってもよかった。本来、狼という種族は尾で気持ちを表すといったことはしないと聞いたことがある。こいつが態度には|噯《おくび》にも出さぬくせして、尾のほうへと現れてしまうのを知ったのは随分と昔のことだった。おそらくは本人も知り得ない、限られた者だけが知っている密かな癖なのだろう。

  

  「む」

  「おうおう、随分と機嫌良さそうじゃねェか」

  「……ああ」

  揺れを素手で捕まえて弄んでみる。傍目からの予想に反して毛足は短く、やや艶がありなめらかな手触りをしていることに気づく。先に湯船へ浸かったこともあってか、毛はまとまりしっとりとしている。さてはいい歳して、身だしなみに気を遣い始めたのか。先端から根元に向かい撫でてみれば、びくんと大げさなほど揺れる。大げさに尻を左右に揺らしているかのようだ。手指に伝わってくる脈、震える動きはあまりにも分かりやすく教えてくれる。おかげで、尻尾と対に位置する真正面の様子がどうなっているかなぞ、一瞬のうちに見当がついた。

  「……そんなトコに俺を連れ込んだっつうことは、だ」

  「……」

  「イイんだよな、期待しちまってもよ」

  「ああ、その通りだ」

  よくもまあ恥ずかしげもなく、いけしゃあしゃあと言ってのけるものだ。その胆力には感服させられる。そりゃあ、こんなときでさえ罪悪感を抱いているようでは、勃つモノも勃たなくなってしまうだろうから、当たり前と言えば当たり前だろうか。いや、そもそもの話。そんなことがをよぎるような奴が雄を連れ込むことなんざするはずない。

  

  「ツガイ以外の雄を連れ込んだ感想はどうだ」

  「思いの外、悪くない」

  「肝っ玉イカれてやがるンじゃねえか」

  

  興奮は、どう取り繕うが隠せなかった。

  

  「似たようなモンだろうが」

  「そりゃあ、まあ」

  なんてったってひと月ぶりの逢瀬だ。すぐにでもあの唇を、乳首を、そしてチンポを貪り合い、気持ちよくなりたくて仕方がない。この密室に入る前。それよりも前からそうだ。俺も言葉に出さないだけで朝目が醒めたときからであっただろうか。すでに起立したチンポはヤる気満々といった具合で、これからの予定を思い出すたびにぴくりと|戦慄《わなな》く反応を繰り返していた。

  「……あたぼうよ、ヤる気十分だぜ」

  「だろうな、随分と元気でいらっしゃる」

  

  チンポは、とうの前から勃ち上がっている。早くことを進めろと喧しいくらいに血流を漲らせて主張していた。雄の本能が先走るのを押し留めていたとしても、身体へと如実に出てしまっていれば同じようなものだ。肌をひた隠しにする手拭いなんてものは最初からない。その必要もない。ただ、あからさまにひけらかすのは風情がなかった。適当に言い訳を並べ意固地になっている。結局、自分にもコイツと似たような癖があったのだろう。似た者同士なのかもしれなかった。その歪みきったであろう感性は、死ぬまで治りそうにないとも思う。

  「こうやってのんびりするってのも悪くはねえが」

  「ああ」

  変わらず蒸し暑くあれども耐え難い温度ではない。それは数分経ったところで変わらない評価だ。ふわっと立ち込める熱気。それは次第に汗となって体毛に吸い込まれ、束となって肌の表面にまとわりつく。それでもお互い腰を預けることなく、立ったままだ。全身が徐々に温まっていくのが分かった。じんわりと、内から滲むように。日頃の疲れやら鬱憤やらが滲み出てくるようだ。へばりついた毛のうっとおしさもそのうち気にならなくなって、徐々に心地よくなってさえくる。一方で、それとは別に、下半身の隆起は理性をぐらぐらと揺さぶってくるのだ。

  「ほら、こっち向けよ」

  ヤりてェのは分かってんだぞ。矢継ぎ早に紡いだものを制するみたく、振り向いた雄。凛々しくも艶めかしい狼がそこにいた。場所、雰囲気、気分。舞台はすでに整っている。それとあともうひとつ、必要なことがある。背中を押すくらい簡単な口上。それだけだ。そこまでしてようやく立てる、用意どんの開始位置。雄によっては不要なものである。言われてしまえばそれまでだが、かけっこが始まるときの合図みたいに、それがあるかないかで幾分と気の入りようが変わるように思う。ゆえに俺は欠かすことはできない。

  「とっとと始めようぜ」

  

  好きなだけ眺め放題だった背と尻。ぐるりと反転させた灰の狼獣人。今や布地ひとつさえ纏わぬ一匹の雄。その真正面。その証は立派に、ぶるんと天を仰いでいた。立ち昇る湯気に媚薬成分でも含まれているでもないだろうに、室内にいるだけでどんどんその気にさせられているようだった。

  「……」

  

  このほんの僅か、刹那的な。こいつが振り返る瞬間が好きだった。顰めっ面という仮面で顔を覆っているクセして、その内心では期待に胸を躍らせ、翻した目線の先は間違いなく俺の股座を凝視していたはず。対峙した本日の獲物。俺のチンポを間違いなく瞳に焼き付けているであろう、そこにはなんとも言えぬ優越感がある。これより可愛がりを与えてくれるモノをぎろりと見定め、すぐさまお眼鏡に叶ったように、瞳の中にある黒が小さくなる。歓喜と恍惚。素面なら雑念でしかない感情の昂りに引っ掻き回され、目を凝らさなければ見落としてしまうほんの小さな硬直が雄としての本能が、一瞬ともいえる時間の中でくすぐってくるのだ。

  「すっかりギンギンにしているようだが」

  「ヤる気満々って言っただろうが」

  「そうだったな」

  

  証は立派に天を仰ぎ快楽を待ち望み、先端から流れる一筋が床へと粘っこく垂れては湯に混ざり消えていく。その一滴一滴が俺たちの理性を表しているかのよう。雄の証を目の当たりにして、俺のチンポは早くこいつを食らいたいと一層に滾る。受けと攻め、立場は違えど向こうも同じことを思ったのだろう。硬派ぶった凛々しい顔も今や品のない舌なめずりまでして。もはやこいつのアタマは一心不乱にチンポを味わうこと、そして貪ることでいっぱいになっているのであろう。実に行儀のなっていない野獣だ。

  「人のこと言う前に、自分のモン見てみやがれ」

  「見ずとも分かるぞ」

  雄の象徴が真正面にあるせいで、自然と誘導された視線。その先。立ち塞がるはふてぶてしいまでの見事な巨根。揚げ足を軽々といなした雄の象徴。全身の脈を一身に集めたイチモツはぱんぱんに膨れ、竿も太ければ根元までもがみなぎっている。印象だけで言えば俺の持ち物とそう大差ない。

  溜まっていると言ったのはあながち嘘でないだろう。でっぷりと重そうな金玉は乳牛の乳房みたく絞りとり甲斐がありそうだ。一発、二発とザーメンを解き放ったところで、些事。挑発をし返してくるほど乗り気で負けず嫌いな教官サマは、喉元まで出かかった肉欲を前にしても、むしろこちらから喰らい尽くしてやるぞとばかりの余裕と意地を見せつけてくる。それでこそだ。そうでなくては交尾に張り合いがない。いくらでも歯向かって、自信に満ちた雄を屈服させて尚責め立てることに、もはや至上とまでの悦びを感じるようになったのは少なからずコイツの影響があるだろう。

  「おう」

  

  余計な言葉はない。ぴちゃ、ぴちゃ。響くのは、素足が水流を踏みつけ蹴り上げる音だけ。普段は味わえない独特の緊張感。それだけがあった。どっしりとした巨漢。ゆっくりと、確実に躙り寄るのみ。特に誰が命じたでもなく守る待ての命令。肉棒の怒張からくる苛立ちを募らせていながら、俺たちのうち、そのどちらからも手を伸ばすことはしなかった。先に肉体へ手を出した方が負け。格闘技の類じゃあるまいし、そんな決まりを作った覚えはないのだが、事実そうなっていた。先に雄を求めたほうが肉欲の餌食となる。そんな異質で厳粛な雰囲気があった。

  「……」

  

  受けるでもなく、迎えるでもない。俺と同じくらいの肩幅から襲いかかる強烈な抱擁。さながら競技にも見えなくはない。衝突とも形容できる二頭のぶつかり合いは、力比べやマウンティングを目的としたものではない。獣たちは磁石みたく、一度くっつけばピタリと離れることはない。離そうと思えばそれはすぐに叶う。ただただ大きく強い性欲。唇の上と下。合わせて二枚あるぶ厚い肉を味わって、頬の内側にある温い肉を撫で、歯茎を、歯列。硬口蓋を愛でる。それを叶えるために必要な距離だ。

  

  闇の中でようやく輪郭を成した熱はひどく濡れている。風呂でいくら体を清めたといっても薄まることはない固有の匂い。それと、汗の香り。芳しくて、つい鼻腔が広がり吸引を繰り返す。狭い空間に二人きりとはいえ、目と鼻の先にまで接近してこそ感じられる雄臭さ。毛を帯びるのは汗か、堪えず流れ続けるぬるま湯を含んだものか。そのどちらでいい。言葉にするのは難しいのに、間違いなくこいつの匂いだと確信が持てる特徴的な体臭がする。たとえ人混みに紛れていたとして嗅ぎ分けられる自信がある。湿気によって鈍っていた嗅覚を唐突に殴りつけるみたいに、吸い込んだ鼻腔がこいつの匂いで満ちていく。嗅ぎ、自身の内に取り込むだけで、数々の淫靡な出来事が記憶となって呼び起こされてくる。喉元、首筋。石鹸の香りでは拭えない、軍人の、男の匂い。洗練された雄そのものだった。

  指の関節、ひとつもあるかどうかの距離にある奴の鼻っ面。熱気。息苦しささえ感じた。至近距離で見つめ合う俺たちの間には、よもや指一本分の間隔すらないだろう。いかんせん世間話をするための距離ではない。ここまで顔を突き合わせれば、たとえあたりが常闇であろうとも見えた。大きく、深く胸に取り込んだ息によって、強靭な胸板が膨らみ、縮んでいくのが分かる。口づけ、くすぐり、愛撫。いずれも容易い二匹。そのどこよりも早く接触へと到達したのは、さしてタッパの変わらぬ俺たちの股座。ぎんと張り詰めた二本の竿。向く角度に違いこそあれ、挨拶を交わすみたく、ちょんと先っぽが触れた。太い雁首。雌穴の味を知り尽くしたふたつの勃起が腹の間に挟まれている。抱き合う身体のどこよりも、臨戦状態と化した象徴は熱を孕んでいるのが分かった。

  「今日はヌきやがったのか」

  「そんなことをする理由がないだろうが」

  「そうかァ? てっきりツガイをオカズに、毎日センズリこきまくッてンだと思ってたが」

  

  ただでさえ暑苦しい湿気に満ちているというのに、その上から毛布までかけたようにむわっと集まり篭りまくる熱気。それは俺たち獣人たる体毛から発せられている。普段なら不快とすら感じる過剰な熱だ。それでさえコイツから与えられていることを思うともっと欲しくなってくる。男らしく肩幅以上に開いた太ましい脚。潜り抜けるみたく膝皿を擦り寄せたくなる。そう思うよりも早く身体はそうしていた。

  「普段は、な」

  唐突に走る快楽。生意気な真似事らしくぎゅうと抱きしめながら腹を擦り込んだらしい。腹筋に押し付けられ、無惨に挟まれたチンポ同士は逃げ場を失い、中で争いながら張り詰めていく。気持ちが良かった。丸太みたくぶっとい肉杭。ツガイを孕ませた子作り済みのチンポ、大きさ、太さ、経験をものともせずぐりぐりと回しつけられる。これ以上なく分かりやすい、直接的な刺激。たとえシコってきたとしてもそれはそれで興奮するものだが、抜いていないと言ったのは嘘ではないだろう。でなくば、円を描く挑発的な腰遣いの裏で、びくんびくんと脈動を伝えてくるはずがない。こんなにチンポを硬くして興奮しているのだぞ、と。

  「うッ……!」

  

  湿気の中にふわりと混じったコイツの匂いと、興奮に少なからず緊張を混ざったことによる荒い息遣い。複雑に絡んで聴覚を刺激する。熱情の炎は粘膜の湿り、息の温度を前に堪えず可燃性の油を注ぎ込んでいる。狼特有の出っ張った鼻先が触れ、やや斜めから掠めた頬。唇、目前だ。これより大なり小なり行為が始まるというのに、教官サマは険しい顔は変わらない。チンポだけは硬くなっているくせして、特になにをしでかしてくるでもない。ただ目線だけは俺をから離そうとしないのである。こちらがどういった動きをしてくるか、それを見計らっているようだった。|如何様《いかよう》な責めであろうと受けて立つ。だが、生半可なものであれば容赦はしない。そんな待ちの姿勢だった。

  「今日は、空っぽにする訳にはいかんからな」

  「……へぇ」

  「無くなってしまうだろう、親方サンの搾る分がな」

  「へへッ……」

  雄たるもの自ずから貪りにいってこそ。そんな俺の価値観を塗り替えたのもコイツだ。この男は、つくづく嬉しくなる言葉を投げかけてきやがる。本番にまで行きつけば決まって女役をするというのに、娼夫みたく媚びることは絶対にしない。無自覚であろうが、こうやって幾重の雄どもを知らぬうち虜にしてきたのだろう。その奥にはおよそ軍人とは思えぬ淫乱っぷりがある。こちとらかつて味わってきた情事の数々を思い出すだけで、いますぐにでもチンポを握りしめ扱き立てたくなるというのに。仮に今、そのようなことをしようものなら、張り手でも飛んでくるかもしれない。そんな予想があながち冗談でもないような形相をしている。

  

  『満足させられンのならば、分かっているだろうな』

  ふしだらに股を開いてチンポを誘惑しながら、期待に満ちた瞳と尻尾を振りまいて。ビキビキと青筋が立ったチンポをケツ穴に当てがえば、ひどく濁った重低音の唸り声と、準備万全としたきゅうきゅうなマンコが出迎えてくれるのだ。突き入れた雄が、もっとも悦ぶカタチへと成り上がった器官。こちらからわざわざ本腰を入れて動かすまでもなく、こいつのケツそのものが意思を持った生き物であるかのように、左右、上下、斜めと前後から。多種多様にチンポを可愛がろうとしてくる。

  『この程度でイッてしまうのか』

  上目を遣いながら旨そうに頬張りながらおりなすチンポしゃぶり。雄の弱い部分を知り尽くした技術をもって、まともに張り合えば数分と持たずイかされてしまう極上の口淫。亀頭を這う狼の舌は、雄のチンポをむしゃぶり喰うために存在しているのではないか。あるはずのない、そんな疑問を抱いてしまうほど。油断と慢心により口だけでイかされてしまったことは何度かある。吐き出されたザーメンでさえも己の武器だと、腰へ回された腕は獲物を逃がすことを許さない。次いで二発、三発と続け様にチンポを舐め尽くされてしまったのだ。

  もしもコイツが軍人などでなく、娼館にでも勤めていればとんだ超新星であろう。そうなれば毎度指名して通い詰めにしてやるというのに。

  「……なんだ」

  「俺ァ、キンタマ空っぽでも構わんかったがな。ザーメンなんざ、ヤりながらいくらでも作らせりゃあいいンだからよ」

  「……っ」

  

  びくん。肉の脈動が皮膚から神経を伝う。

  ごくり。生唾を飲み込めば鼓膜に轟く。

  事実ハッタリではない。一発イッたところで逢瀬が終わるはずないのはいつものことだ。だからそう言えた。たったそれだけの会話に性的興奮を抱き、次なる一手はなんだと待ち侘びている。

  精根尽きるまでぶっ放し合って、ともに立てなくなるほど虐め抜いて、また繰り返す。この狭く暑苦しい密室には、全ての欲を性に傾倒させた淫らな獣しかいないのだ。こんな野獣たちの野心を埋め合わせることのできる者が他にいるであろうか。国中の風俗街を巡ったとしてもそうそう見つかりはしないだろう。

  

  「相変わらず、いい趣味じゃないか」

  「照れるじゃねェか。それに律儀に付き合ってくれるどこぞの教官サマも、相当な変態だと思うがな」

  「言ってくれる」

  絡めている脚の隙間がぎゅう、と狭くなって肉の圧力が掛かる。抗議の意を示すようだった。聳えるのは何とも間違えようのない、臨戦体制と化した雄の生殖器たる感触と熱。負けじと俺も、意識の外から血流を漲らせている。引っ掴んでこいつの隙間に押し込んでやれば、それだけで素股プレイになだれ込んでしまうだろう。

  やがてどちらからでもなく重心が傾くのだ。そうなって初めて、暗闇だったお互いの肉体を完全に認知する。抱擁というには些か乱暴で、拘束というにはあまりにもお粗末。だが逃がすつもりはないという気概は分かる力加減。

  

  「ツガイが見たら泣いちまうかもしれんぞ」

  「この程度で泣くような、柔な奴じゃない」

  

  イジメ抜かれた股肉。密度の高く汗ばんだ肉の塊にチンポを押し込むだけの、何度も実践した光景。そのうちコイツがナカへとホンモノを欲しがって、引っ掴んだチンポを無理くり呑み込んでいくのだ。それこそ剣が鞘に戻っていくみたいに。

  

  以前、そこより繰り出したのは、躾のなっていない狼を理解らせるための立ちバックであった。どちらが雄なのかを頭と肉体に教え込むための調教。勇ましくも淫らに発達した両胸を鷲掴みに、姿勢を反らすよう引っ張り上げる。そうすると締まりが食いついてくるみたいに良くなるからである。奥の奥まで容易く入り込むギンギンになったチンポが、トロついた狼の弱点をこれでもかと襲いかかって、雄としても、雌であろうと気持ちのいい部分を殴りつけていくのだ。一身に受け止めたこいつはさぞかし悔しそうにしているというのに、ヒクつくケツ穴は口で奉仕するみたく咥え込み、俺をイかせるため勃起を締め上げる。嬌声を響かせ、触れもしていない股座からは雄汁をびゅうびゅうと壊れた蛇口みたく吐き出すのだ。どちゅん、どちゅッと腰を穿ち堪能する肉壁。雄を欲しがるふしだらなケツ。こちらから抑えつけるまでもなく腰を押し付け、けして壊れることのない頑丈なマンコ。ひとたび中に出してやれば、さも悦びをひた隠しにしない収縮を見せる。オカズとしても何度致したか分からぬほどしけこんだ体位。いわばお気に入りのひとつであった。

  股下に潜らせた五本指のうち、器用に操れる二本が率先して狼の門渡りを歩く。つまみ食いをする要領。雌の部分。すいっ、撫でるというのも甘い。ただ指先が通っただけだ。こいつもこいつで、過去のヤり合いに頭を引っ張られているのだろう。声らしい声は必死に抑えつけているのに、喉奥からはくぐもった唸り声。まだまだ入れるつもりのない人差し指と中指。ふたつが特定の位置にまで訪れたと見るや、しがみ付くみたく圧着してくるおかげで筋肉に負荷がかかる。前傾となったこいつの背をゆるく撫でてやった。

  「お前ェは頭よか、カラダのほうがよっぽど素直みてえだが」

  「……ッ抜かせ」

  

  常識や理性という液体の入ったボトル。仕返しがてらそこへめがけほんの数滴、冗談というドス黒い欲望を落としてやる。あらかたどうなるか想像がつくが、その上で見て楽しむというのも粋だ。

  強がって見せる口なんかより、無意識に態度を示す尻尾なんかよりよっぽど分かりやすい。挙句、考えなしに退いてしまうことで突き出た腰が俺へとぶち当たる。反り上がったチンポが当たる感触に誘発されている。欲情へと、道連れに堕ちていくのが分かる。擦り合っているにしろ、こちらからは動いているワケでもないというのに。気付かぬうちに罠へと導かれたような気分。なんと小癪な教官サマであろうか。

  「いっそのこと、ツガイにも見せつけてやりてェとこだが」

  「馬鹿を言うな」

  「んだよ、あながち嫌でもねえンだろうが、あぁ?」

  

  芯がこもってより太く、より天を突くほど反り上がっていくチンポ同士。びくびくと震えてしまう股座は狼の腿、脇腹のわずか下をなぞらせてしまい、見向きもしないコイツの雄も、同じ挙動をもって俺を誘惑させてくるのだ。ああ、今すぐにでも押し倒してケツを掘り倒してやりたい。たとえこの瞬間、世界から言語が消え失せてしまったとしても。俺たちは欲望を隅から隅まで削ぎ落とすことが出来るだろう。

  今すぐにでも絡み合ってひとつになりたい、めちゃくちゃになるほど混ざり合いたい。無理に感情を押し殺そうとすればするほど、かえって鼓動が昂るのだ。下手に我慢しようとすれば、余計に肉棒へと血流が集うのだ。

  「良いじゃねェか、俺たちがまぐわってンのをひけらかすのもよォ……。案外、火が付いてめちゃくちゃ燃え上がる夜になるかもしれンぞ」

  「……」

  

  サウナで身体を温めるにしても、ただ密室で逢瀬を楽しむにしても長過ぎる顔の突き合わせ。仕方がない。俺も、そしてこいつも、前戯に時間をかける性質だから。この時間を楽しむほど、比例するみたく本番のボルテージも右肩上がりに向かう。

  「どうせお前ェのことだから、いっつもケツ掘ってばかりなンだろうが。そいつの前で、俺のチンポねだってみるか、んん?」

  「ぐっ、うゥゥ……ん、ッぐう!」

  「ツガイをガン掘りしてる後ろから俺がハメたら、さぞかし堪らんだろうぜ」

  「お"おッ……が、はァ……!」

  「おォ、ようやっと気分が出てきたじゃねえか」

  

  |他人様《ひとさま》の関係をぶち壊す気はさらさらない。あくまでコイツをおちょくってやればどんな反応をするか。それを遊びで試してみているだけ。実際にどちらがタチウケだなんてのも、雑談の中で聞いたことがあるような気もするがよく覚えていない。つまるところ、感度が上がろうものなら真実などどうでもよかった。今晩の宴がより盛り上がる。それだけの戯れ。予想の範疇を少しだけ凌駕したのは、硬派な教官サマが存外に色狂いであったということのみ。英雄色を好むとはいうものの、好み過ぎやしないか。もはやそう思うことすら野暮だ。

  数多な手法でまぐわってきた俺たちだから、ある程度のプレイや嗜みはなんなく受け入れてきたが、まさかツガイが出来たことにより新たに開拓されたのか。釣り針を垂らしてしまったのはこちらである以上、よもやどこまでいけるのかを確かめなければならないという、半ば使命感にも似た何かが好奇心に混ざってくる。

  「お前ェはケツヤりながら、俺から掘られるンだぜ、どっちも味わえてイイだろうが」

  「ッ、だ、だがッ……」

  「にしても、俺がお前ェのケツにチンポ突っ込んだら、ツガイも一緒に犯してるみてェで興奮するかもなァ」

  「やッ、やめろ……おぉ"ッ……ぐぅッ!」

  「前も後ろも虎野郎に挟まれてよォ、揉みくちゃにされるなんざ大層な教官サマじゃねえか」

  「はッ……はぁ……はァ……!!」

  思惑の結果は聞いてやるまでもない。交尾を見せつけると耳にしたときから、腹の間でギン、ギン。肩で息をするみたいに膨れ上がる狼チンポ。その裏、妄想に耽けった尻は今頃、閉まっては緩んの準備運動を繰り返しているだろう。そのうち咥えることとなる強大な雄を妄想して。

  

  隙間なんざないはずなのに、腹筋を無理やり押し広げてくるみたく昂り、口ではやめろなぞともっともらしい声をあげながらその実で身体は賛同を示している。まんざらでもないのならば、あとは心さえその気にしてしまえば容易く実現してしまうだろうと思った。三人でまぐわうなんざ長らくないことだったが、もし叶ってしまうとしたらそれはそれでひどく楽しめそうだ。こうして話しながらでも、びくり、びくりと震えを見せる狼。言葉責めにもならぬ、お遊び程度のものでさえ、感度を高めさせる十分な要因になっておられるようである。良い意味で、予想外に上出来な仕上がりだった。

  「もう息あげてンのか、こんだけ善がるほど溜まってるッてんなら、今夜は随分と楽しめそうじゃねェか」

  「おお、やってみろ……! 分かっているだろうが、簡単には音を上げてやらんぞ……」

  「ああ、俺も男だからなァ……雌野郎がそんだけ勝気に誘ってきやがると、是非とも鳴かしたくなっちまう」

  岩みたいにザラついて固い尻をなぞる。軽く平手を打ってやると、楽器さながらに軽快な打音が暗闇に広がった。すぐさま消えて無くなっていく、手のひらと尻の衝突音。硬く張りのある手触り。パン、パンと小気味いい音が心地良い。

  「良いケツだ、ハリがある」

  「ッお、あ"っ、ぐうッ……」

  

  やがて苦悶と悔しさにも似た別の楽器が耳元で小さく鳴り始めるのだ。曲を奏でるにはあまりに汚らしく濁った雄の音声である。音楽にはまるで適さない。であるにもかかわらず、もっとこの楽器を奏でてみたい。そう思わされる。

  牙を剥き出しに、今にも噛み付いてきそうなほど獰猛な顔はさながら、闘技場で戦闘が始まる直前のよう。闘志に満ちたこいつの雄めいた顔つきがなんともいい。自らが弱き者ではないことを全身で表す威嚇という行為。実に雄を感じさせた。それをものの一刻も保たぬうち、姿形をドロドロに溶かしてしまうのだ。それがいつものこととは分かっている。分かりきった展開であるのに。己の手腕で軍人殿を雌へと仄めかしていく過程が、なんとも加虐心を刺激させてくれるのだ。

  不測の事態にならぬことが絶対的に分かっているからこそ、約束された快感が先走り、どちらとも分からぬ腹の上めがけ垂らしつけてしまう。終いには、こいつが無様にケツを嬲られる。それすらなんとか足掻こうとする光景。何度味わおうとも心臓に釘でも打ち込まれたみたく、ずきん、ずきん。ひどく興奮する。妄想に身を任せた自慰行為では味わえない昂りだった。これがあるから逢瀬がやめられないといっても過言ではない。

  「へえ……」

  

  鍛えられた筋骨。こちらは仕事で鞭打ってきた頑丈な身体を武器に、羽根箒でくすぐられているみたいに、触れられているのかも曖昧に頬に降り、首元を滑って胸へと下る。

  今すぐにでも好き放題にむしゃぶりついてもいいのに、あえてぎりぎりまで抑え込んで一挙に解き放つほうが何倍も満たされるということを俺たちは知っている。だからどんなに気が急いても焦らす。焦らさなければならない。

  

  お国のため、身を粉にしながら役回りを担う教官サマの肉体美。いつ見てもそうだった。怠惰の象徴たる、ぶよついた贅肉。そのような余計なものは付くはずがない。指が腹筋を這っていく。この上半身だけで巷の雄どもを取っ替え引っ替え出来るほどには、十分すぎる完成度だ。背丈も、重さも俺とさして変わらないというのに、皮の下一枚に潜る肉の質感、密度。触れた回数は親の顔を見たよりも多いだろうに、会うたび初めて取り扱う金属みたく、新鮮な気持ちにさせてくれる。どう料理してやろうか。想像しただけでいきり勃つ股座に見えぬ圧が掛かってぶるんと震える。

  狼は両腕をこちらの後ろへ回し、虎の腰を掴めば時を同じくして爪先がわずかに食い込ませてくる。身体を交えるに相応しいか、こちらの筋骨を確かめているようであった。

  「相も変わらず、イイ身体じゃねえか」

  「研鑽を、怠るわけにはいかんからな」

  「ンだよ、エロいカラダだっつった方が嬉しいか」

  「たわけが」

  

  流しっぱなしになっている湯が壁伝いに排水口へと流れ込んでいく。配管を流れる流水音に、暖房の役割を果たす機器の駆動音。蒸気を蓄えた天井から時折滴る水。足を伝うのもやや温くなったそれ。あとは雄狼の肉体に、すっかり盛り上がった股間が皮膚を伝う感触。欲情している吐息。五感を最大限に活かしても感じられるのはそれくらいだった。

  

  「褒めてンだよ、雄臭え野郎だってな」

  「ふん……」

  

  笑いが起きるわけがない。代わりに俺の肩へと額が押し付けられる。それが返事みたいなもの。小っ恥ずかしくて顔を伏せたようにも見える仕草。直後に大きく息を吸い込む音が聞こえてきたものだから、生娘らしい挙動は誤りである。目立つ匂いなんざたかが知れているであろうに、目下の欲しがりはひどく嬉しそうに鼻を鳴らしている。こいつも欲しがりだ。俺と似て。

  「最後にヤッたのはいつなんだ」

  「……十日前かそこらだろう、いちいち数えとらん」

  「へへ……ッ、じゃあ、すぐにでもこっから一発ぶっ放したくて辛抱ならんわけだ」

  ぴん、ぴんと亀頭を弾いて煽ってやる。ようやく触れたこいつのイチモツ。デカマラ、エロチンポ。分泌され続けていた先走りの量が一体どれほどのものであったかを白日の元に晒した。こびり付いた指の腹。汗でも、サウナの温水がかかったものでもない。親指と人差し指。時計の進むほうへ練るみたく回しつけてやれば、ぬるついた感触が存在を露わにしたのが分かった。存分に感じている。それだけで十分だ。

  

  「ッぐ、ぬう……!」

  「いい反応だ、感じてやがンのか」

  「頑固な親方は、わざわざ言葉にしてやらんとッ……満足に、雄も抱けんのか」

  「可愛げが無えなァ」

  真下へ押し付けて離す単純な動作。ごく簡単な刺激を受けたチンポは、力の向きに対しどうしても歯向かいたいようでますます反りへ漲りを見せる。

  「ん、ぉおッ……」

  「ツガイにもそんなこと言ってンのか。雰囲気作りってのも、案外バカに出来んぞ」

  「しとらん……それに、そんな雌がましい事なんざッ……んっ、く……出来るか……!」

  

  腰へと回しつけた熱を感じれば、自ら両腕をあげて縋りやすく隙間を空ける。口では頑なにこう言うくせして、すすんで雄を誘う淫らな格好だ。いくら年月を隔てようが相変わらずの好き者野郎。不器用なくせに、馬鹿みたいに一途でエロいことが大好きな頑固親父。入ってしまえば右肩上がりにノリが良くなっていくヤる気のスイッチ。そんな姿を一度瞳に焼き付けてしまえば、発情するほうがさも当たり前のことだと思わされてしまう。

  「そうだよな。分かるぜ、ケモノみてぇにがっついて、好きなだけヤり合うほうが好みだモンなぁ」

  「ぐ、うゥっ……!」

  「その割にゃ、さっきから女みてェに腰をクネらせてやがるが」

  「勘違いするな……、くすぐったいだけだッ……!」

  「ほざけ、誘ってンだろうが。早く善がりたくて辛抱ならんだけだろう、違うか」

  

  あとの楽しみにするつもりだと無理やりに自制していたが、どうにも我慢できそうにない。くすぐられる加虐心に征服欲。どちらにせよ、こいつのことをたらふく味わうつもりなのは変わらないわけで。ならばいいかと己の心に蓋をし見て見ぬふりを決め込んでしまう。いかんせん、いつまでもシラフを演じるのも難しくなってきていた。手のひらで踊らされている気分だ。

  「ぐッ、あまりッ……調子に乗るなよ」

  「乗っちゃあいねえよ、こちとら平常運転だぜ」

  「エロ親父が」

  「……じゃあいつものセリフ、そのエロ親父に向けて言えたら、すぐにでもおっ始めてやるよ」

  「……ッ!」

  「安心しろよ、俺もおんなじ気持ちだ」

  

  股座にぶら下がるチンポを鷲掴み。手のひらで包み込むようにしてやってからゆっくりと扱き始める。ゆるり、ゆるり。ぬちッ、ぬちっと亀みたく遅くした焦らし。いわば最終通告みたいなもの。呼応してこいつが芯を入れやがるのだから、なんとまあ分かりやすいが、態度だけではどうも物足りない。だから、わざわざ口にさせてやらなければならない。

  これから俺たちは盛り合うんだぞ、と。

  

  「……後悔させてやる。かかって来い、三下が」

  「分かってるじゃねえか……いくぜ」

  

  そこからは、銃口から発射され加速し切った弾丸みたく、あっという間だった。後頭部へ手を添え、挨拶代わりに軽く唇を味わう。まだ舌を絡めることはしない。ただただ触れ合うだけ。今にも振り切れそうだった我慢という糸を代わりに切ってもらったのだから、ある程度はこちらも動いてやらなければならないだろう。

  「むッ……!?」

  「んんうッ!!」

  

  一秒、二秒。そこから指の関節ひとつ分だけ唇を離してやれば、軍人たるコイツの瞳は熱を帯びているように思えてならない。日頃から部下を扱いてばかりのくせに、もっとくれと欲しがる眼差しを向けてくるのだ。手鏡でもあれば見せてやりたいツラだ。堅苦しく軍服を着た狼の勇姿を見る機会こそ付き合いの長い俺でさえ数えるほどしかない。娼夫にも勝る生真面目とは対極に位置する表情を拝めるのは、この街で俺とあわよくばもう一人だけに違いない。そんな背徳感でさえ俺のプライドのひとつに成り変わっている。

  俺から唇を今一度近づけようとすると、吐息のひとつがかかるよりも先。獰猛な肉食獣の本能。罠へと誘い出したと言ってもよかった。褒美をくれてやる。そう告げられた気がした。本来精悍であるはずの軍人が秘める肉欲。それがほんの少し顔を出したのである。

  「ッむ、ッうぅう!? お"ッッ……!」

  

  油断大敵。今の俺がそうであったのだろう。発せられたのは、殺気とは違う。それとなく似ているのにまるで対極の位置みたく非なるもの。いくらされるがままだったとはいえ、民間人の隙を見逃すほど軍人は耄碌しているはずがなかったのである。好きなだけ泳がせた後は好みのタイミングで、がぶり。|齧《かじ》り付いてくる大口には、まさにそんな擬音が正しいように思えた。事実、飛び込んできた狼獣人の、獰猛で強靭な牙。それは俺の体を噛み千切るのではないか。畏怖しわずかにでも動作を固めてしまうほど、刹那的な威圧感があった。

  「ぅ……ッ、ちゅぅ、ふン……ッ! な、ン……! ッふん、ぢゅう、ぢゅぐ……! ッんううっ」

  「ぐ、んむ……っ! ッはァ……っ、ンぅう……! ……ふゥ、ッく……! ちゅる、じゅぶ……!」

  舌が入り込んでくる。いとも容易く仕向けられた暴力的なキス。即座に潜り込んだ舌は俺の軟口蓋をも触れ、下手に唾を飲もうとすれば噎せてしまいそうになる。頬の裏から喉奥まで、文字通り犯し自らのものとせんとばかりの暴力的な接吻。 絡め取るように、探るように、奪うように。

  抱き締め合った体温に同じか、やや高いこいつの口元。ぬるついて温い、分厚い肉塊。ようやく口火を切った導火線。易々と侵入を許してしまった口内。しとどと絡みついて来させる唾液。紛れもなくコイツからの反撃であった。早々に濡れそぼってしまった唇は拭う隙間すらない。小休止など挟まるはずがない。息継ぎなんざもってのほか。鼻から吸えばいいだろう、そう言わんとせん怒涛の追撃。鬼教官と言われるこいつからの攻め手であるのだから。

  

  役割なぞ関係なく、ただ目前の雄を雌へと突き落とさんとするためだけの口付け。捕食との違いはあたりに血肉が飛び散っていないことだけ。それほどまでに唐突に間合いを詰めてくる狼。舌を突き合わすみたく動きを真似て、呼吸を留めることが唯一とれる手段だった。

  受け身に徹するのみであった狼は、その程度では足りんとでも言いたげに舌の先っぽを。いや、根本までねじ込んでくる勢いでもって突き出してくる。互いが同じ弱点をこれみよがしに晒し上げながら、無防備で殴り合うようだ。やられたら、やられた以上のことを実力で以てやり返してやらねば気が済まぬ男の性分。火の周りに着火剤をバラまくが如く、コイツほまぐわうたび新しい角度から襲いかかってくるのだから、飽きるなど考えられなかった。

  

  「が、ッはァ……! ……っ! はァ!」

  いつもそうだ。激しく求めるようでいて、決して傷つけたりはしない。獲物を狩る猛獣のようでありながら、彼氏ヅラみたくエスコートするようでもある。熱い息を吐きながら唇を押し付け、鼻先が擦れ合う感触。濡れた舌先が唇を舐める湿った音。応えずにはいられなかった。額からは汗が滲み出て顔を濡らす。それでも構わず何度も絡ませあい、繰り返し飲み下す。自らを刻み込むように。甘い陶酔感と僅かな背徳感が、汗と同じく熱に溶け込んではそこかしこに飛び散っていた。

  

  「はァ……ッん、むぐぅうッ!」

  こちらの事情なんてお構いなし。わざとやっているのだろう、息が苦しくなることなんざ。俺が息を継ごうと頭を引き離そうとすれば、こちらの後頭部を押し付け塞がれる。すぐにだ。水のたんまり溜まった容器に頭を掴まれたまま突っ込まれているよう。そこに自由はなく、意志は許されず、抵抗をも叶わない。力で屈服させられる感覚。こいつも俺と同じだ。対峙した雄が、己の手腕で喘ぎ散らかす様を目の当たりにし自身も性的快感を得ているのだ。

  さんざん煽り散らした仕返し。おおかたそんなつもりだろう。これだけのことをされたとて不快感はない。見ていろ、そして感じろ。飢えた野獣はこうやってキスはこうやるのだと、本場での実践を叩き込まれている気にさせられる。それが意味するところは、ただやられているだけの雌に成り下がるつもりはないということであり、中途半端な責めをするつもりならば精も根も搾り取ってやるという宣戦布告に等しい。それはそれとして楽しみだが、のちに勝ち誇ったような顔をしてきそう、そう考えるだけで、反抗心がメラメラと立ち昇ってくる。

  「ンん……っ!? ぐむ……っ! ふゥう……!」

  「……くちゅ、じゅぶ……ッ、んぐ」

  「ぅう……! ンむ、ぢゅる……っ!」

  唾液でべとべとになるのも厭わず。むしろ塗りたくるようにして俺の口内を貪り尽くしていく。余すことなく味わい尽くさんとする貪欲さは、まさしく優位に立つ雄のそれだ。このまま手出ししなければ。俺がケツでチンポを咥えることこそが生きがいの淫売虎であれば。もしもこの俺が蹂躙に悦楽を覚える雌だったらば。とうにびしゃびしゃに濡れた股座を曝け出し手前のチンポをよこしやがれと、さぞかし喘ぎ散らかしていたことだろう。そちらがそのつもりならば、もう容赦してやる理由はない。背に回しつけた指先に力を込める。

  「ん、く……ッ! ンぅう……!」

  「ふゥ、ッぐ……! んむうぅっ」

  だが俺は違う。あいにく雌のように喘ぐこともなければ、ケツに肉棒を突っ込まれて喘ぐ趣味もない。窮鼠猫を噛む行為の前に屈するわけにはいかない。とすればやるべき事はひとつだった。目には目を、歯に歯を。キスにはキスをし返すだけだ。

  「ッ……!? ンん、ふゥう……!」

  舌の根を捕まえてやり返すように絡ませる。唾液が混ざり合うと、くちゅりという音が、より大きく反響したような気がした。竹刀がぶつかるチャンバラさながら。上では湿度の。下では硬度を競う闘いが同時に繰り広げられている。

  「んン……ッ、ふゥう……!」

  「はァ、っふ……っ! ぐちゅる……」

  安易に甘えた挑発をかまそうものなら、こっちが捕まってしまう。歯列、歯茎。いつもならなんともない己の身体であるのに、こうなるといとも簡単に肩が跳ねてしまう。感じやすいというのも困ったものだ。

  「やるじゃねェか、中々キいたぜ」

  

  がっしりと捉えたままの腰、肩に回った腕には力が込められていく。こちらは教官サマを、あちらは俺を持ち上げようとせん勢いで。正面からいくら応戦しようとしたとて、相手は欲情しているといえどお国を守る職務に就く上級軍人。そんなやつに真っ向から立ち向かおうとしたとて隙はない。仮に単純な力比べでこちらが優っているとしても、民間人をねじ伏せる程度の技術ならば当たり前のように持っているはずだ。様子を見ようと下手に身を引けば、すぐさま肉欲の落とし穴に突き落とされる。先に根を上げた方が負けとでもいわんばかりであった。

  「ん、ふゥ……っ! ぐちゅ、む、ふゥ……ッ!」

  「くちゅ、ぐじゅ……ッ! はァあ……!」

  負けじと食らいついて、その分喰らいつかれる。唇を窄めて吸い上げてやる。舌の根を絡めて甘噛みしてやる。俺にだって雄としてのプライドがある。やられっぱなしではいられない。絡み合う。涎。唾液が端から漏れたとて器用に掬い上げ、舌を押し込み呑ませてやる。舌の根からどろりと垂れて喉へ伝っていく感覚。生々しい。唾液を飲み下すたび上下する喉仏を、狼の大きな手のひらが撫でた。触ってすらもいない大砲は、どちらも硬くあれど照準を定めたまま。バキバキに勃起しきって、腹を打つ。その雄々しい姿。突き抜ける感覚はたまったものじゃないだろう。握り締めて擦ってやれば、すぐさま野望は叶う。だが、まだだ。未だコイツは本領を発揮しちゃいない。もっとじっくりと、それでいて火の内側から風を起こし、徐々に大きくしていくみたいに。

  「ンん……ッ! ふゥう……! ぢゅ、るっ……!」

  「ぐ、んむ……ッ!? はァ、あ……」

  「んン……っ! ふ、はァ……ッ!」

  「ぐちゅ、る……! ふゥう……!」

  

  がしっ、と引っ掴んだ狼のデカマラ。根元まで繰り返し垂れ流していたであろう我慢汁のせいで、潤滑油でも塗りたくったのかと思うほど。関節を曲げ握り込む。そこにはなんの上下運動もない。それだけなのに過剰なほど震えあがっては、今にも手中へ突き上げてやりたいと意気込む荒い吐息。せめぎ合っているのが分かった。俺にできるのは、ただその火に向かって油をぶち撒けてやることだけだ。

  「がむしゃらに腰振りやがって……こっちはツガイにハメたくて我慢ならねェってか」

  

  亀頭を手のひらで包み込んでやれば、大袈裟に肩を揺らす教官サマ。それほどまでに快楽に溺れている証拠だった。うるせえとばかりに唇を塞いでやるも、代わりに四肢を暴れさせる力が強くなる。それほどまでにひどく感じているのだ。

  「んむうッ、うぅ……!」

  「はァ……ッ、ふゥ……! ンぐ、ぢゅるぅ……」

  「お"ぉンッ! あァッ、あアぁ……!」

  教官サマの仕上がった筋骨。手のひらに伝わる熱。どくり、どくり。唇を合わせているだけで、漏らしでもしていくように鈴口から溢れ出てくる雄の先走り。ぬちぬちと響く粘着音。どれもが興奮が全速力になるようとめどなく駆り立たされる。

  「ん、ふぅ……ッ! ンんううぅ……! ふゥ、っぐ……!」

  「ちゅる……っ! お"ォ、おオおぉッ! はァ……ッ、ふっ……!」

  鈴口をつつく。溢れ出てくる我慢汁を掬い取りながら亀頭に塗りたくり、ぬち、ぬち、そんな音がするまで。あくまでイくには程遠い力加減で竿をしごいてやる。俺の手から逃げ出そうとするみたいに芯の入ったチンポ。俺から見ても旨そうだ。

  「お"ッ、おォ……っ! んぐゥ、ンむううぅ……!」

  「はァ……ッ、ふゥ……! ンぶ、じゅる……」

  「お"ッ!? お"ォッ! あァッ、あアぁ……!」

  「ぷはァ……ッ、はあ、っはァ……! ……ふぅー……! ふゥう……!」

  もう少しでコイツの理性をぶっ壊せる。少し背中を押してやるだけだ。声を抑え殺すことすら出来なくなった教官サマ。いまや猿轡を噛ませていたとしても千切ってしまうほどに力を込めて食いしばっているようだが、的確に性感帯をつけ狙われるとピンと手足を硬直させては緩めてを繰り返している。

  「お"ォ……ッ! んぐ、ンううぅ……!」

  「はァ、っふ……! ぢゅる、ちゅぷぅ……」

  「お"ぉッ!? お"ォオっ! んむううゥ……っ!」

  わずかに媚びるような声。そしてチンポの脈動が物語っている。もう限界が近いのだと。もう少しでコイツは堕ちる。ありもしないケツへとザーメンをぶち撒けるためだけに、理性をかなぐり捨てただでさえデカい太マラをさらに大きくしていやがるのだ。

  

  「……なァ、このギンギンになったチンポで、ツガイのケツマンコ、掘り倒してやってンだよなァ……!」

  「ん"ゔぅう……ッ! あァあ……! お"ォお……! やッ、やめろッ、お"おぉおッッ……!」

  「マンコにぶち込んでよォ……どっぷり中出しして、ガキこさえようとしたンだろうが。ド助平教官が、あァ?」

  「はァッ、はアぁ……! お"ぉおお……ッ! あァあ……!」

  再び口を塞げば、こちらも舌をねじ込むだけでは済まさない。さながら蛇の交尾。ねっとりと、それでいて激しく。舌の根をも舐め尽くさんとする勢いでやってやる。持ち主は口では拒みながらも、胸を弄られ続けるうち腰を振りたくって悦んでいる。俺の腹を雄膣かなんかだと思い込んでいるような素振りだ。叫ぶほどの悦楽。嫌ならば振り払いでもすればいいのに、そうしない。挙句、俺の頭に手まで回して引き寄せながら唇を求める始末だ。壊して欲しいとでも強請る仕草。そうまでされては、与えてやらねば雄が廃る。

  「んじゅる、っぐ……! あァ……ッ! お"おォ……!」

  「はァ……ッ! はァッ、ああぁ……! 久々のケツマンは良かったかァ……? このデカマラにぐちょぐちょに絡みついて、タネ欲しがりやがるンだろ……なァ」

  「お"ォおお……ッ!ちゅる、じゅる……っ! ッんむ、ぐぷ……! ンふゥう……! お"ォおッ……! おああぁ……ッ! あァア……!」

  

  「まさかそんなヤツが、チンポシゴかれたぐれぇでアンアン鳴くわきゃあ無ェよなあ……! おら、おらおらおらァ……!」

  「お"ッ、ンおォ……! あァ……あァあ……!」

  「へへ……っ! 殴るたびにビクついていやがるぜ。そんなにチンポがイイのか、ええ?」

  「はァッ、はアぁッ……! お"ぉおお……っ!」

  「夜通しヒィヒィ言わせてやったんだろう。ケツも口もチンポで栓して、何発も何発もッ! 抜かずの種付けしまくったんだろうがッ!? どうなんだ、おいッ!」

  瞳を閉じることすら逃げのように感じられたから、豪勢な肉に齧りつくみたく強欲に。さながら口淫のようにまとわりつかせて、わざと下品に音を立てて吸い込んで。火花が散りつくほど壮絶な睨み合う。盛大に激しい口付け。滝のように汗が流れ鼻先を濡らす。勢い余って対面に降り掛かろうが、掛けられようが関係ない。口元が唾液で泡立とうとも構わない。

  

  ぐちゅぐちゅ。ぬちゅ、ちゅば、じゅるるる、ぐじゅ。

  

  水音。犯されているのは俺なのか、それともコイツなのか、それすらも曖昧になっていく。鼻息がかかる。吐息でさえも愛おしい。興奮が分かち合えるから。いっそのこと敗れてしまってもいい。ときたま考えてしまうのだ。コイツに煽りの限りをぶつけられて、畜生と喚きながら天高く雄汁を吐き出す。いつもコイツへ仕掛けるチンポへの痛ぶりを、そっくりそのままやり返され小一時間寸止めを強いられる。どうせ膨大な快楽は約束されているのだから。

  「ッ、ん……ふゥう……!」

  「くちゅ、じゅる……っ! はァ、はァ……」

  

  「ぶはッ! はぁ、はぁ……ッ、へへ……やっぱり野郎同士の交尾はこうじゃなくちゃなァ」

  「ふゥ……ッ、はァ……っ! キスごときで図に乗るなよ……っ!」

  「言うじゃねェか。こっからは、せいぜいトばんように踏ん張っとけや……まあ、トんでも止めはしねェが」

  火をつけ続けることを忘れないマメな態度が、そうやって俺を雄へと戻す。

  今度は俺が、コイツの口を汚す。べっとりと濡れた頬へ、そして唇へと舌を這わせてやる。味蕾に染み渡る塩気は湯のせいだけではない。唾液で薄まったそれを舐め取ってごくりと呑み下し、改めてこちらから立ち向かっていく。その裏からはケツたぶを撫でつけながら。

  「お"おおォ、エロいじゃねえか。っン……ッはァ……っ! くちゅ、る……! んぐゥう……! ふゥ、ッぐ……!」

  「お"ォ……ッ! が、あァああ!」

  「ぶはッ、くちゅ……っ! んンぅう……!」

  デカくて厚くて硬い尻。鷲掴みに揉みしだく。その最中も嵐みたく激しい接吻は鳴り止まない。俺の口周りが涎でべとつくのと同じように、コイツの口元もすっかり唾液まみれになったとて、し続ける理由にはなっても止めることにはどうしても繋がらない。強引に交尾しようと迫ることとは違う、あくまでも合意の上で。その上でいつ戦況がひっくり返ってもおかしくのない展開に胸が熱くなるのだ。受けるのも悪くはないが、やはりチンポにクるのは攻めに限る。

  

  「ッはァ……、ッは、おら……もっと舌出せや、たっぷり絡めてやっからよォ……んぢゅぅ、れろぉっ」

  「ンむ……っ! んふゥう……! ちゅる、じゅるぅ……おお"ッ、はあ……っ! はぁ……! ふゥ……ッぬうぅっ! お"おおッ!」

  「ん"うぅッ! おッ、おゥう"んっ、おいッ、ケツがぶるぶる震えてやがるじゃねぇかッ、ぢゅ、ゔぅ……っ、ぢゅ……」

  キスは興奮の中枢たる部分を乳繰り合う行為だ。目の前にいる雄と抱き合って、しゃぶって、イッてイかせて。それら一連を今から行うのだぞと頭ン中に叩き込んでいくために必要な過程だ。雄らしく雄叫びをあげて果てる。チンポから夥しい量の精液を、雄汁を。がに股に開かせた脚の間に聳り立つ山からだらしなく吐き出させる。刹那にも近い快楽の瞬間を何倍にも、幾度も愉しませるためだけに、執拗とも言えるほどしつこく味わい、喘ぎ悶えさせ。金玉からは続々と孕ませ汁を生み出して貰わねばならない。こちらからできることはほんの一助なのだけれど、享受することでしか得られない快楽も確かに存在する。

  「ケツじゃなくてマンコだったかァ……? 交尾想像して、濡らしたりしてンじゃねェだろうな、おい」

  「はァ……っ、んぐ、ッく……! ふぅ、ぅう……! ンむ、ちゅる……っ」

  舌に纏わりつく表面をなすり付け、こそぎ落としてやれば、負けじと俺の舌を嬲ってくる。否定、反抗。足して割った態度が堪らなく良い。どちらがチンポを突っ込むだの受け入れるだのといった趣向に関係なく、ねじ伏せたほうが全ての主導を握ることができる。そんなとち狂ってありもしないルール。そんな感覚が闘争本能をこれでもかとくすぐり、|弄《まさぐり》りあいにも熱が入る。

  鈍痛にも近い、触ってくれと主張を繰り返すチンポ。全力疾走をしても切れることのないはずである教官サマの呼吸は、いとも簡単に荒げている。今の俺と同じくらいに。筋肉を掴む握力はしがみつくをとうに超え、引っ掴み爪が食い込もうとせん勢いだ。俺もつねられても痛みを感じる余裕はなどない。そんなことよりも、筋張って鋼のように強張る肉体。それに伴って密着と、わずかな隙間を生み出しては埋め尽くす、その繰り返し。腹の間で勃起したチンポ同士がぶつかるのみで、ぬるぬるとした肌触りは汗水とは違い落ちていくことはなくその面積を広げていくだけ。つまらない日常では起こり得ないことだ。

  「はァ……ッ、ふゥ……! んちゅる、ぢゅるぅ……!」

  「ンふぅ! ぐ、っむ……! くちゅ、じゅぷ……!」

  紡がれた銀糸はやがて途切れ、落ち、黒に塗れて消える。一瞥すらくれることもなくまた貪り合って。盛りのついた獣でないとしなら、なんと言い表せば良いだろう。影でさえもみくちゃになって分からぬかも知れぬというのに、肌で感じる熱の在りどころは手に取るように明白だった。

  「ああ"あぁっ、堪らん……。ちゅばッ……! もっと、寄越せ……ッふ、んンンう!」

  「おォ、堕ちるのが随分と早ぇンじゃねェのか、おい……ッ、まだ余裕あンだろうが……! じゅる……!」

  「ぢゅ……焦らすからだろうが……! うッお"おッ!」

  

  誘い込んできた雄の様子、その変化は見逃さない。こいつが俺にしてきたことを、色をつけて返してやらねばならないのだから。だから些細なことでも執拗に責め立ててやらなければならない。

  「ンむ……っ! くちゅ、ふゥう……!」

  「はァ……ッ、ぐちゅる……! んン……ッ! れろ、じゅぶ……っ! はァ、あ……」

  「よォし……ケツ向けろや」

  

  大量の水分に塗れてひたひたに濡れた狼の背中。その腰には俺のチンポが捌け口を求めて彷徨っている。つん、つん。当たる尻たぶ。指なんかではないことくらい、こいつにも分かっているだろう。こうまでしてもなお、俺の求める場所はそこではない。期待をさせるだけさせておいて、それ以上の色をつけて落とす。ぐいっと引き上げた奴の耳元で、ただ疑問をぶつけてやるだけの。おおかた、これからチンポを突っ込まれるのだと期待しているのだろう。前後する腰は逃げようとしているのではなく、肉同士の接合から成る交尾をせがんでいるように見えたからだ。

  

  「なあ……最後にツガイとしけこんだ日は、何発ヤッたンだ」

  「そんなもの、いちいち覚えてなど……ッ! ッん"っ、おお"おッ……、ふンンッ、んぐッ!」

  たわわに実った豊満すぎる二房。刃をものともしないほど硬く強靭でありながら、もっちりと吸い付くような肉付き。相反した属性を兼ね備えていながら、押し込まれた指を弾力に富んでいる。俺の持ち物とは似ていながら、まるで成分が違う魅力的なエモノ。ぷっくりと膨れた乳輪とその周囲。指先で撫でつけ、やがて頂点に位置する点を、ひょい。

  「いいじゃねぇか、減るモンじゃねえしよ」

  「ふ、ンンうッ、ッは、ッはァ……」

  「どうなんだよ、覚えてねェほどがっつりまぐわったってか、あァ?」

  「くそッ、おぉおっ、揉む、なッ……!」

  「孕ませるぐれェ、どっぷりマンコに種付けてやったんだろう、このデカマラでよォ……!」

  首を無理な角度に回してやっているというのに、さして苦しそうな素振りはしない。それどころではないのだろう。唸る喉奥に重低音。柔らかな弾力で潰される感覚は、何度経験しても飽きることを知らない。欲深くなっていくように感じるくせして、やっていることは口と口が重なるだけの単純な接触の繰り返し。合わさって吸う、それだけに留まるはずもない動き。

  違うのは、無理くり傾けさせたコイツの横顔があることくらい。変わらず口の中を。頬の裏側を。犬歯から奥、戻って前歯。飴玉を転がすなんかよりもったりと、上下左右をなぞる。寒気にひどく似た、背筋に走る電流。一度味を知ってから病み付きになってしまった。コイツに特別な相手が出来ようと、そんなことは関係ない。ただの止められない欲望であった。罪な男だ。

  「おォら……、はァ……ッ! ン、んぐ……っ」

  「ふゥ、う"ぅ……! おォお……ッ!」

  「おおォ、イイ顔になってきたじゃねェか」

  「く、あァ……!」

  「おら、下向いてみな……。おぉ、先っぽから涙流してやがる」

  じたばたと脚を暴れさせる無惨な姿。コイツが組み敷かれいいようにされている。大股を開き、前屈みになろうとする重心さえ引っ張られ、挙句には乳首を好き勝手に弾かれチンポから涙を流している。前後、左右に乱れているケツ。種を植え付けることに張り切り、反り勃つ俺のチンポ。がしがしと尻に当たっては離れる繰り返しを、先に進めることなく、堪えず。幾度も味わったコイツの尻の奥。こいつが汚く喘ぎ散らかすたび、その感触が過去の思い出となって蘇る。ブチ込みてェ、掻き回して、突きまくってやりてぇ。もう少し。

  

  「は、あッ……! くそ……ッ、揉むんじゃ、ねえ……!」

  「あんだけ調子こいておきながら、すんなり負けちまうッてのか。教官サマってのも、案外大したことねェンだな」

  あと少し。

  と思ったが、ヤメだ。

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  サンプル版はここまでとなります。

  4/19(日)関西けもケット11

  M-58 World Wide Wild

  にて、お待ちしております。