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ブイブイランド 上

  ここはブイブイランド。

  とある業界の大物とのコネがなければ行くことはおろかまず存在を知ることすら出来ない秘密の施設。

  しかしここで行われているのは名前のような可愛らしいことではない。

  世間では可愛らしい表情や仕草、もふもふの身体でトレーナーから愛され、人からの庇護を得てぬくぬくと育っているイーブイだが、このブイブイランドにおいてのイーブイの扱いはそうではなかった。

  これはブイブイランドへと足を踏み入れたとある若手実業家の男性の幸福な時間の話だ。

  ________

  [newpage]

  ついにやってきた、この日が。

  ポケモントレーナーになって早20年。

  ポケモン用のケアアイテムの製造業に着手して10年。

  ポケモンへの愛ももちろんだが、私がここまで上り詰めたのはこの施設に招かれるためだった。

  ブイブイランド……その可愛らしい響きからは想像できないような耽美な体験が私を待っている。

  「はねはねぇー♪」

  「ルっ!♪」

  「はっぴぃ〜♪」

  「ぱもっ!!」

  普段はたくさんの愛らしいポケモンに囲まれ過ごしている。

  可愛らしくぴょこぴょこと飛び跳ねるハネッコとじゃれ合い、

  マリルを撫でくりまわし、すこし抱きしめるにはデカいであろうハピナスに抱きつき、パモの鳴き声にこれでもかと相槌を打つ。

  自立した成人男性が赤ちゃん言葉でポケモンに擦り寄りへりくだりデレまくる。その態度に嘘も偽りもない。

  世間からは"ポケモンを愛する為に生まれた社長"と呼ばれている。

  こんなに可愛いポケモン達に私は真っ直ぐな愛を注いでいる。心の底から愛しているし、この子達が泣いている姿は見たくない。

  きっとずる賢さや自身の可愛さに驕りが無いからだろう。

  しかし私はどうにもイーブイを純粋に愛することが出来ない。

  可愛いの象徴といえばイーブイだ。自分は愛されて当然と言う顔で腹を見せ、人間の寵愛を当たり前のように受ける。

  あからさまなあざとさが、可愛さと憎たらしさが同居するこのイーブイと言う生き物を蹴飛ばしたい、殴りたい、恐怖のどん底に突き落として泣いて縋っても酷い目に合わせ続けたい。

  そんな欲求に秘密裏に駆られながら生きてきたのだ。

  私を招いたのは大手ポケモン用おもちゃメーカーの社長、

  武威虐 好美(ぶいぎゃく このみ)さん。

  若くして成り上がり、女性ながらに社長という立場で指揮を執るカントーベンチャー企業の先頭にいる人物。

  その人脈と人を見る目を活かし、こうして獣害を起こして農村部を困らせるイーブイにキュートアグレッションをぶつける場を提供し、嗜虐心を燻らせる権力者をこうしてブイブイランドに誘っているのだとか。

  彼女本人もまた、家ではドンカラスに赤ちゃん言葉でへりくだり、ワルビアルの甘噛みに出血しながら歓喜し、グラエナを撫で回しているのだとか。

  まあ説明も程々にしよう。

  ブイブイランドの内装はとても明るく、さながら遊園地の様だ。

  相棒のゴロンダもヤンチャムの頃の面影をチラつかせながらわくわく、どきどき、と言った感じだろうか

  まあ内装ってよりかは、これからイーブイをいたぶることへの興奮だろうが。さすがかくとうタイプ。ノーマルに厳しいね。

  ゴロンダも家では育て親も同然のハピナスに頭が上がらないと言った感じになりつつ、マリルやハネッコにデレデレしているが、

  本来は暴れるのが好きな気質なのだろう。

  ボールから出んばかりの勢いだ。

  さて、お楽しみといこう。

  あ、そうだ。ブイブイランドの主たる好美さんとどうやって知り合ったかっていうとだね、ヤンチャムの進化を手伝ってもらう体でだね…おしとやかなんだけどああ見えてあくタイプのエキスパートで、これがギャップ萌えってやつかな〜なんて…は?聞いてない?あ、そう…

  まず入口近くにあるのはイーブイクレーンゲームなるものだ。

  うっひゃ〜…ちらほらパーティーで見たような顔やポケモン愛護系の政党の政治家もいるぞ……みんな闇が深いなあ……。

  このクレーンゲームは1回100円。客は皆上級国民だってのに料金は相場だ。好美さんの良心に私は少しときめいた。

  ずらりと並んだクレーンゲームの台。中にはイーブイが詰め込まれている。そして空気穴用か?ポツポツと空いた穴からはイーブイの鳴き声が聞こえる。

  しかし俺のこうげきは下がらない!!

  俺は手前の台をとりあえずやってみることにした。

  中には暴れないようにしっかり紐で縛られたリーフィアと、少し布に包まれるくらいの緩い拘束のイーブイ。

  説明書きには

  『親子のリーフィアとイーブイです。どちらもこうげき、とくぼうの値を下げております。キズが付いてもすぐ対応いたします。個体の変更等は従業員まで。』

  と書かれている。

  後々デカいイーブイの方がやりがいがあるので、

  奥で吊るされたイーブイを従業員に取ってもらう。

  「すみません、あの上の段のデカいの取ってもらってもいいですか?」

  「少々お待ちくださいね〜」

  扉を開けて出ていたイーブイを紐で縛り付け、デカいのと場所を交換させる。

  さっきまでふわふわの布に包まれ横になっていたイーブイはきゅいきゅいと文句を垂れている。

  「新人?新ポケ?だからクレーンゲームの仕様知らないんですよね〜笑」

  と従業員は笑う。

  「こちらメスですがよろしいですか〜?」

  「大丈夫です」

  「かしこまりました〜」

  デカいーブイはこの箱で何が行われるのか知っているらしく抵抗する。

  「暴れんじゃねえよ畜生共。"おにいちゃん"みたいにされたくないだろ?」

  従業員がイーブイを両手で掴んで脅すと大人しくなったみたいだが、「暴れそうなのでキツめに縛っておきますね〜」とアシストをしてくれた。

  「きゅぅううう……」

  デカいーブイが苦しそうに悲鳴をあげれば

  「りふぃいいい!!!」

  とリーフィアが唸る。

  俺は100円玉を20個突っ込みゲームを始めた。

  イーブイがやけに怯えてると思ったらゴロンダがボールから出てやがる。このやんちゃ坊主めっ!あとでちゅっちゅの刑だぞ!

  アームがイーブイに伸びる。

  そのままイーブイを持ち上げるが上に行くタイミングで落ちてしまった。

  よくあるキラキラの石の上にイーブイが落ちる。

  「ぃぶッ……」

  イーブイが細く鳴く。

  もう一度掴む、落ちる。

  この繰り返しでイーブイは衰弱していった。

  リーフィアはもぞもぞと子に寄ろうとするが数ミリズレるだけで全く動けていない。ウケる。

  アームが滑り、イーブイの耳だけを掴む形で持ち上げてしまった!

  「いぶぁああああ゛ッ!!いぃぶ!いぃぃぶッ!!」

  耳が少しちぎれかけ、縁から血が滴る。

  しかし失敗だ…また落ちてしまった。

  「りぃぃぃぃぃッ!!!!」

  よくもウチの子に、とリーフィアが俺を詰るように鳴く

  うるさいぞーと私は呟きながらアームをリーフィアに定める。

  狙い通り首にくい込んだアームはそのままリーフィアを持ち上げる。

  そのまま爪にくい込んだ首を必死に捩るリーフィア。

  しかしこの台、なかなかに天井が高い。

  イーブイをできるだけ痛めつけようというホスピタリティだろうか。

  人間は首が絞まっても1分はもがけるだろうが、この小さな生き物の肺の大きさはたかがしれているので、十数秒すれば勝手に苦しみ始める。

  「ぐぎゅ…ッ……りぃい゛ッ………ヒューー、…ヒューー、、、」

  首吊り状態になって可哀想だ。思ってないけど。

  そのまま落とされたリーフィアは目に見えてぐったりしていた。

  あ、胸元の草?毛?がちぎれてる。

  まあいいか、治せるって書いてあったし。

  しかしなかなか取れない…

  「お手伝いしますかー?」

  おお、クレーンゲームあるあるだ

  『よろしくお願いします』

  店員さんはイーブイを穴の近くに動かす。

  景品が落ちる穴の周りには高さ5cmほどの壁?がある。

  その壁の上にイーブイを置き、イーブイがちょうど穴の底をのぞきこめるくらいにする。大サービスだ、さすが金持ち直営。

  「りぃっ!りぃぃぃ!!」

  「ぶ、ぶい〜…」

  イーブイとリーフィアは取らないで!と言わんばかりにこちらに媚びた鳴き声をとばす。

  かわいいなあ。

  追加で100円を入れる。

  持ち上げられたイーブイは何度も落とされ続け、もはや抵抗できないようだ。

  ナゾノクサにも縋るような瞳でみてくる。イラつく。

  ウィィーーーーーーン……ポト…

  イーブイはすんでのところで片手で鉄の出っ張りを掴み、GETをまぬがれたようだ。

  リーフィアはミミズズのように(ミミズズに失礼だが)無様に這ってイーブイのところに近づいた。

  どうやら助けようとしているらしい。

  「りぃ!りふぃッ!!(今助けるからね!ベビちゃん!)」

  「ぶい!!いーぶ!いーぶ!(落ちちゃうよー!助けてママ!)」

  リーフィアがイーブイに触れられるところまでやってきた。

  しかし手足の奪われたリーフィアにできることはない。

  それでも耳を咥えて引っ張ろうとしたのだろう、リーフィアの顔がイーブイを捉え___なかった。

  リーフィアの鼻がイーブイの片手にぶつかり、その弾みでイーブイはGETされてしまった。

  「ぎゅあああああああああッッ!!!」

  「り゛っふぃ゛ぃぃぃぃッッッッ!!!!!」

  こともあろうに、リーフィアは自らの手で娘を突き落としたのだ

  プルプル震えるデカメスイーブイちゃんをご自由にお取りくださいと書かれた箱に入った捕獲ボールで捕まえる。

  これで正真正銘私のものだ。

  目を見開いて固まったままのリーフィアに

  『最後の一手をありがとう、リーフィア。リーフィアのおかげだよ、』

  とお礼をして私はリーフィアの悲鳴を背に次のブースへ移動した。

  [newpage]

  いやしかし、メルヘンチックな色調やデザインとは裏腹にそこかしこからイーブイらの悲鳴が聞こえてくるな

  そういう嗜好がない人から見たら地獄絵図だろう

  次に向かったのはブイ掬い。

  1m程の深さの桶に入っているのは小さいサイズのイーブイや、幼い状態で進化させられた進化系たち。どの個体もあどけない顔をしていてかわいい。

  ちなみに掬うとは名ばかりで釣竿を垂らしてイーブイ達をくっつけて引き上げる仕組みだ。

  取った数で景品が変わるらしい。

  制限時間は2分。

  10匹でオシャボセットが貰えるのか…目標はこれかな

  釣竿の先には強力なマジックテープの表面のような突起がついている

  なるほど、これを首のファーにくっつければいいのか

  進化系には首のファーに似た首輪が付いている

  幼体とはいえ獣だ、重量‪もないことはないし気合い入れていくか

  おれは釣竿を振り下ろした

  「ぶっ……ぶいぃ……」

  さっそくかかったぞ。

  持ち上げるとじたばたと抵抗するがなんてことはない。

  手に取って桶にリリースする。

  「いぎぃぃぃぃぃッ!!!!!!!」

  ビリリッと音を立ててマジックテープが取れる。

  強力にすることでイーブイが弱り、より痛めつけられるのか。

  なるほど、よく考えられている……のか?

  計測係のスタッフがカウンターをカチリと1回押す。

  要領は掴めたからな。久々に本気を出そう。

  釣り上げる「ぶっ!」

  はがす「きゅあああああああ!!」

  投げてリリース「ぐぎッ……」

  釣り上げる「ぶらぁ!?」

  はがす「ぅぎゃ!!」

  投げてリリース「…………(ひんし)」

  スタッフから静止の合図がある。

  結果は12匹。中々上出来ではないだろうか。

  なかなか面白いものも見られた。

  激しく抵抗する中で

  首のもこもこが一気に抜け、痛みとショックで失禁するイーブイ、

  釣り上げられた仲間を助けようとリボンを巻き付けたことで

  逆に絞め殺してしまったニンフィア、

  きゅいきゅいと媚びた声で鳴き、飼いポケとなることで窮地を脱しようとするイーブイ、

  隣のお客さんはお得意のとけるで逃げようとしたシャワーズに

  デンリュウのかみなりパンチを炸裂させて間違えて死なせてしまっていた。

  ちなみに死んだブイズはスタッフポケモンの賄いになるらしい。

  私は参加賞の出来たてイーブイの尻尾キーホルダーと、

  景品のムーンボールを持ってほくほくだ。

  いくら金があってもこういった類のボールは貴重なのだ。

  その場で尻尾を奪われたイーブイの叫びも良かったなあ。

  [newpage]

  お次のコーナーはイーブイストラックアウトだ。

  ルールは簡単で、イーブイを投げて3×3の的にぶつけるだけ。

  1〜9までの数字が書いてある的にイーブイが当たると、的部分の板が後ろに倒れ、イーブイが後ろにあるスペースに落ちるという訳だ。

  レーンの横のカゴにイーブイが詰められているが、皆一様に怯えきっており、掴むふりをして手を伸ばすと我先にとカゴの奥に潜ろうとしている。

  これが案外ツボにはまるゲームで、

  モードは二種類。

  ひとつは希望を失ってもなお回復され続ける地獄を味わい、

  抵抗しなくなったイーブイ。これのネックは重さとなよなよしたウザさだけだ。

  もうひとつは先程まで甘やかされて育ち、苦しむことなどなかった新品のイーブイ。これは重さに比べて抵抗したり、動いたりするので軌道がズレやすい。

  説明書きにはポケモン向けと書いてあるが、

  どちらも技を打つなりして弱らせるのが正攻法らしい。

  こうして新品のイーブイが絶望イーブイに代わり、廃ポケになったら食されるという訳だ。

  私はここぞとばかりにゴロンダを出した。

  私はブイ掬いで疲れたので見守るだけにした。

  もちろんモードは難しい方だ。

  私の相棒ならこれでも簡単なはず。

  「きゅわ!きゅわ!!!」

  ゴロンダが渡されたのは生意気そうな新品イーブイ。

  ゴロンダはグロウパンチを放った。

  インファイトやきあいパンチも使えるのだが、なるほどその方が楽しめるということか。こいつらしい。

  手数は5回までだ、精一杯楽しんでくれ。

  まず小手調べと言った具合に軽くイーブイを投げる。

  真ん中に投げたはずだが暴れる事で逸れ、床に落ちてしまった。

  1、2回バウンドした後浅く呼吸をしている。

  スタッフのエーフィが「えふぃぃ…」と力なく鳴いて重体のイーブイを念力でどかす。目が死んでていいね!

  ボールの中のデカメスイーブイがより激しく鳴く。

  このエーフィちゃんはお兄ちゃんなのかも?

  さて2回目。

  さっきグロウパンチを打ったので攻撃が上がっている。

  そのまま抵抗するイーブイを力いっぱい投げた。

  ゴキッ、と軽妙な音を立てて左下の板にぶつかる。

  あーあー打ち付けられたイーブイは死んでしまった。

  攻撃に努力値を振っているからな。よくある事だ。

  ゴロンダも久々にイーブイを殺害できて心なしか活き活きしている。

  3回目。

  せっかく左下が空いたのでビンゴを狙いたい。

  ゴロンダも同じことを思ったのだろう。

  しっかり暴れるイーブイにインファイトを決める。

  「ぶ、ぶぃぃぃ…」

  かろうじて生きているイーブイをそのまま投げた!

  すごい!見事に先程の上の板が落ちた!

  勢い余ってイーブイも穴の向こう側に落ちたが……

  あっ…マルノームとベトベターがいる。

  イーブイの首にベトベターの手が回って……イーブイの足がバタつくのが見えたあと、窒息したのか動かなくなった。

  ベトベターは〆てから食う派なんだなあ。

  向こう側に落ちると問答無用で食われるのか。

  極めてなにか生命に対する侮辱を感じる。ほんとに今更だな。

  4回目。

  3回目と同じ。割愛。

  5回目。

  1ビンゴを達成したので好きにしていいかとゴロンダに聞かれたので迷わずゴーサインを出す。

  ゴロンダはイーブイの後ろ足を掴み、イーブイの胴を床に叩きつけた。背骨が折れたのか痙攣するイーブイ。

  「いっ、いぶぶぶ、ぶぶっ、ぶ……」

  もはや技でもなんでもないが…ルール的には投げる前に死んでなければいいらしい。意外と自由度高いんだな。

  「ぶやあぁ……」

  無駄な抵抗を無くすために耳としっぽをもぎる。

  ちなみに持ち帰りOKだ。太っ腹だね。

  素早くイーブイをぶん投げたゴロンダ。

  こともあろうに、そのイーブイが的に当たった衝撃で穴が2つも空いた。3ビンゴだ。

  スタッフがベルを鳴らし、辺りからは拍手が聞こえる。

  ゴロンダも嬉しそう。

  イーブイはミンチになったが気にしない。

  エーフィが吐いているが、気にしない!!

  スタッフも想定外だったらしく、困らせてしまった……

  結局、ビンゴ景品のイーブイを模したベイビィポケモン用のぬいぐるみと、追加で食券を貰ってしまった。

  それはそうだ、5手しかないのに3ビンゴだもんなあ。

  嬉しい誤算だった。

  確かにそろそろお腹がすいたな。

  お昼前だが、そろそろフードコートに行ってみようか。

  ゴロンダはイーブイのぬいぐるみを手の筋トレグッズのようににぎにぎしている。握る度にパリパリと音がして、これならベイビィポケモンも喜びそうだ。

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