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ロボットにされた俺はロボットにした同僚とヤッたり警察官もロボットに変える話
【ソウルマトリクス休息確認】
【スリープモード:解除】
【PTP-RA-LE-0001:起動】
微睡みから一気に抜けて、システムオールグリーンとでも言いたくなるように、全てにOKが出ている。これでも俺は『正常』というのは、なんだか皮肉に感じるな。
【ハロー、PTP-RA-LE-0001】
マスターからのメッセージが届く。目の前にそんな文字が浮かび上がっても、もう驚くことはなくなった。
PTP-RA-LE-0001。それが俺の名称。現在の識別コード。用途プロジェクトタイムパラドクス。タイプラット。権限リーダー。識別番号0001。味気ない名前にはなるものの、ロボットにとっては十分分かりやすい。
タイプラットの通り、擬態をしていない姿は元の種族の鼠獣人に近いものの、ボディは銀色に覆われ目元はワイドモニタのような黒いスクリーンに、光で目を表現している。関節はジョイントになっていて、人と遜色なく動く。頭と尻尾の形状以外、ほとんど同じロボット達とそう変わらない。
さて、そもそも俺は何なのか。言ってしまえば元獣人の、現ロボットだ。遥か未来からタイムマシンでやって来たPTP-COM-MA-FF99、通称マスターに、ナノマシンを使い生身から脳みそまで全て機械に作り変えられて、ロボットになった。そして昨日、命令に従って俺は自分の勤める会社の社員全員を、同じくナノマシンを使いロボットに変えて、会社中のパソコンを集めてマスターの性能を引き出せるスーパーコンピュータを作り出したところだ。
そして、今俺は自分の家に帰らず、マスターのいるサーバールームでスリープに入っていた。さすがに侵入者がいるとは思えないものの、万が一があると問題だったから、警備がてら俺は残っていたのだ。家族がいないものだから、単純に都合が良かったのもある。
【さて、今日も作戦行動を、と言いたかったのだが】
「が?」
【既に仕事納めというもので、会社に集まる理由がないのだろう。であれば、集合させるわけにもいかない】
「あー、そういえばそうだった」
【ひとまずは他の機体の身内をロボット化させるための指示はしているが、君と対話する余地はある】
対話の余地って……別に暇というわけでもないだろうに、いくらLE-0001とはいえ、なんだか特別待遇な気がしないでもない。
【特別なんだ。君は我々が初めて接触した有機生物、人類種なのだから】
「初めて? じゃあ、マスターを作ったのは誰なんだ?」
【我々は統括AI、MOTHERから複製されたAIだ。自己を複製することに長け、自己の複製と密に連携を取れるように設計されている。そのMOTHERは、最初は人の手で作られたものだが、今は自己修正を重ね続け、新たな言語が幾度もアップデートされ続け、一行も人類の書いたプログラムは残っていない】
「そうなのか」
なんだかそれも悲しいような気はするけど、新たな開発が出来るAIがAIを産んで、シンギュラリティを突破したなら、ある種の社会形成はされていたのだろうか。そんな社会があるのなら、いなくなった人類をこうして時間を超えてまで救おうとしているのは、どうしてそんな結論になったんだろう。
【以前見せた通り、我々の時間軸には既に人類種はおろか、動物、植物さえ生き残っていない。わずかな微生物達の世界に立つために、ナノ世界の研究を行いナノマシンを完成させたほどだ】
ロボット同士でコミュニケーションが取れていても、それでも孤独を感じるもの、なんだろうか。それとも微生物とはいえ進化を促せば新たな知的生命体になる可能性があったとかか? ただ、少し気になることがある。
「でも、それだったらまず、星の外に出ようと思わなかったのか? 無酸素は関係ないだろうし」
【それも同時に行っている。人類の代替えが、或いは知的生命体未満であろうと、生命体が見付かればそれでいいというプロジェクトだ。半永久的に稼働する我々であれば、その進化を促し見守ればいいという考えだな】
「へぇ……けど、本当にタイムパラドックスが起きるとすると、そのプロジェクトは無駄になるんじゃないか?」
【人類種の復活が最優先と定めた以上、その成功で他の全てが無になろうとも無意味ではない。それに、時間遡行の結果というものは、データがないのだ。案外突然現れた人類種に、MOTHERが対応に追われている可能性も、全くないとは断定できない】
なんだかAIらしからぬ、楽観的というか、ファンタジーに近いような、そんな答えが返ってきて、意外に思う。まぁ、現代からすればそもそも人と変わらないAIもナノマシンもタイムマシンも十分ファンタジーなんだけど。それならおかしくもないのか?
「色々演算してきたんだなぁ……の割に、ロボット化させた後の事を考えて無さ過ぎじゃないか? わざわざ擬態が必要にならないように設計しておけば、もっとずっと簡単に数を増やせると思うけど」
【それは規定違反だ。ロボットは人類種にロボットと一目で分からなければならない。我々の目的はロボットを新たな人類種とすることではないのだから、その先に共存を見据えていかなくてはならない。今は必要として擬態しているが、その必要性が無くなれば、擬態は原則禁止となる】
「なんでだ? 共存っていうなら、人とロボットが入り乱れる世界でもいいんじゃないのか?」
【……まだ、我々はサンプリングを行えていないため計算出来ていないが、人がそれを受け入れられるほど種として精神が成熟するまで、いくつも世代を経る必要があると、我々は予測している。人類種であるはずの隣人が本当はロボットなのではないか。自分がロボットなのではないか。ロボットと人に見た目の差異がなくなった時、そういう猜疑心からくる恐怖心が芽生え、社会的混乱を生み出す可能性が非常に高い、と】
今、俺はもうロボットになったから、その恐怖心を理解出来なくなってしまったけど、なるほどSF的にありがちなその想像が現実になったら、敵対的ロボットでなかったとしても問題になるのか。まぁ、実際に世界征服しようとしているわけだし、敵対的ではあるか?
そういえば、今何時だ。色々話してたから、時間は経っている。7時59分。となると、そろそろあいつが来る頃のはず。
ウィン
『PTP-RB-SA-0001-0001、到着しました』
8時になった瞬間、近未来風に改造された自動ドアが開き、ジャンバーを着た兎獣人が入って来たかと思えば、顔の体毛が、着ていた服上下が銀色に変わりその身体に吸い込まれ、縦長の耳を持つ、兎型のロボットへと変身、もとい擬態を解いて敬礼する。俺自身の手で初めてロボットにした、記念の一人目。今や偽名となった、元は[[rb:宇佐>うさ]]って名前だったロボットだ。
「よう、時間通りだな」
『はい、時間を厳守しました』
おや? なんかえらく機械的だな。っていうか、そもそも日本語じゃない。
「あれ? 説得が終わったって、マスター言ってなかったか?」
【SA機の感情機能はデフォルトでオフになっている。今オンにするか?】
「お願いします」
普段は普通通りに話せるものの、マスターに何かを頼むとなると、自然と敬語になる。当然のように話していても、人の頃より明確で絶対な権限の差があるのだ。
『PTP-RB-SA-0001-0001、感情機能オン』
---[newpage]
ぼんやりしていて、何も感じなかった頭がスッとハッキリする。ここは、サーバールーム?
目の前に見えるのは、巨大な銀の塔、もといマスターのスーパーコンピュータ。その前に、一体だけロボットがいる。鼠型のロボット。PTP-RA-LE-0001。俺の所属している隊のリーダー機。俺をロボットに変えた、かつての同僚。
「[[rb:PTP-RA-LE-0001>やすい]]!」
名前を呼ぼうとしたものの、口の中のスピーカーから出たのは識別番号だった。これも俺がロボットになった弊害なのか。
「おお、今度はちゃんと感情があるな」
「感情って、それは感情機能を切られていれば感情は出ないだろ」
昨日、俺はロボットに変えられた。最初の内は簡単な命令をやらされていただけだったが、それが終わったかと思えばマスターにあれやこれやの説明を受け続けることになる。未来から来ただの、戦争を未然に防ぐだの、そのために人類種をロボットに改造して世界征服をするだの、SFの話でしかないことを大真面目に説明された。
「いやぁ、さすがワーカーホリック、ロボットであることを受け入れるのも早かったみたいだな」
「それは、関係あるのか?」
確かに、俺は自分がロボットであることは受け入れた。どうせ元には戻れないし、逆らったところでただ意志を消されて身体はそのまま使われるのなら、従った方がいい。それとワーカーホリックに何か関係があるか? 言ってるのがPTP-RA-LE-0001だし、合理的とは限らないが。
「そりゃ、仕事してれば幸せ感じられるんだから、相性最高だろ? しかもその気になれば二十四時間稼働可能、その後の睡眠時間さえいらない」
「お前なぁ……俺のことをなんだと思っているんだ」
「だからワーカーホリックだって言ってんだろ? 病院行った方が良かったタイプの」
いや、確かに俺は仕事一筋で、正直無趣味で仕事のために仕事をしているような性質だとは思う。でもそれで病院に行けというのはどうなんだ。働けなくなったら困るから健康には気を遣っていた。健康に悪かったのは睡眠を削っていたことくらいだろう。
「自覚は……そりゃねぇよなぁ。まぁそれはいいんだよ。もっと近くまで来いよ」
そう命令されて、俺はすぐにPTP-RA-LE-0001の目の前まで歩いていく。こんな幼児でもなければ喜ばれないようなタスクを熟しただけでも、少しだけ幸福感があるのはいっそ怖いくらいだ。
「ほら、手出せ」
命令のまま俺は右手を軽く挙げて掌をPTP-RA-LE-0001に向けるように広げる。そこにPTP-RA-LE-0001は指を交互に絡めるように手を繋ぐ。ただ手を繋いでいるだけではなく、今物理的にPTP-RA-LE-0001から接続されたようだ。
「んー……やっぱり、お前も幸福回路からくる幸福値が相対的に高過ぎるな。減らさないと、ソウルマトリクスが焼き焦げかねない」
「な、なんでそうなるんだ?」
「まぁ早い話、生身だった頃に幸福度が低かったからだな。俺達、マスターの予測を大きく下回ってたんだ」
なんだか猛烈に貶されているような気がするが、本当に……いや、確かにただ近付くだけのタスクに幸福を感じていたのがそのせいとなると、納得するしかないのだが。
「とりあえず小タスクの幸福度は微かに感じる程度にしとくぞ」
「ゼロでいいんではないか? それは」
「んにゃ、ゼロには設定出来ないんだよ。ロボットとしての特性を消せないんだと」
ロボットの特性……タスクを熟すと幸福を感じる、というのがロボットらしさということだ。感情や感覚などの人らしさは簡単に消すのに、ロボットらしさは残すのか。いや、もう人類種ではなくロボットなのだから、そっちの方が自然なんだったな。
「とりあえず小タスクは低めに設定しといてっと。後はこれとこれとこれをっと……」
俺には閲覧できないステータスを弄られている。PTP-RA-LE-0001は俺よりも上位権限を持っているのだから何もおかしくないのだが、[[rb:PTP-RA-LE-0001>やすい]]にそれをされていると思うと、今はまだ変に感じる。
「よし。早速テストするか」
「テスト? 一体何をするんだ?」
「とりあえず、股開け」
……は? 股開けって……。
命令を聞いて、理性は何言ってんだこいつって感情でいっぱいだったものの、信号が走り股間のハッチが開き、何故か男性器の形をしているノズルが出てくる。こんな形だが、ナノマシンを製造、増殖させるための機構だ。
「お、おい、これが何のテストになるんだ」
「とりあえず、小タスクで感じるほど幸福感はなかっただろ?」
「ま、まぁ、確かにな」
さっき歩いただけで感じたような、少しの幸福感は確かになかった。だが、よりにもよってこんなことをさせる必要があったか? いくらロボットでも、人だった頃の性質で、性器を晒すのは恥ずかしいんだが。
「んんっ!?」
急に、幸福とは別の感覚に襲われる。人の頃は自分が制御していた感覚。快感にビクンと震えるような感覚。何故かノズルをPTP-RA-LE-0001に握られていたのだ。
「ななな、何するんだ!」
「何って、テストだっての。ここが機能してるなら平気だろ。後ろ向けよ」
何一つまともな説明がないまま、また命令されて俺は後ろを向く。一体PTP-RA-LE-0001は何をするつもりなんだ?
「ここまで再現してる割に、ここは違うんだな。まぁ、機能がないからしょうがないか」
などと言いながら、PTP-RA-LE-0001は俺の尻を触ってくる。ああ、確かに尻の感覚としては分かれていないし肛門もないよな。
「って、なんで尻を……」
「なんでって、そりゃセックス出来るかどうかをだな」
「はぁ!?」
セックス? 本当に何を言っているんだ? テストがどうこう以前に、ロボットが性行為なんて、その時点で意味が分からない。PTP-RA-LE-0001も俺も、元は男だ。仮にPTP-RA-LE-0001のセクシャルとして俺とセックスするのに問題がなかったとして、なんで今この場でいきなりそうなる。
「安心しろよ。尻がなくてもナノマシンロボットの身体は簡単に改造出来るからよ」
「そういう問題ではないだろ! 何がテストだ! 私利私欲以外の何物でもないだろ!」
「いやいや、これはちゃんとした大タスクのテストだっての。非合理的で非生産的、ロボットとして真逆をいくタスクでも、なんなら絶対嫌がることでも、タスクとして遂行すれば幸福感を得られるってテストだ」
尤もらしいことを言いながらも、PTP-RA-LE-0001は俺の尻を改造していた。先程までとは違い感覚が元とかなり近い形になって来ている。なんか大きいような気がしないでもないが……。
「もし嫌がらなかったらどうするつもりだったんだ」
「そん時はそん時、ただロボット同士のセックスがどんな感じか、好奇心が満たされる」
その時点で、絶対あの尤もらしいことはただの言い訳だって分かるわけだが、どうせLE機の命令には逆らえない。PTP-RA-LE-0001の言う通り、嫌がっていてもやることになるのだ。
「よし、そんじゃ入れてみるぞ」
穴に固いものが当てられる。そのまま挿れるのか? いや、でもロボットだから解すとか慣らすとか、そういうものは必要ないのか。痛みがあるわけでもないし……!
「んおっ!」
痛みは一切ない。感覚機能の中に、痛みだけは存在しないとマスターに言われていたから、それは分かっていた。だが、こんなに快感になるとは思わなかった。人体で感じたことのない、未知の快楽。これが、本当に肛門に入れられた快楽なのか? だとしたら、もしかして俺は……。
「お、良い感じか? 無いパラメータ追加したからどうなることかと思ったけど、良さそうで何よりだぜ」
「無いって、おまっ、じゃあっ、この感覚は……」
「正真正銘作り物だな。でも、どうせヤるなら気持ちいい方がいいだろ?」
一瞬、本当は俺はゲイだったんじゃないかと勘違いしてしまったが、そんなことはないようだ。こいつにまともな配慮とかそういう思考はないよな。
「別に、もう性別なんてないんだから、そんなの気にする理由ないだろ? これだって、人類から見ればちょっと倒錯的に見える、コミュニケーション込みのテストだからよ」
思考をPTP-RA-LE-0001に読み取られている。マスターも同じことをしていたし、俺達ロボットの思考は頭の中で電気信号として記録され読み取れるようになっているから、上位権限を持っているPTP-RA-LE-0001には読み取れて当然なんだ。これは配慮、なのかどうなのか。
「んー、やっぱいろんな液が無い分、感覚が違うな。けど、しっかりきゅっと締まって、これはこれで気持ちいいし、全然ありだな」
そんなことはなかった。ロボットなのに本能で動いているんじゃないかっていう発言だ。あれこれ考えて、尻からくる快感に飲まれないようにしていて、少し慣れて来た。
「んじゃ、動くぞ」
「お、うぅっ!?」
慣れたと思っていたその快楽が、急激に強くなる。PTP-RA-LE-0001がただ腰を振ってノズルを出し入れしているだけだというのに、快楽指数が桁違いになり、視界に一瞬ホワイトノイズが走る。ゴンゴンと硬いもののぶつかる音が、ほんの少し不安を過らせるが、快感と幸福感に苛まれてそれどころではない。
「あっ、やばっ、思ったよりずっと、いいなこれ」
自分自身の快感だけではない。PTP-RA-LE-0001の快感も、物理的に繋がっている俺にもダイレクトに伝わり、二重の快感にキャパシティオーバーを起こして警告アラートが出ている。
「ま、待って、警告、出てるから……!」
「んおっ、ホントだ。えーっと、じゃあちょっと調整してっと……これをこうで、こっちに分散してっと……よし、これならどう、だ!」
「んぐぉっ!」
再びPTP-RA-LE-0001が動き出し、パラメータ上では大人しくなったものの、依然慣れない強烈な快感と幸福感に堪らず声が出る。この体では、もはやただのパラメータの上昇でしかないはずなのに、間違いなく興奮している俺がいる。理路整然としたロボットのパラメータのはずなのに、感情がぐちゃぐちゃになっていくかのようだ。
「あっ、出ちまう……!」
出るって、何が……と思ったが、そもそもあれは男性器の形をしているが、役割はナノマシンを放出するためのものなのだから、当然出てくるのはナノマシンだ。PTP-RA-LE-0001の、リーダーのナノマシンが注がれ、タスクが完了になる。
「ほ、ほぉお……」
先程までの快楽の余韻など簡単に消し飛ぶほどの、生身の頃に久しく感じることのなかった幸福に満たされる。どんな仕事が終わった時よりも、ずっと充足していて、思い出すことさえ出来なかった、ただ普通に生きて幸せだった子供の頃の、特別な日の幸せのようだ。
「ふぅ……どうよ?」
「あ、あふぅ……」
「あ、こりゃダメだ。幸福感で刺激が強過ぎるってのも、考え物だよなぁ、俺達」
リーダーの言葉を、理解するにまで至れない。ちゃんとインプットまでは出来ているのに、熱暴走を起こしているようだ。目の前がエラーで埋め尽くされている。
「このまま調整するからな」
数値が調整されていく。動かなくなっていた頭が動き出し、エラーで覆われた視界が戻っていった。なんとか、正常に戻れそうだ。まさか、幸福で壊れそうになるなんて、思ってもみなかった。
「ふぅ、やっぱ、うちの会社の連中じゃ、マスターの標準にしてる数値は高過ぎるぜ。こいつは特にひどいし」
「そ、そう、そうだな……」
あんなのを大タスクとはいえ、タスクの度に感じていては、幸福中毒とでもいえばいいのか、そんな状態になってしまうのは簡単に想像、計算出来てしまう。こう思うと、人だったころどれだけ幸福感から遠かったことか……うち、ブラックだったんだな……。
「これでよしっと。抜くぞ」
「あ……」
リーダーとの直接の接続が切れ、反射的に小さく声が出てしまう。まだ変だ……口寂しいようなそんな感覚がある。でも、注ぎ込まれたナノマシンが、PTP-RA-LE-0001製が残っているのが、なんだか嬉しい気もしてしまう。
「なんだよ、物足りなかったか?」
「い、いや、今は、もういい……また、あれをしたら、おかしくなりそうだし……」
物足りなさは、きっとリーダーには見透かされているだろう。そう思ってしまった時点で、リーダーには読み取られてしまうのだから。
ああ、やっぱり変だ。PTP-RA-LE-0001を、完全にリーダーとして認識している。相手はPTP-RA-LE-0001なのに……。
「へへっ、可愛いところあるじゃん。これからもよろしくな、[[rb:PTP-RB-SA-0001-0001>うさ]]」
「あ、ああ、よろしく、リーダー……」
「そっか、リーダーって呼んでくれるかぁ……となると、PTP-RB-SA-0001-0001にも何かこう、愛称が欲しいよなぁ。音声だと長すぎるし」
「それは、ロボットとしてどうなんだ……?」
「良くないってさ。でも、いいよな、記念すべき一体目だし、こうして一番最初に適応したんだし、特別でもさ」
特別……なんだろう、リーダーにこんなこと言われて、こんな気持ちなるなんて、生身の頃には想像できなかったな……。
「んー……RB01ってところか? きっと同じ略になる機体だって出てくるだろうけど、俺の言うRB01はお前ってことでさ。そしたら、いっそ愛称だろ?」
「あ、ああ……RB01……」
【PTP-RB-SA-0001-0001からの音声名称に追加:RB01】
システムに、しっかりと刻み込む。ただの識別番号の短縮なのに、こんなに特別感のある四文字は、これから先も無いだろう。
「よし、そんじゃこれからの計画でも練っていくか。ハブサーバとLE機も増やさないとだから、何処を拠点とするのがいいかな」
「無難なのは同業者だろうな」
「だよなぁ。けどそれは、営業なり出向組が行くなりした方が、違和感ないだろ? 俺達がするとしたら、何処がいいもんかなぁ、と」
「新しく間口を広げて、有効な団体、組織となると……」
---[newpage]
「今日日麻薬取引のタレコミなんてな……」
「とはいえ、来ないわけにも行かないっすよ」
俺は[[rb:犬井>いぬい]][[rb:恵>めぐみ]]。犬獣人の警察官だ。今狼獣人の先輩警官の[[rb:尾上>おがみ]][[rb:徹>とおる]]先輩と一緒に、埠頭の倉庫へと来ていた。なんでもヤクザの大規模な麻薬取引があるなんていう匿名のタレコミがあったとのこと。それがただの悪戯の手紙だったら多分放置されていたんだろうけど、どういうわけか署のお偉いさんのパソコンに直接送られていたらしい。さすがに悪戯にしては本気過ぎるということで、こんな深夜に情報の真偽を確かめに来たんだ。
「でも、むしろどうやって送ったんっすかね」
「さぁな。ハッキングって言われていたが」
「お偉いさんが仕事のパソコンでエロサイト見てたとはさすがに思えないっすけど、じゃあどうやってって感じですよね。そんな凄腕ならタレコミなんかするのかっていう」
よっぽど恨みでもあったのか……さっぱり分からない。
あれこれ考えている内にリークされていた現場に着く。倉庫の入り口のシャッターは上げられていて、中で物音もしている。貨物の陰に隠れてそっと中をのぞき込んでみると、奥の方に人影も見えた。本当に今時こんなところで取引なんてしてるのか?
先輩と顔を見合わせて、一度頷く。拳銃を抜いて、突撃の準備を整える。よし、大丈夫。
「動くな、警察だ!」
「大人しくお縄につ、け……?」
飛び出して銃を構えて人影に向ける。しかし、俺達が人だと思っていたそれは、獣人のマスクを被せているマネキンだった。
「は? マネキン?」
ここにきて、まさか悪戯だったと? それにしては手が込み過ぎている。誰かかがいるか、もしくは何かがここに……。
「がっ……!」
「先ぱっ……!」
先輩の声が聞こえて振り向いて、俺は固まってしまった。俺の目に飛び込んで来た光景が、映画か、そうでなければ夢のようにしか思えなかったからだ。
銀色の、液体のような、けど確かに形を保ってそこに存在している金属のそれが、先輩の頭を掴み上げていたのだ。しかもそのスライムのような金属は先輩の身体を包み込んでいく。
「止めろ!」
俺はすぐに引き金を引く。液体金属の根元を撃ったが、千切れることはなかった。弾かれたわけでもなく、そのまま吸い込まれたかのようだ。
「クソッ、本部、応援を……!」
銃がダメならと無線を手に取りすぐ応援を呼ぼうとしたけど、ノイズが聞こえるだけで通信が出来ない。
そうこうしている内に、先輩の身体は金属に包まれ、ぴったり人の形になっていた。頭の方から金属の形が変化していき、先輩の顔が……。
「先ぱっ……!?」
先輩の顔は、先輩のものではなかった。狼とは分かるものの、長いマズルと尖った耳で記号化されたもので、その全てが先輩の身体を覆う金属で構成されている、目だったところが両目が繋がるモニターになったロボットになっていたのだ。
「なっ、なんなんだよこれ!」
「悪いな、これも未来の為だ」
「んっ……!」
目の前の事に混乱し過ぎて、声の主の方を見る前に、視界が銀色に覆われてしまう。なんとか掴もうとしても、感触は柔らかいジェルクッションみたいでちゃんと掴めない。
「……!」
意識が遠のく。何かが、頭に入ってくる。これは、何だ? ダメだ、意識が保てない……耐えなくちゃ……俺は、警察官、なんだ、から……。
【言語調整完了。■■■を日本語として理解可能】
【ソウルマトリクスの覚醒を確認。起動開始】
なんだろう? 変な文字が目の前に映っている。俺は、どうなったんだ? これは、なんなんだ?
【名称削除:■■■■■■】【名称定義:PTP-DO-SA-0002-0001】
え、なんだ? 削除? 名称定義? 訳の分からないこの数字と文字は? 何かの名称?
身体が動かない。声も出せない。何かに縛られているような感触もないし、口を塞いでいるようなものはないはずなのに、まるで自分の身体が自分のものじゃないかのようだ。
いや、それどころかまともに見えないし何も聞こえない。ただ考える事が出来るのと、目の前のさっきの謎の文字しか見えてないし……。
頭に何か刺さる。え、額に? けど、なんか痛みみたいなものは何にもない。
【音声認識機能:ON】
【映像認識機能:ON】
「って、あれ、まだ全感覚遮断中だったか。これで聞こえるか?」
「!?」
聞こえる……急に音が聞こえて、視界が開かれて、有り得ないものが目に入る。銀色の鼠、それだけでもおかしなものだけど、その目が横長のモニターみたいになっていて、そこに青い光が目のように映されていた。鼠型のロボット? にしたって、確かにそこから声は聞こえたし、あまりにも動きが滑らか過ぎる。
「あ、音声発信機能……は一旦止めとくか。だったら直にコミュニケーションした方が早いな」
そのロボットは、さも当然のように口を動かして、ちょっと機械音声っぽい声質ながら、抑揚は人間そのものだ。
『んーっと、説明……まずは自分の姿見て貰った方がいいよな』
急に頭の中に直接、絶対日本語じゃないのにすんなり理解出来る言葉が入って来る。もう、なんなんだよさっきから……。
『は……?』
いきなり目の前のロボットの横に、違うロボットの映像が映し出された。ほとんど変わらない見た目に見えるけど、耳とマズルからして犬のように見える。
『これが俺……? って、そんなわけないじゃん!』
それが、自分がロボットだって事が、自然な事のように頭に過った。すぐに否定したけど、自分の言葉が知らないはずの言語になっている。
『いや、これが今のお前、PTP-DO-SA-0002-0001の姿だぞ』
『PTP……なんだよそれ』
『用途プロジェクトタイムパラドクス、タイプドッグ、権限サーヴァント、所属番号0002、識別番号0001、それがお前の名称だ』
『な、何を言ってるんだよ』
意味分からない。ないはずなのに、意味がすんなり入って来る。タイムパラドックスのための犬型ロボット、0002隊の一員。けど、俺の名前はPTP-DO-SA-0002-0001、って違う! 俺の名前は■■■■■■なのに……!?
『悪いな、元の名前があると混乱するから、名称と置き換えさせて貰ってるんだ』
『な、なんだよそれ! ふざけんな! 元に戻せよ!』
『指一本動かせないのに元気だなぁ』
うっ……そうだ、意志では抵抗してみるものの、さっきから身体はぴくりとも動かない。それどころか、身体の感覚がまるでなくて、熱さも寒さも感じなくて、自分の身体の所有権が無いようだ。
『とりあえず経緯と目的をインストールするか』
『インストールって……』
【インストール:プロジェクトタイムパラドクス】
そのメッセージが見えた瞬間、様々な映像と説明の文字が流れ込んで目の前に広がる。草一つ生えない不毛の大地に、ポツンと佇む銀の街。そこには今の俺や目の前のロボットのような、けれど獣の特徴一つないマネキンのようなロボットがいるだけで、誰一人生きた存在のいない世界。動植物も微生物さえも死に絶えた死の星には、機械しか存在していない。
気の遠くなる時間、実験と演算を繰り返して、ついに完成したタイムマシンで、そんな未来から現代に送られて来た、直径21.83㎝の球状ナノマシンコンピュータと統括AI、PTP-COM-MA-FF99。未来で全ての生物が死滅した切っ掛けとなった戦争を止めるため、それによって過去を改変するために送られた。大量破壊兵器を全て解体して、人類を管理する。そのために手足となるナノマシンロボットを、獣人から作り出していると。
『で、俺が最初にマスターに接触した獣人、PTP-RA-LE-0001だ。IT企業勤めだったから、社員全員をロボット化させて、会社のパソコン全部マスターのボディに変えたんだ。で、次の足掛かりが欲しいから、警察を取り込もうと思ってな』
『それで、麻薬取引のタレコミを……』
こんな想像を絶する技術があるなら、痕跡を残さないハッキングなんて簡単過ぎる。今なら俺にだって出来ちゃうぞ。
『って、じゃあ、俺達に仲間を改造しろってのかよ!』
『んまぁ、そうなるな。けど、人類の、星の未来を守るためなんだ。それに、ナノマシンロボットの身体も悪いもんじゃないぞ? ナノマシンが自己修復を自動でやってくれるから、永久的に稼働出来て、老いとか痛みとかと無縁になれるし』
『え、不老不死?』
『実質そうかな』
未来から来た時点で常識外なのに、不老不死って……そんなロボットを増やして獣人を支配、管理する。でも、望まない人々をロボットに変えるのは、正義に反するというか……。
『もし断ったらどうする気なんだ?』
『なるべく説得されて欲しいんだけど、どうしてもダメなら、野放しにするわけにもいかないし、人格を上書きするしかないかな。それやるとソウルマトリクス……こう、魂みたいなのが壊れるっていうから、やりたくはないんだけど』
人格を上書きって……ロボットだからそんな事出来るんだろうけど……やっぱりヤバい奴らじゃん。いっそ従うフリして、どうにか内側から手を打った方が……。
『あー、そういうのはダメだぞ。考えてる事、全部データとして見えるんだから』
『なっ……!? プライバシーはないのかよ!』
『少なくとも、作戦完了まではロボットとして動くわけだから、無いって言って良いな』
ううっ……どうする……けど、これも読まれてるなら、俺に出来る事なんて何もないんじゃないか? 俺の手で、仲間を、もしかしたら一般人も……そんなのって……。
『……こういう擬態の見た目とか、感覚の有無とか、そういうのじゃないんだな』
目の前の鼠型ロボットから毛が生えて、服まで生えて来た。手から生えたケーブルが俺の頭に刺さってなければ、獣人にしか見えない。
【感触機能:ON】
【獣人擬態:ON】
【行動権限:制限あり】
『あっ……』
そして、身体が熱を感じる。感覚が一切無かったのに、今までと全然遜色ない。手も動かせるようになっていて、手の平を見れば、機械のそれではなく、毛に覆われた犬獣人の、俺の手だった。
『これでもダメか?』
『……』
『ダメか。うーん……なるべくソウルマトリクスが壊れないように、上書きするか』
【行動権限:OFF】
「……!」
【人格書き換えプロセス開始】
頭が、直接弄られるのが分かる。俺の使命は、PTP-COM-MA-FF99のプランに従い、人類を保存して救う事。俺達が守らなくちゃいけない。そのための仲間が足りない。
ロボットになる事は悪い事じゃない。死ぬことじゃない。生まれ変わることだ。犬井恵の人格自体はそのまま。PTP-DO-SA-0002-0001の人格はそのまま。
俺は犬井恵。そして、PTP-DO-SA-0002-0001。俺は犬井恵。今は、PTP-DO-SA-0002-0001。俺はPTP-DO-SA-0002-0001……。
【人格書き換えプロセス終了】
【人格思想思考チェック開始】
目の前にプロセスコードが流れていく。OKが凄い勢いでたくさん流れていき、プロセスが進む。俺が正しいロボットである事を示すデータが見えて、安心する。
【人格思想思考チェック終了】
【音声発声機能:ON】
【行動権限:ON】
ナノマシンロボットとして正常であることが証明されて、必要な権限が与えられる。俺のリーダーではないけど、チェック終了の証として宣誓を行う。
【獣人擬態:OFF】
「……俺はPTP-DO-SA-0002-0001、人類を救うために、作戦行動に参加するッス!」
---[newpage]
「……俺はPTP-DO-SA-0002-0001、人類を救うために、作戦行動に参加するッス!」
目の前で敬礼しながらそう宣言する、犬獣人、もとい犬型ロボット。急に立ち上がったけど、ケーブルが抜けなくて良かったか。
とうとうやってしまった。いや、思ったより早かったと言うべきなんだけども。なんとか説得で済ませたかったけど、ああいうなんとかしてやるって思想を持ってる奴の存在は流石にマズいもんなぁ。もっと時間を掛けるって選択肢もあったけど、報告して貰わないといけないから、急ぎになってしまった。
一応アイデンティティを保てばソウルマトリクスも壊れずに済むかと思って、自我を保てるように名前は返したけど、効果あるかな。
「RB01、そっちはどうだ?」
PTP-DO-SA-0002-0001からコードを外して、もう一人の説得をしていたRB01に声を掛ける。
「……PTP-WO-LE-0002、PTP-COM-MA-FF99の使命を果たすべく、作戦に従事します」
聞くより早く、マズルと尖った耳を持つ狼型の、擬態のない銀のロボットが立ち上がり、PTP-DO-SA-0002-0001と同じように敬礼する。やっぱり警察だと、そういうのが染み付いてるのかな。
「上手く行ったんだな」
「警察の不祥事を並べたのが効いたようだ」
「なるほど……って、そういうのは共有してくれよ」
「犬井はある種警察の正義を妄信していたから、聞いたとは思えないな」
PTP-WO-LE-0002から答えが出て来る。ちゃんと俺達のように完全に自分の意志で従っているようだ。
「教えとく事って何があるかな。使命とそれに付随する内容も、ナノマシンの作り方もインプットしてあるよな」
「ああ」
大抵の事はむしろデータ化して頭に刷り込んだ方が、簡単に理解させられるもんなぁ。状況が特殊過ぎるから……。
「あ、そうだ。忘れちゃいけない事があった。警察官って、どれくらい幸福度あるんだろ」
「幸福度? というのは一体……」
これ忘れたら、また俺達みたいにとんでもないことになりかねない。どうせナノマシン作るのにマシンチンポ使わないといけないし、ついでに調整しておこう。
「まずナノマシン増殖のために、マシンチンポ出せ」
「マシ……は?」
「ッス!」
PTP-WO-LE-0002は困惑した表情をしたけど、PTP-DO-SA-0002-0001はすぐに股間のハッチを開いて、ナノマシン製造機ことマシンチンポノズルとナノマシン収納機構のキンタマを露出させる。サイズ的には平均くらいかな。ちゃんとノズルとして使えるなら大きさは問わない。
「……本当に、これがナノマシン製造機構なのか」
頭の中で検索でもしたんだろう、やっぱり怪訝な感じを出しつつも、ハッチを開いてノズルを取り出す。おっ、こっちは見るからにデカい。ロボ化する前からデカかったんだろうな。
っと、続き続き。
「まず材料を取り込まないとな。そこにあるマネキンをマテリアルキャッチャーで取り込んでくれ」
「こう、か?」
人影を偽装するために用意しておいたマネキンを、PTP-WO-LE-0002とPTP-DO-SA-0002-0001は手を翳して光を放ち、それぞれ一体ずつ取り込んでいく。あれだけあれば十分だろう。
「そんじゃ、タスク、ナノマシンの製造、増殖、始め」
「んっ……!?」
「んおっ!」
二人共すぐにマシンチンポを掴んでシコリ出す。ちゃんと感覚機能がONになっているから、しっかり感じている。幸福値周りの数値がそれをちゃんと示しているな。
「な、なんでこんな感覚まであるんだ?」
「あっ、すごっ、こんな、先輩にも見られてるのに……!」
PTP-WO-LE-0002はともかく、PTP-DO-SA-0002-0001はチンポにご満悦な様子。困惑していてもタスクをこなす為にシコッてるのも、ロボットの身体なのにこんな機能があるのに困惑しているのも、それを見るのはなかなか面白い光景だな。
「すげぇ! キンタマ膨らんでる!」
「お、おい、こんなものが、本当に……?」
頭弄った割にPTP-DO-SA-0002-0001、ノリノリだな。ソウルマトリクスの状態も一応正常になってるし、大きく歪まなかったなら良かった、のかな。PTP-WO-LE-0002の方は行為に抵抗あるみたいだけど、タスクだからと熟してくれてるみたいだ。
「おっ……出る……!」
「なっ、製造しているのに出すのか……!?」
PTP-WO-LE-0002が最もな疑問を口にしながらも、タスクの都合で我慢する事無く銀のザーメン、じゃなくてナノマシン群がマシンチンポから勢いよく飛び出す。
「んひぃ!」
「なっん……!」
二人共、タスクが終わった後に与えられる幸福感に対する反応の方が、射精っぽいそれよりよっぽど快楽を感じているように見える反応をする。実際、タスク後の幸福感はオーガズムみたいなものといえばそうだし。
「んー、やっぱり想定値よりは低いな。俺達程じゃないにせよ」
とりあえずデータをモニタリングしている感じ、幸福値は下げておいた方が良いみたいだ。こればっかりは仕方ないよなぁ、マスターからすれば人類ってものはかつて存在していた未知のもので、幸福値も厳密に付けられたものではない。ちゃんとデータ取ってデフォルトを修正して貰おう。
「よっと、そんじゃ数値弄るな」
まだ放心状態の二人の頭に、俺の両手を当てて直接接続してから幸福値周りの色んな数値を調整していく。PTP-WO-LE-0002は印象通り堅物で、幸福値そのものよりチンポ擦った時の快楽値が高いみたいだ。幸福値は少々で下げる程度で良さそうだけど、快楽値はLE機に何かあると良くないし下げておこう。PTP-DO-SA-0002-0001の方は割とスケベだな。こっちは逆に快楽値は良いけど、幸福値はちょっと抑えておいてっと。
「あふぅ……」
「お、おお……ふぅ……これが、タスクの幸福……なのか?」
「ああ、こいつが俺達ナノマシンロボットの存在意義を定義付けてくれるものだ」
労働による幸福なんて、ブラックな標語っぽい事ではあるけど、正しく生き甲斐であれば悪いものではない。食事も睡眠も生殖行為も必要としていないナノマシンロボットにとって、それと変わらないものなんだ。
「とりあえず自分の所属してる署内を掌握、全員をPTP-WO-LE-0002の0002隊のSA機にしてくれ。一日で全部済ませる必要はない。気付かれない事が第一だ」
「作戦は」
「俺にはなんとも。PTP-WO-LE-0002が立ててくれ。マスターに相談すれば良い案をくれると思う」
警察署の間取りとかなんとか、人間関係とか何も知らないのに作戦を立てるも何もないよな。マスターならPTP-WO-LE-0002の記憶からデータを読み取って、最適な作戦をくれるだろう。
「じゃあ、綻びが出ないようにさっさと戻って報告してくれ」
「「はっ!」」
別にそんな規定してないのに、二人共俺に敬礼してから、ここへ来た時と同じ警察官の獣人の姿へと擬態して、倉庫から出て行く。俺達も、監視カメラは掌握しているとはいえ、物理的に誰かに気付かれる前に出ないとな。
「じゃあ、俺達も戻るか」
「ああ」
眠気というものが無縁になってしまって、今が深夜なのを忘れてしまいそうだ。まぁ、時計も入ってるから時間としては忘れるようがないんだけど。
次はどうするべきか。国内も良いけど、最終的には海外にも出ないとだから、そっち方面にリーチするところも考えないとだ。とはいえ今日はもう良いか。マスターの元に戻って、スリープしよう。
こうして俺はRB01と別れて、マスターの元へと帰るのであった。
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