射精管理ドーベルマン♂と排泄管理ウルフ♂

  夜が深まるにつれ、部屋は静寂に包まれていく。

  照明をつけ、タイピング音だけが時折に響くのみ。

  社会の喧騒から離れて落ち着ける、自分だけの城。

  普段ならば感じなかった、"足りなさ"に苛立ちが生じた。

  「ふぅ……」

  物憂げな溜め息をつき、眉間を指で解す。

  これといった楽しみのないまま日常生活を送っていた。

  両親から知識を授かり、たくさんのことを学び成績は常にトップ。

  漫画やゲームにも関心を持たず、これといった交友関係もなかった。

  それでも自分には紙とペンがあり、情報の詰まった教材が側にいた。

  情報の濁流を浴びるのが三度の飯より好きで、時間を忘れ没頭した。

  知りたい、学びたい、その知識欲を満たすために、人生を使い続けた。

  いままではよかったのだ。それ以外の世界などほしいとも感じず、情報と幸福のなかで月日を過ごしてきた。

  終わりなどない。

  情報が尽きることは、絶対にありえない。

  つまり学びは時間ある限り、無限にあるのだ。

  しかし、彼には唯一の誤算があった。

  ここ暫く解決し得ぬ悩みに直面し、頭を痛めていた。

  

  「……まさか飽きてしまうなんて………………」

  好奇心には限界がある。

  絶望を学び虚無感に包まれ、彼が選んだのはポルノ。

  女性の体を見つめ自慰行為に耽っていた。しかし物足りなくなった。

  理由は簡単で、女優よりも男優の尻や背中が映っているのが好みだ。

  つまり、知らないうちにどこかで道を踏み外し、男色嗜好を持っていた。

  学びの中で自分の好みさえ気づかず、ポルノを見つめ肉棒を握り締めた。

  息を荒らげる。激しい射精感に流されながら、唸りをあげ、男優の絶頂にあわせての射精。

  呆けて、目を点にしていたものだ。

  男優が筋肉の十二分に躍動させ、射精中に強ばるのが至福の瞬間。まばたきも忘れた。

  黒と茶褐色のコントラストが美しいドーベルマンの男優が、ジムの帰りに女性をひっかけ、シャワーを浴びずに嗅ぎあいながら行為に及ぶAVだ。そしてゲイポルノに手を出すきっかけになった。

  もっと知りたい。

  久しぶりに湧いてきた好奇心に火がついた。

  マニア向けのゲイポルノをも大量に浴び、自らの体臭や精液に酔いしれた。

  しばらくは好奇心を満たし、飽きずに日常生活を豊かにできた。しかしだ。

  「飽きてしまうなんて……」

  充実は一時。長くは続かなかった。

  頭を抱え、ストレスにげっそりとした。

  「学びにも飽きて、これならばと思ったポルノにも飽きてしまう。僕は長続きするタイプだと思っていたのですが」

  部屋の照明に体を照らしている。

  毛皮は黄色を主体に黒いラインが走る。

  尾は細長く体全体はがっしりとしている。

  そんな虎獣人が、娯楽に飢えているのだった。

  裸で今日もオカズを見つめ射精を味わおうとしていた。

  しかし、どうにも満足できない。ポルノを見ている最中の興奮は大したものだが、肝心の射精はいつだって、どこか抜けたもの。気がかりになり射精をして、それを忘れようとしたが、ついに限界が訪れてしまう。誤魔化す射精に肉体が飽きてしまったのだ。

  「どうすればいいのでしょうか」

  すらりとした肉体。穏やかで落ち着きのある声色。

  男らしいが、虎と呼べるほどに屈強ではない平均的なサイズ。

  垂れ下がった竿も剥け立派だが、逸脱したものではない。二つの玉も普通。

  「インターネットは広々としているのに、僕の悩みを解決できる情報がないなんて、ありえません。きっと、きっと、どこかにあるはずです」

  画面が切り替わるにつれ、身体を覆う虎縞の毛皮は、光の加減によって様々な色合いを見せる。部屋の灯りに照らされた竿は元気なくしおれて、放置された花瓶の植物さながらだ。

  「僕を満足させてくれるには、どうすればいいのでしょうか?」

  裸で椅子に腰掛け、パソコンの前に座り、何時間が経過したのか。

  いま口にした悩みも、一度や二度ではなく、数カ月間は出している。

  眉間を深くし思索する。大きな手には特徴的な肉球があり、その肉球はキーボードに優しく触れる度にタイピングを響かせる。肉球から生じる音は普段ならば集中力を高めてくれた。いまは先走りを垂らす肉棒が、意識を一纏めにするのを阻害する。

  「どこかに、ひとつくらいは、あるでしょう?」

  ありえないと心の奥底で思っていた。

  だからこそ出てきた、不安を拭う台詞。

  虎は独り言など、滅多に言わない性分だった。

  それが不安を隠すため、今日は特に口数が増えていた。

  細い縄と似た尻尾は、感情の波に合わせ動いた。ゆったりと揺れたかとおもえば、ピンと張り詰める。落ち着きを失い、自分自身を見失っている表れであった。

  「んん?」

  興味半分。疑い半分の表情をつくり、変な唸りをあげた。

  如何にもあやしげな――性を満たす会員制のアダルトサイト。

  「あなたの性癖を必ずや満たすでしょう。ポルノキングダム……?」

  口元へ手をあて、視線を神経質なまでに鋭くし、画面上の情報を一つ一つキャッチし、素早く分析する。苛立ちの奥には趣向が満たされない憂いを秘めていた。耳もまた、部屋の微かな音に反応し、時にはピクリと動いて周囲の状況を探る。

  「詐欺ではないのですか? ここまで高い年会費は、なかなか見覚えがありません」

  虎は首をひねり、肩の緊張を解し始める。

  壁には本棚があり、哲学や歴史、現代小説に至るまで、さまざまなジャンルの書物が整然と並んでいる。部屋の中央には大きなデスクがあり、そこには最新型のパソコンが置かれ、いまはそれと裸で睨みあう。

  「失礼ながら、胡散臭い話ではありませんか」

  パソコンの画面に映し出されるのは、無限に広がるインターネットの世界。その一角。

  様々なウェブサイトを巡り、時には深い記事を読み、時には軽いエンターテイメントに目を通してきた。虎の表情が画面に映る光に照らされて、時折小さく変化した。このデジタルの海原を漂っていた思考は活路を見出し、一つにまとまっていく。

  「あらゆる注文に応え、趣向を満たしてくれる……本当であれば夢のような話ですね」

  外からは、夜の風が静かに吹いている。時折、カーテンがそっと揺れた。気分転換のため窓を開けていたのを忘れ、悩み解決に没頭していたのだ。

  「僕は、射精管理や排泄管理などが好みですが……果たして満たしていただけるのでしょうか?」

  部屋の中では、物憂げな息遣い、さみしい風の音。そしてパソコンの静かなファンの音が聞こえる。満たされない欲求にうんざりとしながら、疑いよりも興味が勝り、サイトにカーソルをあわせ情報を視界から摂取していく。

  「うん……ゲイ、レズ、なんでもあるのですね……」

  生唾を呑む。

  筋肉を強調するポーズをとったドーベルマンがいた。

  筋骨隆々の巨体で、自分より頭一つ分は大きく胸筋もふくよか。

  ポルノ男優も顔負けの色男。好みに当てはまり、股間が反応する。

  顧客情報はシークレットが信条のサイト。社会的地位のある虎には有り難い話ではあるが、果たして自分の性癖を満たすサービスを受けてくれるかどうか。

  もう一人は彼と同等の巨体で、胸元から腹筋を見せるような仁王立ち。

  鋭い目をした狼。乳首やパンツに目が向いてしまい、股間がビンと漲った。

  気がつけば息を荒げ、理性をかなぐり捨てたように会員登録。

  条件を打ち、おもうがままに入力する。

  どうせダメで元々。

  断られるだけだ。

  僕の理想を叶えてくれるサイトなんて……存在しません。

  そう思っているせいだろう、過剰なまでに要望を書き加えた。

  自分の趣向を満たせるわけがない。

  この広大なるネットの世界にも、得られないものがある。

  今日はそれを学ぶために、いま乱暴にタイピングしている。

  あまりにも長く入力してしまったが、要約すれば以下の二つ。

  

  ドーベルマンに一ヶ月の射精管理。

  毎日、性欲を衰えさせぬよう睾丸マッサージ、亀頭から竿の根本を、しっかりと刺激する。性欲増強させるため性感帯を弄び続け、絶対に射精させないこと。

  狼には一ヶ月の排泄管理をさせる。

  一滴の小便も許さず、排便も絶対にさせず食生活も徹底的に管理させる。

  尿道と肛門を道具で塞ぎ、自分がよいと言うまで絶対に排泄行為を許可しない。

  わかりましたと、言ってもらえるはずがない。

  同性。無理な管理。筋肉質で好みの獣人。とても不可能な無理難題だった。

  そう思いながらメールを待つ。何度も何度も更新をし、肉棒を勃起させ待つ。

  肉棒をこすりながら、精液を噴き出す手前まで興奮させてもらっていた。

  これだけでいい。前かがみで、体をひくつかせながら精液を出せれば。

  メールをひらけば――ご注文を承りました

  目を疑い何度も読み返した。

  排泄管理。

  射精管理。

  ドーベルマン。

  狼。

  すべての条件を整え、場所と日時をセッティング。

  顧客の情報はすべて絶対的なシークレットがポルノキングダムの売り。

  何もかもが、僕の理想の王国ではありませんか。肉棒を持つ手が強まる。

  「僕の理想郷が、この世に存在するだなんて、信じられません……!」

  あぁぁ! 普段ならば絶対にあげない声をあげながら、ティッシュに目掛け射精する。

  手のひらで跳ね肉棒。先端からたくさんの精液が飛び出し、まだ足りていなかった。

  知りたい。好みの肉体の味わい、香り、手触り、排泄管理されるとどうなるか。射精管理をするとどうなるのか。一体どういう表情をするのか、果たして平気でいられるのか。

  「知りたくてたまりません」

  想像するだけで興奮がやまない。

  見下ろす肉棒は、グロテスクなまでに血走り、血管は張り詰めた。

  射精管理をされたら、こんなものではすまないな。絶対にそうだ。

  尿意がする。排泄管理を続けた相手は、どんな反応をするのだろう。

  「僕が許可しなければ、出せない状態。ふたりはどんな表情をするのでしょうか」

  興味が尽きない。

  好奇心が炭酸水みたいに湧きあがってくる。

  肉棒をしごきながら、二発目を飛ばす。ティッシュが生臭く、重くなっていった。

  

  [newpage]

  当日。

  指定された場所に赴く。

  夜の帳が下りるる頃。愛車を転がし、街の片隅にひっそりと佇むラブホテルこそ「ポルノキングダム」。

  その名の通り、童話で見るようなデフォルトされた城のネオンが輝いていた。

  目が痛くなるほどの光源。このチープさがかえってユニークな雰囲気を強調する。

  虎の頬を笑みに緩ませ、すこし前かがみになり勃起を隠す。濃厚なピンクのネオンライトが明滅し、あやしい「夜の城」であることを際立たせ、ひとを寄せつけず雑踏も遠く聞こえない。

  入り口をくぐると、まるで異世界に迷い込んだかのような感覚に陥る。

  壁まで濃いピンクで塗り分けられ、ネオンでもないのに目がチカチカする。

  床に敷かれた赤すぎるカーペットが空間を安っぽく、怪しいものに仕立てた。

  「いらっしゃいませ。御主人様であらせますか?」

  受付が丁寧に腰を折り接客してくれる。声も見た目も太い男性。それも筋肉質。筋肉が盛り上がり、上体は裸で胸板を剥き出しにしたイヌ科だ。どんな試験やビジネスにも動じたことがないのに、目を合わせただけで言葉に詰まる。

  固唾を呑む。

  「は、は」

  襟に指を引っ掛け、ゆっくりと息を整えた。

  受付まで僕の好みにあわせてくれるのか、と感動する。

  「は、はい。僕は御主人様です」

  「ドーベルマンと、狼の二人を御所望しておりましたね?」

  妙な対応をしてしまったか不安になったが、犬は微笑む。

  初回であるため会員証をつくりますと、軽い手続きを終えた。

  プライバシー保護を徹底しているのだと説明を受ける。興奮と緊張の板挟みとなりながらも、ボールペンを書面に走らせた。たまに視線をあわせると、可愛気のある微笑みを浮かべられる。筋肉質ながら甘い微笑みがあり、好みから少し外れるが、こういう表情をされるのも嬉しいものだ。

  「それでは御主人様。ポルノキングダムで楽しい時間をお過ごしください」

  「ありがとうございます」

  恭しい御辞儀をされ、ビジネスマンの習慣で頭をさげていた。

  指定された部屋に向かう。

  震える指でドアノブを握った。

  それを回し、押せば金属音がした。

  ぷんっと鼻頭を撫であげるのは、花類の妖艶なる香り。

  高級品なのか嫌味がなく呼吸しても不快にならず、心が安らいだ。

  嗅覚を意識すれば、この中に混じり男の香り。いや、臭いがした。

  汗を伴った、あまりよろしくない類の臭気。期待に胸が高鳴った。

  部屋に一歩足を踏み入れると、目を奪われるのは、中央に鎮座する大きな円形のベッドだ。そのベッドは赤やピンクのサテンシーツで飾られ、ふわふわのクッションが無数かつ無秩序に散らばっている。天井に取り付けられた鏡は、部屋の様子を逆さまに映し出し、夢と現実の境界をあいまいにするようだ。

  ポコ、ポコ……

  部屋の角には、大きなジャグジーバスが設置されており、その周囲はキャンドルや花びらで飾られている。ほんのり泡立つ乳白色の湯にも、花びらが渦を巻いていた。楽しんだ後の疲れを癒やすと、細かな泡が約束を囁く。

  自分のために用意された一室。

  ポルノキングダムの名に恥じぬ、豪奢であやしい内装と言えた。

  サイトの概要にあった通り、日常の喧騒から離れ幻想的な一夜を過ごせるのだと、胸が火照る。

  部屋の一角にある彫り物が動いた、いや、そうではない。

  血肉の通った裸の男。ドーベルマンに狼……指名した二人だ。

  「いらっしゃいませ、御主人様」

  「お待ちしておりました、御主人様」

  胸板に片手を添え、主人に仕える従者さながらに深々と一礼。

  ふたりの声色は震え、片方は明らかに上ずり苦痛が混じっていた。

  そしてもう片方は息遣いは、運動を終えた後のような乱れがあった。

  右にいるのは筋肉質で長身なドーベルマン。左にいるのは敗けず劣らずの狼。

  両名を見つめ興奮を高ぶらせた。自分のことは虎か御主人様と呼んでほしいと伝えたところ、ふたりは同時にウィンクをしてみせた。

  「御指名をいただき、誠にありがとうございます。私のことはドーベルとお呼びください」

  語るドーベルはプロ意識からか平静を装っているが、股間が勃起している。先走りの臭いまでだ頼ってきていて、素人目にも射精管理をされていたのだと理解が及んだ。

  「俺を御指名していただき、本当に、ありが、とうございます。ウルフと、そう呼んでくだ、さい」

  ウルフは注文の通りならば、一ヶ月に亘る大小の排泄管理。

  息を荒げ涙目。長い口先を食いしばり、ときおり瞼を落とす。

  如何にも腹痛を堪えている様子に、何とも好奇心をそそられた。

  「僕のことは虎……いや、ここでは御主人様と呼ばれるよう、セッティングしていましたね。今日はよろしくお願いします。ドーベル。それにウルフ」

  ふたりは恭しく「どうぞ、よろしくお願いします」と息をあわせ、声を同調させた。客の無茶な注文に耐えてきたのだろう。慣れを感じさせる。自分の性的嗜好を許容される悦び。その事実だけで自慰が捗ってしまうような、強い興奮を呼び起こす。

  「ふたりとも、すこし、そのままでいていただけますか。肉体をじっくりと見せてもらいたいです」

  互いに無言で了解してくれた。

  まず視線を寄せたのはドーベルのほうだ。

  筋骨隆々。その言葉がまさに相応しい肉体美!

  身長も平均的な虎より頭一つ分は大きい。目をあわせるため自然と見上げた。

  度重なるトレーニングを重ね、肩や胸はもちろん、太ももや二の腕に至るまで。とにかく体の各所から筋肉が張り出し丸みを帯びている。

  毛皮は黒と褐色。特有の配色が雄々しさを際立たせてやまなかった。しかも汗でほんのり湿気り、部屋の照明で二種類の毛並みをコントラストに引き立て、ガチムチの筋肉を誇示。

  「ドーベル少し動いてみてください」

  視線をあわせば、やさしい瞳が愛嬌を感じさせた。

  「かしこまりました」

  軽く身をゆすり、腕をあげたり、さげたり、気のない仕草。

  そんなとき、「これを御所望でしょう?」と両腕の力瘤を見せつける。

  発達した胸筋は尻のように丸みを帯び、乳首がツンと勃っている。別の客に可愛がられた経験が豊富であろう。それが容易に想像できる。乳輪と乳突起色は毛皮に溶けてしまいそうなくらい変色し、いまも刺激を欲し勃起と一緒にピクピクと脈を打っていた。

  「グゥ……」

  ドーベルは軽い掛け声をあげる。次いで開いた指を握るのにあわせ腕を曲げていく。

  両足と両腕を引き絞り、毛皮の下で血管を強調しながら、筋繊維がしなやかに踊った。

  「……」

  虎は生唾を呑む。彼から漂う雄臭さは実に強い。

  禁欲を強いられながら股間を弄ぶよう注文していた。

  だからだろう、彼は力むほどに勃起を跳ねさせ、先走りを、とろりと流している。

  股間には類まれなる大きさの睾丸があり、勃起した肉棒は力強くそびえ立っていた。

  黒と褐色の模様は更に光沢を強め、ライトの下で煌めく。筋肉が津波をつくりだす。

  「いかがでしょう?」

  ドーベルは紳士的な雰囲気を持ち、立ち振る舞いには落ち着きがあった。にもかかわらず鍛え膨れた外見は存在感が圧倒的。その目には野生の光が宿り、一刻も早く楽になりたいのだと訴えかけるような健気さがある。いまも両腕を曲げ、胸筋を張り、欲情している視線は虎を捉えていた。毛皮に収まりきらない強烈な魅力を発散して、性の混ざった汗臭を部屋に撒き散らす勢いだ。

  「いいよ、もう少し続けていただけますか?」

  「もちろんです。御主人様の、お気に召すままに」

  ドーベルはステージに立ち、審査員にパフォーマンスを披露するビルダーさながらだ。

  その肉体からは抑えきれない性欲のオーラが溢れ出していた。毛にまとわりついた興奮の汗臭。発情の雄フェロモン。そこに溢れんばかりの我慢汁の芳香を混ぜあわせたものが臭いの層をつくっていた。

  「御主人様。こういう趣向でよろしいですか?」

  足の指まで力を込め、ふんっ、と掛け声一発。

  ギリギリと毛皮の下から布を捻るような音。

  磨かれた五体を震わせ誇らしげに見せる。

  息が湿り動くたびアボカドほどもある睾丸がブラン、ブラン、と揺れた。内腿に玉が触れた際には微かながら音がして、極限状態の性欲を訴えた。今すぐに溜まったものを吐き出さねば破裂すると、射精を懇願されている気分に浸っていた。

  「………………」

  虎はまた唾を呑む。肉棒が硬く亀頭が天井を向いている。

  それでも、射精欲求以上に、ドーベルとウルフへの好奇心が高い。

  精液を飛ばす以上に、こうした見物を望んでいたのだと、思い至る。

  ドーベルの息遣いは荒く、まるで戦いを前にした獣さながらに激しい。

  愛嬌のある瞳には抑えきれない獣性が宿り、射精の許可を待ち望んでいた。

  「如何でしょう御主人様。そろそろ次のステップに移るというのは?」

  露骨な促し。何を求めているのかが透けて視えた。

  視線をさげれば、先程以上に亀頭は先走りで濡れている。

  肉棒は巨大でありながらも完璧だ。少しもバランスが崩れていない。それは力強く天を仰ぎ、我慢汁が睾丸の境目に付着して、ポタ、ポタ、と不定期に床に雫を落とす。

  竿と玉を挟む太腿も目に見えて発達し、ポージングの際は躍動的に張った。極めつけは毛皮を破らんばかりに盛りあがる動脈であった。肌の下に心臓を埋めているみたいだ。

  ドーベルの胸筋が蠢くと、それぞれの筋肉が確かな線を毛に浮かばせた。

  胸板は鋼のように固そうで、雄々しさの象徴に思えてならなかった。

  湾曲する腕は虎の拳以上に太く、二頭筋に視線を吸いあげられる。

  ニコォ、とドーベルが笑う。口先は鋭く、牙は威嚇するように光っていた。

  鼻先は湿り気を帯び、艶めかしいまでに輝く。部屋に満ちた男の臭いを嗅ぎ、彼自身も劣情を催している。やさしく可愛気のある瞳の奥に欲情を滲ませ微笑む。男らしさ以上に魅惑的な魔性を感じさせた。

  「…………」

  隣のウルフはひたすらにジッとしていた。

  たまに、ぐるぐるぐる、と腹部の異音を響かせる。聞くだけで勃起しそうな心地よい音色。故意に視線をドーベルにのみ合わせ、ウルフを居ないふうにあつかう。だが虎の耳に切なげな息が届くし、何かを訴えかける眼差しが視界に走った。その逐一の動作を蔑ろのする贅沢。とても紙面や画面越しの情報では味わえない。やらしい知見を得るたび脳が汁を分泌させる。心臓が早鐘を打ち、さらなる境地へと導かれていく。

  「ドーベル、もうすこし力を入れられませんか?」

  「わかりました……ふんっ!」

  彼の肉体は隆々としており、その姿は古代の戦士を象る彫刻のようだ。

  両腕や両足。腹筋や胸筋。背筋や横腹。どこも脂肪が見当たらず、筋肉ばかり。

  食生活から気を配り、ストイックなトレーニングによって鍛えられた血肉の通う芸術。見るものを魅了してやまない。

  「そのまま体を動かして」

  次は視線を天井の鏡へやった。

  照明の光がドーベルの毛皮に反射し、きらりとさせた。

  先程以上に汗を流しているせいで、団体が使うロッカールームもかくやといった濃密なる男臭さ。しかも勃起の先走りが手ですくいあげられるほどに漏れ、ドーベルの体が力むほどに勃起がピーンと傾くのだ。真っ赤になった先端が裏筋に雁首まで、とろりと潤わせていて、美しいまでに光沢を放っていた。

  「その勃起は、今日まで射精管理をしていたのですね?」

  「はい。御主人様の注文にあわせ、一ヶ月の間、一度も射精していません」

  そう断言された。

  虎は手を振り、ポーズを中断させると、両手を腰に当て突き出すよう指示。

  ぐいっ、と湯気をあげるほどの熱気を放った。ドーベルの勃起がピン、ピン、と数センチを上下する。

  「射精していないだけではなく、もちろん御主人様の注文のとおり、毎日……性欲が衰えないようプロに刺激され、ギリギリのラインを保ってきました。だから玉袋はザーメンで煮え立つようです。竿から亀頭はパンプアップされ、体のどこよりもズキズキと痛んでいます」

  ドーベルは恥じらいを少しも見せない。それが仕事なのだと受け入れ、全うしようとする姿勢に好感度をあげてしまう。だからこそ、射精をもうすこし『おあずけ』してみたい気持ちになれた。

  「たとえるなら表面張力と申しましょうか……射精をおあずけされる毎日で、悶絶していました。ろくに寝れない日もありまして、可能であれば、いますぐにでも射精したいと全身が叫んでいるようです」

  「それは大変だったでしょう。あとで許可を出しますので、存分に射精なさってください」

  ドーベルの肉棒は、驚異的な大きさを誇り、勃起の力強さに目を奪われた。

  その硬く張り詰めた肉棒は、血管が浮き出ており、先端は赤々と漲っている。

  息を吸いあげてみれば、原始的な動物の臭気。深い野性味が由来する芳しさ。

  股間の周りは汗と先走りで湿っており、ムンムンと雄々しい発情臭が込み上げる。

  太腿の筋肉は、内側も外側も動きにあわせて躍動し、その強靭さを見せつけていた。

  汗の濡れが黒と茶色の混ざりあった毛色の輪郭を鮮明に引き立てる。照明を浴び美しい輝きを生じさせ、美術館に飾られた一級品を思わせた。全身が発達しており、その一つ一つが磨き上げられた彫像のようだった。

  「私の体は、お気に召しましたか?」

  ドーベルは、勃起の巨大さを誇示するかのように、腰を振り始めた。

  壁にかけられた時計の秒針のリズムにあわせ、流れるように前後する。

  そうしている間にも並の雄など及びもつかない迫力を放ち、先端をヒクつかせる。赤々とした部分は、さらなる先走りに濡れはじめていた。

  「はい、想像以上です。写真なんかより、ずっと素晴らしいです」

  あまりにも素直な言い方をされたからか、ドーベルは気恥ずかしそうに腰を動かす。

  「それではドーベルはこのあたりに」

  「かしこまりました」

  彼は腰に手をあてた格好で止まる。

  ドーベルは十分堪能させてもらった。

  時間にして一時間くらいだろう。何度も脳が絶頂した。

  虎はパンツの中身が汁だらけなのも構わず微笑んでいた。彼のパンツには勃起が強く打ちつけられ、多量の先走りが布に染みつきヌルヌルと滑りだす。自らの熱い欲望が擦れるたびに絶頂以上の刺激が脳髄に弾け、満ち足りた想いで一杯になる。

  「次は、ウルフを眺めさせていただきます」

  呼びかけても彼は反応が薄く、視線が少し彷徨うだけだ。

  サイトに使われた写真の表情とは打って変わって、弱々しい印象。

  しおらしく耳を下げ、鼻先を下げ、尻尾はピクリとも動いていないのだ。

  それでも、彼は注文通りの逸材に違いはない。ドーベルに劣らず筋骨隆々で、筋肉の張りがそこかしこに際立っていた。狼の毛皮は黒く光沢があり、水を浴びたかのような汗が流れていく。

  狼の肉体もまた、雄の象徴と呼んでいい。

  腹筋はしっかりと割れており、その胸筋は厚みをつくり見るからに弾力がある。

  太い二の腕もまた力強さを血管で語り、雄々しくも男性的なセクシーさがあった。

  床を踏む両足は外側と内側に肉が張り出し、力瘤のように盛りあがっているのだ。

  硬く熱を帯びた勃起。あれも筋肉の塊なのか、圧倒的な存在感を放ち汗の芳香をあげている。

  「すごい、お腹が前にせりだしていますよ」

  割れた腹筋ながら、空気を溜めた風船さながらに飛び出し、爪を立てたらパンっとシャボン玉みたいになってしまいそうだ。

  「は、はい。御主人様の、ご注文通りに、限界のギリギリを保ちながら……仕上げてまいりました」

  この注文通りの肉体に虎の肉棒はこれまでにないほどに硬く張り詰めていた。

  虎はおもわずウルフに向かって迫り、その熱気と男臭さ。脂汗に老廃物の異臭を存分に嗅ぐ。首筋を嗅ぎ、見上げれば狼の顔は野性的な美しさを持ち、瞳は情熱とは違った欲の念が込められていた。鼻に脂を浮かせた水滴が、あらわれては落ちる。耳の内側までビッショリさせ、ただ一つの言葉を待ち望んでいるのだった。

  「僕の注文を、すべて叶えられたのですか? 夢みたいですよ」

  トイレを我慢している幼子を思わせ、今すぐにでも飛び跳ねそうだ。

  体中から脂汗を流しているせいだろう、妙に酸っぱく甘ったるい臭いだ。

  排泄物の嫌な臭気が混ざり、体中の汚れが浮き、毛から滴り落ちていく。

  「よ、よろこんで、いただ、き幸いです……排泄管理の期間中は、ドクターストップが二度かけられそうになりました」

  「それはそれは。それで、こんなに腹を大きく、汗だらけというわけですか」

  

  射精ならば一ヶ月二ヶ月としなくても体にそう負担はかからない。

  使用されていない股間とテストステロンの値が一時的にあがり、使わないでいるからこそ下がるなど諸々の事情はあるそうだが……排泄行為はそうもいかない。たとえば一日でも排尿を我慢していれば体中に不調が起き、膀胱の痛みも尋常ではなかろう。

  溜まった尿は日数を追うごとに度合いは強まり、思考能力だって失せる。体の中に淀みが循環し汚染されていく。しかも腸内には腐った老廃物……大便も詰めたままにするようにとの注文だ。

  「まさか本当に受けてもらえるとは思っていませんでした」

  

  腹筋は腐敗物を詰め込み、せりあがっていた。表情は見るからに余裕がない。

  指を当ててみると、毛布を水浸しにすれば、ちょうどこんな感触が返ってくる。

  わずかな圧も込めていないが、ウルフは太腿を痙攣させ、後退りしかけていた。

  「その……俺も御主人様が気になりまして。こんな変態な内容を頼むのは、いったいどんなひとなのか、あってみたかったです……イケメンで、俺……男もいけるのですが、御主人様は可愛くって、好み、です……待った甲斐がありました……」

  ウィンクされる。

  だが見るからに限界で、いまにも倒れそうだ。

  「リップサービスまで気前がいいですね。本気にしてしまいそうです」

  「いまのはその……本気でしたけど……次はセックスを中心にしていただけたら、嬉しいです」

  フゥ、フゥ、と息を整え客の前で粗相をせぬように意識した精神。感服以上に感動してしまう。こんな狂った欲望を受け止めてくれるため、何事もないように微笑んでくれるウルフ。いまにも射精しそうだ。

  「見事な腹筋が、排泄管理をしたら、こんなに太ってしまうとは驚きです。針を刺したら爆発でもしまいかと、興味をそそられます」

  虎は改めて、ウルフの腹筋を見つめる。へそがせりあがってしまいそうだ。

  シックスパックはさながら許容量を超えた水袋。茶色い固形物に加え、濃厚な尿を内蔵に溜めている。破裂寸前でありながら外に一滴足りとも出すことを許されず、代わりに汗腺や涙腺の蛇口が開け放たれているのだろう。両眼を泣き腫らし、また体中の汗が一向におさまる気配がない。

  「いい臭いです。うんちに、おしっこに、老廃物……汗、恥垢、アンモニアっぽい臭いまで混じって……どちらの排泄物も、体に溜め込んでいるのですか?」

  虎は言いながら、ウルフの勃起に目が留まった。

  サイズや見た目が好みで、視線を引き付けるのは当然。

  しかし、先端に光る金属があった。ピアスかと思いきや。

  「もうしわけありません。御主人様の注文に相応しくないものとわかってはおりますが、ブジーです。尿道ブジー」

  このウルフは一ヶ月の間に排泄管理をされていて、いまも極限状態にある。

  その眼は血走り、緊張に満ちており、生理的な本能を待ち望み不調を起こす。

  耳はピンと立つが、ときに倒れる。プロ意識と排泄欲求の板挟み。いまにも筋肉で張り出したパーツは、爪を当てれば爆発してしまいそうだ。

  「ウルフ。足を少し開き、よく見せてください」

  そのままでも十分に拝めるのに、意地悪い命令をする。

  膝を軽く開くだけでも重労働。乱れる息。聞こえる呻き。

  足の境目には張り詰めた勃起が張り詰めている。その血管は強張り、忍耐を超越したことを際立たせていた。何しろドーベルの倍は充血し、うっ血しているのか仄かな紫色が混ざっていた。小さな穴を貫いたブジーは金属製で、煌めく光沢を放ち、ウルフの肉体に異質な美しさ与えている。

  「ブジーを挿入してまで堪えてくれるだなんて、本当にありがとうございます」

  「よ、喜んでいただき、恐縮です。こちらこそ御指名に感謝して、おります」

  埋まったブジーは尿道にぴったりとフィットしており、その周囲の肉は拡張に伸ばされていた。器具が引き起こす圧迫感は、ウルフの肉棒をさらに刺激し、塞ぎながらも擬似的な排尿を味わい、常に尿意が襲っているに違いあるまい。

  「肛門にも、こうした玩具が?」

  「はい。お察しの通り、俺の肛門にはディルドが突き立てられていて、管理されている最中は常に、このようにされております。ご覧になりますか?」

  うーん、と虎は悩むふりをし、間を引き伸ばす。

  ご覧ください。その後はすぐに許可をくださいと視線が訴える。

  虎の好奇心や性の欲望を増幅させ、ウルフの要求は届きはしない。

  尿道から滴り落ちる先走りはブジーに沿って流れ出た。光景は信じられぬほど官能的で、虎の心を捉えて離さなかった。

  「いえ、まだ先にしましょう。出すときに、僕の方を向いて、してもらいますので」

  「……かしこまりました」

  ウルフの全身は汗で光り、その毛皮は湿り気を帯びていた。毛並みはしっとりとしており、その肌触りはさらに獣的な魅力を放っている。気がつけば腹筋に指を当てなぞりあげてしまった。

  「ぎっ」

  途端にウルフは尻と肉棒に手を添えようとして、震えながら忍耐強く手を止めた。

  「すみません」

  虎は指についた汗の確かな感触を指でいじりながら、軽く頭をさげた。まさか奥歯を閉じ身を下げるなど、予想もしなかった。謝罪の際に亀頭が震え、ブジーが数ミリ、上に出てきたのをハッキリと目に焼きつけ生唾を呑んでしまう。

  ピク、ピク、ピクピク

  怯えたみたいに、肉棒が小刻みに揺れ出す。

  これだけの巨体を、触れるか触れないかの距離に指を前進させた。それだけで、これだけ悶えさせる優越感。ズボンの肉棒が、ちょろり、と白濁を垂らし絶頂する。

  「痛かったですか?」

  「はい。一ヶ月も堪えているため、爆弾でも抱えている気分です。御主人様のせいではございません」

  排泄管理をしているだけでも、肉棒が勃って苦しげだ。これは思わぬ収穫だと胸中につぶやきながらも、ドーベルの肉棒と交互にみやって比較を愉しんでいた。

  「それでは次のステップに入ろうと思います。僕にどういった日常生活を過ごしていたのかを、教えてくれますね?」

  虎は射精管理と排泄管理の詳細なデータを用意してもらう手筈だ。もちろん一字一句を語ってもらうには時間が足りない。それでも、ふたりが口頭で説明してくれるのであれば十分だ。まだ勉強に燃えていた時期。お気に入りの科目で講義を受けるとき以上にソワソワしていた。

  「はい、ではそちらのテーブルにどうぞ、写真や動画など、用意しております」

  「御主人様は椅子に腰掛けてください。俺たちはここで説明をいたしま、すので」

  虎は向かい合う格好でテーブルについた。次にわざとらしく手で顎をさすりあげ、二人を見比べた。

  「そうですね」

  まず、辛くなさそうなドーベルに質問をしてみよう。

  漲る勃起は濃縮された男臭さ。目を瞑り嗅ぐと、肉棒に囲まれている気分だ。

  こうしている間にも、僅かな刺激で先走りが涎みたいに、とろっと溢れ出す。

  「それでは、またドーベルからお願いします。僕の注文の通りに、一ヶ月の射精管理をされていたのですか? 何度も股間を弄ばれながら、射精を禁止されていたのですか? どのように我慢されていたのか知りたくてたまりません」

  知りたい。子供じみた欲求に舌なめずりし、胸が何度も上下する。

  虎が好奇心に目を光らせ、問いかけた。知りたくて股間が疼いてしまった。

  するとドーベルは頬を引っかき、いまも堪えているからか、股間部を見つめる。

  射精のときを今か今かと待ちわび、可愛いくらい物欲しそうな視線を向けるのだ。

  「どうしても勃起がおさえきれず射精をしそうになったときは、こちらの貞操帯を装着するように指導を受けておりました。というよりは、つけさせられてしまったのですが」

  写真が一枚。渡される。後ろ手に手錠をされたドーベルは涙目。

  先走りでフラッシュが跳ね返り股間部分が滑稽に光っていた。

  彼は恥ずかしかったのか。躊躇いがちに視線を外した。

  「カメラの不調のようですね」

  虎は答えず、ただそれを見下ろしていた。

  「この貞操帯はいつから?」

  「これは十日目になってからですね。もう毎日、食生活から何もかもをスケジューリングされ、体中を刺激され、チンポから狂ってしまいそうでした」

  金属に汗や恥垢がついたまま固まっている。

  手に持ち嗅げば、汗を大量に吸い放置したパンツをも上回る臭気。

  多量の汚れ。尿道付近にザラつき、汚れかと思ったが拭いきれない。

  砂粒程度ながら、たしかな錆びの感触。我慢汁を受けた部分みたいだ。

  固まった箇所に抜け毛が少しついているのが、生々しくてならなかった。

  ドーベルの過酷な毎日が凝縮された証し。それが手の上で光沢を帯びる。

  「これをつけていても何度も勃起しそうになって、竿から亀頭を鉄格子に囲まれたようになりまして……痛さのあまり股間を抑えベッドを右へ左へ転がってしまいました」

  局部の拡大写真。

  肉棒が手に持つ貞操帯の形に、跡がついてしまっていた。

  痛々しい肉棒。おもわず虎は股間に片手を添えてしまった。

  ぬちょりとした手応え。自分のパンツが、精液を吸っている。

  「こちらは、射精管理の初日から、チンポと睾丸の記録になります。アップの写真ですが、間違いなく私ですよ。全体バージョンはサイトのほうにございますので、是非とも後でチェックしてください」

  

  初日、二日目、三日目、四日目、五日目…………。

  股間の写真が並ぶ。一日が経過するに連れて睾丸が少しずつ成長していく。

  六日から玉が太腿に挟まれ、いささか窮屈そうだ。右のほうが、少し大きい。

  「健康的な食事メニューに加え、御主人様の注文の通り毎日チンポを刺激されました。この日までは、体を慣らすためにも係の者は竿をしごきました。勃起を維持させるほどの刺激でした。射精には程遠く、常に朝立ちをしているような感覚で辛くはありません。それでもムラムラと、堪えきれない前兆のようなものが、七日目から起き始めます」

  十日を過ぎた辺りから、股間は半立ち気味になり、先端から汁を流している。

  「この写真に並べられたチンポを見ているだけでも、凄まじい性欲なのが伝わってきます。これも持ち帰ってよろしいのですよね」

  ドーベルは首肯する。落ち着き無く視線を彷徨わせるウルフが愛らしい。

  「特に辛かったときはどうでしたか?」

  「我慢汁が自分でも信じられないほど垂れ流しで」

  写真を指さされると、たしかに、眠っているときに流れる涎さながらだ。睾丸にも染みつくほどで、さらりさらりとした手触りが視覚から察せられた。

  「ズル剥けチンポとデカ玉を、色々なお客様方に自慢してきた私ですが……恥ずかしながら仮性包茎のようにチンカスを溜め、掃除するときに禁欲が出来なくては危ういからと、係の者に手足をベルトで固定され、快感を得ないようチンカスを丁寧に拭い取られました」

  テーブルに置かれたノートパソコン。

  画面に再生されるのは赤々とした肉棒だ。ドーベルの表情は刺激を期待しながらも、寸止めに恐怖しているのが一瞬で理解できる。いま目の前で勃っているものより、随分と桜色が強い。

  音声。キュゥゥと切なげな心境をあらわす。とても演技に聞こえない。

  呻き。ぬめった両手が肉棒に迫る。見たこともない手袋をつけていた。

  「これはチンポ用の掃除手袋です。柔軟素材による細かなブラシ。そして、ボディーソープはチンポやアナルなどの性感帯を磨くために開発された、ポルノキング印の特別製品になります。オナニーやセックスの際にも利用できますが、通常のボディーソープとして使うのも心地よくて、私も愛用しております」

  サイト限定で販売しておりますので、よろしければ是非とも、と宣伝をされる。

  画面の中では、ぬめった両手が肉棒にじわじわと近づく。そしてウルフは磔にされてしまっていた。SMなどで見る台。手足を金具に縛られ、ヒクついた亀頭に白い泡が群がっていく。

  「これ、気持ちがいいんですか?」

  「すごく。御主人様も堪能なさりたいのでしたら、私かウルフのどちらかが、あるいは二人で磨かせていただきましょうか」

  「今日は、注文のとおりにしたいです」

  かしこまりました、と恭しい言葉とは裏腹に、画面から飛び出す唸り声。

  ドーベルは眉を寄せ首を振りはじめた。チンポが、大量の泡に包み込まれていく。

  泡がぬちゃりと密着。潰れるのが聞こえてくるようだ。その泡の弾けさえ心地よすぎるのか、全身の毛を逆立て、目を見開き筋肉を力ませていた。

  ビクン、ピク、ピクピク………………ぴくんっ

  ドーベルは足をこっそりと擦り合わせ、勃起を震わす。

  玉袋が太腿に触れてしまうたび、感じてしまっている様子。

  しかも、自分がチンポ掃除をされている声や音でよがっていた。

  玉を丹念に手袋がもみほぐす。毛の一本一本にソープが絡んだ。

  目を見開き、顎を食いしばって、筋肉が膨張する様がよくわかる。

  性欲増強をするべく、肉棒を刺激するだけでなく、睾丸マッサージを毎日されていたのだという。

  一目惚れに近い感覚を持ったドーベル。玉を揉まれて、悶えまくった。

  熟練した手つきながら、屈強な男だと見受けられる。しかもドーベルやウルフと大差のない雄。上玉だ。そんな手が性を発散したくて耳をしょげさせたドーベルを弄ぶ。

  「僕は射精管理をされた経験も、こうした刺激にさらされた経験はありませんけど、辛そうなのが息遣いからも聞こえてきますね。たまらないです」

  「お恥ずかしいです」

  ドーベルは耳を下げている。いまも小刻みに跳ねる勃起が、音声を耳にしながら射精の許可を出して欲しいと、先走りを垂らして止まらない。先程より浮かびあがる血管。射精を堪えようと引き絞られた太腿の筋肉。心なしか、割れた腹筋も蠢動していた。

  「私はオナニーを覚えたての思春期みたいに、射精したくて暴れるようになりました。股間がひきつって、何もしていない時間でさえ先走りで亀頭を汚し、男の臭いが今のように流れ出しています。このあたりから監視の目が厳しくなり、貞操帯が普段遣いになっています」

  ドーベルは貞操帯を何度も引っ掻いて、射精をしようと無機質な部屋で転がる。

  濡れている手が、画面にもハッキリと浮かんでいる。股間を蹴り上げられたかのようにのたうち回っていた。

  「二十日になった日、射精しなくても気持ちよくなれば絶えられるかなと……欲望に絶えきれず竿をしごいてしまったので、お叱りを受けました。乳首などを刺激し、射精をしようとしたこともバレて、手足をも拘束されるのが常になっています」

  口を器具で塞がれ後ろ手に手錠をつけられ、勃起を振り回している。

  先程と違う部屋。壁や床がクッション素材で、そこで横たわっていた。

  手足を拘束されているから、自慰はできまいと貞操帯を外されているが。

  勃起が出来るという状況。それが返って、意識を射精に傾けているようだ。

  ふぅ! ふぅ! とすさまじい鼻息。それでも係の獣人が、仰向けに転がす。

  ぬるぬるの先走りを、指一つで亀頭に塗り拡げていき、絶叫が反響していた。

  折檻を受けた子どもみたいに、うーうー、と吠え、身をゆすろうとしている。

  肉球の面積を存分に使い、裏筋の輪郭を味わうように擦る。愛撫と呼ぶには程遠い、ページをなぞる程度の加減。しかしドーベルは亀頭に自身の体液を塗りつけられて、喚いていた。

  「亀頭がもう張り詰めていない日はありませんでした。これだけで、私は射精できないもどかしさに暴れます。睾丸を揉まれて、落ち着くどころか性欲が過剰に増し、床を転がることさえ許可されず……いまも御主人様の一言を、待っています」

  腰を突き出された。香る、テストステロン由来の、甘いフェロモン。

  画面のとき以上に先走りが溢れ出て、それでも触れることを許されない。

  見たときは。ヒクン、ヒクン、としていた。いまはヒクヒクヒクヒクとしゃくりあげているではないか。いまの言葉に虎は敢えて答えない。

  「このときの私は、もう、性欲に抗えぬケダモノになってしまっていて、両眼からは正気が失せ口からは唾を出してしまっています」

  それでも、拘束具をつけられ横たわっているドーベルは吠えている。

  勃起を握られ。わずかにシコられた。亀頭に先走りを馴染ませるように片手で開閉を繰り返される。粘ついた汁が、照明を受け淫らに強調されていた。

  「とても、御主人様の注文をひとりで達成できる状況ではなく、拘束具をつけられてしまいました。先程の映像と同様。特別な個室で世話をされていました。チンポからカウパーが流れていない時間はないほどで、わずかな刺激でも、いいえ。何もされずとも勃起するほど性欲を溜め込んで、それでも一度も射精を許されないのは想像を絶する苦痛でした。今でも玉袋が重く感じていて、御主人様からの許可を、いますぐにでも求めています」

  最終日が近づくにつれて、亀頭に対する刺激も減っていた。

  太腿や睾丸のマッサージに集中し、膝小僧が大笑いしている。

  ようやく拘束具をとかれ、仕事の日が訪れたのに、ドーベルは手足を拘束されていた。

  「これ、今日の映像ですか?」

  「はい……手首をご覧になりますか?」

  両手を差し出される。手汗が滲む肉球が香ばしい。

  手首に触れると、ドーベルの肉棒が大きく跳ねあげる。

  毛が寝そべっているだけでなく、確かな手錠の跡があった。

  「SM用ながら頑丈なやつでして……使用者が傷つかないよう設計されていましたが、射精欲求で暴れ続けたせいです。明日、明後日には治っています。問題ないでしょう」

  虎はひとの手首をさすりあげるだけで、パンツを汚してしまう。

  この穏やかそうな筋肉質の巨漢。それがあんなにも乱れ、手錠を千切ろうと躍起になるまで性欲に流されていた。ぬるぬるしたパンツに、どろどろしたものが混ざった。

  「ありがとうございます……僕の注文を叶えてくださって感動しています」

  「恐縮です。仕事とはいえ、そういっていただけると、私のチンポも報われます」

  ドーベルは熱い息をふかす。一歩さがり、一礼すると微かに微笑む。

  目は変わらず赤く潤んでいる。限界はとっくに振り切っているのに、いまの対応。

  虎も普段から発散に満足ゆかず、虚しい時間を過ごした。今日は満たされるがゆえ股間が痛いくらい勃起しているが、ドーベルの度合いはまるで異なっていた。

  ふぅぅ ふぅぅう! ふぅぅう!

  口を閉ざし隠されているが、食い縛られた牙の隙間と、整った鼻から熱が漏れる。

  ありあまった性欲が肉体から排出し、すこしでも身を軽くしようとしている。

  耳を澄ましているだけでも心地よいが、か細い息遣いを意識し我に返った。

  「それでは、次はウルフのほうを教えてください」

  待っていましたと、ウルフは一歩だけ、前に出る。

  「はい。俺は排泄管理が中心でありますから、ドーベルほど何かをされていたというわけではありません。悪影響を招くほど排泄を禁じられているため、御主人様の注文から外れている部分もございます。どうか、お許しを」

  生き物は糞詰まりで死ぬ。尿が出来ない状態でも死ぬ。

  あまり意識されない話ではあるが、紛れもない事実である。

  ウルフは文字通り死ぬ気で堪えてくれていた。多少の注文漏れはやむなし、当然のことです。そう虎は納得してみせた。

  「はい、むしろ、今日まで僕の注文に応えてくれるよう務めてくださったウルフに感服しております。そのカッコいい体に多量の排泄物が詰まっているのだと、興奮して……こうしているだけでも射精しそうです」

  息荒いウルフは、汗まみれの顔を呆けさせた。

  それからくすっと口を緩め、すこし落ち着いたふうだった。

  だが鼻に浮き出た水分の量は一向に減る気配はない。息も同じ。

  「お褒めの言葉。恐縮でございます。それでは、排泄管理の初日、可能な限り排尿と排便を済ませ、すこしは耐えられるよう腹を空っぽにするところから始まりました」

  前置きにあったように、ウルフの写真や映像は目立ったものが少ない。

  亀頭をいじり、睾丸マッサージといった性をくすぐる部分はないが。

  「こんなふうに、俺は糞をするのを我慢していました。排便が出来ないくらいと最初は甘く考えていました」

  「排泄管理は初めてでしたか?」

  ウルフが顎をさげれば、浮いた水滴がポタッと床へ落ちる。

  「はい。実を言えば、糞を我慢するだけだと思いこんで、小便もこの調子で本当に、笑い飛ばせないレベルです。砕けた口調で言わせていただきますが、ヤベェ~感じがします」

  虎は、ははは、と笑い返す。苦笑するウルフは仮に笑えば腹痛が起こるせいだろう口を緩めるよう、おさえていた。

  「尿道ブジーを挿入するのは別の仕事でもありましたが、あくまでセックスの前戯のようなものでした。今回のように、小便をこらえるための栓をしたのは、ポルノキングダムの注文でも稀……ともすれば、初めて、かもしれ、ませんね」

  長く喋っていたら息継ぎがしづらくなったらしく、体をよろめかせる。

  「食生活はどのように?」

  「はい。最初の十日までは普通にしておりました。メニューなども、御主人様のアカウントに転送させていただきます。もちろん、ド、ドーベルについての内容も、この後に送られますので」

  いててて……、と小声が聞こえてきた。

  うっかり横腹に触れていたが、それさえも苦痛を招き、ウルフは強張る。

  「失礼しました」

  「いいえ、気になさらずに、それよりも、最初の十日までは普通の食事といっていましたが?」

  「はい、ドクターからは流動食にし、あまり排泄物がたまらないように調整しなければとのことでした。下手をすれば命に関わるからと……味気なくて、食事の時間はあまり楽しくはありませんでした」

  妙な物体を口に運んでいる姿が映像として流された。

  ノートパソコンを見つめるが、ゼリー類やドロドロの流動食ばかりだ。

  「不味いとおもいながら、不機嫌に食べている様子は見苦しいでしょう。排尿と排便を封じられていて、このときも、堪えていました。パンツは俺の力でも壊せない特別仕様。ブジーとディルドを挿入したまま、毎日を過ごしています」

  虎の嗜好には知識欲をくすぐる生きた教材。最高のポルノだと喉を鳴らす。

  最初の五日は腹部に変化はないが、次第に毛が汗ばみ、光に変化があった。

  六日、七日、八日、九日、汗の量が増え、見ているだけでも異臭が鼻に届く。

  腹部が次第に膨れているが、十日を超え十五日に達した頃。丸みが顕著になる。

  このあたりまで、流動食がなくなり、栄養補給の点滴にシフトしていったという。

  「しょ、正気を保てないくらいに痛みが発して、いまも痛み止めを呑んで、すこし感覚を麻痺させています。このときは鎮静剤を打ち、それでいて点滴による栄養補給。小便をさせてくれと、係の者に懇願してしまっていたときになります」

  ベッドに仰向けになって苦しげなウルフ。引きつけを起こした患者みたいにベルトで固定されているばかりか、点滴をうらめしげに見上げている。部屋の温度は熱く、汗を流すことで少々は水分を減らしているが、肝心の腸内が汚らしい溝も同然であるため、焼け石に水であったとウルフは言う。

  「そうです、尿道ブジーと、ディルドを挿入した際の映像があります。まずは写真をご覧ください」

  突き出された肛門のズーム写真。

  ウルフ自らの手でひろげられた粘膜はうっ血したような色合い。それでいて花びらのようだ。

  「アナル遊びが好きなお客様に、よく指名されますので、すこしばかり変形しておりますが、紛れもなく俺の肛門でございます」

  「挿入されると、気持ちがいいんですか?」

  それは……はい。

  意外にも、かなり恥ずかしそうに頷かれた。

  茶色いディルドが、肛門をおしひろげながら挿入されている。

  「これだけ排泄管理をしておりますから、如何に大きめのディルドとはいえ、肛門を塞ぐには物足りません。ですので、半ばから膨らむ機能がございます。こちらのパソコンのZキーを三回連打すれば、へ、凹むようになっております……」

  

  ディルドが映像に映る。

  半ばから風船みたいに膨らみ、空気を抜いたように縮む。それをニ回くりかえす。

  次にローションをたっぷりとつけられて、ぬちゅり、ぬちゅぬちゅ、と肛門に挿入。

  ウルフの唸りが聞こえてきて、ドーベルが反応。勃起がピュッとカウパーを飛ばした。

  「これは、挿入してからずっとこのままなのですか?」

  「もちろんです。そうしなければ、俺はとっくに排便をしてしまっていたでしょう」

  次は尿道ブジー。

  ちいさい球体を連結させ、一本の棒に仕立て上げた形状。

  それを勃起した肉棒を掴み固定。無理矢理に押し込まれていく。

  ローションのきらめき、金属の凹凸が、ピンクの穴を刺し貫いた。

  ひぎぃぃ! と奇妙な呻きが画面から流れて、緊張してしまった。

  「これはすごいですね」

  「はい、こちらも今日に至るまで、一度も引き抜かれておりません。こちらにもディルドと同じ機能がありまして、先程の入力をしていただければ、俺はようやく排泄管理から開放される。ということになっております。よろしくお願いしますよ」

  また、故意に応答しなかった。

  にこりと微笑むと、寂しそうに鼻を鳴らされる。

  過度な制限はひとを人懐こくさせるのかもしれない。

  「………………?」

  「いかがなさいましたか、御主人様?」

  ウルフに違和感があった。入室した頃よりも、何か変化が生じている。

  なんだろう。虎は考えるが思い至らず、ドーベルと見比べて察しがついた。

  ほぼ同等の身長。体格も似通っているのに、ウルフのほうが身長が小さい。

  肩をさげているのだ。背を軽く丸め、膨張した腹部を庇っているようだ。

  「ウルフ。背筋を正してください。姿勢が悪くなっていますよ」

  虎は興味本位で命じてみた。すると彼は首を困り果てて、耳を下げてしまう。流れ出す汗は、どろどろとして、甘ったるく苦いような臭いが濃厚に漂う。足元にまで水が滴り、潤う程度のドーベルとの比較が楽しめた。

  「無理です……もう限界で」

  弱々しく、肩を前に出したまま、背筋は曲線をつくっていた。これだけ辛いのに尿を封じられブジーを突っ込まれている股間が、ビンビンに漲っている。

  「腸内でもガスが発生して、丸めたら痛くて、立っていられないくらいです……どうか、お許しください」

  上ずった鼻声で返答されれば、さすがに虎も無理強いはしたくなかった。

  苦しめるのが目的ではない。ただ、どうなるのか、知りたくて仕方がない。

  強引に穴を塞ぐ器具を取り払ったら、どんなふうに排泄するのか見物したい。

  「それで、ウルフは今日まで溜め込んできてくれていますが、味気ない食事も辛かったとおもいます。終わったら何を食べようと思っていますか?」

  「どか食いをしたいのですが、残念ながらドクターからは『健康体に戻るまで少し時間がかかる』とのことで、まずは指導された食生活をはじめ……その後はステーキか焼き肉でも食べにいきたい、と、おもいます……」

  ポルノキングダムは管理が徹底しているのだと、安堵する。

  あまりにも無理な注文をさせている罪悪感。それが幾ばくかあったのだ。

  「失礼します御主人様……げぇぇ……ぶぼっ…………すみません」

  急に、ウルフが喉からゲップを噴き出す。

  それも大きく、屁のように臭いものだった。

  ぎゅうるうううう! ぎゅるぐぎゅうぐうううう………………!!

  腹に溜め込まれたガスが、出口を求め喉から飛び出した。

  倒れそうになるウルフにドーベルが腕をかし、直立させる。

  「お見苦しいところを、見せてしまい申し訳ありまぜん」

  ぐぎゅううううぅう……と、音を出しながらの謝罪。その口からは涎があり、鼻水が目立っていた。かっこいい狼なのに、台無しだ。排泄を我慢しすぎると、こうした方面にも影響が出てくる。それを知れたから、虎の脳は悦びの汁を漏らす。

  「いいえ。もうすこしで排泄の許可が出るので、いま暫くの辛抱です。やはり排泄を堪えていると性欲も溜まるのですか? 勃起が気になっています」

  「これは排尿したくてたまらない肉体が、股間に血を溜めてしまっているんです。たしかに性欲を発散したい気持ちがあるのは間違いありませんが……もう、頭は排泄のことしか考えられません。全身がそうです。血に小便や大便が混じっているみたいな気分で、いますぐに、噴き出したいです」

  「そうだったのですね、もうすこし、もうすこしですから」

  「だ、駄目でしょうか? 一ヶ月も堪えて、俺くるっちゃいそうで……」

  「申し訳ありません。もうすこし、お待ちください」

  すべてのデータを閲覧し終えると、虎は問う。

  「僕が許可を出したら、お二人はどこで射精や排泄をするのでしょうか?」

  部屋の一角を指さされる。

  ティッシュ箱やタオル、色々な拭うものが壁や棚に用意されていた。

  床は普通のものだとおもっていたが、よくみればクリアフィルムで包まれている。

  あそこで排泄を終えた後は体中を拭き、フィルムを破棄すれば後始末は済むらしい。

  「わかりました。それでは、次は最後の手前……僕が触ったり、嗅いだりしてもいいのですよね」

  ビクッと、二人はこわばった。

  性欲と排泄欲が頭に充満し、忘れてしまっていたようだ。

  あわよくばそうなると期待していたが、時間をかけたのが功を奏した。

  「は、はい! もちろんです。どうぞ、お触りください。私の……チンポはお手柔らかに願います。出してしまっても不思議はないほど、敏感になっておりますので、そのあたりは責任を持ちかねます」

  「はい……お触りください。でもその、お願いです、俺の腹は本当に、優しく触ってください……破裂しそうです……」

  「わかりました。慎重に触れさせていただきます。そのまま並んで、肩を寄せてください。そうです。ありがとうございます」

  椅子から二人の側に立てば、むっとする熱気に挟まれ溜め息をつく。

  「これは、すごいです。想像なんか及ばないほど、素晴らしいです」

  筋肉の塊に毛皮を貼りつけた芸術作品。

  右と左から湧いてくる濃密な男臭いに圧倒されてしまう。

  ドーベルのは混濁したテストステロンの香りと、汗の混じり合った獣臭さが嗅覚をくすぐり脳神経に劣情の信号を送らせる。すっかり虎は魅了され、同時に自分自身の肉体の反応に驚いた。二度は射精したのに、奥からまだ、体液を搾る余裕があるのだから。

  「いいにおい……ずっと嗅いでいたい」

  ふたりの肉体を改めて見つめる。どちらとも筋骨隆々で、明確な筋肉の線が走り、毛皮に模様をつくっていた。誘われるように手がドーベルとウルフの胸筋に触れ、その固さと弾力に感動する。

  「うわぁ、汗と筋肉と、こんなに湿った毛皮。なんて汗臭い」

  ドーベルの毛は思ったより短く、ウルフのほうが長いが汗が多すぎて同じ程に手応えだった。発汗するほどの体温は滑らかでありながら、しっとりと吸いついた。

  「うっ……ぐっ……」

  「あぁ……………………」

  見下ろせば尿道から粘り気をともなった先走りが、飛び出している。

  尿道ブジーの境目からも、同様にとろりとろりと流れ続けているのだ。

  ふたりの肉棒。その大きさと硬さに驚異的であり、尿道から滴る透明な汁に生唾を呑んでしまう。つい口に含んでみたくなるが、そういう注文をしなかったことを後悔。

  いや、これでよかったのだ。過度な刺激まで与えるとなれば、注文を受けてもらえたかもあやしいと思った。

  「ちょっとだけ、亀頭に触りますね」

  ふたりは首を引き締まらせていたが、「かしこまりました」と声を同調させた。

  触る虎も興奮しっぱなしであるが――――股間はふたりに比べ実に寂しいものだ。

  男の臭いに挟まれながら、その感触を指の肉球で、ちゃんと確かめた。どちらとも極限にまで勃起しており、その緊張感と脈打ちが心地よい。

  「い、ぅう……」

  「うぅ、ふぅぅう、ふぅぅう…………!」

  ドーベルは快感のあまり嬌声を堪え、ウルフは苦痛のあまりに声を漏らす。

  ふたりの睾丸に、同時に手を伸ばした。指が微かに当たっただけで、その重量感に息を呑む。指の上で僅かながらに転がせば、脈を打つ肉棒の力強さを実感できた。ずっしりと重くある二つの玉を、交互に擦りあげる。腹筋や胸筋に体重をあずけるように前かがみになれば、強烈すぎる雄々しさに心を吸いあげられてしまった。

  ドーベルのほうが膨らみが大きかった。

  ウルフのほうが湿り気が凄まじかった。

  肉棒はどちらとも甲乙をつけがたい。両手で掴んでも有り余る規格外だ。

  見上げれば、ドーベルは欲望の炎で目を真っ赤に輝かせる。今にも襲われそうだ。

  ウルフを見つめれば、目を辛そうに閉じ、腹を引くつかせガスや空気を唸らせていた。

  どちらとも可愛らしい反応で、この出会いを感謝せずにいられない。本当に、楽しい。

  「ドーベル、ウルフ、すこし、亀頭をなぞりあげてみます。気をつけますから、どうか動かないでください。射精も、こらえられるよう意識してほしいです」

  伝えれば首筋や腹筋に力がこもったのが、玉袋から伝わってきた。臭いが強くなったのは毛皮が動いたからだと、まさに手にとるように理解がおよぶ。吸いあげると肺に幸せが積もっていった。

  「あぁぁ……御主人様……もっと……」

  「ご、御主人様……これ以上は………………俺…………」

  ドーベルは肉棒を擦りつけ甘えてくる。待ての出来ない愛嬌あるペットのよう。

  反対にウルフは腰を引く。毒々しいまでに血を溜めた肉棒を後退。鼻をすすりあげた。

  「ふたりとも、それぞれの反応があって、僕はもう、それだけで気持ちが良くなります」

  ゆっくりと手を伸ばし、ドーベルの勃起した肉棒の先端を肉球でくすぐるように撫で始めた。その動きは初心者ながら優しく、しかし確実にドーベルマンの感覚を強める。舌をこぼし、目を閉じる。だが、ウルフは瞼をきつく締め、涙をあふれさせた。

  亀頭をタッチするたび、大昔に忘れた遊び心が再び胸中を駆け出していった。

  ふたりの息遣いがフゥフゥと顔を撫でる。熱くて生臭く、内蔵まで男らしい。

  拙い虎の指先が進むごと、脈が激しくなった。

  「ギィイ!?」

  ウルフの尿道ブジーに指先がとまった。毛筋をつまみあげる程度の力加減。

  復帰が折れ曲がり、尻が下がってしまう。だからウルフからは指を離して嗅ぐ。

  アンモニア臭。それを中心に皮脂、恥垢が由来する食物が悪くなったような異臭。

  「す、すみません御主人様。俺は……もう、その」

  「いいんですよ。わかっていますから」

  虎の眼差しは、ウルフの反応を楽しみ輝いていた。

  心境は初めて計算ドリルを渡され、答え合わせに夢中になっていた頃。

  「ドーベル、ウルフ、もうすこし触らせていただいたら、許可を出させてもらいますね」

  おずおずと肉棒を差し出される。あのキーワードを、ふたりは待ち侘びていた。

  先走りを捏ねるように亀頭になすりつけた。弾力と熱量を味わい、不慣れに刺激する。

  「こ、これ以上は無理です……」

  「俺も、いまにも玩具を引き出しそうで……」

  ふたりは切羽詰まって、すがる目つき。

  これ以上は本当に限界なのだろう、熱い息が何度もふりかけられる。

  「わかりました。では、睾丸の方だけ、そっといじりますね。そろそろ、やめます」

  ふたりの勃起を見比べ興味津々。一挙手一投足を観察していた。

  触れる以上は許されない。それなら、想像していけばいい。

  「………………」

  問題やクイズの先を考えるようなもの。自分の得意分野だ。

  こうしているだけで、口に充満する。臭いと後味は深く男臭い。

  手に体温を握る。触覚に感触が触れていく。神経に想像が巡った。

  ドーベルの肉棒から滲み出た先走りの塩辛さ。広がるのはぬめりだ。強烈なフェロモンに鼻を灼かれる。味覚や喉の奥を刺激する、確かな甘さを感じ取っていた。その後味は舌に長く残り、虎は深い息をつきながら、溢れんばかりの欲を抑えられなかった。

  ビュッ、と。

  またパンツを重くする。

  ねっとりしたものを毛並みに絡ませ、睾丸をきゅうっと搾らせた。

  ふたりは目を点にしていた。なぜ射精しているのか、思い至らない。

  「あぁぁ……本当に、今日は楽しいです。それでも、これからがクライマックスなのですよね」

  虎は睾丸から手を離し、並ぶ椅子のひとつに腰掛け、大仰に空気を吐いた。

  まだ脈打つ睾丸の感触が残り、汗の湿り気がついたままだ。なんと、心地よい。

  「それでは、僕をその気にさせてくださったほうから、許可を出そうと思います」

  ふたりの表情は一瞬で曇り、そんな、と肉棒を戦慄かせる。その顔をオカズにしたいと思いながら、自分がサディストな一面を持っていたのだと、虎は初めて知った。

  「先程と同じことを、同時に行ってください。どれだけ許可を求めているのかを、肉体でアピールしていただけますか?」

  ウルフは急ぎ、ドーベルはすこし間を置いてから胸筋を張り腕を曲げた。

  「さすがに、すごい筋肉です。きっとあなた達以上に男らしいひとは、いませんよ」

  虎は惜しみない賞賛をプレゼント。しかし両名が欲するのは、ただ一言。

  欲してやまない雄々しい肉体が現実にある。しかも、口一つで操れる至福。

  ポルノキングダムの一室で、両者が肉体美を惜しみなくアピールする夢の競演。

  自分を選んで欲しい。自分を視て欲しい。

  膨らむ筋肉に想いが切ないほど込められる。

  熱狂的な期待感に虎の心臓はヒートアップ。やがて頭痛がした。

  心臓に過負荷がかかり、頭に血が巡っていく。知恵熱以上に火照った。

  性的魅力に溢れ生けるブロンズ像のような芸術品をじっくりと堪能しながらも、選択に迷う時間は三十秒に満たない。声をあげるまでは完全に鑑賞タイム。

  ウルフには悪いが、排泄を我慢するほうが辛いのは周知の事実。

  それに彼は我慢のし過ぎ、焦りのしすぎで、動きにキレがなかった。

  次のポーズをとるまでの間が遅く、丸まった腹をおさえそうにもなった。

  一方でドーベルは焦りながらもポーズをとっては際立つ筋肉を蠢動させ、如何に自分が鍛えているのか、マッチョであるかを知らしめる行為に余念がない。技術点に芸術点ともに上回っているのだ。

  「それでは、発表しようとおもいます」

  同時に立ち止まると、姿勢を正す。

  その際に空気が動いて、鼻先に激突した。

  加えて反則的なフェロモン。芳しさに目がくらむ。

  嫌味のない男性臭。溜めた精液の香ばしさがあった。

  逆に、排泄管理は体臭が酷くなるのだと、知見を得た。

  「ドーベル。あなたに許可を出そうと思います」

  「は、は、はい……! はい、わかりました……お願い致します」

  そんな、そんな、そんな、そんな、そん、な……そんな……そんなぁ…………。

  小声で何度も聞こえ腹を両手で抑えながらウルフは顎をさげ、絶望の表情だった。

  腹が悲鳴をあげ、ぬちゅりぬちゅりと妙な音まであげだす。肛門の呻き声だろう。

  「御主人様……お願い致します」

  床や壁などにクリアフィルムが貼られた空間。

  勃起を握りしめ、前かがみになったドーベルは尻尾を振っていた。

  多幸感に支配された瞳は、もう射精以外に何も考えていないようだ。

  「すこしまってください。ウルフ、僕の隣に座ってください。一緒に鑑賞しましょう」

  ウルフに隣へ腰掛けるよう命じると、拒まれる。

  「願いします。もうちょっとですから」

  なぜ嫌がるのかわからなかった。

  しかし、彼が汗まみれの尻をクッションにつけた瞬間。

  ぐじゅりっ……

  耳に粘液音。ディルドが、奥を殴りつけた。

  肛門に突き立てられた異物を、椅子に座ることで刺激が強化された。

  深々と突き立てられるのだから、内蔵を押されることを意味していた。

  これには気づかず、申し訳なくおもうが、ウルフは恨みがましい目になる。

  「すみません。気づきませんでした」

  「か、かまいません……許可、くださるなら……」

  体重がクッションにのせられ、沈み込んでいった。

  腸内の排泄物が奥にいけば刺激が全体を巡っていく。

  さらに限界まで尿を溜めた膀胱に振動や圧力が加わる。

  腰掛けただけで、本当に苦しそうに歯を食いしばっていた。

  稼働中のボイラー。その側に座るような熱気を感じている。

  「なんて卑猥な光景でしょうか」

  虎は、この熱量を前に深くにも射精。パンツはより重く、ズボンに染みが目立つ。

  ウルフは隣で腰掛けながら、尻を小刻みに動かし、両手でチンポを握りしめ呻き出す。

  「もうちょっとの辛抱ですよ……ほら、ドーベルが満足できたら、次はウルフの番です。あんなに性欲を溜め込んでいるのを発散するのに時間はかかるでしょうけど、あのペースでは長くは持たないでしょう。それでは、いま許可の言葉を口にします」

  目を輝かせ、肩を上下させているペットに咳払い。

  「ドーベル、よし」

  「あぁぁぁぁっ! あああっ、アオォオォ……チンポ……こわれるッ!」

  ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ!!!

  ローションさながらの先走り汁。それが両手で思い切り掻き混ぜられる。

  「オオォオ! いい、いいいいい!! チンポ! すぐぉおぃ……! ちぎれとてしまいそうです……チンポ……チンポ…………はやく、ださせてぇ……!」

  ぬチュぬチュぬチュぬチュ!!!

  一糸まとわぬ裸体。腕をふるごとに全身の筋肉が躍動する。これでもかと痴態を曝しながら、そびえ立つナニを狂ったように擦り上げた。赤に染まった肉の先端と、毛並みの色合い。それを一纏めに繋ぐ先走りの光沢が、淫猥な景色を虎へ見せつけてくれた。

  ヌチュチュチュヌッチュ!!

  肉棒に絡む半透明な体液。焼いた石のような肉棒。十全に張り詰めた完全勃起。

  尿道からヒクヒクと、ひっきりなしに汁を漏らした。肉棒を水平にしながらしごきあげていた。

  「………………」

  虎は、角度がつけられた肉棒は裏筋ばかりを見つめていた。

  それが今は、エラの張り具合が如何に深いのかを知り、そこに指をかけるようにしごきあげるドーベルの手付きは底抜けのいやらしさを感じさせてくれる。

  「アアアッ! チンポチンポッ……フゥ、フゥ、ハア!」

  ドーベルはこれまでの穏やかさを否定するみたいに、ヌチュヌチュと自慰の音色を響かせる。エラが指に押しつぶされては元に戻り、汁が弾けるように床へ落ちていった。

  ローションとは違った天然成分……さらさらとした感触でありながら粘性は濃ゆい。

  ヌチュヌチュヌチュ! くちゅ、クチュチュチュチュチュ!!

  ドーベルは感覚が鋭敏になり、そこだけに集中しているのが傍目からも伝わった。

  尻尾を振り舌をこぼす。肉棒と指の間に粘液の層が出来て、滑らかに前後し続けているのだ。

  ビクッ! ビクン……!

  射精をするのだと虎は思ったが、我慢と弄びを一ヶ月も続けられた弊害か。

  思いのほか射精が遠かったらしい。習慣から不発に終わり、ドーベルは唸る。

  グチュグチュグチュグチュチュチュチュチュチュチュ!!!

  射精を禁じられていた恨みを晴らさんばかりの手つき。

  前かがみになりながら汗を垂らし、股間で慄いた勃起を荒々しく擦りあげる。

  猛り狂った猟犬の面立ち。亀頭から液をひたすらに流し、血走る幹を伝わせた。

  部屋の照明が淫らな見世物に降り注ぐ。天井の鏡を見つれば、前かがみになったウルフの背筋や肩甲骨周りが、腕にあわせグネグネとする。

  「でろ……でてこい……、あんなに我慢したん、のですから……でてくるのですよ……」

  唸り。叫ぶ。

  「さんざんに私を、悩ませて起きながら……ここで出し渋るなど、許しません……!」

  ドーベルは首や頬を赤らめながら肉棒に目掛け恨み言。

  肉棒を圧迫する彼の視線は、裏切り者を睨みすえるのと同じだった。

  敏感になっているであろう亀頭。痛々しいまでに手を擦りあげていた。

  裏筋の膨らみに張りあがったエラを、筒状になった指が素早く這い回る。

  「ァァウォォオォ……こんなにいいのに、アァァウオウゥウウ!!」

  滑らかになった性感帯。射精管理によって、過度なほどに感じてしまう部分。

  デリケートゾーンをあれだけ強引にしておきながら、得るのは快楽だけのようだ。

  憤怒していたドーベルの表情が変化。苦悶だけでなく陶酔の緩みがあらわれだした。

  指の腹がときに尿道を潰すようにして、鋭い摩擦音をあげる。あそこに指の毛でするのが、ドーベルのお気に入りらしい。湧き出る性の衝動に突き動かされ、我を失っているのを見つめ、ウルフの太腿に手を載せた。

  「もうじきですよ。ドーベルが満足したら、次はブジーもディルドも引き抜く許可をあげます。すごい顔をしていますね……僕が許可を出したら、ウルフもああなってしまうのでしょうか? いまから楽しみで胸が破裂しそうです」

  自ら手を前後させながら、粘液を歌わせながら、ドーベルは腰を引いていた。

  暗色の毛の中。両手が動いては色鮮やかな肉色が、ヌチュリ、ヌチュリ、と顔を出す。

  指と手のひらをより圧迫。次第に亀頭を中心に責め立て、射精欲求を高めようとした。

  「出せそう……もうすこしなのに、なぜ出ようとしないの、ですか……もう、くるしい、射精したくて、倒れそうですよ……」

  高ぶらせ血に滾った雄々しい部分。ときおりに尿道が広がり、しかし発射に至れていなかった。

  「いいかげんに、しなさい……こんなに、してるのに……カウパーばかりなど」

  辛さに歯を食い縛らせ、唾液をすすりあげながらも恍惚と目を潤ませていた。

  ドーベルの両手はすこしも止まらない。自分自身を責め続け、もどかしく唸る。

  クチュクチュクチュ! クチュクチュクチュクチュ! クチュチュチュチュチュ!!

  エラや裏筋の段差に指をかけ、四本の指がつくる凹凸を添わせる。

  指が動けば粘液が糸をつくりあげ、擦れすぎた部分の汁が白に変色。

  「アァ、アァァァ、アァアァァァ、もう、そこまで、きてるのにぃ…………!」

  ひらきかけた口の隙間から喜悦の溜め息があがって、鼻はくぅんと甘え声。

  両手の筒に責め抜かれた部分が、ビク、ビクビクビク、ビクンッ、と不規則に痙攣しては射精の気配を演出する。尿道は感極まったように広がって、大粒の汁をこぼす。

  ドーベンは肩を縮こまらせた。次にブルブルブルと上半身を震わせた。

  親指で尿道を押し広げ、巻きついた指で竿を揉み込み、快楽を貪る。

  もっとも鋭敏なる場所に集中攻撃。ピンと肉棒を伸ばしていた。

  よくみれば前かがみのドーベンは……乳首もピンとしている。

  隣のウルフは羨望の眼差しで、ウウウ、と恨みがましい。

  ヌチュヌチュヌチュヌチュ! ヌリュヌリュヌリュ!!!

  せわしなく亀頭をまさぐる手と、肉幹を必死にさすりあげる手。

  ドーベルは腰を引き、横腹をたまにねじらせながらも刺激を欲す。

  やがて、彼は自分の手を筒状にしたまま、そこに腰を振り始めた。

  指の凹凸を活かしながら、適度な力加減で擦り、手でなく腰の力だけでしごきあげている。

  「あぁ……出る、出る、チンポから出る……! アオォ、アオォオ!!」

  緩みきった喜悦に感動の嬉し涙。

  「アァァァ! もうすこ、じいぃい! もうずご、じぃい!! アオォ……!」

  ヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュチュチュチュチュ!

  窮地から活路を見出したような、明るく朗らかな笑みで彩られた。

  ドーベルは何度も腰を往復させながら、その手は筒の形を保っていた。

  ヌッチュ! ヌッチュ! ヌッチュ! ヌッチュヌチュヌチュヌチュチュ!!

  腰の引き。突き出し。それらの間隔が長くなり、また小刻みに突き引きを続行。

  「出る、デルゥウ……! ザーメン、だしたい、のに、出すぅう!!」

  あんなにも逞しい肉棒が、膣に見立てたような形状にされた手に可愛がられている。

  ありえざる光景に満足しながら、淫猥に輝く先走りと、それを吸収した毛並みから目を離せるわけがなかった。これを目に入れたくて、虎はポルノキングダムの門を叩いたのだから。

  「アオォオ……! オォオォオンッ! オアォオォオオオォオオオーーーー!!」

  心まで淫らに染まり、自分自身を射精の瞬間に追い詰める破廉恥な姿。

  どんな女でも、いや、男であっても屈服させられる肉体が、自慰に乱れている。

  ヌッチュン! ヌッチュン! ヌッチュン! ヌッチュン! ヌッチュン!!

  また、腰を深く長く往復させる。そのたび糸がチーズのように伸びては千切れた。

  亀頭の赤に白い先走りの模様が加わり、目に入れたこともない卑猥さを作り上げる。

  「アアアアッ! アァァァアアァウゥウァオウァウァオっっ!! ウゥウオンン!!」

  発射を目前にしたのだろう、よがり声が動物じみてきた。

  あのブラブラとした重みある陰嚢。それがやっと縮まり、竿の根本に精液を溜めた。

  このタイミングを逃すなと言わんばかりに、ドーベルの肉棒が強く脈打っていた。

  まるで亀頭の神経を掻きむしる手つき、腰つき。亀頭が、大きくなりはじめる。

  「グウオオオ!!? ウググググググ……チンポ……きもちぃぃい……だすぅうう!!」

  ようやく開放される、ようやく全てを乗り切れたのだ。

  ドーベルは白目を剥き、肉棒は暴れ手の中で藻掻き乱れていった。

  「ぐううううううう!! おううぅう! でて、おねがい、だから出てくださいぃい」

  自らのチンポがなかなかに射精せず、ついに強請りはじめた。

  あんなになってしまうのですね。とウルフに語りかければ、ぶぎゅる、と腹の音で応じられた。

  ヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュヌチュチュチュチュ!!!!

  正気を失った笑み。感情も理性も打ち捨てられた本能だけの笑い。

  精液が噴き出す瞬間となり、肉棒の痙攣がこれ以上ないほどに強まり、そして。

  「アオォ」

  水鉄砲。

  鉄砲水。

  ふたつの言葉が、脳裏にひらめいた。

  玉袋で濁るまで溜められ、情欲に煮え滾った白濁の放水が勢いよく噴出する。

  「アオォオォオォオオオォオォオオオォオオオォ!!!? アオォオオオオオッ!!」

  腹の奥底からぶちまけられる本能の雄叫び。

  身をのけぞらせ、首を傾け、見事な遠吠えをあげながら、肉棒もまた反り返る。

  ビュウウウ! ブユウゥウウ!! ブブッブゥゥウゥウウウウ!!!

  マヨネーズの容器を思い切り握りしめたように、精液がひたすらに飛び散った。

  表面が乾いたマヨネーズさながらのに黄色っぽい。こってりとしたドーベルの子種が捨てられるだけのクリアフィルムをデコレート。雄体液の幾何学模様をつくりあげ、感情と本能に任せ抽象画でも描いているみたいだ、虎は眺めながら、そう感じた。

  「オォオォアアァァオオオォォオオオォッ オォォオオォォ~~~~!!!!」

  性の灼熱に身を任せ、絶頂をしながらの痙攣。遠吠えをあげながらの射精。

  ブブブビュウゥゥウ!! ブビュブビュブブブッ! ブビュゥウゥ~~~~!!

  「アオォオオォオォオォオオ~~~~ンンンンッ!!」

  部屋中に響き渡る。その振動がきついらしく、ウルフは椅子に尻を擦りつける。

  射精を続けながら……いまも尿道から粘液が自らロープを引きずるみたいに飛び出していた。大口を開けながら目を硬く閉じ、鼻筋に際立ったシワをつくり、後ろに目掛けそった腹筋と胸筋を痙攣させながら、両手で勃起を握っていた。

  「アオォオォオオオオオオオオオオオオオ!! オンッ! オオオオオォォンン!!」

  粘液が尿道を駆け抜る。

  過酷なる一ヶ月の禁欲生活からの開放を歓喜。祝砲とばかりに盛大なぶちまけだ。

  ビュウゥ……ビュッ…………ビュウウウ……ビュッ

  溜めていたものも無限ではなく、時間にすれば、せいぜい二分。

  陸にうちあげられた魚のようになった筋肉。そして勃起が、消沈していく。

  右目と左目は虚ろで、しかし口は先程以上に緩み、感極まりながら涙する。

  「きもち……よかったぁ……もっと、出したいのに……萎えて、しまっています」

  足元が白濁にぶちまけられているだけでない。

  腹筋や太腿にもひっかけられ、竿を伝い睾丸もべとべとにしてしまっている。

  指先にて精液を拭い取りながら、すべてをやりきった笑顔で満ち足りていた。

  呆けていたのは、どちらかといえば虎のほうだ。

  「御主人様……本当はもっと出したいのですが、チンポが疲れていて、萎えてしまったようで、出すとしても、休憩が必要みたいです。さがって、よろしいでしょうか?」

  さらに呼びかけられ、やっと自分に対して言われているのだと、わかった。

  「え? はい。おつかれさまです。ドーベル、本当に素晴らしかったです」

  「ありがとうございます。次はその、おそらく一ヶ月の期間は受け付けられませんので、よろしければ、普通のセックスなど、ご一緒したいとおもいます。マニアックな内容でも、私は構いませんが……」

  汗だくになりながらも、宣伝を忘れないのは大したプロ根性だ。

  虎もまた指名したくなるし、次は管理以外の方法もよいと頷いてしまう。甘いスマイルに魅了されてしまった。

  「それでは、次はウルフの番ですが……動けますか?」

  「………………あ、ありがとうございます……」

  「無理みたいですね。ウルフ、私が支えますから、クリアフィルムの貼られた場所まで歩きましょう。あなたも御主人様も、待ち望んだ瞬間ですよ」

  

  ぐったりとしたウルフだが、目は爛々と輝いていた。

  失礼ながら、虎は「好物を前にしたワンコ」そのものだと心で笑った。

  ぶちまけられた精液を踏み越え、ウルフはフィルムの貼られたところに立つ。

  ディルドを挿入した尻を見せてもらいたい気持ちもあったが、もう十分に楽しませてもらった。これ以上は、酷というもの。鼻から息をすいあげ、ドーベル以上に舌を垂らす彼に微笑みかけた。

  「ウルフ、よし」

  言って、すぐにZキーを三連打。

  ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!

  ウルフは大喜び。空気の塊を吐いて顔を綻ばせる。

  尻尾が飛んでしまいそうなほど、左右に振られていた。

  尿道ブジーの膨らみが、凹んでいったのだろうウルフは動く。

  「や、やっと、やっと……やっとだ、やっと……ハァ……やっと、アァァァァァ!!」

  封印の器具を引き出す。ディルドも同様に、床に落とされゴトリとした。

  ブジーは金属が転がる音をあげ、ウルフの勃起は電流を浴びたようにヒクヒクと激しい引きつけを起こす。

  「んぅぅうぃいいぃい!! アァァァァ!!」

  ウルフは舌を出したまま、下半身が跳ね上がる。

  股間が天井をつき、精液の水たまりの側で尿道を弛緩させた。

  尿道を長らく堰き止めていたものが消え、肉棒が陸の魚みたいに尿道をパクパクとさせていた。

  「アァァァ……小便……小便……あぁぁしょうべんぁああ……」

  しゅうううう!! と水音を響かせ、最初の一滴が精液に落ちた。

  水分はイエローを通り越し、濃厚も濃厚。反対側が透けないほどのオレンジ色。

  ぷしゅううぅうぅうぅうしゃあああああああああああ――――――ッッッッ!!!

  棒状になり、半ばから捻れた水流が間欠泉さながらに伸びあがった。

  「オオアァオオォオォウウウゥウゥオオオォオオオオ!! ウゥオゥン!!!!」

  一ヶ月ぶりの排泄。尿道は膀胱を空っぽにせんと、怒涛の水量を穴から出し続ける。

  膀胱が誰かに握られた風船みたいに、圧迫されながら長々とした棒状の尿を斜め上に放水していた。のけぞり、腰を突き出した格好でブルルッと腹筋を震わせながらの排尿。

  しゅうぅううあああああああぁぁぁぁあああああああああああ~~~~ッ!!

  失禁しながら絶頂でもしているのか、両肩や両膝を戦慄かせ、太腿が血を溜めていた。

  アンモニア臭が部屋に充満。びしゃびしゃと精液をオレンジ色が押し流し臭いを上書きする。尿の温度は高く、湯気をあげ、精液の香りと混ざり鼻と言わず喉粘膜を撫でた。

  ウルフは自らの下半身全体を揺さぶりながら、尿が通る衝撃に尻を閉じていた。

  じゅううううぅうぅああああぁぁぁ! しゅうぅううあああああああああ!!!

  丸一ヶ月。ためにためた大量の尿が外に外にと溢れ出していく。

  オレンジ色の噴水が放物線をえがき、びしゃびしゃ、べちゃべちゃ、と粘液を流していった。

  「はぁああぁぁ……しょうべんぅ……」

  うっとりと頬を緩ませながらの排尿。

  酸性に傾いた饐えた不衛生な不浄さが空気に混ざった。

  ウルフは自分の足に尿がつこうが構わずに放尿を続けた。

  亀頭を排尿快感に身を疼かせ、肩がブルルルルっと振動する。

  ぶしゃあああああ!! ぶしゃああああああああああああぁぁぁあああ!

  「ひゃうふうぅうぅう!! ひゃふうぅううう! 小便でイキそう……ォォオオオ!!」

  

  ウルフの排尿ショーは、ドーベルのほど激しいものではなかった。

  これまで堪えていた尿が堰を切ったように流す幸せな一幕。

  クリアフィルムは角度がついているらしく、尿が溢れ返ることはないが、オレンジで黄色い泡をあげる奇妙な水たまりの中。精液が合わさり、どろっと脂みたいにたゆたう。

  じょぉおぉおぉおじょじょじょ!!! ぉぼおぼぼぼぼおぉおぉお!!

  尿の勢いは時に強く、稀に弱くなり、そのたび床にひろがった泡の量が変化した。

  二分、三分と続いているのに一向に止まらない。どれだけ膀胱に溜め込んでいたのか。 ぷんぷん香る酢を薄めアンモニアの原液を垂らしたような、酷すぎる空気に頭が痛む。

  ドーベルが換気扇のスイッチを押したのにさえ、気づけない。頭と視界にはウルフだけがいた。

  「アアアアァァオォォッッンンンッッ!!」

  先程の射精で聞いたのと似た遠吠え。しかし、こちらの方が太く響きがよい。

  チョロロロロ、と最後の一滴までを勃起から流し終える。するとウルフは全身を痙攣させ汗まみれの体を弛緩させた。

  「…………」

  しかし、すぐに腹に意識がむかって、呆けた表情は一瞬で陰った。

  「うう、ううぅう! ウゥゥンッッ!!」

  彼は膝を下げ、両手で腹を押す。

  何事かとおもったが、虎はすぐに理解が出来た。

  「ウウウゥウゥゥウッッ!! ゥウゥゥウゥウゥウゥ! ウゥンン!!」

  ウルフは踏ん張るが、簡単に飛び出すようなことはなかった。

  一ヶ月も排便を封じられていた。腸の活動は間違いなく鈍ってしまう。

  下手をすれば、蠕動運動の仕方すら忘れてしまっているのではないか。

  しかも、長期間のディルド挿入のせいで、肛門の開きも悪くなっていた。

  尿と精液のたまり。湯気と臭気を浴びながら、汗をポタリと落とす。

  「で、出ねぇ……出ねぇぇよぉ……!!」

  切羽詰まった喚き。首筋を緊張させながら両眼をつぶっていた。

  大便は想像を絶するほどに固くなってしまったのか、念願の排便であるのに、一向に汚物が出てくる気配が見当たらない。先程の射精以上に難航しそうであり、虎は食い入るようにウルフの様子を目に焼きつける。

  「う、ウゥゥゥウ!!」

  ウルフは意を決したように、指を肛門にあてがっていた。

  まず、肛門の周辺を指でなぞりあげ、どう詰まっているのかを確認。

  穴の中央に指を直に押しつける。挿入し、前後しながら肛門を慣らす。

  あれはポルノで目にした。挿入前にする愛撫そのもの。視線が集中する。

  利き手の人差し指と中指の二本を使い、もう片方の手で肛門を広げていた。

  「うぅう! でろ、でろよぉ……! いてぇ、いてぇから、くるしいから…………」

  泣きじゃくり疲れ果てた子供より、ずっと弱々しい、そんな上ずり声だ。

  何度も肛門に指を往復させ、時に輪郭をなぞるように揉み解す健気さ。

  これだけやっても尻の毛の奥に潜む肉穴は、肝心な便を降ろさない。

  ぬちゅ! ぬぐちゅっ! ぬっちゅるっ!

  愛液が染みるみたいに、目に入れたこともない茶色い汁が込みだす。

  ここまで腐り果てた溝の悪臭がした。下水道の生活排水すら上回った。

  ウルフは筋肉という筋肉に血を溜め、へその周辺を凹ませていた。

  「こ、こいよ……! 頼むから、おれ……はら壊れる……しり、くるしい……」

  懇願をしようが腸は応じない。腐ったものを蓄積しながらも動きを強制的に止められていた。カチカチにこわばって、排出する元気を失ってしまっているのだ。

  「アアァ……でろ、こい、こいよ……いてぇから、でろよぉ……」

  ここまでやっても肛門が柔らかくならず、奥に詰まったものは影も形もない。

  ウルフは両手で尻を割り開き、ふん、ふん、ふん、と何度も息む。腸は不動だ。

  顔を充血させる。涙を零しながら鼻をすすりあげる。寒いみたいにプルプルと肩を揺さぶり、膝を上下させているのは勢いを内蔵へ伝えるためだろう。臭気がこちらに飛んでくる上に、尿や精液が波打ち、なんとも情緒的に感じられれた。

  ビュッ……!

  虎は鼻を舐めあげ、そのパンツをビクつかせ、重みを増やす。

  隣に腰掛けるドーベルは無言。それでも風変わりなものを見たと目で語る。

  「ウウウウウウ! ウゥゥウゥウン!!!!」

  

  ぶんっ! ぶんっ!

  ウルフはスクワットでもするみたいに、腰を上下させて尻を振っていた。

  あんなに振るわれた尻尾はおとなしいもので、排泄できない辛さに捩れている。

  尿を開放した勃起は萎えている。だから、揺れに「ぺたぺた」と音を添え賑わす。

  何か手応えがあったのか、ウルフの耳が外側にひらくのを、虎はしかと目に入れた。

  「ううううううっ! ううぅ、う……うぅうう! うぅ……ンンンンッッッ!!」

  男らしい狼。そんな彼が下品な排便スクワットをしながら、泣きじゃくった。

  踏ん張れば踏ん張るほど、奥に詰まったものの巨大さを実感し、絶望している。

  しかし、彼の奮闘は無駄に終わらず、たしかな成果が訪れる。ガスが、動いたのだ。

  ブブオォゥウウウウウ!! ブススス!! ぶすうっぅうう!!!

  ウスススス! ぶぶぶううぅぅうう!! ぶっ! ぷすすうううううう!!!

  ウルフの表情は希望を握りしめ、パッと明るいものに彩られていた。

  これまで、ウンともスンともしなかった腸。それがガスを押し出した。

  出てこないから、出てきそうだと感じられたのは、ウルフに力を与えた。

  「そのまま……そのまま……出てくれ、もうちょっと……ケツ、ひろげるから……!」

  ブウゥゥううう!! ぶっ! ぶっ! ぶうううっっ! ブスウススウウ!!

  ブススウスススウウウスススウスウ!! ブブブブブブブウ! ブウゥウゥゥウ!!

  硫黄や腐敗臭。いわゆる腐った卵のそれが混じり、腐乱したいが側にあるみたいだ。

  一瞬だけ垣間見えた肛門。色を失い、灰色に程近くなっていた。だが、次第に色を取り戻し血色をよくし、濃いピンク色に変わりつつあった。

  ぶうぅうう! ぶっ! ブスッ! ぶすすすすすぅぅううぶぼぉお!!

  離れているのに、ドーベルは鼻をまんでいた。

  虎は臭いのも学びと捉え、念願が叶ったのを悦ぶ。

  ぶちゅうううううう!!!

  乾いていた屁が、突然に潤いを強めた。

  肛門から多量の……黒い汁が飛び出していた。

  墨汁でもつけたみたいに、どろどろとした油汁である。

  「出る……出せるんだ……おれの、うんこ、出せ、やっと、出せる……アオォオォオォオォォオォォオオォオォオ」

  痙攣しながらの遠吠えは、何度もブレていた。

  ぐうぅぅ……ぐっ!

  徐々に広がる、血のめぐりを取り戻した肛門。

  右手も左手も尻たぶに引っ掛けてあり、拡張を手伝っている。

  ぶうぅうう! ぶぢゅうぅうう!!

  少しずつ、おならがおさまり、相反して腐った便臭が増加した。

  とてもひとの体から出てきていい臭いでなく、虎はじっと見つめる。

  「ぅうぅう、うぅうぅうううぅうぅうう……うぅ、うぅぅ………………ぅうぅう!!」

  ウルフはぼろぼろと大粒の涙。多量の汗も相まって、全身で号泣しているよう。

  四肢の筋肉を張らせ、腹筋を力いっぱいに凹ませている。一糸まとわぬ汗だらけの野獣が繰り広げる。文字通り、死にものぐるいの排泄行為。肛門がせり出るほどに強く力みながら、排便をしようとしていた。

  ぶっ! ぶっ! ぶすぅぅうぅ~~~~!!

  ブチュチュ! ブッチュゥゥウウゥウ! ブジュジュジュウジュウ!!

  ウルフは涙ぐみながら、あぁ、と喜ばしげに目を閉じる。

  尻から真っ黒なものが垂れている。便の一部が混じった腸液は、汚物の到来を告げるに事足りていた。

  ブッ! ブチュチュチュッ!

  「あオォぉお!! あおぉぉおぉおぉぉお! ケツ、すれるぅぅう!!」

  天井を剥き、理性を失った笑みを浮かべ舌を空間に泳がす。

  ぶ……ぶりゅ……!!

  ほんのすこし、何かが視えた気がした。

  ウルフは両手で尻を拡張したまま、便器に跨がったふうに腰を下ろす。

  目と閉じ胸筋を張らせる。首の筋を強調しながら、膝を笑わせていた。

  軽く膝をバウンドさせ、また排便スクワットを試みているようだった。

  ぶりゅりゅ……ぶ、りゅりゅ…………

  

  とても肛門におさまりきらないものが、そこを強引に押し広げる。黒い先端が外の空気を吸っていた。

  「出る、出る、でるでるでる……うんぅ、ムゥゥ、ウゥゥウウウウ!!!」

  ウルフの力み、息み、それにあわせ肛門が形を変え、充血してしまう。

  不思議なほど硬い。ごつごつとした石を縦に連ねたような大便が、いま出てきた。

  「オオォオォォオオオ!!! アォオゥウウゥオオオンンン!!」

  吠え、だが出しきれずもどかしそうだ。

  「頼む……もう、もう無理……死ぬ………………」

  そう悲痛な声を、自らの腹に浸透させていた。涙声で、途切れ途切れ。

  ウルフはハァ、ハァ、と息を整えていき、再び吸いあげ、また踏ん張った。

  一ヶ月。長期間に渡り、排便を禁じられていた腸内は、やっと活力を取り戻す。

  内壁は本来の役割を思い出す。ぐねぐねと蠕動しながら、汚物の排出に力を注ぐ。

  「オオォオォオオォオォンッッンンンッッ!!」

  ついに腹の中で腐敗と蓄積をくりかえしていた汚物の塊が、移動していった。

  パタ、パタ。ウルフの尻尾が動き出す。舌が垂れ目に緩みが戻り、排尿のとき以上に明るくなった。もう大丈夫だと、悟っているのだ。

  ぶうぅうぅう……ぶうすすうぅうう……ブチュチュチュチュチュッ!!

  肛門がゴムみたいに伸ばされながら、ウルフ本人の手首より一回り大きいものが、小便溜まりに触れようとしていた。腸内は振動し、波打ち、一ヶ月も出口を塞ぎ圧縮されていたものを追い出していった。

  「アオォオォオオオッ!!!」

  ブチュッ!

  黒い汁と放屁が水たまりに足された。

  アスファルトを両手で握り形成したような、ゴツゴツと水分の感じられない大便。

  同じく腐った腸液を染みさせながら、凹凸に伝わせながら、外にゆっくりと落ちる。

  「ォオォオォオオンンンン!!」

  太さもさることながら、長さも凄まじいものがあった。

  ブリッ! と出し切ったのかと思えば、本当にウルフの腕一本はありそうな長さ。

  それが白濁を押しのけ、尿を染みつかせながらカーブを描き、積み重なっていった。

  ブリブリブリィィイ!

  ブッブブッツ! ブチュチュリブチュリリリリ~~!!

  時々、腐臭ガスを伴いながら、便をちぎらせずに積んでいく。

  アルファルトさながらに黒く硬い便は、半端にカーブをつくるか、自重で折れ曲がるかのどちらかであった。

  「あんな、トレーニングをし続けた肉体から、真っ黒の汚物が飛び出してくるなんてすごいです……健康に気を使ってそうなのに、なんて不衛生でしょうか」

  まだ見ぬ世界の扉を、今日はいくつも開けられた。

  ウルフの尻の下に、大量の汚物が鎮座していき、一塊になる。

  顔を赤くし、猛烈なほど息むその狼の面構え。汗だらけで毛が寝ていた。

  久しぶりの排便に歓喜しているのか。涙が、一度も止まっていないようだ。

  「んう……んぅうう……ンゥゥウゥウウ!!!」

  すべては順調に進んでいるのだと、虎も思っていたが、ウルフはぐずりだす。

  尻を左右に振って、なんとかしようとしている。どうやら、最も太い部分を出していなかったらしい。

  ブウゥウゥウッ! ウブスウウウウゥウウチュチュッ!!

  「ハァァァァ……ハァァァァァァァァ……うう、ハアアアアアッ!」

  ウルフは息を吐き切り、腹痛や排泄痛に喘ぎながらも、手で尻をひろげた。

  自分の手首よりも太いもの。そこの一箇所は、ウルフの握り拳と同等だった。

  ぶる! ぶるぶるっ!! 鍛えあげられ漲る臀部が、汗を垂らして戦慄き出す。

  その間にも尻を指で強引にひらき、尻たぶは左右に分かたれてしまっていた。

  「ぐ、フゥウゥウンンッッッ!!」

  ブウゥウゥウ!! ブチュチュルルルブッチュチュッ!!

  またしても不快な音をあげながら、悪臭をあげながらの、尻を力ませる。

  すー、はー、とガスを吸いあげているから、たまに咳き込んでしまっていた。

  真っ黒な大便。こねられ固まったコンクリートのように密度があり、小便や精液に浸り二重三重に積み重なっても形状が変わることはない。それが、握り拳ほどもある。

  ブウウゥゥチュチュチュチュチュッ!!

  「アオ……ォオおおおおおおおおおお!?!!?」

  舌を突き出しながら、悶絶してしまった。

  あまりにもでかいものが内壁を擦りながら、拡張しながら排出される。

  黒い握り拳が、ボコンッ!! と引っ張り上げられたように、オレンジ色の飛沫をあげた。

  「おおぉおぉぉおぉおおぉおお!!!? おおぉおぉ!!?!?! ぬおおお!?」

  ドーベルと違っていた。ウルフは腹がへこんだからか、前かがみになりながら口を水平に、大声で喚き始めている。重みが腹から取り除かれ、あの丸みがなくなっていた。

  ブウゥウウボオォォオォオオオオ!!!!

  ブチュ! チュチュウウウウウ!! ウブブウウブウボボボボボッ! ボボッ!!

  特大の塊が出てからは、それはもう景気よく、もりゅもりゅと流れ出ていく。

  「オォオオオォオォ……オオォォオォオオオッッ、オオオオオ!? ウオオオンン!! ウォォオンッ!!!!?」

  ぶちゅぶぼぼおぼおおおおこおお! ぶぼちゅおぼうぶおおおちゅううう!!!

  息を止め、んぐぅう、と尻に力を注いでいた。黒いものが、ブチュッ! と押し出されていくと。肛門がぽっかりと開き、

  ぶ! ぶぶぅ…………ぶぽっぽっ!

  ウルフは酷使した穴を充血させ、呼吸を整えていく。

  

  「ご、御主人様……だしおわりました……俺の排泄管理は、ここまでと、なります、ごまんぞく、い、いただ、け、た、でしょうか?」

  「はい……大変に素晴らしかったです。これ以外に言葉が出てこないほどに、僕は感動させていただきました。ふたりとも、心から感謝をもうしあげます」

  お辞儀をする際に、パンツの中のねっとりした具合に気づいた。

  しなしなになった股間は、どろどろの体液を浴び、股の間まで汚れている。

  それでは、とドアに向かおうとしたとき、「あっ」とウルフの声があがった。

  「あの御主人様……ジャグジーと、衣服洗浄のサービスがございますので」

  「どうぞこちらに……俺たちも御主人様が入らなければ、その……汚れを流せないので、よろしければ。俺たちと入浴をしませんか?」

  すがりつくような視線を向けられては、断れるはずもなかった。

  一ヶ月も汗だくで、フェロモンや老廃物を漂わせては清めたいはず。

  同時に、これほど射精したパンツのまま運転するわけにもいかなかった。

  帰宅する際に万が一が起こるのは避けたい。また精液に塗れていれば犯罪の疑いをかけられても、言い逃れるはずもなし。

  「あの、恥ずかしながら、僕はジャグジーの経験がありません。どうすればいいのか、教えていただけるでしょうか?」

  ん?とドーベンとウルフは顔を見合わせていた。

  勉強狂いの毎日であったから、そうした知識さえない。

  公共の場での入浴。そのマナーも頭に入っていなかった。

  それからすぐに、はい、よろこんで。そう言ってもらえた。

  [newpage]

  花びらを散らしたジャグジー。

  体の淀み。疲れなど、不要なものを落としてくれる心地よさがあった。

  泡立ちながらも甘く優しい香りに包ませ、毛の隅々までを洗浄してくれる。

  そして、ウルフとドーベルに挟まれながらの入浴は、のぼせてしまいそうだ。

  今度は両者が興味を晴らすターン。なぜこんな性癖なのかと質問をされた。

  幼い頃から知るのが大好きだったことや、これといった趣味もなかったことを掻い摘んで説明していく。ポルノを見ていたら男のほうにばかり目がいって、気がつけば男のほうも好きだったなども、ジャグジーを満たす泡みたいに、ぺらぺらと喋ってしまった。

  「なら御主人様」

  意味深に見つめてくるドーベルの横顔。

  「今度は情報じゃなく、私を楽しんでくださいよ。私は男のほう専門です。チンポもアナルも、どちらとも、サービスしてさしあげます。どうでしょう? セックスやプレイを知れば、そんな情報では物足りなくなりますよ」

  魅力的な提案に、恥ずかしながらジャグジーの中で勃起してしまう。

  

  「いえいえ御主人様。俺のほうが相性がよさそうですよ? 糞を溜めてなかったらもっとカッコいいところを見せてあげれましたし、俺のほうが耐えられる男らしさがあるから排泄管理のほうを任せた。そうじゃありませんか? どう? 楽しんでみないか」

  最初は丁寧な物腰であったのに、急に親しげに言われた。焦っていると、湯を浴びた左腕を絡め、右腕で力瘤をつくってみせられると、ますます興奮する。

  「あのですね。僕は、どうすれば……」

  「御主人様。もしかして恥ずかしがっているのですか?」

  「俺そういう男タイプなんだ。どう? 延長してみないか?」

  ふたりはすっかり落ち着きを取り戻しているようで、体に不調もないのだと微笑んでいた。

  「その、どうしようか、悩んでしまいます。ドーベルとウルフも、休養が必要だとおもいます」

  「なーに、そんな寂しいこと言わないでさ……延長の連絡を入れてくれれば、すぐ俺と遊べるよ? 俺たちとかな?」

  「そうですよ、もし初めてなら、しっかりと対応させていただきます。いかがでしょうか? 私たちの一月分の欲情を……共有してみませんか?」

  変だとは思う。こんな筋骨隆々の雄に目を細められ、あたふたとした。

  ここでは許されることであり、もっともっと遊びたいとも感じていた。

  「そう言ってもらえると嬉しいです。ほんとうに夢のような時間を提供してくださり感謝しております」

  無理難題を頼んでいた自覚があるだけに、ふたりの対応はありがたかった。

  同時に演技をしてくれているのだとおもっていたが……時間が経つに連れて、本気なのだと思い知らされた。

  「ぼ、僕はその、今日は心の準備が出来ていません。またの機会に、楽しみたいとおもいます」

  虎は言いながら、逃げるようにジャグジーを出た。

  ふたりは残念そうにしながらも、手を振ってくれる。

  またの御利用を、御主人様

  だから虎は精一杯の感謝を込め、一礼をしてみせた。

  すでに乾かされた衣服が、出入り口の付近に置かれていた

  「今日は素晴らしい体験をありがとうございます。また、指名させていただきます」

  廊下に出て、はぁぁ、と胸に手を当てる。

  まだ心臓は高鳴ったままであり、その調子を二日も維持していた。