【サンプル版】スケープゴート【街娼本】

  都内某所、ヒト科性風俗店「ScapeGoAT」

  本来のスケープゴートは、集団での不平や憎悪を他にそらすため、代わりに罪や責任をかぶせられ迫害される人のこととされる。

  おれの職場であるこの店の由来はそんな意味を、より広義的に、より現代チックに幅を利かせているらしく「つまらなく変わり映えのしない日常生活を、刺激的で魅力溢れるキャストたちがシモの世話も含めて面倒見させていただきますよ」という解釈でつけたらしい。

  GoATのAとTが大文字なのも理由があって、よその国でGo ATというスラング?略称?そういうのがあるんだと。Greatest of All Time(史上最高の)だったかな。そうなるとScapeが示す花茎って所謂おれたちキャストを自虐めいたニュアンスで指しているんだろうか。

  兎にも角にも、ダブルミーニングで客側と店側の双方向を示唆を匂わすような店名は、シンメトリーな美術品を目の当たりにしたような、頭にビビっときたのを覚えている。

  おれはGoATでしか働いたことがないのだけれど、風俗店としての方針にしては変わったシステムを取り入れているらしく、いわばマッチングアプリの様相。

  客は入店時にフロントで会員情報を開示して、その日在籍しているリストの一覧から容姿、年齢、タイプ、可能なプレイスタイルなどからなる指定したいキャストの条件をチェックしてから好みの者を第三希望までチョイスする。

  キャスト側というと、会員情報に紐付けられたデータを通して、接客のリクエストを送ってきた者の顔、種族、年齢、セックススタイル、来店回数、指名回数、最終来店日が分かるようになっており、その上で対応可否を自分で決めることができる。

  弾いても上からの査定が下がるといったペナルティは無く、客にも通知されることはない。そのための複数希望を取り入れているらしい。

  これにより入店からサービスが始まるまでの間、起きうるアンマッチの要素を互いに極力排除できるように構築されている。ふらっと訪れた一見さんには半端じゃなくハードルが高い仕様なことを店も理解しているようで、客自体が完全紹介制。よって創立から特にめぼしいトラブルに発展したこともないのだという。

  キャストによってもてなせるコースも異なるため、当然のことながら店は24時間営業だし、料金形態もバラバラ。

  併設された廃ホテルを店が買い取ってリフォームしたものを使っているだかなんとかだから、わざわざ自宅待機して出てくる必要はなく、外で別のラブホテルを手配することもないから従業員にも優しい造り。

  事前予約なら顔合わせの若干手間のかかる時間をすっ飛ばせる上に最終料金から一割引き、キャストには歩合のボーナスが件数ごとに加算。だから双方ともにwin-winな関係性が作られる。だからキャストは一度指名が入れば、次回からは予約を入れてもらえるように献身的に自分を売り込むんだそう。

  決まったお客さんがつくまでは大変なのだけど、地に足がついて立てるようになれば生活はもちろんのことお金にも、そして性欲にも困ることがなくなるから良いところだと思っている。

  ピロン

  ん。

  ###指名の予約があります、ご確認ください###

  〜本日18時から〜

  漣 哩(さざなみ まいる)、虎獣人。192.102.54.22。

  喫煙者でゲイ寄りのバイ、リバ。趣味は筋トレ。

  来店回数23、お泊まりコース。

  【メモ】

  漁師。飴をくれるので何も食べずに行くこと。

  性にオープンで奔放。

  下着は褌派、右乳首にリング有、絶倫。

  ……ということだから。

  「いってきます」

  -------------------------

  「よう、飴ちゃん食うか」

  哩さんと出会えば、決まって彼が一番に発する言葉がそれだった。すっかり聞き慣れた、そんなわけでもないけれど、何人か並んで声を聞き分けろと言われたらすぐ分かるくらいには聴覚に馴染んで居心地が良い。まだ知り合って一年になるかどうかという関係性ではあるものの、優しくてかっこよくて、毎月何回も足を運んでくれる哩さんは、お気に入りのお客さんだった。

  視線を四十五度下げた場所にある彼の手は、とうの昔に瑞々しさを何処かに置いてきて失くしてしまったらしく、同族と比べるとやや毛並が寂しい。

  老いて抜け落ちたというのもあるだろうが、それよりも別の力で根こそぎ剥ぎ落とされたような、そんな風に形容できそうだと思った。

  壮年のパーをまじまじと観察するまでもない。肉体労働に酷使されてきた苦労が、ありありと浮かぶくらいに皮膚は厚く、ところどころに生々しさを感じさせるマメの隆起や、声に出して数えるも億劫になるほどのキズが無数に居座っている。これを見てから自身のそれを掲げ比較しようとするのはあまりに愚かで、厭らしく無礼で、烏滸がましい。

  確か仕事は漁師だと、そう耳にしたことがある。

  きっとその中で出来たある種の勲章みたいなものなんだろうと、今更聞くわけにはいかない情報を独りよがりに憶測と繋ぎ合わせて適当にまとめ上げた。

  美容に気を配る素振りなど微塵も感じさせない、むしろガサツさのみというバッドステータスに思われる要素を、男らしさというポテンシャルでカバーした結果、総合的にバランスがとれて良くなったみたいな。彼を対峙するたびに思うのはそんなところだった。

  漁師なんて男らしい仕事に比べて、こちらは単なる男を求める水商売。同じ水のお仕事なんですねー、なんて自虐めいた社交辞令でも吐き出そうもんなら、二回り以上離れた年配のお客さんだから仕事にプライドを持っているに違いなくて、不快になるに決まっている、そう思って言えなかった。

  「いつもありがとう」

  計算高くどんなリアクションをしてやれば気を良くしてくれるだろうと、考えを張り巡らせながら悩ましく目を泳がせる演技。

  それこそコンビニでもスーパーにでも売っていそうだから、わざわざ買おうとまでは思わない、そのくらいの個包装の飴玉がちょこんと鎮座している。

  チープだが目を惹くように銀色の光沢を纏ったプラスチック包装の、ひとつひとつが異なる色合いを持っていて、各々が食べてくれと此方に向けアピールしているようだった。手中に居座ったフレーバーの外見から推察するに、赤色は林檎もしくはイチゴ、黄色は檸檬かパイン、紫ならたぶん、だいたい葡萄。

  目を泳がせ舌に載せた味覚を想像していると、じわりと唾液が込み上げてくる。未だ何も口にしていないというのに。その様子が面白おかしく映ったのか、壮年は瞳を細め鼻を鳴らした。

  表情の口角が上がっているところを見ると、さっさと貰わなかったことに苛ついた様子ではなさそうで、どうやら飴ごときで選り好みをしている様が面白おかしく映ったかららしかった。

  日頃から陽の光を浴びない自分からすれば、否が応でも年中身を焼くに違いない獣人の肉体は、歳を経るとは別に日焼けの要素も体毛の色褪せに加担しているのでは、と要らぬ世話まで考えてしまうほど。

  「これ、何味?」

  「ハッカ か何かじゃねえか」

  「ふーん……ありがとう」

  「おう」

  "お堅さ"の要素はまるでなく、そう口にした目の前の男と、なんとなく推察されるイメージからはどうしても族っぽいというか、ソフトめに言って荒くれ者。昔ヤンチャしてました感の。実際は、たぶん違うんだけど。

  貰った飴玉を転がしながらありがちな世間話をして、口の中がちょうど空っぽになった頃だったと思う。

  「浬」

  彼がおれの名を口にしながら、今から大木でも掴むのかというくらいに大きく広げて見せた量の腕。ぶわっと風が来たような錯覚がしたのは、腕から発せられた風圧を肌が感じたからではなく、目に見えぬ彼の匂いが嗅覚をくすぐったからであろうか。

  四季は秋をとうに過ぎ、暦は徐々に冬支度を始めているというのにこの親父ときたら、年がら年中真っ黒なインナーの上から無地のTシャツを一枚重ねただけ。よくもまあそんな格好で周囲の目を気にも留めず、この店まで足を運んだものだ。と、見ているこちらが不安を覚える出立ちは例に漏れず本日も滞りない。

  おれ自身もまた、煙草を吸う身だから分かる。店に来るまで道中、コンビニかどこかで一服してから訪れたのだろう。逞しい男のフェロモンに混じって、微かな副流煙が鼻腔を通り抜けた。

  「会うたび言ってる気がするんだけど」

  「おう、なんじゃい」

  肘を折り曲げずとも、いくつもの固そうなこぶが連なって出来たように見える肉付きは、ボディビルダーのそれだと嘯かれても安易に信じてしまうことだろう。手に触れるまでもなく鉄のような頑丈さを彷彿とさせ、無機物とは異なり血が通ってヒト肌よりも暖かみを感じさせるだろうと考えてしまうほど。

  「寒くない?」

  虎の上半身はたった布地二枚の軽装で、その姿はとうに見慣れた以前に思い返してみればこれ以外に見たことがなく、他に服を持っていないのかと怪訝な目をされても仕方がないと思っている。

  彼がコートにマフラーなんかしてウチの看板を潜ってくる日があるとするならば、その日の外はきっと店に素泊まりを視野に入れるほど極寒の銀世界であろう。

  「俺もそう言われるたびに言っとるんだが」

  「うん?」

  「浬が暖めてくれるんじゃろ」

  見ているこちらが寒くなりそうだから厚着して欲しいのだけど。という遠回しのお願いは空振りに終わって文言通りに受け取って見せた挙句、さも当然のように笑顔でこう言い放つ虎親父。敢えて分かった上で、そう返答しているようにも感じられる、そんな彼の一直線な目つきは逆に好ましかった。

  「……まあ、善処は……、しますけど」

  「よろしい、素直で可愛えなぁ」

  内装はラブホテルと大差ない一室の、彼の両腕に身体を落ち着かせて少しずつ体重を預けていく。ガタイも人生経験も大きな、壮年の肉体から成る存在が自身の肉体を覆うのに十数秒、といったところ。

  前後の光景はまるで、子供と大人のじゃれ合いのようだった。

  「寒くねえか」

  「ちょっとだけ」

  「おっしゃ、一緒にあったまろうや」

  大柄な彼にすっぽりと包まれてしまえば、庇護されているような感覚を味わえる。実際、こんな体勢で湯船に浸かったこともあった。

  彼はヒトより体臭の強い獣人種なのに、抱き締められても不快な思いをしたことがないのは、きっとシャワーを浴びてから来てくれたからで。

  一緒に風呂入るか、と誘ってこないのは、年齢を加味すると先にセックスをしたいと言い出しにくい彼なりの意思表示なわけで。

  今、俺は虎の膝の上に腰を下ろし、背中は立派な胸板に預けている。完全に体重をかけてしまえば口元に髪の毛が入ってしまうんじゃないかという雑念が邪魔をしてしまうせいで、やや首を力ませた俺の姿勢は長い目で見てもあまりよろしくはない。

  「ほれ」

  遠慮に気づいてしまっていた虎は、自然にか、はたまたそれ以外。獣欲によるものか定かではないにせよ、後ろから抱きすくめるように密着してきてくれる。

  未だ互いに衣服を身に纏っているというのに、水が布地に染み込むように体温が科学繊維を貫いて、少しずつ混ざり、心地良い温かみが背面から感じられた。

  ふわふわした毛並みは肌を執拗に刺激してこないし、柔軟剤を使って洗濯した羽毛生地みたいに鼻をうずめたくなってしまうほどいい匂いがした。

  「ありがと……んっ……」

  能天気な思考を妨げ現実に戻してくれたのは、胸元を這いずり回る太い指の腹。

  優しく撫ぜる程度だった動きは徐々にポイントを捉えながら早さを増し、親指と人差し指の先がおれの筋肉を挟み込んで刺激を与えてきた。

  「相変わらず柔っこくて可愛ぇなあ」

  「あっ、ぅ……、恥ずかしいから言わないでくださいってば、ぁ」

  「せっかく褒めとるんに、もっと喜べ、んむッ……」

  耳たぶを食まれると反射的に声が出てしまいそうになる。おれの喉奥から絞り出される艶やかなそれは、すっかり色香を含んでいた。

  「ん、ちゅ……、ふ、ぅ」

  舌先でちろちろと舐られ、唾液を塗りたくられる。

  ぴちゃ、ぴちゃ。と水音が鼓膜を震わせれば、すぐさま信号となり脳髄にまで響き渡った。

  「もうメスの顔しよるぞ」

  低い声で囁かれる言葉のひとつひとつが、鼓動を高鳴らせる要因となる。確か既婚者だったはずだから、奥さんにも同じことを言って抱いていたのではと思わずにはいられない。

  背徳感が漲る。

  顔が熱い。

  羞恥心で紅潮した頬は、きっと目の前の親父には筒抜けだろう。事実、彼はこちらの表情をまじまじと見つめながら、愉悦に満ちた笑みを浮かべていた。

  俺の手首を掴み取るとそのまま布団に押し倒される。慣れた流れ作業を見せるようにスムーズに馬乗りにされた状態で再び覆い被さり、半ば無理矢理に頬へ口づけを落とされた。

  「ン、っ……、ちゅ、ぷは……助平な顔して、悪い子じゃなあ」

  「だって、」

  「すぐ濡れるしな」

  そう言って股間の膨らみを押し当ててくる虎の下半身は、熱を帯び始めている。雄の荒々しい吐息が首筋にかかり、ぞくりと肌が粟立つ。興奮してくれているようで嬉しくなった。

  おれは今からこのケモノに食われるんだ、そう認めざるを得ないこの刹那的な感覚が堪らなく好きだった。

  俺はキャスト、風俗の、娼夫、今この時はこの人だけの……雌。だからおれは、これから起こるであろうことを期待して、目を瞑り、身体の力を抜く。

  「……」

  辛抱できないとでも言いたげにした哩さんは、肉体を少しずつ露わにしていく過程を唯一の観客であるおれに愉しませてくれるよう一枚、また一枚と、ゆっくりと衣服を脱いでいく。粗雑に辺りへと放ち、ガチムチな虎獣人の独占ストリップショーを経て、ついに上半身が一糸纏わぬ状態へ。

  そうして改めて見てみると力士像を思わせる精悍な肉付きの中、日々の飲酒か不摂生によるものか、僅かに目立つ出っ張りの腹でさえ愛おしく思え、息を飲んでしまう。

  筋肉と脂肪を最適なバランスで蓄えた胸部の、丁度おれから見て左方面に目をやると、その場所には室内の照明によりきらりと光沢を放つ銀色のリングが虎の乳首を貫いていた。

  「見るのは初めてじゃなかろう」

  「いや、その、あんまり……じろじろ見たことないから……」

  虚言ではなかった。

  乳首にピアスだかリングだかはどちらでもいい。一時的なセックスアピールのためにリスクを伴う施術なんかまっぴらごめんだと思っている節がおれにあったし、それを伴ってまで得られるものが何なのかいまいちピンときていなかったからである。

  それを通すときなんざ間違いなく激痛であろうことは容易に想像できる。おれがやれと言われたら全力で断りたいと切に思う。

  けれど、なんだろう。

  哩さんが……。哩さんだから、より男らしさを上げているようで、かつエロさも醸し出しているよう。正面立って見せつけられるようにすると痛々しさは感じられない。

  場所を気にしなければネックレスやらと大差ないのでは、すら思えた。

  「ふぅん」

  虎は興味無さげな相槌を打ち、そのままおれの手を取りながらベッドの上に膝立ちにさせると、自らの胸元に触れさせてきた。

  「ほれ、好きなだけ触ってええぞ」

  悪戯を思いついた無邪気な悪童のようだった。

  言われるがまま、特に断る理由もないために伸ばした指先でいざ触れてみると、獣特有のざらついた感触の中に異物めいた固くて冷ややかな突起。

  それはジョークグッズといった類のものではなく、本物の金属を刺し込んでいるんだと認めざるを得なくて、思わず背筋と指先は震える。安心させる意味を込めてか、おれの頭をわしわしと撫でてくる哩さんは満足そうに微笑んでいた。

  好きなだけと言われたもんだから、乳頭あたりを半時計周りにぐるりと一周させたり、指先で弾いてみたり。光沢の輪っかに指を潜り込ませつつ軽く引き、肉が力に従って追従してくる様を間近の観覧席から見物させていただく。そんな景色は日常でそう簡単にお目にかかれないであろう。

  「ん、ぅ……」

  頭上から漏れた声は、いつもより少し高いトーンで、それでいて掠れていた。

  「……気持ち良い?」

  「おう、そりゃあな」

  おれの問いかけに対して、照れる素振りもなく、ノータイムで平然と言い放ってみせる。素直に気持ち良いと言ってしまえば、自前のプライドが許さないような気がしたところから出た精一杯の抵抗だったのだろうか。

  摘み上げた乳首をくにくにと擦り合わせると、ボディビルダーのポージングらしく力こぶが全身に出来たみたいに肉体を隆々として身体を跳ね上げさせるものだから、ついついそれが面白く何度も同じちょっかいを繰り返してしまう。

  「ん、ぁ……、ぅぁ……っ、ああ、よう、効く……ッ」

  雄々しさを感じさせるバリトンボイスが、いつにも増して色香を増した声色に変わる。それはセックスでしか聞き出すことのできない貴重なものだった。なまじ耳当たりの良い声質をしているせいで、余計に艶っぽく聞こえてしまいおれの加虐心を満たす。

  「ふふ、かわいいね……」

  「ン、がァ……あ"ッ、んおォおッ!」

  言葉では強がっていても、その表情は快楽によって蕩けている。おれの指先の動きに合わせて腰を揺らし、下腹部の硬い膨らみを擦り寄せてくる姿からは、威厳も厳つさも感じられない。

  「あ、ああっ、いいッ!もっと、乳首……、してくれッぇ……っ」

  「いいよ、たっぷりね」

  「あぐっ、ぉ、おっ」

  いくら騒いでも嬌声が外に漏れることもない防音完備。声を荒げがちな哩さんも、この施設が気に入っているらしかった。

  幾度もびくんと反応する体躯。爪を立てて先端を引っ掻いたり、時折優しく包み込んでやる。緩急をつけることで、与えられる刺激が変化するのが面白いのか喉からは喘ぎ声が、口端からは涎が溢れ出しては止まらない。

  おれは知っている。この虎は、バリタチなのにこうして乳首に快感を与えられるのを好んでいることを。だからわざわざリングを付けてまで、日々自らの性感帯を鍛え上げ周囲にもアピールしているのだから。

  「あ、うっ、んぅ、そこ、ばっかり、ぃ、んンぅ、ぅ……」

  「好きでしょ、ここ……弄られるのが」

  「ん、はぁ、す、すきじゃ……俺はッ、浬、お前さんに……乳首をッ……お"ッ、ッんふ、ッあぁぁ……!!」

  「カッコいいよ……哩さん、凄くエロくて、男らしい、もっと、見たい」

  「が、はっ、ふ……、はー……はー……、っ、はー……、っ」

  荒い呼吸が繰り返されるたび上下に大きく揺れる胸部。勃起しきったちんぽは数秒間隔で不定期に震え、既に先端から先走りをシーツの上へと何滴も垂らしていた。

  目をやってしまう辛抱の足りない箇所のことを、勿体無いと思いながら横目に逸らす。

  胸部のリングに指をかけたままに反対側の未施工の山場へ狙いを定めたおれは、舌をほんの少しだけ出しながら淫乱に呻く虎を下方より見据えた。意図はこれだけで伝わるという絶対の自信を持っているから。

  「は、はやく……こっちも……」

  「うん」

  「俺の乳首が好きなんは分かったが、そろそろこっちはどうじゃ」

  「ひゃっ」

  突如として尻たぶを鷲掴みにされ、驚きの声を上げてしまう。

  「おぉ、柔らけえケツじゃ」

  「ちょっ……」

  ひとたび揉み込みぱしんと平手で打ってみせながら、がははッ、と笑う虎は、変わらず年不相応に子供そのもの。そのギャップは既に味わったものとはいっても、不覚ながらもときめく音が心臓から聞こえる。

  「おっしゃ、百戦錬磨の浬といえど、いきなり突っ込んだら痛かろう。じっくり慣らしてやるけぇ、それまで俺のに挨拶しといてくれや」

  ズボンを脱ぎ去るやいなや、布地を突き上げて山になっている股座を指差して、赤い褌一丁になった雄が交尾を誘ってくる淫靡な絵面がたちまちのうちに完成する。

  「えっ、あのっ……」

  おれの言葉を待たずして、虎は褌をスライドさせぶるんと剛直を露わにした。赤黒く血管の浮き出たそれは、天に向かって雄々しく聳え立っている。先端はぱんぱんに膨れ上がり、こうしている今も精子を生産し続けているであろう両の睾丸は、今にもはち切れんほど。

  おれのとは、ヒトとは比べ物にならない。

  長さも、太さも。

  「なんじゃ、お前さんも勃っとるのぅ……ん?」

  「あぅ、あっ」

  「そんな顔せんでも、すぐ挿れやせん」

  「う、うん」

  「ただ、俺のを見て興奮したんじゃろう?それなら、ちゃんと責任取ってやらんといけねえ、一緒に往生しようや……」

  赤黒く怒張したペニスは、やはり先端をしとしとに濡らしていた。

  ※サンプル版はここまでとなります。