今年で14歳の僕には同い年の幼馴染がいる。
虎獣人のトシヒコだ。
獣人はこの世界では珍しくもない人種である。
しかし動物的な見た目から大型肉食獣の獣人であれば、
怖い印象を持たれる事も多い。
クラスで唯一の虎獣人である彼は成長期に伴い、
日に日に巨大になる身体、鋭い爪と牙、
野太くなる声と周りから恐れられて孤立をしているようだった。
トシヒコは、今日も学校の休み時間を俯きがちで本を読みながら過ごしている。
いじめられているわけではないが、なんとなく距離を置かれているといった感じだ。
放課後、久しぶりに彼を誘って帰ることにしてみた。
「トシヒコ、今日部活無かったよね?途中まで一緒に帰らない?」
「あっ、マサト。うん、いいよ。」
こうして二人で帰り道を歩いていく。
「トシヒコ、最近また背が大きくなったよね?今何cmあるんだっけ?」
「最近180cm超えたよ。」
「そりゃ大きいはずだわ!」
「うん。」
ついでに僕は最近160cmになったばかりだから、彼を見上げながら話すのは
ちょっと疲れるんだよね。
「小さい時は背なんかあんまり変わらなかったのになぁ。」
「そうだね。」
やはり彼の表情はどこか暗い。もどかしくなった僕は直接聞いてみることにした。
「っていうか、最近元気ないよね?何かあったの?クラスの奴になんか言われた?」
「えっ……。まぁ、ちょっとね。」
「教えろよ~。幼馴染の仲だろ?」
「いや、本当にちょっとした事なんだけどさ。俺らって、今成長期じゃん?」
「まあ、そうだね。」
「俺は虎獣人だから余計になんだろうけどさ、周りのみんなと成長の度合いが
違うっていうかさ。」
「あぁ、そういうことね。あんまり気にしなくていいんじゃないの?僕だって
ここ最近背が伸びたしみんなそんな時期なんだよ。」
「わかっているけどさ。でもみんなは、俺ほどは大きくならないじゃん?
鋭い爪や大きな牙だって無いしさ。今まで普通に話してくれたクラスメートも
どこか俺を怖がっている感じがするし。
それに俺自身もどんどん大きくなる自分自身についていけないよ……。」
「トシヒコ……。」
「なんてね、まあ悩んでも仕方ないよね。じゃあ、俺こっち帰り道だから。」
「う、うん。また明日。」
彼の姿は何だかやっぱり元気がなさそうだった。
家に着いて僕は、自分の部屋のベッドに寝転がりながらぼんやりと考えていた。
幼馴染として彼の悩みを少しでも軽くしてあげたい。
確かに虎獣人は大柄で怖そうな見た目な人が多い。
見た目で恐れられてしまう面があるのは事実だ。
それに獣人でなくとも今は成長期。
ただの人間だって体の発達は個人差があるのだから、
そもそも違いが出て当たり前だ。
「う~ん、どうしたらいいんだろ……。」
時間が経てば解決する悩みなのかもしれないし、直接解決できるわけじゃないけど
何とか力になってあげたいなぁ。
「……!!」
そういえば、この前広告に入っていたアレ、自分のお小遣いでも買えるはずだ。
僕は虎獣人じゃないけど、アレなら少しでもトシヒコに近づけるはずだ。
そう思い僕はベッドから飛び起きてお店へ向かった。
ある日、マサトから「今日ウチに遊び来なよ!」と言われた。
幼馴染とはいえ家まで遊びに行くのは久しぶりだなと思いつつ、
家にお邪魔するとそこで待っていたのは、虎の着ぐるみパジャマを着たマサト本人
だった。なんのつもりなのだろうか?
「何で虎柄のパジャマ着てるのさ?」
「この前の帰り道で、虎獣人は身体でかくなって困るって言ってたじゃん。」
「うん、そうは言ったけど。それとパジャマは何が関係してるの?」
「僕は虎獣人じゃないし、トシヒコみたいに身体大きくないけどさ。
けど、力になってあげたいと思って、どうしたらいいかなと思ってたら
これが売っている店のチラシ見つけたんだよ!これ着れば見た目少しでも
虎獣人に近づくし、 もしかしたらトシヒコの気持ちになって
考えてあげられるんじゃないかなって思ってさ!!」
「あ、あぁ……。」
「とにかく僕はトシヒコの事を心配してるし、味方だってことだよ!」
パジャマ姿で真剣に語るマサトの姿に、初めは正直何と言ってよいのか分からなかった。でも、自分を心配して元気づけてくれるためにわざわざ俺の姿に近づこうとしてくれるマサトの気持ちは嬉しかった。
「心配してくれたんだね。ありがとう。」
「いいってことよ。それじゃあ、ゲームしようぜ。」
そんなやりとりの後、パジャマ姿のマサトと一緒にゲームをしながら過ごした。
そして時間が経ち、そろそろ帰る時間になった。
「もうそろそろ時間だから帰るね。」
「ああ、そういえばさ。」
「なに?」
「やっぱ、虎は大きい方がカッコいいと思う。」
「急にどうしたの?」
「いや、これを着て自分の姿鏡で見ながら自分がもし虎獣人だったらって考えてたんだけど、もっと身体でかい方がカッコいいよなぁって改めて思ったんだよね。だからトシヒコも身体は大きい方がいいと思うんだ。」
「何それ。身体が大きいこと褒めてくれてるの?」
「まあ、そんな感じだよ!」
「そっか。じゃあまた来週。学校でね!」
「また来週!」
そうして俺はマサトの家を出た。
まさかコンプレックスだった身体の事を褒めてもらえるなんて思わなかった。
虎であることや身体のつくりの違いで悩んではいるけど、
マサトのおかげで、少しは自分の姿が好きになれるような気がした。
こうしてマサトの言葉を思い出しては少しニヤつきながら、俺は家へと帰った。