依存2 ~虎攻め~

  1

  同性婚の申請というのは、わりかしあっさりとしたものだった。

  普通の婚姻届けと同じように、役所に提出して、はい終わり。

  受付の人も慣れているようで、「はい、受付しました。おめでとうございます」とだけ言うとさっさと奥へ引っ込んでしまう。

  「こんなもんなんだね」

  「そうだなぁ。前の嫁の時もこんなんやったからなあ」

  僕よりも二回りはデカい体の虎おっちゃんは、神妙な顔をしたまま、そんなことを呟いた。

  やくざと言われても納得するような厳ついその体。眉が太い代わりに瞳孔は小さく、白目が多い。あごの周りやちらりと見える胸元には、人間のひげのような黒い模様がくっついている。

  ……この人と結婚することになったのかぁ。

  僕はなぜか、他人事のようにそんなことを考える。

  それでも、まったく後悔はなかった。

  おっちゃんは両親ともに亡くなっているから、報告する相手はないし、僕は身寄りが母親しかいない。

  はじめは突然結婚するという話を聞かされて、母親もさすがに眉をひそめていたが(同性婚だし、相手はだいぶ年上だし)、結局おっちゃんの熱意と、一流企業の部長さんという肩書が効いたのか、しぶしぶ納得してくれた。

  ただ、あとで二人っきりになった時に、『あんた、略奪婚だったみたいね。やるじゃない』、とお褒めの言葉をいただいたが。

  略奪したというか、どちらかとされた方だと僕は思っているのだが。

  主に処女とか。

  「虎山、晴孝、か……」

  虎獣人は、呟くように僕の名前を呼ぶ。そのぶっとい眉毛をひそめながら。

  「なに?」

  「なんでもない」

  つぃ、と背けたその顔は、にやにやを抑えきれないといった表情だった。その表情を隠そうとしたのだろう。

  「どうしたんですか?」

  重ねて聞くと、いきなり両手を広げて、公衆の面前だというのに抱き着いてきたのだ。

  「はるたか~!」

  「ちょ、ちょっと!」

  僕は慌てて振りほどこうとするが、もちろん大型肉食獣から逃れられる力があるわけでもなく。

  「やっと……、やっとわしのものになってくれたんやな」

  その声が震えていることに気づいて、僕は抵抗することをやめた。

  「僕はいつだって、おっちゃんのものだったでしょ」

  見上げた視線に入ってくるのは、涙目の厳つい虎獣人。

  「そうは言うけど、ひょっとして途中で気が変わるかもと思うと、気が気でなくてなぁ」

  役所に行く途中に婚姻届けにもしものことがあったらいかんと、5枚も書かされた時にはちょっとげんなりしたけど、それぐらいこの虎獣人には、ハードルの高い作業だったのか。

  「あのねぇ……」

  僕の呆れた顔がわかったのか、おっちゃんはしゅん、とした顔で言う。

  「だって、婚姻届け出す寸前で断られたこともあるから……」

  そりゃ、こんな性格だったら、悪い女なら足元見るかもしれないよな。

  僕は前の奥さんの事を思い出す。

  「ちょっと、わかったから離してくださいよ。みんな見てるでしょ!」

  周りの人たちには、厳ついやくざみたいな顔した虎獣人が、中学生みたいな人間に襲い掛かっているようにしか見えないはずだ。

  「なんでだよ!」

  おっちゃんは俺の言葉に抵抗して、余計にぎゅっと抱きしめてくる。

  「文句言ってくる奴には、晴孝がわしの嫁になった経緯を逐一説明してやるよ! わしに処女を散らされたばかりなのに、あんあん鳴いてしまうぐらい、わしと相性がいいことだって!」

  「おっちゃん、それはやめて……」

  というか、そんな大きな声を出したら、すでに役所の人たちに聞こえているんですけど。

  中には、くすくす笑っている人もいるのだ。

  それでも僕は、このがさつな虎おっちゃんが、誰よりも愛おしかった。

  2

  「会社の連中がな、最近の部長、きれいになりましたねって」

  俺が台所で料理を作っていると、帰ってくるなりおっちゃんは言う。

  籍を入れてから、僕は住んでいたアパートを引き払い、おっちゃんの家に住むことになったのだ。

  「おかえりなさい。……そうなんだ。よかったね」

  僕は手も止めずに話を聞く。

  家事を一切できないおっちゃんに変わり、今は僕が家の中の事全般を担当している。

  「出勤しても、作業着はきちんと洗濯されてるし、毛はふさふさでいい匂いしてるって。今まではあまりの雄臭さに卒倒しそうになってる子もいたんですよ、なんて言われてよぉ」

  そりゃ、あのフェロモンばりばりの雄臭い体臭なら、駄目な人は近づきにくいだろう。

  「それで、会社の人には再婚したこと言ったんですか?」

  振り向きもしないで作業しているのが寂しいのか、虎おっさんは、僕の足にくるりと尻尾を巻き付ける。

  仕方なしに僕は手を止めて、おっちゃんの顔を見た。

  「当たり前だろう!写真まで見せて力説してやったんだ! 今度のうちの嫁は、わしのことが大好きで、ちゃんと面倒見てくれるし、夜の相手だってしっかりしてくれるんやぞっ、て!」

  「……そうですか」

  この人、会社でちゃんと仕事で来てるのかな?

  僕はため息をつくと、もう一度正面を向いて、冷蔵庫から取り出したキャベツを刻む。

  「そうだ、風呂沸かしてるから。さっさと入ってきてくださいよ。汗かいて気持ち悪いでしょ。風呂あがる頃にはご飯できてるんで。……今日はおっちゃんの好きな、豚の生姜焼きですよ」

  「……」

  返事がないからと再び振り返ると、いかつい虎獣人は目をつぶって唇を突き出している。

  「……何やってるんですか?」

  「おかえりのチュー」

  「……」

  僕の無言に不安そうになった虎獣人は薄目を開ける。

  「やっぱり嫌か、こういうの」

  僕はふふ、と笑って、ぶちゅっ、と唇を重ねてやる。

  「好きですよ。……早く入ってきてください。おっちゃん、長風呂なんだから」

  「はーい!」

  元気のいい返事で風呂場に向かう虎獣人。

  ほんとにかわいいなぁ、と思ったのは、僕の心の中だけに留めておこう。

  料理の準備が終わり、ついでに洗濯機を回すかと僕は脱衣所に向かう。

  そこには相変わらずがさつなおっさんが脱ぎ捨てた、洗濯物が山になっていた。

  油で汚れた作業着に、少し脇が黄ばんだ白シャツ。

  離れていても強い雄の匂いのする、ふんどし。

  「……」

  ……おっちゃんはもう風呂に入ってしまっているんだよな。

  本人はここにはいないのだ。

  ……ちょっとぐらい、いいよな。

  ごくり。

  それに気づいた僕は、つい、ふんどしとシャツを鷲掴みにすると、その中に顔を押し付ける。

  「……ああ」

  思わず声が漏れる。

  おっちゃんの匂いだ。

  僕を雌にした、おっちゃんの匂いだ。

  僕は我慢できずに口を開けると、ふんどしの生地に舌を這わせた。

  雄臭さとともに塩辛い味が口いっぱいに広がる。

  ……すごい。

  「……おっちゃん」

  僕は思わず呟く。

  と……。

  「おい」

  ぐいっ。

  幸福感に満たされる僕の肩にずしりと乗せられるのは、大きな掌だった。

  「晴孝、何をしてんだ?」

  「え?」

  慌てて見上げた視線の先には、にやにやと笑う虎獣人の姿があった。

  そこには先ほどまでの甘えたな表情は一ミリもなく、ただただ雄の風格を漂わせている。

  「なんで……。風呂に入ってたんじゃ……」

  「先にトイレに行っとったんだ。……それより、何をしとるんだ?」

  少し詰問口調の虎おっさんに、僕は口ごもってしまう。

  「……あの、その」

  「んん?」

  「……」

  「何をしとるかと聞いとるんだ!」

  「……お、おっちゃんの匂いを……嗅いでました」

  僕は観念して、正直に答える。

  「なんだ、そんなにわしの匂いが好きなんか」

  僕は顔を真っ赤にしながら、こくりと頷く。

  「……うん。おっちゃん、この頃、身だしなみに気を付けるようになったから……」

  最近はずっと、石鹸や香水の匂いをさせていることが多かったのだ。

  世間的にはその方がいいのだろうが、初めての出会いで、あの雄臭い匂いにノックアウトされた僕としては非常に物足りなかった。

  「なんだ。いい匂いさせてた方が、晴孝は喜んでくれるんじゃないかと思ってたけど、そうじゃないんか」

  おっちゃんはにやりと笑うと、心底嬉しそうにつぶやく。

  「そうか、そうか。そんなにわしの匂いが好きか」

  そんなこと言ってくれるのは、晴孝が初めてだ、と破顔する。

  「変態だなぁ」

  僕はその言葉に顔をゆがめる。

  「だって、おっちゃんが……」

  それ以上何も言えなくて、俯いてしまう。

  「よし、嫁の要望に応えるのも亭主の仕事だからな。こっちおいで」

  今までは汗臭いと思い、気兼ねしていたのだろう。

  僕の体をぎゅっと抱きしめる。

  しっとりと濡れた体に息苦しさを覚えるほどの雄臭い体臭。

  僕はその毛皮に顔を埋めて、肺がはちきれそうになるまで息を吸う。

  「今日から日課を変えんとな」

  おっちゃんは僕を抱え上げながら嬉しそうに言う。

  「これからは、帰ってきたら飯を食う前に、嫁を食わんといかんのだな」

  3

  いかつい虎獣人は、お姫様抱っこをした僕をキングサイズのベッドの上に放り投げると、そのまま覆いかぶさった。

  ……ああ。

  その分厚い胸と、豊富な体毛に包まれると、それだけで幸せを感じてしまう。

  汗のすえた匂いと共に、荒々しい雄の獣臭が俺の鼻を通過し、脳まで届くのだ。

  「……おっちゃん」

  甘えた声を出しながらひっしとしがみつくと、虎獣人は僕の頭を撫でてくれる。

  「ああ。晴孝のおっちゃんはここにいるからな」

  その感触に僕は安堵して、僕はその胸毛の中にもっと鼻を潜り込ませる。

  僕を誘惑するフェロモンが濃くなり、それを舐めとりたいと思わず僕は舌を出す。

  ぴちゃり、ぴちゃり。

  にがしょっぱい肌を、子猫がミルクを舐めるように舌を這わしていると、小さなピンク色の突起を鼻先に感じとる。

  ぞろり。

  「あ!」

  それを大きく舐め上げたとたん、虎獣人は大きく体をのけ反らせる。

  「おっちゃん、どうしたの?」

  「……」

  むすっとした顔のまま、無言を貫くおっちゃん。

  「ひょっとして、乳首感じた?」

  ぴくり、と顔の筋肉がひきつるのがわかる。

  僕はもう一度それを確かめようと、再び舌を這わせて……。

  「晴孝」

  がし、と僕の体を押さえつけて、虎獣人は言う。

  「余計なことはせんでもええ。雌はな、雄にアンアン鳴かされるだけでいいんだぞ」

  そう言うなり、何も言い返せないようにそのマズルで僕の口を塞いでしまう。

  くちゃり、くちゃり。

  タバコ混じりの苦い唾液が、僕の抵抗力を根こそぎ奪ってしまう。

  口の粘膜を丹念に舐めとり、逃げるように動く僕の舌を捕らえ、くるくると絡めると、その感触を楽しみながら、自分の口へと引っ張っていく。

  僕はその老練な舌の動きに翻弄され、陶然とすることしかできない。

  その間も、おっちゃんの指の愛撫は行われているのだ。

  開発されつつある乳首を、柔らかく摘まんで刺激したかと思うと、鋭い爪を伸ばし、かりかりと突起部分を引っ搔いてみる。

  「んん……」

  硬軟が入り混じった愛撫に、僕はうめき声をあげそうになるが、塞がれた口はそれも許してくれない。

  興奮した赤く膨らんだ突起は強く嬲られると、それだけでケツの奥をじゅん、と濡らしてしまう。

  まるで、乳首で感じてしまうお前は雌なんだぞ、と僕に教えるように。

  そのことは虎獣人にもわかったのだろう。

  「晴孝、欲しいのか?」

  雄臭い顔を僕の顔に近づけて、虎獣人は囁く。

  「なんで……」

  「嫁のことなど、亭主にはなんでもお見通しだ」

  と、おっちゃんはにやりと笑った。

  「で、欲しいのか?」

  「……ください。おっちゃんの、ください……」

  「ああ?」

  虎獣人は僕を嬲るように言う。

  「はっきり言わんとわからんぞ。おっちゃんの何が欲しいんだ」

  にやにやと笑いながらおっちゃんは僕に意地悪をする。

  その問答で、僕自身に雌だと自覚させたいのか。

  でも、僕はもう辛抱することができない。

  「……おっちゃんの、ぶっといちんぽ入れてください」

  「どこに欲しいんだ?」

  「ケツに、……ケツにください」

  「ああ? ケツは物を入れるところじゃないだろう?」

  「……」

  「こないだ教えただろうが。晴孝のここはなんだ?」

  指先でくすぐられるその刺激に、僕は堪えられなくなって、泣きながら叫んでしまう。

  「め、雌穴です! おっちゃんのためだけの雌穴です!」

  僕のその言葉に、虎獣人は満足そうに頷く。

  「僕の雌穴に、おっちゃんのぶっといちんぽを入れてください!」

  「よしよし、ちゃんと自覚できてるじゃないか。晴孝はわしの雌なんだからな」

  そう言うと、僕の足を掴み上げ、あらわになった雌穴に舌を這わす。

  「あっ!」

  太い舌先は、以前よりも柔らかくなった括約筋を潜り抜け、中の粘膜を唾液で濡らしていく。

  「ひっ。ひぃっ!」

  体になじまされた愛撫は、それだけで快感を与えるのだ。

  「このはしたない雌穴は、ちゃんとわしの舌の形を覚えているみたいだな。嬉しそうにひくついてるぞ」

  「……そんなこと」

  図星を突かれ、顔が赤くなるのがわかる。

  「でも、いつもよりちょっと緩いような気がするなぁ。……ひょっとして誰か別の奴と遊んだりしてないだろうな」

  僕はその言葉に必死に顔を振る。

  ……僕はおっちゃん一筋なのに。

  「おっちゃんのちんぽで、遊んでないか確かめんといかんなぁ」

  すでに先走りでぬるぬるとしているサツマイモのような形状の逸物。それにさらに唾液をだらだらと落として、虎獣人は僕の肉穴に押しつける。

  ……ああ。

  どれだけ掘られても、この肉を裂かれてこじ開けられるような感触に慣れることができない。

  そんな怯えるような僕の顔は、嗜虐心を刺激するのだろう。

  虎獣人は獰猛な獣の笑みを浮かべる。

  「この雌穴を、喰らってやるからな!」

  ずぶり、と肉穴をこじ開け、その太い逸物は僕を雌に変えてしまう。

  「ああああああああああああっ!」

  粘膜に存在する肉襞一つ一つをこそげとるようなその感覚に、僕は体を震わせて吐精する。

  ぶりゅ、ぶりゅ。

  まるで固体のような形状の白濁液は垂れることなく亀頭の上に留まっている。

  「おお、晴孝の雌汁が出てるじゃないか」

  おったんはそう言うと、指先ですくって口に入れる。

  「新鮮で、ぷりぷりで。相変わらずうまいぞ。……今日も枯れるまで搾り取ってやるからな」

  「だ、だめぇ……」

  「あ、駄目だと?」

  おっちゃんの形相が変わる。

  「誰かほかの奴にやる約束しとんのか?」

  「ち、違う。そんなこと……」

  僕は慌てて首を振るが、虎獣人は、容赦しない。

  「ちゃんとわからせないといかんようだな。晴孝はわしだけのもんなんだ。他の男のことなど、考えるだけで罪になるんだぞ」

  そんなことをうそぶきながらも、執着心でいっぱいの瞳で、おっちゃんは僕を睨みつける。

  「お仕置きを与えんといかんようだな」

  ……嫌だ。

  それがセックスの間だけの戯言だとわかっていても、虎獣人の顔は恐ろしかった。

  まるで獲物を離さない、捕食者の顔。

  「わし以外では感じないように、この体をしつけてやるからな」

  がつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつっ!

  「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

  はじめから僕の体を気遣うことない、全力の杭打ち。

  確かにそれは、お仕置きだった。

  逃れようとする僕の体を押さえつけ、体毛を振り乱しながら虎獣人は腰を叩きつける。

  がつん、がつん、がつん、がつん、がつん、がつんがつんがつんがつん!

  「いやぁああっぁぁぁあ!」

  それでも、虎獣人はわかっているのだ。どれだけ激しくしても、その動きからちゃんと快感を貪り食らうことができる体に、僕が開発されているという事を。

  だって僕の性感を丹精込めて育ててきたのは、目の前の虎獣人なのだから。

  「イケぇぇぇ!」

  がつんっ! がつんっ!

  「ああっ! ああっ!」

  杭打ちのたびに、とぷとぷと、萎えたちんぽから、連続して吐き出される白濁液。

  それが固体から液体に、白から透明へと変わるのにさほど時間がかからなかった。

  俺のちんぽからあふれ出た雌汁が、激しく動く虎獣人の体と重なって、卑猥な音を立てる。

  ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん。

  「おっちゃん、おっちゃんんんん!」

  もう抗う余裕すらなく、体を痙攣させることしかできない。

  俺の体の機能のほとんどは、与えられる快感を受け止めるだけで必死だったから。

  がつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつがつっ!

  「くそ! 晴孝。晴孝……イクぞぉぉぉっ!」

  部屋を震わせる、野獣の咆哮。

  びじゅるるるるる!

  僕を孕ませるためだけの雄汁は、肉穴の奥深くに放たれる。

  「ああああああああああああっ!」

  びしゃぁぁぁぁぁぁぁっ!

  不意に僕のちんぽから高く噴き出した潮が、虎獣人の体を濡らす。

  「あは、あは、あはぁぁあぁぁぁぁ……」

  全身をびしゃびしゃに濡らしたおっちゃんは、いつもの笑顔を僕に見せた。

  白目をむいて、びくびくと体を痙攣させる僕に。

  「どうだ、こういうのもたまには刺激があっていいだろ?」

  「……」

  4

  

  僕を一泣きさせた後、続きは後でな、と言い、おっちゃんは風呂へ入った。

  最近は僕の体をコントロールするのがうまくなったというか、休日前以外は、腰が立たなくなるほど責められることが少なくなったきた。

  その分、毎日のようにおっちゃんのものになっているのだが。

  ……ていうか、まだやるつもりなのかよ。

  少しばかりげっそりした気持ちのまま、おっちゃんと入れ替わりにシャワーを浴びて出てくると、テーブルの上には、不器用なりに僕の作った料理がセッティングされていた。

  「……ああ、用意してくれてたんだ。おっちゃん、ありがとう」

  僕がそう言うと、おっちゃんは嬉しそうに笑う。

  「そんなん言ってくれるのは晴孝だけだ。前の嫁さんは盛り付けが汚いだのいろいろ言われて……」

  嫌なことを思い出したのか、表情が少し暗くなる。

  「もう、そんなこと考えなくてもいいから、早くご飯食べよ!」

  「ああ、そうだな」

  「それにしても晴孝。別にバイトなんてやめてもいいんだぞ。学費だって小遣いだって、わしが出してやれるんだから」

  僕はいまだに学校へ通う傍ら、バイトをしている。家事もしないといけないから、シフトはかなり減らしているが。

  「大丈夫だよ。バイト先も人手が足りなくて大変みたいだし」

  この人、隙あらばどこまでも甘やかそうとしてくるのだ。

  「そうか?」

  おっちゃんは生姜焼きを口に放り込みながら、心配そうな顔をする。

  「無理したら駄目だぞ」

  「うん、わかった」

  僕は頷くが、おっちゃんはまだ何か物足りそうな顔をして、こちらを見ている。

  「どうしたの?」

  こういう時は、些細なことで悩んでいるサインだという事が、最近やっとわかってきたのだ。

  前の奥さんは、そういうことには気づかなかったのだろう。

  「あのな……」

  おっちゃんは促されて口を開く。

  「わしたち、結婚式あげなかっただろう?」

  おっちゃんはやりたいようだったが、僕はまだ学生だし、さすがにまだ偏見がないわけじゃない、同性婚の結婚式を華々しくあげるのもどうかと思い、断ったのだ。

  どうせお金もたくさんかかるだろうし。

  僕はそんなことをせずとも、大好きな人といつも一緒に暮らせたら、それでいいのだ。

  「だからせめて、新婚旅行ぐらいはどうかなぁと思ったんだが……」

  「ああ、それぐらいならいいよねぇ」

  恐る恐る聞いてくるおっちゃんに快諾してみせると、虎獣人はぱあ、と明るい顔をする。

  「一応な、資料はもらってきたんだ」

  ウキウキと立ち上がり、仕事用のカバンを開けると、大量のパンフレットを取り出す。

  「晴孝はどこがいい? 常夏の島にバカンスもええし、北にオーロラ見に行くのも悪くないと思うんだ。大型船で世界一周みたいなのも悪くないよなぁ」

  そんなことを言いながら、パンフレットを目の前にどんどん積んでいく。

  「ちょ、ちょっと待って」

  僕は慌ててストップをかける。

  「これ全部海外じゃん」

  「そうだが?」

  「仕事どうするんです?」

  「有給はいっぱい溜まってるから、一か月ぐらいは何とかなる」

  「おっちゃんは良くても、僕が困るんだよ。学校あるし」

  「休学してもええぞ」

  「……」

  どこの世界に、新婚旅行のために休学する奴がいるんだよ。

  「駄目だよ。行くなら国内旅行だね」

  「そうか……」

  がっかりしたような虎獣人。

  相当意気込んでいたのだろう。

  「僕はわざわざ遠いところに行かなくても、おっちゃんと2人でいられたらそれで満足なんだよ。おっちゃんは違うの?」

  「そ、そうか。そうだな!」

  本当に、ちょろいというか、なんというか。

  「行くとしても、2泊3日ぐらいにしとこうよ。で、おっちゃんはどこか行きたいとこないの?」

  「そうやなぁ。わしはどこでもええけど……」

  不自然な沈黙の後、おっちゃんはこう言う。

  「そうだ、ゆ、遊園地なんかどうだ?」

  「遊園地?」

  ……いかついおっちゃんが遊園地か。

  「駄目か? わし、晴孝が喜ぶと思ったんだけど……」

  「……」

  僕は、そんなおっちゃんをジト目で見つめる。

  「ああもう!」

  すぐに白状する虎獣人。

  「すまん、わしが行ってみたいんや!」

  ……やっぱり。

  「こんなん、わしには似合わないと思って、一度も行ったことないから……」

  「わかりましたよ。で、どこがいいんですか?」

  僕の言葉に小躍りして喜ぶ虎獣人。

  「え、本当にええんか? じゃ、じゃあ……」

  おっちゃんが希望したのは、地方都市にある、小さな遊園地だった。

  「あんまり大きくないけど、こんなところでいいんですか?」

  スマホで調べてみると、寂れた小さな遊園地のようだった。

  おっちゃんなら、ネズミがマスコットキャラの大型テーマパークの方が喜びそうだけど。

  「いや、昔な」

  おっちゃんは懐かしそうに話をする。

  「中学校の修学旅行で、この町に行くことがあってな。この遊園地も選択コースの中に入ってたんだ。でも、遊園地なんか男らしくないだろ? だからわしは別のコースを選んでしまってな。ずっと後悔してたんだ。大人になったら、余計にそんなところへ行く機会なんかないのに」

  「じゃあ、リベンジってわけですね」

  「大好きな嫁と一緒に行けるんなら、あの時我慢した甲斐があったってもんだ」

  おっちゃんは嬉しそうに笑った。

  5

  「ほら、晴孝。早く、早く」

  子供のようにはしゃぐ虎おっちゃんに引っ張られて、僕は遊園地に足を踏み入れる。

  結局、朝から遊園地で遊んで、夜は温泉旅館で一泊という、当初の予定よりもささやかな新婚旅行になってしまった。

  ……まあ、海外行くよりも、こちらの方がいいんだけど。

  この遊園地、あまり目新しい機械が置かれていないせいか、客の数も少ない。

  そもそも、今年いっぱいで閉園してしまうそうだ。

  ……やっぱり、こういう小さなところは、大きなテーマパークには勝てないんだろうな。

  ただ、人が少ない分、ゆっくり回れそうでそれはそれでよかった。

  ……何時間待ちとか、疲れるからなぁ。

  新婚旅行というか、今日はおっちゃんのためのデートのつもりで、最大限要望に応えることにした。

  一緒に手作り弁当を食べたいというので、早起きして作ったのだ。

  慣れないことをしたから、かなり眠い。

  「なあなあ、晴孝。わし、あれ乗りたい」

  元気いっぱいのおっちゃんは、さっそくメリーゴーランドを指さす。

  「そうですか。僕待ってるから行ってきていいですよ」

  ちょっとベンチでうとうとしたい。

  「……」

  そんな僕の顔を、縋るようにじっと見つめる虎獣人。

  「……わかりましたよ。一緒に乗りましょうか」

  「おお!」

  子供のように首を振るその姿は、非常に愛らしい。

  ……そのいかつい顔を見なければ。

  おっちゃんは僕の手を引っ張ると、メリーゴーランドの馬にまたがる。

  「一緒に乗るか!」

  興奮で鼻息が荒いが、さすがにそれは無理だろう。

  「2人で乗ったらさすがに壊れちゃいますよ。おっちゃんデカいんだから」

  「むう、そうか」

  諦めた虎獣人から離れて、僕は一つ後ろの馬に座る。

  「あ、晴孝。動き出したぞ。そうだ、写真撮ってくれ写真。くそ、一緒に乗れてたらツーショット写真出来たのに!」

  周りの子供がドン引きするほど、虎おっさんははしゃいでいた。

  3周メリーゴーランドに乗った後、コーヒーカップにも乗り、満足したおっちゃんは僕の作ったおにぎりにをぱくつく。

  「ええなぁ。夢みたいだなぁ」

  「安上がりでいいじゃないですか。こんなゆっくりできるならまた来たいですね」

  「そうだなぁ」

  その言葉に、閉園することを知っている虎獣人は、少し寂しそうな顔をする。

  「まあ、なくなる前に来れてよかったと思わないとな」

  「何言ってるんですか。今年いっぱいなんだから、閉園前にあと何回か来れるでしょ」

  「そ、そうだな」

  とたんに明るい顔になる虎獣人。

  「そうだ。晴孝は乗りたいものないんか? いや、わしに付き合ってもらってばっかりだし、今度はわしが付き合うぞ」

  「そう? じゃあ、あれに乗ろうかな」

  そう言うと、僕はジェットコースターを指差す。

  小さな遊園地にありがちな、あまり迫力の感じられないジェットコースター。最近の絶叫系ほど満足はできないだろうけど、少しは楽しめるだろう。

  「……」

  「おっちゃん?」

  急に黙り込んだおっちゃんの顔を覗き込むと、慌てたように虎獣人は手を振る。

  「いや、ジェットコースターはちょっと……」

  「……おっちゃん、怖いの?」

  「な!」

  僕の問いかけに、おっちゃんは絶句する。

  「ち、違う! こ、怖いわけないやろ! わし、いい歳したおっちゃんだぞ! でも、ほら、わかるやろ。わしぐらいのお年頃やと、ああいう刺激的なのは体に悪そうだし……」

  「……」

  無言で見つめ続けると、おっちゃんは観念したように言う。

  「高いとこ……怖いから……。それにあんなスピードで走るんだぞ!」

  そんな、逆切れしたみたいに言われても。

  シオシオになったひげを見て、僕は思わず笑ってしまう。

  「あんなの乗ったら、たまひゅんしちゃう?」

  「……漏らしてしまうかも」

  そんなに怖いのかよ。

  「おむつ履きます?」

  「そこまでして、乗らなあかんのか!」

  少し涙目のおっちゃんが、かわいそうになって、僕は笑った。

  「ちょっと意地悪してみたくって。下で待ってて大丈夫ですよ」

  雄の威厳を保てなかったと思っているのか、ずいぶんとしゅんとしているおっちゃんの頭を一撫ですると、僕はジェットコースター乗り場に一人で向かった。

  1人絶叫を楽しんで帰ってくると、未だ落ち込んだ様子で、おっちゃんはベンチに座っている。

  「どうしたの、そんなにへこんで」

  「晴孝に、格好悪いとこばかり見せてるから」

  ……そんなこと気にしないのに。

  でもそれでは、旦那としての意地が保てないようだった。

  僕は笑う。

  「じゃあ、せめて観覧車ぐらい乗る?」

  あれなら、スピードはないから幾分ましだろう。

  「うん、頑張ってみる……」

  おっちゃんは、子供のように素直に頷いた。

  その檻のような小さな箱の中にちょこんと座ると、おっちゃんは下を向いてしまった。

  掌をぎゅっと握るその様子から、緊張がうかがえる。

  僕は正面から隣に座ると、震える掌にそっと手を乗せた。

  「ほら、下の景色を見たら怖いけど、上なら大丈夫だよ。見て、夕日がきれいだ」

  僕の言葉に、おずおずと顔をあげると、おっちゃんは頷く。

  「そ、そうだな」

  「今日は本当に一緒に来れてよかった」

  「本当か?」

  「なに、その疑り深い感じ」

  「だって、わし不甲斐なかったし……」

  その言葉に、僕は微笑んだ。

  「強いだけのおっちゃんより、弱いところも見せてくれるおっちゃんの方が、僕は好きですよ。僕は旦那様のいろんな顔を見せてほしいから」

  「そうか。……そうやな。晴孝がそんな子やから、わしは好きになったんやったな」

  おっちゃんはそう言うと、僕を抱きしめてキスをした。

  6

  「なあ、エッチしようか」

  遊園地を時間いっぱい楽しんで、僕たちは旅館に向かう。

  大きな露店風呂に入り、海鮮料理に舌鼓を打った後、布団に潜り込んだおっちゃんは僕に耳打ちする。

  いつもと違って問答無用に襲ってこないあたり、珍しくムードを大事にしているのだろう。

  「……うん」

  僕が頷くと、おっちゃんは顔を起こし、僕の唇にキスをする。

  「大好きだぞ」

  「僕も大好き」

  ちゅ、と軽く唇を合わせると、僕はあることを思いつく。

  「ねえ、おっちゃん」

  「なんだ?」

  「今日はお願いがあるんだけど……」

  「いいぞ」

  何も聞かずに快諾する虎獣人。

  「なんでも言う事聞いてやるぞ。朝まで啼かせてほしいんか? 駅弁しながら館内一周とかでもおっちゃん頑張るぞ」

  「いや、そうじゃなくて」

  それ、多分見つかると捕まるから。

  「今日は、僕がおっちゃんを掘りたいんだ」

  「……」

  それを聞いて、固まるおっちゃん。

  「僕だって、男だしさ……。一度ぐらいやってみたいんだよ」

  「……」

  「学校の仲間連中も童貞卒業したってうるさいし。僕だってやってみたいよ」

  「あ、あかん!」

  おっちゃんはぶんぶんと首を振る。

  「晴孝に掘られるなんて……。晴孝はわしの雌なんやぞ! それがわしのケツを掘るなんて」

  「でも、よその人相手にやるのはやだし……」

  「当たり前だ! それは浮気なんだぞ!」

  急に大きな声を出す虎獣人。

  「じゃあ、僕にやらせてよ……」

  「……」

  「僕だって、童貞卒業したいよ」

  「……」

  「おっちゃん、僕の童貞、もらってくれないの?」

  「……わかった」

  おっちゃんは、苦虫を嚙み締めたような顔で小さく呻いた。

  [newpage]

  7

  「え?」

  僕は驚く。

  「わかったって……僕に掘らしてくれるの?」

  まさか、僕を雌だというおっちゃんが、そこまで僕の希望を聞いてくれるなんて。

  ……おっちゃん、そこまで僕のことを。

  ひそかに感動している僕の顔を、虎獣人はじっと見つめる。

  「……ああ、わかった。晴孝の自覚が足りてないってことがな」

  「へっ?」

  そのいかつい顔が、いつもの5割り増しぐらいに迫力を増していく。

  「晴孝はわしの雌だ。雌が掘りたいなんて言ったらあかんのだ。いつも言うとるだろ。雌は、雄の下であんあん鳴いていればええんだって!」

  おっちゃんは強姦魔のように、強引に僕の浴衣を剝ぎ取ると、その股間に顔を埋める。

  「ああ!」

  その大きな口で、僕の陰部をぐじゅり、と丸ごと咥えこんだのだ。

  「今日こそ、その体にわからさないといかんな。晴孝が雄だなんて考えは、間違ってるってことを!」

  おっちゃんのくぐもった声が、僕の股間に響く。

  そして、唾液をたっぷり含んだ、生温い舌と粘膜が、生き物のように蠢いて、僕の性器を嬲るのだ。

  じゅるじゅる、ぶじゅる、じゅるじゅずずずずじゅるる、じゅるりじゅるずるずるずるずるずる……。

  「ひぃあああああああああ!」

  高速で動く虎獣人の舌先が、未発達の亀頭をいたぶるように叩きつける。

  じゅちゃ、じゅちゃ、じゅるじゅる、じゅちゅっ、じゅちゅっ!

  くすぐったさと、甘い痛みと、芯が疼くような心地よさ。

  今まで感じたことのない感触に、僕は悶えてしまうのだ。

  ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞっ!。

  きっと赤く腫れあがってしまったであろう僕の亀頭を、今度は唾液とともに一気に啜り上げる虎獣人。

  「やぁぁぁぁぁああっ!」

  それが呼び水となり、僕はあっけなく射精する。

  どぷ、どぷ。

  いつもとは違い、それを味わうことなく、おっちゃんはバキュームカーのように喉の奥へ送り込んだ。

  「今日は快楽攻めだ。……覚悟しとけよ」

  低くくぐもった声で唸る虎獣人は、押さえつけた僕の体をその指先で撫でまわす。

  すでに発情した僕の体は、びくびくと震えながらその刺激を求めてしまうのだ。

  ……気持ちいい。

  指先がさわさわと軽く乳首に触れるだけで先走りがあふれ、ぎゅ、と強く摘ままれると、それだけで精を吐き出す。

  とぷり、とぷり。

  「んんんんんんっ!」

  どくどくとザーメンを放つ鈴口に、細く尖らせた舌先を容赦なく突っ込み、ぐりぐりとえぐるように動かす。虎獣人のざらついた舌が邪魔をして、射精が途切れる感覚に、僕はもどかしさを感じてしまう。

  「ああ……」

  切ない顔をした僕を見透かすように、再び口の粘膜を使ったバキューム行為が、僕の吐精を促すのだ。

  ずぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞっ!

  「いやぁぁぁぁぁぁあぁぁ!」

  どくっ、どくっ。

  その勢いに、まるで引き出されるように白い粘膜を撃ち出すことしかできない。

  何度もイッたせいで、ちんこはしなびてしまっていた。

  それでも、僕は繰り返し精液を吐き出し続ける。

  「こんなすぐイク早漏が、萎えちんこ野郎が、雄になれるわけねえだろうが! 晴孝はおとなしく雌になってりゃいいんだ!」

  荒々しい虎獣人の言葉。

  「……でも」

  僕はそれでも抵抗する。

  ……僕だって男なのに。

  「ああ? まだわからんのか!」

  おっちゃんは顔をあげると、僕の体を横倒しにし、すでにいきる勃った肉芋を、僕のケツに押し付け、えぐった。

  ずごんっ!

  「あああああああああああああああっ!」

  慣らしもしないその行為は、僕に痛みとともに大量の快感を与えるのだ。

  僕は体をのけ反らせて、萎えたちんぽのまま、これまで以上の勢いで、雌汁を吹き出した。

  びゅるるるるっ!

  まさにところてんだ。

  「これだけの逸物を簡単に咥えこめるお前が、雄なわけないだろうが」

  怒りのせいか、おっちゃんの風呂上がりの体からは、汗と雄の匂いが湧きあがる。獣と雄の匂いが混じり合った体臭を、おっちゃんはマーキングするように僕の体に擦り付ける。

  「見てみろ、わしの匂いを嗅いだだけで、このちっこいクリトリスが勃起しとるじゃないか。あれだけ連続でイッとるのによぉ」

  「ひぃぃぃぃぃぃぃっ!」

  おっちゃんはあさましくも芯が入った僕のちんこを、掌で包み込む。

  「こんなもんで俺のケツを掘るだぁ? 無駄なことは考えなくていいんだ! 晴孝はわしの嫁なんだぞ!」

  「……おっちゃん」

  ……僕だってしたいのに。

  切ない顔で僕は虎獣人の顔を見る。

  そんな僕の気持ちが気に食わないのだろう。

  「ケツの味なんか覚えなくてもいい。晴孝のちんこは、わしの感触だけを覚えていればいいんだ」

  そういうと、虎獣人の手は荒っぽく動き出す。

  ぐちゅり、ぐちゅり、ぐちゅぐちゅぐちゅっ、ぐちゅぐちゅ、ぐちゅりぐちゅぐちゅぐちゅっぐちゅぐちゅ!

  「だめぇぇぇぇぇ!」

  先走りと白濁液でずるずるの掌は、確実に僕の感じるポイントを把握したまま、執拗に刺激し続ける

  「やめてぇぇぇぇぇ!」

  よだれを垂らしながら悶えても、逃れることなどできはしない。

  前はおっちゃんの掌で、後ろはおっちゃんの肉棒で、しっかりと固定されているのだから。

  「晴孝はなぁ、おっちゃんの手と口だけで童貞卒業すりゃあいいんだ! 他の雌は晴孝には必要ない! 今からそれをわからせてやる!」

  背中越しに、血走った目の虎獣人がにやりと笑うのがわかった。

  それが意図するのは……。

  ……怖い。

  「おっちゃん、やめて……」

  「やめねえよ。朝までこのまま、快楽地獄で狂わせてやる。気絶したってやめねえから覚悟しとけよ」

  「いやぁぁぁぁぁっぁぁぁっ!」

  ぐちゅぐちゅぐちゅっぐちゅぐちゅ、がつがつがつがつがつがつがつがつ!

  「ああああああっ、イグ、イグぅぅぅぅぅぅぅぅっ! また、だめぇ! イ、イグぅぅぅぅぅっ! や、ああっ! またイッじゃぅぅぅぅぅぅぅっ!」

  「がはははははははは。何度でもイッちまえ!」

  がつん、がつん、がつん、がつん、がつん、がつんがつんがつんがつん!

  ぐじゅり、ぐじゅり、ぐちゅぐちゅぐじゅぐじゅぐじゅぐちゅり、ぐじゅぐじゅ!

  「イグぅ、イッちゃあああああああああっ、やだ、んがああああああああっ、また、なんでぇぇぇぇっ!」

  がつがつがつがつがつがつっ!

  「ほら、気持ちええだろうが! もっと掌動かして、ザーメン搾り取ってやる。ああ? またイッたんか。ケツが締め付けてくるぞ。もっと激しく動かしてほしいんか。よしよし、前立腺壊してやる」

  「やだぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

  がつん、がつん、がつん、がつん、がつんっ!

  「乳首もさわってほしそうにしとるぞ。ほれ、摘まんだだけでイッてしまいそうか。これのどこが雄なんだ? ああ、乳首でもういっぺん、イッちまえ。ちんこもケツもぐちょぐちょにしてやるぞ」

  ぐじゅり、がつがつ、がつん、がつん、ぐい、ぐじゅり、がつがつ、がつん、がつん、ぐいっ!

  「イッじゃぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

  3点の刺激は僕の頭を真っ白に染め抜く。

  「わかったか。お前はおっちゃんの雌だ。おっちゃんの手で、逸物で、メスイキすることだけ考えてたらええんだ」

  「わかったぁ、わかったからぁ!」

  「何がわかったんだ?」

  「僕は、僕はおっちゃんの雌ですぅぅぅぅっ!」

  「そうだ、晴孝はわしだけの雌なんだ」

  「おっちゃんの雌だからぁっ! わかったから、わかったからもうやめてぇぇぇぇっ!」

  「やめねえよ。言ったろ、朝まで犯しぬいて、そのおかしな考えをきれいさっぱり忘れさせてやる!」

  「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

  8

  翌朝。

  息も絶え絶えになりながらも、何とか自力で立ち上がってチェックアウトできる余力が残っているのは、僕の体が自然と鍛えられているせいなのか。

  僕は隣にいるおっちゃんを恨みがましい目で見るが、おっちゃんはどこ吹く風。

  当然と言った顔をしている。

  ……もう。

  昨日は嫌というほど自分の立場をわからされてしまった。

  僕はおっちゃんの雌だと、本能レベルで叩き込まれてしまったようだ。

  きっと他の雄を見ても、もうちんこはぴくりとも動かないだろう。

  「さあ、行くぞ」

  チェックアウトをすませた虎獣人は男らしい声でそう言うと、僕の手を掴んで歩き出す。

  「うん」

  僕は大人しく手を引かれる。

  この人に抵抗しても仕方ない。

  僕はこの人の嫁なんだから。

  「ねえ、おっちゃん」

  帰路につくために車に乗り込もうとする虎獣人に声をかけると、一瞬顔をしかめて見せる。

  「?」

  ……あれ?

  僕は首を傾げながら助手席に座る。

  そんな僕を、おっちゃんはじっと見つめている。

  「どうしたの?」

  「晴孝。……渡したいものがあるんだ」

  そう言うと、おっちゃんは四角い箱を懐から取り出した。

  「え、何?」

  戸惑う僕の目の前で、虎獣人はすっ、と箱を開けて見せる。

  「病めるときも健やかなるときも……ずっとわしのそばにいてくれんか?」

  箱の中には、プラチナの指輪が、鈍く光っていた。

  「……え」

  結婚指輪だ。

  「誰から見ても、晴孝がわしのもんだとわかるようにしときたくてな」

  おっちゃんは照れたように笑う。

  「これ、受け取ってくれるか」

  「……うん」

  僕はそれを受け取り、左手の薬指に嵌める。

  燻されたような銀色が、朝日に照らされて輝いた。

  「それとな」

  おっちゃんは真面目な顔でわしを見た。

  「これからは、わしのことは名前で呼んでくれないか? ……もうわしの嫁になったんだから」

  「……」

  「いつまでも『おっちゃん』は、ちょっと寂しい」

  ちょっとだけ小声になった虎獣人は、今までに見たことのないほどかわいい顔をしていた。

  「うん。……源十郎さん」

  ちょっと照れくさいけど、そんなふうに求めてくれる源十郎さんの気持ちが、僕は嬉しかった。

  「ありがとな、晴孝」

  感極まったのか、虎獣人は僕の体をぎゅっと抱きしめる。

  「晴孝はわしのもんだ。もう一生、離さないからな」