トラジマくんが自身の身売り相手を決めるためにデートをする話
「人身売買センターへようこそ!」
受付のお姉さんが元気良くあいさつ。
ふわふわの白い猫の獣人で非常に愛らしい。
名札からすると名前はオネイと言うらしい。
人身売買センターなどという物騒な名前ではあるが、
明るくきれいなお役所みたいな施設だ。
「あ、シシダさんとカメヤさんでしたか!お久しぶりです!
じゃあいつもの永久買い取りコースですね!」
コワモテな獅子の獣人がシシダ、
ホワイトのスーツに赤いシャツと派手な金のアクセサリー。
もちろんそういうコワモテ相応な仕事をしている。
穏やかで優しい感じの亀の獣人がカメヤ、
亀の体型に合わせた特殊な形状のグレーのスーツで
背中の甲羅は露出させている。
老紳士に見えるがシシダと同年代、
亀は猫背で老け顔の種族というだけだ。
こちらは法律や手続きに関する仕事をしている、
ただその具体的な内容はあまり優しくないし穏やかでもない。
「やあオネイさん、今日は彼を売るのですよ。
書類はこの通り、揃っていますから。」
カメヤがゆるりとした口調で定型句のようにいう。
慣れた仕事だということだ。
人身売買、昔の言い方でいう奴隷制というやつである。
どこかの世界とは異なり、ここでは現代となっても残っている。
細やかな鱗による皮膚のような部分と荒い鱗でできた
まだら模様をしたカメヤの手から書類が渡される
受け取ったオネイが書類を確認し、
用紙にチェック印を入れていく。
「えーっと、売却の理由書に本人資産一覧、
身元証明書、それからあれとこれとそれ。
最後は印鑑付きの本人同意書と……。
はい、ばっちりです!」
歴史で習う大昔の奴隷制と異なる点としては
法律に基づいた制度として整えられているという点だ。
理由のない人身売買は認められないし、
本人の同意が前提となる。或いは裁判所での判断など。
昔話のように人を攫ってきて売るなんて不可能である。
「御本人様にもじゅ・う・ぶ・ん、納得して頂いたからな、
余計な手間はかからないはずだ。」
シシダがコワモテなりにわずかな笑みをみせ……いや、牙を剥いたのか?
そして中央の男の肩を鋭い爪のついた大きな手でバシッと強く叩いた。
中央の男は虎の獣人。彼の名前はトラジマ。
虎縞模様のかっこいい毛皮をしているのだが、
虎の強そうなイメージ通りの逆三角形の体型ではない。
だからといって太っているというわけでもないが、
運動してなさそうな寸胴ボディでなんとも冴えない中年男だ。
一番よくある人身売買の理由は借金の返済のためという理由。
特にこの二人、シシダとカメヤが連れてくる獣人の9割がそうだ。
このトラジマも例外なくそうである。
「はい、お二人の連れてくる方は大人しくて助かります!
いつもの通りの説明になりますが、
売却先はご本人様の希望が一番優先されるので、
その辺りはご了承下さい。」
人身売買の制度は本人の同意が何よりも重要視される。
売られる先をどうするかといった点も同様で本人の意思で選ぶことになる。
制度として整う前の話ではあるが、
本人の望まない売り先の場合、
そこで問題行動を起こしたり、逃亡を図る者が多かった。
自分で決めるという制度になってからは
問題行動や行方不明といったことは大幅に減っている。
「おうわかってるよ。
トラジマ、ちゃ・ん・と・決めろよ。」
「トラジマさん、さきほど私達が金額を呟きましたが、
あなたには関係ないことです。
ですが、忘れない方が賢明ですよ。」
シシダが顔面を近づけて凄みを見せ、
カメヤは微笑んで……いや違う、目が笑ってない笑顔を見せた。
このトラジマという男は何かを吹き込まれたようだ。
おそらくはいくら以上のところに売られなければとどうにかなる、とかなにか。
もし、安かったら本人以外の誰か、
友人知人親類のいずれかが碌でもないことになるのだろう。
シシダとカメヤが帰っていった。
オネイの元気な別れのあいさつも耳に入らない様子のトラジマ。
もう人生の終わりのような顔をしている。
「それではトラジマさん!
いくらくらいを希望しますか?
はい、はい。えーその金額以上ですか?
うーん若くてきれいな女性なら案外いけますけど、
男性でそれだとキツイを超えてヤバイのしかないですね。」
オネイがいくつかのファイルを取り出してバラバラと確認し始める。
安いところのは普通に労働者を募集している事が多い。
高いところのは同じく労働者ではあるがすごくキツイ仕事や条件で募集している。
ではもっと高いのは?もっとヤバイ用途である。
Cと書かれたファイル、Eと書かれたファイルと確認し、
そして一気に飛んでZと書かれたファイルを取り出す。
「やっぱりこの地獄のZファイルを出すしかないかなぁ?
それでは興味のあるところを探してみましょう。
別室へご案内します。」
受付から出てきたオネイは
慣れた手付きでトラジマに鉄の鎖がついた首輪をつける。
もう逃げられない。
その地獄のZファイルとトラジマを繋いでいる鎖を持ち、
別室へとトラジマを連れて行く。
「さて、一通り見れました?
どれにしますか?」
どの地獄にしますか?と言った方が正確かもしれない。
確かにどれもこれもヤバイとしか言いようがないとトラジマは思った。
「あの、例えばこういうのってどうなるんですか?」
性欲処理、勤務時間最長4時間、最大で週4回。
金額も例の条件を満たしている。
性欲処理というのだからそういうことだろうが、
勤務の頻度や時間の短さからすれば高収入の仕事と言えるかも知れない。
ただ気になる事がある。
表の右側に人を簡略化した絵がある。
そこに赤い線が入っている。
手足をそれぞれ横切るように赤い横線が4本入っている。
「これはいわゆる人犬募集ってやつですね!
この絵の意味は手足切り落としてまさしく犬になってもらいます!」
オネイが可愛い顔でひどいことを屈託なく口走る。
「ひぇ……。」
「そういう人って案外いるんですよ。
無抵抗な相手が好きとか、欠けているモノに美を見出すとか。
いろいろ話は聞きましたよ。
確かに何もできない旦那様を上から下まで介護するってなんかいいですよね。」
このファイルを作るためにはしっかりと相手の希望などを聞き取る必要がある。
彼女もまたどこか感覚が麻痺してしまっているようだ。
「本当はこういうのって人を選ぶので積極的におすすめしたりはしませんよ。
でもトラジマさんの希望金額が高すぎるので、
このZファイルにしか選択肢がないんですよね。」
トラジマはなんとかマシな地獄を探さねばならなかった。
相手方の写真がある……しかし豚の獣人ばかりだ。
「豚の獣人さんって特殊性癖が多いって話ですよ。
あとお金への執着が強い人が多いからお金持ちも多いって言いますし。」
オネイがそれを見透かしたかのように
聞かれてもないことに答える。
それだけこのZファイルの扱いには慣れているらしい。
「あ、その熊の獣人さんは特におすすめできませんよ。
もう3人目の購入ですし。」
3人目……となると1人目と2人目はどうなったのか。
多頭飼いをしているのか。あるいは……。
殺害や虐待を目的とした人身売買は違法のはずだが、
まともに捜査されないことがほとんどだという噂がある。
トラジマは困った。
どれもこれも人型の絵に赤い線が入っている。
大体のものは線が4本だ。
それならせめて顔で!優しそうな人!そういう人はいないか!?
「こっ、この人で……!」
追い詰められ焦燥したトラジマは
この中では一番マシそうに見える優しそうな顔を選んだ。
売買の前には必ず面接が義務付けられている。
最低でも1回、必要があれば複数回、お互いに納得するまでだ。
受付さんが連絡したところ、
今回はただ会うのではなくそのまま街で買い物をするとのこと。
実質デートである。
「やぁこんにちは、私はドラコニス。
君がトラジマくんだね。」
色褪せた感じにも見える薄い赤の鱗の大柄な竜人のおじいさん、
どこかのブランド物なのか、フォーマル寄りに整っていながらも遊び心を感じる服。
トラジマはとても印象のいいお金持ちな老紳士といった印象を受けた。
"マシな地獄"というものがわからなかったトラジマはもう写真で選んだわけだが、
見た目とは異なり……なんてことはなく、
声や雰囲気からしても優しそうな人だと感じる。
ちなみに竜人は桁違いに長寿な上に、
見た目と実際の年齢が一致しないことが多いため、
本当に老人かどうかはわからない。
鱗の色と髭のせいで見た目は老齢のように見える。
あとは体型が西洋の竜種に近いし角が枝分かれしていない直線型、
聞き慣れない名前からしても、外国籍の人かもしれない。
「それじゃさっそく、座ってくれるかな?」
「え?車椅子……。なんででしょうか?」
ずいっと差し出された車椅子に困惑した。
トラジマはこれがただのお見合いではないということを
まだちゃんとわかっていなかった。
「私の元に来るのなら、もう歩くことはなくなるよ。」
地獄のZファイルに例外はない。
街歩きといってもトラジマは車椅子に乗っている。
少し視点が低い、
車椅子という時点で否応無しに視線が集まる。
昔と比べたらバリアフリーも進んだから、
ガタつく道も少なくて快適だし、
集まる視線も好奇の目というよりも
車椅子の人がいるから少し避けないとという感じで
案外優しい世界だと感じる。
「車椅子に乗る気分はどうだい?
私は君のことを一目で気に入ったし、
仲良くやっていきたいと思っているよ。
引きこもりにさせるつもりはない、
時々こうやって一緒に散歩するつもりなのだよ。
街以外でも良い、田舎や野山に行ってもいいし、
旅行にも連れて行こう。」
もしかして普通の人よりも豪華に暮らせるということでは?
トラジマはそう思った。
公園に入った時だった。
トラジマの視界をちょうど横切るように、
ペットを連れた人が歩いていく。
普通の歩くよりも少し、いやかなり遅い。
ペットの主人は豚の獣人、
ペットは犬、犬?……犬ではない。
リードで繋がれているのは首輪で繋がれた狼の獣人だ。
普通と明らかに違うのは全裸なことと手足がないこと。
犬の足を模した靴のようなものを履かされ、
肘と膝くらいまでしかない短い手足で四足歩行をしている。
関節が足りないのだから本物の犬のように
しなやかな動きができるわけもなく、
歪にのそのそと歩いている。
その犬は……喜んでいた!?
股間から勃起したものが見えている。
公衆の面前で全裸で四つん這いにさせられているというのに、
むしろ見られていることを喜んでいるというのか。
主人の豚が犬?の背を撫でた。
それに応じるかのように尾を振って喜びを示した。
さらには仰向けに転がり、
お腹を撫でられては本物の犬のように全身で喜びを表現した。
「トラジマくんは見たことないのかな?
あれが人犬というものだよ。
人身売買で買い取ったんだろうね。」
要するに、あれは地獄のZファイルに頼った結果なのか。
そう思うとトラジマは直視し難いという思いと、
好奇心でもっと見てみたいという思いと、
相反する2つの思いを抱き、結局凝視した。
「あんまり昼間っから人犬の散歩ってのも珍しいけどね。
それにしてもあの犬は幸せそうだね。
身売りするほど落ちぶれた先に天職があったのかもしれない。」
なるほどそういうことかとトラジマは思った。
あれは演技ではなく心から喜んでいるように見える。
「もしかしてトラジマくんは人犬に興味があるのかな?」
「え!?いえ!アレはちょっと……。」
「そうか、それはよかった。私も趣味ではないから、
私達は気が合うね。」
ドラコニスはニマリと笑う。
ドラコニスの元にくれば少なくとも犬にさせられることはない、
ということだとトラジマは思った。
トラジマは別の地獄を見て、ドラコニスでいいかもしれないと少し考えた。
「今日は少々暑いな。
ちょうどいいところに屋台があるし、アイスを買おうか?
それとも自販機でジュースの方がいいかな?」
「うーん……それじゃあアイスでお願いします。」
ドラコニスとトラジマは列に並ぶ。
ドラコニスがトラジマの食べたい味を聞き、2つ買ってくれた。
「おまたせしました~!
バニラ味と、パチパチキャンディ入りカスタードストロベリーです!」
店員さんがわざわざ乗り出してくれて、
車椅子に乗るトラジマの方へとバニラ味を差し出す。
思わず受け取ろうとしたトラジマだったが、
それよりも素早くドラコニスがバニラ味を取った。
「どうもありがとう。」
ドラコニスは大きな手にアイスを2つ持ち、
片手と腹で車椅子を押して屋台から離れた。
何か不穏なものを感じたトラジマはまだアイスも食べてないのに
背筋がそわっと寒くなった。冷や汗だ。
「ほらトラジマくん、あーん。」
ドラコニスはその片手に自分のアイスを、
そしてもう片手でずいっとバニラのアイスをトラジマの口元へと向けた。
トラジマは何か感じるものがあり、
大人しくそのまま口を開き、食べさせてもらった。
「転んだとか緊急時は仕方ないと思うけれど……。
今はお試しデートの真っ最中だからね。」
「君にはもう手がないという想定で動いてくれないかな?」
ドラコニスの刺すような黒い目に射抜かれてトラジマの目が泳いだ。
もう自身に逃げ道はないことはわかっている。
……。
「フフッ、思ったよりもいいね。」
何がだろうか。
ドラコニスの口から
パチパチキャンディ入りカスタードストロベリーが弾ける音がする。
「はい、トラジマくん。」
食べさせてもらう度に顔が近づいてパチパチキャンディの弾ける音も近づく。
「正式に私のところに来てくれることになったら、
またここに食べにこようか。
そしたらトラジマくんが私に食べさせてほしいな。」
正式に、その時にはきっと自身は手足がないダルマになっている。
どうやって?
「私が君に食べさせる。
君はそれを口移しで私に食べさせてほしい。」
フフフフフとドラコニスが笑った。
さて、食べ終えたし行こうか。
食べ終えた後、ドラコニスが小さいベルトを取り出した。
それでなにをするのか?
その小さいベルトでトラジマの腕は車椅子の手すりに拘束させられた。
手首や指先は動くが、腕が動かせない。
とことん、お試しをするつもりのようだ。
「だいじょうぶだよ。
ちゃんと私が全部面倒を見るから。」
ドラコニスはニッと笑い、
鋭い牙がチラリと姿を見せた。
ところどころに不気味さを感じつつも、
ドラコニスがトラジマを乱暴に扱うことはなかった。
十分マシなではないだろうかとトラジマに思わせるまではそうかからなかった。
それから、もう一度会った。
2回の面接デートの後、
トラジマは自身の売却先をドラコニスに決めた。
少し怖く感じるところはある。
それでもドラコニスはお金持ちだし、優しいのは間違いない。
気遣いはできるし、ただの性奴隷扱いにはしないつもりらしいし。
少なくとも一番マシな地獄だと感じた。
「トラジマさんお疲れ様でした!
それではドラコニスさんで大丈夫ですね!
契約の前に条件表とかちゃんと一通り確認しましたか!?」
トラジマはハッと思い確認し直すことにした、
Zファイルを見ていた時はほとんど顔で決めてしまっていた。
目の前に並べられたドラコニスさんの用紙を見る。
使用用途は同居相手、性欲処理。人犬ペットとは書いてない。
ふと気づいた。
人型の絵の赤い線が4本ではなく5本だ。
他と同じように両手両足。5本目は股?股!?
「あ、あのっ。これって尻尾も切っちゃうんですか?」
元からない種族を除き、全獣人にとって尻尾は大事な物とされる。
何らかの事故で失われた場合でも
見た目を補うためだけに義尾をつけるくらいだ。
「ああ、トラジマくんちゃんと見てなかったの?
尻尾は胴体の絵の横に出てるよ。
尻尾を切りたいって人が線を書く場所はそこ、
股の線の場合は去勢ってことだね。
私は中性的な子が好きなんだ。」
ドラコニスは優しい、優しい?笑みを浮かべた。
動揺を隠せないトラジマへと優しい?言葉をかける。
「流石にね、ダルマになった上でオスまで捨てろってのは悪いと思ってるよ。
だから少しでも躊躇いがあるなら、
この話はなかったことにしよう。
無理強いは私も好きではないからね。」
トラジマは慌てた。
要するに、今決めろ。YESかNOか、保留はない。ということだ。
「ドラコニスさんは基本的に扱いがいいようですし、
裕福ですし、社会的地位もあるし評判は最高なんですよ。
本来はZファイルではなくて一歩手前のEファイルに入るくらいですね!
でもやっぱり去勢まで入っちゃうからZ査定かなーってなりました。
でもかなりの優良な買い取り先ですよ。
これを逃したらあとはもうまともなところはないと思っていいですよ!
ひと思いに決めましょう!トラジマさん!」
オネイがトラジマの手を握り、めちゃくちゃに煽る。
彼女にとってはただの仕事であり、所詮は他人事だ。
この話がなかったことになったら買い取り先探しからやり直しになる。
仕事が増えるくらいならここで決めてもらってほしい。
それが彼女の本音だろう。
トラジマはZファイルの大半を占める豚を思い出した。
豚か、去勢か。
「ドラコニスさんありがとうございます!
わざわざ運んでもらっちゃって。
私じゃ流石に持ち上がらないし、
本来は他の職員呼ぶべきだったんですけど。」
オネイは歩く。
「いいんだよ。
これから私が彼をこうやって運ぶことになるからね。
何度も、ずっと、彼が死ぬ時まで一緒にね。」
ドラコニスも歩く。
結局トラジマはドラコニスに買い取られることに決めた。
しかしトラジマは過呼吸寸前となってしまい、
立ち上がれなくなってしまったのだ。
こうして最後に自分の足で歩く機会を失い、
手術室の隣の待機室へと運ばれていった。
余談だが、去勢を伴う手術の場合、
多くの者がトイレに籠もって最後の晩餐をやるそうだが、
ドラコニスが直接運んでしまったため、
その機会すら失われた。
ドラコニスがわざわざ手伝ったのはそれが狙いだったのかもしれない。
こうして彼はドラコニスの元へと引き取られ、
トラジマの売却金はシシダとカメヤの口座へと入って、
トラジマの借金も無事に解決した。
みんな幸せになりました。
大柄な竜人が床でのたうつ何かを見ていた。
いや見下していた。
薄明かりの中でそれがのたうつ音だけがする。
「トラジマくん、どうかな?
今日のお薬、巷では感度3000倍って言われてるんだけど
3000倍かどうかはともかく確かに効いてそうだね。」
トラジマはひたすらに悶えていた。
彼は薬品によって発情期どころではない極端な性的興奮状態にさせられていた。
しかし1人では解消できない。
手足がないからだ。
ただ切り落としただけではない、
わずかな分すら残してもらえなかった。
手足は根本から取られ完全に失われた。
どうにかして腰を床に押し付けたい、
そう、せめて床オナのように。
やろうと思えば胴体だけでもできるのかもしれない。
しかしうまくできない。
仰向けから転がることすら出来なかった。
唯一動かせる肩と、胴体をクネクネとさせて床に這いつくばる。
ただイモムシのように無様に蠢いた。
「ドラコニスさんっああったすけて!」
手足があったとしても解消できたのかどうかはわからない。
チンポがついていない。
あるべきものの代わりとして、
昔はありましたよ、と主張する傷跡が股間にあるのみだ。
前と同じような快楽を得られるかどうかはわからないが、
トラジマはとにかくそこを擦りたい。
唯一自由になり、手指の代わりになり得るはずの尻尾は
革の拘束具で首輪と繋がれて股まで届かないようになっている。
「ひぃ!!あああ!」
トラジマは悶え続けた。
先走り液に似た精子のない透明な液体を漏らしながら、
ひたすらに悶えた。
存在しないチンポが勃起している感覚すらあった。
しかしただの幻覚、それに触ることはできないし、
それで快楽を得られるはずもない。
強制発情させられたというに
その性的衝動を解消する手段もないトラジマは
もはや苦しんでいた。
大きな竜人の口、ドラコニスの口角がにまぁと驚異的に釣り上がる。
「かわいいよ。」
ドラコニスはイヤらしい笑みで眺めるばかりだった。
彼の股間からは強大な剛龍が伸び上がっているというのに、
それを使うわけでもなく、
悶えるトラジマを見て、満足していた。
「ふふっ。」
ドラコニスは優しかった。
食事を手伝ってくれるからトラジマは犬食いをしたことはないし、
体もしっかり洗えてもらって清潔そのもの。
散歩にも頻繁に連れて行ってくれるし、
この前は海外旅行にまで連れて行ってくれた。
しかし彼の性癖は優しくなかった。
ドラコニスは性的欲求を解消できない状態の人を見るのが大好きであった。
よりによって今日は挿れない気分の日らしい。
悶え苦しむトラジマをおかずに自慰を始めた。
「ああっ!挿れて!挿れて!せめて挿れてぇ!
おちんぽ!!!おちんぽくださいぃ!!!」
もはや悲鳴だった。
これはトラジマ、彼自身が選択した地獄である。