親子

  1

  

  「ちっ、何やってやがんだ」

  舌打ちした俺は、思わず車を停める為の場所を探す。

  その日、俺、中村誠二郎は、似合わない営業もどきの仕事を任されて、いやいやながらも仕事を終わらした帰りだった。

  普通、現場監督にこんなことさせるか?

  うちの会社は小さいため、人手が足りないとこういう仕事まで振ってきやがる。

  しかし、適材適所という言葉があるだろうが。

  訪問した会社の担当者の目を丸くした姿を、俺は思い出す。

  ……なんたって、見知らぬデカイ熊が、作業着なんか来たままのっそりと顔を見せたんだからな。

  そう、俺は熊獣人だ。

  一般的に体格のいいこの種の獣人の中でも、俺はさらにでかいほうだ。威圧感がありまくりだから、自然、営業なんて仕事は向かず、力仕事オンリー。現場でバリバリ働いて、金を稼いでいる。

  もっとも、最近じゃ勤続年数が長くなってきたからか、現場の監督を任されたり、人が足りないせいで慣れない営業をさせられることもあるのだが。

  悠太との初めての出会いは、そんな帰り道でのことだった。

  「気晴らしにハッテン場にでも行ってくるか」

  そんなことを呟きながらの夕方、交通渋滞の中。

  のろのろとしか進まない車にいらつきながら窓の外を見た俺の目に飛び込んできた光景。それは、たちの悪そうな男達に絡まれ、殴る蹴るの暴行を受けている若い男―悠太―の姿だった。

  ワンコロ、という言葉が似合うような、小柄な犬獣人。

  見るからに純朴そうで田舎っぽい雰囲気を漂わせているのは、柴犬種の特徴でもあるが、あいつの持つ雰囲気はそれに輪をかけている。

  そのせいか、いいカモにでも見られたんだろう。町の不良どもにボコられていたんだ。

  大通りに面した歩道で行われている惨事に、誰も足を止めようとはしない。見て見ぬ振りって奴だ。

  警察に通報するぐらいできるだろうがっ!

  そういうのが賢い大人の対応なのかもしれねぇ。だが、俺はそれを見捨てることができなかった。元々直情的な性格で、気に喰わない事は放っておけないタイプなんだ。

  殴られている若者は、そのくすんだ白い体毛を血で汚し、すでにぐったりとしている。俺は何とか車を停めるスペースを見つけて押し込むと、殴りつけてやろうと男達の元へ走る。

  「お前ら、何やってんだっ!」

  すわ警察か、と逃げ出す不良ども。

  逃げるぐらいならやるんじゃねえよ!

  「おい、大丈夫か」

  逃げ出した不良には目もくれず、俺は血だらけの若者に駆け寄る。

  「はい。大丈夫……です」

  律儀に体を起こして礼を言おうとするが、体はまったく動かない。

  「ば、馬鹿。ちっとも大丈夫じゃねえじゃないか。待ってろよ。今、救急車呼ぶから」

  慌てて携帯を取り出す俺を見て、場違いなほど幸せそうな顔で気絶する若者。

  ……こんなとこでかわいい顔してんじゃねえ。

  心の中で毒づきながら、俺は119番に連絡を入れた。

  2

  俺の助けた男の名前は坂上悠太。一九歳の無職で、しかも宿無しだった。

  先頃唯一の肉親である母を亡くし、職探しのため田舎から出てきたところをあんな目に遭ったらしい。

  一応、暴行事件だから警察が乗り出し、俺は関係者という事で事情を聞いたのだった。

  怪我は骨折打撲を含めて、全治三ヶ月。

  袖振りあうも多少の……という奴で、俺はちょくちょく見舞いに行ってやっていた。東京に知り合いがいないのか、他に誰も見舞いに来ないようで、俺が行くとガキのように尻尾を振って、心底嬉しそうな顔を見せるんだ。

  無職の若者なんて偏見を持っちまいそうだったが、悠太に限ってはそんな事はなかった。

  俺と話してても丁寧で控えめで、そんなこっちゃ世間の荒波を乗り越えられねえぞ、と思わず忠告したくなるほどだ。不良に殴られっぱなしだったのも大人しい性格のせいだろう。大体仕事を持ってねえのも、母親の看病のためだったらしい。

  怪我は順調に回復しているようだったが、気の弱そうな顔にいつも暗い雰囲気を漂わせている。それが、少し気になっていた。

  「困るんですよ。ああいうのを連れてこられると」

  悠太の見舞いに行った帰り。たまたま待合室にいた悠太の主治医に挨拶すると、開口一番、こう言いやがった。

  「何がです?」

  「坂上悠太のことですよ。聞けば無一文なんですよ、彼。救急車で運ばれたからしょうがないようなものの、金もないのに治療を受けようなんて、一体何を考えているんだか」

  エリート然としたその猫獣人である医者は、ため息をついた。

  ……おい、こいつは何を言っているんだ?

  「たまらんですよ。取り立てようにも身内もいないし。借金させようにも住所不定無職じゃあねえ」

  俺は、悠太の陰のある表情を思い出す。

  「……ひょっとしてそれを悠太に言ったんじゃないだろうな」

  当然、と主治医は言う。

  「ちゃんと言い聞かせて早々に治療費を払ってもらわないと。未払いになったら、私が上司から注意を受ける事になる」

  こんな針の筵の中で、あいつは過ごしていたというのか。

  肉親を亡くして暴行を受けて病院でいたぶられて、これでもかというほど辛い目に遭わされる悠太を思うと、激昂した俺は気持ちを抑える事が出来なかった。医者の胸元を掴み、壁に叩きつける。

  「な、何するんですっ」

  「それはこっちの台詞だ! 医者が患者の精神状態を不安にさせて、どうするんだよっ! 患者の事も考えられねぇで、医者面してんじゃねえよっ!」

  主治医にまでそんな事を思われるなんて、悠太がかわいそうじゃねえかっ!

  「……しょうがないでしょ。病院はボランティアじゃないんですから」

  俺の剣幕に、ふて腐れたように答える医者。

  「もういいっ!」

  俺はきびすを返すと、悠太のいる病室まで戻った。壊すような勢いでドアを開けた俺を見て、悠太は目を丸くする。

  「中村さん、どうしたんです? 忘れ物ですか」

  「どうもこうもあるかっ! お前、医者の野郎に無茶苦茶言われてるそうじゃねえか」

  「え?」

  「無一文だとか、無職だからとか」

  「ああ……」

  悠太は諦めたような顔で笑う。それは、若者が見せる笑顔じゃなかった。

  「金もないのに入院してる俺が悪いんです」

  お前は何も悪い事してねぇじゃねえかっ!

  俺は我慢できず、悠太の寝ているベッドから、掛け布団を引き剥ぐ。

  「な、何を……」

  「何をもくそもねぇっ! こんなところにいたら、治る怪我も治りゃしねぇ。落ち着くまで面倒見てやるから、俺の家に来い!」

  そのまま、受付で治療費五〇万を叩きつけて(クレジットカードでだが)、俺は悠太を自宅へ連れ帰ったんだ。

  3

  「まあ、家に来いなんて言った割にゃあ狭い部屋なんだけどな。そこは勘弁しろや」

  1LDKの俺の部屋は、一人なら充分だが、二人暮しとなるとちょっと狭い。人を呼ぶ事だって今までなかったから、予備の布団だってありゃしない。

  それでも、あの病院よりゃましだろう。

  「いえ、すげぇ嬉しいです。こんなちゃんとした家、生まれて初めてだから」

  なぬ。こいつ、どんなとこ住んでたんだ?

  「あの、中村さん。こんなにしていただいて、本当にありがとうございます」

  悠太は改まった様子で俺に頭を下げる。

  「あー、これからしばらく一緒に暮らすってのに、中村さんは他人行儀じゃねえか」

  「え? じゃあ、なんて呼べばいいですか」

  「そりゃ、……例えば、だな……ほら、一緒に暮らすんだし、俺、年上だから、と、と、父さんとか、どうだ?」

  やべぇ。すげぇこっぱずかしい事言っちまった。でも俺には子供がいねえし、親父って存在に憧れてたんだ。

  「も、もちろん、嫌ならいいんだぜ、そんなの。ただ言ってみただけだし」

  俺は柄にもなく顔を真っ赤にして、悠太の様子を窺う。するとこいつも顔を赤く染めているじゃねえか。しばらくたって、悠太は照れくさそうに呟いた。

  「……と、父さん」

  お、俺のことを呼んでいるのか。

  「な、なんだ」

  俺はおっかなびっくり返事をする。

  「すごいうれしいです。俺、父親いなかったから、そんな風に呼べる人いなかったし」

  「そ、そうか。じゃあ、息子になったつもりで甘えていいんだぞ」

  俺はぎゅっと悠太を抱き寄せて、頭をぐりぐりと撫でてやる。

  俺の手荒な歓迎に悠太は嫌な顔一つせず、気持ちよさそうに目を細めた。

  「はい、ありがとうございます」

  「馬鹿、父さんに敬語なんて使うんじゃねえ」

  「……うん」

  こうして、ぎこちないえせ親子が一組出来たわけだ。

  俺は養生も兼ねてしばらく家でゆっくりしてろと言ったんだが、悠太は気兼ねをしたらしい。さっそく、バイトを見つけて働き出そうとしたんだが、なかなかうまくいかない。

  そりゃあそうだろう。体力だって完全には回復してないんだ。骨折は治っていても、普通ならまだリハビリしてる時分なんだから。

  「父さん、ごめん」

  ある日の夕飯時、悠太は俺に頭を下げる。

  「ああ?」

  「俺、無駄飯食らいで。何の役にも立たないから……」

  中途退院してから半月。世話になりっぱなしでまずいとでも思ったのか。

  「そんなことねえよ。俺ぁ悠太がここにいてくれるだけで、なんかこう、心が休まるんだ」

  気休めじゃねえ。本当なんだ。

  仕事を終えて、家に帰ると電気がついててかわいい息子が待っててくれる。それが何にも変えがたい宝物だなんて、馬鹿みてぇだろ。

  でも、俺にとってはそうなんだ。

  男好きなんて性癖のせいで、俺は家庭に憧れを持ちながら自分自身には関係ないものだと諦めてた。それが、こんなままごとみたいな関係でも築き上げることが出来たなんて、信じられないほど幸福だったんだ。

  しかし、悠太にゃ分からないんだろう。

  「でも……」

  「旨い飯だって作ってくれてるじゃねえか」

  家事全般は面倒見てくれるし、バイト代を出したいぐらいだ。

  「うん」

  いちいち繊細な奴だな。まあ、そんな所がかわいいっちゃかわいいんだけど。

  「そんなに気にするなら、そうだな。一緒に風呂でも入らねえか」

  「え?」

  「背中でも流してくれよ」

  「う、うん!」

  うれしそうに頷く悠太の顔を見ると、俺の頬も緩んじまう。

  風呂に入ると、悠太はさっそくスポンジを泡立て、俺の背中を洗い出す。

  「と、父さん」

  「なんだ?」

  「……そ、その、でっかい背中だね」

  なぜかどぎまぎした口調で喋る悠太。緊張するようなこっちゃないだろうに。

  「そうか」

  悠太に誉められると、何だかくすぐったい。

  「お前、洗うのうまいな」

  「う、うん、そうかな」

  強すぎず弱すぎず、痒いところに手の届くような丁寧さで、悠太はスポンジを動かす。

  あまりの気持ちよさに、俺はしばらく身を任せる。

  「なあ、おい、悠太よ」

  「……え、ええ? な、何?」

  しばらく黙りこくって背中を洗ってたから、ちょっと話し掛けてみた。と、急に驚いたような声を出す悠太。

  なんだ?

  俺は不審に思い、後ろを振り返る。

  すると、びくりと体を震わせて、俺の目から隠すように股間を押さえてるじゃないか。

  「あ、あの……ご、ごめんなさい!」

  泣きそうな顔で俯く悠太。

  こいつ、勃起してやがる!

  それが分かると、俺の顔は一気に紅潮した。恥ずかしいからじゃねえ。興奮したからだ。

  ……もしかしてこいつ、俺の体見て勃たせてんのかよ。

  俺はごくりと唾を呑む。

  くそぅ、どうすりゃいいんだ。

  股間を押さえたままで俯いた悠太の体を、俺は掠めるように見た。

  俺より小柄で、力いっぱい抱きしめちまうと、壊れてしまいそうな華奢な体。

  この体をどうにかする事を考えると、俺のマラまでビンビンになっちまう。

  「ゆ、悠太よぉ」

  辺りにゃ湯気が立ち込めてるってのに、俺の喉はカラカラだ。声がかすれちまう。

  「と、父さん。な、何?」

  ちくしょう、かわいい声出しやがって。

  振り向いて悠太に抱きついて、押さえつけてヤっちまえ!

  九分九厘、俺の頭の中はこいつを犯すことでいっぱいになっていた。だが、残り一厘の理性が、俺に冷静になれと訴える。

  もし、あいつにそっちの気がなかったらどうすんだ。若ぇんだから勢いで勃っちまうこともあるだろうが。

  くそぅっ!

  淫らな気持ちも洗い流すように、俺はざばぁ、と背中に湯を掛けて立ち上がった。

  「お、俺ぁ上がるから、お前はしっかり湯に浸かってけよ」

  ちくしょう、ちくしょう、ちくしょうがっ!

  いつものように、二人で一つしかないベッドの端と端に潜り込む。お互いに沈黙したまま、何も言えないでいる。

  悠太の裸が頭に浮かんで眠れない。

  今までこんなことなかったのに、悠太を男と一度意識しちまったから、たまらねぇ。大体、年下でちっこくてかわいくて、よく考えたら俺のどストライクじゃねえか。

  普段は悠太の父さんでござい、ってな顔をしてるが、俺だって男だ。我慢できねぇこともあるんだ。

  俺はもぞもぞとベッドから抜け出した。

  「あ、父さん」

  「わりぃ。俺ぁちょっと出掛けてくらぁ」

  その言葉に、動揺を隠せない悠太。

  「そう、ですか。……ごめんなさい」

  おいおい。ひょっとして、風呂場で勃起したせいで、俺が避けてるとでも思ってるのか。

  「な、何言ってるんだ。そうじゃねえよ。とにかく、出掛けてくる。お前は寝てるんだぞ」

  この時間に開いてるハッテン場、近くにあったかな。

  俺はひたすら腰を振っていた。俺の下にいるのは、悠太のように若い犬獣人だった。でも、同じなのは歳ぐらいのもんだ。背だって高いし、顔だってテレビに出ててもおかしくないくらい、しゅっとした顔立ちだ。田舎臭さなんて欠片も見られない。

  男は俺に掘られながら喘ぎ声を上げる。

  「兄貴、すげぇ。ケツがぶっ壊れちまう!」

  兄貴か……。

  確かに俺自身も驚くほど燃えていた。まるで一〇代の頃に戻ったかのように、がむしゃらに男を攻め立てる。でもそれは、風呂場で見た悠太の裸が、未だに俺の脳裏にちらついているからだ。

  そうだ、俺の体はこいつじゃねぇ、悠太を求めてるんだっ!

  だからって、どうする事も出来ねぇ。例え、何度あの場面をやり直したところで、悠太に手を出すことはできないはずだ。

  あいつが全然そっちの気がないのに、無茶をして部屋を出て行かれでもしたら、どうすりゃいいんだ。今や悠太は、俺の生活に欠かせない存在になってしまっているんだから。

  あいつがいなくなる事に比べたら、それぐらい我慢しろぃっ! あいつは俺の大事なせがれなんだぞっ!

  俺は自分を叱咤しながら、想いをぶつけるように腰を動かしつづけた。

  部屋に帰ると、ベッドの上に悠太の姿はなかった。焦って周りを見回すと部屋の隅に小さくなって眠っている。わざわざベッドから抜け出してこんなところで寝ちまったのか。

  寂しそうな寝顔には、涙の跡があった。

  ……こいつ、俺に嫌われたと思ったのか。

  だから一緒のベッドでは申し訳ない、と。

  「まったく、困った奴だ。父さんばっかり困らせやがって」

  俺は苦笑いをすると、悠太の体を持ち上げ、そっとベッドの上に移した。

  翌日の事だ。いつものように仕事を終わらせて家に帰ってくると、

  「父さん、これ」

  悠太が差し出したのは、しわくちゃの一万円札だった。

  「ん? どうしたんだ、これ」

  「バイト、したんだ」

  消えいるような声で、悠太は答える。

  「おおっ、バイト決まったのかよ。よかったじゃねえか」

  「……うん」

  「で、どんなバイトだよ。日給一万なら、結構高給じゃねえか。肉体労働か」

  「う、うん。まあ」

  なぜか悠太は詳しくバイトの内容を話そうとはしなかった。でも俺はバイトが決まったという事が嬉しくて、そのことにまで頭が回らなかったんだ。

  「じゃあ、お祝いになんか旨いもんでも食いに行くか」

  「ううん、いいよ。それより、これ受け取って」

  手にもった一万円札を、俺に押し付けようとする。

  「何言ってんだ。せっかく稼いだんだ。小遣いにすりゃあいいじゃねえか」

  「だって父さんに金借りてるから」

  「そんなこと気にしなくていいって言ってるだろ。それよりまた、風呂でも一緒に入るか。疲れただろ。今日は俺が背中流してやるよ」

  「ううん、いいよ。もう、入ったんだ」

  「そうか」

  そういやこいつの体からは初めて嗅ぐ石鹸の匂いがした。

  ん? こいつ、どこで風呂に入ったんだ。

  4

  それから、一週間。悠太の様子は変だった。

  毎日のように金を持って帰ってくるのだが、その金額がまちまちだ。五千円のこともあれば、二万円のこともある。あるいは、一銭も持って帰ってこないことも。

  そんな仕事なんてあるのか?

  風呂だって、仕事場で入ってくるなんて言っているが、それなら毎日石鹸の匂いが違うわけがねえ。

  ……ひょっとしてこいつ、ウリでもしてるんじゃねえのか?

  俺の頭は混乱しちまった。

  やっぱり、あいつはゲイなのか。いや、最近じゃ、ノンケもウリをやるみたいだし。いや、大体本当にウリをやってるのか。

  大事な息子である悠太を疑いたくなんてなかった。でも、あいつ自身もなぜかいつも以上におどおどしている。まるっきり隠し事をしてますといわんばかりだ。

  もしウリをやってるとして、あいつが好きでやってるなら、そりゃ咎める事は出来ない。でも、もしそれが、俺に金を返すために嫌々やっているのだとしたら。

  俺は翌日仕事を休んで、悠太の後をつけることにした。

  結果から言うと、俺の想像は当たっていた。あいつは、売春をしてたんだ。

  俺は知らなかったんだが、どうもゲイの中年親父が若者を買うような地域があるらしい。そこで、悠太は俺よりも年上である猪獣人に声をかけられ、一緒にホテルへ向かって歩いていた。

  その姿は、痛々しかった。意気揚揚と歩く中年親父の後ろから、まるで死刑場に連れられるように俯いて歩く。チラッと見えた横顔は、後悔で泣きそうな顔をしていた。

  どう見たって、好き好んで売春やってるように見えねえじゃねえか!

  そんな悠太の顔を見ると、俺は耐えられなかった。気が付くと、口よりも先に手が出てしまっていたんだ。

  二人の正面に飛び出した俺は、拳で悠太の頬を殴りつけた。

  「馬鹿野郎っ! お前、何やってんだっ!」

  「と、父さん」

  殴られた悠太の言葉に、隣の中年男がぎょっとした顔をする。そそくさとその場から逃げ出したが、俺は後を追わなかった。そんなものどうでもいい。

  とにかく、悠太を問いたださねば。道で騒ぎ続けると警察沙汰になりかねないと、俺は悠太の手を引き、ホテルの中に連れ込んだ。

  ホテルで手続きを取り、部屋の中に2人で入る。殴った頬を冷蔵庫の氷で冷やし、ベッドに座らせる。そんな手順を踏むだけでも、少しは頭が冷静になる。

  「それで、お前、何でこんなことをしたんだ」

  俯いたままの悠太が、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。

  「……だって、父さんに金借りっ放しで、いつ返せるか分からねえし……俺、何やってもうまくいかねえし、バイトだって見つからないし……体売るぐらいしか、思いつかなくて……」

  「金のことなんて考えなくてもいいって言っただろうがっ」

  控えめなこいつの性格が、こんなに腹立たしく思えたことはなかった。

  ……俺ぁ、お前の父ちゃんなんだ。なんで素直に甘えられねぇんだっ!

  「……俺、こんなに人に優しくされたの初めてで、ずっと……ずっと父さんと一緒に暮らしたくて。だから、父さんに冷たくされたらと思うと不安で……。少しでも父さんの負担にならないようにって、俺……」

  最後は言葉にならず、嗚咽交じりの囁きにしかならなかった。

  「だからってお前、見知らぬ男に体売って嫌じゃなかったのかよっ」

  それを割り切って仕事に出来る奴もいるが、こいつはそんな性格じゃねえ。

  「嫌だよっ。だから、ヤラれてる間は目ぇつぶって、父さんに抱かれてるって考えて」

  「俺?」

  ……何だって?

  「だって、だって俺……父さん以外にそんなことされたくなかったからっ!」

  やけっぱちのように悠太は叫ぶ。

  「お前……俺の事が好きなのかよ……」

  思いがけない言葉に、俺は戸惑う。

  やっぱり、風呂場で勃起してたのは……。

  「いけねえのかよっ!」

  悠太は堪えかねたように立ち上がった。

  「俺は父さんのことが好きで好きでたまらないんだよっ! 初めて見た時から理想の人で、そんな人に助けてもらって、一緒に住まわせてもらって。だから、だから……」

  「……」

  俺は何も言えず立ち尽くしていた。

  ……むちゃくちゃうれしいのに、どうしていいのかわかんねぇ。

  「……ごめん。父さんの気持ちも考えずにこんなこと言って……。父さんはただ、捨て犬を拾うみたいに助けてくれただけなのに」

  その言葉に、弾かれたように俺は悠太の下へ駆け寄る。

  「ば、馬鹿野郎っ! 全然俺の気持ち分かってねぇじゃねえかっ」

  俺はがばっ、と悠太を抱きしめた。俺の股間で太くたくましくなったマラが、悠太の腹にゴリゴリと押し付けられる。悠太もそれに気付いたはずだ。

  「父さん……」

  「ほら、お前がこうしちまったんだぞ。お前があの男にヤラれている事を考えたら、父さん……」

  俺は我慢できずに悠太をベッドの上に押し倒しちまった。着てるもんも引き千切る勢いで剥ぎ取っちまう。

  「くそ、エロい体しやがって」

  情緒も何もあったもんじゃない。俺は悠太の体にむしゃぶりつく。

  噛み付くように唇を重ねると、歯をこじ開け、舌を絡め取り、抜き取るほどに吸い尽くす。甘い悠太の唾液が俺の口の中に流れ込んでくる。うめぇっ!

  「はあ、はあ、はあ、はあ」

  興奮してるせいか、悠太の体は真っ赤になっちまってる。それを確認するように俺は舐め下がっていく。

  汗に濡れた首筋を舐め、淡い色の乳首をしゃぶる。くすぐったがる脇腹を丹念に攻め、へそにくちゃくちゃと舌を差し入れる。

  「ああ、父さん」

  目尻に涙をにじませて、悠太はうめく。

  「馬鹿、男の癖にこんなんで泣くんじゃねえ」

  「だって、気持ちよすぎて……」

  くそぅ、父親冥利につきるじゃねぇか。

  「もっと良くしてやるからな」

  俺の胸元でも、涙を流してしゃくりあげている奴がいた。あんなに控えめな悠太なのに、ここだけは立派に男を主張している。俺は我慢汁だらけのそいつをパクリと咥え込んだ。

  「ああっ!」

  男臭ぇ味と匂いが、口の中一杯に広がる。

  俺のと違ってきれいな色をしたアレは敏感で、雁首を舐め回すだけで痙攣のようにビクンビクン悠太の体が暴れる。

  「こら、おとなしくしろぃ」

  「む、無理だよ、そんなの。あ、気持ち……駄目だ、イっちゃうよ!」

  渾身の力で、悠太は俺の頭を股間から引き離した。

  「何だよ、そのままイってもよかったんだぜ」

  「嫌だよ。俺だって父さんの触りたいし。いいだろ?」

  かわいいこと言いやがって。

  「ああ、お前が勃たせちまったんだ、お前の好きにしろぃ」

  「うん」

  悠太はぎこちなく指を動かしベルトを外すと、ズボンとトランクスをずり下ろした。

  待ちきれない俺のチンポが、いきり勃って腹を打つ。

  「すっげぇ、大きいや」

  どす黒いずるむけマラを悠太がそっと握る。もう一方の手で金玉を持ち上げ、まじまじと見つめる。

  「馬鹿、じろじろ見るんじゃねえ。恥ずかしいじゃねえか」

  「そんな事言って、ビンビンの癖に」

  さわさわと金玉を揉み上げながら、俺の竿をぐちゅぐちゅとしごく。それに飽きれば今度は亀頭をぐりぐりとこねくり回す。そのいやらしい手つきに、我慢汁があふれるように滴る。

  俺ぁ今、息子にチンポを扱かれてんだ……。

  「……たまんねぇ」

  「父さん、舐めていい?」

  「ああ、いいぞ」

  先走りにまみれたチンポにおずおずと舌を近づける悠太。そして、しばらくちろちろと舌を動かしていたかと思うと、我慢できないようにしゃぶりつく。

  悠太の熱が、俺のチンポへと伝わり、余計に硬直させてしまう。

  えずきながらも喉の奥まで何とか飲み込もうと苦心する悠太の姿が、愛おしい。

  「くそう。……どこでそんなテク覚えたんだ。親父どもに教わったのか」

  俺はゆっくりと顔を上げさせると、悠太の両足を持ち上げた。

  「おい、入れてもいいか」

  「うん。俺も父さんが、欲しいよ」

  「よし、もうあんな事が出来ねえように、しっかりおしおきしてやる」

  俺はチンポの我慢汁を指にまとわりつかせ、それを悠太のケツにずぶり、と突っ込んだ。

  「ううっ」

  「おい、痛ぇか」

  「大丈夫」

  少し顔を歪めながらも、首を振る悠太。

  「じゃあ、入れちまうぞ」

  すまん。でも、もう辛抱できねぇ。

  俺は悠太のケツにマラを押し付けると、ぐい、と一気に貫いた。

  「うぐぅっ! す、すげぇ、父さんの太くて、熱い!」

  「お前の中も、おぉ、き、気持ちいいぞ」

  やわやわと蠢くケツ襞に、俺はうめく。まるで何十匹ものミミズがマラの周りを這いまわっているんじゃないかと思わせるケツだ。

  「くそ、こんないいもんで、そこらの親父どもをよがらせてたのかよ」

  「そんなこと、言わないで……」

  羞恥心か、悠太のケツがキュッ、と締まる。

  「ああ、なんちゅう名器だ」

  俺が抜き差しすると、襞が絡みつき方が激しくなり、よりチンポを刺激するのだ。

  こんなケツマン初めてだ。

  ばちんっ、ばちんっ、と俺は狂ったように悠太のケツをガン掘りする。その動きにあわせて、悠太のケツ襞は俺のザーメンを搾り取ろうと容赦なく吸い付く。

  「あっ、あっ、あぁっ」

  「おふっ、くそ、なんだっ、もう出ちまうなんて……」

  これじゃ、ちっとも悠太を喜ばせられねぇ。

  「す、すまん、悠太。俺ぁイっちまうぅぅっ」

  「父さん、いいよ、俺の中に……」

  「ぐぅぅっ!」

  じゅぷっ、じゅぷっ!

  俺が発射した大量のザーメンは、悠太のケツ襞の隅々まで満たしていく。

  「父さん、お願いがあるんだ」

  俺がぐったりと悠太の上に覆い被さると、悠太は耳元で囁く。

  「何だ?」

  「あの……俺にもケツ、掘らせて欲しいんだ」

  「お、俺のをか」

  その言葉に俺は戸惑う。

  俺ぁウケなんてしたことねぇんだぞ。

  「俺、掘った事がないから……」

  照れくさそうな顔をする悠太。

  すると、俺で童貞卒業したいのか。

  「……よっしゃ、息子のためだ。初めてだけど、こんなのでよけりゃいくらでも使えっ!」

  俺は仰向けになると、両足を自分で抱えた。毛深いケツの穴を悠太にさらす。

  「ほら、どっからでもかかってこい!」

  「うん」

  処女穴を掘られることに緊張して固くなっている俺のケツタブを、悠太はゆっくりと撫でる。そして、穴目掛けて舌を伸ばしやがった。

  「お、おい。洗ってねぇんだ。汚ぇぞ」

  俺の制止に、ぴちゃぴちゃという舌の動きで答える悠太。

  くっ、気持ちいい。

  父親の面子に関わると、声が漏れそうになるのを必死に堪える。

  悠太は俺のケツ穴を唾液でべったりと濡らすと、中指をケツに挿入する。

  「くっ」

  初めてケツに感じる焼けるような痛みに俺はうめく。

  「父さん、大丈夫?」

  「ああ、大丈夫だ」

  悠太は俺を気遣いながらも、動きを止めない。ゆっくりと穴を押し広げていく。

  「うぉっ、すげぇ」

  痛みの中に一ヶ所、くすぐったいような気持ちいいようなポイントがある。

  そこを指で刺激されると、体がむずむずしちまうんだ。

  「ここが前立腺だよ。気持ちいい?」

  悠太は俺の表情を見て、そこを重点的に攻めてきた。

  「あ、ああ」

  快感に身を任せているせいか、俺は少しずつ体から力が抜けていくのを感じる。そのまま、指を二本三本と突っ込まれるまでにはそう時間はかからなかった。

  「父さん、初めてにしちゃ力抜くのうまいね。もう入れても大丈夫そうだ」

  「おい、もう入れるのか?」

  俺の不安そうな声を聞いて、悠太がにやりと笑う。

  こいつがこんな顔見せるの、初めてだ。

  「父さん、怖いの?」

  「ば、馬鹿言え。なんでそんな」

  俺は虚勢を張る。

  「じゃあ入れるよ」

  「お、おう」

  悠太はゆっくりとマラを押し込んできた。めりめりとケツ穴がこじ開けられていく。

  「うぁぁぁっ!」

  ケツが緩んでいたせいか、痛みはあまりなかったが、悠太のチンポの圧倒的な存在感に俺は叫んじまう。体が強張って身動きできない。

  ……息子に犯されちまうなんて。

  「大丈夫。ゆっくり動かすからね」

  悠太は、俺を慈しむようにそろそろと腰を動かす。ぬちゃり、ぬちゃりと赤面したくなるようなエロい音が部屋中に響いた。

  その間も、悠太は口と手の動きは止めない。俺の体に指先を躍らせ、舌を這わせる。

  気持ちよさが、体中に広がっていく。

  「んっ、うぅっ」

  ケツが受け入れ態勢に入ったのが分かったのか、悠太が力強く俺を攻め立てはじめる。ケツのどこが感じやすいか知ってるんだろう。初めてとは思えないようなテクで、俺を翻弄する。腰を前後左右に振り、さっき感じた前立腺を突いてくるのだ。

  「あっ、あっ」

  俺は女のように喘ぐ事しか出来ない。

  こいつ、俺なんかより数段うめぇ。

  「父さん、モロ感だね」

  「そ、そんなこと言わねえでくれ」

  「かわいいよ、父さん」

  「うう……」

  俺は悠太の中の雄を初めて見た。あれだけ縮こまって生きてきた悠太が、俺を抱くときには猛々しい男に変わりやがる。

  「ああ、すげぇ。すげぇよ、悠太」

  「父さんは俺のもんだ。俺の女なんだ」

  激しく突き上げられ、俺は耐えられない。

  「ああ、くそ。駄目だ駄目だ、あ、イクぅっ!」

  くそっ、初めてケツを掘られたってのに、俺はなすすべもなくトコロテンでぶっ放しちまった。

  恥ずかしさのあまり、手で顔を隠そうとすると、悠太がその手を押さえつける。

  「イクときの顔、もっと見せてよ」

  そう言いながら、悠太は腰の動きを止めようとはしない。イったばかりの俺に、新たな刺激を与える。

  「ぐあぁぁっ、悠太っ! やめてくれ、狂っちまうっ!」

  「いいよ。狂うまで、父さんを何度でもかわいがってやる」

  「悠太、悠太ぁぁっ!」