そこそこ発展しているが魔物がいて魔物狩りがいる。
そんな殺伐とした世界に残された楽園、
それは酒場だ!
「店長って結構な資産家ですよね。」
机もグラスも何もかもを磨き終わり、
暇すぎて本を読み始めながら訪ねた。
「んん?」
店長は片方しかない目をこちらに向けて唸るように返事をした。
店長は虎獣人だ。
客用の椅子に座ってくつろいでいる。
見た目としてはおじさんとお爺さんの間くらいになりそうな年齢に見える。
灰色の毛皮に黒い模様、
さらにたくさんの傷跡がコラボした複雑な毛並みをしている。
所々に白い毛が交じっていて老いを感じさせる。
隻眼というのは相応に大変だろうとは思うが、
顔の右側に縦に走る大きな傷がまたかっこいいのである。
「そんなことはねえよ。」
もうすぐ明け方だ。
客はもう来ないと踏んだのか、
社長は酒のボトルを開けて呑みだした。
「いやいや、こんな暇なお店なのに絶対赤字ですよね、
しかも俺も雇ってくれてるし。
すっごい道楽だなぁ、って。」
店は道沿いのいい場所から少し奥に入った位置、
とはいえ大通りからの直線距離は短いしテナント料は安くないはずだ。
「金ならいくらでもあるからなぁ。」
「やっぱり資産家じゃないですか、
いいなーちょっとほしいです。」
「やなこった。自分で稼げ。」
じゃあお酒くらいはちょっとちょうだいと、
小さめのグラスを差し出してみると、
何も言わずに注いでくれた。
ほんと気前はいいし、道楽家業だな。
店を閉めたあと、
この日は店長の家に行くことになっている。
店長は戸締まりを僕に任せて先に帰っている。
自宅訪問の理由は
魔物狩りになるにはどうしたらいいか
と聞いたからだ。
気軽に聞いたつもりだけど、
わざわざ自宅まで呼び出しなんて
何を見せられるんだろう。
過去の功績でも見せられるのかもしれないし、
もしかしたら真剣に止められるのかも。
汚くてあちこち壊れてるビル街の間を歩いていく。
錆びたトタンと鉄板、その他廃材で固めたよくあるタイプの家だ。
でも今どき一軒家というのは結構贅沢なお宅だ。
「店長、来ましたよ。
……入りますね。」
玄関で突っ立ってるのも寒いし、
返事がないから勝手ながら入らせていただく。
「お?来たか?」
居間という感じの部屋に社長はいた。
振り返ったが、こちらを見ているのは顔の右側。
目の位置が大きな縦の傷跡に塗り潰されている方の顔だ。
それじゃ見えないだろうに、わざとかな?
と思ったが、かっこよかったから、
もし隻眼になったら真似してみようと心に刻んだ。
店用の整った服のままではあるが、
着崩していてボタンをいくつも外している。
胸元の傷跡は初めて見てドキリとした。
三本爪のような並行した傷痕がやけに魅力的に見える。
「魔物狩りになりたいなんて口走るおまえに
いろいろ見せてやろうと思ってな。
よっこら、まあ来い。」
誘われるままについていくと、
もう一つの部屋は、きったない寝室だった。
酒臭い、放置された酒瓶が臭っている。
この一軒家の大きさからすると、
さっきのキッチンと一体の居間、そしてその寝室で全部だろう。
あれ?もしかして寝室に連れ込まれた?
僕は抱かれてしまうの?
あーでも店長が相手なら僕は。
「何クネクネしてやがる。こっちだ。」
店長の汗か何か、店長汁が染み込んだ布団を除けると、
そこには頑丈そうなハッチがあった。
地下シェルターか!
わくわくする思いで降りていった。
梯子を降りた先、
地下の部屋にはいくつかの武器とたくさんの古い写真があった。
「わぁ。」
思わず声を上げてしまう。
明かりを付ける前からぼんやりと光って見えた壁掛けケースの中には
赤い水晶のような短剣が飾ってある。
「それは炎鉱石の短剣。熱で焼きながら切ることができる。」
そのとなりには床から伸びる縦長いケース。
ぎざぎざした刃だが形状は刀と言えなくもない。
「それはシャークブレード。
見た目はエグいが下手に扱うとすぐに引っかかる
扱いづらいやつだ。」
店長は酒瓶から直接酒をあおっている。
科学は相応に発展していて、
現代では銃火器による戦いが主だが
本当の主力は魔性の力が宿った近接武器達、
こいつらを使った昔ながらの近接戦闘だ。
店長もこういう武器を振り回していたに違いない。
というか、危険な近接武器使いだったとしたら
相当高ランクの魔物狩りだったに違いない。
「武器は短剣と刀なんですか?」
「いや、まだある。
半分くらいは処分したが、残りは他の場所にある。」
魔性の武器は一つ一つが非常に高価だ。
そうなるとすごい資産持ちってことになる。
そりゃ大赤字上等で酒場を開く道楽ができるわけだ。
武器ばかりに注目していたが、
たくさんの写真が貼り付けてあるのに気がついた。
見ていくと、様々な種族の人がいて、
たくさんの人の笑顔やふざけた顔が映っている。
隻眼じゃない若い店長の写真もあった。
「仲間とかですよね?」
「ああそうだ、だがみんな死んだ。」
「魔物狩りは危険すぎて割に合わん仕事だ。
金は稼げるが、稼いだ金を使うことなくみんな死んだ。
俺は、俺は運がぁ良かった、いや悪かったか。
死に損ねた、ただそれだけだ。」
店長はまた酒をあおる。
呑み過ぎじゃない?だいじょうぶかな。
「引き際を見誤らなければ。」
僕の言葉に重ねて打ち消すように
店長はしゃべりだす。
「そう言っていたやつも、思わぬところで死んだ。
引き際なんてなぁ、ないんだ。」
うーぃ。
と、酔いが回っているのか、
社長が意味のない言葉を呟いた。
「おまえにはもっと酷いものを見せてやる。
来い。」
腕を使われ、隣室へと連れられた。
居間の真下になる位置だ。
もう一つの地下室は、寝室だった。
いや寝室というか、これはラブホテルの寝室だ!
大きなベッド、その周りにはいくつものおもちゃ。
あれ?
ディルドばかりでオナホの方が一つもないのに気がついた。
「なんですかここ?」
「俺は後遺症があってな、
ダメになった時に籠もる部屋だ。」
店長の酒場は不定期で臨時休業となるから、
その日が"ダメになった時"ということか。
後遺症があるというのはまだ理解できるが
このラブホテル染みた部屋との関連性がいまいち繋がらなかった。
店長は上着から脱ぎ始めた。
「引き際なんてものはない、
あるとしたら重傷のついでに引き際が作られる程度。
俺はそうだった。」
シャツを脱いでいく。
「あー、思い出した。生きてるやつもいたな。
そいつは全身を焼かれて手足がもげた。
それでも運悪く生き延びた。
あの焼き達磨はもう残りの一生ずっとベッドの上だ。」
店長は上裸になった、
胸元の三本傷に限らず、全身が傷跡だらけだ。
一体何度も切り刻まれたんだろう。
ん?虎縞模様が動いた?
いやそんなわけは?
いやでもいまお腹のところの模様動いたよ?
「見ろよ。痛そうか?
お前の想像の倍はいてぇぞ。
それでも魔物狩りになりたいってなら
もっと酷いものを見せてやろうか。」
僕の返答をまつことなく、
店長はベルトへと手をかけた。
普段の酔った顔とはまた違うような
ひどく紅潮した顔をしているように見えた。
「いや店長、そこまでは。」
そう言ったのに店長は構わず脱いだ。
店長の下半身には蠢く模様があった。
いわゆる淫紋と呼ばれるものだと直感的にわかった。
股間を中心に虎縞模様や傷跡を取り込み、
不思議と魅力的な模様を作っていて、
目を離せない。
その模様の中心には大きな傷跡があって、
雄がなかった。
どこにも。
「え?えっと。チンポは?」
「どうしたと思う?」
店長は僕の手をとると、
その雄があった痕へと触れさせた。
蠢く淫紋がその接触に反応する。
「俺はサキュバスに敗北した。
殺されるはずだったが、気に入られて捕らえられ。
淫紋を刻まれた。
それから何度も嗜虐的に痛めつけられ刻まれた。」
店長が僕の服を脱がしていく。
僕は金縛りにあったかのように抵抗できない。
「これはチンポを中心にした三次元型淫紋だ。
凄まじく強力で消しても傷つけても再生する。
呪いを解くことすらできない。
当時の俺は抵抗すら許されずに隷属させられた。」
パンツまで全部脱がされると自分のチンポが
ビョンと飛び出て、勃起していたことに気がついた。
僕自身も淫紋に当てられてしまった!?
「俺は呪縛を解くために、
一瞬の隙をついて自らの手で切り落とした。」
「自分で?」
「そうだ。
再生する淫紋も核となるものを取り除けば
不完全となり隷属だけでも解除される。
サキュバスは倒せたが、
俺は雄を無くした上に、
未だに暴れ狂う淫紋付き身体を抱える事になった。」
いまだに熱で浮ついてはいるようではあるが、
店長は真剣な目を取り戻して言った。
「おまえは普通に生きろ。
俺はもうだめなんだ。
俺みたいになるな。
わかってくれ。」
それだけ言われ、俺は突き飛ばされた。
店長は背中を向けて蹲っている。
「すまない。手が勝手に、気がつけば、脱がしていたようだ。
俺は、俺はこの身体を慰めなければならない。
行ってくれ。」
店長の荒い息だけが地下室に響いた。
店長の傷だらけの背中だけが見える。
僕は、僕はそこまで言われて、行けるわけがないよ。
「店長、こんな全部見せてくれて、
そこまで止めてくれてありがとうございます。
でもそこまでされて、何もしないなんてできません。」
店長の背中にそっと寄り添った。
「や、やめろ。お前は淫紋に当てられているだけだ。
こんなものに関わるべきではない。」
「淫紋を見る前から以前から店長のことが好きでした。
一時の感情じゃありません、
それではダメですか?」
店長だったらいいかもと思ったのは本当だ。
渋くてかっこいいし、好きだと思った。
多少ふざけた思いはあったけれど、
いまは真剣に好きだと思っている。
「おまえは、お前はいいのか。
手加減なんてできないぞ。」
「構いません、俺は店長と愛し合いたい。」
そう言うや否や、
僕はすごい勢いで投げ飛ばされ、
ベッドの上に叩き落された。
「ッ!」
息をつくまもなく、
体の上に店長が飛びかかってきた。
「フッー……。」
力強く両肩を抑えられた。
こんなの逃げようがない。
だいじょうぶ覚悟は決めてる。……つもり。
いつもの気怠い感じの店長とは全く違う、
猛獣のような気迫だった。
目が怪しく輝き、腹部の淫紋も光って蠢いている。
雄がかつて存在した場所からポタポタと先走り液が溢れている。
店長は体を寄せると、
股間の傷跡を僕の玉袋へとくっつけた。
触れることで淫紋の影響をより強く受けたのか、
タマタマがゴゥンゴゥンと動き出したかのような
奇妙な高まりを感じる。
腰をグッと前へと動かす。
僕のチンポに沿って傷跡をこすりつけられていく。
「うあぁ。」
チンポが熱を帯びていく。
熱い!いままでのオナニーでも風俗でも、
一度も感じたことのない強烈な、熱いくらいの血潮。
勃起のしすぎで破裂しそうだ。
「ぐるるぅ。」
店長は前へ後ろへ、
念入りに擦り込むように傷跡を僕のチンポへと押し付けて行く。
それだけで、それだけで、僕はもう。
「でるっ!」
ドパッどぱっ。
精通仕立ての頃でさえこんなに出たことないという量が出た。
あまりの驚きに呆然としてしまった。
精液に塗れた僕の胸や腹を見て、
店長は顔を近づけて舐め取っていく。
ザリザリとした舌は奇妙な性的快楽をもたらしてくる。
「んんっ、うあ!」
乳首なら少し感じるくらいかな。
という程度だったはずなのに、
腹も胸も全身が性器になったような感覚すら覚える。
すっかり舐め取られたときには、
全身から店長の匂いがするほどになっていた。
匂いを移すとは本能の上での所有権の主張ということらしい。
店長のモノになっちゃった。
不思議と充足感がある。
いま気づいた。
あれだけ精液を出したのに、一切萎えていない。
いまだ勃ち続けている。
「店長……。」
もっとほしい。
顔を見上げると、
一瞬正気に戻ったかのような気がした。
優しい顔に見えたな。
店長が再び僕に跨ると、
僕のチンポを捕食すべく、
勃ちんぼチンポめがけて、
その腰を下ろした。
ずっぷ。
音を立てたかのように店長の体内へと、
僕のチンポが吸い込まれた。
「うおおお!」
店長は雄叫びを上げると、
凄まじい勢いでピストンを開始した。
「ああっ!あああ!」
なんて乱暴なんだ。
僕は店長に敷かれたまま、
ひたすらその動きに耐えるしかなかった。
ずぶぶぶっ、くちゅ。
ピストンの音に紛れたけれど、
僕は二度目の射精をした。
それでも勃起は収まらない。
店長の乱暴な捕食も終わらない。
「ひぃっ!ひゃぁ!」
射精に次ぐ射精。
とめどない快楽、収まらない勃起。
絞り取られる!
まるで拷問のような快楽の津波に頭が焼ききれそうになる中、
ひたすら耐え続けるしかなかった。
店長の傷跡の穴からも精子が含まれない精液、
先走り液のようなものがとめどなく吹き出していたが、
僕はそれを見る余裕すらなかった。
ふわりとしたコーヒーの香りがした。
目を覚ますと、縞々で傷々な店長の背中が見えた。
「起こしたか、すまなかった。
一度始めると本当に手加減はできないんだ。」
負担にならないように薄めにしたと、
コーヒーを渡してくれた。
温かいが少しぬるめだ。
「行為の最中は苦しくはなかったか。」
店長が異常に優しい。
そして気怠さや酔いを感じない。
どことなく爽やかさすらあって
別人にすり替わったか?と疑いたくなった。
「見てくれ。
お前が協力してくれたおかげで
淫紋が完全に収まった。
チンポがないから永久に解消されないと思っていた欲求不満が
いまはどこかへ行ってしまった!」
ご機嫌にしっぽを振っている。
ありえない、店長のしっぽはいつも重力の言いなりだったのに。
「頭が覚醒したようだ、
こんなにスッキリしたのは久しぶりのことだ。
久々に気分がいい。」
雄がかつてあった傷跡の周りでうごめいていた淫紋、
それはただの模様か普通の入れ墨のような状態になったようで、
動いたり光ったりはしていない。
店長がいつも気怠い感じにしていたのは淫紋のせいか、
いったい何年間苦しんできたんだろう。
よく見ると店長の下腹部が軽くぽっこりしている。
店長は年齢の割に引き締まったいい体型してたはずだし、
もしかしてその妊娠腹は全部僕の精液か?
「そうだ。話を戻そう。
魔物狩りになるのはやめるんだ。
ほとんどが死んで終わりだ。
運良く生き残っても
俺みたいになったら人生の終わりだ。」
気だるい感じでもなく、自嘲的な感じでもなく、
真剣に僕のことを思っていっているという思いが伝わってきた。
でも僕の結論はもう決まっていた。
魔物狩りにはならない。その代わり……。
「こんなにされて、
もう魔物狩りになんてなれませんよ。
店長のそばにずっといさせてください。
もう身も心も店長の虜にされました。」
「そ、それは淫紋の……。」
片方しかない目を泳がせて、
店長は困った顔を浮かべている。
「違います。本心です。
また淫紋が暴れ出したら俺を蹂躙してください。
僕は何度だって付き合います。
店長の人生は終わってません。
僕と一緒にやり直しましょう。」
「いや、それでも俺は……。
こんな爺なんて……。」
「じゃあ責任取りましょう。責任。
僕を虜にした責任。僕と一緒にいてください。」
さっきとは逆で僕が迫っていた。
それからというもの。
暇すぎる酒場は変わった。
店長がやる気を出して、僕も本気を出した。
大繁盛とは行かないが、
それなりの人数が来て、それなりに繁盛する。
そんなまあまあの店にはなった。
前から来ていた僅かな客の中には
気怠い店長も良かったよ。やる気のない猫みたいで。
と言っている人がいた。
それには僕もいくらか同意した。
そこそこになった店も居心地はよく、
ここに雇われたことは本当に幸運だったと思っている。
今日は臨時休業。
僕はあの地下室で蹂躙されている。
店長が咆哮したってあの地下室からの声はどこにも届かない。
貪る猛獣のような店長と、
行為直後の凄まじく優しい店長、
それを知っているのは僕だけ。
僕は店長を独り占めにしている。