求めあう手足と身体

  ごく普通の家のごく普通の父と子だ。

  彼らにとってはこれが普通だ。

  「お父さん、お馬さんごっこやって。」

  「ああ分かった、よっこしょっと。

  さあ乗りなさい。」

  父がソファーから降りて四つんばいになると、

  小さな子がその背に乗った。

  この親子で良くやる遊びだった。

  父は我が子の重みを感じ、

  この遊びも卒業しなければならない日を予感した。

  四足歩行をする父とその上に乗る子は、

  どちらも虎縞の毛皮を持つ虎獣人で、

  同じ明るい黄色の色合いに、

  似たような形の模様を持っていた。

  この親子は一般的な親子と比べると

  かなり不運な方ではあったが、

  本人達は不幸だとは思っていない。

  父は低層の汚染地区のすぐ近くに住む、

  ありがちな下級労働者だった。

  母もほとんど同じ。

  排気ガスが臭う中で二人は出会い、

  機械油に塗れながら愛を育み、つがいとなった。

  そして二人は子を授かったが、

  母はそれと同時に体調を崩し、

  それから幾ばくもなくこの世を去った。

  それでも最期の時は子供を見て笑っていた。

  しばらくは慌ただしく子育てに翻弄していたが、

  子供に重大な病が見つかった。

  手術をするためには

  下級労働者の一生分の賃金でも払えないような

  凄まじい大金が必要だった。

  父は大金を用意して、

  子の病を治療した。

  どうやったって金を用意したのかと言えば、

  彼は自らの身体を売ったのだ。

  この父の名はミグ。

  彼はお馬さんごっこをしていない時でも、

  四足歩行をする機会が多い。

  彼は売った身体の部位とは手足だ。

  ミグの四肢は肘と膝の少し内側から先が失われている。

  今後一生不自由することになろうとも、

  いま自身の背の上で笑う我が子の笑顔を見れば

  正しい判断をしたと自信をもって言う事が出来た。

  「はぁ、ちょっと疲れた。降りてくれるか。」

  「わかった。水いる?持ってくるね。」

  ミグの子はとても素直で良い子で、

  気が利く子に育った。

  名はアルゥ。

  水を持ってくるだけでなく、

  ストローを刺して、

  父の身体を支えて飲ませてあげていた。

  「おまえは優しくていい子だ。

  本当に。」

  ミグはそっと笑った。

  二人は幸せだった。

  その時、締まっているはずの鍵がガチャリを開けられて

  家の中へと誰かが入ってくる足音がした。

  「よぅ、元気にしているか。」

  ずいぶんと目つきの悪い、

  また虎獣人の男が現れた。

  「スカルドおじさん、こんにちわ。」

  「どうも、ご無沙汰してます。」

  彼はこの親子の様子をちょくちょく見に来る父親の兄。

  ということになっている。

  灰色に近い暗い黄色の毛皮のせいで、

  目つきの悪い顔がさらに悪人面に昇華されてしまっている。

  その割にこの家の合い鍵を持つ手は

  父親と同じような明るい黄色の毛皮だった。

  その明るい黄色の毛皮の手によってミグは抱き上げられた。

  「アルゥ、お父さんはスカルドおじさんと話があるから

  先に寝ていなさい。」

  「はーい、おやすみなさい。」

  アルゥは寝室へと向かった。

  まだ年齢としては小さい子供と言えるが、

  身体の自由が利かない父に代わって家事をこなしたりと、

  ずいぶんとしっかりした子に育っている。

  自分で布団を敷いて寝てくれることだろう。

  「ふっ、親子ってのはいいな。」

  「はい、スカルドさん。

  本当におかげ様であの子の病気を治すことができましたし、

  無事に暮らせています。」

  「俺は対等な取引のつもりだった。

  それ以外については礼を言われるような覚えはないぞ。」

  「そうはいっても、

  私達のことを何年にも渡って見守ってくれてるじゃないですか、

  それは取引の中にはなかったでしょう。

  私は本当にかんむぎゅ。」

  「そろそろ黙れ。」

  スカルドの手がミグの口を塞いだ。

  乱暴な言い方ではあったが、

  スカルドの顔はそう悪い気もしない

  とでも言っているようにミグは感じた。

  「俺は身体がお前を求めているから

  来ているだけだ。

  あと先にここに置いとくぞ。」

  スカルドはこうやってくるたびに、

  抱いた礼だとして大金を置いていく。

  四肢を売り払った代金は全てアルゥの治療代に消えた。

  治療後からいままで、

  働けずとも無事に生活できているのは

  スカルドがこうやって支援してくれているからだ。

  ソファーに寝かされると

  ミグの纏う服は剥ぎ取られていった。

  四肢のないミグはされるがままだ。

  抵抗することもできないし、

  抵抗する気もない。

  スカルドも自らの服を脱ぎ捨てていく。

  裸体が露わになると、

  暗い黄色の毛皮と明るい黄色の毛皮が

  肘と膝を境界にしてくっきりと分かれていた。

  スカルドの持つ明るい黄色の毛皮の手足、

  この手足は元々はミグの手足だったものだ。

  「お帰り、私の手足。」

  この二人は元々男色の気はなかったし、

  いまも男に対して発情することはない。

  ただこの二人の間には移植された四肢を介してなのか、

  特別な、惹かれ合うような奇妙な思いが通じ合っていた。

  スカルドの四肢がなぜ失われたのかをミグは知らない、

  ミグの方から問いかけたことはない。

  知るべきではないと本人は考えているようだ。

  ただ、スカルドが公にはできないような

  如何わしい組織の人物だという事だけ知っている。

  スカルドが代わりの四肢を探し始めた時に、

  我が子の病に困り果てた同族がいたというだけのことだ。

  ぴちゃぴちゃと音が鳴る。

  スカルドがミグの肉棒を咥えている。

  快楽に耐えかねてミグが体を捩らせている。

  「気持ちいいっです。」

  お互いに拘りがないゆえに決まった体位はなく、

  身体を重ね合い、気持ちよくさせ合うと言う事が大事だった。

  ただ、主導権は否応なしに四肢のある方が握ることになる。

  スカルドがミグを起こすと顔の前に自身の肉棒を突き出す。

  迷うことなく、ミグはそれを咥えた。

  長い前戯を終えると、

  スカルドがミグを拾い上げ、

  くつろぐようにソファーに座った。

  そして、自身の膝の上に座らせるように、

  そっとミグの中へと肉棒を沈めていった。

  ミグはスカルドと繋がると、

  失った手足が戻ったかのような安心感を覚えた。

  後ろから自らの手だったものが伸びてくると、

  ミグの肉棒を握った。

  「こうやって自慰してたんだろう?」

  唾液に塗れた肉棒が握られ、

  くっちゅくっちゅとピストンさせられた。

  まだ若かった頃の自慰行為と比べると、

  握りが力強く、少し違いを感じた。

  「ちょっと強い、かな。」

  思わず、ミグは体を震わせ、

  膝までしかないのに、

  足先までピンと伸びるかのような錯覚を覚えた。

  その時、尻の中に熱い感覚が広がっていった。

  「お前こそ、ケツだけで俺をイカせたな。」

  尻に力が入ったり抜けたり、

  意図的か偶然か、

  スカルドの方が先に果ててしまったようだ。

  「うっ、はあ、はあ。」

  もう何度目の交わりになるか。

  今度は向かい合っての交わりとなる時、

  不意にスカルドが立ち上がった。

  繋がったまま、元々は自分のものだった腕に抱きかかえられた。

  スカルドが歩き出した。

  ミグは不具な身体でなんとかしがみついた。

  「どこに!?あっ……やっ。」

  しがみつくと余計に挿さってしまい、

  ミグは歩く振動だけでまたイキかけてしまうのを

  必死で耐えていた。

  「どこに行くんだろうな。

  ま、ちゃんと寝ているか様子見だ。」

  「え?ちょっとまって、ああん。」

  ガラリとやや勢いをつけて襖を開けた。

  暗い部屋に明りが差し込むと、

  子供用の小さい布団が二つ並んでいるのが見える。

  片方の布団ではアルゥが眠っている。

  開いている方の布団はミグのために敷かれたものだ。

  「お、起きたらどうするの。」

  「それも面白そうだな。」

  期待通りか、向くりとアルゥが起き上がった。

  「……。お父さん?おじさん?」

  「やあアルゥ、起こしてすまんな。

  ちゃんと寝てるか見に来ただけだ。」

  「アルゥ、えっと。起こしてごめんね。」

  返事はなかったが、もう一度素直に寝てくれたようだ。

  そっと襖をしめた。

  「こんなっ繋がっているところを見られちゃったじゃないですか!」

  「逆光で見えてねえよ。

  それよりお前、結構見られるのは好きなんじゃないか?おい。」

  二人の腹の間でミグの肉棒がガチガチに固くなっているのを、

  お互いに感じていた。

  「そんなことは……。」

  「本当か、おい。」

  「やっあぁ!あん!あっ!」

  身体そのものを上下に振るわれ、

  強烈な勢いで肉棒が出入り

  「あんまり騒ぐとアルゥが起きちまうぞ。」

  「んん!…ぁ…ん!」

  意地悪な囁きでミグが声を殺すように喘いだ。

  その様子に満足したかのように、

  スカルドの精液が放たれ、

  ミグの腸内を満たしていった。

  まだ早朝のうちに目が覚めた。

  ソファーがある、ここはリビングだ。

  普段はちゃんと寝室に寝かせてくれるのに。

  アルゥもまだ眠っているのか誰の気配もしない。

  スカルドは帰ってしまったようだ。

  仕方なく、まずは自力で体を起こそうと、

  身体を捻るようにして体勢を変えようとした。

  その時、尻から何か出るような違和感を覚えた。

  「なんで?え?」

  スカルドと交わった時のまま、

  乱れた家具や飛び散った二人の精液。

  尻から流れてくる感覚も恐らく精液。

  汗くさいし精液が乾いて固まったような毛皮。

  スカルドはミグの反応を楽しむかのように

  意地悪なことをすることがある。

  今回はそれのかなりきつい奴のようだ。

  普段通りならアルゥが起きてくるまであと1時間と少し、

  ミグがとりあえず何とかしようと四つんばいで歩くと、

  その後に点々と尻から垂れた精液が続いた。