犬人と竜人の秘密

  「う………う~ん………!」

  放課後になり、殆どの生徒が部活動に勤しむ中。教室に一人、背伸びをして欠伸をしている黒い毛の犬獣人が居た。よれよれの制服に、彼の座っている机の半数が教科書類に占められている事から考えると。補修を行っていたという事ではなさそうだ。それも、その筈だろう。彼は、部活動に所属していない帰宅部で。委員会にも入っていない。自堕落気味に高校生活を送っている彼は、今日も無為に過ごそうとしていた。

  

  「あーあ……何か面白い事ないかなぁ……」

  乱雑に置いていた(彼曰く実用的)教科書を鞄にしまい帰る支度をする犬獣人。名前を、塚井健(ツカイ ケン)。このままだと、青春を無駄にしてしまう……そんな退屈そうな青年に、ある事件が舞い込んでくる。

  

  溜息を吐き、時計の針が幾分か進んだのを確認した後に。携帯を取り出し、何か面白い事件でも起こっていないか健は確認する。しかし、目に留まる物はなかった。再び息を零し、携帯をスリープ状態へと移行させる。

  そんな時だった。退屈で、何もない平穏とは名ばかりの無意味な日々。ドタドタとした、誰かが廊下を走る音が健の耳に入って来る。

  

  「……運動部の誰かが走ってるのか…いや、それにしては一回だけだったし」

  耳にした情報から、退屈凌ぎに整理する。立ち上がり、椅子を引きずって机の中に閉まった後。チラリと、様子を見るように健は外を覗いた。

  

  「…………………はぁ……はぁ………」

  前半の部分がよく聞こえなかったが。健の目に入ったのは、真面目と評判のクラス委員長が何かを零し息を切らしている様子だった。顔位しか見覚えがないのだが、何だか様子がおかしい。緑色の、オプションに角が付いて来る竜人。学生服の中の様が大変気になるのだが、今は置いておこう。何を焦っているのか、キョロキョロと注意深く辺りを見回しながら何故か音を立てて早歩きで動いている。気になったので、こっそりと後を追ってみる事にした。

  

  「…………………?」

  耳を澄ますと、携帯のバイブレーションの音が聞こえて来る。自分のポケットを確認しても、特に変わった様子はない。さっき見つけた委員長からだろうかと思考を切り替え、体調が悪いようだったら保健室までは案内しようかと。委員長が駆け込んだ男子トイレの中にそろりと足を忍ばせた。

  [newpage]

  「はぁ…はぁ…間に合った」

  熱を帯びた息が竜人から漏れだした。場所は、男子トイレの奥の個室。カチャカチャと、竜人はベルトを外し、下半身を露わにする。出てくるのは、ある程度引き締まった体と竜人の性器。驚いたことに、興奮をしているのだろうか。立派な物がそそり立っていた。下着に阻まれているのだろう。先端から先走りを垂らし外せと主張している。

  

  「…………クソッ!」

  勢いよく、下着を竜人は外す。赤く、そびえたったそれは羞恥を感じるには十分だった。その直後。バイブが振動するような音が、竜人の体から発せられる。

  

  「……は……ぁ…………」

  思わず前かがみに倒れ込むのを、必死に抑える。竜人からはよく見えないが、刺さっていた。内部を刺激し快感を与えるバイブが、竜人の尻に。ブルブルと震え、今尚快感を竜人に与え続けている。それに耐えるように、竜人は歯を食いしばる。

  

  「クゥ……まだ…ぁ……だぁ……」

  徐々に、竜人の目から光が無くなってきている。そろそろ、限界なのだろうか。微弱だった振動も、時間に比例する様に強くなっていっている。その度に、溢れ出る透明な液の量は増えて行った。床を濡らすまいと、竜人は近くの紙を取り地面に敷く。ないよりは、マシだろう。

  

  「何とかして、外さなければ……」

  刺さっている物を、外そうと竜人は踏ん張る。しかし、どうにも深く入っているのか。簡単には抜けそうにない。振動は強まっていくばかりで、竜人に休息を取る時間はなかった。一瞬の踏ん張りも、無意味に散る。

  

  「………………ぁ」

  ドクンと、一回性器が脈を打った後。白濁の、雄の匂いが濃い液が発射される。我慢していた反動か、壁にも飛んだ劣情の証。誰かに見られると不味い。思考を張り巡らせ、近くにあるであろう紙に手を伸ばす。

  

  「………!」

  しまった。焦り過ぎたのか、紙がなくなっていた。ならばと思い、ポケットに常備してあるのを使おうと手を伸ばす。油断を、してしまった。逝ったばかりの、敏感になった竜人の体に追い打ちをかけるように。再びバイブが振動を始める。

  

  「は…ぁぁ……ンゥ!」

  敏感になった体は、酷く脆かった。先程出したであろう液の量も増し、辺り一面に散らばる。より一層、竜人の体液の匂いで部屋は満ちる。更に、追撃。精を吐き出し続ける竜人に、バイブは逃がさないと言わんばかりに振動を強める。

  

  「も、もう止め……出な……あああぁぁ!」

  口を押える事も出来ずに、潮を吹くように性器から体液が放出される。溢れ出た液は止まらない。全てを出し切るまで、竜人は誰も来ませんようにと祈り続けた。その希望は、偶然見ていた犬人にあっさりと砕かれる事になる。

  

  「おーい、委員長……大丈夫?……何、この匂い。奥の個室からみたいだけど……」

  不味い、不味い、不味い。誰か来てしまった。幸い、あいつらの一員ではないようだが。今の姿を見られるのは駄目だ。足音は一つ…声を振り絞り、出て行って貰おうと精一杯の言葉を口にする。

  

  「あ…あぅ……大丈夫だぅ。……心配、しないでくれ………ぁ」

  言葉は、発せられた。だがしかし。お節介な青年は、その言葉を聞いたにも関わらずドアをノックして反応が返って来ないか確認をしていた。

  

  「そうは言っても、心配だし」

  気持ちは、十分にありがたい。この姿を見られるのは困る。お願いだから去ってくれ。そんな竜人の淡い希望を粉砕するように、ゆっくりとドアは開けられる。

  

  「匂いは、ここからだし…鍵も掛かってない。大丈夫?いいんちょ………」

  ギィと音を立てて開けられるのが、酷く長く感じられた。竜人の顔は、生理的な反応も含んでいるが。一番は、見られた事に対する羞恥だった。

  

  

  「えっと………紙、持ってくるからじっとしてて」

  一瞬、何が起こったのか分からなかった。ドアを開けたと思ったら、竜人である委員長の痴態があったとか想定出来ないってば。具合が悪そうって思ったのは俺のミスかも知れないけれど…今はそんな事より、この事を知られない様に隠すのが求められる行動…だよな?健は隣の個室から紙を持ち出し、委員長の体を拭こうとした。

  

  「……っ……だ、大丈夫だ。そんなに近寄らないでくれ」

  「そんな表情で言われても…ていうか、協力した方が早く収まると思うよ。…勝手に入っちゃった俺も悪いと思うし」

  その言葉が、本当に罪悪感から言った事なのか。その時の健には分からなかった。

  

  

  「ふぅ……大分片付いた…匂いはまだ、残ってるけど」

  大量の紙を犠牲にして、取り敢えず気にはならないだろう程度には片を付けた。それを聞いてしまった竜人は、自然と頬を紅潮させる。

  

  「い、言わないでくれるか………」

  ポリポリと頬を搔き、恥ずかしいのか健から目を反らしている。大体の事情を察し、フォローをしようと健は慌てて口にする。

  

  「…っと、ごめん。それよりも、本当に大丈夫なのか?」

  竜人に近づき、他に異常な所はないかと確認を取る。改めて近づかれると、犬人は竜人より少しだけ背が低いようだ。本当に心配そうな健の様子に、これ以上巻き込むまいと竜人は取り繕う。

  

  「……あぁ。心配を掛けて済まない。オレはこっちに用事があるから失礼させて貰うよ」

  「え、ちょっと……」

  健は引き留めようとしたが、委員長は振り向かずにすたすたと行ってしまった。逡巡した後、やっぱり追いかけようと健は足を運ばせる。

  [newpage]

  「おう、委員長さんよ。どうだった?機械の味は」

  「…………………」

  委員長と竜人の事を呼んだのは、制服の着方が我流の不良っぽい虎人だった。取り巻きを数人引き連れ、にたにたと表情を動かしている。無言のまま、竜人は声を掛けられた虎人の方を向いた。

  

  「何のようだ」

  「分かってんだろ?どうだったよオモチャの具合は。堅物と噂だった生真面目な野郎でも善過ぎて潮吹いちまうって評判なんだよ。撮影できなかったのが少し残念だったけどな」

  にたにたと笑うのを止めず、挑発するかのように虎人は竜人の顔を覗き込んだ。取り巻きは動かずに、じっとしている。カチリと、赤い強弱の文字が刻まれているスイッチを虎人は押す。

  

  「……………ン…………」

  「なーる程な。よかったみたいじゃねぇか」

  押したのは、竜人の中にあるバイブのスイッチだったようだ。何故、竜人の中にあるのか。そして何故外さないのか。理由は、簡単だ。外せないからだ。罠に嵌められ、機械を埋め込まれた竜人。抵抗をする術は、なかった。取り巻きの一人が、バイブを外す鍵らしき物を取り出す。

  

  「どうする?従うって言うんだったら、外すのを考えてやってもいいけどよ」

  「……ハ。冗談だろ。お前の言葉は信用できない」

  「あっそ。ポチッと」

  「………ぅ……………」

  虎人の、隅から隅まで犯してやっから従えという言葉に竜人は拒絶を示した。興味なさそうに、虎人は振動のスイッチを入れる。状況は、圧倒的に竜人が不利だ。口を尖らせ、虎人は最後の交渉をする。

  

  「今なら痛い目見るだけで済ましてやるよ。ま、体が持つかは分かんねぇけどな」

  勝利を確信し、竜人を見つめる虎人。緊張した空気が張り詰める中、先ほど虎人が言った言葉が一字一句同じ、虎人の声で再生される。

  

  『今なら痛い目見るだけで済ましてやるよ。ま、体が持つかは分かんねぇけどな』

  「な、なんだ?」

  どよめき。取り巻き達も焦り、竜人と虎人を含めた全員が周囲を見渡す。物陰から、一人。携帯を翳した黒い犬獣人が姿を現す。

  

  「うーん、ちょっと証拠としては弱いけど十分だよね。委員長の証言が取れれば」

  そこに居たのは、先ほど発せられた音声を記録した携帯を持った。塚井健だった。

  

  

  こっそりと忍び足で、俺は委員長の後を追った。誰かに声を掛けられて立ち止まったようで。直ぐに近くの隠れられそうな場所に身を潜める。聞こえた声は、委員長をあんな体にした犯人の言葉だった。

  

  (……どうしよう、こういう時は……)

  

  咄嗟に、携帯を起動させて録音ボタンを押した。音声しか聞こえないけれど、何も喋らなければ記録出来る。誰か来ない様に取り巻き的な奴が見張っているが。運が良かったのか、見つからなかった。

  

  そして、現在。携帯を翳した俺は相手を脅している。

  

  「どうする?今だったら見逃すけど」

  顔に笑みを浮かべ、委員長に声を掛けた虎人とその子分らしき輩に大人しくしないと社会的に殺すと宣言した。流石に、分が悪いと思ったのか。キョロキョロと周囲を虎人は見渡す。その後、にやりと笑い。

  

  「誰も来ない。残念だったな、お前の負け……」

  「あっそ、ポチッと」

  録音した音声を、ネットに挙げた振りをする。これで勘違いしてくれれば俺の勝ち。万が一気づかれても時間が来れば挙がるからどっちみち俺の勝ちだ。相手の表情をチラリ覗くと、あたふたと俺が本気でアップロードしたと勘違いしたようだった。画面を見つめ、誰かが見ているとでも言うかのように健は続ける。

  

  「お~、伸びてる伸びてる。場所も記入したから誰かが来るまで時間の問題だな。早く逃げた方がいいぞ。つっても、逃げた所で居場所は無くなるけどな」

  勝利を宣言し、呆然としている相手を他所に。委員長の手を引っ張り俺はその場を離れた。去り際、鍵を奪うのも忘れずに。………後から、追って来る様子はなかった。

  

  

  「…………ふぅ……上手くいったみたいだな」

  息を吐き、緊張を解く。割かし、よく出来た演技だったと自分でも感心して。鍵を掌で転がす。小さな、何処かの鍵。オモチャのようにも感じるが、本物らしい。俺は委員長に鍵を手渡した。

  

  「スマナイ、無関係な君を巻き込んでしまって……」

  本当に、申し訳なさそうな顔をする委員長に対して。健は気にしてない様に、廊下を見回し誰も居ない事を確認した後。言葉を紡ぐ。

  

  「いいって、別に。関わろうとしたのは俺だし。……お節介だったか?」

  「そんな事は…ややこしくなるな。ありがとう、君のおかげだよ」

  「……改められると、ちょっと照れるな」

  話を中断し、中にある機械を外そうと委員長はトイレに入った。途中、ポロリとボタンが委員長の服から落ちる。何かと思って確認したら、強弱の付いた…何だこれ。ランプが光ってない事から、今は作動してないみたいだけれど。忘れてなかったら、職員室にでも届けに行こうかな。携帯を起動しようとしたら、委員長が戻って来た。

  

  「もう、大丈夫だ。心配を掛けたな」

  「それなら、安心……って、やばい。もう下校時間過ぎそう。急いで出ないと面倒な事になるぞ」

  見ようとした携帯に目を向けると、丁度校門が閉まる五分前だった。その事を委員長に伝えると、急いで出ようと言われ。二人で廊下を進み階段を駆け下りた。急いだおかげか、時間はぎりぎりだったが何とか外に出る事が出来た。

  

  

  「ま、間に合った。全力ダッシュはキッツイ……」

  「な、何とか………あ」

  校門も閉まり、残った生徒を確認する先生に少しからかわれたが。セーフラインぎりぎりを通過した。と、思っていたのだが。委員長から、素っ頓狂な声が発せられる。その事を聞き逃さなかった健は、何があったのかと反射的に質問をする。

  

  「どうしたんだ、何か忘れ物でも……」

  「……家の鍵を、うっかり忘れて来てしまった。これでは、家に入れない」

  そんな、親とかを待てばいいんじゃ。そう言い掛けた健の脳裏に、ある考えが浮かぶ。顔見知り程度だが、このままさよならと言うのは少し後が悪い。という事で、提案を健は委員長に持ちかける。

  

  「あの、さ。よかったら家に来るか?親はいないし、弟は居るけど…明日は休みだし、鍵なら明日部活動とかする人も居るから学校も開いている時に取りに行けるだろうし」

  「………そうだな。お言葉に甘えさせて貰おう」

  「あ、やっぱり無理……いいの?」

  思ったよりあっさり、事が進んだ事に驚いた健。その様子に特に気にする様子もなく、委員長は言葉を続けた。

  

  「野宿をしても構わないんだが、それでは寒いからな」

  「……恐ろしい単語が聞こえた気がするけれど、聞かなかった事にするよ」

  俺達は、帰路を歩き始めた。誘わなかったら野宿してたのか、誘ってよかったと。自分の機転は正しかった。……妙な安心をして。

  

  「そう言えば、名前言ってなかったよな。俺の名前は……」

  「塚井健だろ。オレの名前は天木玲だ…一応だが、クラスの委員長を務めている」

  「……あれ、言ったっけ?」

  「クラスの名簿と容姿位は確認している。黒い犬人は君しかいない。……合っていたみたいだな」

  冗談を言うかのように、玲は健に確認を取る。合っていた事に安堵した様子で。時折、後ろについて来ているのか健が確認しながら。家の前まで足を進めた。

  

  「ただいまー」

  鍵を開けて、玄関を開く。後ろを振り向いて、どうぞと玲に伝えた後。ドタドタとした、慌ただしい音が響いて来る。

  

  「お兄ちゃん、お帰り……って、あれ。お友達?珍しいね、お兄ちゃんが友達と一緒に居る何て」

  少々、心を抉る言葉を言われた気がしたが。子供らしい笑顔を見せ、俺達の事を出迎えて来たのは俺の弟の純だった。少し薄い色の毛が最近気になっているみたいだが、可愛い弟…成長には個人差があるだろうし。気にする事はないと伝えている。

  

  「俺が誰かと一緒に居るのがそんなに珍しいか」

  「うん、すっごく」

  純粋な笑顔で、そう返された。………追い打ちを掛けられたが、ここは聞かなかった事にしよう。素直なのはいい事だとは思うんだけどな。聞こえなかった振りをしたのだが、それを気にする様子もなく。弟の興味が俺の後ろに居た委員長に向けられる。

  

  「えっと、初めまして。塚井純です……兄の事、よろしくお願いします」

  俺は不出来な息子か。純の言った言葉に思わず出掛かった言葉を止めて、このまま立ち続けるのも何だと思い委員長を部屋に案内しようとした。

  

  「………もしかして、普通じゃない関係とか?」

  「ブッ…………」

  さっきから黙っていると思ったら、後ろから吹き出すような音が聞こえる。弟の言葉に、委員長は何かを感じたみたいだが。気にする事でもないと判断し、俺は玲を部屋へと案内する事にした。

  

  「えっと……狭いけど、床に布団を敷けば何とかなる……筈」

  部屋に入り、整理しておけばよかったと一瞬後悔する。誰が見ても、散らかっている部屋。漫画や小説が散乱し、足場はあるが快適とは言い難い環境。それを見たであろう委員長の顔を、健は伺う。何か小言を言われるのではないかと思ったのだが、覗いた健が見たのはどぎまぎと不自然な態度を見せる玲の姿だった。

  

  「その、何だ。自分の部屋に易々と他人を無警戒に入れるのは、どうかと思う」

  「別にそれ位大丈夫でしょ。話した事はないけど、クラスの委員長何だし」

  座れそうな場所に適当に寛いでよ。そう伝えたのだが、未だに委員長は緊張している。俺はベッドに腰を下ろし、何処に座るか決め兼ねている玲に対して隣に座れと合図を出した。

  

  「……いいのか?」

  「散らかしてる俺が言うのもなんだけど、多分大丈夫」

  そういう事ではないんだが……そんな声が聞こえた気がした。何だか他人行儀だな……それもそっか。何でも一人で出来る生真面目委員長で有名だったし。友達の部屋に入るのは多分これが初めてだろから……何でそんな事、意識しているんだろう。隣に玲が座った所で、思考を戻す。こういう時、普通ならどんな事をするんだろうと頭で考えながら。

  

  「……さっきから黙っているが、何か考え事か?」

  ハッと、我に返る。少し考え過ぎていたのか、委員長に指摘されてしまった。

  

  「うぅん、何でもない。……こういう時ってさ、何していいか分かんなくて」

  「……………そうか」

  あはは…少し呆れられちゃったかな。お節介だし、やっぱり止めておいた方が…うん、野宿だけは絶対に駄目。俺は廊下で寝るから、委員長だけでもこの部屋で寝るように説得しないと。その前に、ちょっとした世間話でもしようかな。

  

  「委員長はさ、何て言うか……一人で抱え込んじゃうんだと思うんだよ。だから、誰かに頼るとかをしないと…さっきだって、俺が行かなかったら大変だっただろうし」

  遠まわしに、自分を頼れと言う事を含めて。委員長にそう健は伝える。その様子に、玲は疑問に思ったのか。グイッと、ネクタイを掴み健に近づく。

  

  「え、な……何?」

  突然の事に、驚く健。近かった顔が、更にはっきりと視界に映る。竜人の、恰好いいかは判断が出来ないが。凛々しいと言うには十分な顔つき。胸が跳ね上がったのを、突然掴まれたせいだと健は思い込んだ。

  

  「こんな風に、油断していると襲われるぞ」

  「襲う……?大丈夫だ、逃げ足だけは自身があるから」

  「……分かって、ないな」

  再び、玲は健に近づく。さっきのように、少しではなく。押し倒すように、ベッドの上で玲は健に覆いかぶさる。

  

  「へ……あ………え?」

  健の頬が、朱に染まった。内側を知っているからとか、驚いただけとか。変な考えが健の中に生まれる。一番驚いたのは、別に嫌じゃないと思ってしまった自分自身に対する事だった。それを知る術を、玲は持っていないだが。息を付き、警戒を促すように玲は告げる。

  

  「隙だらけだ。見知った仲でも油断するとこうなるぞ」

  「え………あ、うん」

  何を言っているのか、頭に入って来なかった。ただ、事実として。押し倒されても構わないと。健は玲に特別な感情を持っている事が証明された。それだけだった。頷いたのを見た玲は、手を離し健を解放する。

  

  「……冗談だ。でも、油断するのは駄目だぞ」

  「…………うん」

  静かに頷き、少しの間微妙な空気が続いた。

  

  「いっただっきまーす!」

  純の元気な声が、リビングに響く。夕食もまだだったと思い出した俺は、急いで食料を買い足した。途中で、唯一の友達と言える人にあったのだが。話しもそこそこに帰って来た。少し汗をかき、これから運動しようかと迷った後。買って来た材料と残っていた食材を組み合わせ、料理を振る舞った。

  

  「……うん、美味しい!気持ち三割分位!」

  「素直に喜べないな……」

  「何時もより、美味しいよ?ねぇ、竜人さんもそう思うよね」

  「普段食べてないから…でも、そうだね。美味しいよ」

  ……褒められるのは、あんまり慣れていない。柔らかな口調で、美味しいと言ってくれた委員長。よかった、口に合ったみたいだ。食事をしながら、会話が弾む。

  

  「うーん、この前みたいに新しい事に挑戦だ!……って言って、普通の料理が出来たとは思えない位に美味しい」

  「何を期待していたんだよ」

  「そうだな……ダークマターとか?」

  「せめて、食べられる物にしてくれ」

  「……仲がいいんだな」

  俺達の会話を聞いた委員長は、微笑ましい表情になっていた。けれど、何だか寂しそうな表情が入り混じっている気がする。気のせいかなとも思ったが、何か引っかかる。

  

  「そう言えば、委員長はどんな家に住んでるんだ?」

  「あ、それ僕も気になる!」

  俺の聞いた質問に、純が乗っかって来た。さっきまでの何処か寂しそうだった表情はなくなり、つまらない話だとは思うが……と。ちょっとだけ期待が持てる前置きを入れた後、何でもないかのように口にした。

  

  「一言で言えば、屋敷だな。今度、遊びに来るといい。歓迎するよ」

  「……屋敷?」

  「……由緒正しき家柄……とか」

  屋敷という言葉に純は首を傾げ、俺は更なる質問を玲に投げる。それを特に気にした様子もなく。一応、それなりに裕福な家だと補足をした後。謙遜するように、玲は続ける。

  

  「立派な家だよ。……オレみたいな出来損ないが居ていい場所じゃない」

  ふいに下を向き、何かを考えこむ委員長。その様子を見た俺は、納得いかないと感じて無意識に口を開く。

  「……不穏な単語だ。そんな事言うと頬を抓るぞ」

  「痛いんだよぉ?お兄ちゃんのひっぱりは本当に痛い。……された事ないけど」

  そりゃあ、純は悪い事しないし。嘘とかも相手を気遣った優しい嘘しか付かないからな。そんな事より、出来損ない……?その言葉に引っかかった俺は、少し失礼かなと思ったけれど。どうしてそう思うのかを聞いてみる事にした。

  

  「なぁ、どうして自分を卑下するような事を……」

  「……何でもない、忘れてくれ」

  これ以上追及するのは流石に酷だな。話題を変えて、今度こそ世間話をして盛り上がった。夕食を終えた俺達は、課題を終わらせた後。弟が親に買って貰った据え置き型のゲームを一緒にやる事になった。

  

  「む……難しいな」

  「そんな、肩に力を入れてやる物でも……あ、落ちた」

  「大丈夫だよ、やってる内に上手くなるよ……多分」

  弟の気遣いが染み渡る。わいわいと、ゲームをした。時間も遅くなり、風呂の時間となった。じゃんけんをして、勝った委員長が先に入る事になった。その間に、一緒にゲームでもするかと弟と一緒にゲームをしている最中。ふと、そう言えば替えの服置いたっけ?……と、玲が一張羅だった事を思い出し。タンスを漁り似合いそうなのを探した。

  

  「お、あった。届けに行くか」

  「……ごゆっくり?」

  「そんな関係じゃねぇっての」

  それらしいのを見繕い、独断と偏見で選んだパジャマを置こうと脱衣所へと向かった。湯気が少し立ち込め、湿った生暖かい空気が伝わって来る。俺が来た事に驚きを見せた玲だったが、パジャマを置きに来たと伝えると、そこに置いてくれと言われたので。適当な場所に置いた。

  

  「………なぁ、さっきの話しの続き何だけど。聞いてもいいか?」

  「面白い話じゃ、ないぞ」

  好奇心から、という訳ではない気がする。ただ、本の少し。何か抱えているんだったら助けになれないかと。生まれた時に何処かに置き忘れた、お節介を健は焼こうとする。

  

  「……忌み子って言ったら、信じるか?」

  「唐突だな……あぁ、知ってる。……まさか、それがお前とか言うんじゃないよな?」

  望まれて生まれて来なかった子供。……途端、部屋の空気が重苦しく感じる。俺が聞いた質問に答えるように、玲は話を続ける。

  

  「そうだな…その子供は、あんまり人と接するのが上手じゃなかった。見下され、馬鹿にされる日が続いた。だから、誰にも文句を言われないように努力をした。その結果は……誰にも相手をされず、一人寂しく過ごすしかなくなったんだ」

  そんな事が、あるのか。俺は玲を励まそうと、間髪を入れずに口にだしていた。

  

  「そんな事ないぞ。お前はそんな奴じゃない。一緒に居て安心出来る、心強い存在だ」

  「……なーんて、半分は冗談だ」

  か、からかわれた!風呂の中から、悪戯が成功した子供のような笑い声が聞こえて来る。少し悔しくなり、判断が鈍っていたのか。健はひと泡吹かせてやろうかと、服を着たまま中へと入る。

  

  「お前な、人が折角……うわっ」

  「あ、スマナイ。入って来るとは思わな……」

  水を掛けられ、着ていたシャツが濡れる。濡れて水分を含んだシャツは、俺の肌にべったりとくっつく。それを見た玲は、言い掛けた言葉を止めて鼻を押さえる。顔を赤くし、健の事を食い入るように見つめている。

  

  「?……何か付いてるのか」

  「いや……何でもない」

  その様子を、健は疑問に思うだけに留まっていた。しかし、玲は見たのだ。ピッチリと肌にくっつき、露呈している健の素肌が。そこそこ、鍛えているのが分かる健の体を見た玲は。意識しないでも、自身の息子が聳え立ってしまった。幸いにも、湯気のおかげか。その事に気が付かなかった健。どうやら、じとじととした感触をどうにかしようと考えて居る。

  

  「……あれ、玲ってよく見ると………」

  「健、このままだと風邪を引く。直ぐに体を拭いて着替えてくれ」

  「そ、それもそうだね。何をそんなに必死になってるのか分かんないけど。…何かあったんだったら、愚痴位なら聞くよ。それじゃあね」

  何とか、自身を見られる事なく玲はその場を凌ぐ事が出来た。

  

  

  お湯に浸かって、少し考え事をする。何時もなら、少しだけ温まって体を洗って上がるんだけど。今日位は、いいかな。健は風呂に浸かりながら、今日の事と玲の事を考えて居た。どうしてなのか分からないが、無性に気になる。何時から何だろう?アレを見てからかな。あんな姿を見たのは俺だけだし。……どうなんだろうね。のぼせるギリギリまで、健は考え込んだ。

  

  風呂から上がり、寝る時間になった時に気づく。部屋を、どう分けようか。しかし、眠くなった体は言う事を聞かず。少しだけ大きい、枕だと錯覚した者に健はもたれかかった。

  

  「………………」

  玲は、数秒間フリーズした。息を吸い、落ち着いた後。部屋に運ぼうと玲は健の体を背負った。

  

  

  「うぅ………ん?」

  あのまま、寝てしまったのだろうか。誰かが、俺に抱き着いているかのように。圧が加わっている。目を開き、誰なのかを確認すると。すやすやと寝息を立てている、玲だった。

  

  (……あ、あの後寝たんだっけ)

  朧げな記憶を辿り、自分の部屋まで運んでくれたんだと理解する。そして、気づく。近い。本当に、少し。近づけば、頬が当たりそうな位に近い。思考がパニックに陥るのを必死に沈め、寝ようと再び瞳を閉じる。

  

  (………眠れない!)

  胸の高鳴りが、激し過ぎて。バクバクと、心臓が跳ねている。彼の寝息も近い。こんな状況で、寝られる方がおかしいと考えを改め。寝て少しだけ冴えた頭を使い、健は玲の表情を覗く。

  

  (……運んでくれたのかな。朝になったらお礼言わないと)

  眠りが、浅かったのだろうか。再び、眠気が健を襲った。

  

  [newpage]

  「うぅ……ぁ……ん?」

  刺激が、加えられている。急速に、目が覚めて来る。誰だ、誰の仕業だ。目を見開き、相手の顔を玲は覗き見た。すぅすぅと、服を着ていない感覚に違和感を覚えて。

  

  「…あ、おはよう。ちょっと、遅かったね」

  ……オレは夢でも見ているのか?玲は疑問に思った。声を発したのは健。だが、声のした場所と体が感じる刺激されている場所がおかしかった。正確に言おう。健は、玲の性器を弄っていた。手で上下に動かされて感じるそれは、一人でした時に感じる快感より数倍跳ね上がっている気がした。

  

  「何を、している……?」

  「分からない?それじゃあ、ヒント。君が子供を残すのに必要な機能を持っている場所」

  答えなければ、いけないのか?黙り込んでいると、健は玲の性器を再び弄り始めた。さっきよりも早く、的確に。それが分かった玲は、刺激に耐えながら恥ずかしそうに口にする。

  

  「わ、分かった…ぅぁ……答え…ふ……性器だ」

  「……もっと、ダイレクトに」

  健の手は、止まらない。昼間あれだけ出したにも関わらず、どくどくと先走りである透明な液が漏れ始める。ねっとりとした感触を含んだ玲の体液に嫌悪を示す様子もなく。健は更なる言葉を玲に要求した。

  

  「……ぁ………い、陰茎」

  言った途端、頬に熱が籠るのを玲は感じる。鼻には、自分が出した先走りの匂いが僅かに伝わって来る。自分が出した雄の匂いなのに、興奮を助長させる。その答えに、満足したのか。更に手を早め健は口にする。

  

  「大正解。それじゃあ、イカセテあげる」

  「ま、ま…ぁ!止めてくれるん……ふぁ……じゃ、なかったのか!」

  毛に透明な液がこびりついたのを気に留める様子もなく。それを利用するように、健は玲の性器を弄り続ける。抵抗しようにも、どうすればいいのか玲には分からなかった。時間だけが過ぎ、耐え続けていた玲が限界を迎える。

  

  「や、止めてくれ。こんな事君に強要したくな……ぁぁぁああ!」

  響く、猛々しい雄の声。抵抗らしき抵抗を見せず。玲は健に性器を弄られそのまま果ててしまった。ビクンと一脈。続くように、玲の性器から白濁の液体が放たれる。

  

  「いっぱい、出たな……」

  何処か満足げに、健はその様子を見ていた。自分の手でイッてくれた事に喜びを感じているのだろうか。頬を緩め、出て来た玲の精液を一切躊躇なく健は手に付着させる。その様子を見た玲は、驚いたように口を開いた。

  

  「ま、待て!何でこんな事を……」

  「……駄目、だった?」

  悲しそうに、そう聞いて来る健に対して。ときめいたのは、暗い夜の中相手が見えなからだと自分自身を納得させ。ときめきを感じている自分を見ない様に、健の方を向いた。

  

  「そんな事は、ない。ただ、こういうのは手順が……」

  「…やりたかった、駄目?」

  首を傾げ、健のねだるような動作に。心を許しそうになる玲だったが。まだ早いと叫ぶ心を信じ、僅かな抵抗の意志を見せる。

  

  「は、早いんだよ。まだ知り合ってそんなに経っていない。こういうのはもっと、深い関係になってから……」

  「それじゃあ、今から深い関係になろ」

  「………は?」

  言質は取ったと言わんばかりに、顔を歪ませ。上を向いている玲の体から手を離し。そのまま、ある場所へと健は手を伸ばす。暗い場所に目が慣れた玲の瞳は、しっかりと健が何をしようとしているのかを捉えてしまう。いつの間に、握っていたのだろうか。外して置いた、放課後の時に玲が苦しめられたバイブを、健は持っていた。

  

  「ど、何処でそれを……」

  「今は、関係ない。俺、頑張るから」

  何を、頑張るんだ。止めてくれ。言葉にしようとした筈なのに、声にならなかった。奥底に、実は嬉しいんじゃないかといった邪念が玲に生まれる。そんな筈はない、ただ友達として健と接していた…。そこまで思考して、ある事を思い出す。自分が、健の体を見て体のある部分が興奮を示していた事を。

  垂らりと一滴。健は潤滑剤を玲の穴へと垂らす。冷たいと感じる玲だったが、次の瞬間垂らされた液が触れた場所に熱が籠るのを感じる。何が起こったと理解する前に、じんじんと玲の体は求めていた。欲しい、欲しい。違う……違う。頭で必死に否定しても、事実は塗り替えられない。そう、バイブを中に入れられて気持ちいいと感じてしまった事は。ずっぽりと、玲の体が貪欲にバイブを飲み込んだ後。玲が口を押える前に、健はスイッチを押す。

  

  「ふ……ぁぅ……ひぃあ!…と、止めてくれ……ぅあ!」

  敏感になった体に、欲しいと感じる欲求。堕ちるまで、時間は掛からないだろう。玲の口から唾液が漏れ始める。それは無情にも、玲が快感に負けた事を表していた。湧き出る汗と、雄の生々しい体液。部屋が、玲の出した匂いで満ち溢れた。それを嗅いだ健は、静かに、確実に。見えないように、立っていた。

  

  「分かった、止める」

  言葉通り、機械を健は止めた。バイブも取り出し、玲は自由の身となった。しかし、何故だろう。体が、熱い。求めている、健を。熱く、太く。自分を、無茶苦茶にして欲しいと、今までの想いと逆の考えが玲の脳裏に浮かぶ。

  

  (何を……考えて居る?)

  自分は、何を口に出そうとした?口を塞ごうにも、気力は残っていない。重くるしく感じる体は、言う事を聞かず。ただ、本能のままに口を開いた。

  

  「………れて、くれ……………」

  自分でも、何でその言葉を発しようとしたのか理解が出来なかった。だが、体は正直に。剥き出しになった牙のように、本性を曝け出す。ヒクつき、物欲しそうに求めている玲の肉体。ねだるように、無意識下で足をMの字に開いた。

  

  「入れて……くれ」

  はっきりと、健にそう告げる。今度は、健にも伝えられるように発せられた。健はその言葉を受け入れ、望んでいたように性器を竜人の中へと入れる。

  グッポリ。その音が何の音なのか、玲は理解する。バイブを入れていたおかげか、すんなりと玲は健の侵入を許す。玲は、健の熱を感じた。

  

  「は……は………ぁ」

  グチャグチャと、何かが出されている。熱く、溶ける錯覚を覚える程の感覚。その正体は、我慢の限界に達している。この行動を待ち望んでいた、健の性器だった。玲の体の中に入ったそれは、玲の体を犯していく。全てを壊すように、塗り替えるように。汗が吹き出し、部屋はお互いの出した体液の匂いで満ちるだろう。

  

  「入った………」

  うっとりとした表情を浮かべる健。さっきまで拒んでいた玲も、最早抵抗の意志は感じられない。了承と認識した健は、腰を動かす。不規則に、荒々しく。汗をかいて濡れた周りがグッチョリと濃い竜人の精液で溢れるのに時間は掛からなかった。

  

  「は…ァ!ヒィァ……うぅ」

  薄れていた抵抗が、目を覚ます。まだ、駄目だ。イッてはいけない。健の動きに、何度か果てそうになるも。持ち前の、鍛えられた体で踏ん張り耐えようとする。しかし、それも徐々に薄れていき。ふとした拍子に、我慢していた反動で周囲に玲の体液が溢れ出て来た。ドクドクと出て来た精液は止まる事なく出てきている。それを見た健は、塞き止める。

  

  「……ぁ……え?……うぅぁぁぁぁ!」

  何で止められたのか、玲には分からなかった。響いたのは、玲の悲鳴。逆流し、流れ込んでくる自分の体液の熱さにやられる。楽しんでいるようにも見えるが、何処か不機嫌そうに健は玲に持ちかける。

  

  「今から、ちょっと勝負でもしようよ。勝てたら、全部出させてあげる」

  口を尖らせた健の表情と、自分の性器に差し込まれた金属の棒が玲の視界に入り込む。外してくれとせがむが、健は聞き入れようとしない。勝負をする以外に、解放する術はないようだ。イきそびれた玲の性器はビクビクと脈を刻んでいる。にやりと顔を歪ませ、健は玲に目隠しを被せる。

  

  「な、何だ……見えない」

  「四つん這いに、なって」

  突然、視界が黒へと染まる。布か何かを被せられ、視覚を封じられた。訳も分からず、残った理性を頼りに。言われた通り、ベッドの上で尻を突き出すような体勢を取った玲。緑色の、鍛えられた証である割れた腹筋が汗を垂らしている。目を隠され、成す術もなく竜は地に落ちた。

  

  「それじゃあ、始めるよ。…………」

  「な、にを……はぁ……ん……っあ!」

  健は、機械を玲の体に埋め込む。玲が感じたのは、異物感と冷たさ。喘ぐ声が僅かに漏れ出す。口に手を当てて声を抑えようするが、何時の間にか。縄で縛られ身動きが取れなくなっていた。動けば、動いただけ。中に機械が食い込んでいく。

  

  「と、止め……あぁ……ぅぁん!」

  何をしようが、結果は同じだっただろう。健が、何を望んでいるのか。玲には分からなかった。ただ、一つだけ。体を求めているのは、どうしようもない事実として。そこにあり続ける。

  

  「も、もう無理だ……外して……くれぇ……」

  懇願だった。玲は声を振り絞り、健に伝える。…その声が、健の耳に入ったのかどうか。玲には、分からなかっただろう。ブルブルと、中に入れられた機械は振動を強くする。出そうとしても、出せずに熱い液体が逆に体に流れ込んでくる。その感覚に、玲は意識を獲られそうになる。寸での所で、意識を取り戻す。聞こえたのは、健の嬉しそうな声だ。

  

  「……アハッ……アハハ…………」

  何処で、外れたのだろうか。もしくは、最初からだろうか。健は、笑っていた。欲しかった玩具がやっと手に入った子供が笑っているようにも聞こえるが、乾いた笑い。視界を封じられ、それが見えなかった玲は幸運と言うべきなのか。ただ、玲の言葉だけが耳に入って来る。言葉を成している訳ではなかった。漠然とした理解。雲を掴むように、ふわふわと浮かびあがった。僅かな疑問と、正気の扉。鍵が掛かっている扉を開くのに必要な事はたった一つ。自覚する事。分かった玲は、縋るように言葉にする。か細く、確信を持って。

  

  「あ、これ………夢か」

  ぼそりと呟いた玲の思考は、ぷっつりと途切れ黒に染まった。

  [newpage]

  「………なぁ、大丈夫か?」

  健の声が聞こえる。目を開けて、見渡すと心配そうな表情でこちらの様子を健はオレの事を見ていた。そうか、昨日は……。部屋を日が照らし、朝になった事を告げていた。次に耳に入って来るのは、鳥の囀り。同時に、ほっとした健の表情と声が放たれる。

  

  「良かった……何か、すっごいうなされていたから心配だったんだぜ?慣れないベッドだったから、嫌な夢でも見たのか?」

  その言葉に、玲は頷く事が出来なかった。

  

  

  「今度からは、布団で寝た方がいいみたいだな……それから……さ」

  「……?……どうした」

  言いにくい。言うべきなのか分からない。けれど、この姿を弟に見せるのは兄として…友人としても見過ごせない。意を決する様に唾を呑み、片方の手で顔を隠し健は指を首を傾げ何があるのか理解していない玲に指した。

  

  「えっと……その……隠すか、邪念を払う……とか?」

  「何をだ………あ」

  ようやく、気づいたらしい。俺の視界に入ったのは、生理現象として仕方ない部分もあるかもだが。テントを張り、自己を主張している玲の物。突き破らんばかりにそそり立っていたそれを、このままじゃあ少し不味いと思った俺は指摘した。慌てた様子で、手で玲は隠す。

  

  「す、すまない……どうにも………?」

  言い掛かった言葉に、違和を感じたのだろうか。再度、首を捻り自分の世界へと落ちそうになる玲。それ程、気にする事でもないだろうと判断したのか。体を起こし、身支度を始めた。

  

  「そう言えばさ、一晩泊まったけど。家の人とかには伝えなくていいの?」

  「……大丈夫だ、おそらくは……」

  窓の外を見つめ、何かを探している玲。鳥でも見つけたのかと思ったが、そうではないらしい。窓に近づき、外の様子を確かめるも特に変わった所は見当たらなかった。雲一つない、澄んだ青い空。平和そのものの、何時もより良い風景だった。

  

  「えっと……何かあるのか?」

  俺は玲の方を向き、確認を取ろうとする。何か、見逃しているのか……?何でもないと返され、お腹が空いたので朝食を取ろうと言われた。それもそうか。何かあったのかは、後で聞くとして。階段を降りてリビングへと移動する。

  

  「あ、おはよう。お兄ちゃん……昨晩は、お楽しみでしたね?」

  「…………何か、あったのか?」

  「あれれ、昨日はお楽しみでしたね……だっけ?」

  「……聞かれて、ないよな」

  同時に降りて来た俺達を見た純は、意味がありそうでなさそうな事を聞いて来た。大方、昨日遅くまでゲームでもしてその台詞を言いたかっただけだろう。気にする事もない…ふと、後ろを振り向くと。あたふたと、何故か焦っている玲の姿があった。いつの間にか着替え、制服を着ている。

  

  「何時着替えた…それより、何を焦ってるんだよ」

  「あ、いや……何でもない」

  おかしな奴だな。会ってばかりだから、何とも言えないけれど。椅子に座り、眠気に襲われながらも弟が作った料理を堪能した。…温かく、目を覚ますには丁度いいスープも添えられていた。

  

  「ごちそうさん。…美味しかったぞ、純」

  「えへへ…自信作なのだ!そう言えば、竜人さんはこれからどうするの?」

  手にVサインを浮かべ、誇らしそうな純。続いた言葉は、俺も気になっていたし。俺と純は同時に玲の方を向いた。

  

  「多分、そろそろ……来たな」

  呼び鈴が、鳴った。朝早くから、何の用だろうか。荷物が来るって事はないだろうし。…宗教勧誘とか?すたすたと、分かっていたように玲は玄関へと足を進める。それを見た俺は、後を追いかけた。

  

  「ちょ、玲。何か知ってんのか……」

  「……やっぱりか」

  一切躊躇する事なく、玲は鍵を外し玄関の扉を開ける。そこに居たのは、執事服を着ている賢そうな鳥人。毛は藍色で、何処となく神秘的にすら感じられる。態度から考えると、玲の知り合いみたいだけれど…。種類は…少なくとも、鶏ではなさそうだ。トサカないし、目は穏やかだし。

  

  「お迎えにあがりました。坊ちゃん…鍵を忘れたのなら、言ってくれれば届けましたのに」

  「厄介な事になるからな。この前は……裸を見せてくれ、だったか?」

  あぁ、そんな感じ?健が感じたシリアスっぽい、ピリピリとした感覚は一瞬で崩れ落ちた。委員長の周りの人物は、こう…愉快な人が多いんだろうか。玲が発した言葉を気にする様子もなく、鳥人は口を開く。

  

  「それは、誤解です。ただ、私は脳に永久保存しようと考えただけでして……」

  「同罪だ。それから、裸を見ようとした事を否定しろ」

  目の前に繰り広げられている光景を表す言葉を、混乱する健の頭は捻りだそうとする。何だっけ、あれ。面白可笑しく、周囲の雰囲気がぐるっと変わるあれ。……コントか?

  

  「そんな事より。早く帰りましょう…愛の巣へ」

  「一気にいかがわしくなった!」

  思わず、突っ込んでしまったが。俺の声に反応し、玄関の前に悠然と構え立っていた鳥人は。初めて俺に気づいたかのように、何で気づかなかったのだと。頬をご丁寧にピンクに染めて、口にする。

  

  「何と、可愛い小動物。名前教えて下さい。地獄の果てまで坊ちゃんと一緒に付いて行きます」

  「あ、はい。……俺の名前は、ツカイケンです」

  何が起こったのか理解できずに、片言で俺は相手に名前を伝えた。言っちゃ行けない気もしたのだが、つい流れで口にしてしまった。

  「宇甘甲と申します。坊ちゃんとは、それはそれは深い関係になったご様子で」

  俺と玲を交互に見回し、感慨に耽る宇甘さん。…何歳?

  「……おい、誤解を招く言い方止めろ」

  「な、何と!既に私が入り込めない域にまで達していたとは……直ぐに会場を手配致します!」

  携帯を取り出し、何処かへ連絡を入れようとしている。冗談……だよな?

  

  「こ、これは申し訳ありません。既に式を挙げるまでもない程に愛し合っていたとは…意図を汲み取れず…!」

  「わざとやってるよな?口を縫い合わせてやろうか」

  ついに、穏やか(多分)な委員長が切れた。胸倉を掴み脅している様は、やくざの様にも見える。こほんと咳を一つ。茶番を終わらせ、本題に入……。

  

  「して、式は何時頃に致しますか?」

  「おう、首もっと絞めてやろうか」

  掴んでいた手に、力を込めて委員長は宇甘さんの首を絞め始める。

  

  「痛いです!もっとやってくださ…冗談です。あ、ちょっと待ってそれ以上は駄目…グヘアァ」

  もっとやって下さいが、本心のようにも聞こえたが。空気を読んで、健は指摘するのを止めた。息を散らさせ、待つ事数秒。何事もなかったように、宇甘さんは立ち上がった。

  

  「それでは、乗って下さい。二人程度なら式場まで人っ跳びです」

  「真面目そうで真面目じゃなかった!」

  「もう、いい。分かった…乗るからこれ以上健を巻き込むのは止めてくれ」

  渋々、不本意そうに玲は宇甘さんの上に乗った。

  

  「……へ?」

  「それでは、また次の機会に。お会いできるのを楽しみにしております。」

  「また、学校でな。世話になった」

  そんな、まさか。嫌でも、スペック的に可能?いやいや、どう考えても玲の方が大きい…思考を遮ったのは、空高く飛び上がった玲を乗せた宇甘さんの羽が健の元に落ちて来た事だった。

  

  「……世の中、まだまだ不思議な事があるんだな」

  携帯を起動させ、友達のアドレスを開く。当然のように、委員長と執事の欄が追加されていた。…執事は、基本的に何でもありなのだろうか。空を眺めて、羽を拾った健は。誰も答える人は居ない中疑問を、投げた。

  

  

  「……よかったのですか?交換しなくて」

  「………やっぱり、入ってる」

  携帯を起動し、何度見返しても。友達の欄ではなく、気になる人と入力した覚えのない項目が出来上がりその中に塚井健の名前が打たれていた。勿論、連絡先と住所付きで。

  

  「……はぁ、どこから入手して来るのやら」

  「あぁ、それと……どうやら厄介なお友達に絡まれていたようですが……?」

  「……それで遅れたのか。通りで夜になっても来ないと思ったよ」

  「はい、コレクションが増えて私嬉しい限りでございます」

  溜息を吐くと同時に。一応は、感謝していると。降りた直後に、玲は宇甘の羽をそっとなぞる。

  

  「……ッ……羽は弱いのです。触らないで下さい」

  「分かってるよ…人が嫌な事はなるべくやりたくないし」

  感謝を伝えたつもりだったのだが、悪戯と取られてしまった。中々、上手くいかない物だな…。この後に起きる事を憂鬱に感じながらも、自宅の門を玲は潜る。

  

  「……何時も、感謝しております。玲」

  誰かに聞かれていたのなら、無礼極まりないと言われただろう。その声が、誰かの耳に入る事はない。そっと、呟いたのだから。

  

  END……?

  [newpage]

  今日は、散々な日だった。悪態を付き、近くにある物を蹴飛ばす虎人が一人。無差別に蹴りを入れるそれは、八つ当たりのようにも見て取れる。目つきも悪く、不良を彷彿させる風貌。制服も乱れ、着ている事事態が珍しそうに周囲は感じている。

  体育館の裏。人気がなく、居るのは虎人と蜥蜴人、気弱そうな蛙人の三人。蜥蜴人の方は尻尾をぐるぐると、蛙人の体に巻き付け弄んでいる。だが、それは蛙人を守るようにも感じられる。きゅうきゅうと巻き付く感覚にどうしてこうなったか疑問を抱いた蛙人が、口にする。

  

  「ね、ねぇ……どうしてオイラがこんな状況に巻き込まれているのかな?」

  巻き付いている尻尾に、疑問を抱いているという事ではないらしい。虎人よりも目つきが鋭い、深い緑の蜥蜴人は聞こえなかった振りをして話をしようとした。

  

  「二人掛かり…いや、一人か。そんなのでオレサマに敵うとでも思っているのかね?」

  「……一人でもやれるぞ。四季は下がっててくれ」

  「う、うん…気を付けてね」

  四季と呼ばれた蛙人は、蜥蜴人の指示通り後ろへと下がった。おどおどと、怯えた様子の深い青の蛙人。心配そうな様子で、蜥蜴人の事を見ていた。

  

  「ふーん、お荷物抱えて勝てるとか…舐めてんのか?」

  「関係ない、ただ勝てば……」

  「ほい、隙あり」

  蜥蜴人が言い掛けた、本の一瞬。隙を見つけた虎人は、蜥蜴人を気絶させた。その事を見てしまった蛙人は、足が竦み動きが取れなくなる。

  

  「さーてと。オレサマに手を出した報いは、体で受けて貰おうか」

  「ヒ……ヒァ……!」

  ゴツンと、衝撃が加えられ。蛙人は気絶してしまった。

  

  

  ……ここは、何処だろう?暗闇の中蛙人は目を覚ます。見覚えのある外の景色が、自分が居る空間から覗き見る事が出来た。体育倉庫。用具に溢れ、近づく者は余り居ない。部活動が終われば人も来るだろうが、見つけて貰えるかは分からない。声を出そうとしてみるが、縛られていて言葉に出来ない。

  

  「ン…ン……ンー!」

  幸い、手はまだ動かせる。外を見ると、さっきまで見えなかった虎人と気絶している蜥蜴人が四季の視界に映る。

  

  「お、目が覚めたか。安心しろ、直ぐにお前にも同じ事をしてやるからな」

  恐怖で、体が動かなくなる。……綾君が危ない!怯える体を奮い立たせ、自分をどうにでもしていいから綾君を放せと。言葉にならないながらも、声にしようとする。

  

  「ン…ンン!…ンンー!」

  「…ったく、煩いな。大人しく見てろって。安心しろ、直ぐに同じ目に遭わせてやっから」

  どうしよう、どうしよう。誰か…誰か……。助けを、求めようとした。…こうなったのも、おいらのせい?おいらが綾君に言わなかったらこうはならなかった?どうしよう…分かんないよ。誰か、助けて……。必死に、四季は祈った。

  

  (綾君……誰か……誰か…誰でもいいから、助けて!)

  その祈りが、通じたかどうかは分からない。パリンと、音を立てて誰かが部屋へと入って来た。目を向けると、仮面を付けて如何にも怪しそうな不審者。翼がはみ出ている事から、鳥人だと推測できる。執事服を着ており、怒った口調で虎人に向かって言い放つ。

  

  「見つけました。制裁を与えます…坊ちゃんの体を穢した悪しき存在として」

  「あ?何訳分かんない事言ってんだ。冗談を言うのは……」

  「おっと、失礼。そこに寝かせてあった蜥蜴の生徒は外に出しました。安心して下さい」

  蜥蜴人の安全を、確保した。そう言われた四季は、相手の素性が分からないにも関わらず感謝の念が湧きおこる。苛立ちを感じている虎人は、鳥人に殴り掛かろうとした。

  

  「このヤロッ!」

  「遅いですね。その程度ではハエも捕まえられませんぞ」

  挑発をする鳥人。怒りを覚え、虎人は再び殴り掛かるも。あっさりと躱され、反撃を入れる。予想外の相手の行動に驚く暇もなく虎人は気絶した。スタスタと、仮面を付けた鳥人は四季に近づき拘束を解いた。

  

  「…無事ですか?早く逃げて下さい。後の事は私に任せて」

  「は、はい!…ありがとうございます」

  不思議と、疑問は抱かなかった。外に居る綾と合流し、学校の外へと出た。

  

  「た、助かったぁ……」

  「無茶したね…言ったオイラも悪かったけど……何処も怪我とかしてないよね?」

  「何回目だよ……大丈夫だって、ほら。ピンピンしてっから」

  「……そっか、うん」

  少しだけ、沈黙が二人の間に生じる。安堵の息を零す四季と、何処か納得していない綾。

  

  「なぁ、四季。お前どうやってあそこから逃げたんだ?」

  「えっと……何かこう、不審者ですって人に助けられた」

  「……そっか、覚えてないんだな」

  誤解をされたが、特に気にする事でもないかな。早く家に帰らないと。足を運び、家へと向かおうとしたその時だった。綾が、四季に抱き着く。

  

  「……?……どうしたの?」

  「……何でもない、行くぞ」

  綾の頬の赤みが、夕陽のせいだったのか。四季にも、綾自身にも。その時は分からなかった。

  [newpage]

  暗く、薄暗い倉庫。夜のせいか、照らすのは月の光だけ。幻想的な灯りとも言える月に照らされて、虎人は目を覚ます。あの後、どうなったんだ?立ち上がろうとするが、がたがたと揺れる音が響くだけ。縄で椅子に縛りつけられていた。

  

  「おや、目が覚めましたか。もう少しで薬が効いて来ると思うのでお待ち下さい」

  忘れる筈もない、自分を気絶させた相手の声だ。鳥人の姿で、気絶させられる前に付けていた仮面は取り外しており顔をしっかりと目に焼き付ける事が出来た。

  

  「……坊ちゃんって言ったよな。もしかすると、生真面目な淫乱委員長のお仲間か?」

  「淫乱と言う言葉に、訂正を入れるのは簡単なのですが。時間が惜しいので簡潔に言います。貴方の心、今夜頂戴致します」

  冗談で言っているようには、聞こえなかった。ぴくぴくと、己の下半身が反応を示しているのを虎人は感じる。制服の下からギンギンに、性器を勃たせていた。何かを、飲まされたのか?口の中に、僅かにだが粉が付着している。薬を盛られたと分かった虎人は、隙を伺おうと言葉にする。

  

  「ふん、負けたのはオレサマだ。好きにしろ」

  一瞬でも隙を見せれば、喉を噛みちぎってやる。こんな屈辱を与えた事を後悔させ…?

  ブブブと、聞き覚えのあるバイブレーションの音。何処からだ?理解する前に、虎人の体は反応を示す。

  

  「何処か…ら…ァァァ!な、何しやが……ん……」

  「お気に召したご様子で。寝ている最中に、不本意ながら体に仕込ませて頂きました。機械の味を、ご堪能下さい」

  「ふざけ…ァン……やがってァ…!」

  「ご安心を。他にも大人の玩具はたんまりとありますので。飽きたとしても、退屈する事はないでしょう。精神は、壊れるかもしれませんが」

  僅かにだが、怒りを交えて。虎人に、鳥人は言い放った。隠す必要も、ないだろう。何処からか、スイッチを取り出し、度合いを弱から一気に最大へと変える。

  

  「な、何しやが……ァァァァァァあ!」

  ビクンと虎人は精を吐き出した。制服のズボンにくっきりと、己が出した精の染みが付いてしまっている。このままでは、後に残ってしまうだろう。だが、その姿を見て尚。一向に、機械を止める気配はなかった。

  

  「やめ!…悪かった、オレが……うァァァンはぁ!」

  量も増し、匂いも徐々に増していく。この程度では物足りないと、鳥人は懐から玩具を取り出す。

  

  「これが、見えますか?どれも中古の、どなたが使ったのか分からない大人の玩具でございます。ご安心下さい、返却されたのは全て男だったと言われております」

  何処に、安心する要素があるのか。恥辱を与えられている事に、怒りを覚えながらも反省の色を見せずに。ただ、許してくれと虎人は言い続ける。

  

  「ふむ……そうですね。では、こうしましょう…これが出来たら、解放するのを考えてみてもいいかも知れません」

  解放する気など全くないと言い放った鳥人。怒った表情の奥に、何処か嬉しさを感じている様子。渋々、不本意そうに機械を止める。ぐっぽりと、呑み込んでいたであろう虎人の体液にまみれた玩具を鳥人は取り出す。

  

  「これは、中々。一部のマニアに高値で売れそうですな。ちなみに、私は含みません」

  誰に対しての弁明なのか。虚空を見つめ、言葉を発している鳥人。その様子に、隙がないかと必死に探りを入れる虎人。しかし、何処にも付け入れそうな隙はなかった。取り出した、繋がっている丸いビーズを鳥人は虎人の中へと入れていく。

  

  「よ、よせ……止めてくれ」

  「無理です。柄にもなく、少々怒りを覚えているので」

  何人分なのか、分からない怒り。虎人の声を左から右にがっちりと脳内再生出来るように保存し。後で仕掛けたアレも確認しようとする頃には、全ての丸いビーズを虎人の中へと入れていた。

  

  「数は10。耐えないと服が大変な事になります。止めろと言っても、止める気はありませんが」

  そう言って、迷う事なく。ビーズを引っ張り出そうと鳥人は手を動かす。

  

  「あ……ふぅ、ふぅ……そんな、止めてくれ。悪かった、オレが……ァ……ぅぅ……駄目、本当に駄目……あああァァァァァ!」

  ビクン、ビクン。全て出し切る前に、虎の我慢は限界を迎えた。だらしなく涎を垂らし、服は虎人の精液で濡れている。このままでは、流石に少し面白くない。ビーズを引き抜き、新たな玩具を虎人に付けようと首を捻る。

  

  「さて、どのように調教を致しましょうか。私、虎を弄る事に快感を覚え…失礼。地に這いつくばり性に溺れる様を見るのは大変嬉しく思いますぞ」

  ……返事は、返って来なかった。薬の効果もあり、思ったよりも早く堕ちてくれた。それを確認した鳥人は、きちんと映像が撮れていたか。セットして置いたカメラを確認する。

  

  「……ほう、ほう。これは中々………」

  後でこっそり、誰かに見せようか。笑みを噛み殺し、更なる躾を施そうと鳥人は考え込む。長い夜は、まだ終わりそうにない。

  

  END