狼、虎、ライオンさんの物語その2【完全版】

  静かだ。

  布団に入ったまま眠い目を擦り、枕元に置いてあった置き時計を手にして目をやると時計の針は夜中の2時過ぎを示していた。

  

  カチコチと秒針が静かに時を刻む。

  狼はその時計を枕元に戻すとうつ伏せの姿勢から仰向けに姿勢を戻し、高い天井を見上げながら大きくため息を吐いた。静かなのは周りだけで、隣で眠っている虎は大きな鼾をかいて熟睡をしているようだった。きちんとかけたはずの布団は剥されていた。

  狼は苦笑を浮かべながらふと呟く。

  全く、無防備なんだから・・・。

  狼と虎は幼いころから長い付き合いがあった。学生時代を経て社会人になっても、何かあればたびたび会うほどの仲の良さであり、親友とも言える関係を築いてきた。そして、狼が商店街のくじびきで旅行券を当てたことをきっかけに、彼らは時間を作っては定期的に旅行をするようになっていた。

  今回もお馴染みの旅館に宿泊し、彼らは充実した休日を過ごしていた。そして、昨夜は大酒飲みであり、相当にアルコールに強いはずの虎が潰れて寝てしまうまで大量に飲んでいた。その証拠に、布団が敷かれていない畳の部分には幾つものビールや酎ハイ缶が転がっている。その量からして相当な量を飲んだことが窺えた。

  「トラくんったらさ・・・昨日は朝まで飲み明かそうぜなんて言ってたくせに・・・。自分だけさっさと寝ちゃうなんてなあ」

  狼は目をつぶると昨夜のことが頭の中に思い浮かんできた。大酒飲みである虎とは違い酒にあまり強くない狼はそこまで酒を飲まなかったこともあり、その時の記憶をよく覚えていた。

  『6人目の子が可愛くてよ・・・マジ、天使な寝顔だぜ?おい、写真を見るか!?いや、むしろ見ろよ!』

  『さ、さっきも見たからいいよ・・・』

  『何だよ、ノリ悪ィの・・・』

  手にしたスマホを残念そうにテーブルの上に置くと、虎は目の前の開けたばかりの缶ビールを一気に飲み干した。

  『じゃあよ…7人目作るしかねーな』

  『な、何で・・・ゴホッ・・・い、今の会話の流れからどうして子作りをするって話になるのさ!』

  虎の発言に思わず狼は噎せてしまう。涙目になっている狼の顔を虎は泡のついた口の周りを舌で舐めながら見つめながら意味ありげに笑みを浮かべた。

  『赤ん坊は可愛いだろ?それならよ、お前も写メを見てくれるんじゃねーかと思ってな。まあ、おれ、最近はムラムラしまくりだし?いわゆる発情期だな!まあ、年中そうかもな!ははっ!」

  『し、知らないし。そんな情報なんか知りたくもなかったよ・・・。それに、そんな獲物を見るような目で見ないでよ・・・猛獣だからって・・・』

  『あんっ!?お前だってあるだろうがよ・・・こう、何だかヤリたくなる時がよ!こう、グイッとな!!」

  『僕は・・・』

  狼は虎の指の動きを見て思わず恥ずかしそうに目を伏せてしまう。この手の話題は苦手なのである。

  『・・・取り分けお前はその傾向が強いとは思うんだけどなあ。でも、おれの方が強いと思うし、頻繁にヤリたくなるからなあ。我慢すんの大変なんだぜ?」

  『そ、そうなんだ・・・』

  毛の1本1本が認識出来るくらいに顔を近付けてくる虎。狼は恥ずかしそうにしながら彼に顔を背けて缶ビールを口にした。

  『なあ、オオカミ。お前はよ、おれの気持ちいいポイント知ってるだろうが・・・!なあ、なあ・・・』

  『ちょっと・・・近い、近いって!』

  虎は獲物を狩るような目で狼を見つめている。狼は蛇に睨まれた蛙のように委縮していた。

  そして虎は肩に手を回して狼の耳元で囁く。

  『やらねえ?』

  狼は酒の匂いと混ざり合う少し男臭い虎の匂いに心臓を高鳴らせていた。

  『か、からかわないでよ!』

  『からかってねーし。マジな話。どちらかというとさ、いつもはお前から誘ってくるじゃん?』

  『そ、その・・・』

  『そ、そんな顔をすんなよ・・・。ほら、別にお前のことをそんな目で見てる訳じゃねえし。うん、おれの大事な親友だしな・・・』

  軽薄さの中にどこか真面目さがある。そして、虎は真っ直ぐ・・・いや、単純な性格をしていた。思っていることを隠せずに素直に出してしまうのだろう。

  そんな彼の性格を狼は誰よりも理解していた。だからこそ、狼は虎のことが好きだった。

  『おれはお前が大好きだ。素直で優しい奴だ。ずっと変わらないお前が好きなんだ』

  『う、うん・・・でも、トラくん・・・目が猛獣の目だよ?』

  『お前だって猛獣だろうが』

  『き、君ほど獰猛じゃないし、ボディもメンタルも強くないから・・・』

  迫りくる虎に狼は思わず本気で後退りをしてしまった。ふと、狼の肉球に柔らかい布の感触が伝わってくる。振り返って下を見るとそこには布団が敷いてあり、体重を乗せた部分が体重で凹んでいた。

  『へっへっへっ・・・そういうことか』

  『どういうことなの!?』

  『猛獣のくせに・・・おれに食べられたいっつうことだろ?わざわざ、布団のところまでおれを誘ってよ・・・』

  『違うって!さっきの台詞は何だったの!?』

  『覚えてねえ・・・』

  『今は・・・まずいよ!ラ・・・」

  虎と狼の体格差は歴然であり、大人と子ども程の体格差がある。虎に上から覆い被されるような形となり狼は必死に抵抗するも力では全く敵わず、抵抗虚しく押し倒されるというより押し潰されてしまった。

  『苦し・・・重たい・・・』

  学生時代、虎はは筋肉質で引き締まった身体をしていた。

  だが、和菓子屋を継ぎ、結婚をしてから虎は少しずつ脂肪を蓄えていった。本人は幸せ太りと周りに言っていたが、原因は糖分の摂りすぎである。だが、太ったと言っても、胸や腹周りは鍛え上げられた筋肉の上に少し脂肪が乗っかったような感じであり、腕の筋肉は当時のままであった。

  浴衣が緩み、虎の柔らかい毛とその筋肉の上にある脂肪に直接触れ、一瞬、狼はその気持ち良さに囚われそうになったが、狼は瞬時に冷静さを取り戻した。

  『ダメだって!』

  だが、虎からは何の反応もなかった。無視をしているのだろうか・・・?狼の頭に疑問の文字が浮かぶ。しかし、狼の耳に聞こえてきたのは虎の鼾であった。

  『ぐぅ・・・』

  『ね、寝てる?』

  虎の身体の力が抜けて彼に全体重が重くのしかかるが、狼は何とか力を振り絞り、虎の身体から脱出をすることが出来た。

  『トラくん・・・』

  狼が息を整えながら呟くと、虎のひげがピクピクと揺れる。

  『君は・・・』

  虎の口が嬉しそうに弛む。

  『まあ、いいか・・・』

  狼はそのまま虎に布団を被せると、虎の隣に敷いてあった布団に横になった。疲労感に襲われた狼はそのまま目をつぶった。

  

  良かった・・・。

  

  僕は・・・あのままだったら・・・ううん。

  あっ、缶ビールとか片付けていないや。明日、起きたら片付けないと・・・な・・・。

  狼もそのまま寝息となった。

  先ほどまで騒がしかった部屋は急に静けさを取り戻し、虫の鳴く声だけが部屋の外から静かに聞こえてくるだけであった。

  −午前2時過ぎ

  夜中にふと目を覚ました狼は虎の寝顔を見つめていた。豪快に口を開けたまま鼾をかき時々、ひげが揺れて小さく身体が震える。

  昔から鼾がうるさいんだよなあ・・・そういえば、泊まりに行った時は、トラくんの鼾で起こされたっけ。

  狼は静かに笑うと、布団をかけ直そうと虎に近寄った。すると、狼の視線に浴衣の裾からはみ出した柔らかそうな体毛が目に入った。

  肉付きの良い胸を覆う白い体毛に思わず狼は引き込まれそうになった。その体毛の下にある虎の肉体に惹かれそうになる。

  だ、駄目だって。僕は何を考えているんだ・・・。

  

  狼は目をつぶり、自分の考えを否定しようと頭を抱えてしまった。

  今まで、狼は何か困難にぶつかった時に誰かに依存をしてしまう傾向にあった。自分の心を守るために、弱い自分と向き合わないように。それが彼の生き方であった。だが、彼はとある出来事をきっかけに弱い自分と向き合う決意をした。もう、逃げたくはない。強くなりたい。彼の決意は固いものだった。

  だが、自分と向き合い、前に進むにつれて、その決意に至るまでのきっかけをくれた存在である虎への想いは日を増す事に強くなる一方であった。

  この想いは決して『依存』ではない。

  もし、依存をしていると認めてしまえば自分は今までと自分と何ら変わっていない、弱い自分のままだと認めてしまうことになる。周りは彼の成長を認め、後押しをしてくれている。決して狼はそれを認める訳にはいかなかった。自分のためにも、何よりも彼を応援してくれる周りのためにも。

  この想いの正体は『恋』である。

  ふと、狼はそう考えた。

  だが、同性である彼に恋をしているのであれば、自分は『同性愛者』であることになる。

  弱い自分を『否定』すればそれを『肯定』するということになる。

  

  自分自身が『同性愛』を認めても世間は、周りは狼を受け入れるだろうか。

  ましてや、親友である虎は受け入れてくれるだろうか。

  狼は恐れていた。周りから、彼からも拒否をされてしまうことを。

  この想いをどこにぶつければ良いのだろうか。

  この想いをどうしたいのだろうか。

  『弱い自分』も『同性愛』も肯定することも否定することも出来なかった。

  狼はその狭間で悩み、強い苦しみを抱いていた。

  狼は虎に対する溢れる想い、沸き上がる衝動を抑えて虎の浴衣の裾を直そうと手を伸ばした。

  その瞬間、虎の身体が大きく揺れたかと思うとその動きで浴衣が更に乱れ、呼吸をする度に上下に動く胸が現わになった。

  触れたい。

  その思いが頭を過った彼の目に飛び込んできたのは緩んだ虎の浴衣の帯であった。徐々に視線を下腹部に移動していくと、彼の雄々しい象徴がはっきりと狼の目に入った。

  窓から差し込む月明かりに照らされて狼の目に彼の象徴がはっきりと映し出された。

  狼は、しばしの間、虎の性器を見つめていた。自分のよりも一回りも二回りも太く逞しい彼の象徴をその目に焼き付けるように。

  だ、駄目だ!

  狼は慌てて自分の布団の中に潜り込んだ。自分の衝動を抑え込むように目をつぶり、歯を食いしばった。

  暗闇の中で必死に自分の内から沸き上がる衝動を抑え込んだつもりであった。だが、彼自身は痛いくらいに膨張し、焦れば焦るほど、硬くなっていった。

  『バレなきゃ良いんだよ。だって、お酒を飲んで熟睡をしているんだから。多少触ったりするくらいじゃ起きるはずないよね』

  狼の頭の中に

  『それに、僕とトラくんは今までそういう関係にあったじゃないか。そう、何度もね』

  響いてくる

  『我慢することはないよ?いや、そもそも、我慢をする必要はあるのかな?』

  もう1人の自分の声

  我に返った時には彼は虎の身体に直ぐにでも触れられるような場所に座っていた。そして、彼の視線の直ぐ先には逞しい象徴があった。

  心臓が痛い。高まる鼓動が虎にも聞こえてしまいそうだ。

  でも、触りたい。

  寝ている無防備な彼の身体にそっと触れてみる。

  その愛らしい頬に。

  その硬そうな胸に。

  その柔らかな腹に。

  そして、

  狼は性器に触れた。

  強い罪悪感。それを上回る衝動。

  そうだ、いつもトラくんのは勃っている状態しか近くで見たことがない気がする。いつものこんな萎えた状態で触ることなんてなかったなあ。

  

  狼は更に近付くとそれを両手で包み込むように包んだ。彼の手のひら全体に彼の自身の重量感とまだ膨張していない性器の柔らかな感触が伝わる。

  トラくんは『もう少し大きければ良かったのにな。太さは充分だとは思うけどよ』なんて言っていたけど僕からすれば十分に大きい。身体の比率からすると僕より少し大きいくらいで大したことないって言っていたけど・・・。そんなことないよね。とても太くて重量感があるのが羨ましい・・・。

  

  狼は夢中で彼のモノに触れていた。

  虎の白く短い毛で覆われた幹の部分をそっと握ると狼はゆっくりと根元に皮を引っ張った。半分ほど露出していた先端部が全て露出し、虎の体臭と一緒に独特の臭気が漂う。

  狼は思わず舌なめずりをしていた。そして、彼の露出した性器に顔を近付けていく。

  狼の舌が幹の中程から先端まで動いた。だが、虎は熟睡をしているようで起きる気配は全くなかった。狼は舌を動かし、先端を咥えると、その唾液の音だけが部屋に響いた。

  「んっ・・・あっ・・・」

  舌だけではなく狼の手からも刺激を受け、虎自身が徐々にではあるが反応を示し、より太く、硬さを増していく。狼は虎が起きてしまうのではないかという緊張感や後ろめたさを感じてはいたが、それを上回る興奮に支配され、狼は一種の恍惚感を得ていた。

  「虎くんの、大きい・・・」

  遂に、虎の性器は天を仰ぎ、見事に膨張をしていた。太い幹には血管が浮かび上がり、完全に露出した部分は狼の唾液で濡れて光っている。また、その大きな玉はだらりとその重さで垂れ下がっていた。

  「んんっ・・・」

  虎が唸り声のような声を出したその瞬間、ゆっくりと虎の目が開いた。彼の発した声に恐れるような反応を示した狼の視線が開かれた虎の視線と重なり合う。

  一瞬の沈黙。

  冷や汗を流す狼。それとは対照に虎はのんびりと欠伸をしていた。

  「・・・あれ、オオカミ、んっ、おれ、勃起して・・・」

  「ト、トラくん、それは・・・」

  「朝勃ち・・・いや、夜だし・・・でも、何で濡れてんだ・・・?」

  「・・・」

  狼の異変に気付いた虎は目を細めた。

  「ああ、さては我慢出来なかったんだな。んーっ、ヤリたいんだろ、オオカミ?」

  勃ち上がった性器を握りしめ、目の前で狼狽える狼に誘うかのように甘い囁きのような言葉を言い放つ。

  「ぼ、僕は、その・・・あの・・・」

  狼はしどろもどろになってしまい、視線も定まらずパニック寸前まで陥ろうとしていた。大量の汗が頬を伝い、目には涙を浮かべていた。

  「オオカミ・・・」

  「んっ・・・」

  虎は起き上がって狼を抱き寄せると優しく声を掛ける。

  「いいんだぜ。おれも・・・お前とさ・・・したかったんだ」

  「・・・トラくん」

  「正直に言えよ。お前はしたいのか?したくないのか?自分の気持ちをきちんと言えよ・・・」

  「僕は・・・」

  「んっ・・・?」

  「僕は・・・トラくんが好きだ・・・僕も・・・したい・・・僕を・・・好きにしてほしい・・・」

  「・・・おう!」

  虎その言葉を聞いた虎は勢いに任せて狼を押し倒した。虎の体重で床に大きな振動が響き渡った。

  「トラくん・・・ハァ。ハァ・・・うぅっ!」

  「んっー?」

  虎の大きな手が狼の柔らかく細かな白い毛で隠された乳首を正確に捉え、肉球で優しく刺激を加える。

  「やだ・・・っ、恥ずかし・・・うっ・・・!」

  「だってよ、男のくせに、ここさ、すげー感じるんだもんな。いいぜ、その我慢出来ずに漏れちまう声、その耐えるような表情。興奮するぜ・・・オオカミ・・・」

  「トラくん・・・っ・・・」

  目の前に虎の凛々しい顔が迫る。狼が目をつぶると虎は舌で狼の口を舐めると、そのまま彼に口づけをした。

  虎の親愛行為に狼は顔を紅く染まった。

  そして、それが全身に及ぶと、やがて下腹部に移動し、虎は躊躇することなく狼の性器を口にする。

  「んっ、しょっぺえ・・・お前、スケベなことを考え過ぎじゃねーの?我慢汁でベタベタじゃねえか」

  「・・・っ、あっ・・・」

  虎の舌先が狼の性器の先端を刺激する。

  ネコ科の生き物の舌は肉を削ぎ落とすほどの乳状突起が無数に存在する。虎やライオンといった大型になればその鋭さは増すと言われている。そのため、虎は舌先を使うことしか出来なかった。だが、狼に快楽を与えるには十分な程であった。

  小ぶりではあるが、やや長く、しなやかな性器が一段と硬さを増していき、止めどなく露が流れ出てくる。

  「トラくん、気持ちいいよ・・・。僕のこんなに硬くなっちゃってさ・・・すごく恥ずかしい・・・」

  「はは・・・可愛いぜ、お前の。まあ、おれのと比べれば小さいけどよ。濡れやすいのが難点か?」

  「うーん、大きさに関しては体格が違うからね。でも、トラくんだって濡れてるよ・・・」

  「おう、もちろんだぜ・・・。オオカミ、一緒に気持ちよくなろうぜ」

  「うん・・・」

  虎は性器から顔を離すと、自分の性器を握り、体勢をずらして狼の性器と自身を重ね合わせた。虎は無言で狼を見つめる。視線に気づいた狼は虎が何を求めているのかを理解して小さく頷いた。

  「なあ、お前も一緒に握ってくれよ・・・」

  「うん・・・」

  「このシチュエーションさ、興奮すんな。すぐにイッちまいそうだ」

  「だね・・・僕は構わないよ・・・」

  2人は何も言わずに手を動かした。お互いのものが擦れあい、お互いの手と性器からの圧迫するような刺激に堪らず2人は声を漏らしてしまう。

  「あっ、はっ・・・んんっ!」

  「オオカミ・・・やべえ、すげー気持ちいいぜ・・・」

  虎は狼を見つめながら囁く。狼は口元を緩めると虎に微笑みかけた。

  「うん・・・トラくんの手、大きくて気持ちいいよ・・・」

  「へへっ・・・」

  「僕、そろそろ我慢出来なさそう・・・出ちゃいそうだ。うっ、うう・・・」

  「おう、出せよ。見ててやるから、よっ!」

  「ああっ!」

  虎は動かす手の動きを更に速め、指に力を入れて狼の性器を強く握った。その刺激を受け狼の身体が強く反応を示した。

  「うあっ、ああっ・・・!!」

  「おっ、出ちまうか?」

  「うっ・・・んっ・・・!!」

  半透明のようなさらっとした液体が飛び出したかと思うと、間髪置かずに勢いよく白濁した液が弧を描くように飛んだ。その勢いは凄まじく、向かい合う虎の胸を飛び越え、口の辺りを汚した。虎の手にも握っている幹から飛び出してくる液体の流動を感じるほどであった。

  「うっ・・・ああっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

  「すげえ勢いだな・・・おれも、もう出すぜ・・・オオカミ!」

  虎は流れ出る狼の精液を潤滑油として自身に強く刺激を加える。虎の呼吸が荒くなっていく。

  「あっ、イク・・・」

  

  狼ほど勢いはなかったが、粘り気のある液体が狼の腹を汚した。何度か勢いよく飛んだ後、最後の方は勢いがなく、己の幹から玉へと液が流れ落ちていった。

  「ふぅ・・・」

  最後の一滴まで絞りだすと、虎は何も言わずに狼を抱き寄せた。

  「お前、すげえ勢いだったな・・・」

  「トラくんも・・・すごい濃い・・・」

  「毎回こんなもんだけどなあ・・・でも、おれとお前のがさ、混ざり合ってやべえな」

  「うん・・・ドキドキする」

  一瞬の静寂に包まれた後、どちらともなく立ち上がると、部屋に備えられた露天風呂に向かった。そこで汚れた身体を洗い流した。そして、戻った2人は乱れた布団を敷きなおすと、狼と虎はお互い何も言わずに床に就いた。

  「・・・」

  「・・・」

  「ねえ・・・トラくん・・・」

  震えるような声を出す狼に虎は顔を狼の方に向けて心配そうな顔をする。

  「何だよ・・・どうした?」

  「ご、ごめん・・・僕、寝ている君の姿を見て・・・思わず我慢出来なくて君の身体にふ・・・触れてしまったんだ。僕は君に決意したのに・・・したはずなのにさ・・・まだ、君に依存してるみたいだ。そ、それとも、僕は・・・同性が好きなのかなあ。だから、君が気になってしょうがないのかなあ・・・。君は結婚して奥さんと可愛い子どもだっているのに・・・」

  最後の方は涙声になっていた。思わず涙が零れ落ちるのを狼は腕で目を隠すようにして防いだ。

  「オオカミ・・・」

  「僕は・・・僕は・・・どうすればいんだ・・・」

  「オオカミ!!」

  「!」

  「すまねえ・・・つい、大声出しちまった」

  「トラくん・・・」

  

  狼は救いを求めるかのように虎を見つめ、大粒の涙を零した。

  「怒ってねえよ・・・おれの話、聞いてくれ」

  「うん・・・」

  「・・・お前はさ、悩みすぎ」

  「えっ?」

  「おれとお前の間だから言わせてもらうぜ?そうだよ、前々から言おうと思っていたんだけどさ、なかなか言う機会もなかったからよ、今日、この場で言わせてもらうぜ。お前のは依存でもねーよ。後、多分だけど、同性愛者でもねー気がするぜ?」

  「ええっ・・・?」

  予想外の虎の言葉に狼は驚いて目を丸くすることしか出来なかった。

  「まず、恥ずかしい話なんだが、おれと嫁ってよ、年がら年中、発情状態なんだわ。まあ、要は・・アレが大好きなんだ。暇さえあればしてるっつうか。まあ、子どもが出来てからは流石に減ったけどよ。でもよ、やっぱりしねえとムラムラするんだよなあ。で、考えたんだが、おれのそれを感じとって、お前は発情するんじゃねえかなって思う。身体の相性もいいみたいだしな。本能的にお前は分かるんだよ、おれがムラムラしてるのがよ。要は・・・スケベっつう訳だな、お前は」

  「スケベ!?」

  「おう、そうだ。それは認めろよな。おれがいつでも相手してやるからよ。それに、お前はロバのパン屋で働いてさ、すげえスキルを身に付けただろ?もう、昔のお前じゃねえんだ。ライオンにも言われただろ?後は自信を持つだけだって。自分を否定すんな。自信を持て。もう、他者に依存するお前はいねえんだ!」

  「あ、うん・・・ありがとう」

  「で、後は同性愛じゃねえかってことだけどよ」

  「うん・・・」

  「昔は彼女いたじゃん。酷い振られ方をして今はいないけどな。でもよ、無意識かもしれねーけどよ、街で綺麗なねーちゃんが歩いていると視線が向いているんだぜ?お前は根が真面目だから認めたくないだろうけどな。うーん、ただのスケベじゃねえな。真面目系スケベだ」

  「あ、そうだったんだ・・・ううん、そうかも・・・」

  「まあ、おれは野郎には興味ないんだけどよ、お前のことは意識しちまうんだよな。まあ、どこか惹かれ合う部分があるのかもな。お前はおれのことを好きって言ってくれたし、おれもお前が好きだ。その好きってのが、どんな『好き』かは分からねえが、まあ、細かいことはどうでもいいよな?」

  「うん。トラくんらしいや・・・」

  「後はよ、嫁に正直に伝えようと思う。あいつは、寛容だからよ。おれ達のことは認めてくれるとは思うんだけどよ、今すぐに・・・とは言えねえけどよ・・・オオカミ、お前はどう思う?」

  「うん、僕も・・・それがいいと思う・・・。奥さんと君の子どもたちのことを考えれば当然のことだと思う・・・いつか、君と一緒に言える、うん・・・そうしたい」

  「おう、いい顔になってきたな。とにかくよ、お前は悩みすぎなんだよ。しかも、性質が悪いことに1人でとことん悩んで落ち込んでいくからな。いいから話せ!何でも話せ!親友じゃねーか!そうだろ?」

  「ありがとう、トラくん・・・君の話を聞くと、何だか落ち着くんだ。強引なところもあるけれど、それでいいって思わせてくれるパワーがあるんだ。ありがとう・・・」

  「へへっ・・・じゃあ、そこで、寝たふりをしているライオンも力になってくれるよな・・・?」

  「えっ・・・!?」

  狼が視線を向けると2人のそばで就寝していたはずのライオンの耳がぴくりと反応を示した。

  ライオンは仕事帰りに旅館で合流をすることになっていた。流石に体力に自信のあるライオンも飲み始めると、直ぐに酔いが回り、2人よりも早めに就寝をしてしまっていたのである。

  「・・・お前、勘が良すぎるだろ。いつから気付いていたんだ?」

  「おれとオオカミが交わった時だな。一瞬だが目が開いた気がしたからな。後、呼吸が寝ている時の呼吸と違うし、風呂から戻って来た時に布団のシワがずれてたしな」

  「か、観察力ありすぎだろ・・・」

  「じゃねえと、客商売の経営者なんてやってられねえよ」

  「・・・そ、そうか」

  ライオンは上半身を起こすと2人を見つめた。

  「しかし、トラは悩んでいたオオカミをずっと支えていたんだよな。おれは仕事を理由にしてきちんとオオカミと向き合えていなかった気がする・・・すまない」

  「あ、謝らないでよ。僕・・・」

  「いや、おれは表面的な部分しか見えていなかったよ。その背景にあるものをきちんと見ようとしていなかった。この前は偉そうなことを言ってすまないな。今ある姿も何も変わらない・・・おれの大事な親友だよ」

  「謝ったり、臭いことを言ったりよ・・・本当、お前も真面目だよなあ。よし、お前も一発するか?お前の長いちんぽ、使ってやらねえとな」

  「ば、馬鹿野郎!!」

  「実はドキドキしていただろー。その布団で隠れた下半身、勃起してんじゃねえの?」

  「し、してる訳ないだろ!この馬鹿虎!」

  「じゃあ、布団を剥いでみろよ」

  「・・・それは断る」

  「やっぱなあ・・・」

  「もういいから黙れ!」

  珍しく顔を真っ赤に染めて怒りの感情を露わにするライオン。子どものような表情を見せてからかいの言葉を言う虎。2人のそんな姿を見て狼はにっこりと微笑んだ。

  「トラくん、ライオンくん」

  「んっ?」

  2人は同時にオオカミに視線を向ける。

  「ありがとう。僕は君たちのような親友がいてくれて幸せだよ・・・」

  「オオカミ・・・」

  「よし、オオカミもスッキリしたようだし、お祝いで盛大に飲むか!!」

  「その前にシャワー浴びていいか?ちっと、眠気を覚ますわ」

  「おおっ、シャワーを浴びてくる?筋肉ムキムキなライオンが抱いてくれんのか?」

  「抱かねえ!お前、その話題から離れろ!」

  「冗談だっつうの!」

  「オオカミもこのエロ虎に何か言ってやれ」

  「いいんじゃないのかな?トラくんってこんな感じなんだし」

  「よし、オオカミの許可を得たぜ。まずは、布団の中身を見せてもらうぜ!」

  「ば、馬鹿野郎!!!」

  調子に乗った虎をライオンが一蹴した後、彼らは朝を迎えるまで酒を飲み明かした。

  だが、虎とライオンに大量の酒を飲まされた狼から昨夜の記憶がすっぽりと抜けてしまっていた。それが後の小さな騒動を起こすことをこの時は誰も知る由はなかった。

  これは、狼が忘れていた真実の物語。

  3人の友情の物語。