オオカミくん踏ん張る2

  静かだ。

  布団に入ったまま眠い目を擦り枕元に置いてあった置き時計手にして目をやると時計の針は夜中の2時を過ぎを示していた。

  狼はその時計を枕元に戻すとうつ伏せの姿勢から仰向けに姿勢を戻し、高い天井を見上げながら大きなため息を吐いた。

  静かなのは周りだけで、隣りで眠っている虎は鼾をかいて眠っている。狼からは熟睡をしているようにも見えた。

  全く…無防備なんだから…。

  狼と虎は親友同士で、学生時代からの付き合いであった。社会人になってからも定期的に会うほどの仲の良さであり、ある出来事がきっかけで2人は前日から旅行に来ていた。

  昨晩は大酒飲みである虎が潰れて寝てしまうまで酒を飲んでいた。部屋の布団が敷かれていない部分にはビールや酎ハイ缶が転がっている。その量からして相当な量を2人で飲んだことが窺えた。

  「トラくんったらさ…昨日は朝まで飲み明かそうぜなんて言ってたくせに…自分だけさっさと寝ちゃうなんてな…」

  狼は目をつぶると昨夜のことを思い浮かんできた。虎と違い酒をあまり飲まなかったからか、その記憶が鮮明に浮かび上がってきた。

  『6人目の子が可愛くてよ…マジ、天使だぜ?おい、写真を見るか!?いや、むしろ見てくれよ!』

  『さ、さっきも見たからいいよ…』

  『何だよ、ノリ悪ィの…』

  手にしたスマホを残念そうにテーブルの上に置くと虎は目の前の開けたばかりの缶ビールを一気に飲み干した。

  「じゃあよ…7人目作るしかねーな」

  「な、何だよ、唐突にさ…」

  虎の発言に思わず狼は噎せてしまう。涙目になっている狼の顔を虎は泡のついた口の周りを舌で舐めながら見つめた。

  「そうすりゃよ、7人もの可愛い天使がいたらよ、お前も写メを見てくれるんじゃねーかと思ってな。まあ、オレ、ムラムラしてるし?いわゆる発情期ってやつだな!」

  「し、知らないし…そんな獲物を見るような目で見ないでよ…猛獣だからって…」

  「お前だってあるだろうがよ…こう、何だか無性にヤリたくなる時がよ」

  「僕は…」

  狼は恥ずかしそうに目を伏せ、沈黙を貫く。そう、彼はこの手の話題は苦手なのである。

  「んーっ、お前はそうなる頻度がそこまでなくとも、かなり性欲は強いとは思うんだけどなあ…。まあ、オレの方が強いと思うし、頻繁にあるけどよ!」

  「そ、そうなんだ…でも…」

  そんな、強い?僕、そんな姿を見せたことある?

  そんなことを考える暇もなく、毛の一本一本が認識出来るくらいに顔を近付けてくる虎に、狼は恥ずかしそうにしながら彼に顔を背けて缶ビールを静かに口にした。

  「なあ、オオカミ…」

  一呼吸置いて虎は続けた

  「野郎同士だって出来るじゃねーか。お前は気持ちいいポイント知ってるだろうが…なあ、オオカミ…」

  ちょっと…近い…近いって!

  トラくんの顔が目の前にどんどん迫ってくる。

  駄目だ…トラくんの目が据わっている…。

  肩に手を回してくるトラくんからお酒の匂いがする。そして、その奥から男臭いトラくんの匂いがしてきた…。

  「か、からかわないでよ…!」

  「からかってねーし。マジな話。ほら、オレとお前の仲じゃん!前にもよ…」

  「そ、その…」

  「別にお前のことをそんな目で見てる訳じゃねーよ?親友だろ?ただ、今夜は特別な夜だ…なあ、オオカミ…」

  軽薄さの中に真面目さがあると言えばいいのか…。僕の意志を確かめようとしている。単純というか真っ直ぐと言えばいいのか…、本能に忠実な目の色をしていた。

  そんな彼の性格を狼は理解していた。そして、受け入れようとする僕もいる。

  「オレはお前が大好きだ。素直で優しいしよ。ずっと変わらないお前が…好きなんだ」

  「う、うん…」

  「なあ、分かるだろう?」

  「わ、分かってるけど…目、目が猛獣の目だよ…!?」

  「お前だって猛獣だろうが…」

  「き、君ほど獰猛じゃないから…ちょ、ちょっと…」

  狼は思わず本気で後退りをしてしまう。だが、前脚に柔らかい感触がした。振り返って下を見るとそこには敷いてあった布団があり、狼が体重を乗せた部分が凹んでいた。

  「へっへっへっ…そういうことか」

  「どういうことなの!?」

  「猛獣のくせに…食べられたいっつうことだろう?わざわざ、布団のところまで行くっーことはよ」

  「いや、偶然だし、ちょ、待って…ラ………」

  虎と狼の体格差は歴然であり、大人と子ども程の体格差がある。虎に上から覆い被されるような形となり狼は必死に抵抗するも体重差もあり、抵抗虚しく押し倒されるというより押し潰されてしまった。

  「…っ…重た………い…」

  学生時代は筋肉質で引き締まった身体をトラくんはしていたのに…。

  結婚をしてからトラくんは少しずつ太ってきたイメージがある。幸せ太りというやつかもしれない。でも、太ったと言っても、硬い筋肉の上に脂肪が付いたような感じで、腕の筋肉は当時のままでガッチリとして盛り上がっている。和菓子作りはそれほど大変な仕事なのだろう。

  ただ、つまみ食いが大好きな彼のお腹周りに脂肪が付いていて、柔らかい毛と脂肪の感触が僕にとってはとても心地よかった…。

  「…訳ないっ!」

  重い、重いよ!

  圧迫感と緊張で思考がおかしくなりそうだった。このまま、僕はどうなってしまうんだろうか…。僕はトラくんにこのまま食べられちゃうのかな…?いや、それも…いいかな…。

  あれ、僕は…今、何を考えたんだろう。トラくんに…僕は…。

  「トラ…くん…僕は………」

  緊張の汗が流れる。

  「僕は…君になら………」

  心臓が高鳴る。

  「食べられても………って、あれ?」

  そこで狼に疑問が湧く。虎の動きがないからである。てっきり、そのまま襲われると思っていた狼の緊張感が少しずつ解けていく。

  「…ぐぅ………」

  「………ね、寝てる?」

  「んっ…」

  虎は既に寝息になっていた。虎の身体の力が抜けていくと、狼は何とか力を振り絞り、虎の身体から脱出をした。

  「トラくん…」

  虎のひげがピクピクと揺れる。

  「君はさ…」

  虎の口が嬉しそうに弛む。

  「まあ、いいか…」

  狼はそのまま虎に布団を被せると虎の隣りに横になった。脱力感を感じた狼はそのまま目をつぶった。

  良かったんだよね…。

  これで…。

  あっ、缶ビールとか片付けていないや…明日、起きたら片付けないと…な………。

  狼もそのまま寝息となった。先ほどまで騒がしかった部屋は急に静けさを取り戻し、虫の鳴く声だけが何処からか聞こえてくるだけであった。

  −午前2時過ぎ

  狼は虎の寝顔を見つめていた。豪快に口を開けたまま鼾をかいている。時々、ひげが揺れて小さく身体が震える。

  昔から鼾がうるさいんだよなあ…。

  狼は静かに笑うと布団をかけ直そうと虎に近寄った。すると、彼の視線に浴衣の裾からはみ出した柔らかそうな体毛が目に入った。

  肉付きの良い胸を覆う白い体毛の美しさに思わず狼は引き込まれそうになった。そして、その体毛の下にある肉体に惹かれそうになる。

  だ、駄目だって…。僕は何を考えているんだろう…。

  今まで狼は誰かに依存をしてしまう傾向にあった。自分の心を守るために、弱い自分と向き合わないように。それが彼の生き方であった。

  強い誰かといれば安心する、心が満たされる。虎はまさに肉食獣を代表するような生き物だ。その肉体の強さ、そして、トラ自身の人懐こい性格もあり、2人は常に一緒だった。

  だが、彼はとある出来事をきっかけに弱い自分と向き合う決意をした。もう、逃げたくはない。強くなりたい。彼の決意は固いものだった。

  自分と向き合い、前に進むにつれて、その決意に至るきっかけをくれた存在である虎への想いは強くなる一方であった。

  この想いは決して『依存』ではない。

  依存をしていると認めてしまえば自分は今までと自分と何ら変わっていない、弱い自分のままだと認めてしまうことになる。

  この想いの正体は『恋』である。

  狼はそう思いたかった。憧れではなく、恋。そう、狼は虎に恋をしたのである。

  だが、同性である彼に恋愛感情を持っているということは、自分は『同性愛者』であることになる。

  そう、狼の否定感情は、また新たな否定を生む結果となった。

  狼にはどちらの感情も肯定することも否定することも出来なかった。どちらかを選べば望まない自分を選択することになるからである。

  彼は、その狭間で悩み、強い苦しみを抱いていた。

  狼は虎に対する溢れる想いを抑えて、虎の開けた浴衣の裾を直そうと手にかけた。

  その瞬間、虎の身体が大きく揺れたかと思うとその動きで浴衣が更に開け、呼吸で上下に動く胸が現わになった。

  それに触れたい…。

  そう思った狼だったが、ふと、虎の浴衣の帯が緩んでいることに気がついた。徐々に視線を下腹部に移動していくと、彼の雄々しい象徴がはっきりと狼の目に入った。

  月明かりに照らされて狼の目に彼の象徴がはっきりと映し出されていた。

  狼は、しばし『それ』をじっと見つめた。自分のものよりも一回りも二回りも太く逞しい彼の象徴を目に焼き付けるように。

  だ、駄目だよ!

  僕は体勢を起こすと自分の布団の中に潜り込んだ。自分の衝動を抑え込むように目をつぶり、歯を食いしばった。

  必死に自分の内から沸き上がる衝動を抑え込んだつもりだった…。

  だけど、僕のモノは痛いくらいに膨張していた。

  バレなきゃ良いんだよ。だって、お酒を飲んで熟睡をしているんだから。トラくんが起きるはずないよね。

  −僕の頭の中に

  僕とトラくんは今までそういう関係にあったじゃないか…そう、何度もね。

  −響いてくる

  我慢することはないよ?我慢をする必要はあるのかな?

  −もう1人の僕の声

  気がつけば僕はトラくんの身体に直ぐにでも触れられるような位置に移動をしていた。目の前にはトラくんの逞しい象徴があった。

  心臓が痛い。心臓が高鳴る。

  でも、触りたい。彼の身体に。

  寝ている無防備な彼の身体にそっと触れてみる。頬に、胸に、腹に。そして、性器に触れる。

  強い罪悪感。

  だけど、それを上回る衝動。そして、感情。

  ああ、柔らかいな。

  僕は寝そべってそれをそっと握った。僕の手のひら全体に彼の自身の重量感が伝わってくる。

  トラくんは「もう少し大きければ良かったのにな。太さは充分だけどよ」なんて笑って言ってたけど僕からすれば十分に大きい。身体の比率からすると僕より少し大きいくらいなんだってトラくんが言ってたけど…。そんなことないよね。とても太いのが羨ましいかった…。

  ああ…駄目だ。

  もう、このことしか考えられない。

  それ以外の僕の思考は停止してしまったようだ。

  トラくんの白く短い毛で覆われたそれを僕の手のひらでそっと包む。そのまま、根元の方に皮を引っ張ると半分ほど露出していた先端部が全て露出した。彼の体臭と一緒に独特の臭気が僕の鼻を刺激する。

  僕は思わず舌なめずりをしていた。そして、そのまま僕は彼のものに顔を近付けていく。

  僕の舌を幹の中程から先端まで動かす。だけど、彼は熟睡をしているようで起きる気配は全くなかった。僕の唾液の音だけが静かに部屋に響いた。

  「んっ………あっ…」

  狼の息遣いが荒くなると同時に舌だけではなく狼の手からも刺激を受け、虎自身が徐々に反応を示し、より太く、硬くなっていく。

  起きてしまうのではないかという緊張感や後ろめたさ、行為による興奮に狼は一種の恍惚感を得ていた。

  「虎くんの…大き…い………」

  ついには虎の一物は天を仰ぎ、完全に膨張をした。太い幹にはいくつもの血管が浮かび上がり、狼の唾液で濡れていた。

  「んんっ…」

  だが、瞬間、ゆっくりと虎の目が開いた。虎の発した声にすぐさま反応を示した狼の目と虎の目が合った。

  一瞬の沈黙。

  それを破ったのは虎からだった。

  「んっ………あれ、オオカミ…?わっ!おれ、勃起してんじゃん…何でだ?」

  「ト、トラくん…それは…」

  「ああ、さては我慢出来ずにおれの触ったりしたな?んーっ、やっぱさ、ヤリたいんだろ、オオカミ?」

  虎は狼に見せつけるかのように、自身を握ると、まるで誘うかのように、甘い囁きのような言葉を言い放つ。

  「しようぜ」

  「ぼ、僕は…その…あの…」

  急に狼は罪悪感からか、しどろもどろになってしまいパニック寸前まで陥ろうとしていた。視線は定まらず、頬を汗が伝っていく。

  「いいんだぜ…おれも…お前とよ…したかったんだ…」

  「えっ…」

  「お前のこと…好きだからよ…」

  虎は勢いに任せて狼を押し倒すように飛び掛かった。虎の体重で床に大きな振動が響き渡る。

  「トラくん…ハァ…うっ!」

  「んっー?」

  虎の大きな手が狼の柔らかく細かな白い毛で隠された乳首を正確に捉え、肉球で優しく刺激を加える。

  「やだ…っ、恥ずかし…うっ………」

  「へへ…ここだよな。男のくせに、すげー感じるんだもんな。いいぜ、その声、その表情…。めっちゃ興奮するな!」

  「うあっ…!トラく…ん…」

  至近距離にあるトラくんの顔が男の顔に変わっていく。

  でも、僕も同じだったのかな。

  僕は…トラくんに手を出している間…こんな表情をしていたのかな…でも、そんなことを考える暇はないみたいだ。

  「しょっぺえ…お前、スケベなことを考え過ぎじゃねーの?我慢汁でベタベタだ」

  「…っ、ああっ…!」

  虎の舌先が狼の一物を刺激する。ネコ科の生き物の舌は肉を削ぎ落とすほどの乳状突起が無数に存在し、虎やライオンといった大型になればその鋭さは増すと言われている。

  そのため、虎は舌先を使うことしか出来なかった。だが、狼に快楽を与えるには十分なくらいである。

  狼の小ぶりであるが、身体に見合うそれが一段と硬さを増し、止めどなく露が流れ出ていく。

  「トラくん…気持ちいいよ…でも、恥ずかしい…」

  「はは…可愛いぜ。おれからしたら小さいけどよ…」

  「…大きさは体格が違うからね。でも、トラくんの…大きくて好きだよ」

  「おう、ありがとうな…。なあ、オオカミ、一緒に気持ちよくなろうぜ」

  「うん…」

  虎は顔を上げ、狼に覆い被さると、自身を掴み、狼自身と己自身を重ね合わせた。狼は虎が何を求めているのかを理解し、頷く。

  「なあ、お前も握ってくれよ…」

  「うん…」

  「すぐ…イッちまいそうだな…」

  「だね…」

  2人は何も言わずに手を動かした。お互いのものが擦れあい、圧迫するような刺激に堪らず2人は声を漏らしてしまう。

  「あっ、はっ…んんっ…!」

  「オオカミ…やべえ、すげー気持ちいいぜ…」

  虎は狼を見つめる。狼は口元を緩めると虎に微笑みかけた。

  「僕…そろそろ、出ちゃいそう。うっ、うう…」

  「おう、出せ…見てて…やるから、よ!」

  「ああっ!」

  虎は腕に力を入れ、動かす手の動きを更に早め、狼自身を強く握った。その刺激を受け、狼の身体が強く揺れた。

  「うあっ…ああっ!!」

  半透明のようなさらっとした液が飛び出したかと思うと、間髪置かずに勢いよく白濁した液が弧を描くように飛んだ。その勢いは凄まじく、狼の胸を飛び越え、顔を汚した。虎の手にも飛び出してくる液体の流動を感じるほどであった。

  「うっ…ああっ」

  「おれも…出すぜ…オオカミ!」

  虎は自身を握ると刺激を加えた。狼ほど飛び出す勢いはなかったが、粘度のある大量の液体が狼の腹を汚した。

  「はぁ………」

  虎は力なく前に倒れるとギュッと狼を抱き寄せた。お互いに息を整え、再び部屋は静寂に包まれた。

  「…」

  「…」

  「ねえ…」

  沈黙を破ったのは狼からであった。

  「ごめん…僕、寝ている君を見て…思わず我慢出来なくて…。最低だよ…。僕は決意したのに…したはずなのに…まだ、君に依存してるみたいだ。弱いままだ…そして、君は…結婚して奥さんいるのに…ぐすっ…僕は………最低の…同性愛者だ…」

  最後の方は涙声になっていた。思わず涙が出そうになるのを狼は腕で目を隠すようにして防いだ。だが、嗚咽は止まりそうになかった。

  そんな狼を見て、虎はそっと呟く。

  「…お前さ、悩みすぎだ」

  「えっ…?」

  「前々から言おうと思ってたんだけどさ、それさ、発情」

  「ええっ…?」

  虎の余りにも軽い口ぶりに狼は驚くことしか出来なかった。

  「まず『狼』ってのはさ、1年に1回くらいしか発情しねーらしいんだよ。でもよ、お前の場合は、月1くらいであるんだと思うぜ?恐らくよ、オナニーで満足出来ないくらいのムラムラがあんだろ。おれも性欲が強いから分かるんだけどさ。つまりはスケベなんだよ」

  「スケベ!?」

  「ああ。で、相手がいねえからおれにそういう感情つうか、ムラムラが向くんだよ。でも、生真面目なお前は依存だとか、恋とかしてるんじゃねえかって悩んでるんだろ?」

  「うっ、うん…」

  「おれたち、学生時代から結婚するまで結構、頻繁にヤってたからよ…おれもお前のこと未だに好きだからよ、分かるんだよなあ…大事な親友なのに、反応しちまう罪悪感にさ」

  「トラくんも…?」

  「おう。おれは、嫁に話したんだよ。おれって最低だよなって。あっ、お前の名前や素性は言ってねえよ?…まあ、でもよ、正直に話したら理解はしてもらえた。まあ、今回の件はスゲエ怒られそうだけどな…おれも、理性を失ってお前に手を出したんだからよ。正直に土下座して謝るよ」

  「…強いな、トラくんは…でも、僕にも一緒に謝らせて…僕は………もう、逃げたくない」

  「おう、そうだな…。後は、自分が同性を好きかって悩んでるだろう。おれには分からないけどよ、おれは、どうであれ、お前のことは変わらず好きだよ。いいヤツだからな…」

  「あ、ありがとう…」

  「とにかく、お前は悩みすぎ。しかも、性質が悪いことに1人で悩んで、悪い方向に思考が流れていくからな…。いいから話せ!何でも話せ!親友じゃねーか!おれも、そこで、寝たふりをしているライオンもな!!」

  「えっ…!?」

  狼が視線を向けるとライオンが気まずそうにこちらを見ていた。

  実は、狼は虎とだけでなくもう一人の親友であるライオンとも一緒に来ていた。各国を飛び回るビジネスマンであるライオンは仕事帰りに旅館で合流をすることになっていた。流石に体力に自信のあるライオンも早めに就寝をしていたが、その気配に目を覚めしていた。

  「…トラ、お前鋭いよな。てかさ、気付いてたんならおれに気を遣って途中で止めろよ…」

  「何かこういうシチュエーションって興奮しねーか?」

  「おれはしない。てか、お前らのことは聞いてたから知ってたけどさ、一連の流れはちっと引いたわ」

  「うっ…」

  ストレート過ぎるライオンの言葉が狼の胸に突き刺さる。だが、ライオンは上半身を起こすと言葉を続けた。

  「でもさ、トラは悩んでいたオオカミをそうやってずっと支えていたんだよな。薄々とは気付いていたんだよ、オオカミのことはさ。でも、おれは忙しさを理由にしてきちんと向き合えていなかった…すまん…」

  「謝るんじゃねーよ。だったら、お前も一発するか?お前の長いちんぽ、最近使ってねーだろ?」

  「ば、馬鹿野郎!!」

  「あれは獣の槍だよなあ」

  「お前、少し黙れ…」

  「ふふっ、トラくん、ライオンくん」

  「んっ?」

  「ありがとう…。僕は君たちのような親友がいてくれて幸せだよ…。悩むことなんてなかったんだ…僕はもっと強くなるよ…もう逃げない…自分を見つめ直したい…」

  「そうだよ、ようやく分かったか!よし、オオカミの悩みも解消されたことだし、飲むかー!」

  「その前にシャワー浴びろ。お前ら、せーし臭いからな」

  「おおっ、シャワーを浴びろ?筋肉ムキムキなライオンが抱いてくれんのかー!」

  「抱かねえって!」

  その後、僕たちは明け方までお酒を飲んでいた。でも、僕はトラくんやライオンくんに異常なほどのお酒を飲まされてしまい、気が付いたら昼間になっていた。

  飲まされ過ぎてしまったせいで僕は夜中からの記憶がすっぽりと抜けてしまっていたようだった。それが後のプチ騒動を起こすだなんて知る由もなかった。

  これは、僕の忘れていた真実の物語。