「…はふうぅ、工事のためとは言え、此処で過ごしてるってのも大変だなぁ。」
陰月村の『とある家』の一つ、其処の一部屋にてその様な事をぼやきながら風狐がいた。
普段なら熊神神社の一部屋にて様々な事を行ったり散歩をしたりしている彼であるのにも関わらず現在この『とある家』に過ごしているのは、元々かなりの年月が経っていた熊神神社に来てくださる参拝客への配慮や普段生活に使用している所への改修の為に、一度、熊神神社の一部を閉鎖する事に決まった際に風狐が普段過ごしていた部屋も対象となってしまい、一旦この家に住む事に成ったからである。
「一応何とか過ごせていってる感じに成ってるけれど、懐かしい部屋に戻りたいよ…っと?」
部屋の中でその様な事をぼやきつつ窓を開けて改修を続けている神社を見ていると、その近くでフォックとレイリュウの姿があることに気付く。
[newpage]
「あら、神社改修工事してるのか、智月のとこも忙しいようね」
「皆様、頑張っておりますね…智月さんは何処に行っているのやら…?」
熊神神社の改修工事があるのを知ってフォックとレイリュウはそれぞれの反応を出してゆく。
「シャケのとこに行ってるのかしら?あいつも忙しいのだろうかね」
「そ、それってマスターにとって不味いことなのでは…?」
「何が不味いことなんだい?」
フォックは龍狼がシャケの所へ行ったのではないかと考えレイリュウがその事について不味いのではないかと呟くと風狐の声が聞こえその姿が現れた。
「風狐君か、まあ不味いというかそろそろあいつを元に戻すつもりでもあったし、最悪あいつはシャケのままになる可能性があるからな」
「…は、はあぁ…!?」
フォックとレイリュウの会話に気になっていた風狐にフォックのその返事に仰天を表情を見せた。
「まあ風狐君とか智月本人にはちゃんと報告しないといけないと思って来たんだが」
フォックはそこで智月の診断のを風狐に渡した、診断によると前に魔力を注いだ件で智月自体段々とシャケ化が進行していることが書かれていた。
「そ、そんな状態に成っちゃってるの…龍狼が!?」
「うん、ちょいと裏で調べさせてもらったわ、このままいけばね、そうなればもう俺らを敵と認識してしまいかねない、そうなるとバイトのイカ・タコ達によって討伐されるでしょうね」
「…大変やばすぎるだろ!」
フォックは真剣な目つきでそう伝えて風狐が青ざめて診断結果を見てゆく。
「そうなるとあいつはシャケへと侵食していく、あっちの世界の俺のとこにいるコジャケぐらいなら話は別だけど今の智月は」
「オオモノシャケ…ヤバすぎるだろ」
「そうなんです。それ故、龍狼の姿を元に戻すポーションを作成中なのです…」
フォックが龍狼がシャケに完全に成った際のその後を言い、その後を引き継ぐように風狐がそう言ってからレイリュウが今自分達が行っていることを伝える。
「魔王城でアストルにもポーションの件任せてあってそれを伝えにここに来た」
「成る程なぁ…」
アストルも協力している事も伝えフォックがレイリュウと共に探しているのを伝えると風狐は診断結果の内容を熟読してゆく。
「それがトリガーになってるのよ、魔力を注いだ時に一瞬で智月がシャケになっていたから魔力をこのまま続ければシャケになってしまうからね」
「…もしその魔力を変質させればシャケに成ってしまうのを防げるのかい?」
フォックが風狐のその発言に答えるように龍狼の状態を伝えると風狐はその様な事を聞いてきた。
「確かにそれは可能だが変質を行える方法があればだけど」
「…一つ、その方法を行うことが出来る宛に心当たりがあるんだ。」
風狐のこのアイデアに一応の賛成を見せるフォックであったがその変質を行える方法があるのかとの意味を込めたその言いように風狐はそう言ってから家に届いていたチラシの一つを持ってきた。
「それは?」
「魔力ってのは所有者の心意気によって左右されやすい不安定さを持ってるのを家の書物から知ってね、要するに相棒の心を強くさせれば容易に変質を起こせるんじゃあないかな…?」
レイリュウが風狐のチラシについてそう聞いてくると風狐は魔力とその使用者の精神状態についての関係性を二人に伝えながら見せたチラシを見せると其処には『相撲大会』の選手募集が書かれていた。
[newpage]
「なるほど、しかも相撲大会か、まあそれきっかけで蒼剣も変われたからな」
「そうなのかい…まぁ、薬作っている事を相棒に伝えたりでもしたら更に自己嫌悪引き起こしてどえらい事になる可能性もあるからね?」
蒼剣も相撲大会にて変われたことをフォックが言ってきて聞いた風狐はもし元に戻れる薬を作っている事を龍狼が聞いた際のリスクを考慮してその様な方法を上げたのを伝える。
「そうだね、このことは内密でそれに参加できるようにしないとね」
「僕から気分転換に参加したらどう、って聞いてみるね…最近やった健康診断で引っ掛かりそうな状態に成ってるの知ってるからね…!」
「さ、作用なので…」
それを聞いたフォックは此処で行われた事を内密にするように言ってくると風狐は気分転換目的での利用に加え最近会社の方にて行われた健康診断の内容も利用する事も考え悪い表情を見せてレイリュウが若干引きつってしまう。
「まあそうだね、逆にインク太りが健康でひっかかるなら相撲とかで健康的に太るという手はあるけど」
「あー、健康に引っ掛かった部分は分かんないんだけどね…まぁ、僕に任せとき!」
フォックがそれに同意しつつ龍狼の健康に引っ掛かった事についてそう考えると風狐はそれについて詳しいことは分からないのを伝えながらそう言ってサムズアップをする。
「なら任せるね、智月にはこのことは内密に、いくよレイリュウ」
「はっ、マスター」
風狐に任せることを伝えフォックとレイリュウは龍狼の相撲への準備の為にその場を去った。
(風狐君に任せたのはいいものの、大丈夫かしらね?)
(念のため、何かあった時の為に誰かにこの大会に参加するように伝えましょうかね…私達ですと露骨すぎてバレる可能性があります)
風狐が何か失敗を引き起こさないかと不安になるフォックに対しレイリュウは此方でも相撲大会への参加者を用意するように進言してくる。
(そうね、蒼剣だと無理だし雷黄も難しいだろうしな)
(取り敢えず、妥当な人がいないか調べてみますね…!)
フォックのその返答にレイリュウはスマホを使って良い人選を探し始めてゆく。
(レイリュウもスマホ使えるようになったけど流石ね)
最近に成ってスマホを使える様になったレイリュウを見ながら感心するフォックであったが、この人選で相撲大会に強烈な印象を与えさせてしまう事を知るのは後々であった。
[newpage]
「…相撲大会の参加?」
「そっ、今の相棒にならお誂え向きなやつじゃあないかって考えてね…?」
二人との会話を済ませた風狐は龍狼とその彼女が住んでいる家の部屋の一つへ早速来て早々、先ほど二人に見せたチラシを龍狼に渡しその様な事を言ってくる。
「ふぅむ…確かに、これくらい運動出来そうなやつならやってみたいとは思うけど…」
茶色の毛で覆われてる身体は一見太っているように見えるが、皮膚越しからうっすらと深緑に染まったものが見えているお腹を見ながら龍狼はその様な事をぼやきながら少し悩んだ表情を見せる。
「少し、問題とかあるのかい?」
「あぁ…この身体他の参加者から見たらどう思われるかな?」
そう言って龍狼は地毛の合間から覗き見える毛の一部に魚類特有の鱗が出てるのを、手の間には水掻きのようなものが出ているのを見てそう呟いた。
「この身体を見て怪しまれでもしたら…」
「おじゃましまーす!」
「うぉ、トタチ…」
龍狼が自身の身体を見て不安がる中、隣の部屋から安定した身体のスライム状態のトタチが来てそう言ってきた。
「おやおや…今度はどうなっちゃったの!?」
「あ、あぁ…トタチ、実はな…?」
話していた二人の様子を怪しく感じたトタチがそう言ってくると龍狼がそう言ってきて風狐が自身を相撲大会に参加するように言ってきた事を伝える。
「ふむふむ……」
「そういう感じで参加するかどうかだけど…この姿で大丈夫なのかな?」
説明をし終えてチラシを見てゆくトタチに対し龍狼が自身の身体を見てそう言ってくる。
「どうなんだろう……」
「参加したいとは思うんだけど、もしも普通の姿の方々が居たら…俺ひどく場違いに思われるんじゃねぇかって考えちゃって…」
「ふむ…ちょっと待っててね?」
トタチも気になってそう呟くのを皮切りに龍狼が自身の中で思ったことを垂れ流しながら自身の腕を見るなかで、風狐はそれを聞いて部屋にあったパソコンを起動し始め何かを調べ始める。
「調べてなにか分かった?」
「…龍狼、朗報だよ。この大会結構変わり種なお姿の方々も参加してるみたいだ!」
「ほ、ほんとか!?」
調べてゆく風狐の姿を見ながらトタチが聞いてくると相撲大会での参加者の姿があるページを見つけたのを風狐が言い、それに反応した龍狼がそう聞いてくると風狐はパソコンの画面を二人に見せた。
「なるほど、それなら問題なさそうだね」
「…此処までお膳立てされているような感じなのが気になるけど、乗り掛かった船だやってやろうじゃないか!」
「さっすがー!」
多種多様な参加者の姿を見てトタチがそう言って龍狼の方を向くと本人は少しトントン拍子で進んでいることが気になるもその気持ちを切り替えて参加する表明を出した。
「よかったー」
「そんじゃま、参加の手続きして準備をやってかないとね。」
「どんな感じにやってけば良いのか…風狐、どうやってゆけば良いのか分かる?」
「あー…まぁ、任せとけ!」
トタチが安心した口調でそう呟くと風狐が相撲大会の参加の手続きをする事を伝えると、龍狼はどの様に行ってゆけば良いのか聞いてきて風狐は自身に任せるように言いながらもフォックに聞こうとプランを構築し始めてゆく。
[newpage]
「…なぁトタチ、俺風狐に相撲大会までにどうやってゆけば良いのか聞いたのは覚えてるよね?」
「うんっ」
「それが…どうしてこんな事に成ったんだ!?」
相撲大会の申請を終え、その当日までに行う事についての風狐の返事を待っていた龍狼であったが、何故かトタチと一緒に『スカルドラゴ団』の一部メンバー達がいる所に放り込まれてしまっていた。
「おっ!来たな!風狐から話は聞いてるぜ、大会に出るんだろ?俺が相手してやるよ」
「!?」
「蒼剣、ど、どういうこっちゃ!?」
突如、蒼剣からのその申し出に困惑を隠せてない二人。
「いや、お前が大会に出ると聞いて、それなら俺がお前を鍛えてやるぜ、まあ戸惑うことはあるが俺はこれでも優勝経験者でもあるし」
「そ、そうなの…って、じゃあ何でスカルドラゴのメンバーも!?」
蒼剣の説明で納得しかけた龍狼であったが、同じく此処にいるスカルドラゴ団のメンバーを見ながらそう言ってくる。
「俺らスカルドラゴ団『風蒼(ふうそう)』は風属性使いで鍛え抜かれた先鋭だぜ?まあ大半俺と同じでガチムチデブなとこもありゴリマッチョな奴らもいるけどそれぞれ鍛え方が違うんだ」
「へぇ」
「あー、つまり…風狐は『風蒼』の中で行われている鍛練を行って、相撲大会に適した身体にするように決めたと…中々良い性格してるよほんと!」
蒼剣によるスカルドラゴ団『風蒼』の説明を聞き終えトタチが感嘆の息を出す中、龍狼は相棒である風狐のプランを理解し自身にキチンとした説明をして欲しかった思いを込めてそう叫んだ。
「そういうことだ、とりあえず明日から鍛錬するからまずは飯だ!」
「お、おす。ありがたく頂きます!」
[newpage]
「んじゃ皆食うぞ!」『おお!』
『風蒼』の連中達が食事をとる、量がボリューミーでありかなりある、鍋だけでなく色んな料理が出されていた。
ちなみにこれらの料理はそれぞれのチーム達が日によって当番制となっている。
「け、結構種類あるんだね…」
サラダキチンを頂きながらそう呟く龍狼。
「まあこのぐれぇは食えねぇとな、ただ太るだけじゃねぇぞ?力もつけるというのもだしな」
そう言いながらちゃんこ鍋にがっついていく蒼剣、食べ慣れているためか量もかなりある。
「は、はい。上手くやれるかどうかは此処での鍛え次第と考えてゆきます…ちゃんこ鍋少し頂こ」
かなりの量のちゃんこ鍋を食べてゆく蒼剣に尻込みする龍狼であったが、大会に良い結果を出せるためにと気持ちを整えながらちゃんこ鍋を少し汲もうとする。
数分後
「ふう~食った食った」
「げふっ、風蒼のメンバーにあれやこれやと勧められて…食い過ぎた」
腹を軽く叩きながら満足に完食した蒼剣とは違い、普段の時よりも大きくなったお腹を抱えて仰向けに転がりながらそう呟く龍狼。
「んじゃそろそろ寝るぞお前ら!」
『おっす!』
「お、オッス…トタチ、大丈夫か~?」
風蒼メンバー達と同じ様に声をかけてから一緒に此処に放り込まれたトタチに呼び掛けてみる。
「あら満足の様だね…?」
トタチも同じく風蒼メンバー達に色々勧められて好物のお芋もありそれだけ勧められたようであり、お芋を満足に食べれてトタチが良い表情を見せながら少し膨らんだお腹を擦っていた。
風蒼メンバー達はそれぞれ寝る前に歯磨きや風呂に入ってそのまま寝る時間となった。
「お前らも風呂入って寝る準備しとけよ、明日から朝はえぇから」
「あっ、了解です!」
蒼剣にどやされる形で龍狼は起き上がり、未だ動けないトタチを引っ張りつつお風呂と歯磨きを済ませに行く。
[newpage]
そうして皆は眠りについて、翌朝。
「起きろお前ら!まずはランニングからやるから準備しろ〜!」
「ん、ふあぁ…ほんとに早めだな…」
朝5時、蒼剣が皆を起こし、起きてから少し目を瞑ってから龍狼はトタチと共に起き出してきた。
ちなみに雷黄率いる『雷閃』も同じく起きておりフォック達などはまだ寝ている。
「この服装のままやっても良いんですかね?」
龍狼が風狐に此処に放り込まれる際自身が着ていた服を見ながら蒼剣にそう聞いてくる。
「とりあえずジャージとかに一旦着替えてこい、んでランニング終わったら稽古場に向かうからな」
「分かりやした!」
トタチを連れて着替え室に行き服をジャージに着替えてくる龍狼。
「んじゃやるぞ!」『おおーす!』
全員が準備できたのを確認して蒼剣の呼び掛けを切っ掛けにランニングが始まった。
「一二、一二、一二」
蒼剣が考えたコースを皆が走って行く中、掛け声を出しながら龍狼とトタチも走ってゆく。
皆鍛えている為か皆汗をかきながらも太った腹を揺らしながら走って行き、また一部の痩せていてかつゴリマッチョなメンバー達も汗をかきながらも走って行った。
そしてランニングが終わってから。
「んじゃ次は稽古だ、まずは廻しに着替えて始めるぞ」
「おす、着替えてきます!」
付けていた帽子を一旦着替え室においてから裸に廻しを付け始めてゆく。
「まずは四股踏みだ!続けて柱に向かっててっぽうだ」
『うっす!!』「う、うっす!」
上手く廻しを付けれたのかと不安に成っている龍狼を他所にガチムチデブなメンバー達の方は稽古という形で鍛錬をする。
ちなみに他の一部のメンバーはそのまま食事に向かっていっている。
「龍狼お前もやるぞ」
「先ずは四股踏み、からだね?」
蒼剣がやってきてそう言ってきてからそう返事を返してくる。
「ついでに稽古は昼までやる、悪いが朝食抜きで行うんでな、なんでかは後で説明するからお前も稽古に入れ」
「うぉっ、初っぱなからきつめ…だけどやってくね!」
蒼剣からその様に言われ少しタジタジになりかけるもそう言って頑張る龍狼を見て蒼剣は頷く。
「ふっ、つっ、ふっ、つっ…」
他のメンバーの四股踏みを見ながら龍狼も四股を踏み始める。
「まあ慣れないが少しずつ慣れていこうぜ」
そう言いながら軽々と四股踏みをしていく蒼剣、経験者だからこそ鍛錬を怠っていない、見た目はガチムチデブな竜人だがこれでも鍛錬はしてはいる。
「は、はい…上手く慣れてゆきます。」
たどたどしい四股踏みではあったが良く見れば力士がやっているものに近いやり方でやっている龍狼が蒼剣にそう返事をした。
因みに他の皆も四股踏みをこなしている。
「んじゃ次行くぞ!」
そのまま次へとうつってからそれから昼まで稽古が続き皆お腹の虫は鳴っていても稽古に励んでいた。
「ふんっふんっ、ふんっふんっ!」
柱に向かっててっぽうを打ち込み続ける龍狼。
「ふぬっ、つうっ…ふぬっ、つうっ…」
相手からの攻め手を受け止めて持ちこたえるトタチ、昨日頂いたお芋の影響で少しガスがお腹に籠っているも鍛練をする都合上今回は尻に力を込めて出してない。
「もっとだ!熱く燃えるように!」
「ふんっふんっふんっふんっ!」
蒼剣からのアドバイスを受けててっぽうを打ってゆき張り手に近い形となってゆく龍狼。
[newpage]
そしてお昼になった頃
「おしっ!稽古終わりだ!皆着替えて飯にするぞ!」
『おおーす!』
稽古が終わりメンバー達が息をつきながら着替え室の方へ行く中、龍狼の方へ蒼剣がやってくる。
「あ、廻しは基本洗わないみたいだからそこは覚えておけよ龍狼」
「は、はい、分かりました!」
「ふうぅ…やっとお昼か…あっ」
蒼剣から廻しについてを聞いた龍狼が上手く頭を下げる中、トタチがようやくお昼にありつけると力を緩めてしまい、お尻からガス漏出。
「うおっ!?」「ぶわっふ!?」
近くにいた蒼剣と龍狼にトタチのガスが直撃ししかめ面に成ってしまう。
「皆窓開けろ!!」
「えっ、何で…ゲホォ!」
「な、なんじゃこの香り!?」
少し他のメンバーにも被害が出つつ稽古場の窓を開けてガスを外に出してゆく。
「ったく、とりあえず飯にするからあまりガスとか出すなよな?フォックがいたらあいつに怒られるからな」
「は、はーい…気をつけます。」
蒼剣にそう言われて少し謝罪の思いを持って約束を決めるトタチ。
[newpage]
「んじゃ着替えて飯にするから食堂に来てくれよな」
そう言って蒼剣は着替えに向かう、廻し姿をしていてかなり腹の脂肪が目立つが両腕と両足などには筋肉が大分ついていてがっしりしていた。
「分かりやした…っと、朝に食事取らなかった事教えてくれるのかな?」
龍狼も共に着替えに向かう中で今朝の事を思い出しそう呟いた。
「あぁそうだったな、実は朝食を取らない方が稽古に集中できてその分を昼で食えばいいんだと、元々相撲では基本的にそうとっているようだぜ?」
「そうだったのですか、結構相撲も奥が深そうですね…」
龍狼の呟きに蒼剣が説明をしながら着替えをしてゆくと龍狼は少し自身の掌を見て少し握り開けをする。
「そうだ、まあ俺も抵抗はあったが今は受け入れたけどな、大会で優勝してから俺が俺でやれることが見えたからな」
「…俺のこの心も成長できるのかな?」
着替えながらも自分が変わったことに対して呟く蒼剣に対し、廻しを外し終えた龍狼がその様なことを聞いてきた。
「それはお前の心持ち次第だな、まっ!やるだけやりゃあいいんだよ!行くぞ!」
「っと、あ、あぁ待ってください!」
そう言い食堂へと向かった蒼剣を見て慌てて着替えをし終えて追いかける龍狼の身体はインクで満たされつつ、それでいて獣人特有の筋肉が付き始めていた。
[newpage]
食堂も昨日と同じように量が多い食事が出されてきた。
「おし食うぞ!!」『ううっす!』
「モグッモグ…キチンと味わって、食わねぇと色々と悪いぞ…アグッ」
ガツガツと風蒼メンバー達ががっついていく中、自身のペースでしっかりと噛んでいって料理を味わいながら龍狼はそう呟く。
「ふぅ〜んじゃ午後は皆昼寝だ!朝鍛えた分夕方まで休めな」
『おおっす!!』
「おおっす、夕方も稽古をやってゆくのかな?」
数分後には料理は全部カラとなり風蒼メンバー達と共に蒼剣に挨拶を行ってからふとした疑問を溢す龍狼。
「まあそうだな、それまで寝て体力つけていけよ」
「成る程、分かりやした。」
龍狼と風蒼メンバーそれぞれジャージに着替えて寝る準備をする。
「んじゃ寝るぞお前ら!」
蒼剣のその声と共にそれぞれ皆夕方まで眠りについていった。
[newpage]
そして目が覚めてから夕方の稽古が始まり1時間後には稽古が終わって夕食の時間へと入っていった。
「稽古、ありがとうございます!」
「んじゃ着替えて夕食だ、こうして昼寝とかもすることで健康的に太れるとか言っていたんでな」
「成る程、中々のハードさがありそうですね…」
「まあ朝食抜いているのもより太れるのと強くなるというのも利点だからな」
「ふむふむ…っと、さっさと着替えないと!」
蒼剣から相撲取りの一日についてを聞き終えた龍狼は夕食の事を思い出して着替え室へと行っていった。
「おしっ!飯だ!食うぞお前ら!」
『おおっす!!』
「ほんと多いね…」
そして夕食もやはり量が半端なかった、もちろんちゃんこといっても鍋だけではなく他の料理もちゃんこと呼んではいるようだ。
「このくらいが俺らからしたら当たり前になったからな、まあ俺は慣れてきたし何よりスカルドラゴ団になってから俺がチームのリーダーもとい幹部としてもがんばらねぇといけねぇからな」
「ハフ…ほぐほぐ、応援、してるね?」
蒼剣の心持ちを聞きながら料理を味わって心からの応援をする龍狼であった。
「ガブっ!ありがとな!」
皆はどんどん料理を食べ尽くしていったのだった。
「ふう〜ごちそうさん!」
「ご馳走さんでした!」
「んじゃ風呂に入るぞ!」
食事を終えた後皆は風呂場へと向かっていった。
[newpage]
「此処も本当に広いよなぁトタチ?」
「そうだね、水があるところがあるのはほんと良い…」
風呂場の広さを龍狼が溢すとトタチは水風呂があることに感謝をしながら水風呂に浸かってゆく、温水でも入ることはあるのだが身体が変化した影響か冷たい水でも難なく浸かれるように成っていたのである。
「まあ浴場はスカルドラゴ団全員使うしフォックとかも利用するからな、ついでにここサウナまで完備してるぜ」
「おぉっ、それは中々…フォックも此処利用するの?」
蒼剣のその発言の一部に聞き捨て成らない事があるのを聞いて龍狼がそう聞き返してしまう。
「まああいつ利用するのはするぜ、ただ俺らの入る時間とか色々調整してるから順番的に俺らが最後になる、俺らが入るとお湯が大半減るみたいだからという理由でな」
「…確かに、体型でかいからな」
蒼剣のその発言を聞いて風蒼メンバーのほとんどの体型の大きさを思い浮かべてそう呟く龍狼。
「そういうこと、ふう〜浸かったしそろそろ上がるか」
「はーい!」
風呂を上がり皆は着替えて寝る準備をする、これが大体の1日の流れとなる。
「とりあえずこんなところだ、大会までに鍛えないとな」
「そうですね…試合に負けないくらいに鍛えて行こっと!」
そう言った智月の腹を蒼剣が軽く叩いてくれた。
「んおっ、ふ…」
お腹を叩かれて少し声が溢れる龍狼。
「そんじゃ寝るぞ、明日もはえぇから寝坊しないようにな?」
「は、はーい!」
こうして1日は終わってゆく。
[newpage]
それから朝起きて朝食抜きでの稽古や大量の飯を食うと昼寝の繰り返しが続き1週間後。
「ふんっふんっ、ふんっふんっ、ふんっふんっ!」
「少しずついい感じになってるな龍狼」
「ふぬっ、つうっ…ふぬっ、つうっ…」
「よしそこまで、一旦休憩だ」
「ふうぅ…結構鍛えてこれたね?」
「そうだね…ガマンすることも得意に成ってきたよ!」
弱冠鍛えられた身体をした龍狼とガスを堪えれる様になったトタチの姿を見て蒼剣は頷いてゆく。
「確かに少し筋肉ついてるな…」
「んっ、まぁ…インクが脂肪代わりになってる感じだけどね?」
見ると龍狼に若干筋肉はついていた、ただ腹の方には正面の腹が段々と太っているように皮下脂肪代わりにインクがついていっていた。
「まあその分筋肉もついたろ?」
「そうだね!」
蒼剣にそう言われて力瘤を作る龍狼。
「さて、まだまだここからだ、大会までめいいっぱい鍛えて行くぞ!」
「はい!」「おぉー!」
大会までめいいっぱい龍狼を鍛えていく蒼剣と風蒼メンバー達であった。
[newpage]
そして、相撲大会当日
「まだかなぁ…」
「そう焦るなよ、緊張するのはわかるが」
「そうですが…いくらなんでも遅いじゃありませんか!?」
今までこの大会の人選に使用していたスマホを握りながら蒼剣に対しそう叫ぶレイリュウ。
「どんな人が来るのレイリュウ?」
「あっ、っと…この様な大会に好意的に受けてくださった方で、トタチさんのお知り合いなんだそうです。」
フォックにそう言われ会話内容を思い出しながらそう言ってくる。
「なるほどね」
「確か、かなり特徴的な狸獣人だよって言ってた感じですね…」
そう言いながら周囲を見渡して件の人物を探してゆく蒼剣。
「ってかどこにいんだよそいつ?」
「うーん、結構目立つようにしているって…んっ?」
蒼剣が何処に居るかと聞いてレイリュウがそう呟くと会場入り口で何から騒がしくなってきた。
「何、あの人…」
「この暑い中であの服装って…」
「警備の人はどうしてんだ…?」
他の観客がざわついて居る中でその狸はロングコートを深く着ており、誰かを探しているかのように辺りを伺っていた。
「なんだあれ?」「さぁ…」
「…あっ、みーつけた!」「…ふぁ!?」
フォックとレイリュウがその狸に怪しんで近づくとその狸がその二人に気がつき羽織っていたコートの前を開けて彼らに見せた瞬間、コートの下が全裸であることが判明してしまった。
「んはっ、むじなくん…」
「んっ、どうかしたのかい?」
準備室にて廻しの確認を行っていた龍狼とトタチであったが突然トタチがそう言ってきたのを聞き龍狼はそう呟く。
「うん、一応知り合いなんだけど……こんなところでハダカになっちゃだめでしょ!」
「ま、マスター流石にこのお姿は…」
「確かに君その姿で来たら逮捕されるよ?」
準備室にて取り付けられている外の様子を見せるマジックミラーに写るむじなの姿を指差しながらトタチがそう龍狼に伝え、レイリュウが自身の人選がまずかったのではないかとフォックの方へと向くと彼は即忠告してきた。
「ちょっと待って、ぼくはただ下半身を露出させてると何か興奮することに気がついただけなんだ…」
「それどこぞの変態熊みたいなセリフだよ?」
「…それを人前に見せるのはアカンでしょが!」
むじながその様な良いわけをするとフォックが軽くツッコミを入れ、口調が少し崩れてしまいつつもレイリュウが徹底的にむじなが着てたロングコートのボタン全部を付け直した。
「そんなぁ、もっと見てもらいたかったのに…」
「おいおいそれは流石に引くぜ」
「…取り敢えず、別室に送ってこの大会の事を伝えて準備させとかないと、あぁ…人選おもいっきし間違えちった!」
ロングコートを強制的に閉められてしまいアスキーアートに出てくるショボンの表情を浮かべるむじなを前に蒼剣は呆れて変な汗を流してしまい、レイリュウは自身が考えていたプランが根本からへし折れてしまったような感覚を味わいつつ、むじながいきなりコートを開けてしまった事で様々な反応を見せてしまっている会場入り口から彼を別室へと連行していった。
[newpage]
「えー、皆様、大変長らくお待たせいましました。これより相撲大会を開催いたします!」
会場入り口で巻き起こったむじなくんによる騒動で弱冠ギクシャクした空気を醸し出していた所に司会者がその空気を払うように少し空元気気味にそう言ってくる。
「お、始まるようだな」
「よっと、ヤバめだったけど何とか間に合った!」
蒼剣がそう呟く中、相棒への最大限の応援の準備の為に遅れそうになった風狐がようやく到着した。
「風狐君じゃない」
「遅かったなどうしたんだよ?」
フォックと蒼剣が遅れて来た風狐に気になって声をかけてくる。
「あー、すまん…少しこれの仕上げにちょいと時間かかっちまってね…」
そう言って風狐が持ってきたバックの口を開けて龍狼の心に強めの一発を与えてくれる『ある物』を見せる。
「ん?それは?」
「恐らく相棒はどんどん勝ち進めていって決勝にまでゆくことに成るだろ、それか強敵が出てきて苦戦することに成るだろう…その時にこれを見せれば…相棒の精神が前向きに行くと思う!」
「それでは、選手の入場です!」
フォックが気になって風狐に聞いてくると今の龍狼の中にある魔力を変化させる為の飛びっきりの精神にきく物であることを伝えると司会者が選手の紹介を始め出す。
「なるほどな、さて、あいつがうまく決勝まで進めるか見せてもらうぜ」
「そうだね、先ずは其処から…」
そう呟いて蒼剣と風狐は龍狼を見守る。
「…うおぉ、マジで土俵に立ってるのか…!」
一方龍狼は、始めて土俵に上がった事による緊張が強くそれどころでは無かった。
[newpage]
「先ずは、今回の大会の優勝候補の方である熊鋼月ー!熊鋼月ー!」
司会者がそうアナウンスするとかなり大柄の熊獣人が出てきた。
「来たよ、熊鋼月。」
「こりゃあ今回の大会もアイツになるのかな…」
「確か、熊の大とは兄弟弟子で中々の実力者何だっけ?」
「あぁ、あの掌での連続張り手を食らったらいくら強かろうと…おぉ、考えたら寒気がする!」
(…ふむ、熊鋼月ってのが一番の相手になるのか…)
観客達の口々から発せられる話を聞いて龍狼は熊鋼月の方を見やると、当の本人は鋭いながらも落ち着いた目をしており他の選手達を品定めするかのように眺めていた。
「かなり強いな、前もこいつと同じ熊獣人だったしな」
「そうだったの?」
「まあな、俺が優勝したけどな」
蒼剣は前に大会で出ていた熊獣人を思い出し、風狐がその事について彼に聞くと蒼剣はそう言いながら鼻を鳴らしてみせる。
(さて、お前はどういくかだぜ龍狼…?)
(っと、相棒と蒼剣が来てくれてら…こりゃ手ぇ抜くわけにゃあいかないな…)
「次の選手は、色物枠ですかね。廻し取りのむじなー、むじなー!」
蒼剣と風狐がいる事を確認し今回の大会に息巻く龍狼とは別に、司会者の紹介が続きむじなくんの紹介に成ると観客の一部から様々な視線が当の本人に向けられてゆく。
「はいはーい、ふふっ…」
「うわ出たヤバそうなやつ。」
「確か大会前にどえらいことしでかしやがった阿呆だっけ?」
「アイツを選抜した野郎の気が知りたいね。」
「…うぅ」「大丈夫?」
「…これ以上の失態やらかさないで下さいよ…!」
むじなの登場に観客達の口々から出る反応に少しお腹を抑えるレイリュウにフォックがそう聞いてくると、少しにやついたむじなくんを見て絞り出すようにレイリュウがそう呟く。
「これは逆に不安になるわね流石に」
「がんばるぞー!」
流石のフォックも不安に思えている中、一応普通の挨拶をしたむじなを見て少しホッと息を付く。
「さて、どうなるかだな」
「続きまして今大会に初参加、智月龍狼、智月龍狼ー!」
「はいっ…ドスコーイ、ドスコイっと!」
「…ほぅ」
蒼剣がそう呟くと、司会者のその声と共に龍狼が前に出てから様に成った四股を踏むと熊鋼月が少しばかり反応を示した
「ようやく出番だな、さて、練習の成果を見せる時だぜ」
「頑張れ龍狼ー。」
観客も少し興味を示した龍狼に蒼剣頷きながらそう言い、トタチの少しばかりの応援が出てくる。
「…以上の皆様をもって今大会の開催を此処に宣言いたします!」
今回の相撲大会の企画を立ち上げた梟獣人の宣言により観客の声援は最高潮となり、相撲大会の幕が開いたのを伝えるようになっていた。
「これはどうなるかね、智月大丈夫かしらね?」
「うおぉ、マジで始まるのか…頑張ラネェと…ん?」
フォックのそんな疑問が溢れる中、極度の緊張を感じつつも手を開けて握ってをしながらそう呟くと少し違和感を感じた龍狼。
「気合だよ、相棒?」
風狐が龍狼を励ましてあげる。
[newpage]
「さぁ始まりました、相撲大会!かなりの猛者達がここに集いました。優勝賞金と防具を手に入れるのは果たして誰なのでしょうか!」
マイクを片手に持って喋る細身の猫獣人が叫びだす。
「始まったね」
「そうですね、意外に参加者多いようですし、これは少し龍狼にとって苦戦が多く出そうですね」
客席のフォックとレイリュウがそう呟く。
「確かにな、だが俺がそうしたように龍狼だって」
「マジでやってっか…!」
龍狼は気合を入れて準備をする。
「それでは早速今大会の説明を致します!」
司会の猫獣人が大会の説明をしてゆき、そして大会が始まる。
[newpage]
「はぁっ…ふうぅん!」
「うおっ!」
「おぉっと、優勝候補熊鋼月があっさりと敵を下し2回戦へと進出!」
力ずくで廻しを持ち上げてそのまま土俵の外に吊り落としで相手を倒した熊鋼月、そのまま土俵を降りて控えの方に足を運ぶ。
「強いなあいつ」
「蒼剣でも手を焼きそう?」
食いながら見ている蒼剣に対し風狐がそう聞く。
「どうだろうな、だが手を焼くだろうな」
「…あれが優勝候補の実力」
蒼剣がそう答えている中、控え室では龍狼が熊鋼月の実力に、ほんの少しの武者震いを感じる。
「龍狼選手、準備お願いします!」
「あっ、は、はい。…兎に角今は目の前の試合に集中するか」
今考えても仕方ない、そう判断し準備していってゆく。
[newpage]
「さて1回戦は残り2試合、次の試合の対戦。まずは今大会初の一人目の参加者、龍狼!」
龍狼が現れ土俵へと上がる。
「いよっ、と…さて、最初のお相手は…」
「ほお、お前が俺の対戦相手か」
龍狼の最初の相手は象獣人であり種族からかかなりでっぷりとした体型で筋肉もかなり張っている。
「せいぜい俺にやられる覚悟はしておくんだな」
「相対するは力の権化、剛象!」
そして相手である剛象が土俵へ上がり双方、互いに土俵に立って構える。
「ではみあって、はっけよい…のこった!」
そして行司の合図と共に戦いが始まる。
「オラァ!」
剛象の強い張手が龍狼を襲う。
「フヌッ!」
龍狼はそれを受け止めて反撃への瞬間を待つ。
「オラオラァ!守ってばかりでは勝てんぞ!!」
「ヌググっ」
更に強い張り手が龍狼を押し出していく。
「そろそろ終いだ!!」
強力な張り手が龍狼に来ようとしていたその時。
「そこっ!」
「なにっ!?ぐおっ!?」
龍狼は隙の大きい張り手を見抜き張り手で返して剛象の態勢を崩す。
「ふんっ、そぅらっ!」
「ぐあっ!?」
態勢が崩れて一瞬の隙が見えたのを見逃さず龍狼は四つに組んでから上手投げを決め剛象をそのまま土俵の外に落とした。
「上手投げ、上手投げ!」
行司がそう言って龍狼の勝利となった。
「くそ~!」
悔しがりながら剛象は控え室へと去ってゆく。
「おしっ!」
(良かったぁ…見抜いてなかったら勝てなかった、これも蒼剣が色々と教えたからだな)
蒼剣のガッツポーズを見ながら龍狼は少し冷や汗を出してそう思った。
「さてここからよね」
「彼がどの様な戦法を繰り出すのやら…」
フォックが呟きレイリュウがドキドキする中、龍狼は土俵から降りて控え室へと向かっていった。
[newpage]
「1回戦お疲れさん」
控え室に待機していたトタチと共に蒼剣、風狐がやってきた。
「風狐、来てくれたのか。」
「相棒の初舞台だからね、応援にしに来たよ?」
「調子はどうだ?」
「不調無く大丈夫だよ」
蒼剣が龍狼の調子を聞いてくると身体を少し動かして確認した彼が答える。
「そうか、ここから段々強い奴もいるから気をつけろよ?」
「アドバイスあんがと、ところで次の試合の人についてだけど…」
蒼剣のアドバイスを聞きお礼を伝える龍狼がついでのように次の試合について聞いてきた。
「おう、次の試合か」
「トタチは一方の選手の事を知ってるんだよね、どういうやつなのか教えてくれるかい?」
その龍狼の疑問に三人共にトタチの方を見る。
「うーん、むじなくんねぇ…とにかく脱ぎたがりと言ったらいいのかなぁ…?」
「…もしかして、日常的に脱いでるって感じなのかい!?」
「それ一番アカンやつじゃねぇかよ!?」
「そうなんだよねぇ…たまに警察のヒトに叱られてるんだ…」
トタチのその発言に風狐と蒼剣が嫌な予感を感じてそう聞いてくると肯定するようにトタチは頷き警察にもやっかいになっていることを教える。
「そりゃそうなるわ!!」
「…俺ぁ、この大会が大荒れしないか不安に成ってきたよ!」
更に蒼剣がツッコミを入れ流石の龍狼も相撲大会に支障起きないかと不安に成る中、次の試合の準備が完了しようとしていた。
[newpage]
「さて1回戦も残すところ後1試合。1回戦最後戦、まずは今大会初の2人目の参加者、むじな!」
司会者の紹介と共にむじなくんが廻しを付けて登場する。
「がんばるぞー!」
「ホントその顔で何やろうとしてるのか怪しさマシマシですね…っと、続きましては…」
「いぃ、よいしょう、よいしょう!」
むじなくんが怪しげな笑顔を見せてるのを司会が冷や汗を出しつつ次の選手の紹介に移ろうとするとそれなりの体格をしたシードラゴンの要素を持った力士が入場してきた。
「あら、いいオスドラ♪」
「こ、これは中々…」
「相対しますは蓮蛇選手、彼の華麗な足払いは振られた際による成果との事です!」
龍人であるのを見て目付きが変わったフォックとほどよく鍛えているのを理解したレイリュウがそう溢すと、司会者の説明が始まり足払いについてを触れられるとドッと会場に笑い声が響き当の本人はずっこける。
「ぶれっ、っと、おいナンゴ。余計な説明すんじゃねぇ!」
「ウルヘー、振られたからって此方も巻き込むんじゃねー!」
「ぬ、ぬぐ…」
「後でモフモフ確定ね」
「あ〜あいつ終わったな別の意味で」
「あー、確かに…」
(ふふふ…)
「むじなさん、あの人にどエライことしないよねぇ…?」
プライバシーに触れられた蓮蛇選手が司会に食って掛かるも反撃するように司会者に迷惑かかったことを言われ口ごもってしまう彼を見てフォックが舌なめずりをし、蒼剣と龍狼が蓮蛇選手の末路を感じとり、レイリュウは心の中で笑い声を出してる雰囲気のむじなを見てそう呟く。
「あ、あの子変なことしたら…オスドラの事をたっぷりと教えておかないとね~」
「あいつマジでフォック怒らせることしたら大変なことになるな絶対」
「だな、怒った時のフォックはホント怖い…くわばらくわばら」
むじなの様子に気づいたフォックが彼がやること次第で凄い目に合わせようと考え、蒼剣と龍狼が今までの事を思い出して少し震える中、蓮蛇とむじなが土俵に上がる。
「ではみあって、待った無し…はっけよい…のこった!」
行司の声によって両選手構え、合図と共に試合が始まった。
[newpage]
「せいやっ!」
「先手必勝!」
攻めに掛かったむじなを見て蓮蛇はそう言ってむじなをがっぷりと掴みかかる。
(うぉあっ、強いなぁ……でもボクにはとっておきのアレがあるっ!)
「おっ、お相手さん四つに組み掛かろうとしている…むじなくん形成不利じゃないかい?」
控え室からむじなと蓮蛇の試合を見ていた風狐がその様なことを言ってくる。
「なんかどうもな」
「ん、なにか気になってるのか?」
少し気になっている表情と成っている蒼剣を見て龍狼が聞いてくる。
「不利になってるように見えるがなんか嫌な予感がすんだよ」
「んっ、どういう事だ?」
むじなの不利な様子に嫌な予感を感じる蒼剣にそう聞いてくる風狐を尻目に試合の方に進展が出る。
「ふんっ、ぬぬっ…!」
「くっヤバい、こうなったら…!」
廻しを掴んで土俵の淵ギリギリまで追い込んだ蓮蛇選手にむじなはそう言って行動を起こし始める。
「あいつどうするつもりだ?」
「ま、まさかどえらい事を…?」
フォックとレイリュウが土俵の上で行動し始めてきたむじなを見てそう呟く。
「必殺!もろだし!」
「やばっ!?それやべぇだろ!?」
「ちょ、ちょっと!?」
蒼剣とレイリュウが各々叫ぶ中むじなは蓮蛇の廻しの端を掴むと思いっきり引っ張った。
「あ、あららぁー!?」「どうだぁー!」
むじなに廻しを独楽紐代わりに使われてしまい蓮蛇は土俵の上で独楽の様に回ってしまう。
「やりやがった!」
「こっちもやばっ!?」
「・・・・・・」
控え室で見ていた龍狼が叫び蒼剣がそう言っている中、フォックは黙っているがものすごい怒りのオーラが出てきていた。
「馬鹿!?」「…むじなくん。」
蒼剣が叫び、片手を顔の前に触れてレイリュウがむじなに向けてそう呟いた。
「ほえ?」
レイリュウにそう言われ自身の身体を見てみると、廻しの巻きが甘く蓮蛇の掴みで弛んでいたそれが見事に落っこちてしまっていた。
「あっ…」「…不浄負け、不浄負け!!」
むじなが顔を赤らめる中、行司に思い切りそう叫ぶように言われてしまい強制的に両選手土俵から追い出されてしまった。
[newpage]
「ぐすん」「君、ちょいといいかしらね?」
土俵上で情けない負け方をしてしまい控え室にてへこんでいるむじなの元にフォックがやってきた。
「あれ?」
「ちょいとばかりOHANASHIしようか?」
笑顔だがフォックの目は笑っていなかった、むしろ怒りのオーラがダダ漏れしているを起こしており、ガシッと嫌な汗を出しているむじなを掴んでそのままどこかへと向かったのであった。
「…キュウ」「う、うぅーん…」
傍らに選出したむじなくんの失態っぷりに意識が飛んじゃっているレイリュウと目を回した状態で更にモフモフされて伸びちゃっている蓮蛇を連れて。
「ったく、フォックはちょいと席外しているから戻らないだろうな」
「あーあ、むじなくんどうなっちゃうのかな…?」
部屋から一旦出てむじなとフォックの一部始終を見終えた蒼剣と風狐がその様な事を話し合う。
「とりあえずむじなって奴はフォックに任せて俺らは龍狼の応援だ」
「だね…っと、トタチの為に飲み物用意しとかないとな」
蒼剣と風狐はそう言って頷き合い、龍狼への応援とトタチへの差し入れを用意し始めて行く。
[newpage]
それから次々と大会は進んでいって、龍狼も次々と勝ってゆく。
「勝者!龍狼!」「よし…」
「これで決勝に駒を進めたのは龍狼、そして熊鋼月の二名。決勝は30分後に行います!」
龍狼は試合の相手と握手してから控え室へと向かう。
「お疲れ、ついに決勝だな」
「おっ、蒼剣と風狐来たんだな?」
控え室に蒼剣と風狐がやってきた。
「はぁ、負けちゃった…」
「まぁ、始めてだったから仕方ないでしょ?」
元々控え室にいたトタチに暇なときに楽しめる物を教えていた風狐がそう言ってくれる。
「まぁ……でも悔しいなぁ」
「しゃあねぇよ、だが負けてもそこからまた強くなればいいぜ」
「うん、またがんばるっ」
「ふう~、苦戦したが決勝までこれた…」
蒼剣はどっと疲れたのか椅子へと座る、激しくやったためか息が荒く、さらに汗が滴り湯気が出てくる。
「まさかここまで来るとはな~」
「相棒ほんと凄い大連勝だね…っと?」
龍狼の戦歴に舌を巻いた風狐の後ろにあったドアからノックの音が聞こえる。
「なんかノックしてるが誰か来てるぞ?」
「そんじゃ、僕が開けときますねー…っと」
蒼剣がノックしているのを伝え風狐がドアを開けてみると其処には熊鋼月が立っていた。
[newpage]
(あいつは優勝候補の)
「…宣戦布告しに来たのか?」
「…君が試合入りの際に興味をもったのだが、熊の大を下した貴方が師匠であったのか。ふふっ、数奇な定めよ…」
蒼剣が龍狼と熊鋼月の姿を見ている中で宣戦布告かと感じた龍狼がそう聞いてくると当の本人は龍狼の方に興味がある事を伝えつつ弟分である熊の大を下した蒼剣の方にもそう言って向いてきた。
「あいつと知り合いかよ」
「あぁ、少し天狗になっていた彼を叩きのめしてくれた貴方が鍛えていたのなら、少しは歯応えがありそうだな…」
(なんかあいつとは真逆な感じだな)
「…つまりあれか、俺は蒼剣の前座って事なのか?」
「その通りだな…まぁ、君を叩きのめしたら次は貴方もお相手してあげようではないか、ハッハッハッ!」
弟分を下した蒼剣が龍狼を鍛えているのを理解し、次の試合にて龍狼を倒したら蒼剣も相手にしてやる事を伝えて、熊鋼月は大笑いしながら部屋を出ていった。
「俺も相手するのかよ、龍狼、これはあいつ全力で倒すしかねぇな、舐められたままじゃ終われねぇし」
「…だな、あぁいうタイプ真っ正面から叩きのめしてやらんと此方の気が済マナイ!」
意気揚々と引き上げた熊鋼月が自分にも標的にされているのを知った蒼剣はそう言い、龍狼は拳を掌に叩き込みつつ声に乱れが生じる。
「だが落ち着くことも大事だ、あいつの挑発にのってしまえばそれこそ勝てねぇしな」
「ンオッ、ト…そうだね、闇雲に向かっていったらヤバイね…」
「相棒、最後まで応援してるぞ!」
蒼剣のその指摘にそう言いながら深呼吸をして落ち着かせにゆく龍狼を見て風狐はそう言ってサムズアップをする。
「だからこそここまで来たんだろ?胸はって全力で楽しんでこい!」
「アイッ!」
バシッ!と龍狼の背中を叩いた蒼剣とは別に風狐はフォックに例の『応援道具』を使った計画を伝えるために一旦部屋から出ていった。
「ふう~モフモフしてスッキリしたわ」
「おっ、お疲れさんフォック…彼らどうなったんだい?」
説教とモフモフをし終えて戻ってきたフォックを見つけた風狐はむじなや蓮蛇、レイリュウの姿がないのを見てそう聞いてきた。
「ちゃんと説教とモフモフしたわ、後はレイリュウに任せておいたわ」
「クシュ、あーくそぉ、埃っぽいからかくしゃみが出たよ…モオォ、旦那ったら本当に容赦ないんだからぁ…!」
フォックがそう呟く頃、モフモフされ過ぎて体型が標準に戻ってしまった蓮蛇を見ながらレイリュウは悲痛な声でぼやいてゆく。
「んで智月は決勝まで進んだようね」
「あ、あぁ、対戦相手の熊鋼月っての、蒼剣が相撲大会で戦ってた熊の大って人の兄貴分なんだってよ」
フォックが龍狼の進展を聞くと風狐はそれに答えつつ対戦相手の事を伝え始める。
「へえ~まさかのね、でも調子に乗ってると足元すくわれそうだけどね」
「そんじゃま、此方も準備に取り掛かりましょうかね?」
「そうね」
風狐とフォックは頷き合い試合の応援の準備を始めていった。
[newpage]
「ついに残す所決勝となりました。それでは選手の紹介と行ってみましょう、先ずは強烈な力で相手を圧倒する熊、熊鋼月!」
勢いよく熊鋼月が現れ土俵へとゆく。
「それに相対しますは耐え抜いた腹と鍛え抜かれた筋肉で此処まで来た鱗の狼、龍狼!!」
その後に龍狼が土俵へと上がってくる。
「さて、ここまで来たけど残念だ、すぐに終わらせてあげよう」
「大層な勝利宣言じゃあないか…そいつは勝ってから言うもんだぜ?」
熊鋼月の挑発に龍狼は上手く言い返し不動の姿勢で構える。
「言うね、だが勝つのは私だ、私に勝てた者などいないのだから悪いが君を糧にしてあの蒼剣という者と相手しなければならないのでな」
「それではお互い待った無し…みあってみあって、はっけよ~い…」
そう言いながら同じく構えた熊鋼月を見て行司が軍配を高く掲げる。
「のこった!!」
その合図と共に先に熊鋼月が迫って来る。
「ハアァ!!」
力強い突っ張りが龍狼を襲う。
「そらぁ!」
「!?」
それに対し龍狼は同じ突っ張りを放ち手と手がぶつかり合う。
(なっ!?だがまだだ!)
「おらあぁ!」「ぬっ!?」
少し驚きを隠しながらも掴もうとしかけた熊鋼月の腕を逆に掴み返してきた龍狼。
そしてそのまましっかりと熊鋼月を龍狼は押し出しゆく。
「ぬおおおぉ!!」「ぐおおっ!?」
しかし熊鋼月は負けじと粘る。
「ぬ、ぐうぅ…」
重量差があるのか熊鋼月を最初どんどん押し出していた龍狼が、段々遅くなってゆく。
[newpage]
「ちょいと智月がやばいわね」
「体格差もあるみたいだからな、龍狼マジで負けるなよ」
「そろそろ、アレ使う所か…フォックさんこれを…」
フォックと蒼剣が見守っている中、風狐は前もって用意してきた『ある物』をフォックに渡す。
「これは?」
「これを、負けそうに成っている龍狼に思いっきり見せさせて彼の心に強烈な一発おみまいしてください!」
蒼剣のその疑問に答えるかのようにフォックにそう伝えた風狐がその瞬間を伺う。
「これを見せればいいのね、やってみる…智月!!」
「ぐっ、ぐぐぐ…フォ、フォック!?」
熊鋼月の体重に動けなくなってしまう龍狼であったがフォックの呼び掛けを聞き取りその方向に向いたのを確認しある物をかかげる。
「これが目に入らないかしら?ここで負けてもいいの?」
フォックが龍狼に見せたある物とは
『人間つまづくのは恥ずかしいことじゃない!立ち上がらない事が…恥ずかしいんだぞ!』
そう達筆で書かれている段幕を龍狼に見せるトタチと風狐。
(はっ…そうだ、俺ぁ躓いたマンマうだうだして同じ視点で立ってなかった…だから…だからこそ!)
押し出していたのを掴む姿勢へと瞬時に切り替えた龍狼。
「んなっ!?」
「俺は越えてゆくんだああぁ!!!」
そう龍狼が叫び差し手を返して、熊鋼月のわきの下からすくうように投げた。
「ぐうおっ!!?」
突然の戦法の切り替えに熊鋼月は反応しきれず強めの振動と大きい音と共に土俵から出る形で横に倒れていった。
「…はっ、掬い投げ、掬い投げぇ!!」
「…ゆ、優勝は、智月龍狼だあぁ!!!」
一時期会場の空気が止まったかのような雰囲気を出す中、行司が真っ先に試合の決まり手を伝えそれに答えるかの様に司会者がそう叫ぶと、会場は大歓声を待ち起こした。
「やったな龍狼」「やるじゃん智月!」
「…へへっ」
蒼剣とフォックが喜ぶなか龍狼は自分の鼻を少しこすって良い笑みを自然に出せていた。
[newpage]
「…どうやら、私の方がまだまだだったようだな?」
「…相撲の道ってのは、まだまだ奥があるってことさね、立てるか?」
「ありがとう、どうやら私はまだまだ修行しないといけないようだ、君を甘くみてしまった私の敗因だな」
「ふふっ、どういたしましてと言っておこうか…!」
横たわっていた熊鋼月に手をさしのべ、起こすのを手伝ってあげる。
「フッ、修行し直しだな、ではな、智月龍狼君」
「…弟分の事も頑張れよー!」
そう言って去ってゆく熊鋼月に向けてそう叫んだ。
[newpage]
「ふう、なんとかなってよかったわ」
「だねぇ、魔力も龍狼のに成ってくれてる…」
その様子を見ていたフォックと風狐は龍狼の中にあった魔力が彼の特徴を持つ特製の物へと成っていることに一安心した
「どうやらそのようね、魔力も智月になってきてるわ」
「フォックさんに対する罪の意識も何とか拭いきれたみたいだし、結果は上々…っと!」
「あら」
「ふっふー、あの状態ならもしかしたら…?」
そう言って龍狼の後ろ姿を見ながらある事を想定してゆく風狐にそんな声が溢れるフォック。
「もしかしたら?」
「…っと、今は相棒の優勝を祝おうじゃねぇか!」
「だな!」
「そうね、せっかく優勝したもの」
「んっ、ねぇ、三人とも、アレ…」
「ん、どうしたの?」
風狐、蒼剣、フォックの三人が祝う方法を模索する中、龍狼の姿を眺めていたトタチがそう言って指差す。
[newpage]
「それでは優勝した智月龍狼さんにインタビューしたいと思います」
「あ、あぁ、はいありがとうございます。」
其処には早速インタビュー記者に絡まれていた龍狼の姿があった。
「優勝した意気込みを!」
「此処まで来れたのは蒼剣さんのお陰で御座います!」
「なるほど、では最後にこの喜びを誰に伝えたいんですか?」
「うーん…今まで知り合った方々に、かな?」
「なるほどありがとうございました!ということで以上優勝した智月龍狼さんのインタビューでした!」
「っと、インタビューに応じてくれたお礼です此方どうぞ…」
「あ、ありがと…」
記者の後に続くようにスーツ姿の男性がドリンクを手渡してくる。
「さて智月のとこに行きましょう」
「…少し強引っぽくない、あれ?」
「ささ、遠慮なさらず思いっきり…」
「こ、此処でこれってのは…」
ドリンクを受け取ってからその様に勧められて少しタジタジになりかける龍狼。
「お~い!智月~」
「あ、皆、応援あんがとな?」
「んっ…ほほぉ…」
フォックからの声掛けに反応した龍狼がそう言い、しつこく絡んできた男はフォックを一見して納得するかのような仕草を取る。
「あら何かしら、しつこい男は嫌われるわよ?」
「あぁー、貴殿方が此処でこの様な事をなさっているとは露知らず…宜しければ皆様に御祝いをしてあげましょうか?」
男性がそう言いながら近くの似たような服装をしている集団に視線を移すと、一見穏やかで友好そうな態度であったが密かに此方に対して敵意を感じさせるような物腰を醸し出していた。
「インタビュー後にそういうのってないとは思うけど、あんたら何者かしら?何が目的?」
フォックの目つきが変わり集団を睨みつけてきた。
「あー、いえ、そのぉ…」
「おい、流石に不味いんじゃないか…」
「馬鹿言うな、あいつに何れくらい賭けたか忘れたか…!」
「あの蓮蛇を下した選手の依頼人ってあいつの事みたいだからな…これで更に公になる前に始末しねぇと…!」
「…ほほぉ?」
その様相に慌て出した男性とは別に、苛立ちを隠せない集団から小声が溢れており、その様子が気になった龍狼が耳を澄ますとその様な事を話していた。
「ばけのかわがはがれたみたいね、さしずめその飲み物に何かしこんであると見えるし、賭けするなんて…よほどお仕置きしないとダメね」
「ゲッ!?」「なっ!?」「馬鹿な小声だったぞ!?」
「あらら、馬鹿が引っ掛かった…」
フォックもその話を聞き終えてその様に言ってくるとそれに集団が反応を示してしまい風狐が呟いた。
「なんだって!」
「んじゃぶちのめしますか」
「っと、場所がこれだから大騒ぎすんなよ?」
フォックが指を鳴らし他の皆が戦闘準備する中、龍狼がそう言ってくる。
「じゃあ場所変えましょう」
ふとフォックはそう言って魔法で集団をどこかへ移動させた。
「あらま、風狐と蒼剣、集団連れてどっかに行っちゃったよ…」
その場に残された龍狼とトタチ。
「あれ、消えちゃった…」
「あーあ、フォックのお仕置きがおっ始めてるんだろうさ…っと、俺の手にはこれがあるだけど…」
トタチがフォック達が消えたのを見てそう言うと龍狼はそう言って集団の行く末に合掌をしてから男に手渡されたドリンクを見た。
[newpage]
そして移動した場所は暗くてそれはまるで宇宙空間のような場所だった。
「こ、ここは…!?」
「う、宇宙空間!?」「ひ、ひえぇ…」
「け、けど立てれる、って事は重力あんのか!?」
「ようこそお仕置き空間へ」
集団がそれぞれの反応を示す中、どこからかフォックの声がする。
「おぉ、結構凄い空間だね此処?」
集団達とは違い無重力状態で浮かんでいる風狐がそう呟く。
「我が空間でお仕置きされるがいい!」
そうフォックが言うとまずは隕石が集団に襲い掛かる。
『ぎょえぇー!!!』
あたふたし始める集団。
「ついでに炎のかたまりも追加でございま~す♪」
「追い討ちきたー!」
「あちち、かすった、かすったよ!?」
「ひえー追尾性あんのかよ!?」
更に炎のかたまりが隕石と一緒に振ってゆき、集団達は隕石や炎の塊にモロに当たらないように避けていってゆく。
「んじゃこれでどうかしらね」
「ノー!!」「ジーザス!」
「クソッタレ!?」「アバー!」
姿が見えないがフォックが黒い笑みを浮かべながら大きさ最大の隕石が集団へと降り注いでゆき、段々と隕石に命中して脱落していってゆく集団。
「さて最後は智月にやってもらわないとね」
「おっと、ようやく僕の出番ですかい?」
フォックが指パッチンすると風狐が無重力状態から解除されてゆく。
「そうね、ついでに智月でこいつらにつっぱりでやってもらうわ」
「おっと、此処での龍狼との連絡出来てないんだわ…まぁ再現って形には成るけど」
お仕置き空間内での連絡が出来ないことを伝えつつ風狐は自身の術を使ってあるものを再現してゆく。
「おけ、んじゃ頼むわね」
「任せとき…っと、さーてお前ら、覚悟は出来てんのか?」
「は、はわわわ…」「や、ヤバイ…!」
「た、助け…」「ど、どうか私共の謝罪を」
風狐が再現した『者』、それは大仏の様な大きさと成った龍狼の分身が大きく腕を後ろに構えている姿であり、集団が顔を真っ青にしてそう言ってしまうも。
「慈悲はないよ、んじゃ風狐君思いっきり♪」
「あいよ…釈迦の掌レベルででっかくなった相棒の突っ張りで、斉天大聖の様に吹っ飛ばされとけ!」
フォックの合図と共に孫悟空の懐かしい名前を言ってから風狐が龍狼が試合で出した速度と変わらないスピードで突っ張りをぶちこんだ。
『アベバアァ!!!』
「ついでに俺のもくらえ!」
さらに追撃で一緒にワープした蒼剣のつっぱりもモロに叩き込まれ集団はお仕置き空間をぶち抜き地平線の彼方の方まで飛んでいった。
「っと、フォックの旦那ありがとね?」
「どういたしまして、ただいまっと」
各々の一撃が決まったと同時に元の場所へと戻った三人は龍狼とトタチの姿が無いことに気付く。
「あれ?智月とトタチ君は?」
「あー、多分控え室の方なんじゃない?」
「んじゃ行きましょう」
蒼剣が周囲を見渡して二人が居ないことに気付くと風狐は控え室の方で待っているのではないかと推測しフォックがそう言って移動を開始した。
[newpage]
「控室…ここかな?」
「よっと、此処で彼ら待ってれば良いかな?」
時間は巻き戻り、フォック達がお仕置き空間へと言っている間に相撲大会の閉会式を済ませた龍狼とトタチが試合中使っていた控え室に入った頃になる。
「いやー、皆が行っちゃってる間に済んじゃったな…後で何か言われないよな?」
「あれ、フォックさんたちは?」
「まだ仕置きをしてってるんじゃない、っとあの時からこれ持ってるけど…」
フォック達がまだ控え室に来てないのをトタチが疑問に感じるとまだお仕置きをやっているのではと推論して椅子に座った龍狼がそう言ってあの男に手渡されたドリンクを見ていた。
「ん、その飲み物はなんだろ」
「やっぱし気になるよな…半分ずつ飲んでみないかい?」
トタチがドリンクを見てそう呟くと龍狼がそう言って提案してきた。
「気にはなるけど…大丈夫かな?」
「まぁ、半分飲むから効果も半減するだろうし、流石にど偉いことに成んないだろ?」
「それもそうだねっ」
「そんじゃまこのままこれ被って…大会優勝おめでとう!」
トタチが少しそのドリンクに不安がるも龍狼からのその考えに好奇心が勝って頷いて、それを確認した龍狼が部屋に置いてあった自身の帽子を被ってドリンクを二つに分けてからその様な掛け声を出した。
「かんぱーい!」「乾パーイ!」
トタチと龍狼、ドリンクが入ったコップを上手に鳴らしてから同時に飲んでいった。
「ごくごく…おいしーい!」
「んっんっ…ふむ、カルピコに似た感じの味なのか、案外悪くない」
飲んでトタチが直球な感想を言い、龍狼が味の詳細な感想を呟く。
「味は特に変じゃなかったねっ」
「だな…ケフッ、おっと失礼」
ドリンクの味に異常が無いのをトタチが言い龍狼がそれに頷きコップを置くと少しおくびが出てそう言ってきた。
「あれ?なんか違和感が……」
「だ、大丈夫か…ムッぷ!?」
お腹に何か違和感を感じたトタチが腹部に手を触れると粘性のある液体が泡をたてる音が聞こえ龍狼が無事かどうかと聞こうとするも急にお腹からまたおくびが出てきてしまう。
「むぐむぐっ、なんだこれは!?」
「お、お腹が膨らんできたぞ!?」
トタチと龍狼のお腹が膨らみだし驚きを隠さず声をあげる。
「わわわっ、やっぱり危ないものだったんじゃ!?」
「ま、マジかよ…ムムッグ!?」
ぷくぷくと膨らんでゆくお腹を見てトタチが危険性のある物だったのではないかと推定し龍狼がそれに少し焦りかけると更に体が膨らみだし頬まで膨らんできて驚き出す。
「もがもがっ、龍狼さんがこんなに膨らんでるっ」
「ムムップ、こう言うトタチだって…ムウゥ!?」
身体がドンドン膨らんでゆきお互いの状態を見ながら言ってゆくトタチと龍狼であったが身体が膨らんでゆく中、空中に浮かび出していることに気付く。」
「あれっ、ボクらが風船みたいになってる...」
「と、トタチ…大丈夫か?」
膨らんで浮かぶ中、トタチと龍狼がそう話し合う。
「うん、なんとか…」
「こっちも、これ以上の事は…」
「智月、いる?」
二人とも異常がないのを確認する中、控え室のドアからノックの音ともにフォックの声が聞こえた。
「んっ、二人とも、大丈…ぶっ!?」
「って二人共!?」
「膨らんでるぞ!?」
反応が少し怪しく感じ風狐がドアを開けて確認をしようとすると膨らんでいた二人を見て驚愕の表情を見せた風狐、フォック、蒼剣。
[newpage]
「…それで、あの男から貰ったドリンクを半分こにして飲んじゃったらそんな状態に成ったと」
「う、うん…トタチ此処まで運ばされてどうだったかい?」
「び、びっくりしたぁ...」
蒼剣が龍狼とトタチがこうなるまでの今までの経緯についてを聞いてゆき当の本人達はフォックによって運び出された事について話していってきた。
「怪しい奴のドリンク疑いもせずに飲むんだから」
「とほほ....」
「少しはためらうことも考えて頂戴」
「すんまへん…」
これにはフォックも怒ってそう言われてしまいトタチと龍狼は少し渋い表情を浮かべる中、風狐とむじな君ショックから何とか立ち直れたレイリュウがコップに残っていたドリンクの残りを分析を始めていた。
因みにむじな君も巻き込まれる形で連れられていた。
「全く、怪しいドリンクあいつらに勧められて飲まないのを逆に飲むなんて、っとそんなこと言ってる場合じゃないわね、説教は後にして元に戻さんとな」
「大方、あいつらの野郎としていた事はあれじゃあないかな…自分達の予想とは違った優勝者をそのドリンクを使用して風船化、裏ルートを利用して何処かに売り飛ばすって感じじゃあないかな?」
フォックがそう言ってゆく中、ドリンクの成分を調べていた風狐が集団がやろうとしていた事を少し妄想を含めてそう言ってきた。
「でしょうね、ちょいと言葉加えておいて飲ませないようにすればよかったわ」
「あー彼奴らからもう少し聞いとけば良かったな…」
「…で、ボクはどうしてここにいるんだろう」
フォックがそう言うなかあの集団からあのドリンクの事を少し聞いておけば良かったと考える風狐と何故ここに連れられたのか冷や汗を出して困惑するむじな。
「とりあえず元に戻しましょう、レイリュウ、あのドリンクの成分わかったかしら?」
「うにゅにゅ…マスター、待っててくれますか、少し変な成分も含まれていて…」
むじなショックから立ち直ってはいるが少し口調が乱れかけておりフォックからの返答にそう答える。
「あら」
「ふむ、異世界の物質が含まれている可能性があるね…一部そう言うのが含まれてる」
その様子にフォックがそう呟くと同じパソコンを見ていた風狐がその様に言ってくる。
「異世界の物質ね、あいつら別世界のどこかの異世界の者達ということね」
「それかその物質を偶然に手に入れた奴らか…兎に角二人とも、少し待っててくれよ?」
「は、はーい」「おねがいだよ〜」
「んじゃ元に戻しましょうか」
膨らんでいる二人を見ながらフォックと風狐がお互い頷きあって準備をしていっていった。
[newpage]
「んで風狐君、どうすればいいのかしら?」
「うーん、まぁシンプルイズベストって考えで先ずは身体を押し込んで出させてみる?」
フォックから二人のガス抜きについてどうするかを聞かれ風狐は二人の身体を押して出してみる提案をしてみる。
「そうね、んじゃちょいと二人とも我慢してちょうだい」
「わわわっ‥?」
「えっ、ちょ…俺たちと同じ高さに成って何しようって言うんだ、わっ何抱きついて…」
「それっ、ギュウゥー!」
フォックがそれに同意し、風狐とフォックが各々トタチと龍狼と同じ高さに飛び上がったのをトタチが驚き、龍狼が突然抱きついてきたことにそう聞こうとした瞬間、風狐とフォックのガス抜きが始まった。
「オラァ!」「ふぐおぉ!?」
「おらぁ!」「むぎゅう!?」
[newpage]
「クオラァ!」「んぐうううぅ!!」
「うおらぁ!」「うわああああ!!」
お腹を圧迫させられてしまい声をあげていってしまう龍狼とトタチであったがお尻や口から出る様子がなかった。
「ふんぬうぅー…だあぁ、駄目だ全く出てこない!」
「はぁっはあっ…でないよぉ……」
「そう簡単ではなさそうね」
「ふぅ、ふぅ、出せれないとは…」
「こりゃ相当だぞ?」
「別の方法を考えるしかありませんね…」
体内の気体を出せない様子を見て風狐がしかめっ面を浮かべフォックは単純に出来ないと感じ蒼剣とレイリュウは別の方法が無いかと考えていってゆく。
「逆にこれを皮下脂肪か何かに変えるとかだったらやけど」
「それとは別のやり方で…ボーン、とか?」
「ん?意味的には骨みたいだけど」
「あー、そう言う意味でのボーンじゃなくてね…」
フォックと風狐が良い案を話し合う中、龍狼とトタチは少し寄り添って話を始める。
「どうしよう....?」
「取り敢えず、二人が良い案浮かんでくれるまでこの状態でも楽しむかい?」
「まぁ、ただまつのも退屈だし...」
「そうだ、アレやってみようか?」
待っているのに退屈を感じ始めていたトタチと龍狼は楽しむ方法を考える中、あることを思い出す。
「アレって…?」
「ほら、君がその姿に成ったのをフォックに見せたときの…」
「あの時のかっ」
「それって?」
「少しこれを飲ませれば何とか…って、二人とも、何やるつもり?」
龍狼とトタチが何かやろうとしているのを一旦地面に戻って計画を立てていた風狐とフォックに見られそう言われる。
「あー、ちょっとスライム姿に成ったこの子をフォックに見せた際にやったアレを…少しお気に入りに成っちゃって、トタチ準備良い?」
「いいよー。」
「ん?」「な、何をすんだ?」
「一体どうするのかしら?」
「それじゃ失礼して…アグッ」
フォックと風狐が様子を伺う中、龍狼はトタチの顔を飲み込み始めた。
「ゴォプ、グプッ、ングッ…」
膨らんでいたトタチの身体を飲み込んでいっている為、若干飲み込みにくく見えるも当の龍狼は気にせずにドンドン飲み込んでいってゆく。
「わわっ…!」
「相変わらず、上手くやっていってるね…」
その姿に驚愕の表情を見せるむじなと、相変わらず楽しんでいるのに苦笑いを見せる風狐。
「これは何が起きてるのっ!?」
「あー、初めて見るから仕方ないか…っと、トタチから最近の事は聞いてないのかい?」
「いや‥‥最近は龍狼さんのところによくいっていたから」
「あー、成る程…OK、此処まで至る経緯教えとくね?」
「ムゥグ、ギュプ、ンンッ…」
スライム姿のトタチが龍狼に飲み込まれていっている様を見てそんな声をあげるむじなに対しその様な質問を言ってきた風狐は聞いていない事を知りそれに理解をしてスライムトタチと龍狼の現在のやりっぷりに成るまでの経緯を、ドンドンとトタチを飲み込む影響で廻しが器用に外れていった龍狼を尻目に説明していった。
[newpage]
「なるほど、そんなことに」
「ふむ、ここからどうするの?」
「あー、飲み込みきるまで待ってる?」
「どれぐらいかかる?」
「まぁそろそろだと…ほら」
「ムップ、ンギュ、ンップ…ゲエェフ!!」
納得し頷いているむじなを見ながらトタチが飲み込まれきられるまで待つ事を決めた風狐に何れほどかかるのか蒼剣が聞いてくると風狐がそう言うと同時に同じドリンクで膨らんでいたトタチの身体を全て飲み込みきった龍狼の盛大なおくびが聞こえた。
「それでここからどうするかよね、どうするつもり智月?」
「お、お腹、パンパン…ふへ、ふへへぇ…」
「あー、フォック、いつもあれやり終えると膨らみきった身体に興奮しきっちゃってこっち見てくれないんだわ」
フォックが龍狼にこれからどうしてゆくか聞こうとするも膨らみきった身体をフニフニ触ってその感触に龍狼は痺れており、風狐はその様子に呆れつつもフォックにそう教えてあげる。
「ほお~太ることに興奮したか、太ってることが智月にはいいわね~」
「それお前が喜ぶ感じじゃねぇかよ」
「あー…膨らんでることに、興奮してるって方向なんだわ」
その言葉にフォックが龍狼が『太る事』に興奮していると理解し興奮し、それに蒼剣がフォック自身が喜ぶ事ではないかと呆れ、風狐は龍狼が『膨らむ事』に興奮している事だと訂正しておく。
「え~でもそれはそれで変わらないでしょうに、とりあえず後はどうするかだけど興奮してないでやっちゃったら?」
「まぁそうですけどね…っと、あんなにおっきくなったら想定してた方法で十分にガス抜きしきれるか…」
「?」「ん、どうしたのですかフォックさん?」
龍狼の興奮している事が変わってないことを理解し少し呆れつつもどの様にしてゆくかとフォックが聞いてくると、彼処まで膨らんだ状態だと当初想定していた方法ではガス抜きを仕切れないのではないかと風狐が考えかけると、その方法でフォックが変な表情を浮かべていたのを見てそう呟いた風狐。
「いやどうやってガス抜きするのか気になって」
「少しポーション使ってガスを増やして強制排出、って段取りです」
「ポーションを?あったっけ?」
「あの二人、他のやり方とかで楽しむ事とかもあるから多種類に渡る物用意してるんだ…んっ、むじなくんどうしたん?」
二人のガス抜きにポーションを使用する事を風狐が伝え、持っていたのかとフォックに言われると龍狼とトタチが今まで太ったり膨らんだり色々と楽しんでいた際に自身が作成した物があることを伝えてから懐から見せようとしていた所、先程まで龍狼の様子を見ていたむじなが変な表情を浮かべていたのを見てそう呟いてしまう。
「そういえば、これが…」
「ん、どうしたんだむじな?」
「これ、使えるんじゃないかな?」
「それって?」
むじながそう言いかけ風狐がそれについて聞いて見ると龍狼の状態を見て利用できないかと言ってきてフォックが詳しいことを聞き始める。
「君たちが言ってたポーションってこれのことかな?」
「えっ…なんで!?」
むじなが風狐の懐から取り出したのと同じポーションの容器を持っているのを見てそう叫んでいた。
「色々あって持ってたんだ」
「あっ、私がむじなくんとの契約をした際反古されるのを避ける為に前に風狐様からお渡しされた物を…」
「同じポーションか~」
むじながそのポーションについて説明するとレイリュウが約束の反古をされないように前に風狐から貰ったポーションを念を入れて渡した事を伝え、フォックと風狐が同品がある理由を知って頷いていった。
「なるほどね〜これならなんとかなりそうでいいのかな?」
「まぁ、そうですか…ね、ちょっと、龍狼の様子おかしくないですかね?」
そのポーションを見ながら上手くいくのではないかと風狐に提案すると龍狼の体がふるふると震えだしていることに気付く。
「こりゃ早くしねぇと龍狼大変なことになりそうだぞ?」
「む、ぷ、ぷ、プ、プ…!」
「あー、これちょっと間に合わないんじゃねぇか!?」
「破、裂、しチャ、ウ!」
「やばっ!早くポーションを!」「はいっ」
膨らみきった身体からやばげな音を鳴らしてゆくのを聞き冷や汗が出てくる一同。
「急いで!!」「それっ!」
ポーションを持ってむじなが思いっきり投げ、やばげな音を鳴らしていた龍狼の口内にジャストヒット。
「よしっ!」「間に合え…!」「どうだ!?」
皆が様子を見る中膨らみ震えだしていた龍狼の震えが一瞬止まった。
「やったのかしら?」「ど、どうなん」
「む、むぴゅっ!」
フォックスとレイリュウがその様子を見てそう呟きかけたその時、龍狼の口からそんな奇声に近い声を漏らした瞬間、部屋全体を揺らす程の爆発を引き起こした。
「わわっ!!」
「きゃっ!?」「うおっ!?」
「うわっは!」「あぼっ!?」
むじな、フォック、蒼剣、レイリュウ、風狐を巻き込んで部屋全体を大量の液体によって深緑に染め上げていった。
「げほっげほっ...」「汚れた・・・」
「マジで俺もだ」
「…あっ、危なかったですね、マスター…?」
咄嗟にバリアを張っておいたレイリュウと範囲内にいたフォックは無事だったが残った三人はモロにぶっ掛かってしまい汚れてしまっていた。
「ってか智月は?」「大丈夫かな…?」
「あー…深緑の液体が其処ら一帯中に撒き散らされてるから、判別が…」
「爆発多いわよもう、はあ~これ部屋綺麗にしないといけないだろうし」
部屋中液体によって染まってしまった状況を見ながら話してゆく中でバリアを解除し、捜索を始めるフォックはぶつくさ言いながら周囲を見渡し、レイリュウは懐から取り出したダスターを使って液体を拭いていった。
「まったくどこにいるのやら」
「えーと、これは中身無事、これは…中まで入りきって…えぇっ!?」
ビショビショに成ってしまった蒼剣が何処に居るのかぼやきつつ風狐が部屋内にあった物の無事を確認する中、深緑の液体が未だ大量にあった所に浮かぶように龍狼とトタチの姿を確認した。
「智月!?トタチ君!?」
「えっ、ちょ、ちょっとその姿って…!?」
「ごぼごぼ...」「ブクブク…」
蒼剣が浮かび上がっている二人の姿を見て引き揚げにゆき、風狐がそんな二人の姿を見てそんな声をあげた理由は二人の体が元の姿に成っていたからなのであった。
「あれ、戻ってる!?」
「ほんとだ!?元に戻ってるな」
「ど、どうしてそうなったんだ…!?」
むじなとレイリュウ、蒼剣が龍狼とトタチのその姿を見てこんな声をあげる中、フォックは無言で遠い方へと視線を動かしており、『彼』の事を思い出していた。
「まさか影の・・・でもそうしたら一体あいつらはなんなのかしら?」
[newpage]
「…罪悪一つ、祓われて、罪悪二つ、取り戻し…罪悪三つ、縁治して…罪悪四つにて贖罪を終える…」
何処かの建物の屋上、其処には『シャドー龍狼』が一角に腰かけており手元にあったソロバンを弾きながらそう呟いていっていた。
「…今の智月、体型元に戻ったのかしら、それとも太ってるのかしら?」
「い、一応元の体型に戻っておられておりますが…人間姿の状態になっており獣人姿はどうなってるか不明の状態だそうです」
「ふぅむ、とりあえず此処へ連れて成ってみたら?」
「いえ、むじなと風狐様がトタチ様と共に介抱されている状態に成っているそうですので…」
「無理そうね、とりあえず帰りましょうか、流石にこれ以上また余計なことになれば騒動が大きくなるし」
「了解です」
深緑のインクに染まりきっていた部屋の清掃を完了し、話し合っていたフォックとレイリュウはタンクに溜まったインクを運びながら自室の方へを帰っていった。
[newpage]
「とりあえず一件落着、かな?」
「ふうぅ…色々あったけどさぁ取り敢えず、おつかれさんかな?」
ようやく介抱から解放され優勝景品である鎧の状態を見ながら龍狼とトタチが話し合っていた。
「どれどれ……」
「見た感じ、太った体型用に調整されてるようだね?」
「そうだね、龍狼さんにぴったりかも?」
「いや無茶言うなよ、今の体型元に戻ってんだぞ?」
鎧の状態を確認し終えたトタチは龍狼にぴったりではないかと言ってくるが人間姿で元の体型に成っている龍狼がそうぼやいてしまう。
「あらら、失礼しましたっ」
「っと、この姿から狼の姿に成ってなかったな。確認ついでに成ってみるか…」
それを思い出し謝罪をするトタチに対し人間姿から狼獣人の姿に成ってないことを思い出した龍狼は意識を集中し始める。
「おぉ~」「ん…グッ、ルルゥ…!」
トタチが見ている中、龍狼は狼獣人の姿へと変わり始めていった。
「わぁ、いつ見てもドキドキするなぁ…」
「ンンッ…あんがと、よ…っと!」
変化してゆく様子を見ながらトタチがそう言い龍狼はそれに感謝を伝える。
「で、どうかな?」
「そろそろ…変化、し終え…ングブッ!?」
トタチは全身を殆ど変化しかけている龍狼に対しそう聞き、龍狼がそろそろ本来の姿に成ろうとしていた瞬間、ボコンッと急にお腹が膨らみ驚いた。
「わわっ!?」「ングッ、ムグムッ…!?」
その様子にトタチも驚く中、龍狼の身体は膨らみ出してゆき、粘り気のある液体が溜まってゆく音を立てて体毛越しに深緑が染まり出していった。
「あれ…?」
「ンンッググ…ぷはっ、こ、この姿って…」
身体の膨らみが収まり其処に立っていたのは『人狼』姿に魚類の特徴が混ざった上で緑色の液体を入れられていた最近の姿であった龍狼であった。
「シャケ…!?」
「ど、どうしてこの姿に成っちまったんだ…と、取り敢えずどうなってるのか確認しよう!」
「うんっ」
突然その姿と成ってしまったのを見て、龍狼とトタチ共に驚きつつどうしてこの姿へと成ったのか確認していき始める。
「何があったんだろう…?」
「さぁね…まっ、相棒に何か起きたんじゃねぇの?」
隣の部屋から聞き耳をしていたむじなと風狐はそう話し合いながらも、むじなに常識マナーを叩き込んでいった風狐であった。
[newpage]
その後、龍狼とトタチの調査の結果、龍狼の身体の状態について以下の事が判明した。
・龍狼が人間姿から人狼姿に成ろうとする際、自動的にこの姿へと成ってしまう。
・逆に人狼姿から人間の状態に戻る際は周囲に大量のインクを放出しつつも元の体型に成りつつ人間姿に戻れる。
・シャケの要素が含まれているが魔力は龍狼本来の物と成っておりシャケに侵食される可能性は無いものと成っている。
「ふむ…トタチ良いかな?」「うんっ」
「よし準備完了っと」「どうなるかな…?」
そして、最後の確認として龍狼とトタチは外に出てきており、現在龍狼は獣人姿で下着をつけた状態と成っておりトタチがその様子を伺っていた。
「ふうぅ…相撲の稽古以来だな、これ付けるの…」
そう言いながら手元にあるパイプのパーツに繋がれている筒状の物が付けられている金属製の海賊帽子の様な物を見ながらそう呟く。
「この前のだね」
「ああ、最初これ付けた時は大変だったよ…ンガッグ」
トタチにそう言われながら、帽子に付けられているパイプのパーツに繋がれている筒状の物を咥え込んだ龍狼はその場に座り込むと緑色の液体が筒状の物から染み出し始め、彼の口から喉を通って体内に入っていった。
「すっかり慣れちゃってる…」「ングッ、ングッ、ンンッ…」
トタチが手慣れている龍狼に呆れながら見てゆく中で龍狼が緑色の液体を飲み込んでゆくと、深緑のインクに満たさせれていた腹部が魚類の黒い鱗に覆われていき、両腕の方にまでゆくと指と指の間に出ていた水掻きの部分が伸び出し始めて鱗と共に変形してゆき、まるでヒレの様に逞しい両腕へと変化しきると共に両足の方へ向くと、両方の足が粘土に黒の着色料を混ぜ合わせる様に一体化し始めており、その足の形が整って肌であった鱗の色が染め上がりきり、魚類の尾鰭を持った尻尾と化し自身の頭に浮かんだのを器用に動きに反映させる部位へと化した。
「うわぁ...」「ングッ、ンゴゥ、ンガアァ…!」
トタチが変化してゆく彼の姿にその様な声を漏らす中、龍狼のお腹までも鱗に覆われて仕上げとばかりに彼の顔にも変化が起き出す。
魚類特有の鼻へ変わり始め筒状の物を噛んでいる歯が牙となり、喉にあたる声帯も変わってゆくのが漏れ出る声が証拠となり、耳が引っ込み消え帽子内部にある髪の毛が引っ張りあげられる感覚と共にそれらが赤い背鰭へと化し、狼獣人の時とは違うマズルへと伸びてゆく中で自身のその心は残っているのを証明するようにその『眼』だけは黄色のままであった。
「ひぃっ...」
「ンンッ…ンゴオォグウオオオオオオオォ!!!」
トタチがその変化ぶりに悲鳴が溢れると、緑色の液体の供給が止まり彼の身体に装備が付いてゆき、其処に鎮座するはオカシラシャケ『ヨコヅナ』並みに大きく膨らみつつもオオモノシャケ『バクダン』の姿へと成った龍狼の姿であり、その頭部からボムが生成さつつつあった。
「終わったかな?」「ンンッ…プハッ!」
変化し終えたのを確認したトタチがそう呟くと共に龍狼はその様な声を出しつつボムを出してしまい、トタチの前へと落としてしまった。
「わわっ、これは…?」
「ット、トタチソレニ触レンジャ…」
シャケと成った龍狼がそう言いかけるもトタチが初めて見たボムに突っついてしまい無慈悲にも爆発を引き起こしてしまった。
「ごほごほっ…ふぇぇ〜」「ダ、大丈夫カトタチ…」
ボムをマトモに食らってしまい深緑の液体まみれに成ってしまったトタチを見て龍狼がそう声をかける。
「うひゃあ、ヌルヌルして気持ち悪いけどなんとか…」
「ナ、何トカ…ンッ、トタチ足ドウカシタノカ?」「えっ…?」
液体の感触にその様な感想を漏らしつつ無事であるのを言いかけたトタチであったが、龍狼からのその発言を聞き自身の足を見てみると足の輪郭が蕩け出しており液体と同じ色に染まりつつあった。
「えっ、えっ!!?」
「カ、身体溶ケ出シテイルンジャナイカ!?」
トタチがその様を見て驚きを隠せずにいると龍狼がそう言ってきたのを聞き自身の体を見やれば彼の言ったように身体が液体と同じ色に染まりながら溶け出しておりその質感はさながら『スライム』の様であった。
「スライムになっちゃったってこと…!?」
「オ、オイトタチ…」
自身の体がスライムに成った事にそう漏らす様に呟き、龍狼はシャケへと成る際に一度脱いだ服からスマホのカメラを内カメラにしてからトタチに向けると、其処には龍狼と同じく最近の姿であったトタチの姿が写っていた。
「!!」
「オ、落チ着ケェ俺達…俺モ獣人カラ人間ヘト戻レタンダ、トタチモ何カシラノ方法デ戻レルト…」
その姿を見て声を失うトタチであったが、二人とも一旦落ち着かせる為に龍狼が言ったそれにトタチも落ち着きを取り戻し出す。
「は、はわわ…なんとかはなりそうなんだね…」
「アァ、ソウダナ…問題ハドウスレバ戻レルノカ…」
「「うーん…」」
何とか落ち着きを取り戻せたトタチが龍狼にそう言ってくるも、どの様な方法で二人とも元の姿に戻れるのか両者ともに悩んでしまう。
[newpage]
「龍狼さん、何か手段はないの?」「ソウ言ワレテモォ…」
トタチが龍狼に何か良い手段が無いかと聞いてみるも龍狼も良いアイデアが思い浮かんでない様子を見せて段々とトタチに苛立ちが出てくる。
「もおぉーう…!」
イライラを隠せずにいるトタチは龍狼のお腹を見てある事を思い付く。
「おや、このお腹…?」「ンンッ、ド、ドウシタンダ…?」
「このお腹を使えば…」「ナ、何考エテン…ンンッグ!?」
トタチのその言葉を聞いて何をしようとしているのか聞きかけた龍狼であったが、トタチのスライムの身体を飲み込まされてしまい中断せざるを得ない事になった。
「ということで、おじゃましまーすっ!」
「ングッ、ムググ!?」
トタチからのその声と共にドンドンとお腹の方へと入ってゆくのに龍狼はされるがままとなってしまう。
「これでなんとか…」「ムグッ、ンンッ、グムゥ…ゲッポ!」
無理矢理な形でトタチの全身を飲み込まされて仰向けに倒れてしまった龍狼の口からおくびが出ていった。
「どうかな?」「ド、ドウシテ俺ノ腹ノ中ニ…?」
お腹から聞こえるトタチの声を聴きながら龍狼はそう聞いてみる。
「確か前にもこんなことがあったでしょ、だから…」
「マ、マサカ…!」
トタチがそう言ってきているのを聞いて龍狼は嫌な予感を感じそう言いかける。
「どうにかなれー!」「ムグムググウゥ!?」
トタチが龍狼の身体に強めの刺激を与えて強制インク生成を引き起こし、龍狼の身体をかなり膨らましてみせた。
「わわわっ…」「グ、グムム、ムグウゥ…!」
トタチが入っている所にも大量のインクが流れ込みそれに漬かってしまったトタチの身体も膨らみだし、龍狼の身体を更に膨らましてゆく。
「むぐむぐ…」「ムグムグ!」
二人とも膨らんでいって身体の大きさがかなりのモノへとなってゆく。
「もごもご、ぶくぶく…」「ンンムッ、ムムゥッ…」
お腹の中でトタチが何とかしようと動き回る影響で龍狼の身体に刺激が出て当の本人を気持ち良くさせていってゆく。
[newpage]
「ムムッ…オ、収マッタ…?」「ふうっ…」
何とかお腹の動きが落ち着いてきたのを感じた龍狼がそう呟くとトタチの溜め息が聞こえる。
「どうなったかな?」
「ムップ…液体ノ様デモアリ固形ノ様デモアッテスッゴク変ナ気分…」
膨らんだトタチの体がお腹の皮一枚越しの状態に成っておりそれが龍狼にえもいえぬ感覚を味あわせていた。
「ふぁ~、ぼくもまた変な感じだよぉ…」
「エッチョ、マサカコノマンマ寝ル積モリナノカ!?」
お腹から聞こえるトタチの声が眠そうにしているのを聞き龍狼は慌ててそう聞き出そうとする。
「むにゃむにゃ…」
「ッテアァ、モウ眠リニ入ッチャッテ…!」
お腹の中で膨らみきったトタチが眠りに入ってしまいシャケと成っていた龍狼は仰向けのまま尻尾を振るかヒレをお腹にペチペチと叩くと反応はなく、膨らみきった状態のままその場にいる羽目に成ってしまった。
[newpage]
その後、遅いと感じた風狐とムジナによって発見されてからインクの追加供給をさせられてしまって大爆発を引き起こし、龍狼とトタチ両方共に元の姿に戻れる事を知ることに成ったことをここに記しておく
めでたしめでたし?