軍畑式サバイバル・ハック! ―無人島生活に必要なこと―
「参謀殿。お疲れではありませんか」
そう声をかけられて顔を上げる。海辺の砂浜。
視線の先には、白い獣毛が夕陽を受けてキレイな――サダヨシさん。
ビーチバレーをしていた後を、二人で片付けていたところ。
他の皆は食事の準備に取り掛かっている。
「えっ全然元気。ご飯も美味しいし。むしろ仕事してる時より良く寝てるかも」
「それは何よりです」
ちょっと冗談も交えてみたけど、これは真面目に受け取られたみたい。
サダヨシさんは大きく頷いて、シートや簡易ネットを丸める。
こちらの倍以上の荷物を軽々と抱えて、
「この生活も、はや何日……。自分では気付かなくとも疲れが出ます。意識して充分な休息を取ることが必要です」
サバイバル生活に必要なこと、その一。意識して休む。
さすが軍人さんらしいアドバイス。歩き出すその横に駆け寄って、
「サダヨシさんこそ疲れてない? 毎日あんなに働いてさ。ビーチバレーもするし」
毎日島を駆け巡っては、使えそうな資材を探したりバナナ(らしきもの)を運んできたり。バレーだってもはや日課。ボールを持って、遊びましょうと皆を誘う。なんなら一人でも飛んだり跳ねたりしている。ワンコ。
「体力には、自信があります」
フッと笑ってそう言うのは冗談か……うーん、これは本気か。
まったくの嫌味もなくそんなことが言えるのもさすがです。
「それに、ばれえは[[rb:別筋 > べつきん]]ですから」
「別腹みたいに言うのやめてー」
こっちはもちろん冗談だ。お互いに笑った。
一部の横文字にやたら疎いだけで、このヒトは別にゆるふわさんてわけでもない。
割と負けず嫌いだったり好戦的だったり。
その一方での天然ぷりや優しいところも、どっちもサダヨシさん。
そんなことがよくわかったのも、この急にやってきたサバイバル生活のおかげだ。
と、こちらの足が止まっていたことに気付いて、彼が振り向く。
大きな目をぱちくりして、
「どうしました」
「オレも、サダヨシさんくらい……は、全然ムリだけど。半分くらいでも体力あったら、役に立てるのに」
「参謀殿は、充分活躍されているかと」
「そうじゃなくてさ」
うまく言えない。なぜかぽろっと出てしまった心の内。
そんなこと言うつもりもなかったのに。夕陽のせいかもしれない。
サダヨシさんも足を止めて、こちらにまっすぐ向き直った。
沈む太陽の光を受けて、その瞳がきらきら光っている。
「もっと、皆様の役に立ちたいのですね」
「……うん」
この生活で身に染みてわかったこと。
力仕事や食事の用意とか。変身とかオペレーションとかじゃない……つまりもっとフツウのこと。そうしたことが充分にできているとは、とても言えない。
サダヨシさんは一つ大きく頷くと、こちらを促してまたゆっくり歩き出す。
「自分が何ができるのかを、常に考えるのです。誰かと比べるのではなく……」
それはまるで、自分に言い聞かせてもいるようで。
「サダヨシさんも、そういうこと、考える?」
「はい。私ももっと世間慣れできればいいのにと、いつも思っております。本当に」
「ええー? サダヨシさんが世間慣れしたら完璧になっちゃうし、オレがツッコめなくなっちゃうからダメですー」
「完璧など……。ですが――ええ。
それなら、貴方にもっとつっこんでもらうことにしましょう」
こちらを向く顔は優しくて。――その笑みは、個人的な種類のものだ。とても。
それが少しだけ、こちらの胸の奥にある何かを刺激する。
……面と向かって言うのはちょっと照れくさかったけど。
「サダヨシさん、あのね」
「なんでしょう」
「その。いつも優しくしてくれて、ありがとう」
大きな目がさらに大きくなって、何度も瞬きをした。
いえ、と小さく言って逸らされる顔。夕陽が眩しい?
「――俺は、貴方がいてくれるから……」
「え、なに?」
「なんでもございません」
波音にさらわれて、呟きはこちらに届かず消える。
でも、耳がぴくぴくっと動くのは見えた。そっちは見逃しません。
「うそー、何か言いましたよねー?」
「ひみつです」
「教えてー」
「ばれえで私から一本取れたら教えてあげます」
「絶対教えない宣言じゃん!」
「そんなことは。ばれえでなくとも構いませんよ」
今度は顔いっぱいのニコニコでそんなこと。くそう。誤魔化してる。
こういうところ、ホントに頑固。負けず嫌いの地が出てる。
ジト目で睨むと、サダヨシさんはこほんと咳払いをして、
「冗談はともかく……。胸の内を、外に出すのも大切です。特にこのような状況では。私なら、いつでも傍におりますから」
「――うん!」
サバイバル生活に必要なこと、その二。思っていることをちゃんと言う。
彼のふさふさした大きな尻尾が、機嫌良さそうにゆったり揺れている。
「しかし、ええ。参謀殿に心配かけてはいけませんね。
今日は、私も早めに休ませていただくことにします」
[chapter:軍畑式サバイバル・ハック!
―無人島生活に必要なこと―]
「お[[rb:二方 > ふたかた]]、それでは今日は先に休ませていただきます。お休みなさい」
「おやすみなさーい」
夕食後、火の番をしてくれている二人に挨拶をして、サダヨシさんとキャンプを離れる。無人島だからどこで寝てもいいわけで(贅沢な話)、キャンプから離れすぎない適当な場所を探して歩く。
夜の浜辺。波は穏やかだ。海の上には信じられないくらい大きな月。
思わずサンダルを脱いで波打ち際で遊べば、裸足の感覚が気持ちいい。
サダヨシさんは、付かず離れずの距離で見守ってくれている。
遭難してなかったら、かなりいいシチュエーションなんだけど。
「サダヨシさん、今日はゆっくり寝れるね」
「というと?」
「だってホラ! いっつもイサリビさんとユーハンさんに……その、抱きつかれて、寝てるし……」
そう言えば今朝もそんなだった。サダヨシさんは少しうなされていたりして。
なにより正直……ちょっとうらやましいのですが!
そんなこちらの内心はいざ知らずか、サダヨシさんは真面目に考える顔をする。
「お二人は……私のことを枕か、お座布団かなにかかとお思いのようで。いえ、まったく悪意も敵意もありませんので、どうにも……」
「サダヨシさんモフモフだからだよ」
「もふもふ」
「首の周りとかさ」
「――ああ、毛並み……。職務中にも、褒めて頂くことはありますが」
「軍でもそういうことあるの?」
「ええ。ただ、雑魚寝で抱きつかれるようなことはありませんね」
「そうなんだ」
「皆、死ぬほど疲れて泥のように眠っております」
「軍隊こわっ」
体力が、なんて言ったけどそうはなれないわと思う次第です。
あまり自覚はなかったのか、サダヨシさんは自分で首元の毛を引っ張ってみたりしている。
「もふもふ……お好きなのですか」
「アッはい」
「そ、そうですか」
即答したら若干引かれてしまったようです。いけないいけない。
その後、適度な茂みの奥を寝床にすることに決めて、
「木や枝で屋根を作りましょう。ここが常夏の星とは言え、風や夜露を防げないと体力を奪われてしまいます」
「そういうのも、軍隊で訓練するの?」
「ええ。過酷な状況を先んじて経験し備える。これが訓練の第一目的なのです」
さすが軍人さん、とか思ってるとサダヨシさん、ひょいひょいっと細いヤシの木の幹を蹴って飛び上がった。で、てっぺんからぐいーっと枝を引っ張って下りてくる。そのまま掴んだ二つの枝を結んで……簡単に屋根を作ってしまった。
「そうだ。喉が渇いているなら、ヤシの実、割りましょうか」
「そこらへんは、軍隊式じゃないよね……」
「?」
サバイバル生活に必要な……いや、これはサダヨシさんのフィジカルがないとムリなやつ。なんか不思議そうな顔してるけど!
そしてさらさらの砂地の上に、ビニールシートとタオルを重ねて完成だ。
アーチ状の屋根兼風よけが、秘密基地みたいでちょっと楽しい。
「寒くはありませんか」
「うん」
並んで腰を下ろせば、必然的に距離が近い。
こちらは借りた薄手のパーカーに、トランクスタイプの水着。
サダヨシさんに至っては身体にフィットしたパンツだけ。
露出した肌に時々触れる獣毛の感覚。
そうでなくても、ほんの僅かでも手を伸ばせば届く距離。
サダヨシさんは……軍人さんだから、そういうの気にしてないかもだけどさ。
「む、向こうの二人は、まだ起きてるかな?」
「おそらく。少しだけ、声が届きますから」
「ギアンサルとザニアは、今日はさっさと寝ちゃったね」
「無法者たちは、まったく……。――いえ。このような状況では、彼らとも協力する術を学ぶことも必要です。私は特に、あの手の[[rb:PC > ぴーしー]]スキルには疎いですから……」
サバイバル生活に必要なこと。その三。落としどころを見つけること。
で、そんなサダヨシさんが意識しているのは明らかに一人だ。
まあ、色々と思うところがあるのはわかるので。
フクザツな顔が面白くて見ていると、ごほんと咳払いをした。
「[[rb:彼奴 > きゃつ]]の話はいいのです。今、参謀殿と二人でいるのは、わ、私なのですから」
「あーやきもちだー」
「ね、年長者をからかうものではありませんっ」
「ごめんなさいー」
甘えるように言えば、すぐ、しょうがないなという顔で許してくれる。
たまに年上感出してくる、そんなところも、彼らしさ。
「サダヨシさんといると……安心する」
「それは」
「なんか、お兄さんみたいで」
「おに…………。ンン、二親等は些か問題がありますので。せめて、四親等で」
? よくわかんないけど頷いておく。
それで不意に会話が途切れてしまった。
お互い顔を見合わせたまま、しばし。
「や、休みましょう……か」
「は、はーい」
横になっても沈黙はそのままだ。
波の音だけが遠く、だけど、いやに耳について。
……そういえば、サダヨシさんとちゃんと二人きりになるのは、はじめて、かも。
変に意識したら、なおさら。――と、
「あっ――」
何も言わず伸びてきた大きな手が、こっちの手首を取っていた。
くっと引かれて――、抱き寄せられる。
「サ、ダヨシ、さん……?」
首元に顔をうめる形になって。モフモフっ……最高……だけど……。
――いいんです、か?
目線だけ上げて見れば、サダヨシさんはどこかに視点を固定したまま。
「寒くは、ありませんか」
「う、うん……あったかい、けど」
……さっきも訊きましたよ、それ。
「ひと肌で暖を取るのは、理にかなっています……から……」
「そ、そう……?」
サバイバル生活に必要なこと、その四。ひと肌で暖を取る……?
それって……雪山とかの話じゃないか、な?
背中と腰に、ぎこちなく大きな手が回されて。
サダヨシさんが無駄に身体を硬くしていることが伝わってくる。
緊張してるのはわかるんだけど……どうするんだろう。
と、ぎゅっと目をつぶった。
「お、お休みなさい」
寝るんだ!?
いやまあ、おかげであったかいし、目をつぶってしまえば……寝られる?
「……おやすみなさ、い」
喉の奥で、つっかえたように返事をする。
もちろん、それで終わることなんてなかったのだけれど。
[newpage]
目を閉じていても、息を殺していても、感じるものがある。
確かな熱を帯びた――大人の雄の匂い。
毎日しっかり水浴びをしていたとしても、身体から発せられるそれ。
“彼”を確かに主張するもの。
間近にあっても、全然嫌には感じなかった。むしろ……。
「――――っ」
……身体の向き、変えないと。こちとら健全な男子なわけで。
胸もお腹も、その下も。ここまで密着していると色々なものを感じてしまう。
それに、どうにかが無かったとしても、今のままじゃ寝返りも打てないし!
身をよじって、寝返り…………。
打てない…………。
打て……。
いや動けないんですが。
がっしり固められてます。いつの間にか足首まで絡められていて。
「え、待って寝技? これって寝技なんじゃ? 軍隊式? シメてます?」
応答はない。若干、生命の危機まで覚えて、
「サダヨシさんちょっと」
「…………。」
「ね、動けないんですけど」
「…………。」
「ウソ絶対起きてるでしょサダヨシさん!」
ようやくもぞもぞする白いワンコ、もといサダヨシさん。
「それは寝技ではなく関節技です」
「結果おんなじだよ!? なんでそんなことしてるの!」
「照れ隠しです……!」
「正直か!」
照れ隠しでシメられたらたまったものではないのですが。
サダヨシさん、こちらを見ないまま、
「あ、あまりその。動かないで頂きたく……あ、当たって、おりま、す……」
「…………!」
そんなこと言われたって! わかってますよ!
「じゃちょっと……離してよ」
「いやです」
「おおい!」
つまり……そういうことがしたいんじゃないですか! あなただって!
で、背中に回した手を離すつもりはないらしい。ホントに頑固。
それに人のこと言うけど――そっちだって、しっかり、水着の下……。
とはいえ力比べで勝てるはずもない。本当にびくともしない。このう。
もはやヤケで、思い切り首筋に顔を埋めてやる。モフモフ最高ッ!!
「参謀、殿……っ!」
大きく息を呑んで、白い胸が大きく膨れた。
抱きしめる力が強くなる。でも全く苦しくはない。
すごく気を遣ってくれているのはわかっているのだ。いつだって。
しばし耳元で、お互いの息だけが、ひどく荒い。
――さっきの会話と同じだ。またそこから動けなく……。
「サダヨシさん」
彼に、譲れないものや苦手なものがあることくらい、わかってる。完璧なんかじゃない。こちらから言ってあげること。たぶんそれも、いま必要なことなんだ。
「[[rb:する > ・・]]……?」
抱きしめる腕がぴたりと止まって。
それから。
彼はこちらの首筋に顔を埋めたまま、小さく、だけど――しっかり頷いた。
夜の海辺。さざめく波の音が、少し小さくなっている。
◆◆◆
手を伸ばして、彼の背中から腰に沿って指を這わす。
たどり着く水着のウエスト、尻尾の生え際。
「ここは、スベスベしてるね……」
「そこはっ、あまり外気に、触れませんから……んぁっ!」
声を上げて、サダヨシさんが背を反らす。
構わず指を動かせば、それに合わせてびくびく小刻みに揺れる身体。あ、ちょっとかわいい。
さらに悪戯心が出て、尻尾の付け根を掴もうとしたら、ぎゅっとされる。
「ダメっ。サダヨシさんダメっ。ぎゅっして動き封じるの禁止!」
「ぎゅっ禁止……」
「さ、参謀命令」
「なんと」
「ガマンして!」
「ご無体な……っ」
それでサダヨシさんは我慢モードに。
うん、ちょっと軍人さんの扱い方がわかってきたかも、なんて。
「さ、参謀殿はっ、んっ、大変経験が、おありで……百戦錬磨……あぅっ」
「いやちがいます百戦錬磨なんかじゃありません」
「自分はっ、自分は知識はありますが経験はありませんんnん!」
「なんの主張!?」
知識て。噛んでるし。
「なのに、その知識がっ、役に立たないのですっ、どうしたら良いのですか……!」
「そんな……の」
そんなの、心配してるんだ。……するか、サダヨシさんなら。
こちらのおでこで、おでこにコツンとしてあげた。
「思ったこと言えば、いいんでしょ。……好きな人と、してるんだから……」
「好きな――――そう、か。正直に……」
「うん……」
おでこをくっ付けたまま、彼は安心したように大きく息をついた。
そして、笑う。とても個人的な、あの笑みで。
「ほら。貴方は俺のできないことを、こんなにもできる。本当にすごい人なんだ」
「っ――」
「俺は知っています。貴方のこと、ちゃんと見ていますから」
そんなこと、いま言ってくれなくたって……。
悪戯心が引っ込んで、尻尾から手を離す。
思わず唇を寄せると――けどサダヨシさん、今度は慌てて身を引いいた。
「せ、[[rb:接吻 > せっぷん]]はっ」
「接吻」
「き、きすのことです……」
「存じております……ってかバレンタインの時はそっちからしてきたのに!」
「あれはっ、婚姻を前提としたお付き合いになるのかとっ」
「うん、[[rb:婚姻 > それ]]は、一旦置いとこ……」
もうこのヒトはホントに。
でもわかる。わかってる。
譲れないことや、すぐには変えられないこと。それを含めて、“らしさ”なら。
「世間慣れしたいって言ってたけどさ。サダヨシさんのそういうところも……好き、だから。いいよ」
「……参謀殿」
ふっと力を抜いたサダヨシさんが、改めてぎゅっと抱きしめてくれた。
お互いがお互いの首元に顔を埋めて。とても、あったかい。
大きな手が胸にそっと添えられた。
「では、その……俺からしても……よろしい、でしょうか」
「うん……」
そうして、タオルの上に仰向けにされる。
――サダヨシさん、馬乗りになってきた。やる気満々じゃないですか。
にしても太腿の筋肉、すごい。みっしりと肉が詰まってる感触。
大きな手が、パーカーのジッパーにかかる。
細かい動作が苦手なのか、ひどくたどたどしく、もどかしく。
それが逆に……劣情を[[rb:煽 > あお]]って。
バンザイするみたいに大の字にされて――脱がされた。
外気にさらされる肌。少し肌寒い……体温が上がってるせいだ。
彼が上半身を折って、胸、脇、首筋に、鼻をつけて匂いを嗅ぐ。
まるで本当に犬がするみたいに……いやらしい。
「んっ……」
耳に差し掛かった時、不意にちくっとする。
えっ……?
理解するのに、ちょっと時間がかかった。
――噛んでる? ……っ、また……。
「ね、ねえ……キスはダメなのに、[[rb:甘噛み > それ]]はいいの……?」
サダヨシさんは応えない。動きだけが止まらずに。
そんなの、されたことない。全然百戦錬磨なんかじゃないのに。
このヒトこそ、なんの知識をどこで仕入れてるんだか!?
恥ずかしさに視線を横に流せば、木陰の向こうに遠く、大きな月。
この状況、まるで――。
茂みの中で、獣に襲われて、貪られているみたい。
……っ、やばい。変なコト考えたら、ますます……。
身を硬くしたこちらに、彼はすぐ気づいたみたいだった。耳元に顔を寄せ、
「……跡にならないように、しますから」
低い[[rb:囁 > ささや]]きに、背筋から下腹部の深い部分にかけて、ぞくりと快感が[[rb:奔 > はし]]る。
……経験無いとか言っておいて。
本能的にこういうこと好きなんじゃん……。
じんとする頭。目を開けてられない。
ちくちくが続いてもどかしいのに、腰を、太腿で完全に固定されてる。
「――もうっ!」
がむしゃらに、彼の水着に指をかけた。
容赦なく――水着はきつく、どこかに引っかかったけど、一気に引き下ろす。
「んんっ……!」
呻きつつ、すぐに反撃に入るサダヨシさん。
身体を曲げ、器用にこちらのトランクスに足をかけて。
抵抗する間もなく、こちらも脱がされた。
「お行儀悪いよ……っ」
「いいのです……っ」
そうして、何も身につけない姿で、ただ二人。
四肢を絡め、敏感なところを擦り合わせて。
後頭部を、腰を、下腹部を、揉みくちゃにし合う。
でもキスしようとすると――、さっと避ける。そこは譲る気が無いらしい。
わかりましたよ、もう。そこが落としどころってわけで。
そんなことを、何回も、何回も繰り返した。
くしゃくしゃになったタオル。めくれ上がるビニールシート。水着は……どこかにいっちゃった。
砂にまみれることもいとわずに、二匹の獣がじゃれ合うように。
「うぅっ」
堪えきれなくなったような声を漏らして、サダヨシさんが半身を起こす。
茂み越しの月明かりを受けて、その身体は白く輝く。
こちらを見下ろす紫と青の瞳。映る複雑なハイライト。
視線は怖いくらいまっすぐ、同時にとても、[[rb:艶 > なま]]めかしくて。
手を伸ばして頬を撫でてあげると、目を細めて頬ずりする。
――このヒトも、そういう顔するんだ……。
「サダヨシさん、一緒に、して」
「はい」
両者の[[rb:屹立 > きつりつ]]したそれを合わせる。
サダヨシさんのそこも、綺麗な色をしている。
すっかり塗れた先端からは、いまだにぬらぬらした液体が溢れていて。
こちらの手を、白い大きな手が包む。
茂みの中、低く響く卑猥な水音。
ふたつの手の間に腰を突き入れる、剥き出しの本能。
ぎゅうっと、彼の身体中の筋肉が、引き絞られるのが見えた。
「イッ……参謀、殿――っ!」
「こっち、も……んんっ……!」
ぐっと持っていかれる感覚にひたすら耐える――って、ぅわっ……!
思わずビビった。すごい。
何がと言わないけど、こちらの顎どころか頬まで飛んできた。
急激な疲労もあって、荒い呼吸を繰り返すしかできない。
ホワイトアウトしかけた頭じゃ、全然現実に追い付けない。
サダヨシさんは……と見れば。
自分でもびっくりしたのか、硬直して今日一番目を丸くしてる。
「…………。」
「…………。」
目が合う。そしてしばし――あ、真っ赤になった。今、死ぬほど照れてますね。
そしてこちらが何を言う間もなく、問答無用で抱きかかえて。
「わっ、ちょ――」
「みっ水場へゆきますうおおおおおおおお!」
[[rb:照れ隠し > また]]か! とツッコむヒマすら置き去りの猛ダッシュ。
その首元に、こちらはしっかりとしがみつくしかなかった。
◆◆◆
「寒くは、ありませんか」
「うん。平気」
で、場所は少し奥まった木立の中にあった綺麗な水場に。
なんとなく無言のまま身体を洗ったけど、サダヨシさんは割とさっぱりしていたので、まあ良かった。
先に上がったこちらが見ているのを意識してか、背中を向けてぶるっと身を震わせて水を払う。やっぱりワンコ。
腰にしっかりタオルを巻いてからやって来る。
そしてちょっとの逡巡を見せてから、隣に腰を下ろした。
また照れてる。いいけどぉ。
「あーやっぱりー、寒いなー」
「はっ」
「ひと肌……がいいんでしょ」
「あっ。え、ええ……」
察して、おずおずとこちらに身を寄せてくる彼。
わかってました。そうなるだろうと思ってた。思ってたので。
だから。
近付いた時に――さっと顔を向けて、その唇にキスをした。
「――――」
完全にフリーズするサダヨシさん。
ふふふ、油断大敵。ちょっと嬉しくて笑みが零れてしまう。
「バレーじゃないけど、一本取りました! どうですか!」
口を何度もぱくぱくしてから――彼は観念したように笑った。
「……やられました。貴方は、本当に、負けず嫌いで」
「サダヨシさんには言われたくない!」
そう言い合って、二人して笑う。
そして――もう一度、キスをした。今度はちゃんと、舌まで絡めて。
……一本取ったら、どうなるんだっけ。まあ……いいか。
サダヨシさん、吹っ切れたのか、ちょんちょんと舌の先を触れさせてみたり、鼻と鼻を擦り合わせてみたりまでしてくる。
めちゃくちゃ練習&研究してる。知識欲旺盛なのはいいけどアナタ。
「キスしたかったくせに」
言えばすぐ、唇をつんとしてまた目をどこかに向けたりして。
はいこれ聞こえないフリ。聞こえないフリですよこれ。
ツッコんであげようとする前に――また、砂地の上に仰向けにされた。
優しく。でも有無は言わさない感じで。
「サダヨシさん……?」
「もう一度、しましょう」
「えっ……マジです」
「まじです。――したいのです。ダメ、でしょうか?」
「ダメってことは……でも明日、起きられるかな」
「起こしてあげます。寝坊しても構いませんし」
「だって、ほら、サダヨシさんだって……疲れちゃわない?」
応えてくる、無駄にキメ顔一発。
「体力には自信があります」
「知ってますよ!?」
このヒト、ホントに!
――いやでも、知ってはいただけだった。
彼の言葉を借りるなら、“知識はあったけど、経験はなかった”のだ。
つまりその。そのあと、ええと。……もう一回どころか、[[rb:何回も > ・・・]]。
月が大きくその位置を変えるまで、彼のその体力を、身をもって知らされることになったのだった。
……このヒト、ホントに!
◆◆◆
そんなで、翌朝こちらはもちろん寝坊した。そりゃもう盛大に。
サダヨシさんはと言うと、
「参ります! スパアアァァァイクッ!!」
……むしろ昨日より元気になってない? なんか毛並みツヤツヤしてるし。
轟音と共に砂浜に穴が開いてるし。ホントにビーチバレーかあれ。
そんな光景を木陰でぼんやり眺めながら思うわけです。
サバイバル生活に必要なこと。
色々理屈こねてたけど。
……やっぱり体力なんじゃない?
◆軍畑式サバイバル・ハック!
―無人島生活に必要なこと―
――了。