30cmの馬並み体育学生と雌に堕とされし逞しき獣たち

  

  目覚めるとまったく知らない天井に[[rb:五十嵐一馬 > いがらしかずま]]は固まった。

  柔らかなアイボリー色の天井には洒落た金属製のシーリングファンライトがゆっくりと回り、カーテン越しに滲む淡い朝陽を受けて鈍い輝きを放っている。いつもならそこにはチープな和風の四角い照明が吊り下がっていなければならないはずで、天井も安アパートにお似合いな木目調プリントの化粧合板でなければならなかった。

  瞼を開けてからまだ一分と経っていない。

  はっきり覚醒していない濁った意識でどうにか安堵できる材料を視界の中に探すのだが、それらしい物は見当たらない。やけにシックな壁紙、丈のある書棚、陽の差し込む方角、視覚が伝えてくるのはどれも納得できない物ばかりだった。

  そうか、きっとまだ夢の中にいるに違いない。

  そう思って再び[[rb:微睡 > まどろみ]]に沈もうと意識を手放しかけた一馬は、しかし、強い違和感によって引き留められた。

  人の気配がしたのだ。

  すぐ隣から夢とは到底思えないほどの生々しい寝息が聞こえていた。

  男だ、男の低い寝息だ。

  電源を落とし忘れたテレビかスマホからでも聞こえてくるのか、寝惚け眼を何気なくそちらへ傾けた瞬間、一馬は驚愕に目を見開いた。

  「うおおっ!?」

  隣に若い全裸の獅子男が手足を投げ出して豪快に寝入っていた。

  間髪入れずに跳ね起きるや、弾むベッドに揺り起こされたのか、一馬の背後にまた別の気配がふと湧いた。今度は何か、恐る恐る振り返ると、反対隣にはこちらも素っ裸の狼男が抱き枕にしがみ付きながら何やらむにゃむにゃと寝言を呟いているではないか。

  背筋が凍り付いた。

  驚き声すら出なかった。

  一気に眠気が吹っ飛んだ頭で昨晩の出来事を必死に思い出す。

  そうだ、確か自分は昨日の夜、大学の友人連中と飲み会を楽しんでいたはずだ。だがその記憶が途中からぷっつりと途切れていた。おそらくまた正体を失うまで深酒してしまったのだろう。二十歳を過ぎてようやく飲めるようになった嬉しさのあまり、まだ慣れていない酒をつい酔い潰れてしまうほど[[rb:呷 > あお]]ってしまったに違いない。

  これまでにも何度か[[rb:酩酊 > めいてい]]した経験があった。

  今回もおそらくそうで、ここはきっと友人の部屋なのだ。

  激しく混乱する頭が性急にそう結論付けたが、一馬はすぐさまそれを否定せざるを得なかった。そうであってほしいと願う希望的観測は呆気なく打ち破られた。

  この獅子男も、狼男も、見覚えがまったくないのだ。

  彼らは友人ではない。そしてここは見ず知らずの赤の他人の家だ。何がどうなっているのか見当すら付かなかった。呆然と視線を腹辺りに落とすとそこで初めて気が付いた、

  (俺も、かよ……)

  馬獣人ならではの艶のある黒みがかった褐色の[[rb:黒鹿毛 > くろかげ]]に覆われた下腹部が丸出しになっていた。

  他の二人と同じく自身も一糸纏わない姿だったことに絶句した。

  キングサイズの大きなベッドの上に顔も知らない男三人が仲良くすっぽんぽんになって眠っていた異様な状況に言い知れない不安と恐怖が募っていく。この男たちはいったい何者なのか、なぜ裸になっているのか、まったく身に覚えがなかった。

  こうしてはいられない。

  一馬は辺りに素早く目を配ると、部屋の隅に自分のTシャツとズボン、それと下着が雑に脱ぎ捨てられているのを見つけた。できるだけ軋ませないようにゆっくりとベッドから下りると、抜き足差し足で服のところまで向かった。そして、衣擦れの音も立てまいと細心の注意を払いながらTシャツに頭を通していく。

  男たちが今すぐにでも目を覚ますかもしれないと思うと気が気でなかった。

  もし目覚めてしまったら何をされるか分かったものではない。不法侵入だと難癖を付けられて金銭を要求されるか、はたまた犯罪にでも巻き込まれたらそれこそ大学中退という最悪な結果にもなりかねない。

  ベッドの方を逐一確認しながら最後にソックスを履き終えると、一馬はようやく一息ついた。

  (……よし)

  ズボンの後ろポケットから財布を取り出して中を確認したが金は抜かれていなかった。

  どうやら少なくとも物取りの連中ではないらしい。だからといってまだ安心はできないが何も盗まれていないことで一馬の胸に少しばかりの余裕が生まれた。部屋の中を観察してみるとなかなかどうして垢抜けている。二十畳はありそうな広い空間は落ち着いたモノトーンのインテリアで構成されて、壁際にはダウンライトが連なり、所々に配された観葉植物の緑が映える洗練された雰囲気を放っていた。

  自分が借りている築ウン十年の安アパート六畳一間とは雲泥の差だった。

  賃料はいくらするのだろうか。

  男たちの素性を容姿から何とか探れないかとベッドの上へ視線を向けたとき、

  「んむぅ……ンガ、何だもう朝かぁ?」

  獅子男が大きな[[rb:欠伸 > あくび]]をかましながら伸びに体を[[rb:捩 > よ]]じったのが見えた。その声に隣に寝ていた狼男も目覚めたようで、抱き付いていた枕ごと寝返りを打ちながらしきりにまだ眠たげな唸り声を漏らし始めた。

  それから三十秒と経たず、獅子男が上半身を起こしたときにはもう一馬の姿は部屋から綺麗さっぱり消えていた。

  

  

  休みが明けた翌日、一馬は通学路をやや沈鬱とした気持ちで歩いていた。

  ここ数日の朝晩の冷え込みにすっかり黄色くなった[[rb:銀杏 > いちょう]]並木の通りを、楽しげに談笑しながら行く学生たちの賑やかな声が秋晴れの青い空に響いている。そんな深まりゆく秋の気配に感傷的になっていたのなら[[rb:物憂 > ものう]]げな表情も似合うのだが、一馬の場合、当然違った。昨晩演じてしまった失態が脳裏から離れず、馬の細長いマズルから漏れるのは長い溜息だ。酒はほどほどに嗜もうと反省していたところへ、

  「ようっ、五十嵐おはようさんっ!」

  何とも陽気な声が背中にかかった。

  振り返れば柴犬の青年が白い牙を覗かせていた。一馬の友人、[[rb:柴崎 > しばさき]]だ。彼はその人懐っこそうな黒い瞳を好奇心旺盛に輝かせると、

  「お前Tシャツ一枚で寒くねぇの?」

  「おう、体鍛えてっから」

  「さすが五十嵐、よっ陸上部のエース!」

  軽く背を叩いて誉めたてる調子のよさに一馬は呆れ気味に小さく鼻を鳴らした。

  「そんなんじゃねぇよ……」

  と謙遜したものの大学二年生にして陸上競技部を牽引しているのは紛れもない事実だった。短距離走で一馬に敵う選手は同学年はもとより上級生にもいなかった。その恵まれた体格を活かしてトラックを駆る姿に誰が見惚れられずにいられるだろうか。程よく脂肪の乗った長身は鍛えた筋肉にがっしりと分厚く、丸太のように筋肥大した[[rb:脹脛 > ふくらはぎ]]をバネにして撃ち出される様子はまさに褐色の肉弾。スターティングブロックを蹴るや瞬く間にトップスピードに達すると漆黒の[[rb:鬣 > たてがみ]]を[[rb:靡 > なび]]かせながら風を切り、そのまま一直線にゴールを貫く一連の流れに羨望と感嘆が集まらないわけがない。

  それでも謙遜するところが真面目な一馬らしい。

  朝っぱらから調子のいい柴崎に、さっきまで胸中に燻っていたモヤモヤとした気持ちが薄れていくようだった。

  一馬は大きな欠伸をかましている彼につと[[rb:訊 > き]]いた。

  「……この前の飲み会のことだけれどよ、俺、どうやら途中から記憶飛ばしちまったみたいでよく覚えてねぇんだ。どんな様子だった俺?」

  柴崎は昨晩の飲み会に参加していた一人だった。彼は涙の滲んだ黒目を見開くと、

  「マジで? 大丈夫かよ……?」

  「ああ、別に二日酔いとかじゃねぇから。ただせっかく気持ちよく酒を楽しんでた皆に迷惑かけてねぇか心配になってさ」

  飲み会は一馬が発起人となって気心の知れた十人ほどの友人に声をかけて開いたものだった。場所は大学から程近い駅前に先日オープンしたばかりの居酒屋チェーンで、そこはメニューの豊富さと何より大学生の懐事情に優しい安さが売りで興味を引かれたのだ。最近、酒の味を知るようになった一馬はさっそく皆で楽しもうと足を向けたのだが、結果あの失態である。

  柴崎は首を横に振った。

  「いんや、迷惑はかかってないけど、お前途中から別席の知らない奴らと意気投合して飲みまくってたじゃん、それも記憶にないとか?」

  「ない、な……」

  「おいおい五十嵐お前、酒で身を滅ぼすタイプだぞ? そこらへん気を付けろよまったく」

  眉間に皺を作って苦言を呈する友人に一馬は苦笑した。

  「分かってるって、無茶はしねぇよ」

  「どうだか……へべれけに酔った挙句に万が一不祥事を起こして選手生命絶たれることになったら泣くに泣けないからマジで羽目を外し過ぎるなよな」

  「だから分かってるって。で、その別席の奴らと飲んでた俺はそれからどうしたんだ?」

  「さあ? 随分楽しそうに騒ぎながらそいつらと一緒に店を出てったのは見えたがその後は知らん」

  小首を[[rb:傾 > かし]]げた柴崎に一馬はそうかと一言、言った。

  どうやらその連中が図らずも昨晩ベッドを共にしたあの獅子男と狼男の二人で間違いなさそうだった。柴崎の言う通りなら、便所に寄った帰りか何かの切っ掛けで奴らの酒席に偶然加わることになったのだろう。そして思いのほか話が弾んでそのまま二次会に向かったか、酔い潰れてしまって見ず知らずの人の家に厄介になってしまったというところか。

  しばらく黙考していると、

  「どうした、そんな難しい顔して? 何かトラブルにでも巻き込まれたんか?」

  まだ少年期のあどけなさが抜け切れていない柴犬の顔が心配そうに一馬の顔を覗き込む。

  「いや何でもねぇよ、ちと記憶を辿ってただけだ」

  どうにも言い出し辛かった。

  朝起きたら知らない人の家で素っ裸になって寝ていただなんて。笑い話で済む内容なのだが、わざわざ進んで赤っ恥を掻きにいくこともあるまい。それにこれ以上心配されて、次の飲み会で柴崎に小言を挟まれて酒量をセーブされるのは避けたかった。

  それにしても、と一馬は思う。

  過度に酔っ払ってしまうと脱ぎ癖があったのには驚いた。酒を嗜むようになって初めて自分にそんな癖があることを知った。もし公衆の前で脱いでしまっていたらと考えると、見ず知らずの人の家で全裸になったのは不幸中の幸いかもしれない。公然猥褻罪で捕まろうものならそれこそ柴崎が言ったように選手生命を絶たれてしまう。

  何にせよ、事は単純に泥酔してしまっていたということで一馬はようやく安堵した。

  一つ気がかりなことは街中でばったり奴らと出くわしてしまったらと思うと、あまりの気まずさに居た[[rb:堪 > たま]]れなくなるという点だ。どう詫びていいものやらと考えあぐねるも、同じく脱ぎ癖を発揮するほど酔っ払っていた奴らが自分の顔を覚えているかも怪しいのだから心配するだけ損という楽観的な結論に達した。

  昨晩の一件は忘れるに限る。

  視線を上げると銀杏並木の向こうに大学の[[rb:尖 > とん]]がり屋根が見えてきた。

  一限目は人文科学で、おっとりと話す老狸講師による程いい眠気を誘ってくれるありがたい講義だ。一馬はそこで睡眠不足を補おうと下準備に早くも青空に向かって欠伸を放ちながら、他愛ない冗談を交わす柴崎と一緒に落ち葉で黄色く染まった道を歩いていくのだった。

  それから数日後のことだった。

  大学構内にある学食で友人たちと昼飯を楽しんでいたところにその知らせは飛び込んできた。

  「おっ五十嵐! さっきお前を探している奴らがいたぞ」

  同じ陸上部の仲間が食堂に入ってくるや一馬の姿を認めて言った。

  「誰?」

  「さあ知らね、お前のダチじゃねぇの」

  一馬の問いに彼はそう答えると、腹を空かせた学生たちで混雑する食券券売機のほうへと消えていった。

  ふと胸中に一抹の不安が湧いた。

  誰だろうか、そして何の用件だろうか。この広いキャンパスの[[rb:何処 > どこ]]かで何者かが自分を探している。言い知れない不安定な感情が胸の奥から込み上げてくる。その原因は分かっていた、もしかしたら仲間が言った『奴ら』とはあの奴らかもしれない、数日前に出会ったあの名も知らない男たちの姿がじわりと脳裏に滲み出てくる。

  ……そしてその不安は的中したのだった。

  四限の講義が終わり時刻は十六時を過ぎた頃。短距離走の練習をしようと陸上部の部室がある部室棟へと向かっていた一馬は足をぴたりと止めた。

  部活動に向かう人の流れの中で立ち止まっている二人に目が止まったのだ。

  その姿を認識した瞬間、ぎくりと体が強張った。

  獅子と狼の獣人だった。

  距離は二十mほど先。獅子男は大きなカエデの木に背を預け、狼男はその傍らに突っ立って、部室棟に行く学生たちの姿を目で追っているのが遠目にも仕草で分かった。誰かを探しているのは疑いようがなかった。それは誰か、一馬の背を嫌な寒気が通り抜けていく。別段、獅子と狼の獣人なんて大学内にもごまんといるわけで決して珍しくないのに、この両者の組み合わせは今の一馬にとって最も出くわしたくないコンビだった。

  足が固まって一歩も前に踏み出せない。

  別ルートから部室棟に行こうと[[rb:踵 > きびす]]を返しかけたときだ、獅子の顔が一馬の方を向いたのは。

  おそらくこちらを認識した獅子男の仕草が止まった。まっすぐに一馬を見やっている。遠くてよく分からないが交わる視線を感じた。顔の造形を、体の輪郭を、骨格を丹念に調べられている気がする。あの晩に出会った馬男で間違いないかと記憶の中の容姿と一致するか照合されている。

  今すぐにでも逃げ出したくなった。

  でもまだ全て推測に過ぎない。あの晩の彼らではないかもしれない。ただ黒鹿毛の馬獣人が珍しくて見やっているに過ぎないのだ、と自分自身に都合よく言い聞かせながら一馬は再び歩き始めた。

  視線を合わせないように、学生たちの歩調に合わせて進むことしばらく。

  ちょうど彼らの真ん前を通り過ぎようとしたときだった。

  「あの、ちょっといいっスか?」

  獅子男の隣に佇んでいた狼男が小走りに駆け寄ってきて言った。

  視界の隅で二人が何やら囁き合っているのが見えたときに嫌な予感はしたのだ。やはり目的は自分だったかと一馬は内心で深い溜息をついた。あの時は焦っていたこともあって顔は覚えていなく、ただ獅子男と狼男ということだけが記憶にあったが、どうやら[[rb:件 > くだん]]の二人に間違いないようだ。

  動揺を表情に一切滲ませずに一馬は言う。

  「あン? 何だ?」

  素知らぬ振りを決め込むのが一番だ。

  一馬は時間がないとばかりに素っ気ない態度で答えると、狼男は申し訳なく思ったのか軽く頭を下げて、

  「ほんのちょっとだけ時間ください、どうしても話したいことがあるんス」

  「何?」

  「え、いや、その……詳しくは[[rb:獅豪 > しごう]]先輩の方から……」

  急に狼男は気まずそうに言葉を濁すと、一馬をカエデの木にもたれている獅子男のもとに連れていった。

  先輩と彼は言った。何でこんな所に奴らがいるのかそれで合点がいった。あの晩見たときに若いとは思っていたがまさか二人とも同じ大学に通う学生だったとは。裏社会の輩でなくて一安心するのと同じく、今さら何の用かと新たな疑念が湧いてくる。もしかしたらあの時の飲み会が楽しくて忘れられないあまりに誘いたくなったのならこちらとしては二つ返事で引き受けるのだが。

  獅子男は寄りかかっていた木から背を剥すと、強面に似合わない朗らかな笑みを浮かべて、

  「よお、また会ったな」

  気さくに片手を上げながら言った。

  「ここで張ってた甲斐があったぜ、体つきから何かスポーツに打ち込んでるのは察しが付いてたからな。そのジャージ、やっぱり体育会系だったか」

  一馬を頭の天辺から足の爪先まで眺めながら男が頷く。

  今一馬が着ている上下青色のジャージは、大学指定の運動部専用ジャージだった。左胸には大学の校章が、バックプリントには白色の漢字で陸上部と大学の名がこちらはローマ字表記でされている代物でデザインはそうダサくなかった。そのお陰もあってか、運動部の連中は朝練がないときでも私服姿の学生たちに交じってこのジャージのまま通学して一日過ごすことも少なくなかったが、大半はただ着替えるのが面倒臭いというのが理由だろう。

  鍛えられた筋肉にパツンパツンに張ったジャージを見つめて獅子男が言う。

  「初めまして……じゃねぇよな、俺たちのこと覚えてるか?」

  「あ、ああ、何となくは……」

  言い淀む一馬だったが、獅子男はそれでもその返答が嬉しかったのか白い牙を覗かせた。

  「なら話が早い。先日の飲み会のときはお互いに名乗らずに酒を呷りまくっちまったからな。改めて俺の名は[[rb:獅豪丈士 > しごうじょうじ]]、三年だ。ちなみに部活は野球をやってる、よろしくな!」

  そう言ってスッと差し出された右手を一馬は反射的に握らざるを得なかった。

  運動部の上下関係は他と比べても[[rb:殊更 > ことさら]]に厳しい。無下にここで握手を拒もうものなら後々どんな[[rb:禍 > わざわい]]が降りかかってくるか分かったものではない。

  「俺は二年の五十嵐一馬です」

  一つ上の先輩の機嫌を損なわないようにぎこちない笑みを張り付かせながら一馬も名乗った。

  立派な鬣も勇ましいスリ筋体型の獅子獣人だった。

  無地の白シャツをこんもりと押し上げるぐらいの程いい筋肉質な上半身に比べて、下半身はそれ以上に分厚く発達した筋肉のせいで灰色のカーゴパンツがパンパンに膨れていた。さすが野球をやっているだけのことはある、下半身を集中的に鍛えているのだろう。

  丈士の薄茶色の瞳がちらっと横に動いて、

  「こいつは俺の後輩の……」

  顎先で促されて、彼の隣にいた狼男がこちらも笑みを[[rb:湛 > たた]]えて口を開いた。

  「あっ、俺は[[rb:九狼悠太 > くろうゆうた]]っス! 一年で剣道部所属っス、よろしくお願いします五十嵐先輩っ!」

  やや緊張した面持ちで礼儀正しく頭を下げた。

  灰色狼の彼も丈士と同じく引き締まったスリ筋体型が目を引いた。真面目に剣道に打ち込んでいるのだろう、紺色のポロシャツから覗く腕は逞しく筋張って、カーキ色のチノパンツも肥大した大腿四頭筋の厚みがくっきり浮き立っていた。

  「あ、ああよろしく……」

  あまりに快活な挨拶に面食らった。

  後輩としては至極まともな挨拶なのだが、てっきり彼らから難癖を付けられるとばかり思っていた一馬はすっかり拍子抜けしてしまった。あの杞憂はいったい何だったのか、接してみれば好青年じゃないか。学年はそれぞれ違うが、酒の席で偶然知り合ったのを切っ掛けにしてそのまま友人になる関係も悪くないと思い始めていた。

  一馬と悠太のやりとりが終わったのを見計らって、

  「五十嵐が同じ大学なのは飲み会のときに話してくれたから知ってたんだが、それ以外にまったく情報がなくてなぁ、珍しい毛色だけを頼りに探すのは骨が折れたぜ」

  もちろん会話の内容なんて一馬の記憶には残っていない。

  話の流れからおそらく丈士たちも同じ大学だと話してくれていただろうに、覚えていたらこうまで不安に[[rb:苛 > さいな]]まされずに済んだのにと、今更ながら自分の泥酔ぶりに辟易した。

  記憶を過去に飛ばしているのか丈士の目がやや遠くの方を見やった。

  「にしてもつれねぇよなぁ、目が覚めたらいねぇでやんの」

  何のことを言っているのかすぐさま理解した。

  「すみません獅豪先輩、あのときはご迷惑おかけして……。目覚めたら知らない部屋で寝ていたので気が動転してしまって、そのままお礼もせずに去ってしまいました」

  非礼を詫びようとした一馬を丈士が慌てて押し止めた。

  「誤解すんな、別に責めてるわけじゃねぇ。ただ寂しかっただけだ」

  「そうっスよ、連絡先を交換してまた飲みたいと思ってたんス、獅豪先輩も俺も」

  悠太が心底残念そうに言った。

  「それでわざわざ俺を探して?」

  そう訊いた刹那だった、彼らの表情にやや緊張が走ったのを一馬は見逃さなかった。湛えていた微笑がスッと消えて、何か思惑がありそうな含みのある顔付きに変わっていた。どうしたというのか問おうと口を開きかけたとき、

  「ちとここじゃ話し辛いな……、何処か人のいない所で話そうぜ」

  丈士はそう言うや、一馬の手首を掴むと強引に歩き始めた。

  「ちょ、ちょっと先輩何するんですか!?」

  「すみません五十嵐先輩、誰にも聞かれたくない内容なんで少しだけ付き合ってください」

  声を潜めながら悠太が言う。

  意味が分からなかった。連絡先を交換するだけならその場で簡単にできるだろうに、話し辛い内容とはいったいどんなものなのか。つい先ほど彼らのことを好青年だと判断を下したばかりなのに、早くもそれが揺らぎ始めていた。

  部室棟へと続く道を横に逸れて歩くことしばらく。

  やがて連れていかれた先は人の気配がまったくない工学部の旧研究棟の裏手だった。

  ここは老朽化によっていずれ取り壊される予定らしい。それでも日中はまだ学生たちに使われており幾分か活気のある旧研究棟だったが、教授陣の研究室も新しい棟へと移り終えてこの時間帯は人っ子一人いなかった。棟の反対側にはコンクリート塀が夕焼けに赤く染まり、その向こうには鬱蒼とした木立が迫る夕闇に黒い陰を落としている。

  「な、何ですかこんな所までやって来て……」

  やはり彼らは脅しに来たのか、一馬は不穏な気配と苛立ちに眉間に皺を寄せながら丈士に訊いた。

  獅子男は握っていた手首を離すと開口一番、

  「忘れられねぇんだ……」

  妙に熱っぽい口調で言った。

  「な、何のことですか?」

  この態度の急変は何だ、さっきまで緊張に強張っていた表情が今やすっかり[[rb:解 > ほぐ]]れたばかりか、逆に何かに陶酔するかのようにうっとりと目元を崩しているではないか。

  「とぼけんじゃねぇよ、俺たちあんなに激しくサカり合ったじゃねぇか……」

  「…………はい?」

  丈士の口から飛び出た衝撃的な台詞に一馬は言葉を失った。

  この男はいったい何を言っているのか一瞬理解できなかった。サカるとはセックスのことか、だったらいつやったというのかまるで心当たりがない。頭の中をいくつもの記憶のピースが目まぐるしく飛び交うがそれに該当するものは何一つ……、そこでふと一つのピースが脳裏に鮮明に思い浮かんだ。

  大きなベッドの上に横たわる全裸の三人――

  あれはもしや事後だったのか。

  なぜ三人とも素っ裸でいたのか疑問だったが、てっきり脱ぎ癖があるのだとばかり思っていたのは勘違いで、彼の言ったように互いの体を求め合っていたのだとしたら……。

  一馬は愕然とした。

  記憶が飛ぶほど酩酊してしまっただけでも鬱々となるのに、さらにセックスしていたとは。あの晩、あの部屋でどんな情事が繰り広げられていたのかまったく覚えがない。ここに来て一馬の酒癖の悪さが出た。普段は大人しく礼儀正しい若者だったが、一たび酔っ払ったり、極度の性的興奮状態になって気分が吹っ切れると荒っぽい性格が頭を出すのだ。丈士曰く、激しいセックスだったと言うのだからよっぽどだろう。

  丈士が体をぴったりと寄せてくる。

  そして一馬の耳元で、

  「あの熱い一夜を忘れたとは言わせねぇぞ? ……なぁ、もう一回いいだろ?」

  雄の低い猫撫で声で甘くそう囁くのだ。

  「やっ、やめてください獅豪先輩……俺はそんな気持ちは」

  「我慢なんねぇんだよ俺はもう。毎日毎日あの晩のことばかり思い出しちまって勉強も部活もまったく集中できねぇ。なぁ、一回だけでいいから、お前のコレで俺を犯してくれよ?」

  丈士の手がやんわりとジャージの股間部分を包んだ。

  「っ!? ど、何処を触ってっ!」

  「はぁっ、やっべ……これだ、これだよ。俺はこれにあの晩、滅茶苦茶に責められたんだ……」

  手がゆっくりとそこを上下に擦っていた。

  「ちょっ離してくださいっ!」

  どうにか振り[[rb:解 > ほど]]こうとするも獅子男は[[rb:膂力 > りょりょく]]にものを言わせてさらに強く抱き付いてくる。しまいには首元に顔を[[rb:埋 > うず]]めてくると、

  「はぁぁっお前の臭い堪んねぇぜ……雄臭ぇこの体臭、癖になっちまう」

  スンスンと鼻を鳴らされて一馬の顔がたちまち羞恥に赤くなっていく。

  「かっ嗅がないでくださいっ汗臭いだけですからっ! くっ……九狼くん、先輩をどうにかしてくれっ!」

  手に負えなくなって悠太に助けを求める一馬。

  だが悠太の顔を一目見た瞬間、それは無駄だと分かった。丈士と同様にすっかり表情がだらしなく弛緩していたのだ。彼の薄墨色の瞳はしっとりと濡れ、絡み付くような熱視線が一馬の体へと注がれていた。

  悠太はがっしりと分厚い一馬の体を背後から優しく抱き締めると、

  「九狼くんだなんて水臭いっス、あの晩あんなに愛し合った仲じゃないスか俺たち……九狼って呼び捨てにしてください、一馬の兄貴……」

  熱情の籠った熱い吐息が背に染みていた。

  「俺もまた、兄貴のコレで可愛がってもらいたいス……」

  「うぅっ!?」

  前に伸ばされた悠太の手が一馬の局部を捉える。

  前から後ろからサンドイッチ状態に男二人に抱き付かれて一馬は目を白黒させた。二本の手が妖しく股間に絡み付いてくる。一馬の体臭を嗅いで発情スイッチが入りでもしたか、荒い息遣いの男たちが、より体を密着させてくる。

  「ぐぅ、やめ……てくれっ!」

  息苦しさに一馬は唸った。

  予想だにしていなかった展開に激しく[[rb:狼狽 > ろうばい]]した。まさかセックスを求められるなんて思いもしなかった、しかもこれほど露骨に発情した男たちから。言動からみるに、おそらく自身の一物が忘れられないのだろうと思った。どうやらあの晩の一回限りのセックスで彼らを夢中にさせてしまったようだ。

  一馬は自身のサイズが巨根だという自覚があった。

  なんせ文字通り馬並みなのである。

  平常時ですでに成人男性の勃起サイズは余裕であり、いざ[[rb:勃 > た]]ったら[[rb:臍 > へそ]]を越えるその長さは子供の腕ほど、30cm近くあるだろうか。そのあまりの巨根ぶりは陸上部の仲間内でも有名で、ユニフォームが肌にぴったり密着するスパッツ型とあって露骨に形が浮き彫りになるのだから目立って仕方がなかった。さらに走れば巨大なブツが豪快にゆっさゆっさと左右に揺れるのである。たまにコーチと部員たちが皆揃ってフォームの確認のために走っている姿を録画したものをスロー再生で見る機会があるのだが、皆一馬のときだけ股間を食い入るように見ているのが分かって恥ずかしい思いをしたのも二度、三度ではなかった。その度に自身のサイズが丸わかりになるから別のゆったりしたユニフォームに変えてくださいと訴えたくなっても、とても恥ずかしくて言い出せるわけがない。他にも合宿中の風呂では先輩たちから一物を拝ませてくれとからかい半分で覗き込まれることがあったが、残りの半分はおそらく羨望だと分かっていた。そこを見た瞬間に目の色が真剣みを帯びるのだ。それで己は、男なら誰もが羨むサイズなのだと何となく気付かされた。

  だからと言って優越感など覚えるわけがない。

  正直、不便極まりない。

  前述の件もそうだし、用を足すときもパンツから引きずり出すのが手間で、しまうときもまた普通の人よりは時間を要した。

  ただ一つ、いい点を挙げるとすれば男にモテるということだろうか。

  一馬の性指向は男だった。

  同性が好きでこれまでの性体験もすべて男だった。今は特定の恋人はいないが、以前高校時代に付き合っていた陸上部顧問の虎男の教師は、一馬のその桁外れの巨根が射止めたようなものだった。きっかけは教師の方から肉体関係を持ちかけてきたのだ。おそらく部活動の最中に一馬の股間のあまりの自己主張ぶりに興味を持ったのだろう。真面目な生徒だった一馬はいったんは拒んだものの、童貞で思春期真っ盛りの青い性欲を大人の男の色気に刺激されては仕方がなかった。童貞喰いの教師で有名だったとは当時知りもしなかった。一馬は初めてをその男に捧げた。教師は誰もいない放課後の教室でしたセックスがよっぽど良かったらしい。机の上に顔を突っ伏した虎男の尻に背後からハメてやると、それだけで男の喉から悲鳴のような[[rb:喘 > あえ]]ぎ声が上がった。そのまま無我夢中で腰を振って何発も教師の体内に放出した。気付けば机の下は虎男の放った精液でビチャビチャだった。涎を垂らし、焦点の定まらない目を熱く潤ませ、狂ったように頭を振って教え子との禁断のセックスに没頭する教師は、後日一馬の初めての彼氏となったのである。

  その教師とは大学進学を機に別れた。

  大学に入学してからも色んな男から声をかけられた。

  やはり男を選ぶにあたって大きな男性器はかなりのアドバンテージがあるようだった。

  プールに行ったときには男好きの視線がそこに釘付けになり決まって帰り際に声をかけられた。サウナやスーパー銭湯でも同様で、体格の逞しさも相まってもはや向かうところ敵なしの状態だった。

  しかし、それでもやはり巨根は不便極まりなく、現に今もこうして迷惑を被っている。

  丈士が、悠太が、荒い息遣いでねだってくる、一馬の股の熱い物を。

  「五十嵐、なぁいいだろ? ……またあの夜みたいにしてくれよ?」

  「もう俺我慢できないっス兄貴……欲しいっス、兄貴のコレを……」

  すっかり発情した男二人に挟まれて、股間をねっとりと撫で回されて、今までどうにか抑えていた雄の精力が強制的に目覚めさせられていく。

  「ぐっ、うぅっ、[[rb:止 > や]]めっ止めてくださいっ二人ともっ、そんなに触られたら俺っ」

  一馬も男。元より男が好きな彼にとってこの状況は決して悪いものではなく、むしろ性欲盛んな年頃の男の生殖本能を十二分に刺激するものだった。よく鍛えているスリ筋体型のスポーツマンに『俺とセックスをしてくれ』と言い寄られるだなんて、想像しただけで興奮ものだ。一人は野球部の下半身がどっしりとした獅子獣人、もう一人は剣道部の引き締まった体躯の狼獣人。どちらも精悍な顔付きは男臭くて、精力も強そうで申し分なかった。

  そんな二人から同時に求められたら堪ったものではない。

  「ぐっ……」

  一馬は歯を食い縛った。

  下腹部に向かって血が集中し始めていた。

  懸命に自制心を働かせて何とか耐える。少しでも気を許せば一気に血の流れが局部へ向かいそうだった。もしここで海綿体が充血でもしようものなら抑えが利きそうにない、おそらく吹っ切れた己は、彼らをこの場で押し倒して事に及んでしまうだろう。

  鼻腔に入ってくる獅子と狼の雄の体臭が肉欲に火を灯さんとしている。

  駄目だ、理性を保たなくては。

  興奮を誘う彼らの臭いに一馬はどうにか抗おうと理性を働かせた。ここで吹っ切れてしまって荒っぽい性格となった己が彼らに何を仕出かすか分かったものじゃない。記憶にはないがあの晩も、酔っ払って性格が豹変したせいで、おそらく二人が気を失うまで犯し続けたのだろう。そんなことをいつ誰が来るとも分からないこんな場所でやるわけにはいかないし、後で絶対に後悔するに決まっていた。

  一馬は理性を糸一本で繋ぎ止めながら、

  「わ、分かった、考えておくから体を離してくれっ!」

  どうにかそう言葉を絞り出した。

  その台詞を聞き納得したのか、やがて解放されて安堵する一馬に丈士が渡したのは彼らの住む家の住所と連絡先だった。

  「よかったらここに来てくれ。いい返事を待ってるぜ五十嵐?」

  「一馬の兄貴、俺たち本気スから……」

  赤く上気した顔のまま彼らはそう言い残すと、別れるのが名残惜しそうに何度も振り返りながら去っていった。

  二人の姿がようやく建物の陰に消えると、一馬は深い息をついた。ふと下半身に視線を落とせば、気が緩んだせいかジャージを勃起したペニスが痛いほど突き上げていた。

  「糞……っ!」

  我慢ならない愚息を[[rb:詰 > なじ]]った。

  ジャージとその下に[[rb:穿 > は]]いているビキニブリーフのゴムが限界まで伸び切って、黒々とした陰茎が覗いていた。夕陽に染まる地面には、鉄のように硬くなったペニスによって大きく前に突っ張ったジャージの影が、見事な三角形の山を描いているではないか。何と卑猥な影か。時折りビクビクと律動するその影の実体は激しく求めていた、滾りを解消する[[rb:術 > すべ]]を、欲望を吐き出す肉の器を。

  鼻息を獰猛に鳴らす馬獣人は二人の後を追うようにやがて夕闇の中へと溶けていった。

  

  [newpage]

  

  見覚えのあるマンションだった。

  大学まで徒歩二十分ほどのところに目的地はあった。この辺りは大学に通う学生たちが借りるアパートやマンションが多いが、一馬の目の前に建っているマンションはとりわけ立派だった。洒落たデザイナーズマンションといった趣で、学生が住むには家賃が高そうだが丈士は裕福な家庭の出かもしれなかった。一馬は薄っすらと記憶に残っている全面ガラス張りのエントランスに入ると、すぐ脇の壁際に設置されていたインターホンに事前に教えてもらっていた部屋番号を入力した。

  今日訪ねることは前もって彼に連絡していた。

  「おう来たか、待ってたぜ」

  程なくして聞き慣れた丈士の声が応答すると、二つ目のドアのロックが解除されて一馬はエレベーターに乗り込んだ。外壁に面した一部がガラスになっており、鉄の箱がゆっくりと上がっていくとやがて茜色に染まった空と街並みが見えてきた。

  研究棟の裏で衝撃的な話を打ち明けられてから一週間が経っていた。

  あれから今日まで幸いなことに彼らとは顔を合わせていない。もしばったり鉢合わせしたら何て声をかけていいか分からなかった。

  この一週間、悩みに悩んだ。

  当初、行く気はさらさらなかった。真面目な性分も手伝って、彼らに迷惑をかけてしまうことを恐れた。そしてまた羽目を外してしまって性欲が暴走してしまうことを恐れた。自分自身ですらたまに恐ろしくなるのだ、何発抜いても衰えることを知らない精力が。底知れない肉欲が己にはある、それは絶倫ゆえの悩みだった。

  迷惑はかけたくない。しかし丈士たちの姿が脳裏から消えないのもまた事実。

  あれほど露骨に誘惑されて無視を決め込むほうが無理というものだ。正直、手を出したかった、強く抱き締めたかった、思いっきりセックスしたかった。

  一週間、葛藤は続きそして今、己はここにいる。

  欲望のほうが勝ったのである。

  性欲旺盛な体育会系の大学生が淫らな誘いを断れるはずはないのだ。

  思い悩んだこの一週間、一発も抜いていないせいで今日は朝からずっとムラムラしっぱなしだった。講義中も気が[[rb:漫 > そぞ]]ろで妄想ばかりが働いて、どうにか勃起しないよう自制心を働かせることで精一杯だった。

  そしてついには我慢できなくなって昼間、衝動的に連絡してしまったのである。

  金曜日の夕方の部活帰り、悶々としている一人の学生を乗せたエレベーターはやがて小さな電子音を奏でて止まった。

  1002号室、最上階に丈士の住まいはあった。

  扉の前に立つと鼓動が一際大きく跳ねた。

  この扉の向こうに彼らがいる、今からセックスする相手がいる。めくるめく快楽の世界が扉を一枚隔てたすぐ向こうに広がっていると思うと次第に体の奥が熱くなっていくのを感じた。

  緊張に震える指先で呼び鈴を押す。

  やがてドタドタと床を踏み鳴らす音が聞こえてくるや、その[[rb:蠱惑 > こわく]]の扉は開かれた。

  「おう来たな五十嵐……さあ上がれよ」

  すでに丈士の表情は隠しきれない性的興奮にだらしなく緩んでいた。

  「は、はい、じゃあ遠慮なく」

  一馬は靴を脱ぐと丈士に導かれて後についていく。

  まさか再びここを訪れるだなんて夢にも思わなかった。あのときは逃げるように玄関を飛び出したのに、今はセックスするために上がり込んでいる。不思議な感覚だった、つい先日まで何処の誰とも分からなかった男たちとまた体を重ねることになるとは。

  前を行く獅子男の広い背から汗と獣の臭いが流れてくる。

  「すみません獅豪先輩、遅くなってしまって……」

  「おう気にすんな、俺たちも部活終わりでついさっき帰ってきたところだ」

  一馬と同じ大学指定の青ジャージを着た丈士の背には白文字で野球部と刻字されていた。

  部屋に通されると男の体臭がより強く鼻を衝いた。

  その一因となっているだろう狼獣人の悠太が一馬の姿を認めるや否やソファーから立ち上がると、

  「一馬の兄貴っ! 本当に来てくれたんスねっ、めっちゃ嬉しいっス!」

  灰色の太い尾を振りながら勢いよく胸の中に飛び込んできた。

  「おっおいっ九狼くん!」

  「だから九狼でいいっスよ、よそよそしいの俺は嫌っス……」

  胸の谷間にマズルを埋めながら目を熱く潤ませて見上げてくる後輩に一馬は、

  「じ、じゃあ……く、九狼、そんなにくっ付くと俺汗臭いから」

  「何言ってるんスか、それがいいんスよ。兄貴のこの噎せ返るほどの雄臭さ、はぁぁっめっちゃ興奮するっ!」

  ジャージに染み込んだ一馬の体臭をしきりに嗅いでいる悠太の表情は、媚薬でもキメたかのようにとろんと瞼が[[rb:半 > なか]]ば下りていた。見れば早くも彼の[[rb:股座 > またぐら]]はジャージを大きく盛り上がらせているではないか。

  何と積極的な青年なのだろうか。

  太腿に当たる悠太の強張りに一馬は生唾を飲み込んだ。

  男が性的に興奮している姿は何とも情欲をそそるものだ。それが可愛くも逞しい後輩ともなれば[[rb:一入 > ひとしお]]だ。

  「九狼……っ!」

  押し付けられる怒張に一馬の呼吸が荒くなっていく。

  思わず抱き締めたい衝動に駆られて腕を上げようとしたが、直前で思い止まった。自分の方から悠太に手を出していいのか、ふと疑問が湧いたのだ。なぜなら、

  「獅豪先輩と九狼はその、付き合ってるんですか?」

  傍らにいた丈士がおかしそうに鼻を鳴らした。

  「まさか。勘違いするな五十嵐、ここで二人暮らししちゃいるが恋人ってわけじゃねぇ。こいつとはただの同郷でな、同じ高校で[[rb:誼 > よしみ]]を結んでいたこともあって卒業早々に勝手に転がり込んできやがったんだ」

  「そうっス、獅豪先輩と一緒に高校生活送れたのは一年間だけっスけど、本当に良くしてもらって感謝してるんス」

  「今も良くしてやってるだろうが、タダで住みやがって」

  「ヘヘヘ……いいじゃないスか、代わりに掃除や洗濯は全部俺がやってるんスから。出てっちゃっていいんスか? きっと俺がいないと二、三日で汚部屋になっちゃいますよ? 五十嵐先輩ももう二度と来てくれなくなっちゃいますよ?」

  「ぐっ……」

  閉口した丈士が苦み走った顔で悠太を睨むと、悠太は素知らぬ顔で再び一馬の胸元にマズルを埋めるのだった。

  「ま、まあいい。そんな下らんことより五十嵐、明日は休みだ、朝までとことんヤりまくろうぜ?」

  一馬は背後から丈士に抱き締められた。

  尻に硬い物が当たっていた。

  「なあ、分かるだろ? 俺がどんだけお前を待ち侘びていたか……。俺は、いや俺たちはあの飲み会があった晩、本当はお前を酔い潰させて美味しくいただくつもりだった。家に連れ込んで犯しまくるつもりだった。しかしどうだ、気付いたら俺も悠太も逆にお前に馬鹿でかい馬チンポをハメられちまってたじゃねぇか」

  丈士は熱い吐息混じりに淡々と語った。

  タチ一筋だったのに尻を犯される快感に目覚めてしまったこと。

  一馬の巨根が忘れられなくなってしまったこと。

  逞しい雄に種付けされて完全に雌にされてしまったことを赤裸々に口にした。あれからもう片時も一馬との情事が脳裏から離れなくて、悶々とするたびにオナニーに耽ったのだという。いつかまた会ってもう一度、気が遠のくほどのセックスをしてみたかったらしい。

  もう一時も待てないのだろう、獅子男の太い指先が一馬のジャージを脱がしにかかる。

  「ちょっ先輩待ってくださいっ! 俺、練習で汗掻いて臭いますから先にシャワーをっ!」

  「悠太もさっき言ったろうが、お前の汗臭ぇこの臭いが興奮するんじゃねぇか……」

  首筋に獅子の湿った黒鼻が埋まっていた。

  「う、うぅ……先輩っ」

  鼻息のむず痒さに一馬は堪らず[[rb:呻 > うめ]]いた。

  二人の男に体の臭いを嗅がれている状況が理性をふやけさせていく。己の体臭が猛々しい獣人たちを惑わせている事実、これから行われる性交に向かって彼らが着実に興奮を高めていっている事実に気分が否が応にも高揚していく。

  ジャージの上衣が脱がされ、露わになった裸身に悠太が熱い息をついた。

  「堪らないっス、兄貴の厚い胸板……」

  しっとりと艶めく黒鹿毛は胸部から下腹部に向かって焦げ茶色をしている以外、ほとんど黒に近く、鬣に至ってはほぼ漆黒だった。その美しい体毛に覆われた体はどこもかしこも盛り上がる筋肉にがっしりと分厚く、広背筋が横に大きく[[rb:迫 > せ]]り出した逆三角形の体は見事な肉体美を呈していた。

  惚れ惚れとする体に悠太のマズルが吸い寄せられる。

  「んおぉっ!? くっ九狼、そこはっ!」

  乳首をいきなり舐められて一馬は息を詰まらせた。

  狼のざらついた舌が乳首に纏い付いていた。肉厚の乳輪にたっぷりと唾液を[[rb:塗 > まぶ]]しながら円を描くように舌が這う。翻弄される乳頭がたちまち充血して硬くしこっていく。

  「んっんむっ! うっめぇ兄貴の乳首。しょっぱくて、デカくて舐め応えあって」

  滲んだ汗を悠太が丹念に舐め取っている。

  舌先で転がされる肉芽がジンジンと[[rb:疼痛 > とうつう]]を帯びていた。

  乳首の大きさは一馬の悩みの種でもあった。彼の乳首は人一倍大きかった。遊び慣れていない桃色のそれは、毛が白毛や栗毛だったらまだ目立たなかったのに黒鹿毛の中では余計に目立った。発達した大胸筋のせいで乳首が前面に押しやられていることもあり、陸上競技で走っている際に擦れて乳首が腫れてしまうこともざらで、目ざとくそれを見つけた部員が『乳首、勃起してるぞお前』などと冷やかされるのは日常茶飯事だった。その度に恥ずかしい思いをしてきた一馬の乳首が今、後輩の口の中に含まれている。

  浅ましい音を立てて乳首が吸われていた。

  「おあぁ……九狼っそんなに強く吸うなっ、ぐうぅっ!」

  飢えた乳飲み子のように悠太が吸いまくる。

  今や一馬は我が子に授乳する母のごとくだった。母乳など出るはずがないのに吸われていると不思議と何か乳首の先から得体の知れない体液が滲み出ていくようなそんな気がした。

  「はあぁっ、あっあっあっ、九、狼っ!」

  息を荒らげる一馬の肉体がうねった。

  筋肉が妖しく波打つたびに黒鹿毛に浮かぶ艶めく光の波が幾重にも広がっていく。

  「ああ、堪んねぇぜ五十嵐……」

  悶える肉体に魅せられた丈士が動く。

  一馬の片腕を掴んで持ち上げると、深く陰の落ちる腋の下にマズルを沈めた。

  「おっふぅ……ああ堪らん、お前の雄臭ぇ腋」

  丈士は恍惚と目を細めた。

  [[rb:口吻 > こうふん]]を突っ込むやモワッとした熱気に包まれた瞬間、強烈な臭いが嗅覚を嬲ったのだ。それは密着した肉間によって蒸らされた汗の臭いだった。おそらくつい先ほどまで汗だくになって懸命に部活動に打ち込んでいたのだろう。じっとりと湿った[[rb:腋窩 > えきか]]は体毛の隙間に閉じ込められた汗と雄の臭いに満ち満ちていた。

  これほど股間を刺激する臭いを嗅いでしまってはもう辛抱ならなかった。

  乱暴に自分のジャージを脱ぎ捨てて全裸になると丈士は再び腋舐めに没頭した。すでに完全勃起していたペニスを一馬の脚に擦り付けながらひたすら蒸れた腋を愛撫する。

  「はぁっ[[rb:美味 > うめ]]ぇ、マッチョ馬野郎の汗くっせぇ腋、超絶美味ぇぜぇ……」

  同居人の痴態に触発されたか、乳首を[[rb:舐 > ねぶ]]っていた居候も負けじと服を脱ぎ出す。

  「俺も直に兄貴の熱を知りたいっス」

  生まれたままの姿になると悠太は怒張を隠そうともせずに一馬の目をじっと見つめて、

  「兄貴、俺の体どうっスか? 兄貴のお眼鏡に適えばいいんスけど……」

  そう言ってしおらしく頬を染める後輩に一馬は喉を鳴らした。

  均整の取れた悠太の裸は十分すぎるほど欲情を誘うものだった。さすが剣道部、これまで何千何万回と竹刀を振ってきたのだろう、筋張った腕は男らしく、狼の俊敏性を窺わせる体は無駄な脂肪が削ぎ落ちてよく引き締まっていた。その筋肉美もさることながら灰色狼の毛並みの美しさもまた目を見張るものがあった。やや銀色を帯びたアッシュグレイの体毛が豊かに全身を覆い、背後ではふさふさの濃灰色の尾が揺れていた。

  「綺麗だ九狼、体も毛並みも」

  「本当っスか!? それって俺みたいな年下の狼男はタイプってことスか?」

  「ああ、嫌いになれるわけがない。とっても魅力的だぞ」

  その返事に悠太の尻尾が千切れんばかりに左右に揺れる。

  「俺、体は自慢なんス! 部活のほかに週三でジムにも通ってて、身嗜みもモテるように気を使ってるんスよ。特に体毛のケアは大切にしてて理容院でちゃんと整毛してフワッフワになるようにトリートメントも欠かしてないっス! ほら、どうっスか兄貴?」

  抱き付いてくる悠太に、

  「おっ、おう。そうだな……」

  確かに彼の言う通りモフッモフだった。モフッモフだったが、しかしこれは……。全裸の二人に抱擁されてはドギマギするほかない、一馬はどもりながらこの夢のようなひと時に身を置いている幸せを噛み締めた。

  そんな積極的に自分をアピールする悠太に対抗意識を燃やしたのが丈士だった。

  「おい五十嵐、俺の身体も見てくれよ? どうだ凄いだろう?」

  一馬から体を離すと、惚れた男に自慢の筋肉美を見せ付けるべくダブルバイセップスのポーズで両腕の上腕二頭筋をこれでもかと隆起させる丈士。

  「どうだっ褒めろ五十嵐っ!」

  フンッと鼻息荒く力瘤を作った獅子男に、

  「獅豪先輩も男らしくて凄い魅力的です、俺なんか相手をしてもらえるのが不思議なくらい格好良くて……」

  「だろう? 悠太と同じく俺も日頃から身嗜みには気を配ってるからな! 特にこの鬣なんざ最高だろ? 強い野郎のシンボルその物で、俺のプライドその物でもあるからよく目に焼き付けておけよっ!」

  彼が自慢たっぷりに鼻を鳴らしたのも頷ける。

  丈士の体からは獣の頂点に座するに相応しい雄の貫禄が滲み出ていた。贅肉の一切ない絞られた体躯は猛々しい獣気に満ち、野球部で培われた巨木のように太ましい太腿と臀部は、男好きなら思わずかぶり付きたくなるほどムッチリと肉々しかった。そして百獣の王たる鬣の素晴らしさには誰もが見惚れてしまうに違いない。[[rb:亜麻 > あま]]色から赤褐色を帯びた雄々しくも流麗な王の象徴は顔の周りに豊満に蓄えらえて、彼の勇ましさを際立たせていた。

  甲乙つけ難いほどどちらも美味そうな雄二人に迫られて一馬は悩ましい吐息をついた。

  体格だけではない、その持ち物も両者ともなかなかどうして。

  丈士は厚い雁首が張り出した極太の竿をしていた。全体的に淫水焼けして黒ずんでいるところをみると相当場数を踏んできたようだ。長さはそれほどないがゴツゴツと節くれ立った陰茎は逞しく上反り、くっきりと尿道海綿体の膨らみを見せていた。反対に悠太は太さはそれほどではないが長さがあり、色素沈着していない初々しい肉色の獣根は亀頭も大きく、根本に向かって太さを増していく理想的なフォルムをしていた。

  「うぅ……」

  彼らの裸からムンムンと臭ってくる雄の獣臭に一馬は[[rb:眩暈 > めまい]]を覚えた。

  「さあ、今度は五十嵐の番だぜ?」

  「兄貴のデカマラ見せてください……」

  丈士と悠太の指先が一馬のジャージズボンをゆっくりとずり下ろしていく。

  彼らはこの時を待っていたのだ。[[rb:類稀 > たぐいまれ]]な馬獣人の巨根をできるだけ近くで拝むべく、一馬の前に回ってその場に膝を折る二人。ズボンの両端にお互いの指を引っかけてゆっくり、ゆっくりと引き下ろす。すでに眼前には、まだ勃起していないというのに異様なほど盛り上がった膨らみが視界を圧迫していた。圧倒的な肉塊がこの中に潜んでいるのが分かる。

  灰色のビキニブリーフが現れると一段と雄の臭いが強まった。

  「はぁはぁっ、俺もうやっべぇ……」

  丈士が鼻をひくつかせてうっとりと目尻を下げたかと思えば悠太もまた、

  「兄貴のスケベな臭い嗅いだだけでもう俺、孕みそうっス……」

  盛んに鼻を鳴らしながら早くもペニスの先に粘液の玉を浮き上がらせる。

  ジャージが足元に落ちると、彼らの視線は完全に姿を現したその魅惑の膨らみに釘付けにさせられていた。短距離走で鍛え抜かれたぶっとい太腿の間にあってもなお威圧的なほどの存在感を放ち得るとは……。一馬の股座に息衝く男性器は[[rb:紛 > まご]]うことなく巨大な男根であった。

  「ああ、[[rb:凄 > すげ]]ぇ……兄貴の形が丸分かりになってらぁ」

  無理やり詰め込まれているせいでペニスの形状が露骨に浮き彫りになっているではないか。下向きに収納されたそれはあまりの体積に全てを包み隠せず、ビキニの両脇はすっかり持ち上がって隙間から黒々と繁った陰毛と青筋の浮いた陰茎を覗かせていた。

  悠太のあんぐり開いたマズルから涎が一筋垂れていった。

  おずおずと伸びる彼の手がビキニにかかり、体にタイトに密着したそれを剥いていく。汗を吸ってじっとり湿った薄布は丸く巻かれながら股下を離れるや、やがて目の前に姿を現したのは超重量級の馬根であった。

  途端にムッワァァァと蒸れた強烈な性臭が丈士と悠太の鼻を嬲った。

  「はぁぁっ、ああっ凄ぇ、凄ぇよ兄貴……っ!」

  「おお……おおおっ、やっぱりえげつねぇぜ、五十嵐のチンポはよぉ」

  口々に二人が感嘆する。

  圧迫から解放されてブルンッと跳ねた亀頭は平常時だというのに赤子の拳大は余裕であった。陰茎の太さもまた勃起した丈士の極太ペニスほどはすでにあるだろうか。これが一たび血液を漲らせたら全長30cm、子供の腕ほどの長さと太さに変貌を遂げるのだから恐ろしいものだ。

  目を見張るのは何も陰茎だけではない。

  陰嚢も当然、賞賛に値する大きさだった。大人の男の両手ですら乗り切らずに片玉が零れ落ちるほどなのだから、精子生産能力が凄まじく高いことを容易に窺わせる巨大さだ。また毛色と同じく黒褐色をしたそこは毛一本すら生えていなく艶々で、丸々と肥え太った睾丸によって皮がだらんと伸びて重く垂れ下がっていた。

  一瞬で瞳を犯された男たちのマズルがそこへ近付いていく。

  「兄貴ぃ……」

  「五十嵐ぃ……」

  悠太は右側から、丈士は左側からそっと口唇を一馬の肉茎へと這わせた。

  「おわぁっ!? ちょっ、そこはマジで汚いですからっ!」

  「なら綺麗に掃除してやるよ」

  いやらしい笑みを浮かべた丈士が特に汚れの酷そうな雁裏を舌先でこそぐ。

  「ああっそんなっ……うぐぅっ!」

  部活終わりで蒸れまくってかなり臭うはずなのに、陶然とした表情で二人が美味そうに舐めている。床に膝を付いてただ無心に、取り憑かれたように夢中になって愛撫している。己の汚いペニスがしゃぶられている事実にみるみる海綿体へ熱い血液が流れ込んでいく。

  勃起していく様は圧巻の一言だった。

  纏い付く二枚の舌を弾き飛ばして陰茎がグググッ、とたちまち倍々に膨張するや、亀頭も赤黒さを増しながら膨れ上がると、顔が映り込むほどの鏡面のような艶を放ち始めた。確かめるまでもなく鉄塊のように硬くなっているに違いない。完全勃起まであっという間の出来事だった。勃起の兆しが見え始めてから数秒後には、臍を大きく越えて[[rb:鳩尾 > みぞおち]]まで達する30cmの巨砲が堂々たる威容を二人に見せ付けていたのである。

  呆然とそれを見やる彼らは瞬きすらしない。

  ただただ目の前に誇示された馬根を瞳に映すだけ。

  それもそのはず、これほどの巨根の持ち主などそうはいまい。刀身のごとく緩やかにカーブを描いて反り返った姿はまさに肉刀の別称で呼ぶに相応しい特級品の一物だった。根本は黒く、先端に向かって徐々に艶やかな肉色へと変じているその色合いもまた実に欲を刺激されるものだった。

  灼熱に[[rb:炙 > あぶ]]られてさらに強く雄の臭いが鼻を衝いた。

  その欲情を誘う臭気に目の色を変えた丈士が、一馬の巨大な亀頭を飛びかからん勢いでいきなり口いっぱいに頬張った。

  「んぶっ! んんんっんむむぅっ!」

  「あっ!? 獅豪先輩、抜け駆けは卑怯っス! 俺もっ! はぅんっ、むぅぅっ!」

  負けてなるものかと続けて悠太が陰茎を横から咥える。

  「っくはぁぁっあ!? あっあっあっ先輩っ九狼っ! それヤバいっ! んぐぅぅっ!」

  強烈なダブルフェラに一馬は堪らず天井を仰いだ。

  「おっほっ! だっ駄目なやつだこれぇっ!」

  ここ一週間ほど抜いていないせいでチンポが敏感になっているところにきてこの激しい口淫である。目も眩むほどの快感が全身を貫いた。ゾクゾクと快美の濁流が脳味噌に流れ込んでくる。亀頭を丸呑みに咥えてのバキュームフェラに、ずぞぞぞぞっと何とも淫らな音が鳴っている。それと同時にまるでハーモニカを吹くように陰茎が激しく上下にしゃぶられている。獅子の肉厚の口腔が亀頭を包み込み、狼の細長い舌が陰茎に絡み付いて、めくるめくほどの快感が生殖器に植え付けられていく。

  一馬の脚がガクガクと震えていた。

  「あがっ、はあっ、はあぁっ、はっはっはっ……あはぁっ!」

  天井を見上げたままだらんと舌を垂らして一馬は喘いだ。

  こんな夢みたいなことがあっていいのか。自分のペニスを逞しい青年たちが一心不乱になってオーラルセックスしている。男を[[rb:悦 > よろこ]]ばせる舌技を懸命に駆使しながら奉仕している。青臭いお情けを恵んでもらわんと必死になってフェラしている彼らに、馬根もまた嬉しげに我慢汁を与えるのである。

  その塩気の強い粘液を舌に知って丈士は目を細めた。

  一馬の蒸れ魔羅は格別に旨かった。

  饐えた汗と皮脂の混ざった雄の淫らな臭いが鼻を犯すなか、ひたすら[[rb:雄渾 > ゆうこん]]な馬根を清めていく。とくとくと湧き続ける我慢汁を直接尿道口から[[rb:啜 > すす]]り、雁高の[[rb:鰓 > えら]]を舌先でレロレロと何度も翻弄し、そのまま青筋が浮きまくった陰茎へと下っていくのだ。

  その反対側では悠太が夢中で舌を這わせていた。

  悠太は馬根から滲み出てくる雄の濃厚エキスに堪らず目を細めた。

  一馬の蒸れ魔羅は格別に旨かった。

  [[rb:咽 > むせ]]るほどに濃い陰部の性臭に包まれながら、舌が[[rb:爛 > ただ]]れるほどの熱量を放っている肉棒の汚れを綺麗に舐め取っていく。それから舌を上へと伸ばせば、ふてぶてしく肉厚の傘を広げた亀頭を舌全体を使って扱けば、滲み出てくる嬉し涙を喉へと落とし込んでいくのだ。

  一馬の食い縛った歯の間から涎がダラダラと垂れていた。

  「んぐうぅぅ、ううっ……フーッフーッウゥッ……」

  今や彼の男根は唾液で[[rb:艶 > なま]]めかしく黒光り、玉袋から涎の筋が何本も垂れ下がっていた。

  その玉袋を丈士が口に含む。

  にゅぽっ、と口内に入っていく左の睾丸。

  同時に悠太も玉袋を口に含む。

  こちらも、にゅぽっ、と口内に入っていく右の睾丸。

  「おほおぉぉぉーっ!? ほおっ、おっおっほおおっ!」

  一瞬腰が引いた一馬の喉から甲高い声が[[rb:迸 > ほとばし]]った。ダブル玉吸いにこれまで感じたことのないほどの快感が襲ったのである。玉を吸われるなんて初めての経験だった。生温かな口の中でモニュモニュと金玉が優しく揉まれている、[[rb:解 > ほぐ]]されている。時折り強く吸われて、

  「おほぉぉぉっ!? ほぁぁっ、それやべぇっ! はひっひぃっ!」

  馬の大きな鼻孔をさらに広げて一馬は身悶えた。

  急所を完全に押さえられている緊張感が快感を何倍にも膨らませていた。たちまち腰の奥底に熱源が生まれて膨張するや、激しい射精欲に肉体が痙攣しだす。

  絶頂直前、本来ならペニスの根本に引き寄せられるはずの睾丸だったが、捕えた二人の口がそれを許さない。

  「ひいいぃっ!? 止めっ、それ止めてっ、ひあぁっあがっ駄目っそれ駄目だってぇぇーっ! いっいっ[[rb:射精 > い]]くっ、[[rb:射精 > い]]ぐぅっ! [[rb:射精 > い]]っちまうぅぅぅーっ!!」

  睾丸を二人の口に捕えられたまま、玉吸いされたまま一馬は絶頂に体を震わせた。

  一際大きく膨らむ馬根。ビキビキに浮き立つ血管。そして鈴口が赤黒い[[rb:内奥 > ないおう]]を存分に覗かせた刹那、開いた穴から凄まじい勢いで噴き出す馬男の禁欲一週間特濃ザーメン。

  ドッビゥゥゥゥゥーーーーーーッッッ!!! ビュービュービュウゥルルウルルルルルッッッビュブブッビュウーッビュゥーーーッッッ!!!!! ビュブブッビュブッビュブッビュブブブブブブブブブュルルルウルルルルウルルウルッ!!!! ドックドクドクドクッドップドップドップッ、ビュブブブブリュルルルルーーーーーーーーッッッ!!!! ビュビビッビュビッビュブブブブブゥルルルウゥゥゥゥーーーーッビュュビュッビュブブブブブブッッッッ!!!!! ドップドップドクドクドクドクッドュビューーーーーッルルルルルドビュッドビュビュッーーーーーッッ!!!

  この一週間に溜まりに溜まっていた精液が[[rb:堰 > せき]]を切って打ち上がった。

  その量、尋常ではなかった。いったいどれほど蓄えられていたというのか、噴水のごとく射出される高さは一馬の背丈を優に超えて天井まで達する勢いであった。

  目も眩むほどの絶頂感に一馬は白目を剥いた。

  「ガッハァァァッ! アガッガァッァアァァッ!? 射精止まらねぇっ、俺のチンポがっチンポが馬鹿になるッ、アアッ、ハアァァアアーッ!」

  精管を尿道を、灼熱のザーメンが勢いよく駆け抜けていく。

  ダブルフェラによって燃え盛った肉欲が射出力を飛躍的に高めていた。会陰部がぶっ壊れないかと思うほど激しく脈動している。そうしないと追いつかないのだ、次から次に種汁が腰の奥底から湧き上がってくるのだから。

  悪寒を覚えるほどの絶頂感だった。

  全身の黒鹿毛が[[rb:俄 > にわ]]かに総毛立ち、鳥肌が立ち、あらゆる筋肉が金縛りにあったかのように強張ってくっきりとその陰影を深くしていた。肉体が途轍もない快感に喜び勇んでいるのである。

  降ってくる白濁が黒鹿毛を瞬く間に黒白の[[rb:斑 > まだら]]模様に染めていく。

  ベチョッ、ベタタッ、と何とも重い音を立てて着弾する精液の雨は、やがて黒い被毛に何十本もの白線を引きながら流れていき、床へと滴り落ちていった。

  膨大な量の種汁はたちまち丈士と悠太の頭上にも降り注ぐ。

  「はあぁぁっ凄ぇ、凄ぇよぉ……あっちぃ、体が焼けちまう……」

  丈士は恍惚とした表情で顔面に浴びていた。

  長らく望んでいた恵みの雨でも得たかのような気分だった。この熱を知りたかったのだ。目を閉じると降り注ぐその熱量をより強く感じた。マズルに、鼻梁に、鬣に、精液の塊が当たる感触が生々しく伝わってくる。一滴一滴が重いのだ。それは一馬の子種がそれだけ濃度が濃いということだった。口を開けると、鈍い痛みを覚えるほどの濃密度の雨粒が舌を打つ。すこぶる栄養価の高い味がした。逞しい雄の味だ、一馬の優れた肉体でなければ醸成できないほどの芳醇な臭いを放つ雄の味。

  丈士の喉が美味そうな音を立てた。

  「……五十嵐、五十嵐ぃ……」

  煮凝り状に固まった子種が喉にへばり付きながら腹の中へと落ちていく。ああ、食ってしまった、溺愛する男のザーメンを。丈士は至福に喉を鳴らした。

  自慢だった鬣が汚れるのも[[rb:厭 > いと]]わなかった。

  鬣は獅子のプライドその物だ。この立派な鬣があるからこそ獅子の貫禄も増すというもので、[[rb:何人 > なんぴと]]たりとも犯すこと[[rb:罷 > まか]]りならない大切な体の一部だった。だが今はどうだ、野郎のザーメンにベタベタに[[rb:穢 > けが]]されるだなんて百獣の王の[[rb:面子 > めんつ]]が台無しにされる行為のはずなのに、もっとぶっかけてくれと願っている、願ってしまっている。ザーメンに濡れる鬣が重みを増して情けなく萎んでいく様が嬉しかった、体中が一馬のザーメン塗れになっていくのが堪らなく幸せだった。あれほど誇らしかった獅子の[[rb:矜持 > きょうじ]]が、雄の矜持が、音を立てて崩れていくのを感じた。

  悠太もまた[[rb:夥 > おびただ]]しい量の精液を一身に浴びていた。

  「兄貴のザーメン……はぁぁっ美味ぇっ、美味ぇよぉ……」

  長い舌に、鋭い牙に、当たったいくつもの大きな白濁の雫が、どろりと口腔に寄り集まって一塊となって喉奥へと流れ落ちていく。嗅覚を麻痺させるほどの猛烈な精臭は告げるのだ、この男の精液が爪の先ほどの量でも雌を一発で孕ませてしまうぐらい濃厚だということを。悠太はそれをまさに身をもって感じていた。うようよと蠢く活発な精子が舌の[[rb:味蕾 > みらい]]を、口内の細胞を犯している、卵子でもない細胞と受精しようと必死になって細胞膜に頭を擦り付けている。何千何万という細胞が何千何万の精子に一斉に犯されている。

  悠太のペニスから白い液体が噴き上がっていた。

  「ああっ……あああっ、兄貴っ兄貴ぃっ!」

  手も触れずに彼は達していた。

  [[rb:手綱 > たづな]]のない獣根はビクンビクンと暴れ、その先端から黄色味がかった劣情が水鉄砲のごとく迸る。ドビュッビュッ、ビュビュブブッ、ビュルルルルルルル――――ッ!! と噴出するそれは宙に不規則な白線を描きながら、一馬の精液と一緒くたになって悠太の体に降りかかった。

  あれほど気を使っていた灰色狼の麗しい毛並みが白濁一色に塗れていく。

  悠太もまた丈士と同じ気持ちだった。

  盲愛する一馬の熱が体を包んでいく感覚がどうにも心地良かった。被毛の一本一本に一馬の成分が染みていく。毛根から皮膚に、体内に、得難い強い雄の遺伝子が浸透していく。それはどんなトリートメントよりも効果がありそうだった。あれほどフワッフワだった自慢の灰毛は付着する精液にすっかり寝てしまっていたが、悠太は己の体を自ら抱き締めると、そのべっとりと濡れた触感に再び絶頂に体を震わすのだった。

  「いっ[[rb:射精 > い]]くっ! ああっ兄貴っ俺また[[rb:射精 > い]]くっス! フウッ、フグゥーッ!」

  涙を滲ませる狼の薄墨色の瞳が見上げる先で、馬男の血走った目が見下ろしていた。

  「くっ、九狼……っ! フーッ、フーッフーゥゥゥッ!」

  後輩のあられもない痴態が一馬の理性を一瞬で食い潰した。

  「九狼ッ!!」

  我慢が限界を越えた。一馬は涎を飛ばしながら叫ぶや、悠太を強引にベッドまで引き摺っていくとそのまま乱暴に押し倒した。

  「あっ、兄貴っ!?」

  一馬の突然の豹変ぶりに顔に恐怖を張り付かせた悠太だったが、それは一瞬だけで、たちまち締まりのない表情に塗り替えられていく。悠太は知っていたのだ、こうなった一馬が欲望に忠実になることを、一皮剥けて情け容赦なく相手を犯しまくる野蛮な獣になることを。あの飲み会の晩もそうだった。最初は一馬を頂くつもりで丈士と一緒にリードしていたのに、あまりに官能的な性の営みだったのか、途中から突然発奮して襲いかかってきたのだ。あの胸を焦がすほどの熱い一夜の享楽をまた味わえる、雌にされた悠太の肉体が痛いほど[[rb:疼 > うず]]いていた、欲していた、逞しい男のモノを一馬の灼熱を。

  一馬はベッドの上にうつ伏せになった悠太の尾をぎゅうと握ると力強く引っ張り上げて、尻を高々と突き出させた。

  「ひうっ!?」

  「フーッフーッ……いやらしいケツ穴しやがって! 俺を誘ってやがんのかっ!」

  [[rb:歪 > いびつ]]な笑みを浮かべた彼の口振りは粗暴な言葉遣いに変わっていた。

  雄の本能が剥き出しになっているのだ。生殖可能な雌を前にして、煮え滾った生殖本能が理性を追い出し、自我をただの獣のそれと変容させていた。

  一馬は生唾を飲み込んだ。

  狼男の真っ白な毛に覆われた臀部の中心に薄桃色の秘肉が息衝いていた。

  窄まった穴がまるで単体の生き物かのように収縮を繰り返している。やはり誘っているのだ、中は柔軟に蠢く気持ちいい肉壺であると相手に想起させて好物の男性器をどうにかハメてもらおうと誘惑しているのだ、このふしだらなケツマンコは。一馬の胸中に沸々と狂暴なまでの肉欲が湧いてくる。

  あれほど放ったというのに馬根は萎える気配もなく天を衝いている。

  まったく射精し足りなかった。

  金玉が重い。おそらくザーメンを射出するそばから精巣が精子を作り出してすでに精管膨大部にはたっぷりと弾が充填されているに違いなかった。

  一馬は悠太のそこにマズルを近付けた。

  鼻を鳴らして獣のように肛門を嗅いだ。得も言えない[[rb:饐 > す]]えた臭いが股間を刺激する。堪らない臭いだった、雄のフェロモンを凝縮させたかのような恥臭に促されて舌を伸ばした。

  「あああっ!」

  ベッドに顔を突っ伏している悠太から嬌声が漏れた。

  悠太はくすぐったさに身を捩った。馬男の舌が肛門を執拗なまでに舐っている。いやらしい舌の動きだった。穴の周辺を円を描くように這ったかと思えば、皺の一本一本を丁寧に引き伸ばしながら括約筋を解していく。弛緩させて挿入をスムーズにさせる気なのだ。激しい肛交の予感に体が打ち震えた。

  舌技に気を許して緩んだ肛門に舌が入ってくる。

  「あっあああっ! 兄貴ぃ……っ!」

  先を尖らせて硬くなった軟体が、ニュブブブゥ……と粘った音を立てて侵入してくる。強引に、容赦なく押し入られて括約筋は窄まることもできずにただ受け入れることしかできなかった。

  直腸を舌が出入りし始めた。

  中の塩梅を、括約筋の締まりを確認しているのだ。そしてこの行為はこう告げるのである、これからこの穴を性欲の捌け口として使用するぞ、と。舌など生易しいと思えるほどの巨大な生殖器が侵入してくるぞ、と。

  唾液塗れになったアナルがすっかり解れて開きっ放しになった頃。

  悠太は恍惚とした意識の中で、己の腰が両手にがっしり掴まれたのを感じた。

  「九狼、今からお前を犯す。いいか、しっかり耐え抜けよ? 途中で勝手に[[rb:射精 > い]]ったら承知しねぇぞ?」

  「はっはひぃ兄貴っ、早く兄貴のぶっとい奴を欲しいっス」

  「チッ、がっつきやがってこの淫乱狼がっ! なら思う存分くれてやるっ!」

  肛門に灼熱を感じた刹那だった、熱した鉄杭が括約筋を押し広げて一気に体内へと入り込んできた。

  「ッハァァァーッ!? ガァァッアアーッ!!」

  十分解されていたとはいえ、規格外の巨根に肛門が引き裂けんばかりに広げられて悠太は堪らず悶絶した。苦悶の表情に歯肉を剥き出して呻くも、侵入は少しも緩む気配がない。メリメリメリと括約筋を内側に巻き込みながら圧倒的な肉塊が直腸内に没入してくる。凄まじい質量と腹の圧迫感だった。皮膚から脂汗がドッと噴き出す。

  息が上がり、鼓動が早鐘を打つ。

  「ああ……はぁぁ、あぁ……はぁぁぅん」

  それでも愛しい男の逸物に犯されて喉から恍惚の声が漏れた。

  微かに残っていた雄の矜持がズタズタに引き裂かれていく。他人の腹の中を我が物顔で占有していくこの[[rb:悪辣 > あくらつ]]なデカマラこそが真の雄なのだ、そして自身はそれを受け入れるほかない雌なのだ。この男根の持ち主には従順に従うしかないと思わせてしまうほどの強い説得力があった。

  直腸を平らげ、馬根がさらに体奥深くへ潜っていく。

  「あっ、あっ、ああっ、その先は駄目っス、先輩っ駄目っスぅぅぅっ!!」

  侵入してはならない所まで侵入されて悠太は体を小刻みに痙攣させた。

  30cmの肉刀はS字結腸をまっすぐに矯正してさらに奥のほうまで達していた。

  「グフゥゥゥゥ……」

  一馬の口から満悦の息が漏れる。さすがに根本までは無理だったが、後輩の尻は腸壁がねっとりと絡み付き吸い付いてくる塩梅のいい肉鞘であった。

  しかし、もっとだ。もっと深く交わりたい。

  後背位で繋がったまま一馬は悠太の両腕を引っ掴んで彼の上半身をベッドの上から持ち上げると、思いっきり両腕を己のほうに引っ張った。

  「かっはぁぁっ!? あ……あがっ、がぁっ……」

  悠太は白目を剥いて意識を飛ばした。

  一馬の腰へ力尽くに引き寄せられて、ペニスが根本まで埋まってしまったのだ。

  「ガァァ……あガ、ガぁッ……あ、にきぃ」

  長大な陰茎がずっぽりと結腸を満たしていた。感じる、途轍もない熱量を発する異物がミチミチに体内を満たしているのを。腹が挿入された巨根によってボッコリ膨れ上がっていた、さらに一段高くボコッと亀頭がどこにあるのか分かるほどに突出していた。

  結合している、凹と凸が合わさって完全に一体となっている。

  「んああっ、はぁはぁ兄貴、兄貴っ、兄貴ぃぃっ!」

  「ハメられただけで感じちまったのか? 本番はこれからだというのに、この先どうなっちまうんだろうなぁ」

  耳元でいやらしい囁き声が響いた。

  いつの間にか体の上に一馬が覆い被さっていた。がっしりと逞しい肉体に組み敷かれて悠太の息遣いもさらに[[rb:忙 > せわ]]しくなっていく。熱い、体が燃えるように熱い……。筋骨隆々の裸体が背中を圧している、馬根を突き刺した交接部がグリグリと擦り付けられている。

  「はぁっはあぁぁっはぁはぁ、凄ぇ、兄貴のチンポ凄ぇよぉ……」

  「そうか、ならもっと感じさせてやるよ!」

  一馬の腰が動き始めた。

  腸内に埋まっていた怒張がズルルルルゥ、と引き抜かれるや、一転、勢いよく打ち込まれて、

  「くはぁっ!? ガァァァ……ッ!」

  悠太は悶絶した。

  暴力的なセックスが始まった。腰だけが機械仕掛けのように上下運動をただひたすら繰り返す。パンパンパンパンッ! と肉のぶつかり合う音を響かせながら男同士のまぐわいはさらに熱を帯びていく。生殖を果たさんといきり勃った男根を深々と挿入させる一馬、子種を植え付けて貰おうと必死に快感を与える悠太。肉欲に駆られた雄と雄が、互いを求めて絶頂を目指す姿は[[rb:斯 > か]]くも美しいものなのか。黒褐色の肉体美を汗に艶めかせる馬獣人の激しい性の営みを、傍らにいた丈士は陶然と見やりながら己の愚息を扱いていた。

  猛々しい交尾だった。

  セックスなどとさらっと呼べるものではない、それは生殖だけを目的とした獣の交尾と呼ぶに相応しい鬼気迫るまぐわいだった。

  全身汗だくになって交尾に耽る二人の獰猛な喘ぎ声が部屋に染みていく。

  「グオオッオオッオッ、どうだっ俺のチンポはっ オゥフッオゴッ、フンヌッヌウウッ!」

  「オゴッ! グフゥゥッ! 凄ぇっ馬チンポ凄ぇぇっ! 頭がどうにかなっちまうっスぅぅ!」

  気がおかしくなりそうだった。尻を深く[[rb:抉 > えぐ]]られるたびに脳裏が激しく明滅した。

  「お前は無理やり犯されるのが好きなんだろうっ!? ああンッ? この雌野郎がっ!」

  「グアァッ! そうッス! 俺のケツ穴は兄貴専用っス! だからいつでも強引にハメてほしいっスぅ!!」

  「おうよっ、しっかり俺の形を覚えておけよっ!」

  一馬は自重でしっかり肉壺を押さえ付けながら怒涛の腰使いで抜き差しを繰り返す。悠太の首筋のモフ毛の中に鼻を埋めると、部活帰りか剣道着の臭いが染み付いた汗臭い獣臭がさらに獣欲を高めていく。

  容赦のないピストン運動に括約筋は伸び切り、

  「オラッ! しっかりケツを締めろっ! 俺の種が欲しいんだろうがっ!」

  「うっス! 兄貴っ兄貴の種欲しいっ、グアァッアアッ!」

  飛び散る愛液が汗と一緒くたになってシーツに濃い染みを作るほどの雄交尾をただ黙って見続けるのはあまりにも酷というものだった。

  「いっ、五十嵐っ、俺もっ俺も混ぜてくれっ! もう辛抱堪んねぇんだっ!」

  丈士が今にも泣き出しそうな顔になりながら哀願した。見れば彼の獣根は先走りの糸を床まで垂れさせて赤黒く腫れていた。

  腰を動かしつつ一馬がそこに[[rb:一瞥 > いちべつ]]だけをくれる。

  「あンッ? 先輩、我慢もできないんですかっ。まったくそんな情けない[[rb:面 > つら]]して本当に百獣の王だなんてなっ!」

  荒い息に交じる嘲笑も今の丈士には響かない。

  「な、なんとでも罵ってくれっ、俺にも……後生だから俺にもそのデカマラをぶち込んでくれっ!」

  完全に表情は男に飢えた雌のそれで、チンポをねだる色狂いのそれだった。

  一馬は露骨に深い溜息を吐いた。

  「仕方ないな……、九狼を先に俺の物にしてやろうと思ったんだが、じゃあ先輩も一緒に食うとするか」

  そう言って交尾を解いてベッドから降りると、悠太をベッドの縁に四つん這いにさせるとその上に丈士を[[rb:跨 > またが]]らせて同じく四つん這いにさせる。すると縦に積み重なった二つの尻が一馬の目の前に出来上がった。

  絶景だった。

  上に獅子の薄黄色の尻と下に狼の灰色の尻。体育会系の筋肉質な尻が肛門も丸見えの状態で二つ仲良く突き出されている。一穴はしっかりと窄まり、もう一穴は閉じるのを忘れてしまったかのように、ぐっしょりと腸液に濡れた肉色の内奥を覗かせていた。

  一馬は湯気を上げる怒張を上の穴に宛がった。

  「じゃあ獅豪先輩、ここまで我慢できたご褒美を……」

  下卑た笑みが馬男の顔に浮かんだ直後、

  「ヒッ、ヒギィィィィーッ!?」

  獅子男の喉から女のような金切り声が迸った。

  丈士の脳裏をいくつもの火花が[[rb:爆 > は]]ぜた。鋼鉄のように硬化した亀頭が容赦なくアナルを[[rb:穿 > うが]]って体内に潜り込んできたのだ。凄まじい圧力に括約筋は抗うこともままならずに鉄兜の侵入を許した。瞬く間に侵入者が直腸を支配下に置いていく。腸の[[rb:襞 > ひだ]]肉をひれ伏させ、前立腺を押し潰し、結腸をも我が物にせんと剛直が圧倒的な武威を振るう。

  獅子のマズルからだらだらと涎が垂れていく。

  「アガァァァ……ハァァーッ、ハガァァァーッ……」

  これだ、これを求めていたのだ。丈士は意識が判然としない中でそう強く感じた。あの飲み会の夜に初めて味わった尻を犯された感覚が甦ってくる。尻の処女を奪われ、そのまま嵐のような激しいアナルセックスに我を忘れて[[rb:善 > よ]]がり狂ったときの途轍もない快感が再び体を襲おうとしていた。

  尻を犯される悦びを開花させてくれた馬根が腹の奥深くまで占領下に置いていた。

  「おぅふ……五十嵐、五十嵐ぃ凄ぇよ、お前のデカマラはマジ凄ぇ……」

  妊婦のごとく腹ボコになった丈士は瞳に感涙さえ浮かべていた。

  「まったく一回ハメてやっただけなのにチンポ狂いになるなんて、先輩とんだ淫乱野郎だな。どれだけ俺のチンポが好きなんだか」

  呆れて鼻を鳴らした一馬がゆっくりと腰を前後に動かし始めた。

  ゴツいほど浮かび上がっている陰茎の節くれに腸壁をこそがれて、鳥肌が立つほどの快感が全身を駆け巡った。堪らず丈士は頭を振って、

  「オッゴオォォッ!? それっそれやべぇっ! オッオッオッ、ホォォォーッ!」

  「感度抜群だなっ先輩! アンタは後輩に尻を犯されて感じるマゾ獅子雌野郎だったってことか」

  喜悦とやや蔑みを含んだ視線が背中に落ちているとも気付かずに丈士は善がった。

  緩慢だった一馬の腰使いが段々とそのスピードを上げていた。それに合わせるかのように丈士の息遣いも荒くなっていく。

  「五十嵐ぃ、五十嵐ぃっ!」

  期待に胸が[[rb:逸 > はや]]って仕方ない。もうすぐやって来るのだ、嵐のような怒涛の肛交が……。尻に食い込んでいる十本の指がさらに深く肉に沈んでいく。これからやる高速ファックに尻が逃げ出さないようがっしり固定しているのだ。

  「はぁ、はぁ、はぁぁ……」

  動悸が激しい、手足の先が冷たい、ああ喉が渇いて仕方がない。

  馬根がゆっくりと後退し、亀頭が肛門から抜けて、にゅぽんっ、と湿った音を立てた刹那、丈士は背後の一馬の気配が一気に膨れ上がるのを感じた。

  情け容赦ない雄交尾が始まった。

  一瞬で馬根に串刺しにされて丈士の意識が飛ぶ。

  「たっぷり種付けしてやるからしっかり孕めよっ! グオオッオッオッオゥッ! オッオッオッ!」

  判然としない意識の片隅で一馬の獰猛な唸り声が響いていた。

  キングサイズのベッドが激しく軋むほどの凄まじい腰使いだった。それは相手を[[rb:慮 > おもんぱか]]る気なんてさらさらない、ただ己が気持ちよくなりたいだけの独り善がりの交尾。汗の[[rb:飛沫 > しぶき]]を全身から放ちながら、筋肉を逞しく躍動させながら、絶頂に向かってひたすら[[rb:抽挿 > ちゅうそう]]運動を繰り返す一馬。

  丈士のマズルから垂れる涎が悠太の背に広がっていく。

  「んお゙お゙ッッ! お゙ッお゙ッお゙お゙お゙ッッッ! 馬チンポッ馬チンポォォォッ!!」

  自我が保てそうになかった。

  丈士は狂ったように喘ぎ続けた。滅茶苦茶にされたかった、破滅願望まで生じていた。この男にならどうされてもいい、命を奪われてもいいとすら思った。陸上スプリンターの腰のバネを活かした猛烈な肉杭の打ち込みに誰が尊厳を保てていられるというのか。一突きされるたびに獅子のプライドが削られていく、雌に堕とされていく……。

  そう、己は雌なのだ。この男の赤子を孕むべく生を[[rb:享 > う]]けた雌なのだ。

  「はひぃっ、ひぎぃっ、んお゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉ……」

  涙を流し、涎を流し、息も絶え絶えになりながら丈士はそう悟った。

  息も継げないほど快楽の海に溺れている先輩の姿に、後輩が羨ましそうに、

  「兄貴ぃ、俺にも! 俺にも[[rb:挿入 > い]]れてくれよぉ!」

  尻を振ってせがんでくるではないか。

  「ったく、我慢の利かねぇ連中たちだ! オラッこれでどうだっ!」

  一馬は丈士の尻から怒張を引き抜くと、その下の悠太の尻へと勢いよくぶち込んだ。すでにとろっとろに解された淫孔はさして抵抗を示すことなくズププププゥ、と何とも淫猥な音色を奏でて馬根を迎え入れていった。

  「くっはぁぁぁ……兄貴ぃ、やっぱ兄貴の凶悪チンポ[[rb:凄 > す]]っげぇ……」

  怒張を根本まで咥え込んだ括約筋が満足げにひくつく。

  腹いっぱいを埋める充足感はもう一馬の巨根でしか満たされない体になっていた。しっかり形を覚えさせられた肉体は一馬専用の性処理道具へと成り果てていたのだ。

  一馬はそれから交互に尻を犯した。

  丈士の尻を数十ストロークほど味わうと、次は悠太の尻を同じ回数ほど味わった。どちらの尻もさすが運動部の現役大学生だけあってよく締まった。特に前立腺を擦ってやるとその返礼とばかりにきつく締め付けてくるのが堪らなかった。また穴には個人差があるようで、丈士の中は腸壁が強く吸い付いてくるのに対して、悠太の中は柔らかく纏い付いてくるような感じだった。どちらも甲乙つけ難くて一馬は代わる代わる彼らの穴を[[rb:愉 > たの]]しんだ。尻の穴比べだ。これほど贅沢な遊びがあるだろうか、肉の搾精器をとことんまで味わい尽くせるとは。

  丈士と悠太は声にならない声を上げて[[rb:嗚咽 > おえつ]]を漏らしていた。

  もはや牙を抜かれた雌猫と雌犬だ。

  獰猛な肉食獣の面影など微塵も残っていない。無様なアヘ顔を晒して、男同士のめくるめく快楽の世界にどっぷり浸って性的快感を貪り続けるだけであった。

  激しく責め立てること一時間近く。

  部屋の中はすっかり三人の獣人たちが放つ獣臭と雄の臭いに満ち満ち、腹の底から響いてくるような雄々しい嬌声が途切れることなく尾を引いていた。一馬のタフな性交に丈士も悠太も腰砕けで、焦点の定まらない目は正気を保っているかすら怪しかった。

  やがて一馬の息遣いが切羽詰まったそれに変化した。

  「オフーッ、オフーゥゥッ! でっ[[rb:射精 > で]]てしまうっ、グフゥゥ[[rb:射精 > で]]てっ、しまうっ!」

  射精中枢が俄かに働き出した。

  迫る絶頂に肉体が引き絞られる。分厚い尻たぶが緊縮し、腹筋がその溝をさらに深くし、陰影を濃くする体中の筋肉。黒々とした巨大な陰嚢がビタンビタンッと尻に打ち付けられながらも、陰茎の根本に向かって次第に引き寄せられ、体全体が射精の気配に色付いていく。

  絶頂の予感を察した悠太が蕩け切った表情でねだる。

  「んはぁはぁっ、兄貴っ俺の中にっ、兄貴の種を俺の腹の中に注いでほしいっスっ!」

  それにすぐさま反応したのが丈士だった。

  「だっ駄目だっ、お前は後だ! 俺が先だっ、五十嵐には俺の中で先に果ててもらうっ!」

  「そんなのズルいっス先輩、俺だって先に種付けしてもらいたいんスからっ!」

  「お前は俺の世話になってる身だろうがっ! 居候の分際で出しゃばるんじゃねぇっ! さあ一馬っ、俺の中にたっぷりと放ってくれっ!」

  「嫌っス! ここは獅豪先輩でも譲らないっス! あっ兄貴っ、俺の尻をこのまま使ってください!」

  どちらが先に一馬の種を貰うか精液の奪い合いが始まった。

  二人とも欲しくて欲しくて堪らないのだ。

  先に注いでもらったほうが当然それだけ多くの種を仕込んでもらえる。活きのいい活発な精子がうようよと蠢く特濃のザーメンを一滴でも多く腹に満たしたいという切なる願望が彼らの口振りには滲んでいた。

  激しい抜き差しにすっかり赤く爛れてしまった二つの肛門が物欲しげに[[rb:収斂 > しゅうれん]]を繰り返している。

  何と浅ましい肉壺だ。

  一時間以上も大好物の馬根を咥え続けてなお満足できずに種まで欲するとは強欲が過ぎるというもの。おそらく今回の性交で孕む気でいるのだ。雌としての本能を覚醒させた肉体が、強い雄の遺伝子を後世に残さんと出来るだけ濃い上澄みを注いでもらおうと彼らの口を割らせたのだろう。実に浅ましく狡猾な肉壺だ。

  だが、貪欲であるからこそ一馬の相手も務まるというもの。

  逆に言えば彼らのような若くタフな獣人でなければ務まらなかっただろう。

  一馬の口角が、にたりと歪に上がった。

  「後輩は可愛いからなぁ……、しゃあねぇ、九狼、お前に先にくれてやる。ありったけのザーメンを仕込んでやるから一滴も漏らすんじゃねぇぞっ!」

  「うっ、うっス兄貴ぃっ!」

  返答を得るまでもなく、一馬は当然のように悠太の尻を再び犯す。犯す、犯す、犯す、本能に忠実に犯しまくる。バチュンバチュンッ! と苛烈な腰使いに悠太の形のいい尻が水風船のように波打ち、その下に見える彼のペニスも激しく腹に打ち据えられていた。よくよく見れば、被毛を濡らすのは先走りの他に、白い体液も混じっているではないか。掘られながら射精しているのだ。

  ボタッ、ボタタタッ! 腹から滴る雫が、鈴口から放出される白濁が、シーツに生臭い染みを点々と作っていく。

  「ンギィィィッ! 兄貴好きっ兄貴大好きぃっ! ヒギッ、ングゥゥゥゥーッ!!」

  牙を噛み締め、目を固く瞑って襲い来る絶頂に身を任せている悠太。

  射精にきつく収縮する肛門に一馬は唸った。

  「[[rb:射精 > い]]くぞぉっ、グオオッ、オッオゴッ! [[rb:射精 > で]]るっ、[[rb:射精 > で]]る[[rb:射精 > で]]るっ! フングゥゥーッ!!」

  脳髄を痺れさすほどの狂暴な射精欲が体を襲った瞬間、

  ビシューッビシュシューーーーッッッ!!! ドビュビュブブブブゥゥゥゥーーードッビュブウウウゥゥゥーーーーーッッッ!!!!! ビュブブッビュビビュビビッドックンドックンドックンドックンッ、ビューーーービューーーービュビュビューーーッッッ!!! ブシューッブジュルルルルルルルルビュビッビビビビッビューーーッッビュビュビューーーーーーーッッッ!!!!! ビュビュビュッ!! ビュービューッ!! ビュ! ビュ! ビュビュビュブルルルルルルルルッ!!! ドックドックドクドクドックドックンドックン、ビュビビビュブビュルルルルルルブビュルブビュルルルルルッッッッッ!!!!!

  一馬は射精した。

  凄まじい勢いでザーメンを射出する馬根。

  「オゴォォォーーッ!! オホッホォォォッオフッオッフゥゥゥッ!!」

  種付けの大絶叫が部屋中に轟き渡る。

  悠太の腸内を膨大な量のザーメンが渦を巻きながら結腸を遡っていく。これほどの大量射精なのに肛門からは一滴すら漏れてこない。直腸が紙一枚挟む隙間もないほど馬根にミチミチに埋まっているのだから遡るしかないのだ。

  瞬く間に悠太の腹が張っていく。

  「ああっ、ああっ、あああっ兄貴っ、兄貴の種が流れ込んでくるのが分かるっ! 凄ぇよぉ兄貴の種っ、ああ熱いっ、腹がっ腹が熱いっ!」

  腹の中が焼けるようだった。

  奥深くまで突き刺さっている怒張がビクッビクッと脈動しているのが伝わってくる。脈打つたびに大量の種汁を吐き出している。先ほど放ったばかりだというのに何たる量か……、確実に身籠らせる気なのだ、あまりに濃すぎて一滴でも孕むこと必至だというのに、無駄だと思えるほどの大量種付けをしてくるあたり、まさに種馬。そう、一馬ほど種馬に相応しい男はいない。並外れた精液生産能力によって有り余るほど、無尽蔵と言えるほどに精液を放つことができるのだから。

  まるで臨月を迎えた出産間際の妊婦のように腹ボテになった悠太も、したたかに精を噴いていた。

  「ガァァァッ! まただっまた[[rb:射精 > い]]っくぅぅぅーっ! ングウウゥゥッ!!」

  体内に子種を植え付けられながら自身のペニスからも白濁を放出する狼青年。ビシャーッビシャシャッ! とシーツを切り裂かん勢いで白線が何本も刻まれていく。

  一馬が絶頂を迎えて十五分は経っただろうか。

  その間ずっと一馬は射精し続けていた。

  「ぬふぅぅぅうぅっ!? とっ止まらねぇっ、ザーメン搾り取られるっ! おほっおっほおおぉぉっ!!」

  悠太のそこは名器と呼ぶに相応しかった。本人は自覚していないだろうが、雄の精をとことん吸い尽くすような構造をしていた。腸の柔い襞肉が優しく纏い付くタイプは、刺激は強烈ではないが、しかし真綿で首を絞めるような、遠回しにじわじわと相手を責め立てるような快感の与え方をするのである。結果、気付いたら精力が尽きるまで気をやっているのだから恐ろしいものだ。

  絶頂がようやく引いたのは驚くことに三十分を過ぎた頃だった。

  「ガッハァッ、ハァハァハァ、すっげぇケツマンコだったぜ悠太……って、聞こえちゃいねぇか」

  賞賛を与えようとしたが、どうやら気絶してしまったらしい。見れば白目を剥いて口から泡を噴いていた。

  「……さて、じゃあ今度は先輩の番だな」

  「待ってた、待ってたぞ五十嵐っ、俺にも早くめくるめく世界を拝ませてくれっ! ハァハァハァッ早く早くっ、まっ待ちくたびれて気が狂っちまいそうだ!」

  「そんなにコレをハメて欲しいのか?」

  一馬はほくそ笑みながらその依然硬さを保っている怒張の先でベチベチと丈士の肛門を叩いた。

  「フヒィ!? そっそれっ! それぇぇっ!!」

  「メス豚みたいな声を上げやがって……」

  焦らされて悩ましい喘ぎ声を漏らす丈士だったが、そう簡単に全部は[[rb:挿入 > い]]れてもらえない。いたずらに亀頭部分だけを、にゅっぽにゅっぽ、と何回も出し入れされて仕舞いには涙声になりながら切々と哀願するのだ。

  「お願いだ五十嵐ぃ、そんな意地悪しないでくれぇ……はぁぁ、あぁぁあ頭が変になりそうだっ!」

  「本当に可愛いなぁ先輩は……仕方がないな、[[rb:挿入 > い]]れてやるよ!」

  一馬が腰を前にやるや、怒張がスムーズに肛門の中に呑み込まれていく。

  「んお゙お゙お゙お゙お゙お゙ッッッ!!」

  涙ながらに渇望していた馬根に再び貫かれて丈士は背を反らせて咆哮した。

  それにしても驚くべきは全く萎えることを知らない一馬の生殖器だ。立て続けに二度も大量射精したというのに、男根は鋼鉄のような硬さを維持したままで、玉袋も重たげに垂れているところをみるとまだまだ余裕がありそうだった。もし悠太の中に今も収まっていたら抜かずの数十発は余裕でいけるかもしれなかった。もう絶倫の範疇を越えていた、性欲の化け物と言ったところか。

  悠太の淫水に妖しく艶めく肉刀はズプズプと音を立てて埋まっていき、やがて付け根まで沈むと一馬は抽挿を開始した。

  「オラッ先輩が望んたブツだっ! どうだっオラオラッ!」

  「激しっ!? ンガァァーッ、すっげ、すっげぇデカマラ生掘り馬チンポぉ!! ああ馬チンポ馬チンポ馬チンポ馬チンポ馬チンポォォォッ!!」

  ついに狂ったか、丈士が[[rb:譫言 > うわごと]]のように何度も同じ言葉を口走る。その丈士の腹と悠太の背の間から、ドロドロと白く粘った体液が垂れてきてシーツへと滴り落ちていく。どうやら丈士も感極まってトコロテンしてしまったらしく[[rb:射精 > い]]き狂っていたわけだ。

  絶頂に窄まろうとする肛門を大質量にものを言わせて[[rb:撥 > は]]ね除けて掘り倒す一馬。

  「グオオッ! いい締め付けじゃねぇか先輩っ! そう、その調子だっ、その調子で締めて俺をもっと悦ばせろっ!」

  快楽に顔を醜く歪ませた彼の口から涎がダラダラと垂れていた。

  全身汗だくになりながら飽くことなくひたすら雄交尾に没頭する一馬。射精を促さんと吸い付いてくる腸壁に意識を蕩かされつつ、雄の本能に従って生殖器を淫肉で摩擦し続ける。たっぷりと種付けしなければ、雄の使命を果たさなければ。相手の腹のできるだけ奥に赤ん坊の源を送るべく、結腸を抉るようにさらに交わりを深くする。

  丈士の何度目かの吐精に肛門が痙攣したとき、馬根が一際大きく膨れ上がった。

  「フングゥゥゥーーッ[[rb:射精 > い]]ぐ[[rb:射精 > い]]ぐうぅっ!! オッゴォォォォーーーッ!!」

  絶頂の雄叫びが一馬の喉を震わせた瞬間、

  ビュブルルルルルルゥゥゥーーーーーーッッ!!! ビュブブッビュブブブブブッビュービュービューーーーーーッッッ!!!! ドッッッビュウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーッッ!!!! ブビュッビュピピッ!! ビュピッ! ビュッビュッビュッ!! ビュビビビッ、ビュブブブブッ、ビュービュービュブブブブブッッッ!!! ブピピッブッビュウウウウウウゥゥゥーーーーーーッッッビュブッビュブッ!!!!! ドップドップドクドクドクッドックンドックンドックンッドププププッ!!! ドビュッドビュウウゥゥゥーーーーッッッ!!!! ビュブブッ、ドブプッ!!

  夥しい量のザーメンが尿道を駆け抜けて鈴口から噴射した。

  「ヒィッ!? 腹がっ俺の腹が膨れていくぅっ! かっはぁぁぁ……あああっ!」

  見る間にぼってりと張っていく腹に丈士は射精感に襲われながらも歓喜に打ち震えていた。ようやくだ、ようやく好いた男に子種を植え付けてもらえた。

  それにしても不思議な感覚だった。

  腹に子種が満ちていくこの名状し難い感覚は何か、もしや雌の体から母の体になろうとしているのか。そうか、だとしたらこれは母性だ、母性が芽生え始めているのだ……。丈士は判然としなくなっていた意識の中でそう悟った。屈強な雄に種付けされる悦びがこれほどのものだとは思いもしなかった。今まで体験したことのない多幸感に包まれながら彼はまた会陰部を律動させて再三のザーメンを悠太の背中にぶち撒けていくのであった。

  ようやく男たちの性宴が終わったのは東の空が薄っすらと明るくなる頃だった。

  「……見知った天井だ」

  ベッドの上でボテ腹になった竿兄弟に挟まれて寝そべっている一馬は独りごちた。すっかり劣情を出し尽くしてあれほど攻撃的だった性格は元に戻っていた。

  「随分と体が軽くなったような気がします……」

  それもそのはず、一晩中続いたセックス三昧で大量に汗を掻き、大の男二人の腹を妊婦と見紛うほど中出しに精液を放ち続けたのだから体重もそれだけ減るというものだ。

  愛する男の腕枕にご満悦な丈士が言う。

  「俺たち体の相性が抜群なのかもしれねぇな……見ろよ五十嵐、俺の腹こんなだぜ?」

  大食いしたレベルではないほど膨満している腹を撫でる獅子男。

  「すみません獅豪先輩、先輩の尻あまりにも気持ち良すぎて」

  「ガハハッ、いいってことよ。俺は今この上なく幸せなんだからな。この腹の膨らみは俺たちの愛の証だ、愛の深さだ。だからこそ本気の子作り交尾をしまくれたんだ。こんなにも愛してくれてありがとうな五十嵐」

  腹を擦り、柔和に微笑む丈士が顔を傾けて一馬を見つめた。

  どちらともなく距離が縮まり重なる二人の口吻。夜通しで睦み合った爛れるほどの熱い情愛の名残が唇を通じて伝わってくる。

  「んっ、五十嵐……」

  離れていく唇に丈士は切なげに名を呼ぶ。

  あれほど情熱的に、あれほど攻撃的に責めてきたのにこの男はなんて優しいキスをするのだろうか。そのギャップが堪らなかった。丈士の想いをさらに強く募らせる。離れたくない、ずっと彼の傍らで愛していたい、このまま一夜限りの肉体関係で終わらせたくはなかった。

  分厚い黒褐色の胸板の向こう側で灰色の耳がもそりと動いた。

  「兄貴、俺にも……」

  反対側の腕枕に頭を預けていた悠太がキスをせがむ。

  「本当にすまなかったな九狼、無茶させてしまって……もう大丈夫か?」

  悠太は今まで経験したことがないほどの快楽に溺れて途中で意識を手放してしまったのだった。気が付いたらすでに事は終わり、今こうして一馬の逞しい腕を借りていたのである。

  「大丈夫っスよ。それに謝るのは俺のほうっス、兄貴の相手をしている途中で気を失ってしまって、マジ俺って情けない……」

  悠太はその澄んだ薄墨色の瞳を伏せた。

  もしあそこで気絶していなかったらもっと悦ばせてあげられたかもしれない、そして自分ももっと可愛がってもらえたかもしれない。そう思うと悔しくて、悲しくて、残念で、仕方がなかった。

  心底申し訳なさそうに耳をペタンと垂れてしょげ返る後輩に、

  「そんなことはない、俺は十分満足しているぞ九狼?」

  そう告げて彼の頬に送るのは感謝を込めた優しいキス。

  「兄貴……」

  瞬く間に頬を桃色に染めた悠太の瞳が潤んでいく。

  「一馬の兄貴、俺も大満足っス! 腹がこんなに膨れるまで兄貴に中出しされて……」

  半円を描く腹を愛おしく撫でながら悠太は言った。

  男に抱かれる喜びを彼に教えてもらった。愛する男の子種を体に仕込まれるとこんなにも幸せな気持ちになるとは思いもしなかった。そして幸せに感じれば感じるほど頭をもたげてくる一抹の不安。……別れたくなかった。初めは軽いノリで、ワンナイトラブのつもりでセックスを楽しむ予定だったのに、彼がそれを許さなかった。気付いたら愛していた、別れ難いほど心奪われていた、彼の体に夢中になっていた。

  もう離れることはできない……。

  だから伝えるのだ。

  悠太も、

  「兄貴……俺の彼氏になってほしいッス!」

  「五十嵐……俺の彼氏になってくれっ!」

  そして丈士も。

  同時の求愛に一馬と言えば、元来の真面目っぷりを発揮して激しく[[rb:狼狽 > うろた]]える始末。

  「えっ、ええっ、えええっおっ俺とっ!? こんな俺でいいんですかっ!? 体が頑丈ぐらいしか取り柄がないし、それでもよかったら……って、俺はどっちに返事すれば……二人とも好きになってしまったし……ええと返事は後日でも?」

  引き攣った笑みを浮かべる想い人に、丈士がおかしそうに鼻を鳴らす。

  「五十嵐、ここは一つ俺からの提案なんだが、もし付き合ってくれるなら俺と悠太の二人と付き合ってくれんか? 恋人は一人だけって法律で決まってるわけじゃねぇしな。どうだ悠太、それでもいいだろ?」

  「はいっス! 俺もその案に賛成っス! もし俺だけが付き合えることになって獅豪先輩と険悪な仲になったらこの家追い出されちゃいますからね」

  「俺はそんな度量の小せぇ男じゃねぇぞ! む……まあいい、ってことでどうだ五十嵐?」

  まさかの展開にしばしの間呆気に取られていた一馬だったが、

  「お、俺でよかったら、その喜んで……」

  悩むまでもなかった。

  彼らとの縁は偶然居合わせた居酒屋での飲み会をきっかけにして繋がった。肉体関係がその直後に先行した何ともおかしな始まり方だったけれど、縁がまさかこんな形になるとは夢にも思わなかった。今回一緒に寝てみて、体のことは知れたものの私生活を始め彼らの素の部分をまだほとんど知らない。もっと知りたかった、もっと心を通じ合わせたいと思った。この胸を焦がすほど相手を深く知りたいと思う気持ちは恋情の何物でもなかった。

  一馬の返答に二人が飛び上がって喜んだのは言うまでもない。

  「五十嵐っ! 俺はガサツな男だけど本当にいいんだなっ!?」

  「兄貴……俺めっちゃ嬉しいっス! 兄貴が俺の初めての彼氏だっ!」

  抱き付いてくる彼らを抱き締めていいやら一馬の腕が所在無げに宙を行き来する。

  「俺も大概ガサツで脳筋なところがあるけれど、二人のことは絶対に大切にする」

  そう真情を吐露して、宙を[[rb:彷徨 > さまよ]]う腕をそっと彼らの背に置いた。

  正直に言えば下心は確かにある。

  こんなに体の相性がぴったりな男たちといつでも好きなときにセックスできるだなんて嬉しくないわけがない。毎日朝晩二回抜いてもムラムラが鎮まらない性欲旺盛な身にとって、身近に処理してくれる相手がいることは望外の幸せだ。

  両腕に抱擁する二人の体温が心地いい。

  一馬の顔から自然と笑みが零れた。

  望外の幸せ……、そしてそれ以上に幸せなのは彼らに好かれていることだ。あまりに性的興奮が高まると攻撃的になってしまう己を無条件で受け入れてくれている事実が何よりも嬉しかった。

  両手に花だ、かなりゴツい花だけれど。

  彼氏の逞しい胸の中に抱かれながら丈士が言う。

  「一馬……、ここで一緒に暮らさないか? お前といつも一緒にいたいんだ、引っ越してこいよ」

  「そうっスよ兄貴! 兄貴なら大歓迎っ、全然遠慮することないっスよ!」

  「居候の分際でどの口が言う……まったく調子のいい奴だ」

  その申し出はとても魅力的なものだった。

  一馬が今借りているアパートは[[rb:築古 > ちくふる]]のオンボロ物件で格安なのは申し分ないのだが、壁は薄いわ、風呂はないわ、大柄の体には狭すぎるわの三重苦で辛いものがあった。だから丈士たちが住むこのマンションは別天地だった。広々とした間取りに、体育会系の大男三人が余裕で寝られるキングサイズのベッド、洒落たシステムキッチンや調度品の数々、どこをとっても一馬の安アパートとは雲泥の差がある。

  しかし一馬には素直に頷けない理由があった。

  「俺もここでルームシェアして暮らしたいのは山々なんですけど、その……お金が」

  そう、肝心の払える物がない。金がないから安アパートに住んでいるわけで。

  「一馬、家族や友人ならルームシェアと呼ぶが、俺たち恋人同士なんだし、そこは同棲だろ? 恋人に家賃なんて払わせるかよ。それでももし肩身が狭いと思っちまうんなら金はいいからよ、その……」

  丈士のいやらしい視線が一馬の股座へと落ちて、

  「ここで払って貰えりゃあ俺たちは十分さ、なあ悠太?」

  「そうっス、兄貴のここで十分お釣りがくるっス!」

  二本の手が馬根をぎゅっと握り締める。

  「うっ、ううっ二人とも……」

  急所を押さえられて一馬が唸る。

  腰の奥がカッと熱くなり、たちまち下腹部に向かって滾った血潮が集まっていく。

  断れるわけがないのだ、こんなに魅力的でスケベな男二人に迫られては。家賃の代わりになるなら己の肉体でよければ喜んで差し出そう。そして彼らが満足できるまでとことん犯してやろう、足腰が立たなくなるまで、精力が尽き果てるまで、そして子を孕むまで……ずっと。

  「覚悟しろよお前らっ!」

  一馬は鼻息荒く体を翻すと、挑発的な眼差しを投げてくる彼らに猛然と挑んでいった。

  完(次頁、後日譚)

  

  

  [newpage]

  

  

  AFTER STORY―― 九狼悠太の場合

  晩秋の柔らかな木漏れ日が小窓から差し込む昼下がりの男子トイレに彼らはいた。

  何も連れションのためにわざわざこんな[[rb:人気 > ひとけ]]のない9号館の片隅にある、埃を被った薄汚れた便所にやって来たのではない。小一時間ほどドアが閉じられた個室の中では、素っ裸になった男たちが情熱的なキスを交わしていた。

  なるほど、人目を忍んで大学内で情事に耽るにはまさに打ってつけの場所だ。

  それにしても陽光が燦々と降り注ぐ真っ昼間から事に及ぶとは何と大胆な。

  黒鹿毛の馬獣人、五十嵐一馬は、後輩であり恋人の狼獣人、九狼悠太の口の中へたっぷり唾液を流し込むほどの深い接吻をしながら、悠太の怒張を優しく扱いた。

  「んんっ……」

  甘い声とやや弾む息が一馬の口内に入ってくる。

  どうやら余程興奮しているようだ。何せここの便所に来る道中でも歩きにくそうに前屈みになっていたほどだから相当性的欲求が高まっているらしい。

  学食で友人の柴崎と昼飯を済ませた後、腹ごなしに筋トレしようとトレーニングルームに向かっている途中で悠太に声をかけられた。話を聞いてみたら唐突に、今から抱いてくれと言う。顔を見たら明らかに発情しているのが分かった。一馬を映す瞳を熱く潤ませ、頬を紅潮させて甘い吐息をついていたのである。詳しく訊いたら、朝から悶々として仕方なかったらしく我慢できなくなって一馬の姿を探していたのだとか。

  一馬に断る理由はなかった。

  恋人に求められたなら男としては奮い立つまでだ。

  そうしてこの人目に付かないキャンパス端にある9号館トイレへやって来たのである。

  「兄貴……」

  離れていく唇に涎が糸を引き、そして切れた。

  とろんと表情を蕩かした悠太へ微笑を送って一馬は再び彼へ唇を這わせた、今度はその筋肉質な胸板へと。

  「ふはぁっ!」

  乳首を柔らかな粘膜に包まれて悠太のマズルから熱い息が漏れる。

  無駄のない均整の取れた肉体であった。まだ大学一年とはいえ剣道部で先輩たちに厳しく扱かれているのだろう、よく引き締まった裸体は精悍な男の魅力に溢れていた。灰色狼のアッシュグレイの被毛も美しく、凛とした彫りの深い顔付きも相まって、剣道着に身を包んで竹刀を振る凛々しい姿が容易に想像できた。

  口に含んだ乳首を一馬は舌の先で転がした。

  桃色の乳頭が跳ねるたびに頭上から甘い吐息が降ってくる。

  そのまま吸いながら手を胸から腹のほうへと落としていく。肉付きを、筋肉の付き具合を確かめるように揉みつつゆっくりと。

  「あうぅ、先輩……っ!」

  こそばゆいのか悠太が体をくねらせる。

  一馬は目を細めた。まったく、いちいち反応が股間に来る。セックスの場数を踏んで堂に[[rb:入 > い]]った百戦錬磨の男もそれはそれで魅力的だが、こうして初々しさを残した色事にまだ不慣れな男もこれはこれで魅力的だった。触られただけで体をビクビクと痙攣させている悠太が愛しくて堪らない。だからもっと可愛がってやろう。

  乳首を堪能し終えて、唇を胸から腹へ、そしてさらにその下へと。

  「悠太、しゃぶるぞ……」

  「ふあぁっ!?」

  硬くなっていた肉茎の先を口に含んだ瞬間、悠太の腰が大きく跳ねた。

  舌に我慢汁の粘り気と塩気が広がるのと同じくして、何とも生臭い臭気が鼻腔を抜けていくのを感じた。どうやら少量だけ精液を漏らしてしまったらしい。

  「あうぅ……うぅ、うぅぅ……」

  見上げれば顔を真っ赤にして目を固く瞑っていた。必死に射精しまいと耐えているようだった。本当に可愛らしいと思いながら、一馬はゆっくりと彼のペニスを根本まで咥え込んでいく。

  悠太のそれは実に理想的な形をしていた。

  もっさりと奔放に繁った陰毛から突き出した根本は太く、グンッと元気に反り返って伸びる獣根は力強さに溢れていて亀頭もまた鰓の張った惚れ惚れとする形状だった。まだ遊び慣れていない[[rb:初 > うぶ]]な色合いも食指が動くには十分で、一馬は時間をかけて後輩の初チンポを味わっていく。プリップリの亀頭を吸えば美味い我慢汁にもてなされ、雁の裏を[[rb:啄 > ついば]]めばそこは丁寧に洗われていないのか濃く凝縮した雄の味にもてなされ、鉄棒と化した陰茎をしゃぶれば浮き立った血管の頼もしい脈動にもてなされた。

  馬の長いマズルにすっぽり埋まった悠太の獣根。

  この広大なキャンパス内に何千人もいる学生たちの中でいったい誰が想像できるだろうか、今この時間、校舎の片隅で男が男にペニスをしゃぶられて喘いでいる姿を。

  馬の分厚く長い舌が精を搾り取らんと動き出す。

  ずぞぞぞぞぞっ、と何とも卑猥な音を立てるのは口内を真空状態にしての強烈なバキュームフェラだ。ペニスに強く吸いつく口の粘膜が容赦なく刺激を与えていく。さらに唾液をふんだんに纏った舌が纏い付いてくるのだから堪ったものではない。口で上下に激しく扱かれながら舌が雁首を擦り、陰茎を舐め回す。

  悠太の脚がガクガクと震えていた。

  「はっ、はガッ、はふっふガッガァァ……ッ!」

  腰が抜けそうなほどの快感に襲われているのだ。

  刺激から逃れようと引いていく腰を逃さんとばかりに一馬の顔が深くのめり込む。それでも腰は引いていき、ついに尻が背後のドアに当たると、追い詰めた獲物を一馬の舌は執拗に嬲り始めた。

  「うっぐうぅぅっ!? あっ兄貴っ、やばいっそれやばいっスっ! そんなに吸われたら俺もうっ! ガァァッ!」

  前後する一馬の頭を両手で押さえながら悠太が叫ぶ。

  しかし一馬は止めなかった。

  止め処なく噴き出す先走りに喉を鳴らしつつペニスをしゃぶる、しゃぶり尽くす。揉みくちゃに亀頭を[[rb:甚振 > いたぶ]]り、陰茎にバキュームの圧を与え続ける。それに加えて、白い毛に覆われた形のいい狼ふぐりを掌に包むや揉んでやる。そうやって生殖器全体を愛撫してやれば、悠太はもう弱々しい泣き声を上げるしかないのだった。

  「っはぐっ、うぅううっ! 駄目っ……それ駄目ぇっ! あぁ、あああーっ!!」

  美しく割れたモフッ筋がギュッと引き締まった刹那、

  ビューッビュビュビューーーーッッ!! ビュッビュビュルルルルルッ! ビュッ! ビュッ! ビュビューッ! ドピュッ! ドッピュッドッピュピュッ!! ビュブブブゥゥゥーーーーッッ!! ビュピピッ、ビュブッ、ビュブルルルルッ! ドックンドックンドックン、ドクドクドク……。

  元気いっぱいに獣根から精液が噴き出した。

  「ハガァァァーッ! ガッガァァァッ、アッアッアッ!!」

  鋭い牙列を覗かせた狼男のマズルから涎が糸を引いて垂れていった。

  一馬は口の中に勢いよく放たれる新鮮な獣液を音を鳴らして飲んでいく。濃密なザーメン臭が鼻腔を抜ける。握っている玉袋を揉んでやればやるほどドクドクと精液が迸った。その濃度は格別に濃く、喉にべっとり絡み付くほどでさすが旺盛な性欲を誇る体育会系の学生に相応しいものだった。

  尿道に残っていた最後の一滴まで吸い取ると一馬は口を離した。

  「ふぅ……美味かったぜ悠太」

  「はぁはぁはぁっ、はぁはぁ、ふはぁはぁはぁ……」

  どうやら言葉を失うほど気持ち良かったらしい。虚空を見つめる薄墨色の瞳は半ば瞼が下りて、表情筋がすっかり弛緩し切っていた。

  一馬はおかしそうに鼻を鳴らした。

  九狼悠太という男は知れば知るほど可愛げのある男だ。付き合い始めてすでに一か月が経っていたが、彼への興味は深まるばかりだった。毎日が楽しかった。それこそ薔薇色の日々というやつで、好いた悠太と寝起きを共にする暮らしがこうも心を豊かにするものだとは驚きだった。この大学生活二年間で一度もしたことのない自炊を始めてみた。その気になったのはもちろん悠太の影響だ。立派なシステムキッチンもあることだしと、手を出したらこれがなかなか楽しい。二人して近くの生鮮食品スーパーに出かけて食材を選ぶだけでも気分が弾むのはそれだけ彼のことを好きなのだ。長ネギがはみ出した買い物袋をぶら下げて帰路を他愛無い会話をしながら歩く幸せ、キッチンに立って分担作業に手際よく調理しながら途中で味見にと相手の開いた口に食べ物を持っていく幸せ、そんな日常の何気ない事が幸福なのだと悠太に気付かされた。

  一馬は立ち上がった。

  「今度は俺の番だぜ悠太?」

  そっと彼の手を取り、己のガチガチになった愚息を握らせる。

  「ああ兄貴……」

  「分かるだろ、俺の熱量? これからお前をこれで犯す、徹底的に犯しまくる。泣き[[rb:喚 > わめ]]いても許してやらねぇぞ、いいな」

  一馬が放つ圧倒的な雄の息吹に当てられて、悠太の顔が陶酔に蕩けていく。

  ドアに背を預けた悠太の片脚を高く持ち上げると、一馬は露わになった彼の秘肛に唾で湿らせた怒張の先を宛がった。そしてそのまま腰を前に突き出すや、

  「うああっ兄貴っ! んっはぁぁぁ……あはぁぁっ!」

  何とも艶めかしい声が悠太のマズルから漏れた。

  精強な馬根が窄まった穴をゆっくりとこじ開けながら体内に沈んでいく。ぬぷ、ぬぷぷぷ……、これまで何十回とハメられてすっかり形を覚えさせられた肛門は無条件で歓迎するのである。括約筋がもう離すまいと亀頭を丸呑みに咥え込むや、貪欲に陰茎までも平らげていった。慣れ親しんだ肉棒を挿入されて、まるで失っていた体の一部が戻ってきたかのように悠太は嬉しさに咽び泣いた。

  一馬が獰猛な唸り声を発しながら腰を振っていた。

  「あがっ! はぁっ兄貴っ兄貴ぃぃっ! もっと激しくもっと滅茶苦茶に俺を犯してっ! ひっひぃぃぃっ!!」

  結腸の奥まで一気に串刺しにされて悠太のペニスから白濁が迸る。

  一馬の腹に勢いよくぶち当たった劣情が何本もの淫らな白線を引いて垂れ、床のほうへと滴っていく。

  普段は礼儀正しくて優しい一馬だったがセックスのときだけは様相が一変するのが悠太は嬉しかった。一切の労わりや配慮のない自分本位のセックスだった。雄の本能剥き出しの荒々しい交尾は、己を一瞬にして雌にしてくれるのだ。男の矜持が[[rb:完膚 > かんぷ]]無きまで砕かれるのと引き換えに、屈強な雄に犯される雌の悦びが胸に満ちてくるのである。己は雌だ、逞しい雄に子種を植え付けてもらって子を孕む雌なのだと自覚するのが何より幸せだった。

  激しい交接にドアがガタガタと軋む。

  「グオオッ! オッオッ、悠太っ悠太ァ!」

  腰にグッと力を入れて下からしゃくるように突き上げる一馬。

  前立腺を[[rb:磨 > す]]り潰されて悠太は悶絶した。絶頂が止まらないペニスが暴れながら四方八方に白濁を飛び散らせていく。

  「はひっ、ひぃぃっ兄ぃ兄貴ぃぃーっ! [[rb:射精 > い]]く[[rb:射精 > い]]く[[rb:射精 > い]]くぅぅぅーっ!!」

  「グゥゥゥゥッ締まっ、るッ! グオオオッ!!」

  強烈な締め付けに唸った一馬が、悠太の両脚を持ち抱えると今度は駅弁スタイルで犯す。突然体を持ち上げられて咄嗟に彼の首に腕を回す悠太。

  「しっかり俺にしがみ付けよっ、振り落とされるぞっ!」

  言うや一馬はドアを豪快に蹴り飛ばして個室の外に出ると、そのまま悠太の尻たぶに指を食い込ませて怒涛の勢いで腰を突き上げ始めた。

  「ひっ!? ひあぁぁぁっ! あぁっあああーっ!!」

  悠太の喉から悲鳴のような嬌声が割って出た。

  駅弁をやられたらもう何処にも逃れようがない、そう孕み袋になるほか道はないのだ。

  野蛮な腰使いに悠太の体が大きく弾む。決して軽くはないのにゴム[[rb:毬 > まり]]のように弾むのだから、スプリントで鍛えられた腰のバネはどれほど強いというのか。体が弾んでは落ち、弾んでは落ちの繰り返しで悠太の意識が白く飛ぶ。落ちるたびに自重も加わって馬根がズドンッ! ズドンッ! と内奥を抉ってくるのだから堪らない。再び彼のペニスからは間欠泉のごとくザーメンが噴き上がっていた。

  小窓から秋の柔らかな陽光が差し込むなか、汗みずくになって交尾する雄二体。

  いつ誰が入ってくるかも知れない緊張感が余計に二人を燃え上がらせていく。

  激しい出し入れに交接部はすっかり白く泡立ち、タイルの床にボタボタと滴り落ちるホイップ状になった愛液。愛を確かめる行為は[[rb:斯 > か]]くも激しいものなのか。雄同士の息詰まるほどの性行為を窓から見える[[rb:梢 > こずえ]]に止まった一羽の小鳥が物珍しそうに眺めていた。荒々しい性の営みが小鳥のつぶらな瞳にははたしてどう見えているだろうか、もしかしたら獰猛な肉食獣に捕食されていると映ったかもしれない。ある意味、雄が雄を喰う、間違ってはいない。一方は草食獣でもう一方は雌に堕ちてはいたが。

  黒褐色の体表にだらだらと汗を流しながら一馬は恍惚の世界にいた。

  愚息を括約筋がきつく締め付けてくる。締まりこそが肛交の醍醐味だ。全身の筋肉を万遍なく鍛えろと剣道部の先輩に言われて、愚直にも括約筋まで鍛えていそうな悠太のそこはとにかく締まった。

  一馬が堪らず呻く。

  「グウゥゥゥッ、[[rb:射精 > い]]っちまうゥゥッ! グゥッ、[[rb:雄膣大量射精 > なかだし]]キメるぞ悠太っ! しっかり受け止めろよ!! オグッ、フグゥゥゥーッ!!」

  [[rb:踵 > かかと]]を上げて渾身の一突きで尻を突き刺した直後、

  ブッビュウウウウウウウウウウーーーーーーッッッビュブブブルルゥルルルルルーーーーーーッッッッッ!!!!! ビュブブブブブッドビュードビュブブブブブブルルルルルルッッッ!!!! ビュブビュブビュブブブブブルルルルッッ!!!! ビュービュビュビュブウウウウウウゥゥゥーーーーッッビュビッドビュブブブブッ!!!! ドックドックドックドックドックドクンドクンドクンッッッ!!! ブピピッビューービューーーービュビビビビビビッッッ! ドビュッドビュブゥッ! ビシュービシュシューーーーッッ!! ドビュブルッ、ビュブルビュブルルルルゥゥゥーーーーッッ!!!!

  射出したザーメンが腸内を逆巻きながら奥へ奥へと駆け上っていく。

  煮えに煮えた獣液が瞬く間に腸壁を白く染め上げ、悠太の意識までをも白く塗り潰す。

  「あはっ……はっがっ……がっ……」

  腹に鈍痛を覚えるほどの強靭な射精力だった。

  雌となった肉体が歓喜してザーメンを飲み込んでいる。渇き切っていた体細胞約六十兆個の一つ一つに逞しい雄の子種を満たすべくゴクゴク飲んでいる。その一つ一つを活発な精子が犯していく、片っ端から犯されていく、[[rb:嗚呼 > ああ]]、肉体が一馬色に染め上げられていく……。

  悠太もまた恍惚の世界にいた。

  生殖を終えた一馬と交わすキスはとても刺激的で甘い味がした。

  「……立てるか?」

  「あ、ちょっと無理なようっスね……」

  心配してくれる一馬に正直にそう言った。腰が抜けて脚が立ちそうになかった。倒れそうになる体をすかさず一馬の厚い胸に受け止められた。そしてそのまま抱き締められる。

  窓からの秋風に彼の体の温もりが優しかった。

  「しばらく俺の胸で休め、な?」

  「はいっス……」

  トクトクと聞こえてくる心音が何とも心地いい。

  意識がぬるま湯に浸っているようなぼんやりと[[rb:揺蕩 > たゆた]]うなかで悠太は思った。この男と出逢えて本当によかったと……。初めての彼氏がこんなに格好良くて、男らしくて、タイプど真ん中で未だに信じられなかった、自分はなんて果報者なのかと。でも目覚めたらいつも彼が隣にいてくれるのだ、毎日寝息を聞かせてくれるのだ。一緒に登校して、一緒に料理して、一緒に食べて、一緒に笑って、一緒に寝て……。また明日もきっと今日かそれ以上に素晴らしい彼との日常が胸をときめかせてくれるだろう。本当にいいのだろうか、罰が当たらないだろうか、こんな幸せな時間を共に過ごせることにただただ感謝しかなかった。

  だから言葉にして告げるのだ、

  「兄貴、俺の彼氏になってくれてありがとう。いつまでも大好きっス、一馬さん……」

  AFTER STORY―― 獅豪丈士の場合

  時刻は午後五時半過ぎ。

  夕闇に染まる部室棟を練習終わりの各部員たちの騒がしい声が包むなか、大柄の男二人が誰かに見つかるのを恐れるかのように気配を殺しながら部室棟の外れのほうへと歩いていた。皆がユニフォームを着替えて帰路に就こうとする中、一人は野球のユニフォームを着たままで、もう一人も陸上のユニフォーム姿のままいったい何処へ向かおうというのか。

  気配を消している辺り、どうやら[[rb:如何 > いかが]]わしい理由がありそうだ。

  「こっちだ一馬……」

  声を殺した低く重い声が夕闇に染みた。

  獅子獣人、獅豪丈士は後輩である馬獣人、五十嵐一馬の腕を引っ張りながら、辺りに誰もいないことを確かめると部室棟脇にある用具室の中へと入り込んだ。

  ここなら誰にも邪魔されずにすむ。

  用具室は各運動部が共通で使うライン引きや三角コーンなどの備品が収められている小さな部屋で、すでにグラウンドの片付けが終わって部員の立ち入る姿はなく室内はひっそりと静まり返っていた。

  「どうしたんですか丈士先輩、いきなり……」

  困惑顔の一馬に丈士は、ああ、とだけ短く答えると後ろ手に扉の鍵をかけた。硬質な音がやけに大きく響く。

  これで二人きりだ。ようやく一馬と二人きりになれた。

  「ふぅぅぅ……」

  誰にも知られずに連れ出せた安堵に丈士のマズルから長い息が漏れた。

  これから己がしようとする行為に興奮が次第に高まっていく。今日は朝からムラつきが治まらなかった。何せ、目を覚ましたら隣に寝ている一馬が素っ裸だったせいで、ビキビキに青筋を立てて腹の上に踏ん反り返っている朝勃ちが丸見えだったのだ。そんなあられもない姿を見てしまったら興奮しないほうが無理というもの。朝っぱらからさっそく一発楽しもうとしたところで遅刻ギリギリだと気付いて泣く泣く手を引いたのである。

  そんなことがあって悶々とした状態でこの時間まで耐えていたもののそれも限界だった。

  家まで我慢できそうになかった、一秒でも早く一馬と愛し合いたかった。

  薄闇の中の一馬の姿を網膜に焼き付ける。

  電灯を[[rb:点 > つ]]けるわけにはいかない。中にまだ人がいると分かって誰かがやって来るかもしれないからだ。鍵をかけたので裸になっていても服を着る余裕はあるだろうが、誰にも邪魔されないに越したことはない。

  黒鹿毛のせいですっかり夕闇と同化していた。

  「一馬……」

  夕闇にがっしりとした逞しい体の輪郭だけが微かに浮かび上がっている。それだけでも性的興奮を高める材料としては十分だった。その体に抱かれたい、猛々しい雄を感じたい。

  ギラギラと肉情に燃える獅子の眼光を浴びて、一馬が察したか、

  「先輩、我慢できないんですね?」

  「ああ、俺はお前なしじゃいられねぇ体になっちまった。責任取れよ……」

  丈士はフラフラと[[rb:覚束 > おぼつか]]ない足取りで歩み寄ると一馬を抱き締めた。

  練習直後でパンプアップした筋肉の触り心地が、そして鼻を衝く男の臭いが興奮をより一層強く煽っていく。

  「フンスフンスッ……フガァッ、一馬の臭い堪んねぇ……」

  ノースリーブのウェア越しに胸元に顔を埋めて鼻を鳴らす。

  ウェアに染み込んだ汗と獣の臭いが鼻腔を通り抜けていく。非常にけしからんウェアだった。己が今着ている野球のユニフォームと違って陸上部のそれは実に官能的だ。肉付きも露わになる紺色の袖なしランニングシャツに、下は黒のスパッツタイプのランニングパンツで、ペニスの形が露骨に浮かび上がるのだから堪ったものではない。特に一馬の場合は、巨根ゆえに盛り上がりが[[rb:甚 > はなは]]だしかった。

  丈士は直に触れるべく一馬のシャツの裾に指をかけると、

  「俺に全て任せてくれ……な、一馬?」

  「先輩、本当にここでする気なんですか? 家に帰ってからのほうがじっくりと」

  言い終わらないうちに一馬の口を丈士の口が塞ぐ。

  「んんっ……野暮なこと言うんじゃねぇよ、俺はもうこんなんなってるんだからよ?」

  そう言って一馬の手を取って導いた先は己の股間。

  そこはすでにギチギチにユニフォームパンツを押し上げていた。と言うよりも今日は一日ほぼ勃起しっ放しだった。なかなか治まらないせいで野球の練習中も走るたびにペニスが激しく擦れて、今やスライディングパンツの中は滲み出た我慢汁でぐっちょりと濡れていた。

  性的興奮の確かな証拠を突き付けられた一馬の喉仏が大きく上下するのが薄闇の中でも分かった。

  「分かりました、じゃあ全て先輩にお任せします。俺を先輩の好きなようにしてください」

  「おう、任せときな! たまには俺がリードしたいしな」

  丈士はそう言って一馬のシャツを脱がせた。

  鼻先を先ほどよりも強い汗の臭いが[[rb:掠 > かす]]めた。一馬の臭いを嗅いでいると理性が蝕まれていくのが分かる。濃厚な雄フェロモンというやつなのだろう、丈士は再び鼻面を胸に埋めると深呼吸しながらそのままゆっくりと膝を折っていった。

  汗に湿った腹の毛を口に含みながら、汗の味を知りながら、やがて辿り着いた先は大きく隆起した下腹部。

  「おふぅ……すっげぇ」

  スパッツの上からでも分かるほど布地から雄々しい臭いが滲み出ていた。

  「ふぅぅはぁぁぁ、ふぅぅはぁぁぁ……」

  鼻を擦り付け鼻腔をひくつかせてしっかり堪能した後でスパッツを剥ぎ取ると、下から現れたのは白いサポーターだった。極薄の生地が汗を吸っているせいで男根の姿が生々しく透けて見えている。途端、解放された熱気に乗ってムワァッと蒸れまくったチンポの臭いが嗅覚を犯す。

  頭がクラクラした。

  堪らず丈士はむしゃぶりついた。

  雄の臭いとエキスがたっぷり染み込んだサポーターを音を立てて啜った。汗の塩気と男の恥ずかしい味が思考を痺れさす。何も考えられなかった、白い[[rb:靄 > もや]]がかかったかのように思考能力が奪われていた。

  激しい愛撫にたちまち中身が体積を増していく。

  そうなるともうサポーターは何の用もなさない。ムクムクと膨張する内包物にたちまち捲れて股下に追いやられるや、中から勢いよく怒張が飛び出した。ぶぅん! と風を切る巨大な馬根が丈士の頬をしたたかに[[rb:打擲 > ちょうちゃく]]する。

  突然の魔羅ビンタに丈士の表情が一瞬で雌のそれに変わった。

  「おふっ!? ああ一馬ぁ……いつ見ても凄ぇよなぁ一馬のは……」

  丈士は惚れ惚れと馬根を見やった。尻が疼いて仕方がなかった。

  肉刀、いや、宝刀だ。もはや丈士にとって宝その物だった。これほどの名刀はこの世に二つとないだろう。おそらく斬れない物はないに違いない、百獣の王の矜持までをも見事斬ってみせたのだから。丈士はごくりと生唾を飲み込んだ。こうして人心を惑わすのだから、この宝刀はもしかすると妖刀なのやもしれなかった。

  開帳された妖刀が囁くのだ、慰めろと……。

  丈士は取り憑かれたように表情をぼんやりと崩すとユニフォームを脱ぎ始めた。

  「もう我慢ならねぇ……一馬ぁ、そこに横になってくれ」

  「分かりました、じゃあ」

  一馬が床に体を横たえさせると、丈士は最後にソックスとストッキングを脱いで全裸になるや彼の腰の上へと跨った。そして一馬の怒張を手で支えて直立させると、天を衝くその先端へとゆっくり腰を落としていく。

  灼熱の焼き[[rb:鏝 > ごて]]が肛門をジュッ! と焼いた。

  「はあぁっ!」

  軽く触れただけで丈士の体を電流にも似た快感が突き抜けた。

  もうこれなしでは生きていけなかった。四六時中、一馬のことを考えていた。寝ても覚めても一馬の裸体が、雄渾な男根が、脳裏に浮かんでくるのだった。己がこんなにも淫乱だなんて彼に出逢うまで思いもしなかった。それでもセックスではセーブしているほうなのだ。本人に知れてしまって、チンポ狂いと思われるのが恥ずかしかった。だから数回に一度は一馬のペニスを思い出しながら後孔を独り寂しく慰めた。それで却って彼への想いを募らせてしまい、次のセックスのときに激しく乱れてしまうのが今の悩みの種でもあった。

  肛門がズププププッと旨そうな音色を奏でて好物を咥えていく。

  「ううっ獅豪先輩……っ!」

  「おふぅ……んほおおっほっ[[rb:太 > ふ]]ってぇ! やっぱ馬チンポ最高だぜぇ……」

  落ちる腰に極太の肉杭が尻の奥深くへと打たれて丈士は小刻みに体を震わせた。

  擦られた前立腺がキュンキュンと疼いている。特濃ザーメンがぶっかけられるのを期待しているのだ、もうじき願いが叶うと。肉体が[[rb:諸手 > もろて]]を上げて異物の侵入を歓迎していた。

  やがて尻が一馬の陰毛を下に敷いて完全に結合を果たすと、

  「どうだ一馬、俺のケツマンコは?」

  「先輩の中いつもきつくてすぐに[[rb:射精 > い]]っちゃいそうですっ……ぐうぅっ!」

  一馬の顔が気持ちよさそうに蕩けていくのが嬉しかった、己の尻で感じてくれているのだ。

  「なら秒で昇天させてやるよっ!」

  丈士は不敵に笑むや、腰を激しく上下に動かし始めた。

  騎上位での容赦ないデカケツ魔羅扱きに、一馬は堪らず熱い息を放った。

  一馬は思った。丈士とのセックスがいつも激しくなるのはきっと彼がそれだけ性に貪欲なのだ。日頃からそれは感じていた。ふと視線を感じて振り向くと丈士が熱視線を送っていることは日常茶飯事だった。根っからのスケベなのだろう。二人でソファーに座ってテレビを見ている最中に気付けば股間を丈士に揉まれているし、一人風呂に入っているとドタドタと足音を響かせながら慌てて入ってこようとするし、朝目覚めて何か股間がもぞもぞすると思ったらペニスが咥えられていることも毎度のことで、事あるごとに体を求めてくる。当然、求められて嬉しくないわけがなかった。丈士は一馬にとって本当にスケベで可愛い先輩なのだった。

  実際に可愛いのだから仕方がない。

  ノンケから見たらただの暑苦しい脳筋野郎なのだろうが。

  一馬は己の体の上で汗だくになって腰を上下させている丈士を恍惚と見やった。

  薄茶色の短い被毛も特徴的な獅子の肉体はどこもかしこも筋肉が発達し、その中でも下肢の、野球の走り込みで鍛えたぶっとい太腿に目を奪われた。思わずかぶり付きたくなる肉付きの良さだった。そんな武骨な野球部員が自身の乳首を指に摘みながらセックススクワットをしている姿は淫猥極まるもので、無性に情欲が掻き立てられていく。

  一馬は鼻息荒く言った。

  「いい顔してるぜぇ先輩、そんなに俺のチンポでケツ穴掘られるのが気持ちいいのかよ?」

  極度の性的興奮時にのみ顔を覗かせる攻撃性が口調に滲んでいた。

  「ああっ! ああっいい! 馬チンポ馬チンポ馬チンポォ!!」

  「ったく、俺はディルド扱いかよ。俺も堪らんぜぇ、雄臭ぇ肉オナホはよぉ!」

  きつく締め付けてくる括約筋に、一馬は強烈な突き上げを食らわせた。

  「ガッハァッ!?」

  ちょうど腰を落とし切ったのと同時の一突きに丈士が上半身をのけ反らせて身悶えた。

  「ああ堪んねぇ先輩のとろっとろの雄膣……っ!」

  一馬は傍らに脱ぎ捨ててあった丈士の汗を吸ったアンダーシャツとスライディングパンツを引っ掴むや鼻に押し当てた。

  「汗くっせぇ……ああ堪らんっ!」

  繊維一本一本にまで練り込まれたかのような強烈な汗と獣の臭いを一心不乱に嗅ぎながら腰をズンズン突き上げる。

  丈士もまた同じように一馬の汗と雄臭がたっぷり染み込んだサポーターを手に取って顔面に擦り付ける。大好きな一馬のチンポの臭いに包まれ、そのチンポに容赦なく責め立てられている己の姿に陶酔するのである。

  雄の淫臭に酔いながら汗みずくになって彼らは交尾する。

  すでに陽は沈み、外の常夜灯の明かりが僅かに窓から差し込むだけの薄闇の中で、愛を確かめ合う一馬と丈士。

  「ふうっ! ふっ! むぅっ! 先輩っ先輩っ!」

  「ンガッ! ガッ! フゥン! 一馬っ一馬っ!」

  交わる黒い大きな二つの影。相手の体の輪郭はすっかり闇に溶け、何処が顔だか、腕だか、脚だか分からなかった。ただ一か所だけ、深く結合した部分だけが互いの存在をありありと伝えていた。

  視覚情報を失ったなかで丈士は一馬のペニスを感じていた。

  失ったからこそペニスだけをより強く感じることができた。

  熱い熱い一馬のそれが体の奥深くまで埋まっている。この闇の中に確かにいるのだ、最愛の男が、愛しの一馬が……。結ばれている、一つになっている、一馬の肉体と己の肉体が混然一体となっている。交接部が蕩けるようだった。激しいピストン運動に肉がぐずぐずに溶けて形をなくしていくようだった。嗚呼、一馬、一馬……。丈士の脳裏に一馬の笑顔が浮かんだのとほぼ同時に彼は絶頂に体を硬直させていた。

  ブビューーーーッッビュブブブブブッビュブルルルルルルーーーーッッッ!!!!! ビュッビュッビュッビュブブブブッブルルルルビュブブブッ!!! ドッッッビュブッ!! ビュブブブルルッッ!! ビューッビューーーゥゥゥッッ!! ビュービュービュブブブブブッッ!!! ビュビッビュブッビュッビュッビュッビュッ!!! ビュブブブブーーッ!!!

  快楽の結晶が激しい濁流となって薄闇を貫く。

  「ガハァッッ!! ガアァッーーッアグゥゥゥーーッ!! 一馬ァァァァーーッ!!」

  絶頂の咆哮に闇が震えた。夥しい量のザーメンが瞬く間に一馬の体に降りかかり、黒い体を黒と白の淫らな斑模様に変えていく。

  一馬もまた絶頂の引き金が引かれようとしていた。

  降り注ぐ様子は暗くて見えなくとも、膨大な量の種汁が全身に着弾しているのは分かった。どれほど濃いというのか、一滴が重いのだ。皮膚を穿つほどの重い一滴一滴が快楽を与える火種だった。着弾したところから快感の[[rb:焔 > ほむら]]が一斉に噴き出し、何百という火種から噴き上がった焔がやがて全身を包んでいく。途轍もない悦楽が肉情を焦がし、射精中枢を焦がし、ついに一馬は達した。

  

  ドッッッッッビュブブブブッッッルルルルルルーーーーーーーッッッッッビュビビッビューービュビュビューーーーーッッッ!!!!! ビューーーーービューーーーービュビュビュビューーーーッッッドッッッッビュウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーーーーッッッッ!!!!! ドプドプドプドップドップドップドッッップドッッッップドックンドックンドックンドックンドックンッッッ!!!!! ブジュルルルルルルルウッビューービュブブブッッビュビビビュルルルルルルルルーーーーーーーーッビューーーュビュルルルルルルルルッッッッ!!!!! ビュウビュウビュビビビビビビビッッ!! ビュピピピピピッッッ!! ビュルッビュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッッッ!!!! ビュビッビュビビビビッドピュドビュッーーーーーーーーッッビュドゥルルッビシュービシュービュルルルルルルルルルルッッッ!!!!!

  

  一馬専用の孕み袋が瞬く間に膨れていく。

  「オゴオオオオッオッフオッフゥゥゥゥッ!! グルルルルッグッガァァァッ!!」

  襲い来る絶頂に肉食獣さながらの咆哮を上げて一馬は種を仕込む。

  愛する男を満足させるべく、そしてもっと愛してもらうべく、彼が望む物を最後の一滴になるまで送り込んでいく。激しく脈動する蟻の[[rb:門 > と]]渡りによって噴出した白濁は轟々と音を立てて愛する男の腹を満たしていくのだ。

  やがて部屋に静寂が満ちた。

  闇の中で苛烈な愛を確かめた男たちは最後、満足そうにキスを交わすのであった。

  

  夜空を見上げると満天の星が煌めいていた。

  「寒くないですか先輩?」

  「さっ、寒くねぇよ!」

  丈士は星空から視線を戻すと、こちらを振り返っている一馬に慌ててそう告げた。

  つい言葉が詰まってしまったのは何も寒いからではなく、気恥ずかしかったのだ。丈士は今、一馬の背におんぶされている状態だったのだから。その理由は激しいセックスに腰が抜けてしまったからという、大の男として何とも羞恥極まるもので恥ずかしいことこの上なかった。

  丈士は彼の太い首元に赤くなった顔を埋めた。

  「……寒くなんかねぇよ」

  そして、蚊の鳴くような声でぼそりと呟く。

  一馬の広い背中の温もりが何とも優しかった。

  晩秋の[[rb:夜気 > やき]]が満ちる通学路は帰路につく社会人ばかりでもう学生の姿は見当たらなかった。もしこんな情けない姿を友人に見られたらと思うと、不安が頭を過ったが、しかしそれは一瞬で消えた。逆に見せ付けてやればいいじゃないか、俺たちはこんなにラブラブな仲なのだと――、一馬の堂々とした足取りと、幸せそうな横顔を見て丈士はそう思った。

  一馬の弾んだ声が夜気を震わせる。

  「あ! 先輩っ、ラーメン食っていきませんかっ!?」

  「おっ、いいなそれ! お前との肉弾戦でちょうど腹も減ってることだしよ。悠太も誘ってな!」

  「はいっ!」

  二人の吐く白い息は一つに交じり合いながらやがて夜の賑やかな街に溶けていった。