騎士団による大規模掃討により、
とある山賊団が壊滅した。
窃盗、暴行、強姦、違法植物。
なんでもやってはいたが、その山賊団では殺人だけはしていなかった。
改めて被害状況の確認やアジトの捜索をしたのだが、
そのような殺人の証拠となるものは出てこなかった。
そのため慈悲が与えられることとなった。
「お前たち山賊は社会秩序を乱し、
多くの悪行を重ねた。
相応の罰が必要である!
だが最後の一線だけは越えなかった!
よって、相応の罰と共に、
慈悲の心によって更生の機会と選択の猶予を与える!
苦難に満ちた道となるだろうが、無事に更生することを願っている。」
判決文はこの通りだが、
実際のところ政治的な都合が大きい。
現在、街では労働力が不足している。
最低限は足りているのだが、
細かいところまで手が届いていない。
荷運び、使いっぱしり、小間使い、縄結い、下水掃除。
そう言ったくだらない仕事が滞り気味だ。
そのため、山賊とは言え最低限の善性はあるとされる連中を
労働力として街に取り込むことにしたようだ。
しかし、とはいえ山賊である。
無条件で街に迎え入れるわけにはいかない。
見せしめとなりうる目立つ罰を与える必要があるわけだ。
牢屋の周囲には多くの市民が集まっていた。
元山賊の無様な姿を見に来た市民と、
元山賊を安くこき使おうと値定めしに来た市民だ。
もう間もなく刑の執行を終えた元山賊達が牢屋から釈放されるところだ。
誰かの来たぞという声が聞こえた。
確かに出てきた。元山賊達がぞろぞろと出てくると
市民はその様子を興味深げに覗き見る。
彼らのほとんどの元山賊は狼や犬の獣人、或いはその混血。
そして少数の猫の獣人であった。
私物は一切没収されて何もない、下着すらもない。
無一文の裸一貫で釈放された彼らはみな股間を手で隠している。
彼らには限定的な三等市民権が与えられる。
実質的な奴隷階級だ。
そして更生の機会と称した
下等な労働に就く予定となっている。
では相応の罰と選択の猶予とは?
彼らに与えられた罰とは"三本分"である。
"三本分"とはどういう意味だろうか。
それはすぐにわかる。
「貴様ら!いつまで隠している!
両手を挙げよ!貴様らに下された罰を見せろ!」
衛兵が槍の柄を地面に打ちつけて鳴らし、
ホールドアップを命じた。
いまさら逆らうことなどできぬ山元賊達は大人しく手を挙げた。
「見ろよあれ。」
「恥ずかしいわ。」
「ぶ・ざ・ま!ねえ!」
雄ならだれでも持っている玉袋の上には
雄ならだれでも持っているはずの物がない。
元山賊達にはチンポがなかった。
一様に切り落とされてして、
毛の禿げた傷痕と小さい穴だけしかない。
雄としての誇りを失い見世物同然となった元山賊達は
羞恥心と後悔で顔を歪めた。
涙すら流している者もいた。
チンポがまずは"三本分"のうちの一本目である。
残りの二本はというと、四肢のうちのいずれか二本だ。
彼らには手足が欠けていた。
手首、或いは足首で切り落とされて無くなっている。
選択の猶予と言うのはこの部分だ。
残り二本分をどれにするかを本人に選ばせたのだ。
多くの者は利き手ではない方の手と、それと反対側の足を選んだ。
だが中には両足を切り落とすことを選び、膝立ちとなっている者もいた。
確かに両手とも維持するメリットもあるだろう。
逆に両手が無くなっている者もいる。
両手については何を考えていたのかは不明だ。
元山賊達は一生ものの枷を背負うこととなり、
生涯に渡って苦労することになる。
だが見せしめとしての目に見えてわかる相応の罰としての効果は十分だ。
これで市民からの反発は避けられる。
労働力としての能力も半減するデメリットがあるだろうが、
それは例え反逆行為を行おうとしてももはやまともには戦えないメリットでもある。
「はっ湿気た面しやがってよ。」
まだ牢に山賊が残っていたらしい。
堂々と出てきたのは狼獣人の男。
立派な体躯、濃い茶色の毛皮、鋭い目つき、
彼こそは山賊長ブラカス。
この山賊団を束ねていた男だ。
如何にも悪人面、まさしくボスと言った様子だ。
両手を組んで堂々とやってくる。
「貴様!何をやっていた!
さっさと並べ!そして両手を挙げろ!」
「へいへいっと!」
ブラカスは悠々と最も目立つ真ん中に割り込み、
そして両手を挙げた。
淀みなく歩いてきた両足があり、
挙げた両手にはどちらも手の平がついている。
ではブラカスの"三本分"の罰はどうなったのか?
市民も、元山賊達も驚いた。
彼は大胆にも玉を選んだのだ。
チンポ・タマ・タマで三本分!
チンポがなければタマなど意味がない。
タマを捨てることで手足を残したのだ。
どうだとばかりにブラカスは腰を突き出した。
雄が完全に失われて無になった傷跡だけの股間をわざと見せつけるように、
こんなのお構いなしだと言わんばかりに腰を前後させてみせた。
「え?ありえない。」
「どうかしてる。」
「嘘だろ。」
元山賊達の時とは違って、
市民達はありえないものを見るような態度だった。
「雄としての誇りはないのか。」
「ブラカスさん、俺はアンタを信じてたのに。」
「俺はこんなヤツに従っていたのか。」
元山賊達はこの上ない嫌悪感と
汚い物を見るかのような軽蔑に満ちた眼を向けた。
「およ?」
ブラカスの予想を外れた反応だった。
ちなみに元山賊達でタマを切り捨てることを選ぶものは一人もいなかった。
誰一人として片方すら捨てなかった。
元山賊達を晒し者にしながら品定めする催しは
奇妙な盛り下がりの中で終わった。
元山賊達は下半身への着衣が許されないとされた。
そのためこの街から逃げ出さない限りは
相棒を失って頼りなく揺れるタマ袋と、
チンポの思い出の残る傷痕を衆目に晒し続けることになる。
それでも逃げだす者はいなかった。
それどころかなんと真面目に働いていた。
簡単な義足を与えられたり、
手のない腕で抱え込むようにブラシを使って下水を掃除した。
そして元山賊達は予想外に街に馴染めていた。
なけなし金を使って酒場に繰り出し市民と分け隔てなく会話し、
吟遊詩人の歌に義足を引きずりながら踊った。
爪弾き者であった元山賊達に必要なのはまずはどんな形であれ
受け入れてもらうことだったのかもしれない。
実質的な奴隷でありながら市民と婚約を結んだ物もいるという。
チンポがなく雄としての行為が不可能であるにも関わらずだ。
伴侶となった女性によると、
行為ができなくとも彼は雄に違いないから。との話である。
では雄ではなくなった者はどうなったのか?
元山賊長ブラカスは五体満足でありながら仕事すら得られていなかった。
服もなく、街の隅でうずくまり、
乞食行為によって糊口をしのいでいた。
市民からは得体の知れない者として扱われ、
元山賊達からは嫌悪の対象として見られていた。
「チクショウ。あんな奴らより俺の方がずっと賢いはずだ。
手足を切り捨てたら終わりだろうが!」
視線が自分の股間へと向かう、
縦に伸びた傷跡がはっきりと見える。
よりによって薄桃色の肉色になってしまった傷跡と
濃い茶色の体毛は色の差が大きく
女みたいに平らになった股間はやけに目立って感じる。
そして穴だ。
尿道の出口となる穴だけがその傷痕の真ん中に鎮座している。
「ぐぬぬ、このくらいし大したことない!
両足があれば走れる!
手があれば武器を持てる!
脅して!奪い取って!さっさととんずらだ!」
頭を振り乱して視線を外した。
そして自分の選択を改めて肯定し直した。
今夜は結婚式がある。
ブラカスの元部下である犬と市民の女がついに結婚するのだ。
「全くくだらねえ!だが、おかげで人がいなくなる。」
錆びてはいるがこっそり拾ったナイフを隠し場所から取り出し、
尻に敷いていたぼろ布を抱えると走り出した。
「こんな街からはとんずらこかせてもらうぜ!」
確かに人はいなかった。
しかし警備兵まで全員いなくなるとは限らない。
門のところに一人だけいた。
「ぐっ!」
強行突破するかどうかを躊躇した。
確かにブラカスの方が体格はいいようだが、
鎧を着込んで剣を持った兵が相手では勝ち目が薄い。
警備兵はブラカスに気づき、
そしてその様子から何の意図をもってここまで来たのかを理解した。
警備兵は見たくもない物を見てしまったかのように眉を顰めると、
野良犬などにやるようにシッシと手で追い払うような仕草をした。
出ていけと言わんばかりだ。
「ぐっぬぬぬぬぬ!
覚えてろお!」
馬鹿にされたことは大いに理解した。
せめてもの捨てセリフを言い残してブラカスは荒野へと飛び出していった。
少し回り込んだ街の防壁の外側。
さっきの警備兵から見えない位置。
「少しでもやり返さねえと気が済まねえ!
これでも喰らえ。」
ブラカスはおもむろに仁王立ちとなり、
腰を突き出した。
そして防壁へと立ちションをしようとしたのだ。
彼は興奮していた。
だからあまり理性的ではなかった。
それと雄ではなくなってからはずっと隅で隠れて座ってしていた。
立ってやるのは初めての試みとなる。
「うおお!?」
チンポというコントロールロッドを失い、
傷痕の穴となった歪な排出口はでたらめな方向へと尿を飛ばした。
手にかかり、足にかかり、防壁には届かず。
出終わりの勢いがなくなると、
タマの跡地を伝い、股の間を伝い、内股の毛皮の中へと紛れていった。
「アッー!クソ!クソッ!クソォオオ!」
ションベン臭い汚い犬のような臭いになった元山賊長ブラカスは
癇癪を起こしながら闇の向こうへと消えていった。
獣人の雄は例え陰茎が千切れようとも本能的に睾丸を守ろうとする。
それがなくなるとまともに生きられなくなるからである。
雄の場合は睾丸で作られる雄ホルモンの作用で獣人の力強い肉体が維持されてあるため、
それがなくなったら筋骨が弱り、衰弱して生きることすら困難になってしまうからだ。
最も、この時代ではそういった理屈はまだ知られていないが、
玉を失ったらもう長生きできないという噂話くらいはある。
だがブラカスはその噂を知らなかったようだ。
「やれやれ、こうしちまえばもうわからねえな。
あいつらは馬鹿だな。」
抱えてきた布を腰巻きにすれば、
ひとまず外見の上では普通の半裸男になった。
夜も明けて、荒野の風が吹く、
街の片隅とは比べ物にならないさわやかな風が吹く。
いまブラカスが気になっていることは、
腰巻きの下をくぐり抜ける風がすぅすぅとして
あるべきはずのものがないくすぐるような喪失感があるという点だ。
「チッ、クソが。」
ノッシノシと歩き始めた。
追手が来るほどではないかもしれないが、
ひとまずあの街からは離れねばならない。
「女が抱けなくなってもな!
楽しいことはまだまだいっぱいあんだよ!
そう、肉!酒!女だ!……いや女はもういい!」
一人でしゃべりだした。
誰に言うのでもなく、
むしろ自分自身に言い聞かせているのかもしれない。
「まずは誰かを襲う、路銀と食料だ。
旅商人でもいねえか?」
街道から少し離れたところ、
街道沿いの荒野を歩く、歩く、歩く。
「はっ!はっ!」
ブラカスは早くも疲れていた。
「街の隅でずっと座り込んでいたとはいえ
こんなに体力が落ちていたというのか。
肉食って力つけねえとな。」
独り言が続く。
「ハァ……ハァ……なんだっ、くそっ……。」
ついには膝をつき、四つん這いとなって息を荒げた。
流石に違和感を感じたようだが、
空腹や疲労といった悪いコンディションが重なっていることもあり、
自身の変化に気づかなかった。
最も、ブラカスにはその知識がないため、気づく可能性自体がない。
その時、ついに旅商人を見つけた。
若い鹿の獣人は大きな荷物にも関わらずその蹄で軽やかに歩いていた。
旅商というのは護衛を付けていることがほとんどだ。
ただリスクを承知で護衛なしで旅商をする者もいる。
まさにそういう輩であろう、
まだ若いところや身なりからしてそれほど金があるようにも見えないが
荷物はあるし商人としての最低限の金はあるはずだ。
一人で襲うにはちょうどいい。
ブラカスはすぐに立ち上がり駆け出すと、旅商人の眼の前に立ちふさがった。
「さぁて金目の物を出しな!さもなきゃ魚みたいにはらわた掻っ捌いてやる!」
そう言ったつもりなのだろう。
実際のところは走ったせいで息切れ気味で内容はいまいち不明瞭。
息切れしていてはそれほどの余裕は感じられず、
旅商人に向けた武器は錆びたナイフであまりに頼りない。
そんなナイフで魚のはらわたを捌けるのか?
何よりもこの強盗、腰巻のみの半裸だ。
とはいえ体格はいい。
武器を向けるだけで相応の脅しにはなる。
「なっ、くっ。」
旅商人は戸惑った。
何を言われたのかはよくわからなかったが、
強盗だろうというのは見ればわかる。
鹿の獣人は健脚で知られる。
走れば逃げ切れる可能性もあるだろう。
とはいえ荷物を抱えていてはそうもいかない。
風が吹いた。
ブラカスの巻きつけている腰巻が取れた。
その股間が旅人に見せつけられる。
なんと無様な股間だろうか、チンポもない!タマもない!
ただ桃色の傷痕が縦に伸び、そして穴があった。
「なっ!ああ!」
一番怯んだのはブラカス自身であった。
商人はイチかバチかの賭けに出た。
「うああああ!」
商品として荷物に差していた剣を抜き取ると、
思いっきり振りかぶって切りつけた。
もっとも、運搬時に鞘が抜けないように縄で固定していたため、
刃を抜いてはいない。
キーン!……カシャン!
硬い鞘で錆びたナイフを叩きつけた時の金属音と、
地面に落ちた音が響く。
ブラカスは体格相応に力も強い。
いくら長剣で叩かれたからと言って、
鍛えてもいないやつの攻撃で武器を取り落とすことはあり得なかった。
しかし、実際は見事に取り落とし、
それどころか、手がしびれて拾い直すこともできなかった。
「うおおおお!」
商人はめちゃくちゃに殴った。
鞘に収まったままでなければ滅多切りになって死んでいただろう。
バシーン!バシーン!と
ブラカスは続けざまに殴りつけられた。
「いてぇ!いてえ!やめろ!あああ!」
ブラカスは反撃に転じることもできなかった。
頭を守るために腕を挙げて庇った。
そしてそのまま腕を叩かれる、体を叩かれる。
倒れるまで何度も叩かれ続けた。
「ゆるぢて!ゆるじてくれえ!」
ブラカスは顔を抑えたまま、仰向けになり降伏のポーズをとった。
獣人が本能的に行うポーズの一つだ。
子供の喧嘩などでよくみられる。
ブラカスは仰向けで股を開いていて、
その去勢痕がしっかりと見えていた。
「この!この!去勢されてる!タマナシめ!」
あまりに哀れな様子であり、
本能的な降伏のポーズから、
同じように本能的に勝利を確信し興奮状態が落ち着いた旅商人であったが、
それはそれとして、怒っていた。当然である。
旅商人はブラカスの股間をしつこく蹴った。
「おぅっ!おおっ!ぐぉ!やめっ!あぅ!」
ブラカスは嗚咽と共に屈辱に涙を流した。
旅商人も根はいい人なのだろう、
散々蹴ったとはいえ、
無防備なタマナシ股間に蹄を突き立てるような蹴り方をしなかったし、
完全にノックアウトされたブラカスを殺すこともなかった。
ボコボコのメタメタにしたところで、
荷物をまとめ直して旅立っていった。
「ああ、あああああ、うぅ。」
ブラカスはずっと仰向けのまま起き上がることができなかった。
何もできずにうめき声を上げるだけだった。
不意に股間の穴から薄黄色の液体が垂れ流された。
無様な敗北失禁は穴から出て、股間を伝い、
背中の毛皮へと染み込んでいった。
不愉快な感覚がブラカスを襲うも、
痛みで起き上がることもできなかった。
「どうして……?」
ブラカスは全くわからなかった。
理由はわからないままだが、
自身が以前よりも明らかに弱々しくなってしまったことをやっと自覚した。
「ああ……。」
ブラカスは涙を流していた。
「誰か、誰か……。」
ブラカスは四つん這いで這っていた。
もはや立ち上がる気力すらなかった。
あてもなく何かに縋りつくように道を進み、
虚空へと助けを求めていた。
ただこんな荒野に一通りは少ない、
例え居たとしても死にかけの獣人に関わろうとする者などいない。
いよいよ終わりかという時に一人の男がブラカスの目の前に立った。
「ああ、どうか、この哀れな男に施しを……。」
ブラカスはゴロリと仰向けになり、敵意のないことを本能的に伝えた。
これでダメならもはや二度と起き上がることもなく朽ち果てるのみだろう。
その旅人はふと思案したようだった。
トカゲ獣人の鱗に包まれた顎に触れながら何やら呟いた。
「こんなNPCいたっけな?イレギュラー?
ていうか男女以外の設定項目ってあったんだな。
従者にはできるか?いっそ観賞用にするか。」
ブラカスには理解できないことを呟き続け、
そして言った。
「絶対服従、誓えるか?
命を助けてやるから、お前のすべてを俺に預けろ。いいな?」
そして鱗っぽい手をブラカスへと差し伸べた。
ブラカスはそれを拒む理由はなかった。
山賊長ブラカスは生まれ変わった。
竜の血を引くと言われ竜の力を操る英雄の従者として、
忠実な僕となったのだ。
彼の英雄の方も山賊長としての高い能力から非常に重宝していたという話である。
「逃げてみろよ!背中をバッサリ斬ってやるぜ!」
ブラカスは両手それぞれにもった斧を振り回し続けた。
山賊だった頃からの野蛮な口調は生涯変わらなかったという。
「ブラカス、深追いするな。」
英雄は竜の息吹を吐き出し、逃げようとした相手を丸焼きにした。
「さっすが旦那!見事なもんで。……ふぅ。」
これで海賊退治の仕事は終わった。
竜の血を引く英雄といえど肉体的には普通の獣人である。
多勢に無勢では話にならない。
肉弾戦の要としてブラカスを使っていた、
ブラカスは喜んで従い、剣として盾として無数の傷を負いながらも付き従った。
山賊長だった頃よりも強くなった気さえしている。
「ブラカス、おまえ体調が悪いな。
帰って休むぞ。」
英雄はまるで見えているかのように他者の体調を把握できた。
他人には真似できないことらしく、
ブラカスは竜の血の力だと思っている。
「ヘヘッ、旦那には隠し事はできねえや。」
ブラカスは倦怠感を覚えていた。
最後にしたのはいつか、そろそろ1週間だからきつくなってくるころだった。
雄の獣人が睾丸を失うとすぐに弱り果ててしまうのだが、
長生きする方法もある。
他人に雄を分け与えてもらえばいいのだ。
「ああっ、旦那ぁっ!だんなぁっ!」
ブラカスはベッドでよがり狂っていた。
尻に英雄の男根を突き入れられ、
そして体を揺さぶられていた。
「ああ、出ちゃう!出ちゃうぅ!」
ブシッ、プシッと、
潮吹きするかのように、去勢痕から尿を漏らしていた。
死にかけた時から身についてしまった悪癖だ。
悪癖だと思いつつも、止められなかった。
英雄は構わずにピストンをつづけた。
びゅるるるるる……。
ブラカスの体に英雄の精液が注ぎ込まれ、
そして余すことなく吸収されていく。
これでまた1週間、男として力強く生き延びることができる。
「嗚呼ぁ……。お尻が熱いよお。」
小便臭い状態のまま惚け、
去勢痕に手を伸ばして、指を擦りつけて、
性交の余韻を貪るブラカスであった。
この男は愚かな選択から死に瀕するも、
彼の英雄の忠実な従者となるという栄誉を手にしたのだから、
結果的には良い選択をしたのかもしれない。
ただ、もしその英雄に飽きられた時こそが彼の死ということでもある。
ブラカスはもはや雄としての誇りも何もなく、
英雄に媚び続ける以外の生き方はできない。
これから彼はどうなるだろうか。
「旦那ッ!次はどこに向かうんで?」
「ん~そうだな。」
灰の降る島へ向かうつもりだと伝えた。
最強の従者を雇うつもりだという目的はブラカスには伝えられなかった。