実験記録:改良怪人化薬

  ヒーロー協会本部。その研究施設の地下には、エナジーについて研究する施設が存在している。ヒーローの扱うエナジーは勿論、怪人を構成するエナジーも研究している部署だ。

  俺はライトニング・イエロー。世間ではヒーローと呼ばれる一人だ。本名はあるにはあるが、ヒーローになる時に過去と一緒に捨てた。日本人ながらエナジーの影響で毛と言う毛と瞳が黄色になっている。体格はヒーローをしている分そこそこいい。

  今、俺はエナジー研究所へと来ていた。そこに所属している、とある科学者に呼び出されているのだ。地下にある研究施設だからか、ヒーロー協会のアジト内より薄暗く感じる。窓が無いからだろうか。

  指定された部屋へと辿り着く。カードキーのリーダーはあるものの、あの時とは違い部屋の前に立っただけで自動ドアが開いた。というかこの部屋は……。

  「よう、来てくれたか」

  部屋には俺を呼び出した当の本人がいた。白衣こそ着ているが、その下は黒いボディスーツに覆われており、何より頭は人間のものではなく鼠のものだ。身長は鼠故にか俺より一つ頭以上低い。そう、彼は怪人、本来であればヒーローの俺が戦うべき相手なのだ。

  しかし、マスター・ラット、今はドクター・ラットと呼ばれている彼は、決して敵意のある怪人ではない。元はヒーロー協会の研究員だったようだが、怪人の発生源であるエナジーの淀みを研究している最中に、その淀みから生まれた怪人に自らも怪人に変えられたのだ。既に完全に怪人化してしまった身体は元に戻せなかったものの、理性は残り、彼を怪人に変えた怪人から多くの人々を人間に戻した功績から、今もこの研究所で研究を続けている。

  「呼んどいてなんだけど、本当に来てくれるとはな」

  「ああ……状況が落ち着いてきて、グリーンとホワイトが学習機関に戻ってな」

  学習機関。本来二人の年齢であれば義務教育で学校に通っていなくてはならないのだが、ヒーローになった時から二人は、ヒーロー協会内で学校と同じように教育を、二人だけで受けている。同年代でもう一人学友にもなれる仲間がいたのは運が良かったとも言えるが、不便させていることには変わらないだろう。

  「それもあって待機がレッドとブルーと俺の三人なんだが……」

  「あー、あいつら付き合ってんのか? けど、そこまで節操なしってわけじゃねぇだろ?」

  「……いや、さすがに、待機所で性行為に至るまではいかないが、どうもレッドが犬怪人になった影響か、甘えている時間が多いというかなんというか……去るほどでもないせいで、却って居辛くてな」

  あれは確実に影響を受けているはずだ。俺達は中学生の頃からの付き合いだが、レッドがあんなに甘えたがりになることなんて今までなかった。撫でまわされることに喜んでいて、尻尾がまだ生えていたらブンブン振っているだろうことが容易に想像できる状態だ。

  「って、こっちの事情は良いんだ。何の用なんだ?」

  若干げんなりするところではあるが、どんな形にせよあの二人が仲がいいのならそれでいい。喧嘩しているよりはずっといいんだ。

  「ああ、ちょいと、新薬の臨床試験に付き合って貰いたいんだ。性質上、お前くらいしか頼めそうな相手がいなくてな」

  「新薬? ここで、か?」

  ここで、と言ったのは、ここがエナジー測定室だからだ。そもそもの保有エナジーを測る機械や、エナジーを放出するためのテストルームがある実験室で、俺も何度もここでエナジー測定を行っている。だからこそ顔認証だけのフリーパスで入れたのだ。

  「ああ、ここでだ。別に臨床試験室で薬を打ってからでも良かったんだが、あんまし移動中を見られるのもなんだと思ってな」

  「……どんな薬なんだ?」

  移動中を見られて困る薬なんて、あまり想像出来ないが、きっとろくでもない薬なのだろう。

  「怪人化薬だ」

  「……なんだって?」

  「おいおい、そんな険しい顔するなよな。ちゃんと協会から認可が下りて実験してる薬だ」

  今、確かに俺は一瞬敵意を向けた。ドクター・ラットが怪人にされた後、他の人間を怪人にするために薬を作って実際に使用していたのだから、嫌でもそんな顔になるだろう。しかし……。

  「認可って、どうして……」

  「黙って打たれててくれりゃいいんだが、まぁ義務もあるし説明してくか」

  ドクター・ラットはそう言い近くのモニタの画面を切り替えて、ものすごく手抜きなパワーポイントを見せてくる。まず『超簡単、怪人化薬について』と表示される。最初から俺向けに説明する気はあったようだ。

  「まぁ怪人化薬なんて名前の通り、人間を怪人に変える薬なわけだ」

  画面は切り替わり、素材集の人間のイラストから右に矢印が出て、二足歩行の鼠のイラストに繋がっているものに、怪人化と添えられている。これだけならば本当にただ人間を怪人に変える、バイオテロ兵器だ。

  「で、なんでこんな物騒なもんを作るかってことだが、ぶっちゃけてしまえばエナジークリスタルの代用の一つにならないかってもんだ」

  「エナジークリスタルの?」

  エナジークリスタル。それはヒーローがヒーローであるが所以のものの一つで、ヒーロースーツに取り付けられている特別なクリスタルだ。確か中身がとてつもなく精密な機械と、非常に貴重な素材を使うため、量産が困難な代物だと聞いている。

  「そっ。エナジークリスタルは人間が怪人に対抗できる数少ない手段だが、到底量産が出来ない、一点ものの代物だ。個人に合わせた回路はまだしも、何よりそのコアにある物質が大問題だ。知ってるか? 何から作ってるか」

  「そこまでは……大変貴重だとは聞いている」

  「だよなぁ……ま、別に今のお前なら知っててもいいだろうけど、あれはキング・タイガーレベルの、つまり完全に自然発生した超強力な怪人のエナジーが結晶化したコアを使ってんだよ」

  「そ、そうだったのか……」

  通りでヒーローの数が増えないわけだ。怪人と言っても、通常現れるのは人間がエナジーの淀みに触れて怪人化してしまうもので、淀みから生まれた怪人なんてものはそう現れないし、ヒーローのいなかった時代であれば壊滅的な犠牲の上で倒したと言われるような相手だ。ヒーローでさえそう簡単には倒せない。

  「その超希少素材を使わねぇとヒーローは増えねぇ。なら、別のアプローチが必要だ。その一つ、俺のアプローチは失敗したが、この体になったおかげで思わぬアプローチが見えて来たんだよ」

  ドクター・ラットの言うアプローチとは、淀みが怪人になる前に手を付けることで、人間に友好な怪人を生み出すというものだった。それは失敗して、結局自らも怪人にされてキング・タイガーの僕にされていただのが。完全に洗脳されていなかった辺り、ドクター・ラットに対しての敵意だけは減らせたのだろうか。その真実は、キング・タイガーのいない今、もう分からない。

  「怪人はエナジーとの親和性の高い存在だ。人間がコアになっているとはいえ、エナジー体と融合してるんだから当然だな」

  放置されていたスライドを動かし、怪人のエナジーに対する親和性が高いことが並んでいく。

  「であれば、エナジーを扱うのは人間よりも怪人の方がいい、ということになる。まぁ、ヒーローであるお前らも、身体変化してる時点で人間の見た目の怪人、あるいは半怪人って言ったって遜色ない状態だ。絶対に怪人の力を使うのが問題かって言われれば、それはノーだろ」

  続いてその怪人のイラストの横に、これまた素材の赤いスーツのヒーローが並べられて、ニアイコールで結ばれる。

  「しかし、俺達はまだともかく、怪人になった人達の生活は……」

  「おいおい、お前で臨床実験するんだから、元に戻れるに決まってんだろ」

  「あ……」

  そうだ。そもそもドクター・ラットは怪人化を解いた功績があるじゃないか。となれば、そもそも解除方法のある怪人化薬を作れない方がおかしい。

  「この方法ならエナジーが多いが、お前らより少なくてヒーローの選抜から落ちたような奴らでも使えるようになる。お前らが100とすれば、50くらいでもエナジーの放出まで見込めるだろうって試算になってるからな」

  この数値はエナジーの保有量だ。俺達を100としているのは単なる指標というだけではなく、この試算の1が、一般人のそれを指しているからだ。50であれば、一般人の50倍はエナジーを保有していることになる。それでも十分に多いのだが、より多い方がヒーローとして優先されることになっている。100もあれば、そもそも拒否権はない。俺にもなかったはずだ。

  「それくらいなら案外いるもんだって、【ゾディアック】にいた時に実感してるからな」

  「なるほど……用途は分かった。しかし、それで何故俺で臨床試験を?」

  だったら被験者を募って、用途通りの人材を使うべきじゃないだろうか?

  「そこなんだよなぁ……仮にも怪人化の実験ってなると、さすがに一回も臨床試験を通さずに募集は無理だ。元に戻れるってデータは出てても、それが実際に出来てないって状態で、万が一戻れないなんてなった日には最悪だろ? んなこと絶対ないって俺は言うけどよ、お上はそうはいかねぇ。だから、既に一回鼠になってるお前なら、まぁ多少抵抗感が薄いだろうって」

  「……他の研究員は」

  「ダメだダメだ、それじゃあエナジー放出の実験になんねぇだろ。そっちのデータだって欲しいんだよ」

  それもそうか。ここにいる研究員に都合よく高エナジー保有者がいないとなれば、仕方ないのかも知れない。本来なら自分でやれと言いたいところだったが、そもそも怪人のドクター・ラットではダメなのだ。

  「しかし、また鼠に……」

  「いいじゃねぇか、今度は電極がぶっ刺さるヘルメットなんてないんだ、間違っても堕ちたりなんてしねぇからよ」

  あまりいい思い出ではないのはドクター・ラットも分かっているようでなによりだ。とはいえ、レッドとブルーにやらせるわけにもいかないし、グリーンとホワイトはもっとダメだ。

  ---[newpage]

  「……分かった」

  「っし。安心しろ、前よりはかなり痛みも低減してるはずだ」

  言いながら注射を傍にあるケースから取り出す。見た目は普通だが、薬の色が白い。白なのか……。

  「よし、まず脱げ」

  「脱げ……?」

  「服をダメにしたくないだろ?」

  いや、それもそうか。尻尾が生えたり耳が変わったり、全身から毛が生えることを考えれば、服は着ていない方が都合がいいか。パンツまで脱がなくてはいけないのは少し恥ずかしいが、ドクター・ラットには今更のことか。

  言われた通りに俺は服を脱いで、指定された椅子に座る。ドクター・ラットは俺の首筋に注射を打ってくる。注射の痛みはまるで感じられない。ただ冷たいものが入り込んでくる感触はあった。

  「うっ……」

  だがその冷たさは一瞬で熱に変わる。想像していたよりもずっと即効性があるようで、もう身体の変化を感じた。全身の毛穴がぞわぞわする感覚に続き、ぶわっと全身から毛が生えてくる。口元が伸びてマズルを形成し、頭から尖った耳が生えてくる。尻の方からもぞわぞわした感覚に続いて、尻尾が飛び出た。

  言われた通り、思ったよりも痛みも苦しみも少なかった。さすがに一切痛みがないわけではなかったが、かなりマシだ。頭上から生える耳も、尻尾も、しっかり感覚があって若干違和感があるものの、しっかり動く。後は前歯が大きくて違和感がある。

  「ほれ、鏡」

  ケースから大きな手鏡を渡される。受け取って確認してみれば、俺の顔はドクター・ラットのように鼠の顔になっていた。ドクター・ラットとは顔付きが違うのと、後モヒカンのように黄色い毛が頭に生えているのが明らかに違う。同じ鼠でも違うものだな。

  「おお、あの時はヘルメットに覆われてたから分かんなかったが、鼠にしちゃあ男前だな」

  俺の顔を覗き込んで来るドクター・ラットの目線で気付いたが、俺の背は鼠怪人になった影響で低くなっているようだ。それでもまだ俺の方が高いが、おそらく10㎝差があるかないかくらいだろう。

  「そう、か?」

  「おうよ。そんじゃ、早速テストと行くか。ここの使い方は、むしろお前の方が慣れてるだろ?」

  「そうかも知れないな」

  ヒーローである俺達は、健康診断の一環としてエナジーの総量や回復力を測定する機会がある。最近はともかく、幼い頃は月に一度のペースでここへ来ていたものだ。

  まずは近くの測定器のパネルに触れて、エナジーの循環をイメージする。最初はこれも難しくなかなか数値を出せないものだが、今では簡単に出来ることになった。

  「どれどれ……100か。総量に変化はなしっと……鼠でも減りはしなかったか」

  ドクター・ラットはデータを見ながらタブレットでメモを取りつつ、ぶつぶつと言葉を零す。こういうところを見ると、ただの酔狂な怪人ではなく、科学者なのだと思い知らされる。

  「……よし、そんじゃ次はテストルームで放出してくれ」

  「分かった」

  すぐにテストルームの自動ドアの前に立ち、中に入る。テストルームの中は青白い大き目なタイルが床、壁、天井を覆う部屋だ。エナジーに対する耐性性能が非常に高く、俺達が本気でエナジーを放出する分には問題のないものだ。後は隣の部屋がマジックミラーになっており、こちらからは見えないが、向こうからはこちらが見えている。

  『よーし、初めてくれ』

  スピーカーからドクター・ラットの声がする。エナジークリスタルはないが、言われた通り全力でエナジーを放出しよう。

  「ライトニング・フォース!」

  身体全体から稲妻を乱雑に放出する。ある程度指向性を持たせられるものだが、今は窓側に極力行かないようにだけコントロールして、エナジーを放ち切る。

  「ふぅ……凄いな……」

  思った以上にすんなりエナジーを放出出来た。前は生身と同じような状態だったはずだが、エナジークリスタル程では無いにしても、生身よりはかなり効率がいい。

  『おお、思ったより成果が出てるな? 元のエナジー量が多いのもあるが……改良は良好だ。戻って来てくれ』

  スピーカーから若干興奮気味なドクター・ラットの声が聞こえてくる。それに従って俺は計測室側へと戻った。

  言われる前に、俺は再度エナジーを測定する。エナジーは……2か。2……。

  「うーん? これは……回復量が少ない、よな?」

  「そうだな……今の感覚なら普段5は行っているだろう」

  「となると半分行ってないくらいか? さすがにそこはエナジークリスタルの回復速度には敵わないか……これ以上は怪人のベースそのものを考える必要があるな」

  回復量のデータを見ながら、やはりぶつぶつ言葉が漏れている。これでも元の鼠怪人よりは随分良好なのを、奇妙ながら体感しているから、難しいのは分かった。

  ん? なんだ……? 身体が、熱い……。

  「なかなかいいデータが取れたな。そんじゃ……おい、大丈夫か!?」

  「体が……熱い……」

  息が荒くなり、立てなくなり蹲ってしまう。なんだ、これは……副作用か? 身体が熱くて、頭がボーッとする。目の前のドクター・ラットを見上げると、不思議と興奮が……興奮?

  「何か想定してなかった副作用が……?」

  焦っていた様子だったドクター・ラットだが、ふと俺の身体を見回して、ある一点で固まる。焦りは消えたが、何が見えて……?

  俺もドクター・ラットの見ている方へと視界を下げる。そこには、細長い鼠のペニスが隆起していた。紛れもない、今の俺のペニスだ。既に先走りでテラテラとテカり、雄臭い臭いを放っている。

  「なっ……! こ、これは……」

  「あー、そうか、発情の事がすっかり抜けてたな」

  「発、情……?」

  思考が鈍い……射精したくて堪らない。発情……そうか、今、俺は発情しているのか。

  「こりゃさすがに改善の余地ありだな。とにかく、今は一旦対処療法をしておくか。どうせ治まらねぇからな」

  治まらない……この発情が? それは、辛い。痛みに耐えられても、発情したままは辛過ぎる。

  「そんじゃ解除っと」

  「な、何を……?」

  ドクター・ラットは何を思ったか着ていたスーツを、ヒーロースーツのような機構で瞬時に脱ぎ、白衣だけを着て下が裸になる。当然のように、その鼠ペニスが見えて、生唾を飲む。

  「ケツ掘ってイカせてやるよ」

  「え……?」

  「本能的に分かるだろ? 鼠怪人は自分で触ってもイケないってよ」

  その言葉に、一瞬バチッと電撃に打たれたような刺激に襲われる。ううっ……確かに鼠怪人はそういうものだ。常時性欲を高められて勃起させられ続け、陰嚢がパンパンになるまでザーメンを作りエナジーと一緒に献上するのが存在意義の怪人。それが自慰出来てはならない……。

  「それに、俺のチンポ見て、欲しくて堪らなくなってるだろ?」

  まだ収まっているドクター・ラットのペニスに生唾を飲んでいた自分を思い、その言葉にドキッとする。欲しい……あそこに収まったチンポが、細長い、鼠チンポが欲しい……。

  「欲しい……」

  「素直な奴だ。じゃ、どうすればいいか、分かるな?」

  ドクター・ラットは近くの椅子に座り、大股を広げて俺にチンポを見せ付ける。すぐに鼠チンポをいきり立たせるべく加え込み舌を差し込み動かす。

  「思ったより、上手いな……い、良いぞ……」

  褒められながら頭を撫でられる。口の中に広がる雄の臭いと味が強くなり、マズルの中でその存在感を大きくしていった。俺のガチガチの鼠チンポからも、ますます発情してドクドクと先走りが零れる。

  「よし、そこまでだ」

  「あ……」

  額に手を当てられて押し退けられ、口からすっかり隆起した鼠チンポが俺の口から出てくる。あのまま射精したものを飲みたかったという気持ちが沸き上がった。

  「俺のザーメンなんかより、射精したいだろ? ほら、四つん這いになれ」

  「はい……」

  名残惜しい気持ちをなんとか堪えて、俺は言われるままに四つん這いになり、ドクター・ラットの方へとお尻を向ける。

  「チュウ!」

  尻の穴をぬめぬめしたものが這い回る。これは、ドクター・ラットの舌か?! やばっ、これだけでも、イキそうなほど気持ちいい……なのに、イケない。

  「やっ、汚っ……」

  「何ガキみたいなこと言ってんだ。ドブネズミにとってケツの穴程度、汚いもんかよ」

  言葉で一時止まったものの、すぐに舌がアナルを責め立ててくる。チンポに触られてないのに、こんなに感じるなんて、なのにイケないなんて、既に気が狂いそうだ。

  「こんなもんだろ。そんじゃ……!」

  「ヂュゥー!」

  舌が離れてすぐ、今度は固いモノが俺の尻穴に入り込んで来た。尻尾を掴まれ引っ張られて痛みがあるはずなのに、そんなものが些末事に思えるほどの快楽が、全身を電流のように駆け巡る。

  一瞬目の前が真っ白になるほどの快楽に襲われても、射精に至れない。出したい。でも、ドクター・ラットと繋がっていたい……。

  「ヂュッ!」

  「もう少し愉しもうぜ? 俺が満たされるまで、な!」

  ぺチンと尻を叩かれ、鼠チンポが激しく出し入れされる。動くたびにぐちゅぐちゅと水音が大きくなっていき、言い得ない快楽にパチパチと白い明滅が起こっているように感じるほど、強い快楽の波が襲って来た。

  「ご無沙汰だったのもあるが、具合良すぎだぜ……!」

  「チュウ……!」

  ぐちゃぐちゃにされながら、言葉にならない鳴き声しか出ない。けど、嬉しい。ドクター・ラットが自分を貪り快楽を感じ悦んでくれるのが、嬉しくて堪らない。これも、鼠怪人としての本能なんだろうか。

  「チュッ、よし、出すぞ……! お前も、イッていいぞ……!」

  「チュウゥウウ!」

  思い切り腰を打ち付けられて、許可が出て熱いものが中に出されるのと同時に、俺のチンポからもザーメンが飛び散る。ずっと我慢していたせいか小便でも出すかのようにザーメンが零れ、力が抜けて今作ったばかりのザーメン溜まりに腹から崩れ落ちる。

  「ふぅ……あー、そりゃ飛ぶか……」

  ドクター・ラットの言葉が、遠退いていく。いや、遠退いていっているのは、俺の……意識、か……。

  ---[newpage]

  「んっ……」

  身体が妙に気怠い。俺は、何をしていたんだったか……。

  「よう、起きたか」

  「……ドクター・ラット?」

  聞き覚えのある声に、そちらを見る。そこにはやはり白衣を着た鼠怪人、ドクター・ラットの姿があった。俺はどうやら、ベッドの上で眠っていたようだが……ここは……。

  「ここは、何処だ?」

  「俺の部屋だ」

  俺の……ドクター・ラットの部屋? 確かにドクター・ラットの座っている椅子は、研究所にあるような白い無機質なものではなく、皮張りの座り心地の良さそうなプレジデントチェアだし、机は散らかっている。よく見れば布団も、常に純白を保たれているシーツではなかった。

  「異常は無かったはずだが、まだ、寝ぼけてんのか、それともトンだせいで頭が回んねぇのか?」

  「飛んだ……?」

  飛んだとは、何処から……なんて本当に寝ぼけたことを考えたところで、ようやく思い出してきた。そうだ、俺は今日、ドクター・ラットに実験に付き合うよう言われて、鼠怪人にされて、途中までは良かったものの、発情してしまって……。

  「あー、悪かったな、色々」

  「い、いや……その、こういう事故を避けるためにも、実験はあるんだし……」

  恥ずかしくなって顔が赤くなってしまっているのが自分でも分かる。まさかあんなに乱れた姿をドクター・ラットに晒すことになるとは……。

  「まぁ、そりゃ一理あるな。ただそのだな……別に、ケツ掘る必要はなかったんだよな」

  「……え?」

  どういう、ことだ? 発情を放出するために、必要だったんだよ、な?

  「いや、しかし、鼠怪人は、自慰出来ないと、前にも電波で……」

  「【ゾディアック】ではそりゃそうだ。物理的にもロックを掛けてたからな。けどそれと俺の、怪人としての力で命令してたからイケなかっただけなんだよ」

  「な、なら、なんでわざわざあんなことを……」

  「……発情してるお前を見て、ムラムラしたから、だな」

  誰にでも物怖じせず明け透けにものを言うドクター・ラットにしては珍しく、気まずそうに目を逸らして、えらく俗物的な答えを返してくる。

  「そりゃ、薬作る時に自分で搾り出したりはしてたけどよ、ヤルのなんて相当久し振りだったんだ。いやけど、そりゃ言い訳になんねぇな。怪人の力を悪用したわけだし」

  「……」

  要はドクター・ラットの命令があったから射精出来なかったと。確かにそうなってくると強姦されたとも言えるわけだが……。

  「……だが、黙っていることも、騙し続けることも出来ただろうに、正直に言ってくれたんだ。俺から咎めることはない」

  「お前……はぁ、本当に、お前はよぉ……まぁ、そういう甘さを超えた優しさと素直さに救われたんだ、これ以上は言わねぇよ」

  盛大に溜め息を吐かれた。呆れられているような、褒められているような、どっちもだろうか。甘いと言っても実害は……恥ずかしさくらいのものだ。なんだかんだ、元に戻してくれているし、本当に悪意があったわけではないだろう。

  「それなら、他に問題はおそらくねぇのは検査済みだ。万が一後遺症があったら、すぐにエナジー研究所に連絡をくれ。ちょっとでも変だと思ったら、ちゃんと連絡してくれよ」

  「ああ、分かった」

  起きた直後は気怠さがあったものの、今はむしろスッキリしている。ヒーローをやっていると自慰をすることもないから、あんなに射精する機会が、それこそ負けた時くらいのものなのもあるか。

  「……意外と良かったな」

  「おい、ハマってくれるなよ? 今更俺のせいでヒーローが堕ちたなんて、洒落にならねぇからな」

  「わ、分かっている。あんなもの、何度もやっていたら頭がおかしくなる」

  今はあまりその気持ちはないが、鼠怪人だった時には恐ろしいほどの快楽に呑まれて、永久に忠誠を誓ってしまいそうだった。

  「そうだよなぁ、あの時俺の気まぐれ一つで、お前が俺の忠実な鼠怪人になって、永遠にその快楽の奴隷にしてやれたんだよな」

  「……あの時、どうしてそうしなかったんだ?」

  あの時は確か優秀な素体を鼠にするのが勿体ないというようなことを言っていいたはずだが、よく考えれば元に戻せたのなら鼠に変えても改めて他の怪人に出来たはずだ。

  「そりゃあ……まぁ、可能性に賭けてみたくなったんだよ。鼠の身でありながら他のヒーローを救えたお前なら、キング・タイガーを打倒してくれるんじゃないかって」

  「そうだったのか……信じてくれて、ありがとう」

  「おまっ、さっき強姦されたばかりの相手によくもまぁ……」

  「それとこれとは話が違うし、俺は咎めないと決めた」

  「そう、かよ……ったく、とっとと帰れ帰れ」

  ドクター・ラットは大げさに顔を逸らして、後ろ手にシッシと追い払うような素振りを見せる。白衣がバサバサ動いているのを見るに尻尾が動いているようだが、鼠の尻尾はどんな感情で動くのだろう。それを指摘すると今度こそ怒られそうだから、俺は部屋から出ることにした。

  自動ドアが閉まる直前にちらりと部屋の中を覗くと、毛皮の上からでも顔が赤くなっている、ドクター・ラットの顔が一瞬だけ見えた。