「はあぁ…こっからどうしたもんかなぁ?」
隠月村にある自宅の一室にて、盛大な溜息をつきながら、其処に住んでいる龍狼の独り言が部屋に響いていた。
以前SNSの方にて酷い仕打ちを行った元知り合いに対し、縁切りを行い、その人と共に立てた会社を潰しハロウィンの日に行っている仕事以外を打ち切りとし、ようやく自由の身となった彼であったが、その心の内で燻っている『思い』の処遇をどの様にするのか悩んでいるのである。
「皆に笑顔を出すことが出来そうな仕事…何か無いかなぁ…?」
普段やっている仕事の都合上あまり人前に姿を出す事が無く、並行して行っていた以前の会社の方では人前で作業を行って、その姿を見た方々からの笑顔を貰ってた事がある為に、会社を潰した影響で感謝を受ける機会が少なくなった結果、龍狼はその感情に対する『飢え』が出ている状態と成っていたのである。
「…だあぁー、もう堂々巡りじゃ解決出来ねえ…ぉっ?」
「龍狼ー、居るかーい?」
ベッドで横になりながら考えていた龍狼であったが、解決策が見つからず大声を上げて頭を抱え掛けたその時、自室のドアからノック音と共に、同じ家に住んでいる知り合いの莉音の声が聴こえてきた。
[newpage]
「あっ、すまない莉音。今開けるね?」
自分の大声により彼に迷惑をかけた、そう考えた龍狼は扉越しの莉音にそう声をかけながらベッドから立ち上がり、ドアに手をかけて開けてみると、其処にはなぜか一つの漫画を持っていた莉音の姿があった。
「莉音、迷惑だったかい?」
「いやぁ、煩かったのは分かるんだけど…君がそうなっている理由分かるよ、同じ会社を辞めた者同士故に。」
龍狼が莉音に対しそう言い出すも、彼は龍狼の煩い原因に対しそう言って理解を示しており、湿っぽい笑顔を出して見せた。
「そっかぁ…ハァッ、何か人々の笑顔に成りそうな仕事って無いのかなー?」
「んっ…龍狼さん、ちょっとある事を思い付いてたんだけど聞いてみたいかい?」
その事を聞いた龍狼は、また溜め息をついてからその様な事を言ってみせた所、莉音がその様な事を言いながら手招きの仕草を出してみせたのを気になった龍狼は、彼を自身の部屋の方に引き込んでみせたのである。
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「…で、何を思い付いたんだい?」
「最近、ある漫画を読んだんだけど…食材を採っているシーンを見て、ある事思い付いたんだ。僕達で食材手に入れて、それを売り捌こうって方法なんだけど…」
自身の部屋に戻ってベッドの方に座った龍狼に対し、部屋にあった椅子に座った莉音がそう言いながら漫画を見せると、それは『トリコ』と呼ばれている、グルメとバトルを組み合わせている漫画であった。
「おっ、これかぁ。懐かしいな…けど、現実じゃあこういうの居ないし、何よりこの時期に良い食材とかあんのかよ?」
トリコに懐かしんだ龍狼だったが、現実では漫画内に登場している食材等は無い事や、そもそも今の時期に採ることが出来る物があるのかと、莉音に聞いてきた。
「ふふっ…流石にそう言うのも考慮しているよ、っと…なぁ龍狼、ダイビングは得意?」
その龍狼の言葉を聞き終えた莉音は、含み笑いを見せてからそう言ってスマホの操作をやってゆき、あるサイトの画面を龍狼に対し見せてくる。
その画面には、スキューバダイビングを楽しんでいる人々の写真が写っており、これからやってゆく仕事に使う物が何なのかを龍狼は察していた。
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「…それで、船の操作が出来る私を呼んで此処まで行き着いたって事なのね?」
「そうなることになるね…」
「縁、ありがとなー?」
「気になって一緒に付いてったら、船に乗って海の上にって…此処でどうするつもり?」
現在、龍狼の妹である縁が乗りこなす船によって海の上におり、これから食材を採る予定の龍狼と莉音、船の操縦を任されてる縁と莉音の様子に興味あって付いて来ただけの三桜の四人で構成されており、船の奥には莉音の手によって何かしらの荷物が運ばれ置かれてる事を縁と三桜は知っており、これから龍狼と莉音の二人が何をやってゆくのかを三桜がそう聞いてみせた。
「OK、教えてくね…これから僕と龍狼の二人で、スキューバを使って潜って海の幸を採ってゆく予定なんだ。縁と三桜さんはその間、船の方をお願いしたいんだ。」
「成る程…二人ともあの会社での仕事で貰った感謝の思いが忘れられないのね?」
莉音がその疑問に答える様に、龍狼と二人でやってゆく作業の内容を縁と三桜に教えてゆくと、縁が二人とも会社の仕事によって受け取った感謝の思いが忘れられない事を察してその様な事を言ってみせると、図星と言わんばかりに龍狼は頷き、莉音は苦笑いを見せてくれた。
「いいわ、手伝ってあげる。けど、この海域の漁業組合の許可とかは貰っているの…無許可でのサザエやアワビなどの海の幸の採取は密漁になっちゃうからね?」
その様相を見せている二人に対し、縁は了承しつつも漁業の許可を貰っているのかの確認を聞いてみたところ、莉音が笑みを見せながら許可証を見せてくれる。
どうやら龍狼と共に辞めた前の会社の仕事の一つに、漁業関係での広告バルーンの代理仕事を引き受けていたらしく、その時の漁業組合とのコネを上手く使って得た様だ。
「おぉー、凄ーい…あっ、けどこの時期に潜るのって大丈夫なの、風邪引かない?」
許可証を見て感心し掛ける三桜だったが、潜る際のリスクを思い出しその様な質問をしてきた。
確かに、現在この時期に海にダイビングを行うとなると体を冷やす可能性が高く、良くて風邪ひき、最悪の場合仕事を休む羽目になる為にそれに対する指摘は妥当である。
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「ふふっ、そう言うと思って…ある二つの物を用意したのさ…ちょっと待っててな?」
三桜の質問に莉音はそう返しながら船内へと入ってゆき、数分程経ってから三人の方に舞い戻ってきた彼は、ダイビングスーツとレギュレーター付きのタンクの二つを持ち出し見せてきた。
「あー、船に載せていたのってその二つだったのね?」
「けど、見た感じ普通に見るようなヤツに見えるわよ。大丈夫な…あれっ、これって…」
縁は莉音が船の奥に置いた物がソレで在る事に気づくも、三桜は一見したところ普通のダイビングで使われている様な物であった為に不安でそう言い掛けるも、ダイビングスーツの下半身、具体的に言うと獣人でいう尻尾が通る部分に開閉可能な穴が開いているのを知り、普通のスーツでは無いことに気付く。
「ふふっ…三桜さん気が付いた様ですね。そうっ、このダイビングスーツは着たままで獣人姿に成ったとしても破れる心配が無く、その状態で潜っていられる優れ物だって!」
「それ着てやるのか…」「中々の物ね?」
「成る程、毛皮の保温性で熱が逃げないようにするつもりなのね…けど、水中に居続けてたら、海水で毛が濡れちゃって凍える事になるんじゃないの?」
三桜の呟きから察した事を理解した莉音はそう言ってダイビングスーツの説明をし始めてゆき、着たまま獣人になったとしてもスーツに損傷が発生する事が無いのを伝えてみせると、龍狼がそのスーツを着てやってゆく事を知り、三桜はスーツの一部を触りながら感心してゆく中、縁はそのスーツによる効果を理解しつつも潜り続けていれば、結局濡れてしまって寒いことに成るのでは無いかと疑問を溢してしまう。
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「それも抜かりなし…タンクがあるだろ?」
「あー、潜る際に必要な物の一つだね…何か変わった形状だし、ダイブコンピュータって名前だっけ、これも何かスマートウォッチみたいだけど、妙な表示があるね?」
「このタンクは水中内にある元素とか酸素とかを、水の濾過やら変換やらをして地上と遜色無い空気を発生させる代物で、従来のダイビング用のタンクを使うよりも遥かに長い時間潜っていられる最新式なんだって!」
「マジかよ、凄いな!?」
「このダイブコンピュータ見た感じ、他のガスとかも発生させる事が出来る様だし…出てくる気体の温度調整とかも出来るの!?」
「成る程、内外両方から暖めて問題なく潜ってやってゆく算段って訳ね…良い案ねっ!」
心配性な縁の言葉に、莉音はそう返してタンクについての説明をし出すと、龍狼は事前に受け取って手首に付けたダイブコンピュータに変わった表示があるのを伝えてみると、ダイブコンピュータの操作でタンクから出せれる気体を自在に出すことが出来る事を、莉音が実際に操作してみせ、その効果の程を理解した縁は良い笑顔でその案に賛同した。
「賛同してくれた縁に感謝しつつ…とっとと着替えて、潜ってゆこか!」
「時は金なり…ってね、それじゃお二人共、船内で着替えてくねー?」
龍狼が縁の賛同に有り難さを感じつつ、莉音にダイビングスーツを早めに着替え潜って作業を行ってゆこうとするのを伝えると、某有名アメリカ政治家の名言を出しながら莉音は頷き、船内の方で着替えてゆくのを縁と三桜に伝えつつ、船の中の方へと莉音と龍狼は入ってみせた。
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「えーと、確か水着の上からなんだよね?」
「そそ、伸縮性良い物だけど無茶すんな?」
「へいへい…先ずは水着に着替えてっと…」
「準備出来たね、それじゃ、スーツを表向きにして足を通してゆく…」
「膝まで行ったら…ファスナーかけて、もう片方!」
「したらば、裏返しを戻して腰まで掃いていって…片腕ずつ通す!」
「完全に通ったら、仕上げに…背中のファスナーをバディに閉めてもらって…」
「よしっ、これでこれ等持って出るか?」
「了解、っとこれ被っておかなきゃ…」
船内の二人の会話をドア越しから盗み聞きしてダイビングスーツの着方を知った三桜であったが、彼らが荷物を持ってこちらの方に戻ってくるのを聞き取って素早くかつ静かに縁の方へと戻ってみせた。
「よぉ縁、どうだいこの姿?」
「…へぇー、二人のスーツの色、イメージ通りのに成ってるわね?」
「イケてると思うんだけど…クシュ!」
「うん、悪くないわね…獣人に成ったら?」
莉音はオレンジレッドのメインカラーに手首と首回りに当たる部分にホワイトの差し色がつけられている物に彼が持ってるバックル付きのベルトを組み合わせたのを、龍狼はブラックをメインにサブカラーとしてブルーの物加えて自身の持ち物である帽子を被ったのを、其々ダイビングスーツと自分の持ち物を身に纏った二人の姿を見て感想を述べる縁と三桜。
軽くクシャミをした龍狼を見て三桜がそう言い出してきたのを期に、龍狼と莉音は頷きあって了解代わりにOKサインを見せた。
「久方振りの狼の姿に成るからな、ちゃんと成れるかな…グヴッ!」
「同じくだけど…まっ、なんとか成るでしょう…ルウッ!」
久しぶりに狼の姿に成ることに、今までの様な感じに成れるか不安を漏らす龍狼に対して、莉音はそう言ってみせて気楽にいこうとする中、二人の変化が始まり出してゆく。
ダイビングスーツから出ている両手両足から毛が出始めてくると、其処から指を折り鳴らした様な音が聞こえ出して変形し出しており、獣人特有の形へと成り出す中で、龍狼と莉音の顔にも毛が生え出しながら骨格を変えていってきており、外から見える所隈なく毛が生えて後は身体の変形で済む、という時にダイビングスーツの臀部に当たる所が急に膨らんたかと思った瞬間、其処からそれぞれ狼と獅子の尻尾が穴を通って生え出し始めており、身体から音が鳴る度にドンドン伸び出してきた。
「ルヴゥ、うぐっぬうぅ…グルル、ウォオオオォー…ン」
「ルグゥ、ふぐっうぬぅ…ゴルル、ガォオオオォー…!」
全身の変化が完了したのを遠吠えで知らせると、其処にいたのは無事に狼獣人姿に成れた龍狼と獅子獣人姿へと変われた莉音の、ダイビングスーツを着た姿であった。
「おぉー…無事に成れて良かったね、お二人さん」
「さーて、後は持ってきてくれた器材を着けてく事に成るんだけど…手伝おっか?」
「っと、じゃあタンクの確認良いかな、空気出口のシールを無くさないようにしてね?」
しっかりと獣人姿に成れたことを好ましく感じる縁と、二人が持ってきたダイビングに使う器材を着用されるのを手伝うか聞く三桜に対し、身体の調子を確認した莉音はタンクの確認を取るように伝えてくる。
先ずは空気出口のシールを剥がしておき、そのシールを無くさないところに貼り直してからOリングと呼ばれるタンクのパーツの状態を見ておき、タンク内の空気に異常がないかの確認を取ってから、ダイビングスーツとタンクの接続を行うベルトにへとタンクに着けていって、タンクが擦れ取れない様にきつく縛っておく。
「Oリング問題なし、スンスン…出てくる気体も大丈夫みたいね?」
「フンッグウゥ…こんぐらい縛れば良い?」
「おっ、ありがと三桜…うん、OKだ!」
タンクの状態を見終えて、縛ったタンクベルトの締めが強いのを確認しておいたら、レギュレーターが大丈夫であるかを見ていってゆき、中圧ホースの確認もしっかりとしておいてからタンク圧の状態がどうなっているのかバルブを開けて見る中、龍狼と莉音はそれに付随するように専用のマスクを顔に着け、グローブをしておいてからフィンを靴のように履いていっていた。
「よしっ最後に、二人がやっていってくれてたこのタンクを背負えば…」
「いよいっしょっと…どうだい、様になっているかな?」
タンク付きのベルトを背中に背負って、腹部にバックル部分を取り付ければ、其処には立派なダイバー姿の龍狼と莉音の立ち姿があった。
「中々クールに決まってるわね」
「あんがと…その網袋、取ってくれるかい?」
縁が二人の姿に対しそんな感想を述べると、莉音は海の幸を入れる為の網袋を要求してきたので、少し笑みをこぼしつつも縁は言われた通り、近くに置かれてた人数分の網袋を投げ渡してあげる。
「潜ったら一度分かれて、十分な量の海の幸を入手したら…一旦合流して浮上するよ」
「了解…これがイッパイになるまで漁を行っていっても、構わないのだろ?」
網袋を手頃な所に付けてゆく龍狼に対し、莉音がどの様にして漁を行ってゆくのかを説明してゆくと、龍狼は網袋の容量ギリギリまで海の幸を入れても良いのかをそのように聞いてみると、莉音は良い笑顔を見せてサムズアップをしてみせた。
「ねぇ、私達は此処に居れば良いの?」
「あー、そうそう。退屈に成らないように一時期父さんが熱中してた釣り道具一式を、借りてきたよ。暇になったら使っても良いからね?」
三桜が船の待機をし続けるのか聞いてみたところ、父が使っていた釣り道具を龍狼が借りてきたらしく置かれている場所を指で指し示しつつそう言ってみせた。
「それじゃ龍狼、始めてゆこっか?」
「そうだね莉音、やっていこうか…ンッ!」
莉音のその言葉に頷いてみせた龍狼は、レギュレーターを咥え込んで数回呼吸をし再確認を行っておいてから、三桜と縁に手を振ってみせた。
準備完了となった龍狼と莉音は、互いを見合ってからフィン付きの足でヨタヨタしながら船べりの方へと歩み付くと、身体を軽くほぐして最終チェックを済ませた後に、ボートエントリーを行った際の水飛沫と共に二人は海の方へと潜り始めた。
「シュー、シュー…」(僕はあっちの方からやっていくから、龍狼は向こうの方お願い)
「シュー、シュー…」(了解した…君に幸運が在らんことを!)
水面で耳抜きを行ってから潜りだし、ハンドサインで漁を行う範囲を教えた莉音に対して、同じくハンドサインを使って海の幸が大量に手に入れるように願って伝えてあげた龍狼は、タンクを伝ってレギュレーターから出てくる温かな空気を吸い込みながらフィン付きの足を器用に動かしていって、其々が指定した範囲での漁を開始していった。
[newpage]
冬の海中は奥深くまで見えるほど透明であり、それに反比例するように水温は低く普通なら冷たいのを耐えるための装備が必要なのであるが、
「シュー、シュー…!」(流石は専用タンクとダイビングスーツ、寒いどころか少し暖かいぞ…!)
タンクからくる暖かな空気を吸いながら、獣人姿の影響でスーツ下に毛皮を持っている為に、龍狼はプールでやるのと遜色無く泳いでいられていた。
暫く泳ぎを楽しんでいた龍狼であったが、岩が多く見られる所にて多くの牡蠣が居るのを見つけ、その場の方へとフィンを使って泳ぎ向かっていった。
「シュー、シュー…」(えーと、確か牡蠣の取り方は…あぁ、これだ)
牡蠣が張り付いている岩に着き、龍狼は莉音から受け取った網袋の中から小型のヘラを取り出すと、持ち手の部分を使ってコツコツと牡蠣の周りを軽く叩いていってみせる。
隙間を出してみせたその牡蠣に、ヘラを差し込んでから軽くテコの原理で寝かせれば、あっという間に牡蠣のゲットに成功した。
(確か牡蠣って、浄水能力が高くてプランクトンや懸濁物質をほとんど食べ尽くしてくれるんだったんだよね…莉音が見せてくれたあの許可証での区域は、水質調査をクリア出来てるのを移動中に確認したから、生食でも大丈夫の筈だけど…繁殖の為に成長しきってるヤツを取ってこうっと!)
岩場にある大量の牡蠣を見ながら、龍狼はその様な事を考え、主に大型の牡蠣を狙ってゆくことに決めて岩に張り付いている牡蠣達をドンドン取っていってみせた。
[newpage]
龍狼が牡蠣を見つけてゲットしてゆく中、莉音の方でも良さそうな獲物を発見した。
「シュー、シュー…!」(ほほぉ、こりゃあ凄い光景だ…!)
龍狼と同じ理由で泳ぎを楽しんでいた莉音であったが、石や岩が積み重なっていた所があるのを見つけて、違和感を感じた彼は石を少し持ち上げて見てみたところ、石や岩やらに立派なサイズのサザエが引っ付いていた。
「シュー、シュー…」(えーと、こうして掴んで…よし手に入った)
引っ付いていたサザエを掴んで軽く回す事で、かなりの大きさのサザエを莉音は取ることに成功した。
(そう言えばサザエって、冬も旬に入ってるんだったよな…これだけ立派なもの、多分漁業組合の方達にお渡しすれば驚くこと請け合いだろうな…フフッ)
手に入れたサザエを見ながら莉音はそう考えており、仕事で知り合った関係の漁業組合の方々を思い出してゆき、彼らが驚いている様を想像してゆくなかで笑みが溢れているなど露知らず、笑顔を見せながらもビックサイズのサザエを取っていきながら網袋に積めてゆき、近くにあった別の石や岩を同じように裏返してみて、同じ大きさのサザエを確認した彼は休まぬようにするかの如く、その手を使ってサザエを回し取っていった。
[newpage]
良い調子でどんどんサザエを取っていってみせた莉音、そんな彼ではあったのだが網袋にサザエが限界ギリギリにまでなってゆき、そろそろ龍狼とも合流をしようかと考えていたその時、莉音にとって大変な目に遭う事態が起きたのである。
「シュー、シュー…」(よし、此処まで取れば十分だろ…一度龍狼と合流…)
「ンムッ、ウッ!?」(うおっぐ、な、何事だ!?)
突然背中から強い衝撃が来て、沈みかけそうになる莉音であったが、何とか体勢を立て直して衝撃の原因究明の為に振り返って見てみた所、
「ン…ンンッ!?」(な…シャチだって!?)
何と其処に居たのは海のギャングで知られているシャチであり、何故此処にシャチが居るのかも分からない莉音を嘲笑うかの様に、シャチは容赦なく口先で彼の背中を押し出してくる。
「ムグッ、ム、ムムウッ!」(おぐっ、こ、このままだとヤバイ!)
再びシャチによって沈みかけた莉音は、このままでは散々いたぶられた挙げ句にドえらい目に遭わされてしまう事を理解し、慌てて泳ぎ出していって何とかシャチから距離と取る様に動き出していた。
只この時、必死に距離を取ろうとしている莉音が気付かなかった事があり、ドカドカとシャチがタンクを押していってゆく為に、タンクからの衝撃を感知したダイブコンピューターが緊急事態であると誤認識、ダイブコンピューター内にある設定の中から『緊急浮上機能』と呼ばれる機能を作動し始めており、端末の小さな画面には、通常の空気を出している事を知らせる表示では無く、大量の空気とヘリウムが表示されていたのである。
[newpage]
「フッ、フッ、フッ、フッ…!」
早く泳ごうとして心臓をバクバクさせていた莉音は、レギュレーターがより速いスピードでガスを送り込んでいることにも気づかずに、直ぐに慣れてしまっていて他の事態に巻き込まれる可能性があることに気づかないまま、更に潜り泳ぎ逃げていた。
「ムッ、ムッ、ムッ…!」
莉音の平らな腹が急に膨らみ始め、着実に小さなオレンジレッドのドーム状へと変わっており、彼のお腹がビーチボール程の大きさに膨らみ出すと、いよいよ泳ぐのに支障をきたすように成っていた。
お腹の表面積が大きくなると抵抗が大きくなってゆき、体内のヘリウムが彼を上に引っ張ろうとしている事に対して、莉音はそれをシャチにど突かれている為に泳ぎ疲れただけだと感じていた。
「ムゥ、ムゥ、ムゥ…!」
莉音のダイビングスーツは、彼の体に合わせて簡単に伸び出しており、伸縮自在の素材のお蔭で彼の身体がシャチに噛まれる様な事は無かったのだが、ダイビングスーツとタンクを繋げる為のベルトが食い込みだしてきており、そこからくる窮屈さを感じていた。
「ムゥ、ムゥ、ムッグゥ…ムウゥ!?」
莉音の膨張が無視出来なくなった頃には、ダイビングスーツとタンクを繋げてるベルトが千切れ外れ、その感覚を感じた時だった。
その感覚に驚いて莉音が泳ぐのを止めて留まろうとするも、驚いたことにすぐに上昇を始めており、周りを見渡すと唖然とした表情を浮かべていると思われるシャチ以外は居らず、ふとお腹の所に触れてみれば風船の様に膨らみ上がっている事に気付いて大慌て。
「ムッ、ムウゥー、ムゥウグウゥー!」
膨らんだままの莉音は、必死になってタンクを遠隔操作で解析しようとするも、体が大きくなる中で腕自体も膨らんでいるが為に両手を合わせられず、生きる為には空気が必要なのでレギュレーターを外す事は出来ず、再浮上して空気を抜く事を思い付いた彼は急いで上に向かって泳ぎ始めた。
[newpage]
莉音が大変な事に成っていた頃、龍狼の方でもやばい事態が起きようとしていた。
「シュー、シュー…!」(おいおいマジかよ、此方に近づいてきてるじゃないか…!)
網袋いっぱいに牡蠣を入れ終えてご満悦の龍狼であったが、そろそろ莉音と合流しようかと考えながら辺りを見回していたところ、遠くに写るは何と鮫の大群であり、どうやらお食事途中だったらしく犠牲となったモノがその辺りに飛散している中、一部の鮫が此方までもターゲットにしたらしく向かって行っている姿を確認できてしまった。
「シュー、シュー…ンウッ!」(一先ず、安全な場所を探さないと…あっ!)
鮫達が此方に来てるのに気付いた龍狼は、奴らに襲われない様な所に身を潜めてやり過ごしてゆこうと考え、周辺を見ていって良さそうな場所を探してみたところ、丁度下の方にて洞穴の様な物が在ることに気が付き、これ幸いにと龍狼はその方へと潜行していってゆき、洞穴の方へと入り始めていった。
「シュー、シュー…ブクムグ」(こ、此処の入り口…ちょっと狭いな、んしょ)
水中の洞穴の入口へと入ってゆく龍狼だったが、入り口は幾分か余裕はあれども狭く、下手に急いで中へと入ってゆけば、身に付けている機材に被害が出るのは必定の為、岩壁に腹部を沿うような形でうつ伏せとなって入り出してゆき、機材やスーツにダメージが起きないように気を付けつつ、手早く洞穴内へと侵入できた。
[newpage]
「…シュー、シュー…?」(…な、何だこの岩肌。此処の海流は、穏やかだったからいっぱい牡蠣取れたんだぞ…此処まで滑らかに成らないだろ?)
洞穴内部は割と中ほどの広さであり周辺は開けており、入り口からの日の光は届いてこそいるが雀の涙と言わんばかりに暗く、ライトの様な明かりを持ってきてない龍狼にとって殆ど闇で覆われているのだが、穏やかな海の流れにある洞窟に有りがちな『ゴツゴツとした岩壁』ではなく、むしろ『使い込まれて滑らかになった岩壁』と成っており、その感触が却って不気味に感じ、言い知れぬ嫌な予感が龍狼の中に湧き出していた。
「シュー…シュー…ムムッ!?」(大丈夫…鮫達が此処を離れるまでの辛抱だ…誰っ!?)
レギュレーターを咥えたまま落ち着かせる様にそう考えていた龍狼であったが、突如背にしていた洞穴の入り口の光が途切れたのが見えて、自分以外に何者かがこの洞穴内に居ることが分かり、水中越しでレギュレーターを咥えてはあるがその様に言い出した。
「…ムッ、ムムゥムゥ…ンンッ!?」(…だ、誰か居るのか…んんっ!?)
暗い洞穴内部を見回して、何かの気配を感じ取った龍狼はその方向に向け、通じるかどうかは気にせずにそう伝えだしてみると、その方向から美しくもどこか恐ろしげな歌声が響き聞こえ出してきた。
「ム、ムムゥ…ウムゥウゥ…ンンッ?」(う、歌声…って水中で歌は出ない筈…あれっ?)
通常水中で声を発する事は常人では不可能であり、この声を発しているものが人外であると感じた龍狼であったが、歌が突如止まりだしたのを聞いて怪訝な表情を見せた。
「ム、ムウゥ…ンウゥ!?」(と、突然止まるなんて…ンイィ!?)
歌が止んだ事にそう呟き掛けた彼であったが、次の瞬間イヌ科の者なら聞き取れてしまう『超音波』が先程の方から出されていた。
「ン、ンムウゥ…ンムッ!?」(いっ、一体誰がこんな音を…ンムッ!?)
いきなりの高音に耳を抑えて我慢していた龍狼だったが、突然レギュレーターから出てくる空気の量が多くなったのを感じ咄嗟に腕に着けていたダイブコンピュータを見てみたところ、何故か異常事態が発生しているのを報せていて問題解決の為『緊急浮上機能』を発動した事を表示させており、それによってタンクから大量の気体が此方に入ってきていることを理解した。
[newpage]
「ンムゥ、ムムッ…ンウゥー!」
ボコボコと、自身の中に空気が一部の漏れる程に入ってきているのが分かり、膨らみだしたお腹に両手を当てて感じとる龍狼に対して、彼から出てくる泡の弾ける音を聞き取ったらしく、暗闇の洞穴にいた存在が発していた超音波が止まっており存分に膨らめるような状況と成っていた。
「ム、ムムゥ…ムグッ、ムムウゥー!?」
しかしゴツゴツではない滑らかな岩壁で行うとはいえ、洞穴内で膨らむという事はその壁に密着するまでに大きくなって、それ自体が分厚い為に洞穴を破壊する前に破裂しかねない事に成ることに気づいた龍狼は、踵を返して洞穴の入り口の方へと向かいだして、其処から入り出ようと考えていた彼だったのであるが、ドンドンと膨らんでゆく自身のお腹がその入り口の途中で詰まってしまう程にまで大きくなってしまっている事に気付いてしまった。
「ム、ムムゥムゥ…ヴッ、ヴグッ…ムヴゥ」
出ようとすれば途中でつっかえて洞穴内よりも大変な状況で膨らんでしまう事に気付いて、どうしたものかと悩みだしかけた龍狼であったが、ダイビングスーツと専用タンクを繋げているベルトがお腹を食い込みだしてきたのを感じとり、生きるためには空気が必要なのでレギュレーターを外す訳にはゆかず、何とか出そうとお腹に両手を触れて押し出そうとした。
「ヴゥ…ムヴ、ムヴウゥー…ンムウッ!?」
それでもお構いなしに気体が自身の中に入りだして、ベルトの食い込みがきつくなってきた龍狼は若干痛気持ちいい表情を出して目を閉じかける瞬間、スーツのお腹に食い込んでいたベルトが千切れ外れたのが分かり、其処から思い切り更に膨らむのが理解できた。
「ム、ムムッ…ムッ、ウウッ…ヴゥ…ムグムグウゥー!!」
その事に気付き、背負ってある付近にあると思われるボンベを取ろうと両腕を背中の方に回して探ろうとする龍狼だったが、暗がりの洞穴での作業の為に、指先や手の甲部分にボンベと思わしき感触はすれども本体を掴める事はままならず、彼が手こずってゆく中でもボンベの空気は入り続けて当人の身体を膨らませ続けていった。
「ムグムッ…ムムゥッ…ムグムウゥ!?」
ようやくボンベがあると思われる所を見つける事に成功するも、自身の腕にまでも空気が入りだして動きにくくなっており、膨らんでいる頬の影響で首を回せれない龍狼が必死に成りながら、腕を使ってボンベを掴み取ってからそれを停止させようと頑張ってみせていた彼であったが、完全に腕が膨らみきってしまう序でにボンベを大きく吹っ飛ばしてしまい、大の字体勢へと変わってしまって動けなくなる事態に陥ってしまった。
「ムヴッ…ムムッ、ヴウゥ…ブクブムウゥ」
「クスクスクス…」
胸と腰の境目が球状の腹に合わさってしまい手足までも膨らんでゆく中、龍狼のダイビングスーツは彼の体に合わせて簡単に伸びていっており、破れ露わになるような事には成らないことは先の莉音が証明しているのであるが、そんな事なぞ露知らずの当人は、何とか動かせれる部分を使ってぶっ飛ばしたボンベを探そうとしていっており、水中の暗闇に潜んでいた存在はその様子を面白がり、彼の身体の一部に触れながら泳ぎ回っていった。
「ブクブムグウゥー…ングムッ!?」
誰かがお腹やら胸やらを触れつつボンベを奪い保持し続けている事に気付き、龍狼はその存在に対して何とか捕まえようと仕掛けるも、膨らんだ身体の一部に何か大きな物が触れた感覚を感じ取って、それが自身の身体が洞穴内部の大きさにまで膨らんでしまった事を知るのに然程の時間も掛からなかった。
「グヴムッ…ググッ…ングムゥ…!」
洞穴内部を埋め尽くす程に膨らんでしまった龍狼は、洞穴の厚さと膨らむ身体の対内圧耐久のチキンレースを味わう羽目に成ってしまい、岩壁と胴体に挟まれながらも、頬を球体にまで膨らませて鼻に押し込まれたレギュレーターを固定したその顔は、表現のし難きモノと化しており、苦しさと気持ち良さと驚愕を足して割らずにごちゃ混ぜにしたその思いを、時折目を瞑りながらも表情として出していた。
「…フウゥム」
一方、この様な事態となった原因である洞穴に住んでいた存在は、龍狼のあまりの膨らみっぷりに関心しつつ彼が最初に通ってきた洞穴の入り口部分に籠っており、彼が背負っていたボンベと思われる物を調べるように見ていっており、まるで幼子の反応であった。
「ヴプッ…ヴムウゥ…ンヴウゥ…!」
そうして洞穴内部で膨らみ続けられてゆく為に、龍狼の身体はかなりの内圧を掛かり始めてきており、色んな感情込みで意識が朦朧とし出してきており、岩壁で沈みかけてはいるが両腕両足もかなりの大きさにまで膨らんでいるその姿は、そろそろお披露目の頃合いにまできていた。
「…ハッ、フンッ!」
住みかである洞穴から異質な音が聞こえだしてきたのを感じ取った存在である彼女が、その尾ひれを使って泳いで距離を取ったその瞬間、岩が真っ二つに割れるような轟音と共に洞穴は砕けながら崩壊してゆき、中で抑えつけられていたその膨張を解放していって、かなりの大きさにまで膨らんでしまった龍狼は、その苦しさからの解放感による気持ち良さを思いっきり味わった結果、
「…キュウッ」
朦朧としていた意識を簡単に吹き飛ばされてしまい、眠るように気を失ってしまった彼は四肢や尻尾を下げた状態となって、膨らんだ身体に身を任せるかのように浮上していってしまっていた。
[newpage]
龍狼が気を失って膨らんだまま急速浮上へと移行する中、莉音の方も似たような事態にへと陥ってしまっていた。
「ヴッ、ヴッ、ヴッ…!」
レギュレーターからの気体を吸い込む度に浮力とコントロールの難易度が高くなっており、胸と腰がお腹の膨らみによって境界線が見えなくなるほどに成ってゆき、両手足も同じく膨らむ為に泳ぐことは次第に困難になっていた莉音だが、只泳いでいる時よりも遥かに速いスピードで上昇していっており、それに伴う形で膨張のスピードまでも増していっていた。
「ヴッ、ヴゥー…ムヴッ、ムムッ…」
海面が見えてきた頃には、頬は球体になっており鼻に押し込まれてレギュレーターが固定されている状態で風船のような身体に成ってしまっていて、体内からかなりの内圧がかかって時折意識が朦朧としてくるのを、何とか取り戻そうと莉音は気をしっかり保とうとしていた。
「…ムッ、ムウゥ…ンヴゥ!?」
そんな様相を見せていた莉音であったが、急に辺りが暗くなってきたのを感じ取って一体どうしたのかと上の方を見上げたところ、其処には今の自分と同じかそれ以上の大きさにまで膨らんでいた龍狼の姿があった。
「ムググッ、ンンッ…ンムグゥ!」
龍狼を見つけて何とか連絡をとろうと手を振るなどしていったが、彼が眠るように瞳を閉じているのを見て気を失っている事に気が付いて、周囲に泡を出しながら慌て出してしまう。
「ムッ、ムムゥムー…ングブッ!?」
せめて龍狼の身体に触れて離れてしまわないようにしようと近づいていた莉音であったが、宙ぶらりんと振り子の様に揺れていた龍狼のボンベが不運にも莉音の頭部にクリティカルヒット
「…ゴプッ」
結果として莉音も気を失う羽目に成ってしまい、龍狼共々ボンベからくる気体を吸い膨らんでいきながら、急速浮上へと移行する事態にへと成ってしまっていた。
幸い、両者が膨らんで同じ高さになった頃に身体同士が接触した際に、身に付けていた網袋やベルトの一部分が絡まって互いを結ぶ状態となり、両者は生半可な事では離れない奇跡のモノへとなっていた。
[newpage]
「…ねぇ縁、何か海面の様子が変よ?」
「いよぃしょっと…って、マジで?」
龍狼が伝えた場所から船に乗ってる人数分の釣り道具を持ってきた三桜と縁は、龍狼と莉音が採ってくるヤツよりも良いのを釣る事で彼ら二人を驚かそうと考え、海での船釣りを始めていった三桜と縁であったが、始めてから少し程で『何故か』殆ど入れ食い状態と化しており、その状況に困惑する間も無く、ドンドン今の季節に良さそうな魚が立派なサイズで釣れていっていた。
そんな調子で釣っていった二人であるのだが、丁度縁が立派なサイズの鰤を大型のクーラーボックスに入れてもう十分に釣れたとスペースを見て判断したその時、海面に釣りでは不自然な程の泡が浮き上がってきているのを三桜が見つけそう言い出してきて、それを聞いた縁が共に海面の方を見て来たところ、その泡の出方が多くなってきていた。
「な、何あの泡…ボコボコ出てるわよ?」
「ま、まさか…この下に火山とかあって、それの噴火の前…んんっ!?」
異常なまでの海面からの泡の出方に、三桜がそう言い出して、縁が海底火山がある可能性を出し噴火への懸念を気にしてそう呟きかけた時、海面に大きな影が出ていることに気が付いて途中で素っ頓キョウな声になった。
「何か大きなのが彼処に居るっ!」
「えっ、あ…泡も彼処の所に出てる!」
縁のその叫びに近い声を聞いて三桜もその場所を見てそう言い出し、何かが其処に居るのを感じた二人は獣人へと変わりだし、臨戦態勢へと移行していった。
「泡の出方が多くなってる…来るわよ!」
「さーて、鬼が出るか蛇が出るか…!?」
準備完了となった二人の目の前で、海面から出てくる泡の量が多くなってるのを見て何かが浮上するのを縁が言い、三桜が独特の構えをとってどんな相手が出るのか言い出していると、大きな水飛沫が音と共に出てくると同時に海に出た影の正体が何なのかを二人は知ることとなった。
[newpage]
「りゅ、龍狼…莉音!?」
「なっ、えっ…うっそ!?」
其処にいたのはダイビングスーツ姿の龍狼と莉音であったのだが、その姿は以前、熊神神社にて龍狼が何処まで膨らめるのかを調べる為に莉音が道具で膨らませていった結果、境内にあった施設よりも遥かに大きくなって膨らみ、その姿に莉音が抱き付く程のモノであったのを二人は知っているのだが、現在の龍狼と莉音の状態はそれ程までに膨らんでおり、両者共に横並びで繋がってる姿だった。
「ふ、二人共一体どうしてそうなった!?」
「ちょっと、二人とも気を失ってるわ!?」
三桜がその余りの二人の姿にそう叫んでしまい、縁が彼らの様子を見た途端そう言い出したのを聞き、各々彼氏の様子を確認してみれば、龍狼と莉音、お互い膨らんだ影響で四肢を大の字にしながら動けない状態でありながら、眠る様に瞳を閉じながら手首足首に加え尻尾までも力なく下げているのが確認出来てしまい、彼らが気を失った状態なのを理解出来てしまった
「てか、このままだと二人とも空の旅に成ってしまうじゃない!?」
「た、大変じゃないそれ…な、何か彼らを捕まえること出来て留めさせる方法を…!」
三桜が言う通り、膨らんでいる龍狼と莉音は空の方へと浮かび上がりつつあり、このままでは二人仲良く空の旅に成るのを分かってしまった縁がそう言いながら、彼らを捕まえるながらこの船に留めさせる事が出来そうな物が無いかと急いで船内を見渡す。
「は、早く…二人がどっかに行っちゃう!」
「あんな大きさに成ってるから、下手に行ってボカンとなったら大変なことに成るわよ…あっ、これなら!」
「ゆ、縁さん!?」
飛び上がり出してゆく二人を見ながら三桜がそう言い、縁が不味い事に成らないように持っている物で何とかしようと考えると、三つの道具を見つけとある方法を思い浮かんだ縁は、それを使って実行する為にそれらを持ち出しながら甲板の方へと走り上がった。
[newpage]
「そんな物持ってどうするつもりなの!?」
「待っててなさい…先ずはこの糸を複数で捻りあげたものをこの針に…!」
縁の持ってる物を見ながら三桜がそう言い出すと、縁は彼女にそう伝えると、最初にミノムシから取ってきたと入れられていた箱に書かれていた中身の糸を複数本まとめて捻って出来たのをリールに巻いた物に、大型の魚を捕まえる際に使用される釣り針の尖ってる部分にカバーを被せたのを取り付ける。
「よしっ、後はこの釣竿にこれ等を取り付けていって…!」
先程、魚釣りをする際に使っていた釣竿に対し前述した釣り針とリールの合わせ物を繋ぎあわせて、救助の準備が出来たのを親指を上げて縁が知らせた。
「こ、此れで何とか成るの?」
「後はこれを使って弧を描く様に…それ!」
出来上がった物を見て三桜がそう呟くと、縁はそれに返す様に伝えながら釣竿を握り締めると、思い切り力を込めてそれを振るって釣り針を発射させると、釣り針付きの糸は彼女が言ってみせたように空中に弧を描きながら飛んでゆき、龍狼と莉音を繋げているベルトのバックル部分両方を繋ぐように、釣り針がその上に被るように巻かれていってきて、仕上げに釣り針がその糸の巻かれた所にしっかりと入り、二人がこれ以上空に行かない様にした。
「よしっ、捕まえた…とおぉ!?」
「わわっ…ほいっ!」
そうして龍狼と莉音を捕まえる事に安堵しかける縁だったが、二人の浮力は想定以上のモノとなっていたらしく、少し浮きかけた縁を見て三桜も一緒に釣竿を持ってみせ、リールの部分を巻き上げ始めていって、彼ら二人を船の方へと近付けるようにやっていった。
「ん?なんだ?」
「ふいぃー、何とか固定することに成功したわね…」
ふとそこにたまたま海に来ていた蓮蛇が居り、三桜と縁が膨らんだ龍狼と莉音を船に固定する姿を目撃していた。
「けど、これからどうすんのよ。一応二人とも海産物多く取ってくれたみたいだけど…」
「こんなザマに成ってるからね…取り敢えず、漁業組合の方々に何とか説明しておかないと」
「…何やってんだあいつら?ちょいとフォックに連絡するか」
二人が海産物をキチンと取っているのを彼らが身に付けている網袋から確認した三桜だったが、人前に見せれるような状態でないのを理解している縁がその様に言いながら、どうするのかを考えているのを、蓮蛇はそう言ってフォックに連絡し出した。
ちなみに太って浮いているのと海竜なだけあってか、泳ぎは得意である。
「ホント、どうしたものか…」
「…んっ、何か飛んできたわよ!?」
「蓮蛇から連絡受けたけど、あれ?智月?」
「膨らんでるな、連絡で来てみたら、とりあえず行ってみるか」
二人を見ながら縁が悩んでいると、三桜がそう言いながら指差した方向には、連絡を受けて飛んできたフォックと、風魔法で浮遊して飛んできた蒼剣が膨らんでる二人を発見し、フォックと蒼剣は彼らの元へと向かってゆくのを、二人がそれに騒いでいったその瞬間、船縁近くに泡が立ち始めて水中から出てくる音と共に、蓮蛇が姿を現した。
[newpage]
「…で、変な様子の皆に怪しんだ蓮蛇さんが、フォックさんに連絡をして…先んじて来た蓮蛇さんに縁が説明していって、状況を把握して後から来たフォックさんと共に…こんな状態にしたって事だね?」
それ相応の海産物が自宅に来て、近くに膨らんだままダイビングスーツを着た状態で、口にテープを貼られてる龍狼と莉音の姿を見た風狐が、蒼剣から此れまでの事を聞いてそう纏めあげると、しっかりと頷いて応えてくれた。
「まさかこんな事があるとはな」
「なんか気になるな、それ?」
説明を終えて椅子に座った蒼剣がそう言って、キナ臭さを感じた風狐がそう伝える。
「それより二人を元に戻した方がいいんじゃない?」
「確かにそれが賢明だな」
「けど、このまま空気を出そうってなったら…大変な事に成るわよ」
「二人とも口から空気吹いていっちゃって、どっかに飛んじゃう事に成るわよ?」
フォックと更に蓮蛇がそう言って、龍狼と莉音の中に溜められている空気を出すことを進言するも、下手に空気を出そうとすれば勢いよく二人が飛んでいってしまう懸念がある事を、縁と三桜がそう伝えていった。
「そうなると少しずつやっても時間かかるよ?」
「動き回っても大丈夫な、室内とかでやるって手とかは…あれ、風狐。何で携帯出してるの?」
少しずつやっても、逆に時間かかるのもあってなんとかしないとやばい感じに思ったフォックに対し、障害物のない室内でのガス抜きを提案しかけた縁であったが、突然スマホを取り出して起動させた風狐を見てそう呟いた。
「何するつもりだ風狐?」
「…なぁ、フォックさん。明日、何の日か覚えてるかい?」
蒼剣も彼の行動が気になっているとふと、風狐が妙な事を言い出す。
「明日?何日だっけ?」
「確か、救助された今日が二十日だから…」
「あ、もしかして天馬さんの誕生日かしら?」
「…結構前ぐらいに、こんぐらいの大きさに成った相棒を、莉音が抱き付いてモフモフ楽しんでったのを話したことがあってね…興味津々に聞き入ってたのを覚えてるんだ。」
「へえー…」
フォックが彼の質問に首をかしげると、縁がそう言い出したのを聞いて明日が天馬今吉さんの誕生日なのを答えとすると、風狐は思い出した事を言い出してゆき、それにフォックは少し納得した様子を見せる。
「…序でに、君達が手に入れていった海産物を使って食事をしていってゆけば…フォックさんが好きなモフモフが出来るくらいにお腹が出ると思うよ?」
フォックに風狐はそう言って、少し笑みをみせた。
「あら、わかってるじゃない♪」「結局こいつの得じゃねぇか」
「モフモフするのかよ」「それ上手くいくの?」
モフモフできるのでフォックは納得し、同時に蒼剣と蓮蛇、三桜がツッコんだ。
「…ってなると、少しやらなきゃいけない事しないとね…?」
「やらなきゃいけないこと?」
そんな三人とは違い、縁はそう言いながら携帯に番号を打ち込みだしてゆき、それに対しフォックは首を傾げる。
「…漁業組合の方達に報告兼海産物の一部をお渡ししないと…!」
「あ、そっちの方なんとかしないといけないのね」「そそ…」
納得したフォックを尻目に、縁は莉音の使っているスマホから漁業組合の連絡先を手に入れてから、代理人として仕事をこなすモードとなっていった。
「どうするんだ?」
「こっから連絡して色々説明してゆく…!」
「あ、モードに入ったねあれ…」
これからどうするか蒼剣が聞くと、不敵な笑みを見せてそう言って見せた縁を見て、三桜は察してしまう。
「時間、かかりそうね…」
「じゃあ、少しお願いしたいことがあるのですが…」
「んっ、何かしら?」
退屈そうにしているフォックを見た風狐が近づき、ある事を耳元で囁いていった。
「んでそのお願いしたいことって?」
「二人を…箱か何かに入れてくれませんか?」
「箱ね、んじゃ…!」
膨らんだままの龍狼と莉音を見ながらそう言ってきた風狐に対し、フォックは魔法陣を展開し、でかいプレゼントボックスを出現させて二人をソレに収縮させる。
「とりあえず一時的に入れといたわ」
「よしよし…で、後は…」
龍狼と莉音がフォックによってプレゼントボックスに収まったのを確認した風狐は、彼らと三桜や縁が捕った海産物の漁業組合に出す分の選別し始めてゆく。
「えっとこれはこうして」
「俺らもか、こういうの蓮蛇得意か?」
「いや俺はそこまで」
そう言いながらフォック達も手伝ってゆき、明日を楽しみにしながら皆は作業をこなしていった。
[newpage]
翌日、フォックの城にて
「来たよ~」
「あっ、来ましたね、天馬様…」
天馬がそう言いながらやってきたのを聞き取り、レイリュウがお出迎えをする。
「奥で皆様方がお待ちかねで御座います…」「う、うん…」
そう言いながら案内をし始めるレイリュウの後を追うように、天馬が頷き付いて行った。
「申し訳御座いませんね、本来ならマスターが貴方の案内をする予定だったのですが…」
「いやいや、大丈夫だよ」
「左様で御座いますか…っと、んしょっ…フォック様、天馬様が来られました!」
フォックがお出迎えに来てないのを謝罪するレイリュウに、天馬がそう答えつつも、部屋にたどり着いてノックをしてレイリュウがそう言ってきた。
「天馬さん来たんですね!」
「うわぁ///」
「あ〜モフモフ♪」
颯爽とフォックが登場し、天馬にダイブしてお腹をモフモフしていく。
「で…何をすればいいのかな?」
「あ、そうでしたね、レイリュウ説明頼むわ」
「あー、はい…天馬さん、そのボックスを開けるのをお願いします」
モフモフを堪能し追えた天馬がその様に聞いて為、フォックがレイリュウに説明を頼むと、彼は側に置かれているボックスの開封をお願いしてきた。
「う、うん…」
ソレを聞いて天馬はボックスに近づき、ソレに手をかけた。
「ムッ、ムムゥー!」「ンッ、ンムウゥ!」
ボックスに手を掛けて空けた途端、かなりの大きさで膨らんだ姿の龍狼と莉音がその身体にテープを巻かれた状態で天馬の前に現していた。
「…うわっ、話には聞いてたけど凄いね~」
「そのため俺が魔法で一旦入れといたんです」
彼ら二人を見て、関心を示す様に天馬が言うとフォックはそう言いながらボックスに魔法を掛けていた事を教えてくれる。
「なるほど…で、どうすればいいのかな…」
「…ふふっ、お誕生日おめでとう天馬!」
天馬がそう言い掛けた瞬間、三桜がいきなり登場し、手にしたクラッカーを引っ張り鳴らしてみせた。
「…え!?」
「…今日、貴方の誕生日でしょ。それのお祝いよ?」
驚く天馬の元に縁が現れ、そう言いながら『本日の主役』と書かれた襷を彼にかけてあげた。
「…あっ、でも…龍狼くんと莉音くんは?」
「天馬さん、言ってましたよね…相棒が膨らめる限界の挑戦をした時、かなりの大きさになった相棒を見て莉音がモフモフして楽しんでたの、こっちもやってみたいとか…?」
驚きと嬉しさでしばらく声が出なかった天馬だったがふと思い出したようにそう言い出し、それを聞いたパーティハットを被った風狐が一緒にいた頃話していたときの時を思い出したがらそう言ってくる。
「…え?よーし…一度どんな感じか試してみたかったんだ…」
「ンムッ、ムッ…」
天馬はそう言って龍狼に飛び付くと、膨らんだお腹は暖かくもフカフカの感触をしており、気持ち良いモノと成っていた。
「うわぁ、フカフカだ~♪…龍狼くん、大丈夫?苦しくない?」
「…ム、ムウゥー」
「ムムッ、ンンゥー!」
龍狼のお腹の感触に笑顔を見せつつも、飛び付いたことによる苦しさは大丈夫かと天馬が聞いてみると、彼は口にテープを貼られてながらもしっかりと大丈夫であることをウィンクで示しつつも、莉音が此方の方も楽しんで欲しいとアピールし始める。
「大丈夫そうだね…よし、次は莉音君だ!」
「ンギュムッ…」
天馬がそう言って莉音の方へと飛び移ってみると、暖かく膨らんでいつつも押し込めば沈み込めれる程の感触であり、龍狼の時とは別格の気持ち良いモノに成っていた。
「ん…こっちはまた柔らかくて、龍狼くんとは違った感触…!」
「天馬さん喜んでる♪」
膨らんだ莉音の身体に触れてその様な感想を漏らした天馬に、大皿に料理を持ってきたフォックがそう溢した。
「うん♪」
「ちょうど食事も用意しましたよ」
「さっ、此方をどうぞ…!」
天馬さんに食事を用意したことをフォックが伝え、縁が祝杯のコップを出してくる。
「よーし、食べよう!カンパーイ!」
「乾杯ー!」「乾杯!」
コップを受け取った天馬の早めの掛け声に合わせ、他の方々も同じ掛け声を出して杯を合わせていった。
膨らんだまま脱がされた事で水着だけの状態と成っている龍狼と莉音を尻目にし、パーティーは始まっていった。
「どう、その料理?」「うん、美味しいよ♪」
「あらその牡蠣…龍狼が捕ってきた物よ?」
三桜が料理の味を聞いてソレに答える天馬に、縁が今彼が食べている料理に使われている牡蠣は、龍狼が捕ってきた物であることを伝える。
「へぇー…そうだったんだ。龍狼くん、ご苦労様」
「ムウゥー…」「ンムッ?」
「天馬さんのために捕ってきてくれたのですもの、美味しいですよ」
天馬が此方を見てお礼を言ったのを感じ、朗らかな表情を見せた龍狼に莉音が気付き、フォックは彼が天馬のために捕ってきてくれたのだと考え、そう言って見せた。
「ム、ンムゥ…」「ムププ…」
実際は人との繋がりに餓えていたが故の行動だったのだが、ある意味役に立てたのを感じてフォックや天馬にバレないように照れ臭そうにしてみせた。
「美味しい」「だねぇ…あら」
フォックの部下の一部も料理に舌鼓を打つ中、料理をドンドン食べてゆく天馬のお腹が大きくなってきていった。
「あ♪」「あらら…」「モフモフ♪」
「美味しいですね、天馬さん?」
「う、うん…」
そう答えつつもお腹が気になり始めてきた天馬に、フォックのモフモフが始まった。
「ふふ〜ん♪」
「…太ってしまっても、フォックがモフモフするから大丈夫よ?」
フォックがお腹をモフモフしだし、お腹を気にしてた天馬に縁がそう言ってくれる。
「あ〜モフモフ♪」「ほらね?」「うん…///」
モフモフするフォックを見て、少し照れ気味に答える天馬。
「やっぱ天馬さんのお腹いい♪」
「…そ、そう…?」
「モフモフ感ありますし太ってるほどいいものですよ♪」
フォックのその言葉を聞いて天馬がそんな事を言うと、フォックがその様に説明していった。
「本当、良い性格してるわね?」
「そうですか?」
「太ってる方に対してあぁしてるんでしょ?」
縁の呟きに対し疑問を出したレイリュウに対し、そう言ってみせる。
「んん〜♪」
「ホントあぁいうのに熱心よねぇ…」
その後、三桜や縁、フォックとその仲間達が作り用意した料理が、龍狼と莉音の分以外無くなるまで天馬が食べては太る度にフォックのモフモフで痩せてゆき、その様子を皆が見て楽しむ光景が広がっていっており、その楽しむ様は、まるで『魔王達の宴』と呼ばれるようなモノだったという。
[newpage]
「…ラララー、ラララー、ララ、ラーラー…」
龍狼と莉音が漁をしていっていた、深海の奥底にて聞こえぬ筈の歌声が響き渡り、その声音は聞くモノを魅了へと落としてゆき、遂にはかの者の虜となりて堕ち滅ぶ。
「ピューイー!」
海魔どもも恐れよう音色が響くその場に、莉音をド突きまわっていたシャチが現れ、咥え込んでいた複数の鮫の骸を出し歌声の主の前にへと出してみせ、まるで家族か兄妹かの様に接してみせていた。
「…フフフッ」
その様な態度を見せるシャチに対し、暗闇だった海の処から泳ぎ近づいてみせ、その姿に月光が差し込まれて現したるその姿は、
「…ラララー、ラララー…」
トビウオの身体を下に持ち、頭に当たる部分に人間の上半身が自然に繋がれている『人魚』と呼べる者であった。
人魚は歌を止め、シャチが持ってきた鮫の骸に手を取ると、その口を使ってバリバリを喰らってゆき、シャチも続けと言わんばかりに鮫の骸を喰らってゆく。
『深き海より聞こえぬ歌が聞こえたら、直ぐにその場を離れるがよい。さもなくばその身ごと心を喰われん』