淫魔の呪いでザーメンしか食えなくなってしまった獅子聖騎士の話
グラスを傾けた男の口の端から一筋の白い線が胸元へと伝い落ちていく。
寝苦しい熱帯夜だった。
開け放っていた窓からは[[rb:微風 > そよかぜ]]すらもなく、揺らがない燭台の炎はただ静かに男の大きく上下する喉を照らし出していた。
美しい金毛の逞しい獅子獣人であった。
歳の頃は十七、八か。すっかり寝汗を吸って体にへばり付いている薄手の服が、男の肉体美をことさら際立たせていた。
部屋の片隅で鎧一式と一振りの剣が鈍い光を放っている。
男は騎士だった。
戦場を駆ける生業は体が資本だ。薄茶色の胸毛が豊かに繁茂する胸板は分厚く膨れ、くっきりと割れた腹、筋繊維をこれでもかと詰め込んだ太い四肢と、どこもかしこも極限まで鍛えられた180cm超の体躯からは有り余る体力と、十代の噎せ返るほどの若い精力が滲み出ていた。
その厚い胸にマズルから溢れた白い雫がボタボタと滴り落ちた。
よほど喉が渇いていたのだろう。
ベッドから立ち上がった男は寝台脇の卓上に置かれてある瓶を乱暴に引っ掴むや、再びグラスに注いだ。
白い液体が渦巻きながら器を満たしていく。
その液体の流動がやけに緩慢に見えるのは気のせいか。羊や[[rb:山羊 > やぎ]]の濃厚な乳だとしてもどうにも様子がおかしい。粘度が異様に高いのだ。注ぎ終えようと傾きを直した瓶の口から垂れるそれが中々切れずに粘液のごとく長い糸を引いていた。それだけではない、先ほど胸先に零れた白い雫が、胸毛や服に染みることなく未だに玉となってこびり付いているではないか。
異様だった。
暑気の中に放置し過ぎて腐りでもしたか。
それなら口に含んだときに味の変異に気付くはずだが、男の眉間に皺は刻まれていない。
なみなみと注がれたグラスを見やる獅子の[[rb:強面 > こわもて]]がうっとりと崩れた。
[[rb:蝋燭 > ろうそく]]の薄明りに、白く濁った液体が何とも言い様のない艶を浮かべて器を満たしている。のっぺりとした平面ではなく所々に薄い陰の落ちる水面が、それがすこぶる濃密な粘度であることを窺わせた。
男の喉仏が生唾に上下した。
先ほど一杯飲み干したばかりだというのに喉が異常なほど渇きを訴えていた。
からからに渇き切った喉が、舌が、欲していた。炎天下で長い時間、水分補給を断たれたかのごとく、干乾びるのを[[rb:免 > まぬが]]れんと肉体までもが激しく目の前のグラスの中身を欲していた。
男は震える指先でグラスのステムを掴むや一気に口へ傾けた。
金色の[[rb:鬣 > たてがみ]]が歓喜に打ち震えた。
口内を満たす[[rb:生温 > なまぬる]]い液体が、確かな重さをもって喉の奥へと滑り落ちていく。
陶然とした面持ちで胃に流し込む獅子の瞳がしっとりと濡れていた。仄明るい灯に暗く輝くその黄金色の瞳の中に揺らぐのは、喜悦の感情か。
真夜中の[[rb:黙 > しじま]]に喉を鳴らす音だけが静かに響く。
男は勃起していた。
床に長く落ちる影の股間部分がさらに力強く、ぐぐぐっと前に突出していく。
先ほどまで淫夢でも見ていてそれを思い出しでもしたか。……いや、どうやら違うようだ。今まさに飲み込んでいる液体が男を性的に興奮させているらしかった。喉が鳴るたびに、下穿きを持ち上げている逸物がたちまち鋭角を描いていく。
もしやそのグラスの中身は精力剤の一種か。
だが、それは疑わしかった。
セックスを軽く夢想しただけで股を硬くする年代の、それも健康的で精力旺盛な十代の若者が精力剤を必要とするはずがない。そんな代物に頼るとすればまだ数十年の先のこと。とは言え、布ズボンを突き破かんばかりに力強く屹立した男根を見るに、液体自体に何らかの催淫効果があっても不思議ではない。
不思議ではないが、実際、そのような物は含まれていない。
薬の類ではない、グラスの中身は薬効などないただの液体に過ぎなかった。正確に言えば、体液なのだ。獣人の、それも雄獣人の……。
この男自身が 液体に性的興奮を見出していたのである。
もし今、誰かがここを訪ねてきたのなら、やがてその者は扉が開かれるや訝しげに眉をひそめるだろう。さらに部屋に一歩踏み込んだものなら今度は嫌悪に顔をしかめるはずだ。
ある臭いが居室内に漂っていた。
それは成熟した雄なら一度は嗅いだことのある臭いだった。
精液――
グラスを満たしているものはまさに成熟した雄獣人の精液であった。
来訪者ははたして気付くだろうか。グラスの中身が何であるか、そしてそれを部屋の主が愛飲している事実を。おそらく気付くまい、自慰に耽りまくっていそうな血気盛んな十代の若者の部屋だからと自身を納得させて、本人にはきっと嫌みと冷笑を送るに違いない。
嗅覚を痺れさすほどの強い精臭が室内に満ちていた。
たかが一杯のそれが放つにはあまりにも臭いが強い。
床や壁、天井一面をべっとりと白濁が塗られでもしているかのような強烈なザーメン臭は、獅子の青年が今宵の一度限りだけではなく、日常的に精液に慣れ親しんでいることを物語っていた。臭いがすっかり絨毯や石積みの壁の[[rb:目地 > めじ]]にまで深く染み込んでいるのだ。
最後の一滴がグラスの縁から淫らな糸を引いて分厚い舌の上に落ちていく。
満足げに喉を鳴らした男の太い腕が股間に触れた。
大きく前に突っ張った布ズボンの突端から、今し方飲み込んだ物と同じ白い物がじわりと滲み出ていた。男の指がすかさずそれを掬い取って口へと運ぶ。
舌に響く自身の味に黄金色の瞳が細まった。
どうやらその味は格別に男の欲情を駆り立てたらしい。獰猛に鼻を鳴らすと、乱暴にズボンを押し下げるや、赤黒い肉茎が勢いよく飛び出した。熱気に蒸れた雄の臭いに混じってわずかに精液の臭いが立ち昇ってくる。獣の鋭い嗅覚が的確にそれを嗅ぎ分け、さらに肉欲を滾らせていく。
顔から締まりの失せた男の背後で獅子の長い尾が揺れていた。
男は精液の虜であった。
自身のそれすらも愛飲の対象なのだ。
それを口にしても微塵の嫌悪感も湧いてこないとはいったいどれほど欲しているというのか。怒張の先から滲み出たばかりの新鮮な体液はことさら美味かったようで、男は目の色を変えてペニスを扱き始めた。
いくら性欲盛んな十代とはいえ、こうまで没頭するものなのか。
鼻息は肉食獣然として荒々しく、眼は赤く血走り、まるで何かに取り憑かれたかのように一心不乱に手淫に耽る若獅子。片手で竿を扱き、もう片方の手で胸元に零れていた浅ましい[[rb:残滓 > ざんし]]を拭っては口に運びながら、全身汗だくになって豪快に快楽を追い求めていく。激しい指[[rb:捌 > さば]]きに赤黒く鬱血した亀頭から小便のように迸る透明な粘液が、男の体に痺れるほどの性的快感が襲っていることを物語っていた。
飲みたいのだ。
飲みたくて飲みたくて辛抱ならないのだ。
精液が飲みたい、逞しい男の精液が飲みたくて仕方がない。
まだか、早く飲ませてくれとばかりに手の上下運動が激しさを増していく。確実に手に入れることができるのである、扱けば扱くほど燃え上がる快楽とともに、それが着実に腰の奥から迫り上がってくるのを感じる。生じたその甘い快美の波は五本指によってあっという間に荒れ狂う大波と化して脳髄を襲った。
快楽に浸っている余裕など男にはなかった。
射精欲に抗うことなく従順に従った男は、一気に駆け上るや絶頂に体を硬直させた。
凄まじい勢いで男根から精液が迸った。
丸々と肥えた精嚢を引き攣らせて放出される[[rb:夥 > おびただ]]しい量の白濁を掌で受け止めるや、すかさず男はそのザーメン塗れの手を口元へと持っていった。その間にももう片方の手で吐精を受けると一秒とかからず肉球は白濁に没した。何たる射出量か、たちまち掌を満たすそれを零すまいと交互に口へと運ぶ。ずずず、と粘った液体を啜る音が何度も部屋に響いた。
凄絶な光景であった。
自身の放った精液を食している。
襲い来る絶頂に全身を[[rb:戦慄 > わなな]]かせながら夢中になって喉を鳴らしている。
何が男をこうさせたのか。
狂気に魅入られでもしたか、はたまたこの世ならざる者の魔手によって肉体が作り変えられでもしたというのか。マズルをべったりと濡らし、牙から滴らせて劣情の体液を美味そうに貪る獅子の姿は見るに[[rb:堪 > た]]えない鬼気迫るものがあった。
部屋の隅で静かに鈍い輝きを放っている男の武具に刻まれているのは双頭竜の紋章だ。
その刻印は聖騎士の証であった。
もし武具に意思が宿っていたとしたならどう思っただろうか。
高位の騎士の称号を戴いた聖騎士の主の、目を疑うような奇行を断じて正気などとは思うまい。名誉や礼節を[[rb:貴 > たっと]]び、高潔を[[rb:旨 > むね]]とし、民草に模範を示すべき聖騎士にあるまじき醜態に、錆びて朽ちたほうがどれほどましかと悟るに違いない。
赤い舌が鋭い爪にこびり付いていた白濁を丹念に舐め取った。
肉球と肉球の間に染み込んでいた残滓までをも舌先で掬い取った。
だが、足りない。
まだまだ飲み足りない。
射精の余韻と甘い疲労感に浸る獅子の[[rb:気怠 > けだる]]げな視線が、卓の上に転がっていた空になった瓶に向けられた。
「また彼らに満たしてもらわなければ……」
湿るマズルに舌を這わせながら熱に浮かされたようにぼそりと呟く。
雄の生殖器官でしか作ることのできない体液こそが彼に許された唯一の食事であり、また唯一口にできる物であった。つまり雄の体液で腹を満たし今日まで命を保っていたのである。屈強な雄たちが放つそれはすこぶる栄養価が高いのか、飲むそばから活力と精力が漲っていった。なくてはならない、彼にとって精液は文字通り命を繋ぐ生命のスープであった。
唯一無二の栄養源、雄のスペルマを肉体が底無しに欲しがっている。
「腹が減った……誰でもいい、もっと……もっと飲ませてくれ」
空き瓶を映す若獅子の瞳に[[rb:昏 > くら]]い劣情が揺れていた。
[chapter:淫魔の呪いでザーメンしか食えなくなってしまった獅子聖騎士の話――]
獅子の青年の薙いだ剣がゴブリンの喉元に赤い線を引いた。
耳障りな断末魔を放って事切れる赤茶けた[[rb:矮躯 > わいく]]からすかさず剣を翻すと、振り返りもせずにそのまま[[rb:剣尖 > けんせん]]を己の脇腹から背後へと突き立てた。肉を刺す確かな手応えと同時に醜い悲鳴が響く。視線を後ろに流せば、錆びた古刀を振りかざしたやや大柄のゴブリンが口から血の泡を噴きながら膝から崩れ落ちていった。
背後に湧いていた不穏な気配が消え、聖騎士レオはゆっくりと長息した。
任務を達成した安堵の息だった。
村外れの洞窟に棲むゴブリンが二体、悪さをして村人が困り果てているという知らせが逗留している街の教会に入ったのは今朝のことだ。聖職者と数人の側近とともに聖地巡礼に赴いている教皇の護衛の任にあたっていた聖騎士団であったが、このまま窮する民を捨て置けないと聖騎士団長が差し向けたのが、この新米聖騎士レオであった。
時にはドラゴンと対峙する聖騎士にとってゴブリンなど敵ではない。
それでも初めての単独任務を成し遂げて青年は誇らしげに鼻を鳴らした。
魔物の討伐は久方ぶりだった。
通常、魔物の討伐といった血生臭い仕事は兵士や傭兵が請け負う。教会の洗礼を受けた信仰の聖騎士は要人の警護が主な任務だったが、さりとて腕前が兵士や傭兵に劣るかといえばそんなことはない。神の加護のもと、聖騎士の称号を得た彼らが振るう剣は、凶悪な魔物はおろか形のない闇すらも打ち払った。
レオは刃に付いた血糊を丁寧に拭いながら胸に湧く達成感を噛み締めていた。
聖騎士となって早半年が過ぎた。
十八歳になったばかりの若者にとって聖騎士という職は相変わらず畏れ多く、そして身の引き締まるものであった。
物心がついたときにはもう憧れていた。同じく聖騎士であった父。馬鎧も勇ましい馬上の人はことさら勇壮で幼少のレオを惹き付けて止まなかった。レオが父と同じ道を歩もうと夢見たのは言うまでもない。
騎士になる方法は二つあった。
一つは、一般の兵士が戦場での活躍を認められて出世すること。そしてもう一つは、父親が騎士、または裕福な商人や役人の息子であることだった。地方貴族である騎士の父をもつレオの進路はすでに開かれていたのである。十代の中頃まで騎士見習い、すなわち従騎士として戦い方や騎士道精神を学び、十七歳のときに聖騎士に叙任された。叙任式の際、王の前に[[rb:跪 > ひざまず]]いた己の肩を剣で軽く三度叩かれた感触は今でも生々しく残っている。
騎士も花形だがレオは聖騎士の道を選択した。
実に自分に厳しいレオらしい。
謹厳実直を絵に描いたような男は日頃の功績や行いから周囲からの期待も厚く、将来は聖騎士団の中核をなす人物として有望視されていた。百獣の王の威厳と風格を備えたこの精悍な若獅子はまさに非の打ち所がない好青年であった。強いて弱点をあげるならあまりに堅物すぎる点だろうか、何せ一人前の大人となったというのに女を知らぬのだ。性的なことに関して知識はあれども、その肉体は未だ純潔を保っていた。
レオはプレートアーマーに付着した返り血まですっかり綺麗に拭うと踵を返した。
洞窟の外に目をやると夕闇が迫っていた。
明朝には街を立って都に帰還しなければならない。外の木陰に繋げている愛馬の脚でどれだけ急いでも街へ到着するのは夜更け過ぎと思われた。早く団長に成果を報告しなければ……急く胸が彼の体を洞窟の外へと向かわせようとしたときだった。
不穏な気配がふと後方に湧いたのをレオは鋭敏に感じ取った。
まだゴブリンが潜んでいたのか、どうやら二体だけではなかったらしい。
洞窟の奥へと再び踵を返したレオは、しかし眉根に深い皺を作ると早々に剣を正眼に構えた。
「何だ……?」
ゴブリンではない。
瞬時にそう悟った。小物が放つ気配ではなかった。体に纏わり付くような重苦しい妖気が洞窟の奥から漂ってくる。剣の柄を握る手に力が入る。このような人里近い洞窟にこれほど禍々しい気を放つ魔物が巣食っていたとは。
つと、前方の闇に小さな二つの点が煌めいた。
レオは瞬きもせずその極小の光点を凝視した。
微かに上下に揺らぎながらこちらへ近付いてきている。背にじっとりと嫌な汗が浮く。その光は眼光であった。漆黒に塗りたくられた深い闇の中で人魂のごとく浮揚する光の正体、それは血のように[[rb:紅 > あか]]い[[rb:双眸 > そうぼう]]が爛々と異様な光を放っていたのである。
レオは[[rb:戦慄 > せんりつ]]した。
まだどうにか届く薄暮れの外光に魔物の姿がゆっくりと露わになっていく。
恐ろしく均整の取れた逞しい体躯の魔人であった。粗末な黒い下穿きがどうにか腰に引っかかっているだけの浅黒い肌をした裸体は、贅肉の一切がなく隆起する筋肉に覆われていた。背丈はレオとそう変わらない。おそらく一筋縄ではいくまい、とレオは魔人が片手に携えている身長ほどもある長い[[rb:三叉 > さんさ]]槍を認めながらそう思った。
魔人はレオの4mほど手前で歩を止めた。
レオが一歩前に踏み込んで伸ばした剣の先がどうにか魔人に届かない距離、絶妙な間合いだった。
鮮血のように紅い眼が細く歪んだ。
「……旨そうな臭いに釣られて来てみれば、なかなかどうして俺好みの野郎じゃねぇか」
男の色気を含んだ低い声色が鼓膜を撫でた。
人語を操る魔物、知性の高さは強さに直結する。レオのマズルから鋭い牙が覗く。
レオは推し量った。戦闘経験はまだ浅いが剣の腕には自信がある。もしこの魔人が己と同等の力量を持つなら、甲冑を装着している己が有利だ。相手は腰に頼りないボロ切れを巻いただけの肌剥き出しの身、剣を防ぎようがない。
だが獅子は苛立たしげに舌を鳴らした。
魔人に殺気が微塵も感じられないのだ。余裕があるとでもいうのか、それがレオの不安を無性に駆り立てた。
「そう怖い顔をするな。好みじゃねぇ野郎だったら殺すつもりだったが、[[rb:止 > や]]めた」
不敵な微笑を湛えて魔人は言った。
凛々しく整った顔貌だが表情は悪意に満ちていた。薄い唇の間から覗く牙が今にも血を求めて首に打ち込まれるのではないか、魔人の物言いからそう思えてならなかった。
「私を喰いたいなら見事打ち勝って喰えばいい、だがそう易々とはやられんぞ?」
「ほう、活きのいい獣人だ、ますます気に入ったぞ。ああ、堪らんなぁ、そのまだ絶望を知らん活力に満ちた眼差し……若く[[rb:瑞々 > みずみず]]しい肉体には溢れんほどの精気が漲っているな、実にいい実に……なら遠慮なく喰わせていただこうか」
赤い眼光が妖しく瞬いた刹那、魔人の気配が一変した。
レオの背を感じたことのない怖気が走った。
生命が脅かされる根源的な恐怖とはまた違う、何か得体の知れない感覚に全身のありとあらゆる毛が総毛立つ。
ねっとりとした湿り気を伴った妖気が魔人の体から迸っていた。
それは淫の気配。
魔人の[[rb:股座 > またぐら]]から腰巻きを持ち上げてたちまち赤黒い物が姿を現していく。何たる威容か、千年の古木のごとく節くれ立った陰茎には太い血管が[[rb:蔦 > つた]]のようにはびこり、黒光りする亀頭がみるみる肉厚の傘を凶悪なまでに広げていくではないか。長さ20cmはあるそれはあまりにグロテスクなほど禍々しい形状をした魔人の生殖器であった。
レオはただ呆然と見やるほかなかった。
「なっ、何だ……」
頭の処理が追いつかない。己の視覚はいったい何を捉えているのか、なぜ男の象徴が奮い立っているのか、なぜこの魔人は勃起しているのか、その疑問を解決するには鈍麻した脳では数秒を要した。
こいつは信じられないことに己に性的興奮を覚えているのだ。
愕然とした。
それと同時に激しい怒りが湧いた。身の毛がよだった、己が魔物から性的対象と見られているなど断じて許しがたいことだった。
「ふっ不埒なっ!」
糾弾したレオの唇が怒気に震えていた。
「そう恐れるな、若い獅子の武人よ……。甘い淫惑の世界にお前を誘ってやろう、人同士の営みでは到底味わうことのできない無上の悦楽を味わわせてやる、ククク……」
魔人の表情が淫猥に崩れた。
背後で細長い尾がたゆたい、漆黒の翼が大きく左右に開く。
レオは確信した。間違いない、この魔物は淫魔インキュバスだ。
インキュバス――夢魔の一種で、男性の姿をしており、女性型はサキュバスである。インキュバスは睡眠中の女性を襲い、体内に精液を注ぎ込んで悪魔の子を妊娠させる。己と性交したくて堪らなくさせるために、襲われる人の理想の異性像を模し、一糸纏わぬ裸で現れるという。そのため誘惑を拒否することは非常に困難となる。
だが目の前にいるこの淫魔はどうやらその範疇に当てはまらないらしい、異性ではなく同性のレオを犯そうとしているのだから。
「チッ……」
獅子は忌々しげに舌を鳴らした。
夜の[[rb:帳 > とばり]]が下りる頃、闇の住人が蠢き始めるのはある程度覚悟していたが、まさかこのような下劣な魔物と[[rb:邂逅 > かいこう]]するとはツキがない。
さてどう討ち取るか、だが思案する僅かな時間もレオには与えられなかった。
漆黒の翼がはばたいた次の瞬間、土煙を足元に残して淫魔はレオの目と鼻の先に肉薄していた。何たる初速! 動物的勘が働いたか、とっさに上がったレオの剣を淫魔の三叉槍が受け止める。暗がりの中、弾ける火花に両者の剥いた牙が白く輝き鋭さを見せ付ける。顔に憤怒を刻むレオと愉悦を刻む淫魔インキュバス。
剣を絡め取った三叉が宙に銀の線を引く。
レオの手を離れた剣は闇の中へと消えて虚しい金属音を辺りに響かせた。
「くっ……っ!」
「無駄な抵抗だ、お前はすでに俺の術中に陥っている」
耳元で淫魔が妖しく囁いた。
レオの首に腕を回し、喜悦を描く口から甘い吐息を漏らしながら、
「見れば見るほどいい野郎じゃねぇか、これほど極上の雄野郎をいただくのは久方ぶりだ」
「[[rb:解 > げ]]せんっ、ぐっ……なぜ私なのだっ!」
「なぜも何も、俺は引き寄せられたのさ。お前の放つ雄々しい獣臭に、飽くなき欲望を満たしてくれる肉の器に」
押し当てられた淫魔の怒張が甲冑に粘った輝きを落とす。
「さあ、存分に俺を愉しませてくれ」
燃えるように紅い双眼がレオの瞳を射抜いた。
それは相手の闘争心を削ぐ魔眼であった。暗闇の中に浮かぶそれを視認したときにはすでにレオは魅入られてしまっていたのである。それでも剣を振るうことができたのは武人としての矜持か。
レオは[[rb:眩暈 > めまい]]を覚えた。
淫魔の甘い吐息を吸っているうちに足がぐらつくような妙な浮遊感が体を包む。だが、体調の変化はそれだけではなかった。体がやけに熱いのだ。体を抱き締めている淫魔の肉体から漂ってくる汗の匂いがやけに気にかかるのである。嫌悪感のある匂いではなかった。
「む、むふぅ……」
男は短く唸った。
逞しい褐色の肌に浮かぶ汗の臭気にレオの呼吸が乱れ始めていく。
それは強制的に発情させる淫魔の性フェロモン。女は無論のこと、屈強な雄でも、極度の女好きでも、[[rb:頑 > かたく]]なに禁欲を守り続けている高潔な聖職者でもどんな相手でもたちどころに欲情させてしまう魔を帯びた淫臭であった。
レオもつくづく運がない。
団長から討伐を命ぜられた時点で運は尽きていたのかもしれない。もし単騎ではなく、魔の力に抗う術を持つ魔術師が同行していたなら対処のしようもあったろう。ゴブリン二体の討伐など新米聖騎士で十分事足りるが、まさか淫魔と出くわすとは命じた団長は露ほども思うまい。
レオの息遣いはさらに激しさを増していった。
「くっはぁはぁっ! 私の体にいったい何が起こっているっ!?」
欲情をもたらす汗が[[rb:揮発 > きはつ]]し、成分が嗅覚を犯しながら肺胞深くまで侵入していく。
「随分と苦しそうだなぁ? あん、どうしたぁ?」
赤眼を細めながらニタリと口角を吊り上げるインキュバス。
黒く尖った爪を生やした淫魔の指先がレオの纏った鉄の皮をゆっくりと剥いでいく。
肩を守るポールドロンが、喉を守るゴルゲットが、肘を守るコーターが、二の腕を守るヴァンブレイスが、手首を守るガントレットが、脇を守るペサギュが、胸と背を守るキュイラスが、腰を守るフォールド、タセット、キュレット、チェインメイルスカートが、大腿部を守るキュイッスが、膝を守るポレインが、脛を守るグリーブが、足を守るソールレットが、全身を守っている鉄壁の防御が、なす[[rb:術 > すべ]]なく次々に淫らな手先によって剥ぎ取られていった。
下に着込んでいた鎖[[rb:帷子 > かたびら]]を撫で上げながら淫魔は、
「感じるぞ、この下に熟れた雄肉がぎっしり詰まっているのを……どれ、けしからん肢体をした野郎のご尊顔を拝むとするか」
言うや最後に残った甲冑のヘルメットを外した。
解放された鬣がその豊かな毛量と威厳でもって若獅子の凛とした顔を際立たせた。鋭気に満ちた黄金色の瞳、筋の通った太ましい鼻梁、何物でも嚙み砕く頑強な[[rb:口吻 > こうふん]]と針のごとく伸びる白髭。獅子の青年のあまりに雄々しい面立ちにインキュバスが唸る。
「雄臭ぇ面しやがって……堪んねぇぜ、なぁ?」
淫魔はうっとりと目元を緩ませて鬣へと顔を埋めた。
毛の間にわだかまっていた獣臭が鼻腔を撫でる。若い雄の体臭にどうにも気分が高まっていく。
「ああ堪んねぇ……この獣の臭い、成熟した厳つい野郎の体が放つ臭いほど興奮するもんはねぇ」
鼻面を深く潜り込ませながら小鼻を広げると、淫魔は獅子の腰に腕を回して鎖帷子を足元に落とさせ、続いてクッションとして着ていた綿の入ったキルト状の肌着をも剥ぎ取った。
薄い下穿き一枚の半裸に剥かれてレオの顔が見る間に真っ赤になっていく。
「ぐっ、ぐぬぅぅっ!」
裸を見られて羞恥するわけがない。
彼のそこは発情フェロモンを嗅がされてすっかりテントを張っていたのである。堂々と天に向かって屹立したその先端は薄っすらと布地を濃く変色させていた。性的興奮を覚えてまだ数分と経っていないというのに早くも嬉し涙を噴き上げているとは、いったいどれほど淫魔の体臭の催淫効果は強力だというのか。いや……欲情を誘うのは何も淫香だけではない。
つと、淫魔の指先がその濡れた突端に触れるや、
「おっぐうぅぅぅーっ!? おおお……おごっ!?」
レオは牙を食い縛って吼えるや即座に腰を引いた。じわりと染みが濃くなる。
触れられた瞬間、腰の奥底から得も言えないほどの快感が瞬時に湧き上がってきたのだ。それは紛れもなく射精感だった。腰を引くのがあと少しでも遅れたなら無様に達してしまっていただろう。指先が軽く触れただけで怒張がさらに膨張するのを感じた。布越しだというのに、もし直接触られたらどうなってしまうのかレオは戦慄した。
指先に付着した粘液を悪魔の舌が舐め取った。
「強い雄の味がするな……スケベな味だ」
「ふ、ふざけるなっ、[[rb:甚振 > いたぶ]]るなら一思いに殺せっ! 私を殺してせいぜい愉悦に浸るがいい、いつか私の仲間が貴様を探し出して息の根を止めてくれるだろう!」
「さすが誉れ高い騎士というやつか? まだ減らず口を叩けるとは……下半身はこんなにも正直だというのに」
淫魔の指先が、つつう、と怒張を撫で上げた。
「おっふうぅぅっ!? おほっおっおっおおおーっ!!」
獅子の喉から再び低い嬌声が迸った。
限界だった。会陰部にめいっぱい力を込めて何とか耐えられたが、これ以上は耐えられる自信がなかった。会陰が引き攣っている。強制的に射精を捻じ込められて痙攣している。もし一拍でも脈打っていたなら盛大に精液を噴き上げていただろう。
全身に脂汗を浮かせて耐える獅子に淫魔はほくそ笑んだ。
「よく持ちこたえた、褒めてやる。あと一撫でしてたら面白いもんが見れたな?」
「がはぁっ、はぁはぁはぁ……だっ誰がそんな醜態を見せるものかっ!」
荒い息をつきながらレオは眼光鋭く淫魔を[[rb:睨 > ね]]め付けた。
意識が白い[[rb:靄 > もや]]がかかったかのように判然としない。狂おしいほどの性欲が身を焼くその熱さだけがどうにか意識を保たせていた。何か抗う手段はないか、得物を失った今、自慢の腕力でもって[[rb:縊 > くび]]ることは可能かもしれない。だが腕が言うことを聞かなかった。奇妙な事に湧いた反抗心がたちまち霧散していくのである。魔眼の影響だった。獅子の口だけがただ虚しく気炎を吐き続けた。
[[rb:陽 > ひ]]はとうに西に沈み、淡い月明りが洞窟の出入口を微かに浮き上がらせている。
二人は闇の中にいた。
闇の中にいながらその視覚は互いをしっかりと捉えていた。
獅子は夜目が利くが、夜の眷属もまた獅子以上に、それこそ日中に見るかのごとく獲物の美味そうな肉体の仔細を愉しんでいた。
「よく鍛えているな……主人を護らんと日々愚直に鍛錬を積んできた成果か」
丸太のように太い首から連なる僧帽筋と三角筋の盛り上がりがそれを窺わせた。何千何万回とひたすら剣を振り下ろしてきたのだろう。前へ大きく迫り出した大胸筋といい、斜めに刻まれた腹斜筋や岩を無造作に取って付けたかのようにボコボコに膨れる腹筋といい、適度に脂肪を含んだがっちりとした筋肉質な肉付きは同性すら惚れ惚れと見惚れさせるものだった。
その起伏の激しい腹を淫魔の掌が妖しく撫でる。
「う、うぅ……っ!」
体が痺れるような快感が走ってレオは呻いた。
指が上へと這っていく。汗に濡れた獅子の金色の体毛を掻き分けて向かった先はみっちりと筋肉が詰まった分厚い胸板。超回復を幾度となく繰り返して筋肥大したそこは中央に深い谷を作り、圧倒的な筋量でもって下乳を膨らませていた。
インキュバスは肉塊を両手で鷲掴みにすると激しく揉みしだいた。
「品の欠片もねぇ雄っぱいしやがって、こんなに厚くして誰に見てもらいてぇんだ、あぁん?」
大胸筋が大きく歪む。指の間から零れ落ちそうだった。
「ぐあぁっ!? 何を言ってっ、私はっ私はただ騎士の務めを果たすべくっ、あああっ!」
「嘘をつくな。この乳首は誰かに吸ってもらうためにここまで大きくなったんだろう? 違うか……?」
淫魔は歪な笑みを浮かべると、
「ぐっはぁぁっ!?」
獅子は牙を剥いて咆哮を天へと放った。
乳首が淫魔の指先に捉えられていた。下乳にへばり付くようにしてぶら下がっている、ぽってりと膨れた肉厚の肉芽が[[rb:抓 > つね]]られている。雷に打たれたかのような快感が背筋を貫く。指先は容赦しない、指と指に挟まれた乳頭がゆっくりと捻られ、潰されていく。
「あ、ああっ……あがぁぁ……っ!」
下穿きの頂きに白い物が薄っすら滲む。
「ふんぐぅぅっ、うぐっふんむぅぅぅーっ!!」
歯肉を見せ、顔に青筋を浮かべ、目を剥き、修羅の形相で必死に耐える獅子。
まだ誰の手垢も付いていない清らかな肉体が悲鳴を上げていた。性に未熟なレオに性経験など無論ない。もちろん愛撫されたことも当然皆無なのだから堪ったものではない。初めて他人から与えられる快感が、淫魔の、それも発情フェロモンで感受性が飛躍的に増幅させられた上での性的快感は気が狂いそうなほど凄まじいものに違いなかった。
血走った目から涙を滲ませて獅子は耐え切ってみせた。
下劣な魔物の手で万が一にも絶頂することは聖騎士の矜持が許さなかった。
「存外に耐えるな? 可愛い野郎だ……」
鼻を軽く鳴らした淫魔がレオの突っ張った下穿きを爪先に引っ掛けて落としていく。
下穿きは大量に滲み出ていた我慢汁に、ねちゃぁ……と何本もの糸を引きながら怒張から引き剥がされていった。たちまち茹った湯気が立ち昇り、濃い雄の臭気が鼻を刺す。何せ甲冑を長時間に渡って装着していた上に、汗を掻きまくって高気温に蒸らされ続けていたのであるから、その男の性臭は噎せ返るほどに濃密できついものだった。しかも新陳代謝のすこぶる高い十代後半の血気盛んな若者のそれである、獣臭を伴った若獅子騎士の恥ずべき臭いは猛烈に鼻腔を嬲った。だが淫魔はその臭いが好物らしい、舌舐めずりして淫らな臭いを放つ肉茎を見やっている。
平均的なサイズの包茎であった。
「くっ、嘲りたくば嘲ればいい……」
皮被りはどうやら本人は恥だと思っているらしい。
体格もよく皆の手本ともなる立派な聖騎士の持ち物が包茎とはまた意表を突かれて可愛げがあるではないか。にたにたといやらしい笑みを浮かべながら淫魔は、顔を赤く染めている獅子の背後へと回ると彼の耳元で囁いた。
「俺には劣るが、玉袋がでかくてタフそうで何発もヤれそうじゃねぇか? サキュバスなら喜んで上下の口で咥えてくれるぜ?」
「くっ、抜かせっ!」
「だが俺はそこまで雄の性器に興味ねぇ、俺が興味あるのはこっちのほうだ……」
淫魔の指先が尻たぶの間へと深く沈んだ。
「うおおっおっ!? まっ待てっそこは! そこだけはっ!!」
声を震わせて激しく[[rb:狼狽 > ろうばい]]するレオ。
密着していた厚い尻肉を分け入って指が潜り込んでいく。行き先はただ一点、被毛に覆われた尻のなかで唯一、粘膜が剥き出しになっている体の一部。そこを愛撫されるわけにはいかない、触れた個所に快感を植え込む魔の指がそこに触れてしまったらどうなるか考えたくもない。
指が着実に、確実に、終着点に向かって没入していく。
「そっ、そんなっそんなまさかっ!?」
レオは自身を疑った。
これほど拒絶しているというのに、あろうことか体が勝手に尻を突き出して指を迎え入れようとしていたのだ。僅かに生じた[[rb:間隙 > かんげき]]を縫ってすかさず指先が隠されていた男の秘肛を撫でる。
「くっはぁぁぁーっ!? あふっ、ふぐぅぅっ!」
食い縛った牙の間から細かな泡を噴き出してレオは悶絶した。
粘膜に直接植え付けられる快感に意識が揺れた、下肢が小刻みにガクガクと震えた。魔性の指が一撫でしただけで、肛門は自身が性感帯であることを自覚させられ肉体の主に激しい性的快感をもたらしたのである。目覚めてしまったのだ、排泄以外の使い道があると。
淫魔が獅子の耳元で熱い吐息に言葉を含ませる。
「分かるか? 乳飲み子が母の乳を吸うように、お前の肛門が俺の指を吸ってるのが?」
「ぐあぁ……認めぬ、私は認めぬぞ、そのような[[rb:戯言 > ざれごと]]など……」
「浅ましい赤子だ、いくら[[rb:強請 > ねだ]]っても乳など出んというのにチュウチュウ吸ってくるじゃねぇか」
妖しい声色の言葉責めにレオの理性が蝕まれていく。
指先に力が籠るのを感じた。
レオはとっさに括約筋を引き締めたが、しかし抵抗は無駄だった。[[rb:魔指 > まし]]によって括約筋はたちまち緩み、指をずぶずぶと呑み込んでいく。肉体はすでに意識下を離れて淫魔の側に回ったのだと知った。肉体の裏切りであった。
「あがっ、おあぁっ! [[rb:止 > や]]めっ止めろっ、そんな[[rb:汚 > けが]]れた所を弄るなど正気かっ!」
男のごつい指が入っているというのに痛みが微塵もなかった。
それどころかこの快感は何だ? 切なくなるような甘やかな快感は? レオは堪らず熱い吐息を放った。ゆったりと出入りを繰り返している指から身も蕩けるほどの甘美な波が押し寄せてくる。身も心も形を失ってあやふやに溶かされていくかのようだった。
頃合いよしと踏んだ淫魔が指を引き抜くや、
「おふっ、くぅはぁぁっ……」
獅子のマズルから自然と甘い声が漏れた。
「口寂しいか? 案ずるな、指よりもっと食い応えのあるモンをブチ込んでやる」
寒気すら感じるほどの凄絶な微笑を浮かべた淫魔が灼熱と化していたその先端を肛門へと宛がう。
「うっはぁぁぁっ!?」
一際大きな艶声がレオの口から迸った。
無理もない、淫魔の粘膜との接触は途轍もない快楽を与えるのだから。それも粘膜と粘膜、性交を激しく求める肉体同士が触れ合ったのだ、どれほど獅子の煩悩を掻き乱していることか。見ろ、懸命に射精すまいとペニスをきつく握り締めているではないか。この期に及んでまだ騎士としての矜持を保とうとは健気で殊勝な武人なことよ。握り潰さんばかりに[[rb:掌握 > しょうあく]]されて、パンパンに鬱血した亀頭を覆っている包皮がゆっくり剥けていく。やがて完全に剥け切ると、鮮やかな肉色の[[rb:内奥 > ないおう]]を見せる鈴口から透明な玉が膨れ上がって、一筋たらり、と地面へ垂れていった。
肛門がぴっとりと淫魔の怒張の先に吸着していた。
「貪欲な奴め……一度食い付いたらもう離したくないか?」
獅子の尻尾をむんずと持ち上げると、ぐっと出っ張った肛門がさらに深く亀頭を呑み込んでいく。
「ああ……ああっ、駄目だ、それだけは止してくれ、尻だけは、くああっあ……」
レオは悩まし気に眉根を寄せて訴えた。
聖職にある聖騎士が本能のままにセックスに耽るなどあってはならず、ましてや悪魔と契るなどもってのほかだ。その行為は神罰が下る蛮行であった。獅子はなけなしの理性を働かせてどうにか情けをかけてもらおうと哀願するが、悪魔に慈悲の心など爪の先程もありはしないのだ。
凶悪な亀頭が括約筋を押し広げて尻の中に沈んでいく。
ずぷ、ずぷぷ……。
「おぐぅっ、後生だっ抜いてくれっ! そこだけは犯されるわけにはいかんのだっ!」
子供の拳ほどはある亀頭が、さして抵抗を見せずに没していく。
ずぶっ、ずぷぷっ、ぶぷぷぷぷ……。
えげつないほどの極厚の[[rb:鰓 > えら]]に引き裂ける寸前まで伸ばされる括約筋。粘った音を立てながら亀頭の最大径をどうにか乗り越え、雁首の急斜面を勢いよく駆け下りると、亀頭は完全に獅子の体内へと埋まった。
それとほぼ同時だった。
「ぐおおおおっ!? いっいかん! グガッ!? ガッガアァァァァーーーッッ!!」
切羽詰まった声が獅子の喉を割った刹那、彼の体が硬直した。
呆気なくレオは射精した。
ドッビュウウウゥゥゥゥーーーーーッッッ!!! ビュビュビュブブブッビュブルルルルルーーーッッ!!! ビュッビュビュビューーッビューーービューーードビュブルルルルルルルルーーーッッ!!!! ビュブブッドップドプドップドックンドックンドックンッッ!!! ビュブブッ! ビュッ! ビュッ! ビュビュビュブブブブブルルルルルルッッッ!!!
剥けたばかりの鏡面のごとく艶やかな亀頭から勢いよく噴出する精液。
狂った暴れ馬のように頭を振るペニスから迸るそれは次々に宙へ白濁の線を引いていった。何と凄まじいのか、その飛距離、実に数メートル先まで淫らな飛沫をブッ放しながら、十代青年の濃厚で青臭いザーメン臭を辺りに漂わせていく。
狂おしいほどの絶頂がレオを襲っていた。
淫魔の雁首を括約筋が滑り落ちた瞬間、頭の中が白く弾けたのだ。
気が付けば会陰部が激しく律動していた。
「ガッハァァァッ! 駄目っ駄目だっ[[rb:射精 > だ]]してはっ! 止まってくれ止まってっ、ガァァッ駄目だと言うにぃぃぃっ!!」
ペニスを両手で押さえ込むが止まるわけがない。
重なった指の間からたちまちドプドプと白濁が溢れて糸を引いて滴り落ちる。その量、尋常でなかった。淫魔の魔根の影響で言語に絶する快楽が生じたのである。心臓が全力疾走したときのようにけたたましい早鐘を打っていた。この未曾有の快感を受け入れる器は用意されていなかった。いや、どんな遊び人でも淫魔インキュバスがもたらす快感は享受できまい。
涎を流し、涙を流し、鼻水を垂れ、ありとあらゆる体液を漏らしてレオは射精する。
射精し続ける。
射精が止まらない、止まる気配がない。
射精中枢が狂っていた。淫魔との性交に、ただの獣人である男の射精中枢が狂わされていた、焼き切れていた。陰茎の根本まで吊り上がった睾丸の中で、精子が凄まじい速度で誕生していく。生殖機能がオーバーヒートしているのだ。
そして、生まれたそばから体外に放出されていくレオの精液。
「アガァッ……ガァァァ、ァァァ……ッ!」
「ククク、いい声で鳴く。だが、本番はここからだ」
淫魔の20cm超の魔根が容赦なく挿入されていく。
獅子は狂ったように頭を振った。真珠をいくつも埋め込んだかのような禍々しく[[rb:瘤 > こぶ]]の浮いた陰茎に腸壁を擦られて堪らず白目を剥いた。それはこの世のどんな性交でも味わうことのできない異界の快感。もはや地獄の責め苦に等しい。耐え難いほどの快楽から逃れんと腰を引くが、しかし、逃すまいと淫魔は獅子を羽交い絞めにして拘束すると無理やり魔根を捩じ入れていく。
「逃しはしねぇぞ? オラッどうだ、俺のデカマラがずぷずぷ沈んでいくぞ?」
「おっぐぅっ!? こっ壊れるっ、尻がっ尻がぁぁっ!」
その間にもレオは無様に射精し続けていた。
「ハガッ! グッガァァッ! アッアッアガッ! まただっ、また[[rb:射精 > い]]ってしまうぅぅっ!」
凄まじい快楽が理性を貪り尽くす。
獅子は長い舌をだらんと垂らしながら人外との禁断の交尾に悶え狂った。
何も考えられなかった、考えたくもなかった。ただただ気持ちが良かった。悪魔と交尾している、禁忌を犯してまぐわっている、雄と雄が生殖本能を剥き出しにして結合している、甘美な背徳感がさらに肉情を滾らせていく。
聖騎士レオが快感に溺れるのは[[rb:容易 > たやす]]かったろう。
何せ日頃から自慰を悪とし、謹んでいるような堅物男だ。十八という年齢になるまで夢精でしか精を放ったことがないのだから、そんな男が淫魔のもたらす快楽に抗えるはずがない。翻弄される彼の肉体はただ精液を噴き上げるだけの肉人形と化していた。
インキュバスが深く交わった結合部を見下しながら[[rb:嘲笑 > あざわら]]う。
「ずっぽり咥えやがった! クハハハッ、この淫乱獅子めっ!」
紅い眼に淫虐の炎が揺れていた。
生殖本能の赴くままに腰を前後させる凌辱者。激しい交接に結合部はたちまち白く泡立ち、クリーム状となった淫らな体液が獅子の太股を伝い落ちていく。
「グガッ! アガァッ! アッグッゥゥッ!!」
「そうだっ、いいぞっいいぞぉっ! もっと鳴き[[rb:喚 > わめ]]いて俺を[[rb:悦 > よろこ]]ばせろっ!」
「ヒィッ!? アアッアガガァァァッ! ウガッ、ハグゥゥッ!」
レオはもう何度目かも分からない絶頂に朦朧としながら[[rb:善 > よ]]がり狂った。
理性など微塵も残っていなかった。
羽交い絞めにされながら尻を強引に犯されるという屈辱的な体位を取らされているというのに、憎悪がまったく湧いてこなかった。あるのはただ底知れない肉欲のみ。淫魔から雄の剥き出しの本能をぶつけられて、すっかり己の肉体が雌と化しているのを自覚した。犯される悦びをレオは知ったのである。
ついにその場に崩れた獅子を淫魔は四つん這いにさせて後背位でひたすら犯す。
「へぱってんじゃねぇぞっ! まだ[[rb:射精 > で]]るだろうがよっ、オラァッ!」
「ヒギッ!? いっ[[rb:射精 > い]]っぐぅぅぅーッ!!」
結腸のほうまで深々と貫かれ、獅子のペニスからまた精液が射出する。
獣の交尾のような体位が獅子の興奮を煽っていた。
「おおっ締まる締まるっ! 初物はやっぱり締まりが違いやがるぜぇっ! 俺を咥え込んだまま離しやがらねぇ、とんだケツマンコ野郎だっ!」
分厚い尻肉に十本の指を食い込ませて怒涛の腰遣いで[[rb:抽挿運動 > ピストン]]を繰り返す。
淫魔は逆三角形の肉体美を汗だくにさせて壊れた機械人形のように一心不乱に腰を振り続けた。性知識について[[rb:知悉 > ちしつ]]している彼にとって、どこが感じるポイントか手に取るように分かった。数百年の時を生きてきて数えきれないほどの人数を犯してきたのだ、相手がどれほど性経験を積んでいるか、どこが弱点か、それを踏まえて[[rb:狡猾 > こうかつ]]に責め抜くのである。
暗闇の中、雄交尾の淫らな音だけが響いている。
逞しい男たちの低い[[rb:喘 > あえ]]ぎ声が、
肉同士のぶつかり合う乾いた音が、
魔根の出入りする湿った音が、
すべてが一緒くたに合わさって何とも劣情を誘う卑猥な淫音となって鼓膜を犯していた。
「最高だぜぇ、雄臭ぇ野郎のケツマンコはよぉっ! おっふぅっ!!」
激しい腰の打ち付けに褐色の肌から無数の汗が飛び散る。
淫魔の息遣いが[[rb:忙 > せわ]]しくなっていく。合わせて速度を増す腰使い。絶頂が近いのだ、インキュバスの本懐、すなわち他人の体内への種付けを遂げようと絶頂に肉体が色付き始めていた。首に、体中に青筋が浮かび、旺盛な精子生産能力を誇る鶏卵大の睾丸が、ぐぐぐ、と陰茎の付け根に寄り、全身が小刻みに震えた直後、
「っ!! たっぷりと俺の種を注ぎ込んでやるから有難く受け取れっ!」
ニタリと牙を剥くや、根元まで埋まっていた魔根が一際太く膨れ上がった。
「孕めっ、悪魔の子をっ!!」
ドビュブブブブブリュルルルルルルゥゥゥゥゥーーーーーーッッ!!!! ビュブービュブルルルルッビュビビビィッブブブッ!! ビュービュビューーーッッ!! ドッピュドッピュプププビュブブブッ!! ブリュリュリュリュッッビューービュビュビュビュウウゥウゥッビュビビビッビュービューーーーーーッッッ!!!! ドップ! ドップッドップッ! ドッッッビュウウウウウウウーーーーーーーッッッビューーービューーーーーーーービューーーーーーーッッッ!!!! ビュビッビュブブッッ! ドックンドックンドックンッッ!! ドュビュウウッッビュブブブブブルルルルルルルルルルルルルルッッッッッビューービュビュビュビュウウウウウウウウゥゥゥゥーーーーーーーーーッッッッ!!!!!
夥しい量のザーメンであった。
ぱっくり開いた尿道口から煮えに煮えた熱水が、腸壁を[[rb:穿 > うが]]つ勢いで放水銃のごとく一直線に噴出する。それはたちまち腸内を白濁にべっとりと染め上げ、満たし、結腸のさらに奥のほうまで轟々と音を立てて激しく逆巻きながら[[rb:遡 > さかのぼ]]っていった。
インキュバスの射精恐るべし。
魔指や魔根の比ではない、魔精のもたらす途轍もない淫楽にレオは白目を剥いた。
耐え切れず気絶したのだ。
地面に崩れ落ちる獅子、意識を失ってもなおペニスが精液を噴き続けている。
淫魔の噴出し続ける大量ザーメンにたちまち腹が大きく膨れていく。淫魔の子種である、およそ尽きることのない膨大な量が獅子の腹を母体にせんと送り込まれる。容赦のない無責任中出しだ。精液ボテ腹となっているとも知らずに、失神したまま獅子の獣根はまだ精液を放つのを止めない。意識がない肉体を絶頂させ続けるとは魔精はいったいどれほどの快美を与えているというのか。
小一時間ほど経って淫魔はようやく生殖器を引き抜いた。
広がったまま閉じない肉孔から、ゴポゴポと音を立ててザーメンが漏れていく。
「ふうぅぅ……たっぷり種付けできたぜぇ」
淫魔は満足げに一息つくと、気絶している獅子の鬣を掴んで顔を上げさせるや、その顔面に怒張からまだ漏れている生臭い汚液を塗りたくった。
「ハッ、いい[[rb:面 > つら]]だぜぇ?」
精悍な顔が[[rb:汚猥 > おわい]]にべっとり塗れていく様を見やって軽薄に鼻を鳴らす。
もしこのときレオに意識があったなら、事後どんな感想を抱いただろうか。女をまだ知らない清い肉体に妖魔の穢れた汚液が仕込まれてしまった事実に怒り狂うか。いや……、冷静に物事を考えられるほど正常な精神をもう保ててはいまい。魔族でない者が体内に魔精を注がれて無事でいられるはずがない。
魔の性液は肉体を蝕み、精神を蝕み、やがて闇に堕ちていくのだ。
淫魔インキュバスの漆黒の翼が音もなく広がった。
「これでお前も俺ら側の、闇の眷属となったわけだ。いつか[[rb:何処 > どこ]]かで出会うことがあったらまた熱くサカろうぜ、同胞よ」
薄気味の悪い羽ばたき音を残し、しばらくして闇に静寂が満ちた。
夏の強い陽光が白亜の壁の白さをさらに眩いほどに飛ばしていく。
ビシュタル王国の王都レゾノワの、国王がおわす大宮殿の程近くに聖騎士団の宿舎はあった。宮中を警護する近衛兵として働く聖騎士も多く、何か問題が生じた際にはすぐ馳せ参じることができるよう大宮殿のそばに設けられていた。
その白亜の宿舎にある自室でレオは何をするでもなく窓辺で椅子に腰かけていた。
「…………」
広い中庭から雄々しい掛け声が聞こえてくる。
ちょうど昼下がり、焼けるような日差しの下で、昼食を取り終えた騎士たちが剣の稽古や肉体の鍛錬に打ち込んでいた。
ビシュタル王国を打ち立てた聖竜ガイゼル王が[[rb:擁 > よう]]する国軍の勇名は辺境国にまで轟いていた。そのなかでも中核をなすのが、レオも属している、狼獣人のラグノフ団長が率いる聖騎士団だった。鋼の意志と高い団結力を持つ、[[rb:各々 > おのおの]]が一騎当千というすこぶる精強な強者の集まりだ。団員数五百を数えるその末席に名を連ねていることはレオにとって至極の喜びであった。
白い陽光の世界へと向けられていた黄金色の瞳にかつての覇気はない。
輝きの失せた昏い瞳には汗だくになって研鑽を積む男たちの姿が映っていた。
目が離せなかった。
皆、半裸になって黙々と剣を振っている、組み合いながら相撲を取っている。猪獣人が、馬獣人が、狼獣人が、犬獣人が、竜人が、[[rb:蜥蜴 > とかげ]]人が、[[rb:犀 > さい]]獣人が、鳥人が、あらゆる種族の十代後半から四十代の筋骨逞しい雄獣人たちが必死になって体を[[rb:苛 > いじ]]め抜いている。
隆起する筋肉、引き絞られる筋肉、体毛を汗に輝かせてうねる筋肉の何と美しいことか。
そして、肉体を吟味するレオの視線はやがてある一点へと向かうのである。
男の股間へ……。
どうにも男の股座のモノが気にかかって仕方がなかった。
気付けば四六時中、そのことばかり考えていた。同性が近くにいたなら反射的に視線が股間へと落ちた。怪しまれるから止めようとは思ったが止められないのだ。気付かれないようにこっそりと盗み見た。男である限り、確実にあるのである。股間には一人の例外もなくアレが備わっている。あの猪獣人にも、狼獣人にも、犬獣人にも……。
レオの視線が中庭にいる男たちの股間を無遠慮に這う。
革ズボンの膨らみを眺めて想像を膨らませれば膨らませるほど興奮を覚えた。
あの馬獣人は長身でマズルも長いからきっと性器も立派に違いない、あの竜人のペニスはスリットの中できっと蒸れまくっているはずだ、あのマッチョな犀獣人はガタイの良さに反して短小包茎かもしれない、と様々な妄想が脳裏を駆け巡る。
男の象徴。
男性器。
陰茎。
男根。
魔羅。
肉棒。
ちんぽ。
ちんぽ、チンポ、ちんぽ、チンポチンポチンポ……。
生殖器官のふしだらな呼称がエンドレスに頭の中に湧いてくる。そして熱い血潮を漲らせて逞しく勃起する男根に囲まれたならどんなに幸せだろうかと、妄想は次第に暴走し危うさを帯びていくのである。
なぜこうも男の性器に惹かれるようになったのか原因は一つしか考えられなかった。
淫魔インキュバスとの肉体的接触――
数日前、魔物の討伐に向かった洞窟内で遭遇したインキュバスに不覚にも襲われ、体内に奴の体液を流し込まれたのである。その体液が人体に何らかの影響を与えたのだろう、それからというもの他人の男性器が気になって仕方がないのだ。
レオの脳裏に淫魔の禍々しい男根が思い浮かんだ。
圧倒的な質量を誇る肉棒が尻を貫いている感覚がまだ生々しく残っている。思い出すたびに体が熱く火照り、そして空虚な気持ちになった。
それは喪失感であった。
あの発狂しそうなほどの快楽が忘れられなかった。
男が欲しい……。
逞しい男の生殖器が欲しい……。
逞しい男の生殖器が放つ精液が欲しい……。
そうだ、精液だ、精液で満たされたい。欲しい、欲しい精液が。誰か私に精液を……精液を飲ませてくれ……。レオはいつしかそんな禁断の欲求に囚われていた。
淫魔の精を受けた者は淫魔化する――
だがレオは驚異的な精神力で持ちこたえた。神の加護を受けた聖騎士ゆえに邪悪なものに対する[[rb:抵抗力 > レジスト]]が高かったのも幸いした。しかし、あれほど大量の魔精を浴びてしまった代償は大きかった。淫魔が興味を示すものが性的なものであるように、レオもまた性的な、それもとりわけ男性器と精液に異常なほどの関心を示すようになっていた。それはレオを犯したあのインキュバスの影響であったことは言うまでもない、性的行為に[[rb:疎 > うと]]かった彼にとってあの[[rb:酸鼻 > さんび]]を極める悲劇がもたらした快美はそれほど衝撃的だったのだ。
レオはかろうじて獣人性を保てているという状態だった。
見た目は獣人のままだが体質と精神が淫魔となっている、半淫魔といったところだろうか。
「ううっ……男が、男の種が欲しい……」
目に映るむくつけき野郎たちの姿に男を欲する欲求がどうしようもなく高まっていく。彼らの精液が欲しい、禁欲生活が長い彼らのことだからさぞ濃厚で舌を唸らせてくれるだろう。ああ、喉が渇く、渇いて渇いて仕方ない。
男たちが力強く射精する姿を想像していたレオの手が股間へと落ちた。
「はぁはぁ、辛抱できん……」
自慰は己に長年きつく戒めてきたがその禁は先日破った。
股座が大きく盛り上がった革ズボンを脱がそうと伸ばしかけていた手は、しかし、扉のノック音に固まった。
扉を開けてでかい図体をした一人の虎男が無遠慮に入ってきた。
「よう、邪魔するぞ」
「む、どうしたライガ、昼休憩はもう済んだのか」
レオは咄嗟に手をズボンから離すと、努めて冷静な笑みを浮かべて言った。
同じく聖騎士団に籍を置く同輩のライガであった。
同い年のライガとは旧知の仲で、従騎士時代から互いに切磋琢磨して修練を積んできた。気心の知れた[[rb:知己 > ちき]]であり、共に高みを目指す良き[[rb:好敵手 > ライバル]]でもあった。
虎の青年はレオに歩み寄るや彼の様子を窺うようにじっと顔を見つめると、
「いやなに、昼食時にお前の姿を見かけなかったから、もしや気分が優れないのかと思ってな」
「そんなことはない。どうやら朝食を取り過ぎたみたいでな、腹が空かんのだ」
「そうか、それなら良かった」
不安げな表情が一変、白い牙を輝かせてライガは男臭い顔を綻ばせた。
これほど笑顔の似合う男はそうはいまい。根っからの明るい性格にハキハキとした物言いは角が立たず、この男がいるだけで周りがパッと明るくなる太陽のような男だった。顔もなかなかどうして男前で、太い眉に、男の拳が余裕で二つは入りそうな大きな口、凛と澄んだ琥珀色の瞳に、山吹色と黒の毛色の鮮やかさと健康的な毛並みの艶がよりライガの男振りを際立たせていた。
そんな人好きのする笑顔も爽やかな虎青年に、今のレオは心中穏やかでなかった。
鼻先をライガの汗の匂いが撫でていた。
「……」
レオの喉仏が飲み下す生唾にゆっくりと動く。
実に目を釘付けにさせる肉体だった。白シャツの半袖から突き出た腕は上腕二頭筋のあまりの太さに袖口が今にも引き裂かれそうで、胸板もまた膨れる大胸筋に首元のボタンが弾け飛びそうだった。屈強な雄そのものの肉体が目の前にあった。
親友に劣情を感じるなどあってはならない。
それは重々承知している、承知しているのだ。
だが……だがっ!
椅子に腰かけているレオの目線の高さにちょうどそれはあった。レオが今穿いているものと同じ、団から支給された平時に着る革ズボンを穿いているライガのその部分は、内包物に大きく膨れていた。魅惑の隆起だった。革一枚と下穿きを隔てた向こうに、手を伸ばせば触れられるほどの距離に男のチンポがあるのである、雄臭そうな虎チンポが、精液を授けてくれるチンポが……。
カラカラに渇いた喉はもう生唾すら出なかった。
飲みたい、喉の渇きを潤したい。なぁ、ライガ……いいだろ? 一度だけ、一度だけだから……。
視界の周りが暗くなり視野が[[rb:狭窄 > きょうさく]]する。
もう目の前の膨らみしか目に入らなかった。動悸がして冷たい汗が全身からドッと噴き出した。頭がおかしくなりそうだった。もしライガがあと少し声をかけてくれるのが遅かったら、きっと彼の股間に手を伸ばしていただろう。
「どうしたレオ、ぼうっとして?」
「……あっ、いやっ何でもない気にするな! 少し、考え事をしていただけだ」
我に返ったレオは慌てて頭を振って言った。
「そうか? 午後の警護任務、きつそうだったら無理せず休めよ? 困り事ならいつでも俺を頼ってくれていいからな?」
「あ、ああ……」
訝しげに小首を傾げるライガにレオは愛想笑いを送った。
言えるはずがない、今までどんな悩みでも打ち明けてきた親友のライガでもこればかりは口が裂けても打ち明けることはできない。
お前の精液を飲ませてくれ――などと。
レオが体調の異変に気付いたのは、あの一件があったすぐ翌朝のことだった。
食事を胃が受け付けなかったのだ。いや、それ以前の問題だった。食べ物を体が食べ物として認識しないのである。あらゆる物を口に含んでもまったく味がせず、[[rb:甚 > はなは]]だしい異物感だけがあった。何かの病を疑ったが、そうではなかった。ふと脳裏に一つの思いが湧いたのだ、『精液が飲みたい』と……。愕然とした。おそらく肉体が魔精の影響で、淫魔のそれへと思考もろとも作り変えられてしまったのだと気付いた。
悟った瞬間、凄まじい渇望が身を焦がした。
精液だ、精液を飲みたい!
自室に籠り、レオは手淫に没頭した。[[rb:拙 > つたな]]い手仕事で狂ったように竿を扱きまくった。快感がたちまち体を痺れさせ、夢精でしか精を放ってこなかったペニスが初めて外部から与えられる刺激で精を放った。
手にべっとりと付着した白い体液をレオは恐る恐る舌に乗せた。
美味かった。
美味かったのだ。
とろりと滑らかなそれは猛々しい雄の精力を凝縮したように味が濃厚で、鼻を鳴らすと何とも言えない濃密な精臭がさらに食欲を掻き立てた。この世にこんなにも舌を唸らせてくれる物があるとは思いもしなかった。どんな豪勢な料理や美酒よりも精液は美味かった。レオは目の色を変えて掌を舐めた。旺盛な食欲と性欲がレオを突き動かしていた。禁欲を破り、自慰に手を染め、不純な体液を食し、感じるはずの罪の意識は、しかし微塵も湧かなかった。
何と[[rb:惨 > むご]]たらしい淫魔の呪いだろう。
精液しか食せない――
聖騎士レオの肉体は精液以外に摂取できなくなっていたのだ。味覚や嗅覚が変わり、男の体液が何よりも美味く感じ、よい香りに感じるようになってしまったのである。あまりにも哀れではないか、この獅子はこれから精液を食事として生きていかなければならないのだ。その事実を本人は到底受け入れられるものではあるまい、男の精を食って命を保っていくなどと。
いや、半淫魔の彼にはそれは問題にすらなっていないか。
部屋を出ていくライガの背を見送るレオの瞳が熱っぽく潤んでいた。
「ライガ……」
お前のが飲みたい、と胸の内で呟く。
ライガの、他人の男の精液を飲みたい。今まで己が放出したものだけでどうにかしてきたが、射精できる回数や量にも限度がある。己の分だけでは到底足りなかった。腹が膨れるはずもなく、このところ強い空腹感に任務にも支障をきたすようになっていた。
それから数日後のことだった。
誰でもいいから飲ませてくれ、と日々悶々と過ごしていたレオに転機が訪れた。
きっかけは中庭で鍛錬に汗を流していたときだ。
午後の任務に向けてできるだけ体力を温存しようと涼しい木陰で腰を下ろす彼に、焦げ茶色の被毛が何とも暑苦しそうな熊獣人の二人組が話しかけてきた。両者ともまったく同じ、がっしりとした固太りの背格好で、[[rb:石臼 > いしうす]]のように固く太ましい首の上にはまったく同じ顔が乗っていた。双子の聖騎士ガブとルグの兄弟であった。彼らは示し合わせたかのように、これまたまったく同じに口角を吊り上げると、
「おい、レオ」
「おい、レオ」
寸分の狂いもなく見事に重なった声が鼓膜を震わせた。
彼らは互いに顔を見合わせると、レオの向かって右側にいた頬に刀傷が走った熊男が口を開く。その傷で兄のガブのほうだと分かった。
ガブはあからさまに[[rb:蔑 > さげす]]みが滲んだ視線をレオへと落とすと、
「新入り、ラグノフ様がお呼びだぞ。待たせるんじゃねぇ、執務室だ、すぐ行ってこい」
軽く鼻を鳴らしていった。
何用だろうか? レオの表情に微かに陰が落ちた。もしかしたらここ最近の不調を咎められるのではとふと思った。
「承知しました、すぐ行って参ります。ありがとうございます、ガブ様、ルグ様」
礼を告げて立ち上がろうとしたレオに、今度は弟のルグが声をかける。
「……ったく、物覚えが悪い要領を得ん新入りのお[[rb:守 > も]]りまでせにゃならんとはラグノフ様も大変だなぁ?」
「言うてやるな弟よ、[[rb:此奴 > こやつ]]なりに精一杯やった結果がこれなのだ、寛容な心で見守ってやろうではないか」
ガブがすぐさま言葉を足す。
二人の口振りから表情から、高慢が滲み出ていた。
聖騎士の全員が全員、[[rb:篤実 > とくじつ]]な人柄で品行方正というわけではなかった。中にはこういったいけ好かない人物も当然いた。世襲制の強い騎士の世界である、父の威光を笠に着て慢心して尊大な態度を取る聖騎士も少なくはなかった。どんな職業でも言えることだが、[[rb:驕 > おご]]り高ぶる彼らは決まって己より立場の弱い者を攻撃したがるものだ。
以前のレオなら果敢に口答えしただろう。
五歳年上の彼らにも臆せずに、胸に燃える熱い思いを舌に乗せただろう。
だが今のレオにそんな気概は少しも残っていなかった。
「失礼します……」
[[rb:憔悴 > しょうすい]]し切った表情で頭を軽く下げると、レオは重なる舌打ちを背中に受けながらその場をあとにした。
執務室は宿舎の西の片隅にあった。
ノックを二度鳴らし名前を告げると、重厚な[[rb:樫 > かし]]の扉の向こうから重苦しい声色の返事があった。
扉を開けて中に入ると、恰幅のいい一人の狼獣人が窓辺に立って格子窓に切り取られた西方の山々を眺めていた。夏でも融けることのない霊峰ミョルネルの万年雪が[[rb:碧 > あお]]い空の下でことさら白さを際立たせている。その白に負けずとも劣らない純白の毛並みが、つと[[rb:眩 > まばゆ]]いほどの[[rb:煌 > きら]]めきを放った。
振り返った白狼は凍えるほどに冴えわたる[[rb:蒼 > あお]]色の瞳の中に訪問者を捉えて言う。
「調子はどうだね、レオ?」
腹の奥底から響いてくるような声音と満ちた威厳にレオは心底恐縮した。
五百人を超える、精鋭揃いの団員を束ねる聖騎士団団長ラグノフその人である。その容姿に誰が畏敬の念を抱かないでいられるだろうか。神々しいばかりの純白の肢体は齢四十近くなってますます男の脂が乗って頑健精強に加え、推し量りようのない叡智を[[rb:湛 > たた]]えた、まるで厳冬期の湖に張る氷のごとく蒼い[[rb:双眸 > そうぼう]]といい、見る者を圧倒した。もし胸に悪事を隠している者がいたなら、彼の冷厳な眼光に一睨みされただけで自ずから罪を自白してしまうに違いない。
執務室内の空気そのものが冷気を帯びているかのように冷たい。
レオは身が引き締まる思いで[[rb:恭 > うやうや]]しく頭を垂れた。
「はい、つつがなく日々責務と鍛錬に身を投じております」
だが、
「隠し事は我に無用ぞ……レオ?」
「はっ! しっ失礼いたしましたっ!」
獅子の頭がさらに一段下がった。物事の本質を鋭く見抜く彼の[[rb:慧眼 > けいがん]]はもしや見透かしているのか、レオの背を部屋の冷気よりも冷たいものが流れる。
「そう[[rb:畏 > かしこ]]まらんでよい、[[rb:面 > おもて]]を上げよ」
「は、はっ……」
「貴殿を呼び出したのは他でもない、[[rb:其方 > そなた]]、このところ碌に食事を取っていないのではないか?」
「……」
「我の耳に入ってきたのだ、貴殿の姿をここ数日食堂で見かけないと。それも朝昼晩の三食……。そのせいか、随分とやつれたなレオ?」
胸中深くを探るような眼差しが獅子の瞳を射抜く。
ラグノフ団長がなぜ己を呼び出したのかこれで分かった。皆が揃って食事を取る場にここのところ姿を現さない己を怪訝に思った誰かが報告したのだろう。
[[rb:悄然 > しょうぜん]]とした獅子を見やる蒼い瞳に咎める色はない。
「団員は掛け替えのない何よりも大切な家族のようなものだと常々思っている。すなわち一人一人が我の血であり肉なのだ。貴殿にどんな事情があろうとも突き放したりなどはしない。いったい其方の身に何があったというのだ、レオ……?」
温情の籠った言葉であった。
[[rb:噤 > つぐ]]んでいたレオの口が[[rb:僅 > わず]]かに動く。
彼の前で隠し通せるものではなかった。たとえ隠し通せたとしても何の解決にもならない、それどころかこのままいくと状況は悪くなる一方かと思われた。レオはおずおずとこれまでの経緯を話し始めた。
数日前の魔物討伐任務の際に淫魔インキュバスと交わってしまったこと。
それからというもの食事が喉を通らなくなってしまったこと。
男の精液を体が無性に欲するようになり、それしか受け付けなくなってしまったこと。
獅子は包み隠さず事実だけを赤裸々に話した。
聖騎士としてあるまじき醜態を晒してしまった[[rb:慙愧 > ざんき]]の念が心を切り刻む。
白狼は終始、神妙な面持ちで耳を傾けていた。そして、獅子が話し終えると、
「淫魔の呪いか……」
そう一言呟き、しばし黙り込んだ。
怒声が鳴り響くことを覚悟していたが、軽蔑や嫌悪を顔に表すこともなく、顎に手を当てて思考を巡らす彼の真剣な眼差しから、心底から心配してくれていることが手に取るように伝わってきた。
やがて妙案が浮かんだのか白狼は再び口を開いた。
「呪いなら解呪できる方法が必ずあるはずだ。性魔術に通じる高名な宮廷魔術師に当たってみよう」
レオは一筋の光明を見た気がした。
解決の糸口を示してくれた団長に深々と頭を下げる。
「ありがとうございますっ! もう一生治らないのではと[[rb:暗澹 > あんたん]]たる気持ちでおりました」
「いや、元はと言えば其方一人を向かわせてしまった我の落ち度でもある。不測の事態を予見できなかったのだからな……許せ、レオ」
「いえ、そんなお止めください団長……」
頭を垂れるラグノフにレオは縮こまった。
あの街や村の近辺ではゴブリンといった最下級の魔物しか長年目撃されていなかったのだ、予見できないのも無理もないことだった。それにインキュバス自体が、レオも未だかつて一度も目撃したことがないほど珍しいのだから尚更だ。
白狼は眉間に深い皺を刻むと、
「しかし難儀なものだな、淫魔の呪いというものは。男の精液しか口にできぬ、か」
「はい……」
「むぅ、解呪方法が見つかるまでおそらく日数を必要としよう。そこで、それまでの其方の食事だが……どうだ、この聖騎士団の団員たちで[[rb:賄 > まかな]]ってもらうというのは?」
「えっ!? そ、それは誠ですか?」
レオは驚きに目を見開いた。
それは願ってもない申し出だった。何せ、先ほども稽古の最中にあまりの空腹でぶっ倒れそうになってしまったのだ。精力旺盛な者たちばかりのこの五百余名の聖騎士たちのそれを頂くことができたらどれほど嬉しいことか。
だが、はたして上手くいくだろうか。
「……本当によろしいのでしょうか?」
獅子の言外に、誰も提供なぞしてくれないのではという不安が込められていた。
精液しか食せないなんて、そんな突飛もない話を信じる者は誰一人とていないかもしれない。いたとしても露骨に嫌な顔をされることは火を見るよりも明らかだ。
そんな獅子の胸中に湧く憂いを敏感に汲み取った白狼が言う。
「案ずるな、我の権限で有無は言わせん。非協力的な不届き者がいたならきつい処分を下すよう副団長に厳しく言い付けておく。団員のなかには少々柄のよろしくない者もいるが、そこは目を瞑ってやってくれ。人々を救済することにかけては真摯だ、きっと其方の力となってくれよう」
「団員の皆の御助力があれば飢えを[[rb:凌 > しの]]ぐことができます」
「うむ、どこぞの馬の骨とも分からぬ男のそれを口にするのも気分がいいものではあるまい? ここは聖騎士という立場を多いに利用して彼ら同胞を頼るがいい」
レオは何度も頭を下げてから退室した。
黄金色の瞳に薄っすらと涙が滲んでいた。これでようやくひもじい思いをしないで済みそうだった。厚い樫の扉が音を立てて閉じたとき、その潤んだ瞳に隠しようのない凄絶な淫火がめらめらと赤い舌を伸ばし始めたことを、はたして扉の向こうの白狼は知るよしもなかったろう。
精液の提供はすぐ翌朝には開始された。
提供方法は朝・昼・晩ごとにさまざまな形が取られた。
まず朝食は時間がないことや、起床直後の眠気の残ったままでの射精は難しいこと、朝一の射精は日中の任務に重大な支障をきたす恐れから、昨晩のうちに採取しておいて容器に溜められたものを出された。おそらく団長に呼び出されたあのあと、レオが陥った状況がすぐさま皆に通達されたのだろう。
食事は専用の部屋が用意されていた。
それもそのはずだ、皆が一堂に会する食堂で一人精液を[[rb:啜 > すす]]るわけにはいかない。
レオは[[rb:鰐 > わに]]男のグレゴリオ副団長に指示された、宿舎の地下のさらに片隅にある小部屋へと向かった。さすがに地上の部屋は用意できないらしい。もし万が一、部外者に知られでもしたら大事になるからだろう。皆の規範となる清く正しく常に高潔であるべき聖騎士が男の精液を食っているなど本来あってはならないのだ。もし外部に漏れでもしたら、たちまち醜聞は王都を駆け巡り、やがては国王の耳に入って最悪、聖騎士団解体ともなりかねない。これは決して表には出せない、身内だけの秘密事なのだ。
狭く薄暗い石敷きの通路を通り、指定された小部屋の扉を開けると、
「おおっ……」
思わずレオの喉から感嘆が漏れた。
むっわぁぁぁ……と噎せ返るほどの猛烈な臭いが鼻腔を衝いたのだ。
精液の臭いだった。
四方を石壁に囲まれた窓一つない部屋の中には誰もいなく、中央に置かれた腰高の小さな円卓の上に置かれた一抱えほどはある大きな金属製ボウルが鈍い輝きを放っていた。その中にレオの視線が吸い寄せられる。
「す、凄い……凄いっ、凄いぞこれはっ!」
涎が止まらない、ぼたぼたとマズルの端から滴り落ちていく。
ボウルには生々しい白濁色の液体が半分ほど溜め込まれていた。それは小さな燭台の仄暗い灯りに、何とも欲情を誘う妖しい艶を湛えてレオの足を引き寄せる。何人分のザーメンだろうか、五十人、いや百人分はあるだろうか、己が放出する量とは比べ物にならないほどの膨大な量の精液だ。
たちまち下腹部の一点に向かって血液が集中していくのが分かった。
半淫魔化している肉体が激しくその器の中身を求めていた。
レオはそばまで近寄ってまじまじとボウルを見やった。
おそらく床に置かれたボウルの中に男たちは皆、立ったままの姿勢で次々に放っていったに違いない。興奮のあまり狙いを定め切れなくてボウルの縁に引っかかった精液に外面までがべっとりと濡れ、また何本もの白濁がその濃さゆえに縁からだらりとぶら下がったままの状態で淫らな雫を艶めかせていた。
そのあまりの汚らしさが余計にレオの興奮を煽った。
欲望のままにひたすら放出した感が凄まじい。どうやら見た目だけでも綺麗にして飲みやすくしてやろうと思った者は一人もいなかったらしい。だがレオにとっては逆にそれが嬉しかった。親切心の欠片もなく独り善がりになってしまうほど、手淫に没頭していたということなのだから実に男らしくていい。
この部屋に来て順番に自慰していったのだろう。
鼻を鳴らすと精液臭に雄たちの残り香が混じっていた。
いったいどんな気持ちで、どんな顔でペニスを扱いていたのだろうか。頑なに禁欲していた者も大勢いただろうに、禁を破っての久しぶりの快感はどれほど気持ち良かっただろうか。性的快感に歪む男たちの精悍な顔が次から次に脳裏に浮かんでは消えていく。
堪らなかった。
切なげに呻いて熱い樹液を迸らせる彼らが堪らなかった。
「ハァハァハァ……私のためにこんなにも沢山っ!」
己を助けるために、己の飢えを満たすために皆必死になって千摺りに励んでいる姿に、どうしようもなく気分が昂る。あまりにも愛しいではないか。
ボウルの縁を握ると水面にゆったりと波紋が広がった。
手が震えていたのだ。
「ううぅ……」
凄まじい興奮のせいだった。
心臓が破裂せんかという勢いで拍動している。聴覚が、嗅覚が、触覚が、味覚が感覚を失い、視覚だけがボウルの中の精液の情報を執拗に脳味噌へと送り続けている。何と美しいのだろう! 重たげに広がっていく波紋に、艶めかしい艶が生きているかのように蠢いた。いや、実際生きているのだ、活発な雄たちのすこぶる元気な精子が数えきれないほどこの液体の中で泳いでいるのである。
さあ、肉体の欲するままに――
己の中の淫魔の血が囁きかける、精液を食せと、己の血肉とせよと。
レオは両手に持ち上げてボウルの縁にそっと口を寄せると、ゆっくり傾けた。
縁のほうへと粘液が緩やかに傾いていく。
マズルの先を生温い粘液が触れた刹那、レオは一気にボウルに角度を付けた。
「んんむぅっ! ……んぐんぐんぐっ!」
喉がぐびぐびと音を立てて男の体液を喰らっていく。復活した嗅覚によって再び麻痺してしまうほどの猛烈なザーメン臭が鼻を襲う。こちらも復活した味覚が狂喜乱舞していた、禁欲に煮詰められた逞しい雄の妙味が舌の味蕾を犯す、野蛮な精子の群れが片っ端から味蕾を強姦している。
他の男の精液を飲んでいる!
飲精している!
獅子の体が小刻みに震えていた。飲んでいるという事実だけで、極度の興奮に達した彼は手で触れていないというのに射精したのだ。
「んんんーーっ!! んごおぉんむぅぅっ!!」
盛り上がったズボンの先に染みが浮き、裾から白い粘液がだらだらと垂れていく。
幸福の極みだった、至福の瞬間だった。
胃に流れ込んでいく精液の何と旨いことだろうか……。肉体が、精神が、歓喜に打ち震えていた。これだ、これを求めていたのだ! 飲精は効果覿面だった。雄々しい男たちの生殖器で作られた精液は格別に美味で舌を唸らせ、肉体を生き返らせたのだ。獅子の瞳に精気が戻り、たちまち毛艶も増して体が活力を取り戻していくではないか。
一抱えもあるボウルの中をすべて平らげると、獅子はまだ内面に付着している残り汁をも舌で舐め取った。
生臭いゲップが漏れる。
その臭い息すら宙に放つのが惜しい。
マズルの毛にこびり付いている残滓まで綺麗に舐め取ると獅子はようやく一息ついた。
「ふぅ……食った食った」
と満足げに擦った下っ腹はふっくらと膨れていた。
食事をこんなに美味いと感じたのは生まれて初めてだった。今まで口にしてきた食べ物はいったい何だったのか、よくあんな不味い物を平然と飲み食いしていた過去の己に怒りすら湧いてくる。これほど極上な飲み物があったことを知らなかった己の無知ぶりに心底腹が立ったが、今日からは毎食がザーメン食になるかと思うとやがて怒りは霧散していった。
昼食の形式は朝とは違ったものだった。
太陽が中天に達する時間帯、獅子の姿は再び地下にあった。
「お世話になります」
「おう来たな、レオ。昼飯はすでに準備してあるぞ。いや、待機していると言ったほうが正しいか」
部屋の扉の前にいた大柄な鰐男が、その縦に細長い瞳孔の眼を細めながら言った。
グレゴリオ副団長だ。
見た目は狂暴で恐ろしいが性格は豪放磊落で配下をよく可愛がり、忠義に厚い熱血漢であった。何度か手合わせをしてもらったことがあるレオだったが、その膂力は人一倍強く、未だ一度も勝てずにいた。ここは腕に自信のある伸び盛りの十代の若者をまったく寄せつけない四十五歳のグレゴリオを褒めなければいけまい。その衰えを知らない、翡翠色の鱗を纏った肉体は鎧を装着したかのように堅固で、刃すら通さないのだから、『聖騎士団の盾』と二つ名が付いたのも頷ける。
歩く鎧、兼、盾は巨体を揺らして扉を開けると、
「食事には飽きないようにバリエーションがあるだろう? お前の食事もそうであるべきだという団長の心遣いだ、感謝しろよ」
そう言って獅子を中へと通した。
そこは朝食時に使った小部屋ではなくて、その隣にある部屋だった。部屋の中は小部屋よりも倍ほど広く、ちょうど中央には簡易的に設けられた仕切りの壁があった。それ以外に何もなく、食器の影すらなければ立ち込めているはずのザーメン臭すらしなかった。
立ち尽くしている獅子を見やった副団長が黙ってその太い指を壁へと向けた。
指が示す壁には等間隔になって横一列に小さな丸い穴が三つ開いていた。
「……この穴は?」
「若造は知らんだろうがグローリーホールというやつだ。その穴の前で跪いて待っていろ、じきにお前の食事を提供してくれるブツが頭を出す」
言われた通りにレオは真ん中の穴の前で膝を折った。
穴の向こうはどうやら火が灯されていないらしく暗くて何も見えなかったが、誰かがいるのは何となく分かった。部屋に入ったときから壁の向こうに感じていた複数人の気配は食事提供者のものだったらしい。
やがて目の前の穴から突然、ぬっ、と姿を現した物にレオは目を剥いた。
「グッ、グレゴリオ副団長っ、これはっ!?」
驚くのも無理はない、それは紛うことなき男根であった。
鰐男はさも当然のように頷くと、
「グローリーホールというものはそういうものだ。本来は、滾る男の性欲を慰められたい者と慰めたい者が壁一枚隔てて互いの欲望を満たすために利用するものだが、勘違いするなよ? 此奴らは欲望のためではなくお前を助けるためにやむなく体を差し出しているのだからな」
「はっはいっ、それは承知しております! し、しかし……こう顔が見えなくては礼が言い難く」
「敢えて顔を隠しておるのだ。今回集まった者は、皆、顔を晒すのが羞恥に堪えんとか、男の顔が見えると愚息が固くならないといった者たちばかりだからこのような方式となったのだ」
壁は誰か分からなくするための目隠しの役割だったか、レオは得心した。
よく出来ている。用事が済めば姿を見られずに、もう一つある扉から出て行くのだろう。そうして入れ代わり立ち代わり、次々とこの穴から新しい男根が突き出てくる仕組みになっているのか。
レオはまじまじと目の前の男根を見やった。
「……ハァァッ」
思わず漏れてしまう甘い吐息。
まだ勃起していないそれは、重たげな頭をだらんと力なく垂れさせていた。奮い勃ったらいったいどんな威容を見せてくれるのだろうか? 他人の勃起など見たことがなく、レオは想像するとどうにも腰の奥が熱くなっていくのであった。
扉の開く音がふと妄想を途切れさせた。
「儂は覗きの趣味はないからもう行くが、後の任務に差し障るから腹八分目にしとけよ? 美味いからって鱈腹食うんじゃないぞ? ガハハハッ!」
鰐の豪傑は何とも豪快な笑い声を響かせて部屋を出て行った。
静けさが部屋に満ちた。
いや、耳をそばだてると微かに男たちの息遣いが聞こえてくる。
壁の手前には己一人しかいないが、壁の向こう側には複数の男たちが確かにいるのだ。じっと息を潜めている。一人の男根だけが壁穴からにょっきりと生えている。吸われるのをただじっと待っている。
そのあまりにも特異な状況にどうにも興奮が昂って仕方がなかった。
レオは壁から生えたそれに顔を近付けた。
鼻を鳴らすと、成熟した雄の性臭がふわっと臭った。
「あぁっ、いい臭いだ……」
午前中、汗だくになったのだろう、暑気に蒸れた汗臭さと獣臭さが鼻腔を衝く。よく働いた証拠だ。こんなスケベな臭いを嗅いでしまったらもう……。
レオは堪らず、舌先でまだ力なく垂れ下がっている亀頭を撫ぜた。
「おふぅっ!?」
途端、壁の向こう側から、くぐもった声が聞こえた。
するとどうだ、たった一舐めしただけだというのに期待に火が付いたか、男根がみるみる勃起していくではないか。亀頭に力が漲り、グググ、と頭をもたげていくや、陰茎にたちまち血管が浮き立ち、太い尿道海綿体の筋が膨らんでいく。赤黒さを増した亀頭は堂々と雁高の傘を広げ、やがて隆々とした怒張をレオの網膜へと焼き付けさせたのである。
一段と強い雄の性臭が臭ってくる。
灼熱と化した肉棒に汗が蒸散しているのだ。
その蠱惑の臭いと勃起していく一部始終を見せ付けられて、獅子の口から熱い吐息が漏れた。
「も、もう堪らんっ!」
レオは男根にむしゃぶりついた。
陰茎に舌を纏わせて舐め上げ、亀頭を舐め回した。汗の塩気がした。皮脂汚れと凝縮した男のエキスの味がした。あまりにも濃い雄の味だ。新陳代謝のよい若い雄獣人のペニスの味は格別に濃厚で、雄の野性味が溶けた唾液を獅子は喉を鳴らして飲み込んだ。
壁が軋んだ。
「ハァハァハァッ!! おふっおおぅ! おおおっおほっ!!」
荒い息が壁の向こうから聞こえてくる。
男が壁にぐりぐり股間を押し付けていた。レオは鉄のようにガチガチに硬化した肉棒を大口を開けて咥え込んだ。
「おっふううぅぅぅーーーっ!?」
一際大きな息遣いが壁向こうの男から漏れた。
それこそ鉄棒を咥えたような硬さだった。いったいどれほど怒張の持ち主は興奮しているというのか。このペニスは交わりたいのだ、快感をもっと貪りたいのだ。可愛いではないか、愛しいではないか。口淫の経験はもちろん、女遊びもしたことがない糞真面目な童貞聖騎士チンポを獅子は夢中になってしゃぶっていく。
根元まで咥え込み、口腔全体でもってペニスを愛撫する。
「グオオッ!? ホッ! オホオォォォーーッ!!」
猫科のざらついた舌で敏感な亀頭を容赦なく舐る。
「オッフゥゥゥゥーーーッ!? ガハァッ! アアアァァーーッ!!」
初めて経験するフェラチオに男が激しく身悶えている。塩辛い先走り汁をビュウビュウ噴き出しながら善がっている。レオの脳裏に男の悶える姿が思い浮かぶ。穴からはみ出した茶色で硬めの陰毛を見るに、男は熊獣人か、猪獣人か、いや牛獣人かもしれない。だが、やがてその疑問はペニスを愛撫しているうちにどうでもよくなっていった。
男根がすべてだった。
男根を、ひいては精液を与えてくれさえすれば種族などどうでもよかった。
「んんむっ! んぶっんんっ! むぐっむんっんんんーっ!」
精液を恵んでもらうために陰茎に舌を絡めて丹念に愛撫する。愛撫すれば愛撫するほどペニスから噴き出る我慢汁に、レオはうっとりと目尻を下げた。その味も大好きだった。塩気の強い粘った体液は言うなれば食前酒だ、精液という食事の前の。その塩味が強ければ強いほど、メインディッシュがさぞ濃厚であることを予感させてくれるのである。
獅子のマズルからだらだらと涎が垂れ落ちていった。
激しくしゃぶる音と男の喘ぎ声が競うように部屋に響いていく。
その淫らな音色に誘われるようにして、左右の穴からも男根がにょっきりと生えてきた。すでに硬くいきり勃っている先端が濡れているところを見るとよっぽど我慢していたらしい。
レオは味わっていた肉棒からいったん口を離すと、三本を視界に収めた。
「……凄い、これをすべて私が堪能していいのか」
三本の赤黒い怒張が天井を衝く姿は圧巻の一言だった。
どれも急角度で反り返っている。向かって左側のペニスはとりわけ根本が太く、えげつないほどの青筋が大蛇のように太い幹に絡み付いていた。対して右側のペニスは太さはそれほどでもないが、25cm近い並外れた巨根だった。そして二つを足して割ったようなのが真ん中のペニスだった。
容姿が人それぞれ違うように男性器も違うのだと分かった。
それにしても、さながら品評会のようだ。
形状、大きさ、色、臭い、味、それらを総合してどれが一番秀でた男性器か優劣を付けるのはさぞ楽しそうだ。だが獅子はえこ贔屓などしない、どんな男性器も等しく極上の雄ミルクを与えてくれるからである。
レオは左右の獣根を両手に握って扱きだすと、再び真ん中のそれを口に含んだ。
「んぶっ、んっんんんっんぐぅっ!!」
最高の一時だった。
同時に三本のペニスを堪能した。何という熱さだろうか、口腔の粘膜が灼熱の肉棒に爛れ、手が火傷を負うほどに炙されていく。
新しく加わった二本の獣根の主からも呻き声が漏れていた。
何せ長年、剣を握ってきた掌である。すっかり硬くなった肉球に問答無用で陰茎を、亀頭を擦られる快感はどれほどか。激しく上下する手筒に、翻弄される張り出した雁首。鰓をざらざらの肉球がこそぐ、ずりずり、ずりずり、と。
「グオオッ!? おっぐっ! フッフッフゥゥゥーーッ!!」
「ガアァッァアアッ!? ガッガッ……ガハァァァーッ!!」
身悶えるような嬌声がほぼ同時に左右から湧いた。
たちまち透明な粘液がドクドクと湯水のごとく込み上げてくる。それは獅子の手を濡らして、扱きはさらに淫猥にグチュグチュと音を奏でていくのだ。
おうふっおうふっ、と三体の雄の低い喘ぎ声だけが部屋に染みていく。
その中でもとりわけ切羽詰まった声を発しているのが真ん中の男だった。丸呑みされてのバキュームフェラを施されたら堪ったものではない。ズゾゾゾゾ、と窄まった口に容赦なく吸引されて悲鳴のような声が上がった。
レオは顔を真っ赤にして励んだ。
陰茎に舌を絡ませたまま顔を前後させて男に快楽を与えていく。すると男もまた腰を前後に動かし始めた。互いに動き、さらに激しくなる口淫性交。男はおそらく女の性器を頭に思い浮かべながら腰を振っているのだろうか、童貞野郎の余裕のない一突きが獅子の口に深々と突き刺さる。
レオは目を白黒させながら口の中の男根が一回り太く膨れるのを感じ取った。
それが絶頂の兆候だと分かった瞬間、
「だっ駄目だっ! 某もうっもうっ射精ぐっ、射精ぐっ射精ぐうぅぅぅーーーっ!!」
壁の向こうから情けない声が聞こえるや否や、
ドクドクドクッビュブブウブルルルルルルルーーーーーッッッ!!! ビュビビッビュブブブブッ!!! ビュブッブッビュブゥゥゥゥゥーーーーッビューーービューーービュビュビューーーーーーッッッ!!!! ドッッッビュブブブブッビュッビュッビュビビビゥゥゥゥッ!!!! ビュッビュッ! ビュウビュウゥゥゥゥッ!! ビュブブブルルルルルルルッッッ!!!
逞しく脈打つ口中のペニス。
奥深くに咥え込んだ獣根の先から凄まじい勢いでザーメンが迸っている。その量、尋常ではなかった。
「んぐんぐんぐっ、んっぶぅっぶふっ!? んぐんぐっ……」
あまりの勢いに噴き出しそうになりながらレオは必死に飲み込んだ。
直飲みだ。
生搾りだ。
空気に触れていない新鮮なザーメンが胃袋にそのまま直送されている。胃に直接流し込まれる搾り立ての特濃ミルクの何と美味なことよ。
濃い、濃すぎる。
こんなに栄養満点ではすぐに太ってしまうではないか。レオは恍惚にとろんと瞼を半ばまで下ろして極上の体液を味わう。膝を床に付いているその彼の股間からも白いものがズボンを通してじっとり浮き上がっていた。また感極まっただけで達してしまったのだ。
体を震わせてお掃除フェラに没頭するレオ。
尿道に残っていた精液を啜り、ペニスにこびり付いた汚れを丁寧に清めていく。
その際にも扱くのを止めなかった左手の中のペニスがさらに硬くなった。男の呻く声が聞こえ、すかさず左へ身を寄せる獅子だったが、すんでのところで間に合わなかった。
ドッビュゥゥーーーーーーーーーッッッ!!!! ビュビュビュビュビュビュウウウウウウーーーッッッ!!!! ビュブッビュゥゥゥゥビュブルルルルルルルルルッ!!! ビュビビビビッビュッビュッ!! ビュッビュビュビュウルルルルルルルルーーーーーッッビュビビビビッビュッビュッ!!! ビュルルッ、ルルルルッ、ビュブッ! ビュビュビュッビュッビューーーーーゥゥゥゥッ!!!
硬く充血した亀頭から一直線に噴き出す白濁の太線。
その射出力は凄まじく天井にまで達した。たちまち生臭い雨がボタボタと頭に降ってくる。レオは慌てて射出口の向きを顔へと向けると、濁流が勢いよく顔面を打つ。
初めて体験する顔射だった。
「ああっ……あああぅぅっ! 熱いっ、アガァァァッ熱いぃぃっ!」
粘った熱水にレオは陶然と表情を蕩かせた。
何と重い濁流だろうか。密度がすこぶる高いのだ、それだけ精子が潤沢に含まれているということだ。打たれ続けていると体の中に眠る雌が目覚めていくようだった。計り知れない熱量が雄のプライドを溶かし、雌のプライドを芽生えさせていくのである。この強い雄が放つ精子を体内に迎え入れて子を孕みたいと……。
淫らなシャワーを顔面に浴びながら、レオは再び射精していた。
そのまま目の前の怒張を口に咥えると、暴れる剛直からドクドクと噴出するザーメンが口一杯を満たした。喉を鳴らすと胃に流れていく子種に多幸感が胸に込み上げる。こんな幸せなことがあっていいのだろうか? 好物のザーメンを好きなだけ、それこそ飲み放題で味わえるだなんて夢のようだった。
視界の隅で白い花火が上がっていた。
ビュブブブブブッブブブブブブッビュビュッビュブブブブッッッ!!!!! ビュブルルルルブルルルッ!! ドックドクドクドックドックドックドクドクドクッッッ!!! ビュビビッビィッビュビュビュッ!!! ビュッビュッビュッ! ビューーーーゥッビュビビューッッ!! ビュブブブブブブッブルルルルッ!! ドッビュゥウゥルルルルルッビュブブブッ!!!
一番右の男が絶頂に精を噴き上げていた。
25cmを誇る巨根をドス黒く怒らせて、やや黄ばんで濃厚そうな粘液を放出している。相当の期間、禁欲生活を強いてきたのだろう。射出量も問題なく、喰い出がありそうだ。右手の床にたちまち白濁溜まりができていくのを目の端に捉えつつ、レオはまだ射精が続いている左端の男のペニスを咥えながらそう思った。床のそれはもちろん後で頂く、鮮度は気持ち落ちるだろうが。
獅子は恍惚の世界に浸っていた。
意識はすっかり鈍り、夢見心地であった。
うっとりと締まりのなくなった彼の表情にかつての精悍な聖騎士の面影はない。たとえあったとしても立派な鬣をべっとりとザーメン塗れに台無しにさせていたのだから、百獣の王の威厳など見る影もないのだった。
三つの穴には次々に男根が差し込まれていった。
レオはひたすらしゃぶり続けた。
たまに小便臭いものや恥垢塗れの汚らしいペニスが出てきたが構わず口にした。
ズル剥けの完全露茎から、勃起したら剥ける仮性包茎、勃起しても皮が被ったままの真性包茎まで、様々な男たちの持ち物をフェラし続けた。前の男が放ったザーメンでぐじゅぐじゅになっている口で新しい男のペニスを愛撫してやった。ザーメンの混ざった唾液をたっぷりとペニスに塗して啜ってやると、たちまち男たちは呻いた。口自体が男の精を搾り取る性器となっていた。溢れかえる精液をすかさず喉の奥に通しながら獅子はそうして、実に百本もの猛る男性器を慰めていったのである。
ようやく腹が満ちたとき、周りの光景たるや息を呑むものがあった。
三つの穴の縁からは、塗り重ねられて層となったぬらぬらと照り輝く白濁の線が床にまで垂れ、その床も、天井も男たちの放った激しい劣情の跡がべっとりと淫らな艶を湛えていたのである。
壁の向こうにもう人の気配はない。
部屋に充満する凄まじいザーメン臭のなかで、獅子は呆けたようにぺたんと座り込んでいた。彼の全身は毛色が見えないほどにぐっしょりと白濁一色に塗れ、マズルから、鬣から、瞼の先からも何本もの精液の糸が垂れ下がっていた。
やがて獅子はふらふらと立ち上がると、淫臭の満ちる部屋から出て行った。
[newpage]
太陽が西に傾き皆が宿舎に戻る頃、夕食の時間となった。
しかしレオのみ皆が食事を済ませたあと一時間ほど遅れて取ることとなった。こればかりは仕方がない、任務で疲れ切った上に空腹の状態では気分が乗らないこともあろう。
夕食もまた朝と昼とは違う形式だった。
指示されて、地下に足を向けるとまた扉の前でグレゴリオ副団長が待っていた。しかし今度は別の部屋を使うようで、昼間に使用した部屋の隣部屋が夕食の場らしい。
「おうレオ、今日は枢機卿護衛の任務ご苦労だったな」
鰐男は波打った凶悪な牙列を覗かせて屈託なく笑むや、
「夕飯はこれからお前だけちと遅くなってしまうが大丈夫だよな? 腹が膨れれば彼奴らもさらに協力的になるだろうから承知しておいてくれ」
「問題ありません、提供していただけるだけでも有難いことです」
「うむっ! では早速」
グレゴリオ副団長は大仰に頷くと扉を開いた。
どうやら朝昼晩でそれぞれ違う部屋を使うようだ。朝は一番奥まったところにある小部屋で、昼はその隣の三つの小さな穴が開いた壁がある部屋、そして夜がそのまた隣のこの部屋らしい。
部屋に入ると、以前の二部屋と違って絨毯敷きだった。
広さは昼間の部屋と同じぐらいで、燭台の弱々しい薄明りにいくつかの調度まで揃っているのが目に入った。昔、この地下にある部屋は牢として使われていたようで、この部屋は看守部屋だったのかもしれない。木の卓に椅子、壁際には箪笥のようなもの、反対の壁側には……そちらの方へ視線を転じたレオは、目を疑った。
ベッドと思しき家具がある薄闇の中に人影が揺らいでいたのだ。
来訪者の視線を感じた影が背後の壁に長く伸びていく。
寝台からゆっくりと立ち上がった男が、
「……や、やあレオ……」
何とも気まずそうに、そして気恥ずかしそうに獅子に声をかけた。
無二の親友、虎獣人のライガであった。
「お前、こんなところで何をやって……」
言葉を失うのも道理だ、ライガは下穿き一枚の半裸姿だったのだから。
蝋燭の淡いオレンジ色の灯がライガの引き締まった肉体美を薄闇に照らし出していた。美術館に飾られている英雄の裸体彫刻像のごとく全身を分厚い筋肉が覆い、その一つ一つの筋肉の隆起に落ちる影がことさら淫靡に男の性的魅力を際立たせている。完成された男の肉体であった。今まで何度も目にしてきたライガの体が、半淫魔となった今、途轍もなく官能的なものとして一瞬でレオを魅了した。
虎の青年は、つと視線をレオから斜め下に逸らせて、
「お、お前のためにその……、一肌脱ごうと思って、な……」
顔が真っ赤に染まっている。
よっぽど恥ずかしいらしい。見れば背後のベッドの上には彼が脱いだと思われる衣服が綺麗に畳まれて置かれていた。
いったいどういうことだか理解できなかった。
疑問符を浮かべる獅子に、隣にいたグレゴリオが口を開く。
「レオ、お前への食事提供者が彼だ。夕飯は昼飯と違い、顔を晒しても構わん奴らが相手をしてくれる。まぁそれだけ肝が据わっているということだ、それか任務の一つだと割り切っているか。どちらにせよ、顔が互いに見える状態でするのも興が乗って飯も美味くなるというものだろう」
鰐男は、うんうんと一人頷くと、
「此奴の後にも食事提供者は控えているからたっぷり食わせてもらえ」
そう言い置いて、残務処理があるとかで部屋から出て行った。
残された二人の間に沈黙が落ちる。
「……」
「……」
レオの表情に戸惑いが揺れていた。夕食の形式がまさかの対面方式だとは露とも思わなかったのだ。しかもよりによって相手がライガとは。嫌では当然ない、むしろ彼の精液を飲みたいと思っていたレオにとって願ってもないことだったが、あまりの急激な展開に覚悟が決まらないでいた。
その点、すでに半裸で待っていたライガは腹を括っていた。
先に虎の若者が沈黙を破った。
「レオ、事情は聞いている。大変な目に遭ってたんだな……」
羞恥に顔を赤く染まらせながらも、まっすぐに獅子を見つめるその眼差しは真剣だ。
「ライガ……」
その真摯な眼差しが力なく伏された。
「……気付いてやれなくてすまん。お前のこと、誰よりも俺が一番分かっているはずだったのに……友人失格だな」
再び獅子へと向けられた顔には悲しい笑みが浮かんでいた。
レオは首を横に振った。
「謝るのは俺のほうだ。何でも打ち明けてきた友のお前に、今回ばかりは恐ろしくて打ち明けることができなかった……。もしかしたら嫌われるかもしれない、そう思ってしまったのはお前のことを心の底から信用していないということだもんな。そんなはずはないのに……」
詫びる獅子に友は、
「よせやい、お前らしくない。ほら、腹が減ってるんだろう? 遠慮するなレオ」
腰に両手を当てて、ぐいっと腰を前に突き出してみせるライガにレオは申し訳なさそうに頭を掻く。
「本当にいいのかライガ?」
「ああ、お前のためなら喜んで……」
ニシシ、と白い牙を覗かせて笑顔を見せる彼にレオもまた釣られて牙を覗かせた。
ライガの精液をついに飲める……。たちまち心音がバクバクと高鳴っていく。少年時代から一緒に騎士を目指して切磋琢磨してきた彼。共に笑い共に泣き、時には殴り合いの喧嘩をしたこともあった。気付けばいつも隣にいて、いつしかそれが当たり前になっていた。お互いに聖騎士となれた今も変わらずに隣にいてくれる彼に抱く感情は、友情であったはずだ。そこに幾ばくかの恋情というものが混じっていたのだろうか?
この胸のときめきは淫魔の呪いにかかっているせい、きっとそうだ。
レオは胸を締め付ける切ない感情を誤魔化そうと無理して声を張った。
「別に上は脱がなくともよかったのではないか!?」
「ん? そういえばそうだな。いや、地下は蒸すからちょうどいい。そんなことよりもほら、恥ずかしいから、ちゃっちゃと済ませてくれ!」
「う、うむ……」
急かされてレオはライガの足元に膝を折った。
精液を頂くついでに彼の肉体を味わいたかったが、さすがにそれは行き過ぎた行為だ。いくら淫魔の血が疼いて男の体を求めたくなっても自重しなければ。彼の役目はただ精液を提供するだけなのだから。それにそもそもライガは女好きだろうし、変に色気を見せて嫌われたくなかった。
レオはライガのやや薄汚れた下穿きを脱がした。
本能がそれを鼻に押し当てる。饐えた汗と小便臭、それに煮詰まった若い獣の雄の臭いがした。もしや面倒臭がって何日か連続で穿いているのか。
「おっおい! そんな物嗅ぐなよっ!」
慌てて獅子の手から下穿きをぶんどるライガ。
顔を上げると耳まで真っ赤にしている虎の青年にレオは含み笑った。
「私好みの男らしい良い臭いだったぞライガ? 随分と臭いがきつかったが、夏場は特に汗を掻いて臭いやすくなるからな、毎日穿きかえることをお勧めしておくぞ」
「お、おう……」
「フフ……、さてこちらの臭いはどうかな?」
半分ほど皮の被ったそれに顔を近付けると、もわっと湿った雄の臭いがした。
少年時代に水浴びなどで幾度となく目にしてきたが、随分と大きく成長したものだ。丸太のようなぶっとい太腿の間で、ふてぶてしいサイズの肉茎が重力に従ってだらんと垂れていた。その下ではこちらも重たげなふぐりが実に美味そうに実っている。鼻をひくつかせると滲み出る精臭に軽い眩暈がした。
もう辛抱ならなかった。
レオはやにわに口を開けるやライガの一物を丸呑みに口中に含んだ。
「おっおわぁ!? レッレオッ、そんないきなりっ!」
狼狽える彼を無視して、ペニスを離してなるものかと根本までしっかり咥え込む。
獅子の喉がグルルル……と満足げに鳴った。
男の急所を、男として一番大切な器官を口に含んでいる事実に心が満ち足りていく。この生殖器官はお前の物であると同時に私の物でもあるのだ、と無言で訴える。だから私の好きなようにさせてもらう……レオはゆっくりと口内全体の粘膜でもって獣根を揉み解す。
堪るまい。
拙い自慰しか覚えのない世間知らずなペニスがどうして口淫に抗えようか。
「あっ、ああっ……はあああっ!」
ライガの口から熱い息が漏れ始めた。
口腔に収まっていた柔らかな肉塊がたちまちムクムクと急成長していく。海綿体に芯が通り、膨張する亀頭によって半ばまで被っていた包皮が後退し、やがてビキビキに血管を浮き立たせた怒張に獅子の目尻が幸せそうに下がった。
灼熱が口の粘膜を焼いていた。
ついに知ってしまったのだ、ライガの熱を。
昼に味わった百本のそれよりもこの一本は格別にレオの肉情を刺激した。感慨深かった。性知識が存在することさえ知らない少年時代に見たライガの、第二次性徴を迎えた思春期真っ盛りのときに見たライガの、汚れをまだ知らなかった生殖器がこうして成熟して生殖本能を剥き出しにしていることにどうしようもなく興奮した。
嗚呼、ライガ……。
レオは音を立てて灼熱を啜った。
唾液に溶けるのは舌の痺れるような雄の濃厚エキスだ。これがライガの味、ライガの恥ずかしい味……。レオは恍惚とそれを喉に落とした。
共に快感を味わおうライガ……。
雄の味と咽るほどの若い性臭に酔いながら、レオはズボンの留め金を外して下穿きを露出させると、脇からすでに痛いほど勃起していた愚息を引っ張り出して扱き始めた。包茎の蕾の中にすぐさま透明な粘液が浮き、グチュグチュと激しい扱きに白く泡立っていく。
ライガッ! ライガッ! ライガッ!
竿を扱くたびに甘美な快感が腰を痺れさす。
右手を前後に動かしながらフェラチオに没頭した。上目遣いに顔色を窺えば、男臭い顔が今にも泣きだしそうに歪んでいた。
「ガアッ! ウガッ! ウッウウウッ!」
強烈な快感に襲われていることは確かで、逃げ腰になる腰の後ろに片手を巻き付かせてレオは容赦なく顔を前後させていく。
「ああっレオッ! はあぁっそんなに激しくされたら俺っ!」
「……ふぅ、射精ってしまいそうか? そこまで感じてもらえるとはよかった。過去にこういうことをされた経験はあるのか?」
「ハァハァハァ……、ありっこないだろ、お前が初めてだ」
「女との性交渉も当然ないのだな?」
「当たり前だ。聖騎士たる者、邪な欲求は抱くべからず、常に清くあるべし。神への献身を誓った我ら聖騎士は、未婚のうちはみだりに肉体関係をもってはならないという教えはお前も知ってるだろう? 騎士の美徳だからな。」
「フフ、そうであったな……」
やはり女知らずであったか、レオは含み笑った。ライガの初めてを貰った喜悦がその昏い黄金色の瞳の中に揺れていた。
なら他人の体内に精を放つことも当然初めてなわけだ。
さあ、私の口の中にその熱い精を放て!
レオは再びライガの怒張を咥えると激しく愛撫した。鈴口に舌先を捻じ込み、ざらついた猫舌で雁首をぞりぞり擦り、陰茎に舌を巻き付かせて舌技を駆使するや、止め処なく湧き出る興奮汁に、己の竿を扱く手もさらに熱く熱を帯びていくのだった。
頭上から快楽の苦鳴が落ちてくる。
「ウグゥゥゥッ! すっ凄ぇっ、何なんだお前の口の中っ! グフゥッ、グオオッ!」
見上げると涙に潤んだ瞳と視線が絡む。
苦悶の表情は絶頂が近いことを告げていた。
我慢するな、本能に従ってブッ放せ、と目で訴えるレオ。
「グウゥゥッ!! レオッ! 俺はっ俺はっ! 俺はぁっ!!」
突如、ライガの手がレオの側頭部を押さえた。
その直後だった。彼は両手でがっしりと頭を固定するや、自ら腰を激しく前後に動かし始めたではないか。
「ウップッ!? ンブブブブッ、ンンングーッ!? ゴホッゴフッ!」
いきなり喉奥まで突っ込まれて獅子は噎せ返った。
だがライガは容赦しなかった。再び喉奥まで肉棒を突っ込むや、逃すまいと頭を押さえ付けて強引に口を犯した。彼の血走った目が異様な光を帯びていた。
「レオッ! おふっレオォッ! 凄いっ凄いぞっレオッ!!」
「ぐぶっ!? ンガッンンフッグゥッ……んむぐぐぅっ!」
思いやりの欠片もない猛烈な腰遣いに、しかし獅子の顔に悲愴の色はない。
何と男らしいのだろう。これだ、これこそが美味い精液をもたらせてくれる生殖能力に優れた雄の腰使い。猛々しい雄の息吹が顔面に吹き付けてくる。ああ、ああ……己の口が肉壺とされている、精液を搾り取る性処理道具とされている。そう、その通りだライガ! 私は精液を搾り取る道具なのだとようやく理解してくれたか友よ!
獅子の昏い瞳にさらに冥い淫火が宿っていた。
被虐の快楽が全身を駆け巡り、獅子は呆気なく射精した。
「ングッ、グッグフゥゥゥーーッ!!」
口を犯されたまま、強かに迸った劣情が友の下肢を、絨毯をべっとりと汚していく。
絶頂の快楽に妖しく濡れる獅子の瞳はまっすぐに友の瞳を捉えていた。供に絶頂の快楽を味わおう、我が友よ。ドクドクと精を噴きながら友を悦楽の沼へと誘う獅子。
淫火の宿った瞳を見下ろしながらライガが懸命に腰を振る。
「グオオッ! オオオッ! いっ射精ってしまうっ、レオの口の中に俺はっ!」
交わる視線が射精欲を刺激する。
勇ましい虎柄がすっかり汗に濡れていた。
獰猛な息遣いで取り憑かれたように友を犯す様は豹変したとしか思えなかった。愚直に鍛錬を積んできた逞しい肉体から無数の汗の粒をしぶかせて、聖騎士の身に禁じられた性的快楽を貪るライガ。
精液を搾り取らんとする友の口をひたすら犯す。
「レオッ! だっ射精すぞっ! 俺の子種を飲んでくれっレオッ! おおっそんな強く吸われたらもうっ、射精くっ射精くぅっ! ガハッ、ガッハアアアアアアアーーーーーーーッッッ!!」
獅子の頭を思いっきり腰に引き寄せた次の瞬間、
ブビュウウウウウウウルルルルルルルルゥゥゥーーーーーーーーッッッ!!!! ビュブブッビュブブブブブウウウウウウッッッーーーーーーーーッッ!!! ドプドプドプドップドップドップドップドップドビュウウウゥゥゥゥッッッッ!!! ビュービューーービュビュビューーーーーッッッ!! ビュビュビュッ! ドックドックドックッ! ビュウウウルルルルルルーーーーーーーーッッッ、ブビュウウウウルルルルルルーーーーーーーゥゥゥッッッ、ビューービュビュビュウウウウウーーーーーーーーゥゥゥッッッ!!!!! ビュビッ、ビュプププッ、ドビュルッ、ドビュルププププッ! ビュブウビュブブブブルルルルルッッッーーーーーーゥゥゥッ!!!!!
喉奥に深々と突き刺さったライガの獣根からザーメンが凄まじい勢いで射出した。
何たる威力か。
喉の肉を抉らんかと思うほどの暴力的な射精にレオは堪らず悶絶した。再び彼のペニスが精を噴く。
「んぐっ、んぐんぐんぐっ、んぐんぐんぐっ!!」
凄まじい快感に襲われるなか、一滴も零してなるものかとレオは必死に嚥下した。大量のザーメンが食道を熱しながら胃へ滝のようにドバドバと流れ落ちていく。特濃だった。液体ではなく最早、粘体の塊だ。体力と精力が有り余っている快活筋肉男子のザーメンとはこれほど濃いものなのか。胃袋にボトボトと着弾するそれに鈍痛さえ覚えるのだから相当の濃度だ。
ライガのきつく食い縛った牙の間から涎が泡となって噴いていた。
「グウウゥッ! グルルルルゥゥゥッ!!」
どれほどの快感が襲っているか想像に余りある。
初めての口内射精に全身を硬直させてザーメンを友の体内へと送り込むライガ。獅子の黒鼻に陰毛の繁みをグリグリと擦り付けて、少しでも陰茎から快楽を得ようとしながら子種を流し込むライガ。陰嚢を引き攣らせ、蟻の門渡りを逞しく脈動させ、尿道口を最大口径まで開かせて、ありったけの劣情をライガは吐き出しまくる。
レオはすべてそれを胃に収めた。
最高の食ザーだ。
大量射精に胃の中で精液がたぷたぷと揺れていた。いったいどれほど吐精したというのだろうか。やがてライガが竿を扱いて最後の一滴まで口の中に搾り出すと、ようやくペニスは引き抜かれた。
落ち着きを取り戻したためか、ライガの顔からは激情が失せていた。
互いの呼吸が整った頃、
「……す、すまんレオ、無理やりやってしまって……」
彼はしゅんと尻尾を垂れて申し訳なさそうに謝った。
「いや構わん。少々驚きはしたが刺激的で興奮したぞ。それに今までの半生を振り返ってもこれほど美味い食事は初めてだ、お前には感謝している」
レオの言辞にライガはほっと表情を崩した。
「そ、そうか、良かった! なぜかお前の目を見ていたら急にムラムラとしてあんなことしてしまったんだ……次からは気を付けるぜ」
いつも通りの人好きのする笑みを浮かべると、彼は服を着て次の食事提供者に終わった旨を伝えるべく部屋を後にした。
ライガは気付くべくもない。
淫魔の魔性のフェロモンに惹き付けられていたことを……。
発情した淫魔の気に当てられると、緩やかに肉欲が掻き立てられていくのだが、さらに強力な魅了効果を合わせ持つのが淫魔の眼であった。極度に発情状態の淫魔に見つめられたものならたちまちその者は激しい獣欲に身を焼かれ、淫魔への欲情を強いられるのである。そう、どんな堅物な男でも虜にして欲情させる力がある、それこそが淫魔の能力であった。
それは偏に、精液を確実に集めんがため。
魅入られた男は淫魔の肉体に精を注ぐことを使命とする。
先ほどのライガもまたレオと交わる視線によって理性を奪われたのだ。押し殺していた雄の本能を無理やりに引き出されて、思考能力を麻痺させられ、ただ淫魔の体の中へ精を放つことしか考えられないようにされてしまっていたのである。
レオははたして己の能力に気付いていたかどうか。
ただ確かに断言できることが一つ。
聖騎士団員、五百人全員の男たちの精は彼の手中にあった。
[newpage]
それから数日が過ぎた。
その間もレオは聖騎士たちから朝昼晩、精液の提供を受け続けた。朝食は例の地下にある無人の小部屋で、前日の夜に集められた精液を食した。毎回、大きなボウルにたっぷりと溜め込まれていて十分腹を満たすことができた。昼食は隣のグローリーホール部屋で直接ペニスから迸る精液を食した。生搾りザーメンはさすがに新鮮で大変に美味く、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。夕食はそのまた隣のベッドが備え付けられているやや小奇麗な部屋で、対面方式で直接精液を食した。相手の姿が見えるのは余計興奮するのか、グローリーホールよりも精液の放出量が半端なく、より多くの量を食すことができた。
食事に関しては実に充実した日々が続いた。
肝心な淫魔の呪いを解呪する件について、先日ラグノフ団長から報告があった。
どうやら数週間かかるらしい。
中途半端な半淫魔の状態にかかった呪いの症例がこの国にはないということで、近隣国の魔術師に当たってくれているようだ。精液食にすでに慣れてしまっていたレオ本人としては、もう結構ですとも言い出しにくく、解呪方法が見つかったら何とはなしにお願いしてみる腹積もりでいた。
それからまた数日が過ぎ、一週間が過ぎた。
その頃にはもう獅子に精液を与える行為はごく当然のものとして皆に受け入れられていた。
彼らは仲間内であの地下の部屋のことを搾精部屋と呼んでいるらしかった。何とインモラルな響きだろうか……。聖騎士団公認の性欲処理のための部屋なんて前代未聞だろう。毎日、溜まりに溜まった性欲を、食事提供を名目にして処理してもらうため淫魔化した男のもとに足しげく通う聖騎士など、この国以外のどこにもいやしない。いつしか彼らの目的は獅子への精液の提供ではなく、性欲の発散へとすり替わっていた。その由々しき事態をいったい何人の聖騎士が自覚していることか。
さらに数日が経過した。
宿舎内には常に淫の気配が満ちるようになっていた。
周囲の男を少しずつ惹き付けるフェロモンを長い時間浴び続けて、誰もが半淫魔レオの存在を片時も忘れられなくなっていた。絶頂の悦びを知ってしまった肉体は悶々と性欲を持て余し、捌け口を常に求める始末で、禁欲生活が長かったためにその反動は凄まじかった。レオの姿が視界に入っただけで皆が目の色を変え、股を硬くした。搾精部屋の順番待ちは抽選になるほど盛況で、最後の一人の精を搾り終えるのが深夜遅くにまでなることが多々あった。
そんなある晩の夜更け過ぎのこと。
レオはいつも通りに最後の食事提供者から頂いた精を腹に入れて部屋を出たところで、
「む? こんな遅くになぜ灯りが……」
朝食時に使う隣の小部屋の扉から光の線が漏れていた。
不審に思って扉を開けてみると、床に置かれたボウルの中へ今まさに五、六人の男たちが精液を放とうと円になって一斉にペニスを扱いているところだった。
「おうレオか、ちょうどお前の明日の朝飯を用意してるところだ」
手前にいたガタイのいい固太りの熊男が振り返って言った。
ガブだ、頬に刀傷がある。
その隣にいる双子の片割れ、ルグが振り向いて言葉を足す。
「もちろん見ていくだろう?」
双子の兄弟はニヤニヤと聖騎士には似つかわしくない好色な笑みを浮かべた。
レオに断る理由はなかった。
あまりに煽情的な光景だったのだ。筋骨逞しい男たちが下半身をモロ出しにして、いきり勃った獣根を慰めているのである。シュッシュッと陰茎を扱く擦過音と、押し殺した低い唸り声がさらに劣情を煽った。
獅子は頷くや、彼らの傍らで淫らな作業風景を固唾を飲んで見守ることにした。
「ガブ様たちはどうしてこんな夜更けに?」
「あん? すでに三時間ほど前に一発射精しておいたんだが、一発抜いただけじゃムラムラして治まりがつかなくてよ。こうしてまだ欲求不満な連中らと来たってわけだ、なぁ弟よ?」
「最近なぜか無性に性欲が滾って仕方ねぇんだ……それもレオ、お前を見るたびに愚息が疼くようになっちまった」
熱い眼差しを獅子に送りながらルグが言うと、同意だとばかりにガブが頷いた。
「ああ。しっかり俺たちの千摺りを見とけよレオ? お前に見られていると思うと興奮するぜ! なぁ皆もそうだろ?」
残りの犬獣人、豹獣人、猪獣人二人がレオを見ながら口々にそうだと首肯する。
体に纏わり付くような熱視線に獅子はゾクゾクした。己がズリネタにされている。彼らの頭の中で己は裸に剥かれて犯されているのだ。泣き喚いても許してもらえず、ひたすら種付けされているのだ。きっとそうに違いない、ほら、その証拠に彼らの怒張がさらにガチガチに充血していくではないか。
レオはうっとりと男たちの千摺りショーを見やった。
部屋はすっかり汗臭い獣臭と熟れた雄の臭い、それと先人たちがボウルに放っていた精液臭に満ちていた。そこにまた新たにガブたちの精液臭が混ざろうとしていた。
「おっふぅ……そろそろだっ、俺が射精くところをしっかり目に焼き付けろよレオッ!」
余裕のない表情でガブが言う。
「俺もそろそろだ兄上っ! くっ、レオの視線がチンポに絡み付いて離しやがらねぇっ!」
ルグが激しい自慰に先走りを辺りに飛び散らせながら言う。
「某ももう限界だっ! レオ殿に見られては辛抱などできぬっ!」
犬獣人が言い、
「きっ貴殿もかっ、なら共に果てようではないかっレオ殿のためにっ!」
猪獣人が続き、
「ぬふぅぅっ!? 卿らが達するなら私も達しようぞっ!」
最後にもう一人の猪獣人が迫る絶頂を告げた。
円陣を組んだ六人の猛者たちが射精に向かって一心不乱にペニスを扱く、狂ったように扱きまくる。横殴りの我慢汁の雨が向かい合っている男の体にまで飛んで、透明な糸を引かせてボタボタと滴り落ちる。熱い息、飛び散る汗、強張る筋肉、悲鳴を上げる男の生殖器官。肉体がきたる絶頂に淫らに色付いていく。
男たちの体がほぼ同時に硬直したときだった、
「グッガアアアァァァーーーーッッッ!! ガアァアッアーーーガハァァッ!!」
六人の絶頂の大咆哮が部屋に轟いた。
引き締まった彼らの筋肉質な尻がビクビクと小刻みに痙攣していた。
腰を大きく前に突き出して一斉に男たちが射精する。ボウルへと狙いを定めたペニスの先からビュッビュッと聞こえるほどの射出音を響かせてザーメンが迸っていく。凄まじい勢いにそれはボウルの中で跳ね返り、砕け、いくつもの弾となって、すでに溜まっていた精液の水面に着弾して小さな波紋を無数に広げていった。
レオは陶然と見やっていた。
こうやってボウルの中に出されていたのか。
想像していたよりもその光景は遥かに刺激的で腰の奥が熱く疼くのを感じた。このボウルの中身が明日の朝食となるのである。鮮烈に網膜に焼き付いたこの淫猥シーンを思い出しながら飲むザーメンはきっといつもより美味しく頂けるだろう、明朝が実に楽しみだった。
一息ついた男たちが部屋から一人、また一人と出て行き、熊兄弟と獅子の三人のみになった頃。
ガブがニタニタといやらしい笑みをレオの股間へと落として言った。
「随分ときつそうじゃねぇか……あぁん、レオ?」
「こっ、これはその……」
獅子のそこは見事に盛り上がっていた。
「俺たちのズリを見て興奮しちまったか? 物欲しそうな面しやがって、夕飯食ったんだろうが? なのにまだそんなにザーメン食いてぇのか、食い意地の張った野郎だぜ」
「そ、そんな私は……」
レオは言い淀んだ。ガブの下卑た物言いはまさに図星だったのだから言い返せるはずがない。
二人のやりとりを聞いていた弟のルグが、
「レオ、このボウルの中のやつは駄目だぜ? 腹減ったからって夜中に起き出して摘まみ食いすんじゃねぇぞ? だが味見だけなら許してやる」
そう言って彼はボウルに溜まっていた精液を指先に絡め取った。
顔面にずいと突き付けられた中指から、搾り立ての新鮮なザーメン臭が鼻を衝く。
「ううっ……」
「おらっ舐めろ、ザーメン狂い」
瞳に嗜虐的な光を宿すルグの口角がいやらしく吊り上がった。
レオは白濁がべっとり付着した太い指を口に含んだ。
様々な獣人男たちの精液が混ぜ合わさったそれはあまりにも濃すぎて煮凝り状になっていた。噛み応えすらあるほどでよく咀嚼すると、濃密なスープと化してよく舌に絡んだ。
獅子の喉仏が上下するのを見て嗜虐的な光が細くなる。
「美味いだろう? お前のこの淫らな姿を見ながらする千摺りは最高に気持ち良かったぜ?」
ルグは好色な視線を隠そうともしない。
彼の隣で兄のガブもまたレオの体をじっくりと舐め回すように見ていた。
「ああぁ堪んねぇぜ……お前の体。雄のくせして美味そうな臭いをプンプンさせてやがる。さては俺を誘ってやがんな? そんなに媚売って俺からまだまだ精を搾り取る気だな?」
ガブの獣根が鎌首をもたげ始めていた。
いや、彼だけではなかった。
「俺もです兄上……、こうなれば此奴の誘いに乗ってやろうではありませんか」
ルグの獣根もまた充血し始めていたのである。
ガブとルグの双子の兄弟は獅子の魔性の瞳にすっかり魅入られていた。獅子を映す瞳を熱く潤ませて、上衣を脱いで素っ裸になるや、二人揃ってレオに抱き付いた。
「そんなにザーメン食いたきゃ直接お前の体に食わせてやる」
「お前を見てると抜いても抜いてもすぐザーメン溜まりやがる。責任取ってもらうぜ?」
兄弟は口々に言うや、想い人の着衣を解いていく。
「ああっ……ガブ様、ルグ様っ!」
獅子の喉から熱い吐息が放たれた。
予感がする、精力の満ち満ちた逞しい男たちに容赦なく犯される予感が。
レオは脱がされるままに身を委ねた。豪快な千摺りショーを見せ付けられて火照ってしまった肉体が、狂おしいほど雄の種を求めていた。
たちまち裸に剥かれて、乳首が吸われた。
「はぁぁぁぁっ!」
電撃に打たれたかのような激しい快感が背に走った。
右の乳首を兄のガブが、左の乳首を弟のルグがはしたない音を立たせて吸っていた。分厚い大胸筋の片隅でぷっくりと膨れた形のいい肉芽が、涎塗れの舌に翻弄される。よく舌は動いた。快感の生じるツボを舌は熟知していた。遊び慣れた練達な動きであった。もしかしたらこの熊兄弟は聖職に就いているというのに女遊びに興じていたのかもしれなかった。
巧みな舌使いが獅子の青い肉体に快楽を植え付けていく。
胸元で揺れる焦げ茶色の二つの頭を両腕に掻き抱いてレオは身悶えた。
「熱い……っ、体が燃えるように熱いぃぃっ、くああっ!」
淫魔の呪いが血液を沸騰させ、めくるめく快楽の世界を覗かせる。こちらの世界へ来いと異界に棲む夢魔が手招きしている。男どもを雄の色香でもって誑かし、精を奪えと囁いてくる。
発情する獅子の肉体から妖艶な淫気がドッと溢れ出す。
その場に膝を折った獅子は、目の前の二本の怒張にむしゃぶり付いた。
「おぐぅ!? おおっ、おおおおっ!」
「ぐおおっ!? ほっほおおっおおぅっ!」
双子が揃って喘いだ。
すっかり硬くなっていた二本の強張りをマズルいっぱいに頬張って雄のエキスを舐め取る半淫魔レオ。御馳走を吐き出してくれる肉棒をダブルフェラで奉仕する。妖しくうねる舌にたちまちペニスの先から塩辛い体液が滲んでいった。
四本のぶっとい脚が引きつけを起こしたかのように震えていた。
「ガッガハァッ! たっ堪らんっ、すぐにでも果ててしまいそうだっ!」
ガブの太短いマズルから、たらりと涎の筋が垂れ、
「なっ何だこの異様な性欲の昂りは……っ! おっほぉっ腰の奥が痛いほど疼きやがる!」
ルグのマズルからもまた涎の糸が垂れた。
彼ら兄弟の肉体に異変が起こっていた。
いや、それはすでに水面下で起きていたのだが、発情した淫魔との度重なる接触がここにきてそれを顕著にさせたのだろう。すなわち、男を惑わす淫魔の気に長期間に渡って曝され続けた肉体は、精液量の飛躍的な増加と、著しい性欲の亢進を示すようになるのだ。性欲を減退させるにはひたすら精液を出し続けるしか方法はなかった。
レオはその場に両手を付くや、その大きな肉厚の尻を見せ付けるように双子たちへ向けた。
「むぅ……」
「むぅ……」
重なる唸り声。
欲望に濁り切った熊男の視線は、小さな肉色の粘膜を捉えていた。
薄茶色の尻毛に覆われた尻の中心で、ヒクヒクとひくつく肛門がしっとりと淫らな艶を浮かべて男を誘っていた。淫靡な肉孔であった。ペニスを突っ込んだらさぞ気持ち良かろうと思わされる魔性の肉孔であった。
頬に古傷の走るガブの強面が引き攣っていた。
「ぬ、ぬぅ……新入りの分際で生意気な野郎だ、俺を夢中にさせやがって……」
性欲が攻撃性を帯びて激しく燃え盛った。
「糞生意気な野郎にはたっぷり仕置きしてやんねぇとなぁ!」
凶悪な笑みを浮かべるや、熊男は一物を握るとためらうことなく獅子の尻を犯した。
「はあぁぁうっ! はあっはうぅぅぅーーーっ!!」
レオの喉から悲鳴のような嬌声が長く尾を引く。
きつく窄まっていた括約筋を熱い鉄兜が強引にこじ開けて中に没入していく。ぬぷっぬぷぬぷっ! と直腸の粘膜が喜びの声を上げて鉄棒を奥へ奥へと迎え入れていく。
獅子の肉体が歓喜していた。
生殖器が挿入されて狂喜していた。
確約されたのだ、体内に精液が放出されることを。これから侵入者は必死に出入りを繰り返して快感を貪ろうとするだろう。ならとことん柔襞を纏い付かせて極上の快感を味わわせてやろうではないか。腰が抜けるほどの、生殖器がぐずぐずに蕩けてしまうほどの、正気を失うほどの……。
淫魔の呪いが、獅子の体を常に雄を受け入れられる体へと体質化させていた。
レオの脳裏に洞窟で犯されたあの淫魔インキュバスの姿が浮かぶ。
あの時以来だ、尻を犯されるのは。
「くっはぁぁっ、ガブ様ぁ……っ!」
尻の中に久しぶりに感じる灼熱にレオは呻いた。
これだ、この熱を求めていた。種付けせんと海綿体をパンパンに膨らませた男根の放つ途轍もない熱量に眩暈がした。何と雄々しいのか、勇ましいのか、そして厚かましいのか! 孕みたいと言ってもいないのに孕ませる気満々なのだ、この侵入者は。有無を言わせず大量のザーメンを送り込む気でいる。野蛮で、不遜で、傲慢で、だがそれこそが雄! 雄はこうでなければならないのだ。何が何でも種付けして己の子孫を残す。嗚呼……実に美味い精液を食わせてくれそうだ。
うっとりと心酔するレオの体が激しく揺さぶれる。
「おおっふぅっ! レオッ! 俺のレオッ、レオッ! グオオオッ!!」
後背位で荒々しく責め立てるガブ。
彼の固太りの体型に似た、ずんぐりと太い獣根が括約筋を引き伸ばしながら出入りを繰り返す。容赦のない抜き差しにたちまち結合部が白く泡立ち、愛液がぼたぼたと滴って床を汚していく。
その結合部を目を血走らせて見ていたルグが、
「す、凄ぇ……。ぐうっ、なら俺はこっちを頂くぜっ!」
鼻息荒く言うや、レオの前に回ると彼の口の中へ愚息を無理やり捻じ込んだ。
「んむむぅ……んんっ」
「おほおおぉぉっ! すっ吸い付いてきやがるっ! ぐおおっ!?」
口に突っ込むや否や、ルグは天井へ熱い吐息を放った。
これまで何百何千回とグローリーホールで男たちの精液を搾り取ってきたのだ。あらゆるタイプの肉棒を受け入れてきた獅子の口は、搾精に特化した淫口と化していた。
唾液をふんだんに纏った舌が触手のごとく陰茎に絡んだ。
「ほあぁっ!? あっあっあっ……」
にゅぷりにゅぷりと陰茎を舐ぶり、亀頭を喉輪がキュウと締め付けられては堪ったものではない。ルグは何とも情けない声を漏らしながら、腰砕けに体を震わせた。
前から後ろから同時に突っ込まれてレオは至福の極致にいた。
尻を犯され口を犯されている。
同時に味わう獣根は格別だった。
まるで口から尻に一本の長大な獣根に貫かれているようだった。狂い勃った肉矛にもし本当に串刺しにされたらどれほどの快感を得られるのだろうか、異界の魔物ならそれほどの巨根の持ち主がいるかもしれない。そんな危うい妄想に陶酔しながら二本の肉棒を堪能する。
ガブの息が上がっていた。
「グアアッ! ガァァアッ、ハッ、ハァ、ハアッ! フッフガッ!」
熊の硬質な被毛の先に汗の粒を光らせて、抽挿しまくる。
抽挿しまくる。
抽挿しまくる。
ただひたすら抽挿しまくる。
その姿は淫魔の魔性に囚われてしまった哀れな男そのものだった。精液を主に献上せんと、雄の生殖本能を剥き出しにしたガブの獣根がねっとりと蕩けた肉壺を激しく出入りする。精液の器を己のそれで満たすべく、ただただ、ただただひたすら雄交尾に耽るガブ。
脳裏が明滅するほどの快楽にレオは溺れていた。
がっしりと固定させられた尻と口に情け容赦なく突き立てられる怒張に意識が白く飛ぶ。
もう何も考えられなかった。
肉体だけが己が精液を搾り取る肉便器であることを自覚していた。括約筋を締めて腸壁を擦り付けてペニスに快楽を与え、舌を絡めて時には甘噛みしながらペニスに快楽を与えて、ただ肉体だけが淫魔の血に従って男たちを悦ばせ続けていた。
レオの前立腺が硬く引き締まった。
「グフウウウゥゥゥーーッ! グゥゥグウウウッ! ウウッウグウゥッ!!」
ペニスを喉深くまで咥え込んだマズルの隙間から漏れるのは絶頂の唸り。
獅子の怒張が暴れ馬のごとく頭を振りながらザーメンが放たれる。ブビュッ! ブビュルルルルルーーーッ!! ドブドブドプドックンドックンドクドクッ!! 勢いよく噴出する体液がたちまち床の上にビシャビシャッ! と何本もの白線を引いていく。
痙攣する体の後方で焦げ茶色の図体が、釣られるように硬直した。
オーガズムに収縮する肛門にガブが堪らず呻く。
「グオオッ!? しっ締まるっ、おっおっ射精るっ射精てしまうっ射精てっ! レッレオッ、しっかり俺の種を受け止めろよっ、一滴も食い零すんじゃねぇぞっ!! オラッ、俺の種を食いやがれっ精液狂いがっ!! ガッ、ガッハアァアアァァアァーーーッ!!」
ドッッッビューーーールルルルルルルルルルルルッッッビュビュビュブブブブルルルルルルルルルーーーーーーッッッッッ!!!!! ビュブルビュルビュビュビュッビュビュビュブルルルルルルルルルルルルーーーーーーーーーーーッッッビュビュビュビュビュブブブブブッッッビューーービューービュブブブブウルルルルルルッッッ!!!!! ドッビュドッビュドピュピュッッ!! ビュブブブッビュウブブウウウッッ!! ドックンドックンドックンドックンドックンドクドクドクドクドクドクッッッ!!! ビュウウウウルルルルルッッッ!! ビュッ! ビュビュビュッ!! ビュブウウウウゥゥゥゥゥーーーーーッッッッッ!!!
熊男の咆哮が部屋に轟いた刹那、夥しいほどのザーメンが堰を切って射出した。
「んんむっ!? ふぅんんんんむうぅぅぅーーっ!!」
呻く獅子の腹が見る間に膨れていく。
その量、尋常でなかった。それもそのはずだ、淫魔の影響で精液量が飛躍的に高まっていたのだから。膨大な量のザーメンは直腸を満たし、さらにその先のS字結腸をも一秒とかからず満たし終えてさらに奥深く目指して腸内を遡っていった。
兄のだらしなく蕩け切ったイキ顔に絶頂の引き金が引かれたか、
「おっ俺も射精ちまうっ! ぐああっあっああっ! 糞っ! レオッ、俺のもしっかりと食えよっ、しこたま腹に種仕込んでやるっ!おおおっ上がってきやがったっ、射精るっ射精るっ射精ちまうぅぅぅーーーっ!! グウッウッウウウッ、グッフウウウウウウーーーゥッ!!」
ドッッックッ……ドッ、ドッッッッビュウウウウウルルルルルルルルルルルルルルルッッッーーーーーーーービシュービュシュビュブブルルルルルルルルルルルビュブッビュブブブッビューーービュビュブブッビュブブッ!!!!! ビュビビッビュビッ、ドップドップ! ドビュブブブブウウウウウウウウウウウッッッ!! ビュブブッ、ビュビッ、ピュプッププゥ! ドッックン、ドッッックンドックンドックンドックンドクドクドクドクドク………ドックドクドクッ、ビュビュビューーッ、ビュッビュビュウウウウウウウウウルルルルルルルルルビュビビゥビュブブブブブウゥゥゥゥウーーーーッッッ!!!!! ビジュルルルルッビュビビウッビュピピッ!!!
兄に続けとばかりに弟も射精した。
こちらもガブに負けず劣らずの大量射精で、白濁の奔流が轟々と唸りながら食道を落下していく。後頭部を押さえられては引くにも引けない。無論、レオに引く気など毛頭ない。一滴も零すまいと何度も喉仏を上下させながら、至高の雄野郎の体液を胃袋へと収めていった。
両方から同時に流し込まれる大量ザーメン。
まったく射精が衰える気配がない。
双子の兄弟は途切れることのない射精感にマズルから涎をだらだらと垂らし、白目を剥き、喉から声にならない声を絞り出して善がり狂った。
「アガッ……ガッ、ガッ……アァ……」
「……ホッ、グァ……あっ、兄、上ぇっ……」
魂まで搾り取られるような無上の悦楽に気が遠のく。
生殖器官がイキ狂っていた。射精中枢が焼き切れていた。壊れたポンプのように会陰が脈打ち、怒涛の勢いでザーメンが尿道を駆け上がっていく。
十分以上は精を放ち続けただろうか。
やがて、最後のなけなしの一滴が獅子の体内へと注がれると、双子は崩れるようにしてその場にへたり込んだ。おそらくしばらくは立ち上がることもできまい。
レオは満足げに喉を鳴らした。
「……ガブ様、ルグ様、大変美味しゅうございました」
マズルをスッと拭いながらすっかり放心状態の彼らに礼を言う。
尻から直接注がれるザーメンの風味はまた一味違って美味いものだった。
どうやら精液を栄養源として摂取するのは口と尻穴、そのどちらでもいいらしいと今回交わってみて思った。淫魔の能力の一つか、アナルに放出された精液も疑似的に風味を感じられるようになっていた。精力を摂るという意味では、経口よりももしかしたら腸内に注いだほうが吸収効率がいいのかもしれない。
妊婦のように大きく膨らんだ精液ボテ腹をレオは幸せそうに撫で擦った。
これほど心地の良い膨満感は他にあるまい。
食っても食っても食い飽きることがない。この数週間、男たちが提供するザーメンだけを食ってきた。四六時中食い、浴びるほど飲んだ。それでも飽きない。体が常に求めてしまうのだ、ザーメンを。朝から晩まで体が精力漲る雄たちのザーメンを渇望して止まなかった。
ザーメンより美味い食べ物はこの世に存在しないだろう。
精液中毒、それが今のレオに最も相応しい言葉かもしれない。
恍惚の世界に浸っているとき、ふと部屋の扉が開いた。
「双子の姿を見かけないと思ったらこんなところにおったか……抜け駆けして欲を満たすとは不埒者めが」
翡翠色の鱗が仄暗い燭台の灯りに鈍く輝いた。
鰐人のグレゴリオ副団長であった。
「ふっ、副団長!? なぜこのような夜更けに」
「嫌な予感がしたのだ。ここ数日、ガブめらが事あるごとにお前への懸想を口にしておったからな。先走って思いを遂げんか危ぶんでおったが、どうやら一足遅かったようだ」
蔑む眼差しを床にへたり込む兄弟に突き刺しながら言う。
「それはどういう……」
疑問を呈する獅子に、鰐男の鋭い眼光が今度は黄金色の瞳を射抜く。鋭い眼光……いや、その瞳の奥に情欲の炎が燃えていた。
グレゴリオがゆっくりと息を吐く。
「……何も興奮が昂りすぎて悶々としているのは此奴らだけではない」
嫉妬の火が鰐男の理性を炙っていた。
「儂も、いや、この聖騎士団に属するすべての者たちがお前に懸想しているのだ、欲情しているのだ。……知らぬわけではあるまい?」
ぞわっ、と背筋の寒くなるような重低音の声色が鼓膜を撫でた。
もちろんレオは体に突き刺さる好色な視線には気付いていた。性欲エネルギーの放出量が分かると言うべきか、発情している雄を一早く感知できるのは淫魔の力のお陰だった。
獅子の無言を肯定と捉えた鰐が話を続ける。
「だがいくら貪欲に男の精を食らうお前でも、同時に五百人もの男共を相手にすることなど到底できはしまい? 体が持たんからな。だから皆にきつく食事提供時以外には手を出さぬよう言い付けておったのだが……」
彼は長い溜息を挟んでから、
「……もうどうでもよくなった。この儂の身を焦がす情欲は、到底規則などで鎮められるものではなかった……」
濃緑の巨体を揺るがせて鰐男は、床に腰を下ろしているレオに歩み寄った。そして、
「この狂おしいほどの情欲を鎮めてくれ、レオ。さあ儂と契ろう……」
膝を折ったグレゴリオとレオの口吻が重なった。
「んんっ!? んんっんふぅっ……ふっ!」
いきなり唇を奪われて獅子は面食らった。
まさか頑固一徹な鰐男までをも虜にしてしまったとは。中年男の練られた雄の臭いが鼻を衝いてレオはうっとりと相貌を崩した。血気盛んな若い男たちが放つ体臭は別格だが、こういった酸いも甘いも噛み分けた壮年男の体臭もいいものだ。
唇を割って鰐の分厚い舌が入り込んでくる。
唾液が流し込まれ、もつれる互いの舌に否が応でも肉欲が掻き立てられていく。
屹立するレオのペニスを認めたグレゴリオの眼が喜悦を帯びた。
「どうやらお前の性欲は底無しのようだ、腹は膨れているがまだ十分入りそうだな? しかし体を動かせばきっと種が穴から漏れよう、お前の大切な種を失わせるのは忍びない……これを使え」
にたりと鰐男はほくそ笑むと懐から取り出したのは、円錐形の端にフリンジの付いた黒い器具。
直腸に挿入するアナルプラグであった。
「そ、そのような物、私は使った経験などなくどうしたら……」
「そうか、なら儂がやってやろう。これを肛門に嵌めれば種も漏れてこなくなるぞ」
副団長の指示に従ってレオは四つん這いの体勢を取ると、尻をぐっと高く掲げた。
露わになった秘肛にグレゴリオは息を呑んだ。
しっとりと濡れた浅ましい艶はガブたちとの激しい交接の名残りか。何と淫猥極まる穴なのだろう……この穴に大の男共が夢中になるのも分かる気がした。排泄するためだけの器官では最早ない、これは男の精液を搾り取るための器官でもあるのだと淫靡に収縮を繰り返す粘膜が物語っている。
気付けばグレゴリオは肛門を舐めていた。
舌を這わせて丹念に窄まった穴を解していた。
「あうぅぅっグレゴリオ様っ! 汚のうございます、そのような不浄なところをお舐めになるなど……っ! ああっ! んくぅっ!」
鰐男は構わず尖らせた舌先を肛門の中へと捩じり入れた。
「む、むぅ……」
舌を括約筋がきつく締め付ける。
舌先が生温い粘液に浸かっていくのが分かった。精液だ、ガブたちが放った精液が直腸に満々と満ちているのだ。括約筋がどうにか噴き出すのを阻止している切迫した状態だった。もし少しでも腹を押さえたら括約筋は脆くも決壊して、ザーメンが滂沱となって噴き出てくるだろう。
グレゴリオはゆっくりと舌を引き抜いた。
己でも信じられなかった。突如、舐めたい衝動に駆られたのだ。男のアナルを舐めるなど正気の沙汰ではないと頭の片隅で思いながらも欲求には抗えなかった。
まさに魔性の穴だ。一度溺れたらきっと二度と抜け出せまい。
「この穴に嵌めるのは舌ではなくこれだったな……」
鰐男は薄ら寒いものを覚えながら、手にした円錐形の黒栓をレオの肛門に宛がうと力を込めた。
徐々に太くなっていくアナルプラグに括約筋が引き伸ばされる。肛門がゆっくりと子供の拳ほどもある大きな異物を中に導き入れていく。ずぷ、ずぷぷぷぅ……最大口径まで呑み込むと、一気に黒い斜面を下ってプラグは完全に体内へと没した。
「よし、難なく入ったな。これで大丈夫だろう」
フリンジを摘まんで引っ張ってみたが、括約筋にがっちり咥え込まれてそう簡単には抜けそうになかった。
「では別の部屋へ行くぞレオ。不届き者らに儂らの睦み合う姿を見せてやる道理はないからな」
手を引いて獅子を立たせると夕食時に使用する搾精部屋へと彼を連れて行った。
部屋に入るやレオはいきなりベッドの上に押し倒された。
裸になった鰐男の巨体が覆い被さってくる。
膨れた腹が押されて苦しかったが、アナルプラグのお陰でどうやら腹に溜まっていたザーメンは零さずに済みそうだった。
「ああっグレゴリオ様……あなた様に抱かれる日が来ようとは」
ひんやりと冷たい鱗の感触が火照った体に気持ち良かった。
猛者揃いの聖騎士団員の中でもとりわけ突出しているのが副団長グレゴリオだった。神の加護を受けた銀の聖鎧と身丈ほどもある巨大な戦斧を煌めかせる姿は、さながら神話に聞く軍神のようで、レオが憧れる一人であった。
歴戦の豪傑の体は筋肉と鱗にごつごつと硬く、見るからに精液も濃そうだ。
「グレゴリオ様の精液で私を汚してくださいませ……あなた様の種で孕みとうございます」
昏い黄金色の瞳から漏れる淫気に、鰐の凶猛な顔面が激しい劣情にぎこちなく歪んでいく。
「グフフフ……可愛い奴だ。発奮するのは久方ぶりだが、腰が抜けるまで抱き倒してやる」
「はぁぁっグレゴリオ様っ!」
レオはグレゴリオの極太の首に腕を絡ませ接吻した。
肉体が疼いて仕方がなかった。欲しているのだ、騎士道精神を骨の髄まで叩き込まれた謹厳実直な堅物中年四十五歳男のザーメンを。その年齢になるまで、子種を無駄に一滴すら垂らしたこともなさそうな武骨な雄のそれは格別美味に違いなかった。
翡翠色の体が離れ、レオの股が左右に大きく開かれた。
身を焦がすほどの肉欲に前戯を楽しむ余裕すらないのだ。
グレゴリオの股間を見やれば、生殖器が内包されているスリットからすでに粘液にぬらぬらと濡れた男根が突き出ていた。やはりその歳になるまでみだりに勃起すらしてこなかったのだろう、色素沈着のない鮮やかな肉色を呈すそれは細い血管を網のごとく浮き上がらせて、久しぶりに浴びる外気に歓喜にビクビクと打ち震えていた。
巨躯がずい、と獅子の股座に入り込む。
「交わる前にこれを抜かねばな……」
肛門を封じていたアナルプラグが、ぐっと引き抜かれた直後、
「はううっ!」
獅子のマズルから熱い吐息が漏れた。同時にアナルから少量の白濁がブピュッと漏れる。
「うむ、しっかり締めておけよ? 少しでも気を抜けば漏れ出すからな」
いやらしい笑みを浮かばせたグレゴリオは続けて、
「お前の腹は貯精タンクだ。これからも様々な男共の子種を溜め込むのだろうな……助平な体だ。どれ、儂の子種も貰っていただこうか」
灼熱の先端が獅子のアナルに触れた。
鰐の縦に細長い瞳孔の眼がスゥ、と細まった刹那、
「はああっ! あっくうぅぅーっ! ああっグレゴリオ様ぁっ!」
レオは目を見開き、体内に侵入してくる肉槍に上半身を大きく反らせた。圧倒的な質量が容赦なく押し入ってくる。漏れたザーメンを潤滑液にして、ガブとのセックスで括約筋が解されていたのをいいことに、無遠慮にズブズブと挿入ってくる。何と暴慢な男性器か。あっという間に直腸が鋼鉄と化した肉塊に占領されていく。
腸を満たすザーメンの海を鰐ペニスが抉る。
ぐ、ぐ、ぐぐっ、と更に腰を深くするグレゴリオ。
ザーメンが上に上にと押し上げられてレオは堪らず呻いた。
「はあぁっ! あっふぅぅぅっ……っ!」
「どうだ儂の魔羅は? お前たち獣人らと少々形が違っとるが中々いい塩梅だろう?」
「はっはいぃっ、私のっ私の弱点を的確に突いてきてっ参っておりますぅっ、ああぁっ!」
「グフフフッ、いい声だっ! 儂もだ儂も堪らんわっ、グッグオオオッ!」
雄叫びを放ちながらグレゴリオが正常位で激しく責め立てる。
湿度の高い無風の空間にたちまち汗が浮かび、翡翠色の体に艶めかしい光沢が宿っていく。獅子のペニスを片手で扱き、互いに競い合うように淫らな野太い声を上げて交尾する発情した雄二体。倍ほども歳の離れた若者を組み敷き、凶悪な牙を剥いてただひたすら快楽に溺れる鰐男に、獅子は濃艶な淫魔の眼差しを送るのだ。
ビクリ、とグレゴリオの表情筋が攣った。
「ぐうっ!? 果ててしまうっ果てて……ッガッ、グッハアァァァァーーーッ!!」
魔性の瞳に囚われた男が絶頂に体を震わせた。
「あっくぅぅぅああっグレゴリオ様の種がっ種が私の体内にぃぃぃっ! 熱いっ熱いいぃぃぃっ!!」
すでに満々とザーメンが入っていた腹に夥しい量の種汁が無理やりに注ぎ込まれている。腹が張る、腹が臨月を迎えた産婦のように張っていく。嬉しい苦悶にレオは感涙しながら自身もまた扱かれるペニスから精を放っていた。
グレゴリオの精は芳醇な風味だった。
さすが久しぶりの放精なだけのことはある。
射精の機会を与えられず、長時間に渡って体内で貯精されてまったりと熟成し切ったザーメンは格別の一言だった。今まではせっかく作られた子種も体外に排出されることなく分解されるだけだったはず。こうして久しぶりに射精によって排出されたそれは特別風味豊かで誰よりも特濃だった。
中年男のギラついた眼差しが降ってくる。
その眼は訴えていた。まだまだ夜は長いぞ、とことん付き合ってもらうからな若者よ、と。
獅子は再び動き始めた腸内のペニスに、随喜の笑みを浮かべるのであった。
それからまた数週間が経過した。
聖騎士レオの姿は大食堂にあった。
雲一つない好天の昼下がり、宿舎一階のロビー際にある広い大食堂は食事を楽しむ数百の同胞たちで活気に満ちていた。行き交う靴音、食器の音、さんざめく賑やかな談笑、外に目をやれば併設された涼しい木陰のテラス席で、読書をする者や、数人の聖騎士たちがこちらもまた笑顔を見せて何やら話に花を咲かせている。
そんな平和な日常風景の中に溶け込んでいた獅子に虎の青年が声をかけた。
「よう、邪魔するぞ。もうすっかり快癒したようだな、安心したぜ」
「ライガか。ああ、お陰様でこの通り、元通りに食事を楽しめるようになった」
長テーブルの向かい側に腰を下ろした彼にレオはフォークに差していた腸詰めの肉を見せながら微笑んだ。
二日前、淫魔の呪いは無事に解呪された。
解決法を見つけてくれた魔術師の手解きで、五分とかからず呆気なく呪いは解けた。半信半疑だったが、二日経った今でも別段これといった後遺症もないからたぶん成功したと言っていいのだろう。
レオの返答にライガはにんまりと顔を崩すと大口を開けてパンに噛り付く。
「普通の食事って美味いよなっ!」
テラス席を吹き抜けてくる、木々の匂いのする爽やかな夏風にライガの白髭が揺れる。彼の胸のすくような笑みに、
「そうだな」
レオも白い牙を見せるとフォークに差した肉詰めを頬張った。
肉や魚を食えるようになり、皆から精液を提供してもらう必要もなくなった。冷静に考えてみたら信じられないものを口にしていたものだ、男の体液だなんて。
レオは美味そうにパンを頬張っているライガを見やった。
彼との情事がふと脳裏に浮かぶ。
解呪されてからはもちろん彼との肉体関係はない。それ以降、二人の間にはまるで何事もなかったかのように以前の関係が続いている。彼だけではない、ガブとルグの双子の兄弟とも、グレゴリオ副団長とも、その他の聖騎士たちともそうだ。皆、何事もなかったかのように鍛錬に剣を振り、任務をこなし、こうして和気藹々と食事を楽しんでいる。
彼らと耽った淫らな行為の日々は本当に現実だったのか。
夢を見ていたのではないのか。
そう、何もかもが夢魔インキュバスが見せた淫夢だったのかもしれない。
レオはグラスを満たすミルクを薄ぼんやりと見つめながらそう思った。
「ん? なんだレオ、もういいのか? まだ食いかけじゃないか」
「ああ、実はまだ体調のほうが本調子でないのでな。先に失礼する」
「そうだったのか……あんまり無茶だけはするなよ?」
席を立つと心配げに見上げてくるライガに別れを告げてレオは自室へと戻った。
閉めた扉に背を預けるや、マズルから自然と重い吐息が漏れた。
元の食事が取れるようになったもののどうにも気分が晴れなかった。何を食べても物足りないのだ。あれほど好物だった肉料理も、乳製品も、酒も、何かが違う。味気ないのである。消化はできるので呪いは解けているに違いないが、はたして味覚が変わってしまったのか、それとも体質が変わってしまったのか定かではなかった。
やはりまだ本調子ではないのだ、そう結論付けてレオは午後の任務の前に仮眠をしようとベッドへ足を向けた。
寝台の縁に腰を下ろしたとき、ふと視界の隅で小さな輝きが煌めいた。
顔を向けると寝台脇の卓上にぽつんと置かれてあるガラスの小瓶が目に留まった。
「…………」
小瓶が網膜に焼き付いた刹那、トクンッと心臓が跳ねた。
気が付いたら勝手に腰が浮き、腕が伸び、それを手に取っていた。
小瓶の中で白い液体が揺れた。精液であった。いつでも喉の渇きを潤せるようにと、まだ呪いが解かれる前にあの地下の小部屋に置いてあるボウルの中から失敬してきたものだった。
その瓶の中で、白の薄い膜をガラスに残してとろりと揺らめく液体から目を離すことができなかった。
解呪されているはずなのに。
なのに、なぜ気になるのだろうか。
なぜ、喉が生唾を飲み込んでいるのだろうか。
レオは恐る恐る小瓶のコルク栓を引き抜いた。途端、ふわりと鼻先を撫でる雄のあの芳しい臭い。
「はあぁっ! はっ! はああぁっ!」
獅子の息遣いが、心拍が、急速に上がり、たちまち体が震え、瞳孔が収縮する。禁断症状が現れたか。
レオは瓶の中身を一気に飲み干した。
「んぐんぐんぐっ……ぐっはぁっ、はぁはぁはぁ……」
馥郁たるザーメン臭が鼻腔を通り、粘性のすこぶる高い液体が喉の奥へと流れ込んでいく。何と美味なのか何と……。先ほど食した肉の比ではない旨味が舌を唸らせ、脳髄をも痺れさせる。己は、いや己の肉体はこれを求めていたのだと悟った。
レオは次の瞬間、部屋を飛び出していた。
宿舎の西側にある団長の執務室まで駆けると、逸る胸をしばし落ち着かせてから扉を二度ノックする。
応答があってから中に入ると、ラグノフ団長は窓辺に置かれた円卓でちょうど昼食を取っている最中だった。団長クラスともなると一般団員とは食事を共にしない。レオは慌てて半歩ほど身を引くと姿勢を正し、
「し、失礼しました、お食事中でしたか」
非礼を詫びて退室しようとした彼を威厳に満ちた声が呼び止めた。
「構わぬ、用件を申せ」
「は、はっ!」
「貴殿らしくもない、どうした? そのように血相を変えて」
「い、いえ、その……」
大層恐縮する獅子に、純白の被毛も美しい大狼の凍えるような蒼い瞳が糸のように細くなった。優しく笑んだのである。彼はつと、長い指を絡めていたフォークを静かに置くと、テーブルナプキンで口元を拭ってから口を開いた。
「そう固くならんでよい。毎回一人でする食事もつまらなく思っていたところだ。ちょうどよい、貴殿の言葉が料理を引き立てる良いスパイスともなろう。もっと近くにきて申してみよ」
レオは顎を引くと窓辺の円卓へと歩み寄った。
白い格子窓から木漏れ日の淡い光が降り注ぐ卓上には、こんがりと焼けたローストチキンやリーフ野菜のサラダ、数切れのバタールパンが何とも見る者の食欲を誘ったが、ただ一人、獅子だけは当てはまらなかった。
話を切り出すことができない。
言えない。食事がまったく美味く感じられずに、己がまだ精液に興味を持ってしまっているなどとは。許されるならまた同胞から提供してもらいたいとは……。
だが、体が求めている。
先ほど飲んだ精液が体の奥底に燻っていた淫火の種火に油を注ぎ、再びメラメラと燃え盛っている。その業火は到底己の意思でどうとなるものではなかった。肉体が、本能が求めているのだ、雄のザーメンを。
辛苦の表情で押し黙ったまま目の前で突っ立っている男に白狼は言う。
「……我に乞いに来たのであろう? また命じてほしいと」
項垂れていた獅子の顔が驚きに上がった。
「なっ、なぜそれをっ!」
「知らいでか。……貴殿は精液の味を覚えてしまった。淫魔が男の精を食うのと我らが食物を食うのとでは訳が違う。彼奴らは精を食う際にめくるめくほどの快感が伴うと耳にしたことがある。つまり半淫魔となった貴殿もそうだったのだ、甘美な味を肉体はそうそう忘れることなどできはしまい?」
精気のない獅子を見やる蒼い瞳に揺れるのは憐憫の情か。
ラグノフは立ち上がると肩を落とした獅子の腕にそっと手を添えた。
「レオ、それを恥と思うな、仕方のないことなのだ」
「……はい」
「そう案ずるな。また我から皆に命じておこう。いや……その必要もないか」
含み笑いに大狼の口角が微かに吊り上がった。
「命じなくとも貴殿がまた欲しいと言えば、むしろ皆こぞって嬉々と精液を提供してくれるだろう。今は皆が平静を装っているようだが無駄なこと。何せ貴殿の体が与えてくれる途轍もない快楽を覚えてしまったのだからな、忘れられないほどの淫魔の悦楽を……」
獅子の腕に添えられていた白い掌がゆっくりと上がっていく。
盛り上がった上腕筋の発達具合を確かめるかのように指先が被毛を滑り、そのまま指は大きく隆起する肩へと這っていった。
「……っ!」
首から顎先へと達した指に顔をくいっと持ち上げられて獅子は面食らった。
目と鼻の先で、胸の内を見透かさんとする凄絶な眼光が己の目を貫いていた。
「欲しいのだろう男の種が……? 隠しれていないぞ卿よ? 底知れない欲望が瞳の中に烈火となって燃え盛っておるわ。なら同輩たちに頼めばいい、敬虔な聖騎士といえども一皮剥けば只の雄だ。ご大層な教義と矜持で身を固めているが、その仮面の下には浅ましい肉欲が渦巻いておる…………我のように」
狼のマズルが深く裂け、鮮血のような赤い舌が獅子の口唇を舐めた。
「ラッ、ラグノフ様っ!?」
手首が握られ、持っていかれる先は白狼の股間。
硬い物が革ズボンを持ち上げていた。
ラグノフが獅子の耳元で熱い吐息に言葉を乗せる。
「種が欲しくば我のを食えばよい、ここに潤沢に蓄えておるぞ?」
握られた手首がゆっくりと上下に動かされる。
「ううっ、ラグノフ様っ何をなされるのですっ!?」
「以前より貴殿を好いておった……狂おしいほどに。どうにか貴殿を物にしたいと長らく思っておったが、ようやく成就する日が来たようだ。我の精を与えよう、存分に味わわせてやる」
ラグノフは己の滾った獣根をズボンから取り出すと獅子に握らせた。
「はぁっ、あぁっラグノフ様……そのようなことされては私はっ!」
白狼のそこから伝わってくる火傷を負うほどの熱量にレオは堪らず熱い息を放った。
見事に剥け切った赤黒い肉茎だった。獰猛な脈動が、この男根の持ち主が性豪であることを告げていた。数発放っただけでは到底満足しないのだと肌で感じる。それは開放された股間から立ち昇ってくる雄の強い性臭からも明らかだった。濃厚で、大量のザーメンを恵んでくれるに違いないと一瞬にしてレオは理解した。
獅子の指が動いていた。
精を搾り取らんとする動きだった。
「おお、レオ……よい、よいぞ……」
「ラグノフ様、んんっ……」
どちらともなく重なる口吻、交わる舌、漏れる甘い吐息。
レオは侵入してくる狼の長い舌に必死に舌を絡めた。
理性が蕩かされていく。持ち直していた聖騎士としての矜持が再び形を崩してあやふやになっていく。いつの間にか獅子のペニスが取り出されて、兜合わせに二本の獣根が白い手の中で一緒になって扱かれていた。
「うくぅぅ、ラグノフ様ぁ……っ!」
腰から得も言えない甘美な快感が湧き上がってくる。
力強く張り出したラグノフの雁首に、たちまちこそがれて剥けていくレオの包茎。敏感なそこはすかさず兜合わせに擦られて滲む先走りに濡れていった。
「フウゥゥゥッ……心地良いものだなレオ?」
「ラグノフ様っラグノフ様ぁっ、ラグノフ様ぁぁっ!」
レオは返事も忘れて白狼の逞しい体に抱き付いた。
奏でる淫靡な音色が、竿越しに感じるラグノフの灼熱が、聖騎士団長の鍛え抜かれた肉体が醸す猛々しい獣臭が、興奮を際限なく煽っていく。
腰の奥底のほうから白い溶岩が沸々と湧き上がってくる。
それは狼の容赦ない手仕事によって瞬く間に急上昇するや、
「かっはあぁぁっ!? そっそんなに強く扱かれてはっ、いっ射精ってしまいますっ、いっ射精きっ……ウッッガアァァァァーーッ!!」
凄まじい勢いで尿道を駆け抜けていった。
獅子が絶頂に達するのとほぼ同じくして白狼もまた、
「ぬふううぅ、我も果てるぞっ、ンヌウウゥゥゥーーッ!!」
重苦しい絶頂の雄叫びが部屋に響いた瞬間、密着する二本のペニスから凄まじい勢いで精液が打ち上がった。
ブビュウゥゥゥルルルルルルルーーーーーブビュュブビュブビュビュブウウウウウウルルルルルルルルーーーーーーーッッッブブブブブリュブブゥッッッ!!!!! ドッッビュウウウウウウウウビュプププゥブピューーーーーーーーーーッッッ!!!!! ドップドップドッッュビュウウウウルルルルルルルルゥゥゥゥッッッ!!!!! ビュビビッビュピピッ、ビュッビュッビュビュビュビュビュピュュュュッ!!! ブピュッ! ブビュウウウウルウルルルルルルルゥゥゥゥーーーーービュブビュルルルルッ!!!! ドプププププッドップドップドップドクドクドクッッドックンドックンドックンッッッ!!!!
獣根と天井を結び付けた二本の白濁の柱は、すぐさま生臭い驟雨となって辺りに降り注ぐ。床に、獅子に、白狼に、たちまち淫らな白斑が打たれ、卓上の色鮮やかな料理もすぐ白濁一色に塗りつぶされていった。
精力旺盛な二体の獣人の射精は圧巻だった。
聖騎士五人、いや十人分は放っただろうか。足をその場で踏み鳴らせば、白く染まった床にビチャッと音が立つぐらいだったのだから相当の量だ。
絶頂の余韻にしっとり濡れる白狼の蒼い瞳が、つと卓上へと向けられる。
「よい趣向だ、食してみろ」
言うや彼はザーメンがべっとりとかかった一切れのバタールパンを手に取ると、獅子の口元へ持っていった。
新鮮な白濁が、とろりと蕩けたバターのごとくパンの縁から糸を引いて滴り落ちた。
「はい……ラグノフ様」
レオは口にした。
その妙味に彼は目を見開いた。途轍もなく旨かったのである。あれほど味気なかったパンの風味が、味覚が戻ったかのように際立っていた。精液と一緒に食すことによってパンの旨味が引き出されていたのだ。
白狼が相好を崩す。
「どうやら気に入ったようだな? 毎食精液だけでは栄養も偏る。何事もバランスが肝要だ。次から普通の食事を取る際にはこうして精液を塗して味わうがいい」
白い指が野菜スティックを摘まむやディップのようにザーメンを塗りたくると、それを再び獅子の口元へと運ぶ。
獅子はまた唸った。人参の繊細な甘やかさがこれまた引き立っていたのである。
その後も獅子は白狼に勧められる通りに、たっぷりとザーメンのかかった料理を口にした。チキンローストにはザーメンソースを、サラダにはザーメンドレッシングを、持ち上げたら、たらたらと滴るほどブッかけて至高の味を堪能した。美味かった、ただただ率直に美味かった、それ以外の言葉は必要なかった。
うっとりとした表情で舌鼓を打つ獅子をその蒼い瞳に映しながら、
「……これで自覚しただろう? 貴殿はもう男の精液なしでは豊かな人生を送れないと」
「はい、ラグノフ様」
「浅ましい肉欲を見せた我を軽蔑するか?」
「いいえ、ラグノフ様」
レオは主へ振り返ると、軽く頭を垂れ、
「軽蔑など滅相もございません……ただただ私は嬉しゅうございます。またこのような美食を味わうことができて、それも敬愛するラグノフ様の精液を……」
「愛い奴……」
両腕を広げたラグノフの胸にレオは身を委ねた。
これ以上の幸せはなかった。
極上の雄種を与えてくれる白狼に愛され、日々の食事に団員たちから再び精液を提供してもらえることになったのだから。普通の食事を取れることから確かに呪いは解けたのだろう。だが、精液の味を覚えてしまった肉体はもう二度と元には戻らないのだ。でもそれで良かった。これほどにもザーメンは美味いのだから……。
ラグノフは己の首元に付着している白濁を舐め取る獅子に満足げに目を細めた。
事は実にうまく運んだ。
恋慕する獅子を落とすために淫魔インキュバスと結んだ密約はつつがなく果たされた。代償はインキュバスへの恒久的な聖騎士三人分の精液供与だったが、最愛の獅子が手に入るのなら安いものだった。
獅子を呪いで精液漬けにさせて男なしでは生きていけないようにする――
数週間かけて精液中毒とする。
そして一旦解呪させて、素の獣人に戻ってもやはり己は男を欲してしまうのだと心底骨の髄まで分からせる。念には念を入れた。生きるには男の精液が必須なのだと。
純白を覆い隠した汚猥塗れの汚い手が、獅子の頭を撫でる。
「半淫魔の貴殿ではなく、勇敢なる獅子獣人聖騎士レオとして貴殿を愛することができて我はこの上なく幸せぞ……」
淫魔にも劣らぬ昏い淫火がその凍えるような蒼い瞳の奥に宿っていた。
窓の一つとてない四方を石壁に囲まれた部屋の中心に灯った薄明りに、伸ばされたいくつもの人影がゆらゆらと揺れていた。
その放射状に伸びる影たちの中心には部屋で唯一の家財が置かれていた。
大柄の獣人が一人浸かれるほどのサイズの磁器製のバスタブに身を沈めながら、獅子は恍惚と熱い息を噎せるほどの熱気の中へと放った。
「……良い湯だ」
程よい湯加減だった。
人肌ほどの温もりが骨身にまでじっくりと染み入ってくる。
つい長湯になってしまうのもこの微温湯の塩梅が絶妙なのだ。効能もさぞいいに違いない、何せ体に漲る活力が段違いなのだから。明日の任務もきっと捗ることだろう。獅子は湯船の中に潜らせた手を引き上げると、掬い取った湯が粘った糸を引いて手から零れ落ちていく。やがて糸を吸い込む湯面にはゆっくりと重たげな波紋が広がっていった。
精液風呂であった。
地下に用意された搾精部屋に連なる第四の部屋、沐浴専用の部屋に彼の姿はあった。
掌に残っていた湯で鬣を撫でると、優美な金毛はたちまち白濁の被膜に覆われて輝きを失った。
何と濃密で豊かに臭う濁り湯だろうか。
乳白色をした光沢を放つ磁器のバスタブの中はそれよりも更に濁った色の大量のザーメンに満ち満ちていた。実に聖騎士五百人分のザーメンであった。
再び獅子は湯を掬い取った。
昏い黄金色の瞳に映るその一杯の中にどれほどの子種が蠢いていようか。瞼を下ろして鼻を鳴らすと、噎せ返るほどの精の臭気によって脳裏に次々と逞しい聖騎士たちの姿が浮かんでくる。彼らが額に汗して必死に放った子種の湯に浸かれる多幸感に包まれながら、獅子は湯を汲み取った手を口元に持っていくやそのまま傾げた。
ねっとりと粘性の高い湯が口内に満ち、それを喉奥へ落としていく。
「堪らん……」
獅子は誰に言うでもなく呟くと、また湯を掬って口へと運ぶ。
どれほど飲んでも湯の嵩が減ることはない。
バスタブを取り囲んでいる数十もの武骨な影がゆらゆらと揺れている。ゆらゆら揺れる影が一つ、また一つと硬直するたびに、バスタブの中へ次々に勢いよく白濁の線が引かれていった。獅子の胃袋に消えた分がたちまち補充されていく。
獣欲を剥き出しにした裸の聖騎士たちの獰猛な喘ぎ声が途切れることなく続く。
虎の青年の影からも、
熊の双子の兄弟の影からも、
鰐の壮年の影からも、
硬直した影から凄まじい量の精液が、愛しい獅子の体へと一直線に迸っていった。
終