猛獣使いタケミっち

  ぺけったーで仕事疲れと酒入った勢いでアンケートしたら、1番に票が入ったので書きました

  前半は平和軸な人間バージョン、後半はみっち以外猫獣人な年齢差有りの獣人バージョン

  猛獣使いとは書いたけど、人間か獣人かどっちを希望しているのかわからなくて、結局2つ書くという

  相変わらず妄想と夢と癖を詰め込んだけど、よくある展開になっちゃったな

  こんなの書きたいなーとメモはあったけど三行しかなくて、過去の自分をぶん殴ってやりたくなりました

  今までの作品にもコメント・スタンプやいいねにタグなどなどありがとうございます

  フォローもありがとうございます

  著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ

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  平和軸 人間バージョン

  東卍の総長代理は猛獣使いだと不良界隈では噂されている。

  見た目はヒヨコ、中身はコーギーのような感じで、総長代理の方が動物じゃないかなんて入ったばっかの下っ端に言われるが、アレを見たヤツは総長代理こそまごうことなき猛獣使いと言う。むしろ総長代理がいないと東卍は崩壊するのではないかとも言われるくらいだ。

  じゃあ猛獣とは誰のことを指すのか。それは総長を始めとする隊長の面々だったりする。

  筆頭は総長の佐野万次郎こと通称マイキー。抗争や喧嘩の時は百獣の王を思わせるライオンのように荒々しい。特に義兄である黒川イザナと喧嘩の時は、雄ライオン同士の縄張り争い並みで、止めようとすると逆にこっちがやられて吹っ飛ぶくらいである。止められるのも副総長や隊長が複数で止めるか、例の総長代理くらいだと言われている。

  現在、集会が行われる武蔵神社では人の円が出来上がり、その円の中心にはマイキーとイザナの応酬が繰り広げられていた。

  到底人が出すような音ではなく、鈍く重い音が神社の境内に響いている。止めようにも2人の応酬は激しく、手が出せない。

  隊長達は未だ現れる気配がなく、見ていることしかできないでいた。

  そんな中、無謀にも円の中に入ったのは総長代理である武道だ。

  「ストーップ!!」

  ガガガッ! と2人の蹴りを武道が両腕で受け止める。あまりの衝撃にいてぇー! と言いながら両手を振っているが、通常なら骨が折れていてもおかしくない威力である。武道のタフさだからこそできることだ。

  「何やってんだよタケミっち!」

  「間に入ってくんじゃねェ、下僕」

  喧嘩の中心だった2人は口では文句を言いつつも、慌てて武道へと駆け寄る。いくらタフといっても傷つけたいわけではない。

  逆を言えば、骨が折れてもいいと思うくらいの威力でお互いを蹴り合っていた事実に震える。

  「今日の喧嘩、何が原因っスか!」

  「……」

  「……」

  自分のことよりも喧嘩原因について問いただすが、だんまりを決め込む2人。そっぽを向いている姿は怒られ慣れていない子供のようにも見える。

  「……もしかしてまたどっちかがどっちかのオヤツ食べちゃったとかっスか?」

  「……ちげェ」

  「……そこまでガキじゃねェよ」

  言い訳のように言っているが、以前それで喧嘩していたのだから説得力は皆無。周りの見守っていた隊員達の目線も心做しか生温かい。

  「じゃあ原因は? 2人が喧嘩するなんてよっぽどでしょ!」

  「……イザナが」

  「ん?」

  「イザナが、タケミっちと出かけたって自慢してきたから……」

  「……」

  まさかの原因は自分だったことに言葉をなくす武道。だがポツリポツリと気にせず続きを話すマイキー。

  「イザナともそうだけど、元黒龍のヤツらとも遊んでて最近オレと遊んでねェじゃん」

  「ごめん……って言おうと思ったけどそんなことないよね!? ついこの間、バイクで一緒に出かけたじゃん!!」

  「ハァ!? テメェ人のこと言えねェじゃねぇか!」

  「なんのことだか〜」

  ただ単に武道と出かけたことが気に食わなかったようで、指摘されて吹けない口笛で誤魔化している。

  結局その日は武道がそれぞれと出かける約束をしてその場は収まった。

  ◇◆◇

  また別件で猛獣使いだなと思われたのは、漆番隊の乾青宗と九井一の言い争いの時だった。

  「なんだと!!」

  「やんのかイヌピー!!」

  一触即発。幼馴染同士とは言え、お互いに思っていることをすぐ口に出してしまうため、度々このように衝突している。

  普段であれば隊長の大寿が物理で止めるのだが、あいにくの不在。

  ヒートアップしていく口論、もう少しで手が出るくらいまで熱くなっている。そんじょそこらの隊員では、隊長クラスの強さを持つ2人を止めることは難しい。

  「なーにやってるんスか!」

  そこで口論の間に入ったのは総長代理。気軽に2人の頭に軽くチョップを入れながら割入る。そんな気軽にできるのも武道くらいだ。

  「花垣……!」

  「ちょうどいい、総長代理にも聞いてもらおうじゃねェか」

  「まーた下らないことで喧嘩しそうになったんでしょ。周り見てみなよ、みんなドン引きしてんじゃん」

  ツッコミを入れつつも、で? 何が原因? なんて聞いている。

  「ココのヤツがオレに財布を預けるの知ってるよな?」

  「ん?」

  「預かって貰うからその金は自由に使って良いって言ってんだ」

  「待って?」

  「だから! それはダメだって言ってんだろ!」

  「ちょっと?」

  「持ち主がいいって言ってんだからいいだろ!」

  「ストーップ!!」

  再度ずびしっ! と勢いよくチョップをかます。いいところに入ったのか、2人の額は少し赤くなり痛そうだ。

  「まず、ココくん」

  「……おう」

  九井に向かいキリリとした顔を向ける武道。バツが悪そうに返事をする。

  「オレはココくんが、財布をイヌピーくんに預けていることを初めて知りました。なんでイヌピーくんに財布預けているんです?」

  「イヌピーに預けとけば安心だなって」

  「……手持ち全部預けてます?」

  武道の問いにコクリと頷く。金を稼ぐことに関して東卍内で稀咲と同じくらい稼ぐことができる九井。その財布の中身はどれくらいのものだろうか。

  「……ココくんは一旦保留します。次、イヌピーくん!」

  「なんだ」

  頭痛が痛いみたいな顔で一旦顔をしわくちゃにしたかと思えば、急にキリッとした顔で乾へと振り向く。乾は乾でやっとオレの番か……みたいな顔で花を飛ばしている。尻尾があれば全力で振ってそう。

  「イヌピーくんは何でココくんの財布預かってるのさ」

  「ココのヤツがオレなら安心だからって」

  「幼馴染でもそうホイホイ他人の財布預かっちゃダメっスよ……オレも含めてね!!」

  「……そうか」

  ソッと九井がポケットに手を突っ込んだのを察してか、武道にも預けてはダメだと釘を刺す。

  この2人は幼い頃に火事から助けてくれたのが武道だと知って以来、隙あらば貢ごうとしたりしてくるので油断ならない。

  乾だけ断ったのにもかかわらず、九井もどこか悔しそうにしている。便乗して金を預けようとしていたことは一目瞭然である。何せ今回が初めてではない。

  「油断も隙もないっスね……オレは金銭を預かったりしねぇし、何より大金は使いません!!」

  タイムリーパーである武道は成人して働いていたこともあるため、過去に戻ってリベンジをしている今、どんな誘惑があろうと大金を手にしないと心に決めている。

  そんなことを知るのは共にタイムリープしたマイキーくらいだが、他は知る由もなくただの聖人に見えるから、武道への感情が重くなるのも本人は気づいていない。

  いつの間にか喧嘩は鳴りを潜め、乾と九井は大人しく武道に従っている。

  最終的に割り勘で飯を食いに行くことが決定しているのだから、その手腕は流石である。

  ◇◆◇

  また別の日、東卍では怒声が響いていた。抗争以外でも何かと争いが絶えない。流石に殴り合いは余程のことがない限り止められるが、怒声は頻繁にある。今度は誰と誰だ? なんて視線をやると言い争い……というより三途春千夜が場地圭介に向かって一方的に怒鳴っている。

  「も〜毎日毎日君ら元気すぎねぇ?」

  はいはいどうしたのと言わんばかりにやってくる武道。春千夜と場地とは幼馴染のため手慣れている。

  「タケミチ! ケースケのヤツありえねェんだよ!!」

  「どうしたの春千夜くん落ち着いて」

  美人さんは怒ると怖いんスよ、と春千夜を宥めている。一方、怒鳴られていた場地は何で怒鳴られているのかわからず疑問符を浮かべている。

  「アイツの髪……どう思う」

  「え? 圭介くんの?」

  春千夜が指差す先を辿るとポカンとした顔で立っている場地。髪はサラサラと風に靡いていて、テレビCMにも出られそうなくらいキューティクルが輝いている。

  「……艶のあるいい髪っスね」

  「だろ……だから何使ってるか聞いたんだよ」

  「シャンプーとかリンスとか?」

  「そう。そしたらアイツなんて言ったと思う」

  「石鹸だよ石鹸。頭から爪先までぜーんぶ石鹸だよ」

  めんどくさくて全部1つで済ますにしても、限度がないだろうか? と思ってしまう。それでよくあのキューティクルだったり、肌の潤いが守られているものだ。

  「信じられなくて試しにオレも使ったら、髪はギシギシ肌は乾燥するわで大変な目にあって怒鳴ってた」

  「……春千夜くんはなんでそこでチャレンジしちゃうかなぁ?」

  止めておけばいいものの、案の定場地のようにならず三途のキューティクルは死んでいるし、肌の潤いも失われている。今度はどんよりと落ち込む春千夜の頭をよしよしと慰めるように撫でている。

  「アレは圭介くんだからできる技であって、春千夜くんの体質には合わないってわかったんなら今度から止めようね」

  「絶対やらねぇ……なぁ、今日タケミチんち泊まっていい?」

  「あ! テメ! 春千夜!!」

  ドサクサに紛れて武道宅にちゃっかり泊まろうとする春千夜に食いつく場地。慣れているのか武道はどーどーと両手を広げてポーズを取る。

  「何タケミチんちにシレッと泊まろうとしてんだよ!」

  「場地のせいでオレは傷ついたから慰めてもらう」

  「それとこれとはカンケーねぇだろ!」

  「喧嘩しなーい! そしたらマイキーくんも呼んで泊まりにくればいいでしょ! ハイ、決定!」

  パンパンと両手を叩いてこの話は終わりだと締める。マイキーも来るならと春千夜は嬉しそうだし、そのメンツならと場地も納得している。

  気難しく暴れ馬と思われている春千夜をこうも大人しくさせる武道の手腕には、幼馴染という枠以上に天賦の才能があると隊員達は再認識させられた。

  ◇◆◇

  また別日、珍しく怒声も打撃音も聞こえない平和な日。普通はどちらも聞こえない筈なのに、東卍ではそれが日常なため若干錯覚しているとも言える。

  境内の階段では副総長である龍宮寺堅と弐番隊隊長三ツ谷隆、そして珍しく漆番隊隊長の柴大寿が武道を囲んでいるくらいだ。カツアゲではない、平和と言ったら平和である。

  「今度エマと出かけるんだけどよォ……マイキーがなぁ……」

  「最近ルナマナのわがままがひでェ」

  「……柚葉が八戒に対する愛が大丈夫か心配になる」

  どうやら女性関連のボヤきのようだ。周りに相談できるヤツがいなかった結果、集まったとも言える。武道はよくそう言った相談やボヤきを受けているので、ただふんふんと聞いている。

  武道を足で挟んで上の段に座っていたドラケンへと顔をまず向ける。

  「マイキーくんが邪魔してきそうなことが不安なんスよね? そしたらその日はマイキーくんをオレんちに泊める?」

  「いいのか?」

  「よくみんなで泊まってるし、他にも泊めて次の日もそのメンツで家の中で遊べば問題ないでしょ?」

  「……サンキュー、助かる。でもなんかズリィから今度別日にタケミっちんち行くわ」

  次に三ツ谷へとくるりと身体を向ける。

  「ルナちゃんマナちゃん、どうわがままなんスか?」

  「最近やたらと文句言ったり、料理の邪魔とかしてくんだよなぁ……」

  「それって、構って欲しかったり手伝おうとしてるのでは?」

  「……そういや最近ちゃんと話せてねェかも?」

  「もしかしたら三ツ谷くんも疲れてるのかもしれないっスね。そしたら今度ルナちゃんマナちゃん連れてうちに来ます?」

  「助かる。そうするわ」

  武道宅には幼少期から色んな人間が泊まりに来る上に、両親も子供は武道1人のためウェルカム状態だ。

  最後に大寿の方に身体を向けた。

  「柚葉の態度に八戒が嫌がってなければいいんじゃないっスかね?」

  「だが少し干渉しすぎている気がしてな」

  「家族愛が大きいんスよ。八戒がもし嫌がる時がきたら、お兄ちゃんがそれぞれ相談乗ってあげればいいんじゃないかな?」

  「見守るのも愛か……そういえば八戒がまた世話になったな。また何か礼をする」

  母子家庭の場地や三ツ谷はもちろん、ドラケンも幼少期から武道宅にはよくお世話になっていた。

  ここ最近、東卍入りした大寿も父子家庭のため、主に八戒が武道宅で世話になっているのでよくお礼をしに大寿も訪れている。

  家族ぐるみで東卍のメンツを抱え込んでいるので、総長代理の猛獣使いセンスは両親から着実に引き継いでいるのではないかと囁かれていた。

  そんなことを囁かれているとは知らない4人は、悩み事が解消したからか別の話題で盛り上がっていた。

  ◇◆◇

  そんな日々を過ごすうちに仲間内でも外でも花垣武道は猛獣使いと言われ、毎日あっちこっち動物(比喩)達の喧嘩を宥めている。

  今日はそんな喧騒もなく、境内の階段でマイキーと呑気に会話をしているが。

  「マイキーくん」

  「どうした?」

  「猛獣使いなんて前から言われてたのは知ってたんだけど、最近飼い主って言われるのなんでかな?」

  「タケミっちペット飼ってたっけ?」

  「いや、動物飼ったことないんだよなぁ……なんでだろ?」

  いや……膝にマイキーの頭乗せてよしよし撫でてるその姿が、飼い主と言われる所以では? なんて2人の空気をぶち壊してまで言えない隊員達なのであった。

  尚、この後ゾロゾロと隊長達が武道の周りに集まるので、猛獣使いや飼い主といった渾名は消えることは当分ない。

  [newpage]

  獣人バージョン みっち以外獣人で年齢差有

  武道はレンタル店で働くしがない26歳。毎日実家と店の往復だったところ、ここ最近は休みの過ごし方が少し変わってきている。

  休日の日に会える年の離れた友人達との邂逅が、ここ最近の楽しみだ。

  今日も昼過ぎの時間に家を出る。肩から少し大きめの鞄を引っ掛けて、いつも会う公園までの道をゆっくり歩いていると、後ろからドンッ! と勢いよく何かがぶつかってきた。

  「タケミっち!」

  ふわふわとした耳と似たような尻尾の猫獣人の佐野万次郎だったようだ。

  「マイキーくん、人にぶつかるのは危ないっスよ」

  「大丈夫だって! タケミっちにしかやらねェから!」

  「うーん……」

  そういう問題ではない気がするが、マイキーだから仕方ないと割り切る。武道によじ登りおんぶする形でマイキーを引っ付けたまま、公園へとゆっくり向かう。

  後ろからとたとたと幼い足音が2つ分聞こえてきた。恐らくいつも一緒にいるマイキーの幼馴染達だろう。

  「マイキー」

  「先に行くなよなー!」

  現れたのは漆黒と白金の猫獣人、場地圭介と明司春千夜だった。

  「圭介くん、春千夜くんこんにちは」

  「よっすタケミっち!」

  「……こんにちは」

  年齢が10以上離れているのにこの気安さ。舐められているのではなく、慕われていると思うことにして共に公園へと向かう。

  休みの日はよくこの3人に構ってやり、共に甘味を食べたり一緒に遊んだりしている。

  今日は甘味な気分だったようで、4人でベンチに座りながらたい焼きを食べていた。

  「やっぱここのたい焼きはサイコーだよな!」

  「ここの食っちゃうと他食べれねェよなぁ」

  「……タケミチさん、いつもありがとう」

  「いいよ、気にせず食べな」

  わちゃわちゃと楽しそうに食べるマイキーと場地、横で静かに食べてお礼を言う春千夜、これもここ最近の光景だ。

  「腹いっぱいになったら眠くなっちゃったなァ〜」

  ゴロリと武道の膝に寝転ぶマイキー。その横でずるいずるいと場地が騒ぐ。

  「なァタケミっち、撫でてよ」

  「いっっっつもマイキーばっか先にずりィ!」

  「はいはい。圭介くんも順番ね」

  始めにマイキーの髪を撫でてやる。両手を使ってわしわし暫く撫でているとマイキーがウトウトとし始め、ポンッ! と軽快な音と煙が出て、武道の膝元には一匹の子猫。

  猫獣人の子供はまだ人間の形を上手くキープできず、気が緩むと獣の姿になるという。スヤスヤと寝てしまったマイキーをそのままに脱ぎちらした服を丁寧に畳む。

  「次オレな!」

  ゆらゆらと揺れる場地の尻尾を見ながらマイキー同様に撫でてやる。マイキー同様暫く撫で続け、ゴロゴロと喉が鳴る音が徐々に弱くなっていくと、マイキー同様に音と煙が上がると獣の姿に戻って寝てしまった。折り重なるように寝る姿は猫団子。

  「タケミチさん……」

  「おいで、春千夜くん」

  場地の服も同様に畳み終わり2人の衣服を肩から下げていた鞄に入れると、控えめに春千夜が近寄って来る。いつもマイキーと場地が武道の周りをウロチョロして春千夜は一歩離れたところにいるが、こうして2人が静かに夢の世界に旅立つとヒッソリと近寄って来るところが可愛い。

  春千夜もマイキーと場地同様に撫でてやる。未だ春千夜の猫姿を見れたことは家の中でしかない。

  我慢強いこともいいことだが、自分の前くらい家の中みたいに緩んで欲しい。

  そう思うが、撫でられて気持ちよさそうにしている姿を見て、まぁ今はそれでもいいかと思う。

  

  「今日もこのまま起きなさそうですね」

  「こんだけ気持ちよさそうに寝てるとねぇ、いつもありがとうね春千夜くん」

  「……別に」

  彼らと知り合って知ったことだが、どうにも武道の撫でる手は眠気を誘うくらい気持ちいいらしい。

  武道のゴッドハンドに陥落した2人は起きないことが確定しているので、春千夜に2人の衣服を入れた鞄を持ってもらい、そのまま家に送り届けてやるのが恒例化している。

  そして春千夜の祖母宅に向かい、妹の千壽を迎えて武道の実家に泊まりに来るところまでの流れもできている。武道の母親と父親も小さく可愛らしい猫兄妹を気に入り、武道がいなくてもいつでも来ていいと言うくらいだ。

  「じゃあ、今日もよろしくね」

  「はい」

  日も暮れ始めて両手にマイキーと場地を抱えて立ち上がる。

  まずはマイキーを家に届けてやる。きっと誰かしらがいるだろうと踏んで、インターホンを押すと出てきたのは珍しい人物だった。

  「あれ、イザナくん今日はこっちなんだ」

  「タケミチか……」

  マイキーとは違い銀糸の髪から覗く猫耳は黒。マイキーの義兄で血は繋がっていない黒川イザナだが、佐野家長男の真一郎と同じ黒耳なので血の繋がりがないと言われなければわからない。

  「コイツ……また寝たのかよ」

  武道の腕の中で寝ていたマイキーの背中を一掴みして持ち上げる。それでもマイキーはすやすやと寝たままだ。気持ち涎が垂れているようにも見える。

  「服は……ありがとう、春千夜くん」

  春千夜はマイキーの服を持って立ってくれていた。イザナが顎で床を指すのでそのままソッと置く。服の上にマイキーも置いたと思ったら、スルリと武道に近寄る。

  「なァ……今度はハマに来いよ。案内してやる」

  「え、いいの? 一度行ってみたかったんだよね〜そしたらイザナくんの連絡先教えて」

  「あぁ、イイとこ連れてってやるよ」

  携帯のアドレス登録に夢中な武道を余所に、春千代に向かって勝ち誇る顔をする。黙ったままだった春千代の額に青筋が浮かんだ。武道に甘えて予定を聞いて、マイキー達と邪魔してやると心に誓った瞬間だった。

  「……できた、と。じゃあまた後で連絡するね」

  「またな」

  警戒する春千夜を連れて佐野家から引き上げる。家から出た瞬間に、マイキーの怒声とイザナの煽りが聞こえ、兄弟喧嘩をBGMに佐野家を後にした。

  次にやってきたのは場地の住んでいる団地。団地の入口で土遊びをしていたマイキー達より年下の子が駆け寄ってきた。

  「ばじさん! タケミっち!」

  「こんにちは、千冬」

  春千夜よりは黄色が強い耳と尻尾を持つ松野千冬。場地が寝てしまい、団地へ送り届ける時に知り合った子だ。

  初めは警戒して毛を逆立てていたのに、今では会う度に武道の足に引っついてくる姿が可愛らしい。

  「圭介くん寝ちゃったんだ」

  「タケミっちの手はきもちいいからしかたねェよなぁ。おばさんはいたはずだぜ!」

  「ありがとう」

  「タケミっち! こんどはオレともあそべよな!」

  「わかった、約束ね」

  片手で場地を抱っこしながら千冬の頭を撫でてやる。たったこれだけでゴロゴロ喉を鳴らすのだから、武道の手は猫獣人に対して何か出ているんじゃないかと思ってしまう。

  外も暗くなり始めているため千冬も家まで送り、場地も無事に家まで送り届けたので後は帰るだけだ。

  「よし、じゃあ千壽を迎えに行こうか」

  「……うん」

  今まで持ってくれていた鞄を受け取り、春千夜へと手を差し出す。その手を嬉しそうに控えめに握る姿はいじらしく愛らしい。

  武道はにやにやする顔を必死に抑えながら、春千夜と共に帰路へとついた。

  実は子猫達の間で、争奪戦が繰り広げられていることは全く知らない武道。

  今日も武道宅へと泊まる春千夜が、今のところ一歩リードといったところだろうか。

  後日、イザナに誘われ横浜に行った武道に着いてきたマイキー達にイザナがブチギレたり、武道の近所に居たという幼馴染の年下猫獣人がいて、争奪戦が混沌を極めるとは誰も予想していないのであった。