巨大狸がおならで世界を滅ぼしちゃうお話

  「げっぷぅ〜っ!お腹、はち切れちゃいそう〜っ!」

  まん丸に膨れたお腹を抱えて、巨大狸はずしんずしんと町の方へ近づいている。彼女が足を踏み締める度に、辺りに地響きが起こり、辺りの地面が陥没した。

  「いやぁ……参ったなぁ」

  その様子を見ていたリリカは、顔を青くしながら冷や汗を搔いていた。彼は今も懸命に戦っていたが、彼女の動きを一瞬たりとも止める事はできなかったのだ。

  「ひぃっ!」

  やがて、狸はリリカたちの方に顔を向けた。その顔を見て、周りの人たちも息を吞む。そこには大量の食べ物を詰め込んだ巨大なお腹が鎮座していたからだ。

  「……げっぷぅ〜っ!人間さん、みーっけ!」

  狸がリリカに巨大な手を振り下ろそうとしたその時──

  ぶううっ!!

  轟音。それと共に辺りに充満する硫黄臭。巨大狸がおならをしたのだ。その臭いは辺りにいる人全員を悶絶させるものだった。

  「あ、あらあら……ゴメンなさいね♪」

  巨大狸は悪気なくそう言うと、そのままリリカから離れていった。彼女が一歩歩みを進める度に地響きが起きて、辺りの地面が陥没する。

  やがて巨大狸の後ろ姿が小さくなった時──リリカはやっと事態を把握した。

  「ひどい臭い……一体、何食べたらこうなるんだ?」

  彼女は呆然とした表情で、そう呟いた。

  「は、早く……みんなの所に行かないと……!」

  巨大狸が去った後、リリカは顔を青くしながら呟いた。

  (このまま町まで戻れば……)

  リリカの脳内に、皆の事が過ぎる。しかし──

  ぶうっ!

  再度、巨大狸のおならが辺りに充満する。その臭いを嗅いだ瞬間、リリカの身体は完全に動かなくなってしまった。

  (身体が動かないっ!?まさか、あいつの……)

  「げっぷぅ〜っ!人間さん、みぃつけた!」

  リリカが動けないでいると、巨大狸が彼女の元に戻ってきた。彼女はそのままリリカに巨大な手を振り下ろすと──

  ぶうっ!ぶうぅぅっ!!

  先程のおならを何倍にも強めたような悪臭が辺りに充満し、辺りの人々は次々と気絶していく。

  「はうぅぅんっ!?」

  もう既に気を失っていたと思われるリリカだが……この臭気には耐えられなかったらしい。目をひん剥き、口をあんぐりと開けて白目を剥きながら気絶してしまった。

  「あら?ちょっとやりすぎちゃったかしらぁ〜?」

  狸は呑気にそう言いながら、リリカから手を放した。

  「げっぷぅ〜っ!あ〜……食べた食べたぁ〜」

  巨大狸は満足そうにお腹を撫でると、そのまま町とは反対方向に進んでいった。

  その後──町では“正体不明の巨大狸による被害”が後を絶たなかったという……。

  *****

  おならで町を一つ潰したことで、巨大狸は更なる悪だくみを思いつく。もーっと大きいおならをすれば、世界もろとも滅ぼせるのでは?そう考えた巨大狸は、手始めにこの世界の中心にある王都でおならをすることにした。

  「げっぷぅ〜っ!……ぷふぅ」

  町を潰した時よりも、さらに強力になったガスの臭いが王都に広がる。人々はすぐに意識を失ってしまったが……その被害は町以上だった。

  そして巨大狸は再び町の方向へと歩いていき、残ったものもすべて吸い込んでしまったという。

  「げふぅ〜っ!これで全部、吸い込んじゃったわぁ」

  巨大狸が満足げに呟くと、彼女のお腹は更に大きく膨らんでいく。

  「げっぷぅ〜!お腹いっぱい〜♪」

  満足そうにお腹をポンッと叩くと……巨大狸のお尻から大きなおならが放たれる。

  ブブゥウウッ!!!

  「あらぁ?まだ残ってたみたいねぇ?」

  巨大狸がお尻をくい、と動かすと……辺りに充満していたおならのガスは消え去った。それと同時に、お腹はさらに膨らんでいく……。

  「げっぷぅ〜っ!まだまだ出ちゃうわぁ〜」

  ブウゥッ!!ブブッ!!ブウウゥゥッ!!!

  おならを出し続ける巨大狸。どんどんお腹が膨れていき、周りの建物は押し潰される。そうして王都の大部分が彼女のお腹に呑み込まれた頃──

  「げっぷぅ〜っ……もう全部、吸い込んじゃったわ」

  巨大狸は満足そうにげっぷをした。既に彼女のお腹は王都よりも大きく膨らんでいる。そして……そこから放たれるおならは、もはや“臭い”という言葉で済まされるようなレベルではなかった。

  「げっぷぅ〜っ!あっ……」

  ブブッ!!ぶすうぅぅっ!!ぶすぅううぅぅ〜〜〜ッ!!!

  その音は、まさに『終末』を現しているような轟音だった。おならの風圧は町や王城をも吹き飛ばし、巨大なクレーターが生まれる。

  巨大狸は更にお腹を大きくして、どんどんガスを出し続けている……。

  「げっぷぅ〜っ!まだ出ちゃうわぁ〜」

  ぶすうぅぅっ!!ばふうぅうっ!!ぶすぅううぅぅ〜〜〜ッ!!

  一度火のついた巨大狸のおならは止まらない。爆発にも似た轟音と共に、凄まじい量のガスが王都を呑み込んでいき──

  やがて、大気はあっという間に巨大狸のおならに包まれた。王都は見る影もなく……彼女のおならの臭気で埋め尽くされている。

  「げっぷぅ〜っ!あらぁ?もうないのかしらぁ〜」

  巨大狸が満足げにそう言うと、辺りから焦げ臭い臭いが漂い始めた。巨大狸のおならは超高温なのだ。彼女のお尻の下にあった王都は、その超高温によってあっという間に燃え落ちてしまった……。

  「げっぷぅ〜っ!美味しかったわねぇ」

  お腹をポンッと叩きながら満足そうに言う巨大狸。滅びた世界で彼女を止めるものは、もう何もない。

  「げっぷぅ〜っ!それじゃ、次の町を滅ぼしに行きましょ〜♪」

  巨大狸はお腹をポンッ、ポンッと叩きながらそう言うと……王都があった場所から歩き始めた。

  おならで世界を滅ぼす、おならの魔獣『デブデストロイア』。その彼女の次の目的地は──。