ヒーローにヤられたくて

  僕が住む街には、ヒーローがいる。

  「ガッハッハ!正義は必ず勝ーつっ!」

  豪快に笑うのは、黄色をベースにして稲妻の形の黒い縞模様が入ったヒーロースーツを身にまとった虎獣人。その名は、ヒーロー・ボルテッカー。

  名前の通り電気を操るヒーローだけれども、主な戦闘手段は肉弾戦。2mを超える筋骨隆々の体躯が電気刺激によって活性化されて、大岩すらも軽々と持ち上げるパワーと車すら容易に追い抜くスピードが生まれる。そして、主な手段が肉弾戦というだけで、肉弾戦が効かない相手には凄まじい雷撃を放つこともある。国内に5人しかいないプラチナランクのヒーローのひとりであり、紛れもなくスーパーヒーローだ。

  そんなヒーローに、僕は憧れている。

  ……いや、憧れているというのは適切な表現じゃないと思う。あの丸太のような脚、力溢れる腕、張り出した胸、股間の膨らみ、揺れる尻尾……とてもエッチだ。

  そう。僕は、ヒーロー・ボルテッカーを性的な目で見ている。豪快で性欲の強そうなあの巨体に抱かれたいと、思っている。ボルテッカーのフィギュアやポスターだけでなく、性行為が書かれた薄い本や、コスプレしたそっくりさんが出てくるAVなんかも持っている。このそっくりさんが本当に激似で、しかも町のハッテン場とかにも現れるって聞いたから一度行ってみようかとも思ったんだけど、そっくりさんは所詮そっくりさんだから、抱かれたところで重ね合わせて幻滅するだけだろうなぁと思って結局のところ行ったことはない。

  ヤるならやっぱり、そんな偽物じゃなくて本物がいい。でも、ごく普通の一般人である自分が、ボルテッカーとそういうことをする特別な関係になれるわけがない。というかそもそも、ボルテッカーにそういう浮ついた話とかが全く出てこない。これは、市民のことを守るヒーローだからこそ全員を平等に扱い、誰かを特別扱いすることは無いってことなんじゃないだろうか。

  だから僕は、普通の一般人をやめることにした。

  ・

  ・

  ・

  円形の板に棒が通ってるだけのシンプルな昇降機。部屋の中央に降りてくるよう設計されたそれに乗って、ボルテッカーが降りてくる。

  「そこまでだぜ!Dr.リーク!」

  よく通る声が、科学者の象徴である白衣を身に纏い、仮面舞踏会で付けるような黒いドミノマスクで顔を隠した僕の名前を呼ぶ。ただ名前を呼ばれただけでも歓喜が溢れてくるけれど、今の僕は見て分かる通り、悪の組織のドクター。だからそんな気持ちは表情に出せずに冷静に言葉を返す。

  「ヒーロー・ボルテッカー。なんの用だい?」

  「とぼけんな!お前が怪人達を巨大化させて街を襲わせてんのは分かってんだぞ!」

  「ボルテッカー、残念だけどそれは間違いだよ。足元を見るといい」

  「なにっ!?」

  ちゃんと見えるように、薄暗い部屋の明かりを強くする。ボルテッカーの足元、床一面に広がるのは、1/50スケールに縮小されたこの街のミニチュア。円形の昇降機は、その中央に下りてきていた。

  ただし、これはただのミニチュアじゃない。

  「目を凝らしてよく見てみるといい。今のボルテッカーこそ、突如街に現れた巨大怪物だ。ゴミのような人間たちがうじゃうじゃといるだろう?」

  「な、これって……」

  「このミニチュアは現実と連動している。もしボルテッカーが一歩踏み出せば、それだけ街が踏み潰されるということだ。ちなみに、街の人間たちには現れた怪物が誰なのか分からないようにフィルターをかけているから、現れた怪物がボルテッカーだと気付く者はいない。だからもし、怪物のフリをして街を蹂躙したいのであれば、思う存分暴れるといい。5センチにも満たない人たち、くるぶしよりも低い家並み……全部踏み潰してしまってもいいんだぞ?」

  「ふざけんなっ!!」

  怒声を上げてこちらを睨むボルテッカー。

  あぁ堪らない!その憎悪が、後に僕を蹂躙する原動力となるのだと思うと、興奮して仕方がない!!

  「おっと、一足飛びに僕のところまで跳躍して僕を倒そう、なんて思わないほうがいい。この建物では僕の脳波を計測していて、僕が意識を失うと炎上するように設計されている。そうなったとき、果たしてこの街が無事で済むかな?」

  「こんなこと……Dr.リーク、なにが目的だ!」

  「目的、目的ねぇ。3つ、君が僕の命令に従ってくれたら、教えてあげよう。その時はこのミニチュアもこの場から消してやると約束する」

  「本当だな?」

  「仮に嘘だとしても、この状況下では君は従わざるを得ないだろう?まぁ安心していい、約束は守るよ。僕は悪役ではあるけれど、下衆ではないんでね」

  「……わかった、言うことを聞いてやる」

  命令に従うといいつつも、瞳の奥に闘志は燃え続けているし、隙さえあればいつでもお前を倒してやるという気概も伺える。

  それでこそ、僕がよく知るヒーロー・ボルテッカー。どんな困難にも立ち向かうその姿を見ていると、嬉しくなってくる。

  でも、ここでは容赦しないよ。

  「ひとつめは簡単だ。ヒーロー・ボルテッカー、着ているものを全て脱げ」

  「は?」

  「あぁ、マスクとテールリングは外さなくていい。それはヒーローの力の源だろう?一般人に戻った君を相手にしても、何の面白みもないからな」

  手近にあったドローンにカゴを乗せて、ボルテッカーの近くへと飛ばす。それでも、ボルテッカーは何を言われたか理解が出来ていないようで、唖然としている。

  まさか、ヒーロー・ボルテッカーともあろうお方が、街と服を天秤にかけて服を選ぶなんてことはないだろ?

  「服を脱げと言ったんだが、聞こえなかったのか?それともまさか、街の人間たちに裸を見られるのが恥ずかしいなんて言うのか?生娘じゃあるまいし。いいか、服はそのカゴに入れるんだ」

  「ぐっ……わかった」

  ゆっくりと、ブーツを脱ぎ、手袋を外す。スーツに手をかけて、逞しい肢体を露にしていく。そして、最後の砦であるパンツもカゴに入れ、ボルテッカーは僕のことを睨む。

  「これで、いいだろ!」

  「あぁ、十分だ。なかなか立派なものをお持ちじゃあないか」

  「ぐっ……」

  実際はなかなか立派どころじゃない、まごうことなき巨根だ。スーツの膨らみのサイズから大きいことは予想していたけど、ここまでとは。

  ……ちゃんと入るかな。不安になってきた。

  「それじゃあ次の命令だ。ボルテッカー、そこでオナニーをしろ」

  「なっ、そんなこと出来るわけないだろ!」

  「口答えできる立場だと思っているのか?今すぐこの街を壊してもいいんだぞ」

  「ぐっ……」

  「いや、ただ壊すだけじゃ芸がないか。例えば、貴方が脱いだこのヒーロースーツで街を覆ったうえで潰してしまうというのはどうだろう。ここに来るまでに下っ端たちとの戦闘があったせいで、貴方の雄臭さと獣臭さが染み込んだこのスーツの下敷きになった群衆たちは、どんな気持ちで死んでいくのだろうな。あるいは、逃げ惑う人間たちを捕まえて、貴方のブーツの中に放り込んでいくなんていうのも、余興としては面白いかもしれないな」

  「やめろっ!!」

  「やめて欲しいなら命令に従え。こんな状況じゃ勃起しないというなら、媚薬を渡してやる」

  ドローンに小瓶を乗せて、ボルテッカーの元へと飛ばす。この媚薬は本来薄めて使うものだけど、ヒーローは毒物に耐性があるから、薄めてしまうと効果が出ない危険性がある。だからあの小瓶に入っている媚薬は原液だ。

  まぁ、毒耐性が無かったとしても原液を使ってたけど。ボルテッカーの強靭な精神を揺さぶるには、少し発情させた程度じゃ全然足りないだろうし。

  反抗できないボルテッカーは、僕の手のひらの上で踊らされていると分かりながらも、その小瓶を手に取って媚薬を嚥下する。即効性のある媚薬はすぐに体内を駆け巡り、顔が紅潮して息が荒くなっていくと同時に、巨根の頭が持ち上がり始める。

  「はぁっ……くそっ」

  「自慰を始める前に言っておくが、自分の手の中に射精するのは許さないからな。ちゃんと街に向けてぶっ放すんだ」

  「ふ、ふざけやがって……そんなこと出来るわけが……」

  「いくらボルテッカーといえど、あの媚薬を飲んで長時間我慢が出来るとは思えないがね。それに、自分のチンコをよく見てみることだ」

  ボルテッカーのチンコは既に完全勃起で悠々と天を突いており、その先端からは精力の強さを表しているかのように大量の先走り液が溢れ、地面へと糸を引いている。

  そう、地面へと垂れているのだ。

  「時間をかけるほど、街が君の先走り液で汚されていくぞ。今、その先走り液が垂れている位置に人はいないだろうが、その範囲が広がっていったら果たしてどうかな?」

  「くそっ、どうしたら……」

  「往生際が悪いね。さぁ、街を破壊に導くオナニーショーを見せてくれ!ザーメンの雨を街に降らせてもらおうじゃないか!」

  時間をかけるのは愚策だと判断したらしいボルテッカーの手が、おずおずとチンコを掴む。そしてグチュグチュと先走り液を絡ませながら大きなストロークで扱いていると、段々と息が荒くなってくる。

  「ふぅ、あぁ、くそっ、なんで……」

  なんで、に続く言葉は、『なんでこんな状況下なのに気持ちいいんだ』だろうか。一度始めてしまったオナニーは止まらず、ボルテッカーは一心不乱にチンコを扱く。

  そして僕は、嘲りの言葉や動揺を誘う文句を口にするのも忘れ、その痴態を目に焼き付けていく。

  僕は今、憧れのヒーローのオナニーショーを見てる……

  その姿はとても欲情的で、リアルで、画面の向こうのそっくりさんなんか比べ物にならない。表情、息遣い、腕や胸の筋肉の盛り上がり、先走りの絡む水音、強烈な雄の臭い……そのすべてが、ボルテッカーというヒーローが僕の目の前でオナニーをしているということを実感させてくれる。

  みんなの憧れ、街を守る正義のヒーロー。そんな自分が、戦闘で流れるような血や汗じゃなく、雄の欲望そのものである精液で街を汚すというのは、どんな気持ちなんだろう。

  絶望して後悔するだろうか。憎悪の炎を僕に対して燃やすだろうか。それとも、快感に目覚めてしまうだろうか。

  「グルゥ……わりぃ、みんなっ…」

  ボルテッカーは小さくそう呟く。そして、手を動かすスピードを上げてラストスパートをかける。

  「ぐぅ、イくっ!!!」

  宣言とともに、ボルテッカーの巨根から大量の精液が噴き出す。それは大きく弧を描いて街に

  ボボボンッ!!!

  なっ!?爆発した!?

  爆発に気を取られ、立ち昇る白煙に視界を遮られた。プラチナランクのヒーローは、たったそれだけの隙すらも見逃さない。媚薬に汚染されて蕩けた思考と射精後の賢者モードのなか、発射した精液が街に着弾する前に寸分違わず電撃を打ち込み爆発させるという離れ業をやったのだと気付いた時には、既に手遅れだった。

  「勝負ありだ」

  背後から声が聞こえる。直後に首を掴まれ、ストンと体の感覚がなくなって立っていられなくなり、崩れ落ちそうになる体を太い腕が支えたのが見えた。

  「なっ、何が起こっている!?」

  「はぁ、はぁっ……ったく、手間取らせやがって。Dr.リーク、お前が普通の人間で良かったよ」

  「なんだと?」

  「獣人は毛が邪魔で繊細な電気操作ができないし、異形の怪人はそもそも体の構造が分からないからな」

  「電気信号か……!」

  「理解が早くて助かるぜ。俺は今、この体の首から下に向かう電気信号の流れを遮断してる。もう勝ち目はないぞ」

  「電気使いであることは把握していたが、まさかそんなことまでできるとはな……流石、プラチナランクのヒーローだ。怪力と雷撃だけが取り柄の脳筋ヒーローではなかったというわけか。卑怯な手を使うものだな」

  僕の言葉に対し沈黙するボルテッカー。卑怯だという自覚があるんだろうか。あぁいや、解釈違いとかそういうわけじゃないしむしろ新しい一面が見れて嬉しいというか、街を守るために最適な手段が瞬時に行使できる判断力と胆力はさすがだしさっきの神業と合わせて惚れ直したっていうか、ネガティブな感情なんて一切抱いてないんだけど悪役の自分にはそれを伝える手段がない!!!

  「まぁいい。さっき貴方は勝負ありだと言ったが、ここから何が出来る?炎上装置を切るよう脅して拷問でもするのか?」

  沈黙を破りつつ、方向性を示す。

  実際、電気というのは最も拷問に優れた能力のひとつと言っても過言じゃない能力だ。外傷を残さずに激痛を引き起こすことができ、目視できないから恐怖心を強く煽ることが出来る。

  これは博打だ。ここで、本当に拷問を始めるというなら僕の負け。自分の要求を通すために相手を痛めつけるなんて行為は、いくら相手が悪役だろうとヒーローがしていいことじゃない。そんなヒーローは居ないほうがいい。解釈違いの絶望は、僕たちと街を業火で燃やし尽くすだろう。

  「策も無しにあんな勝利宣言するかよ」

  内心ドキドキな僕に対し、ボルテッカーはさらりとそう言うと、腕の代わりに尻尾で僕の体を支え、自由になった腕を僕の目の前に晒した。

  「これ、見えるか?」

  その腕、正確にはその手のひらの中にあるのは、見覚えのある小瓶。中はほぼ空だが、逆さにすれば数滴は出てきそうだ。

  ちょっと待て、これは……

  「な、なにをする気だ!?」

  「ドクター、あんた享楽主義者だろ。俺がオナニーしてるときにあんたも勃起してたこと、気付いてないと思ってたのか?」

  「それはっ……」

  享楽主義って、ようは快楽主義だよな?本当はそうじゃなくてボルテッカーが大好きだからなんだけど、そんなことを言えるはずもなく、口をつぐむ。

  僕が言い返せないことを肯定と捉えたのか、ボルテッカーはさらに言葉を続ける。

  「気持ちいいこと、好きなんだろ?俺のことを見て、興奮するんだろ?ならやっぱり、この勝負は俺の勝ちだ」

  勝利宣言をしたボルテッカーは、小瓶に残ったわずかな媚薬を口に含む。そしてその試薬に塗れた舌先を、僕の口の中に突っ込んできたのだ。

  「!!?」

  唐突なディープキス。力強い舌は僕の抵抗なんか許さず、口内を暴れまわって媚薬を飲ませていく。それだけでなく、大量の唾液が流し込まれ、吐き出すことが出来ずに媚薬と一緒にそれを呑み込んでいく。

  そんな口内を蹂躙するような長い長いディープキスが終わると同時に首を掴んでいた手が離れ、俺の体は床に崩れ落ちる。

  「毒耐性のある俺にこれだけ効果が出る媚薬だ。普通の人間であるドクターなら、あれだけの量でも効果てき面だろ」

  「はぁっ、その、通りだよ……まさか自分が飲むことになるとは、思わなかったがね」

  「体の感覚が無かったから気付かなかっただろうが、服も脱がせておいてやったぜ。スイッチの類は持ってなかったようだが、念のためな」

  「はっ?」

  キスの余韻に浸ってた僕は、そう言われて初めて自分が裸になっていることに気付く。

  というかちょっと待て!この展開は想定外!

  最後の命令で僕を抱くよう指示して誘惑して、薬で判断力の低下したボルテッカーとレイプじみたセックスをして、それでたとえこんな酷い形でもセックスをしたっていう思い出を貰って満足しようと思ってたのに、なんでこの人は俺のことを気持ちよくしようとしてるわけ!?

  混乱してる俺に、大きな影が落ちる。見上げると、見せつけるように巨根を晒したボルテッカーがニヤリと俺を見下ろした。

  「ほら、これが欲しかったら炎上スイッチを解除しろ」

  「なっ……」

  「なんてな。まだ、そんな命令が通じるとは思ってねぇよ。まだ、な」

  ……危ない。普通に解除するとか言っちゃいそうだった。

  でもボルテッカーのこの表情。ボルテッカーが笑う時、だいたいは吹き飛ばすような豪快な笑い方をするけれど、稀に見せる口角を上げてニヤリと笑うその顔は、主に劣勢の時に見ることが多い。面白くなってきたと思って思考を巡らせ、思いついた作戦を実行しようとしているときの顔だ。ずっと見続けてきた僕にはわかる。

  つまり、僕はまだ負けてない。それならば、悪役を続けないといけない。

  僕はボルテッカーを見上げると、キッと睨みつける。

  「ふざけるなよボルテッカー。誰がそんなものを欲しがると……」

  「俺にあんな命令をしたくせに、説得力が皆無なんだよ」

  「僕は、貴様の無様な姿が見たかっただけだ。殴る蹴るの暴行じゃ、いつも通り過ぎて面白くないだろう?実際、普通の暴行より性的暴行のほうが効果があるというデータだってあるんだ」

  「あれが性的暴行?ただのオナニーじゃねぇか」

  「衆人環境で性行為を強制させられることは立派な性的暴行だろう。ヒーローの品位を落とすような行為は、ヒーローの体現者であるボルテッカーにはさぞ効果的だと思ったんだが、勘違いだったかね」

  「それを期待したのなら手法を誤ったな、Dr.リーク。あの状況じゃ、どうすれば要求を飲みつつ街に被害を出さないかを考えるのが最優先だ。俺の保身なんてのは二の次なんだよ」

  一片の迷いもなくきっぱりとそう言い切ったボルテッカー。その堂々とした姿に、反論することすら出来ずに見惚れてしまう。

  あぁ、なんて眩しいんだ。貴方は僕が思っていたよりもずっと、誇り高いヒーローだ。

  そのまっすぐな正義に魅せられて、汚れた欲求でボルテッカーを穢そうとした自分の行動が酷く惨めで愚かに思えてくる。これが悪堕ちの逆、光堕ちというやつなんだろうか。

  もし、ボルテッカーが僕のことを犯して快楽堕ちさせて言うことを聞かせようとしているのだとしたら、もうそれは必要ないだろう。こんなにも偉大なヒーロー相手に、こんなにも卑劣な悪役が、犯してほしいだなんて、烏滸がましいにもほどがある。

  「流石、ボルテッカー。完敗だよ」

  僕はそう伝えると、顔を隠していたドミノマスクを外す。このマスクが、僕の脳波を測定していた炎上スイッチだ。

  「お前、どういう……」

  「このマスクが、炎上のスイッチだ。これを外してしまえば、もう僕の手元に交渉の材料は残ってない。焼くなり煮るなり好きにするといい」

  そうは言うものの、ボルテッカーが無抵抗に降伏を宣言した相手に暴力をふるうことは無いだろう。脱がせたヒーロースーツは後ろのカゴの中に入っているし、もう僕に用は無いはず。

  ……そう思っていたのだけれど。

  「ほぅ、俺の好きにしていいんだな?」

  僕と目線を合わせるようにしゃがんだボルテッカーが、またしてもニヤリと笑う。

  え、その笑い方は、でも、もう終わったんじゃ?

  「それじゃあ、こうなった責任を取ってもらおうじゃねぇか」

  そう言って立ち上がると、グッと巨根を僕の顔に突きつける。その行動に困惑していると、ボルテッカーはさらに言葉を続けた。

  「さっきお前は俺のことをヒーローの体現者だって言ってたな。それ自体は間違ってねぇ。俺はヒーローであることを誇りに思ってるし、常にヒーローとしての行動を心掛けてる……だからエロいことはしないって?そんなわけないだろ。むしろ俺みたいな雄の獣人がエロいことしてなかったら、それこそ不健全ってもんだ」

  「なに言って……」

  「俺のことをエロい目で見てんなら知ってんだろ、俺のそっくりさんが出てるAV。あれ、そっくりさんじゃなくて俺自身なんだぜ?」

  「はぁっ!?」

  「ボルテッカーの浮ついた話は聞かねぇだろ?そういうのは全部、そっくりさんがやったことにしてるんだよ。俺に似た奴がハッテン場で食い荒らしたとか、デリした相手を抱き潰したとかいう話、一時期話題になってただろ。あれも全部俺自身だ」

  開いた口が塞がらない。そんな、だって激似だけどスーツから出てる尻尾の模様が微妙に違うし、そもそもわざわざAVに出る理由なんて……

  いや、模様をボディペイントで変えるのはそんなに難しいことじゃない。尻尾だけならなおさらだ。それに、激似な奴がいるっていう噂だけだとやっぱり本人なんじゃないかって考える人は出てきちゃうけど、実際に作り上げて公開して有名にしてしまえば疑う人は居なくなる。現に、双子説はあっても本人説は聞いたことが無い。

  こう考えてみると確かに合理的だ。でもそれでも、分からない点がひとつ。

  「そんなことを僕にバラして良かったのか?悪の組織の博士がボルテッカーに犯されたって言ったら、さすがに偽物説は使えないだろう」

  「悪の組織の博士が警察に駆け込んだとして、誰がその話を信じるんだよ」

  「それだけじゃない。ボルテッカー、というかヒーローは、ヒーロー本部と住居が特殊な地下通路で繋がってるから住居がバレることはないけど、偽物であれば簡単に特定できるんだぞ」

  「へぇ、地下通路のことまで知ってんのか。ただヒーロー協会の方針がそれってだけで、俺自身はバレてもいいと思ってんだよ。襲いに来たら返り討ちにするだけだ。もっとも、お前がウチに来るとしたら、襲われに来る形だろうけどな。さて、話はここまでだ。その口は喋ることじゃなくてしゃぶることに使ってもらおうか」

  「っ!!」

  突きつけられていた巨根が、さらに僕の顔に近付く。蒸れた雄の臭いに発情を促された僕は、手が回りきらないほどに太い竿を掴むと、その先端に舌を這わせた。

  ペロペロと、先走り液を味わうように舐め、吸い付く。この亀頭の大きさは、上の口で咥えるのは難しそうだ。

  抱かれることを想像しながら後ろを弄ることはあるけど、フェラチオの練習をしたことはほとんどない。こんな拙い舌使いで気持ちよくなってくれるだろうか。そう思って見上げると、発達した胸筋越しに僕のことを見下ろすボルテッカーとバッチリ目が合った。

  「へへ、いい顔するじゃねぇか。やっぱりレイプ紛いのセックスよりも、俺のことが好きだってアピールしてるやつを抱くほうが気持ちいいからな」

  そう言って大きな手で僕の頭を掴むと、チンコから僕の顔を離してグッと上を向かせる。確かに今の僕は、そういう顔をしているかもしれない。

  そんな僕に対して、ボルテッカーはひとつ質問を投げる。

  「ドクター、お前後ろは使えんのか?」

  このあと当然犯されるものだと思っていた僕は、その質問にキョトンとしてしまう。そんな表情を見たボルテッカーが、顔を顰めた。

  「なんだよ、変なこと聞いたか?」

  「あぁいや、まさかそんなことを聞かれるとは思わなくて。じゃあ三つ目、最後の命令だ。僕のことを抱いてくれ、ボルテッカー」

  「……なるほどな、じゃあ遠慮しないぜ」

  ボルテッカーは僕のことを仰向けに押し倒すと、脚の間に入って、唾液で湿らせた指を一本、僕の中に挿入する。

  元々、レイプ紛いのセックスをする予定だったんだ。慣らしてもらうことや潤滑剤を使ってもらうことは想定していなくて、壊されないように、すぐに挿入されてもいいよう後ろの準備は万全だ。ただ、僕のことを気持ちよくしようとするのは想定外だ。

  「あ゛っ!!」

  「ここだな、お前のイイところ」

  ぐるぐると僕の中を動く指が前立腺に触れ、喘ぎ声が漏れる。ボルテッカーはそんな僕の様子を見つつ、指を増やし穴を拡げながら断続的にそのしこりを攻め続ける。

  「キュンキュンと雄に媚びて、分かりやすいじゃねえか」

  「そんな、ことっ……」

  「違ぇだろ。気持ちいいときは気持ちいいってちゃんと口に出すほうがずっと気持ちいいんだぜ。享楽主義なんだろ?ほら言えよ、気持ちいいって」

  「ん゛っ!き、気持ちいいっ……!」

  グッと中のしこりを押すと同時に、言葉を強要する。言われた通りの言葉を口にすると、この行為が気持ちいいものだと頭も体も認識し始めて、ボルテッカーの言う通り、本当に気持ちよさが膨らんでいく。

  攻められるたびに何度も気持ちいいと繰り返して、その快感が蓄積していく。そしてイきたいと思って本能的にチンコに手を伸ばしたところで、ボルテッカーの手が僕の手首を掴んだ。

  「そう慌てるなよ。独りでやるよりももっと気持ちいい思い、させてやるからよ」

  ボルテッカーは指を引き抜くと、巨根の先端を穴に当てる。そして、ゆっくりと侵入してきた。

  指で慣らしたとはいえ、その規格外のデカさを受け入れるのはかなりキツイ。今まで感じてた気持ちいいよりも強い圧迫感が勝ってしまって顔を上げると、荒い息を吐きながら真剣な表情で慎重に腰を進めるボルテッカーの姿があった。

  「ボル、テッカー……?」

  「キツイか?」

  「ん、だい、じょうぶ」

  「ならいい、続けるぜ。ぐっ……」

  僕の声で一度止まったボルテッカーの腰が、苦しそうな声と共に再び動き出す。

  さっきまで普通に会話していたから失念していたけど、ボルテッカーは媚薬の原液を小瓶一本分飲んでるんだ。当初僕が予定してたみたいに、自分がイくためだけにレイプのように乱暴に腰を振っても何もおかしくない。相手が悪の組織の人間ならなおさらだ……それなのに、こんなゆっくりとした速度で挿入するのはなんでだ?

  困惑する僕を襲う、グッと、強く当たる感覚。入るとこまで入ったらしい。

  「ふぅ、お前の中ヤベぇな……気を抜いたらすぐにイっちまいそうだ」

  「なんで……」

  「あん?」

  「なんで、こんなに、優しく抱いて、くれるの?僕、悪の組織の幹部だぞ?」

  「確かにお前は悪の組織の幹部だが、あんな熱のこもった目で俺を見てくる奴を手酷く抱くなんて、できるわけ無いだろ」

  「そんなっ……」

  「嘘つかなくていいぜ。お前、気持ちいいことが好きなんじゃなくて、『俺と』気持ちいいことしたいんだろ」

  確信を持って言われたその言葉を耐えられず、視線をそらす。実際にその通りなんだけど、ボルテッカーから直接言葉で告げられるとどうにも恥ずかしい。

  「照れてんのかよ、可愛いじゃねぇか。そろそろいいだろ、動くぜ」

  入っていたものが、引き抜かれ、また突き入れられる。最初はゆっくりだったその動きが段々と早くなっていき、突かれるたびに僕の口から喘ぎ声が漏れる。

  「あっ、あっ、んあぁっ!」

  「気持ちいいだろっ!?おら、正直に言ってみろよ!」

  「んっ、すきっ、ボルテッカー、大好きっ!!」

  「っ!!」

  その瞬間、僕の中にあるチンコがガツン!と思いきり突き入れられる。その直後、グッと大きく膨らんで、大量の精を放った。

  「〜〜〜〜〜っ!!」

  未知の領域を攻められ、そこを犯された僕は、声にならない声を上げ、大きくのけ反って絶頂し、触れてもいないちんこから射精し、自分自身の腹を汚す。絶頂から下りてきて、軽く息を整えて見上げると、視界の先にいるボルテッカーが呆れたように話しだした。

  「……あのなぁ、正直に言えってそういうことじゃねぇんだよ」

  「へ?僕、なんか変なこと言った?」

  「俺のことが好きだって」

  「なっ……えっ?」

  「無意識って、つまり本心かよ」

  「う……」

  「そんな可愛いことされたら、抑えが効かねぇじゃねぇか」

  「んっ!?」

  ボルテッカーが腰をグリっと動かすと、既に硬さを取り戻しているソレが僕の中を抉る。

  え、もう復活してんの!?

  その動揺を見透かしたかのように、ボルテッカーは不敵な笑みを浮かべる。

  「最強のヒーローに薬を盛ったうえで据え膳として現れたんだ。一晩で済むと思うなよ?」

  ボルテッカーはそう言うと、僕を貫いたまま体を起こして対面座位になる。咄嗟に首に手を回したけれど、自重でより深く咥えこんでしまい、抑えきれない声をあげてしまう。

  「あ゛ぁ゛っ!」

  「いい声で鳴くじゃねぇか。その声、もっと聞かせてくれよ」

  ボルテッカーの指が乳首に触れる。乳首は今まで触れたことが無いし、気持ちよくなることは無いと考えていたところに、突如として強烈な刺激が走った。

  「がっ!??」

  「ん、こっちは全然か。苛めがいがあるってもんだ」

  「な、なにを……」

  「電気刺激だ。どんどん敏感になってくからな、いずれは触れただけでイくようになるぜ。楽しみにしてろよ」

  そう言うと、ボルテッカーは乳首への刺激を再開する。

  ボルテッカーのチンコは萎えることなく常に僕の中を刺激し続けているけれど、突かれることはなく、イくほどの快感が叩きつけられることはない。

  一方で、延々と弄られている乳首は敏感になって、本当に快感を得始めていて、声を抑えることが出来ない。

  「あっ、ん、んっ……」

  「声、漏れてるぜ。気持ちいいんだろ」

  「ちがっ……」

  「ほら言えよ、乳首気持ちいいって」

  「あ゛ぁっ!ち゛くび、きもちいい゛っ!」

  バリッ!と強めの電気が流され、言われた通りに宣言をさせられる。そんなことが幾度か続き、とうとう、絶頂感が込み上げてくる。

  「た゛めっ、らめてっ!」

  「おっ?」

  「イく、イっちゃうか゛らっ!」

  「いいじゃねぇか、イけよ。おらっ!」

  「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

  一際強い電気を流され、大声を上げて絶頂する。今度は僕だけじゃなくボルテッカーの腹も汚しつつ、精を吐き出していく。そして、乳首への刺激でイってしまったということに呆然としてしまう。

  そいうかそもそも、ボルテッカーはなんで、媚薬を飲んだ状態で自分がイくよりも僕をイかせることを優先するんだよ。ヒーローだから毒物を排出する代謝も早いのか?でも2回イってなお萎える様子の無いチンコは、確実に媚薬の影響だと思うんだけども。

  そんなことを考えていると、僕の中に埋まっているそのチンコがビクンと動いた。

  「!?」

  「そんなに驚いた顔すんなよ。俺がイってないんだからこれで終わるわけないだろ?」

  ボルテッカーはそう言うと、僕を貫いたまま立ち上がる。さらに奥深くに食い込むイチモツに体を震わせていると、ボルテッカーは片腕と尻尾で軽々と僕の尻を支え、空いた手で僕の顎を掴んで上を向かせると、強制的に視線を合わせた。

  「ベッドはどこだ。ここでヤったら壊しちまうかもしれねぇから移動すんぞ」

  震える腕で奥の部屋を指差すと、ズンズンとそこへ向かう。

  ベッドに下ろされたあとはすぐさま容赦のない種付けプレスから始まり、正常位で再度乳首を弄られながらイかされまくった後は後背位でオナホのように扱われた。その後の背面立位が一番ヤバくて、身長差のせいで僕の足は完全に浮いてるのに両手首をまとめて掴まれて、ボルテッカーのチンコが僕の全体重をほぼ支えているような状態で、腰の力だけで犯され続けた。その間も器用な尻尾は僕の体を弄りつづけて、乳首だけでなく内太ももとか脇腹とかも開発されて、見事に性感帯になってしまった。ただ、メスイキしすぎて何も出なくなって勃起すら維持できなくなった可哀想なおちんちんを弄られることは無くて、まるでお前は雌なんだからそんなものに価値はないと言われているかのようだった。

  媚薬の効果はとっくに切れていたはずなのに、容赦なく僕のことを抱き潰したボルテッカーは、寝バックで僕の両手を押さえつけ、身動き一つとれない、逃げることの許されない状態にして、「これに懲りたらもう悪いことするんじゃねぇぞ」と僕の耳元で低い声で唸り、うなじを噛んだ。噛まれて絶頂するのと同時に、最奥に何度イっても量の減らない精液を叩きつけられた僕は、そこでとうとう意識をとばしてしまい、僕がその部屋から出られたのは、2日後の昼過ぎだった。

  ・

  ・

  ・

  ビーッ!

  小さくて古いボロアパート。その一室に備えつけられている玄関チャイムを押すと、ピンポーンという明るい音ではなく、ボロアパートに有りがちなブザーのような音が鳴り響く。

  最初にここを把握したときは目を疑ったよ。ヒーロー協会はプラチナランクのヒーローにきちんとした報奨を出してないんだろうか。僕なんて幹部になると同時に悪の組織から研究所を丸々一棟貰ったのに。

  帽子を目深に被った僕は、ドアの覗き窓から顔が見られることはない。ただ、この家の家主は、そんな不審な来訪者に対して、無防備にドアを開ける。

  帽子を脱いで顔を上げると、精悍な虎獣人と視線が合う。その人は休日スタイルなのかパンツしか身につけておらず、陽の光を浴びて輝く縞模様の入った黄金色の体躯を惜しげもなく晒して、僕の前に現れた。

  そして僕は、驚きの表情を浮かべる変身前のヒーローに挨拶をする。

  「はじめまして。隣の部屋に引っ越してきた前原リクといいます。どうぞよろしくお願いします」

  「おまっ……!」

  ヒーローはヒーローだから中の人を知ろうとするなんて無粋だと思ってきたけど、本人が明かしたなら別だ。遠慮なく特定させてもらったよ。

  直後、部屋の中からボン!と大きな音が鳴る。目の前の虎獣人が、僕の存在と部屋から聞こえる爆発音、そのどちらを先に対処すべきか逡巡しているうちに、何が起こったのかを簡潔に伝えてしまおう。

  「おっと、何故か分からないけど部屋の間の壁が爆発して壊れてしまったみたいですね。そのせいであなたの部屋と僕の部屋が繋がってしまったみたいだ。あぁ、困ったなぁ。こんな状態だと夜中に貴方に襲われてしまうかもしれないなぁ」

  まるで困った様子など見せずに棒読みで伝えると、そんな僕をギロリと睨んだ変身前のボルテッカーは、怒気をはらんだ声で問い詰める。

  「お前、なに考えてんだ?」

  「なんのことでしょう?僕はただ、引っ越しの挨拶をしにきただけですよ」

  「そんな言い分で納得するわけねぇだろ!」

  「納得出来ないとして、どうします?ボルテッカーとしてではなく普通の住人としてここで暮らす貴方に、隣人を追い出す権限があるとでも?」

  「壁を壊したならそれくらいは言えるだろ」

  「貴方の部屋から壊したように見える壊しかたをしてるので、それで追い出されるなら貴方です」

  「なっ……」

  「まぁいいじゃないですか。こう見えて僕は炊事洗濯完璧で料理も上手。近所付き合いだって上手くやるしお金も持ってる」

  「そういう問題じゃねえだろ!」

  僕の言い訳を聞いたボルテッカーが怒鳴る。

  え、もしかして本当に僕がここに来た理由が分かってないの?は?僕にあれだけのことをしておいて?あんなこと言ったくせに?

  あーもう!なんなんだよ!

  「住所を特定して襲われに来いって言ったのはボルテッカーのほうだろ!?無意味な建前並べてる時点で気付けよ!」

  声を上げて睨み返すと、僕の気迫に気圧された虎獣人が怯む。そして少しの静寂のあと、呆れたような溜め息が聞こえてきた。

  「マジでその為に引っ越しまでしたのかよ……言っとくが、ヒーローに変身してねぇ俺は普通の虎獣人だぞ」

  「ヒーローに変身してなくてもハッテン場を食い荒らすくらい性欲旺盛な虎獣人、の間違いでは?」

  「ぐ……」

  「だいたい、ヒーローに変身してない奴は普通の獣人だなんて当たり前のこと、ヒーローを何人も相手取ってきた悪の組織の幹部である僕が分かってないはずないだろう。ヒーロー・オンスロートが倒れて変身が解ける姿だって見てるんだぞ」

  ヒーローは、人によっては変身前後で大きく体格が変わったりする。手足身長のバランスが崩れると動きに違和感が出てしまうからそっち側に変化があることは稀だけど、変身中はマッシブなのに変身を解くとだらしない中年太り体型、なんてことがあるのだ。

  ラグビー部所属という謳い文句で肩幅の広いガチムチ体型、突進という意味の名を持つ猪獣人のヒーロー・オンスロートが倒れて変身が解けて、腹の出た親父体型になった時は流石に驚いてしまった。

  ボルテッカーはヒーロー仲間だから、本来の彼の体型を知っているんだろう。僕の言葉を聞いて、納得したような、若干呆れたような声を出す。

  「あぁ……」

  「まぁボルテッカーはAVで体型が分かっていたから、そういう心配はしていなかったけれどね。君が普通の虎獣人だと分かったうえで、僕はここに来てるんだ」

  「なんだぁ?そんなに、俺とのセックスが良かったのかよ」

  「そうだよ」

  揶揄う言葉に対してストレートに返すと、虎獣人は言葉に詰まる。わざわざこんなボロアパートに来てる時点でそこを隠すつもりは毛頭ないし、それで煽れると思ったのなら大間違いだ。

  「あんなセックス、他では絶対に味わえない。たとえボルテッカーが題材でも、もう本やビデオじゃ物足りない。本物じゃないとイけなくなった責任、取ってもらうよ」

  「悪ぃが、あそこまで激しいのは変身しないと無理だぞ」

  「そこは想定内だよ。変身するにはヒーロー協会の承認が必要で、セックスするために変身するなんてのが許されないことも知っている。ただ、プラチナランクのヒーローにこんなボロアパートしか提供できないようなヒーロー協会の技術力が、僕たちの技術力に敵うと思っているのか?」

  ひとつのエンブレムを取り出すと、それを目の前の虎獣人の胸に押し付ける。僕の急な行動に、狭い玄関では避けることが出来なかったその姿が光に包まれ、落ち着いたころには、ヒーロー・ボルテッカーがそこに居た。

  いや、正確にはボルテッカーではない。黄色と黒を基調にしたスーツなのは一緒だが、黒地に黄色い稲妻と、色味が反転している。

  「なっ!?」

  「アンチヒーロー、ブラックボルテッカーだ!能力はボルテッカーとまったく同じ。これくらいは、朝飯前なのだよ」

  「どういうつもりだ……!」

  「このスーツには、無理矢理命令を聞かせるとか、悪の組織に逆らえないとか、そういった無粋な機能は付いていない。その姿で正義を遂行したいのなら、好きにすればいい。ただし……」

  僕がそこで言葉を区切ると、ブラックボルテッカーは自分の体の変化に気付いて、僕が何を言うのか理解したらしく、鋭い目つきで僕を睨む。そして僕は、膨らみ始めたブラックボルテッカーの股間をするりと撫でつつ、悪役として思い切り悪い笑顔で伝えてやるのだ。

  「変身すると、媚薬を丸々1本飲んだような状態になる。早速、ヒーローにヤられるために作ったこのスーツの性能、試させてもらおうじゃないか」