裏切りは、信じていた国家によって為された。
エディルリア神聖帝国の辺境伯家嫡子、ヴィンツェンツ・フォン・グレンツベルク。
彼は魔族の血を引くという理由だけで異端とされ、味方であったはずの神聖騎士団によって命を奪われかける。
死の淵で彼が得たものは、異世界で政治と戦争を学問として研究していた、もう一つの人生の記憶だった。
貴族として培った誇り。
転生前の世界で得た知識。
二つの記憶を抱えた青年は、亜人たちの森でシンと名を変え、生き残るための戦いを始める。
迫害され続けてきたゴブリン、ビースト、ドワーフたち。
人間の帝国に抗うためには、種族の壁を越えた結束が必要だった。
だが、戦場で命を数えるたびに、シンの心は削られていく。
守るために戦うのか。
勝つために殺すのか。
答えを失いながらも進む彼の前に現れるのは、かつて敵だったはずの者たちだった。
エルフの少女。
月狼族の女王。
吸血鬼の国主。
夢魔の姫。
孤独な青年を支えるのは、人間ではなく異形と呼ばれた者たちだった。
血と裏切りの戦場で、一人の男は問われる。
――何のために、力を求めるのか。
かつて敵だった者たちを守りながら、かつて味方だった者たちを殺す。
これは、すべてを失った青年が新たな居場所と未来を築いていく、苛烈なる生存戦記。