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☆Episode1 プロローグ〜異世界へ〜☆
星々が瞬く無限の宇宙。
漆黒の宙は果てがなく、その旅路もまた無限にも見える。
無数に広がるのが宇宙ならば、世界もまた無数に散らばっている。
その宙を飛ぶ宇宙船。
依って立つ故郷を失い、長い孤独の旅の先で光を求め、今日も船は征く。
『…………ようやく繋がったニャス。
さぁ、吾輩のもとに来るニャス。
そして、ニャントリアの栄光を今ふたたび…………。』
その言葉は、一体誰のものか…………?
[newpage]
日本、某県、某所。
ある一軒家にて。
「……………ん、ぁ…………もうこんな時間か………。」
寝ぼけたような顔で起きたのは、[[rb:増田佐之助 > ますだ さのすけ]]という男性。
ゲーム会社に勤めており、やり手のプログラマーとして生計を立てている。
そんな佐之助も朝一番では眠りから覚めたばかりのただの人間だ。
パジャマから着替え、眼鏡をして歯磨きをして朝の支度をする。
その傍らには妻の[[rb:陽子 > ようこ]]がいた。
「あら、おはよう。
朝ごはん、出来てるわよ。」
「おう、ありがとな。
そーいや進藤のヤツ、お前が作った弁当を見て『俺もこんな奥さんほしい』とか言ってたっけなー。」
「あらまぁ進藤くんったら。」
そう茶化すように笑う陽子。
二人の朝はこうして始まる。
朝食を済ませた佐之助はジャケットに着替え、昨日準備した書類やデータを詰めた鞄を持ち、陽子に「行ってきまーす!」と声をかけて家を出た。
佐之助は電車通勤で、ほぼ毎日満員電車に揺られる。
ほぼ席に座れたためしがないというのが佐之助のちょっとした自慢だ。
「………にしても、すげー鼻が曲がるぅ…………。」
いろんな人のニオイで鼻がダメになりそうなのを堪える。
そうしているうちに電車は目的の駅に着いた。
そこから会社まではそう遠くない。
佐之助は歩いて会社まで行った。
歩いて5分くらいで10階建て以上のビルの前に着く。
そこに、佐之助が勤めているゲーム会社がある。
エレベーターで会社のオフィスへ行き、「おはようございまーす!」と一番に挨拶をした。
「あっ、増田先輩、おはようございます!」
「おっ進藤、今日は早いじゃないか?
昨日の残業でも残したのか?」
オフィスには佐之助の後輩である[[rb:進藤猛 > しんどう たけし]]が一足早く来ていた。
進藤も佐之助のような一流のプログラマーを目指し、日々研鑽に励んでいる。
彼はキーボードを忙しなく叩きながら興奮した様子だった。
「いや違いますよ。
今日は例の新作のテストだから張り切ってるんです!」
「おっ、そうだったな。
俺渾身の自信作だぜ。
その名も…………『ユニバースクラフト』だっ!」
「俺も早くやりたいです。
増田先輩の自信作、楽しみです!」
「おうまかしとけ!
最後の調整が済み次第、いの一番にお前にテストしてもらうからな!」
「はい、ありがとうございます!」
佐之助は自分の作業部屋に向かい、新作ゲームの最終調整に取り掛かった。
[newpage]
佐之助はデスクの上にあるパソコンを起動し、持参したデータが入ったUSBをパソコンに挿入する。
デスクトップ上に佐之助が作ったゲームのデータが現れる。
佐之助はそのデータのフォルダを開く。
「よしよし。…………ん?」
佐之助はあるものを見て目を丸くした。
「なんだこのデータ?
こんなもの入れた覚えは…………。」
佐之助が開発したゲームのデータだけしか入っていないはずのフォルダに、見知らぬ謎のデータが入っている。
しかもそれは丁寧に[[rb:『NYADAM』 > ニャダム]]というタイトルが付けられていた。
「ニャダム…………?
なんだこりゃ?」
何かのデータである事は間違いないが、大事なゲームの開発データにこんなものが紛れ込む事自体があり得ない事だった。
データは佐之助自身で一貫して管理しており、誰かに預けるなんてことはしていない。
「クラウドからウィルスでも噛まされたか?
でも、毎回チェックはしてるし、対策用の新型ファイアウォールもこないだ導入したばかりだ。
どうなってる……………?」
考えれば考えるほど嫌な汗が出る。
佐之助が予測しなかった異常事態。
最終テストまで漕ぎ着けたのに何故、という疑問が佐之助の頭の中をぐるぐる回っていた。
そして同時に『削除してしまえ』という邪念もふっとわいた。
消してしまえば万事解決だ、と。
「こんなもの…………」
と、そのデータにマウスのカーソルが重なった……その時だった。
「うわっ、眩しい!
目が、目が潰れるぅ!」
突然、パソコンの画面が異常な光を放ち、部屋中を埋め尽くすほどの光が佐之助の視界を奪った。
「先輩?」
そんな佐之助の異常を察してか、進藤が席を立つ。
「先輩、どうしたんですか!?
何かあったんです、か……………?」
佐之助の作業部屋に駆けつけてきた進藤は絶句した。
さっきまでそこに居たはずの佐之助の姿がどこにもないのだ。
「そんな、さっきまで確かに………!
先輩!先輩!いたら返事をして下さい!
せんぱぁぁぁぁぁいっ!!」
進藤は賢明に呼びかけるが、それに応える声はなかった。
彼は知る由もないが、佐之助に数奇な運命が降りかかろうとしていた…………。
[newpage]
宇宙船ラストニャントリア号。
佐之助はそんな現実とかけ離れた、その中で目を覚ました。
「う、うーん…………ここ、は?」
ぼんやりと朦朧とする頭。
さっきまで何をしていたのか、佐之助は中々思い出せない。
ただ判るのは、ここが自分が知っている場所ではない事だけだ。
「ここはどこだ!?
俺は一体今まで何を…………?」
あまりの急展開に狼狽える佐之助。
目を覚ませば知らない場所にいて、混乱するのも無理からぬ事だ。
だが、人は冷静になれば徐々に思い出してくる生き物だ。
佐之助もまた、断片的ながら状況を飲み込んでいった。
「確か、さっき新作ゲームの最終調整をしようとして………なんか怪しいデータを消そうとしたら、いきなり光が…………そこからは思い出せない…………。」
また全て把握しきれていない中、ふいに声がした。
『ニャハハハハ!!
よくぞ来た、吾輩の期待の星よ!』
その声は人を小馬鹿にしたような声だった。
実際、混乱して狼狽えている佐之助の姿は滑稽だったのだろう。
「!?
誰だ、姿を見せろ!!」
『ほう、吾輩の姿が見たいニャスか。
良かろう、ならばしっかり目に焼き付けるニャス!』
声の主がそう言うと、佐之助の目の前にモニターが現れた。
そのモニターに映像が入り、そこには豪奢な衣装を来たヘンテコな猫又………のような生き物が映っていた。
「ね、猫……………?」
『猫ではないっ!!
吾輩はニャントリアが誇る独立星間渡航システム、NYADAMだニャス!』
「に、NYADAMって、さっきのデータの…………?
いやそれより、ニャントリアって…………」
佐之助はその言葉を知っていた。
それは佐之助が制作した新作ゲーム『ユニバースクラフト』の中に登場する、宇宙の中で最も高度な文明が築かれた星の名前だった。
するとここは、佐之助自身が作ったゲームの世界の中なのかと思った。
しかし、NYADAMという名前は佐之助は知らない。
知っている事と知らない事がごちゃ混ぜになった状況に、さらに佐之助の混乱は加速する。
『ほう、ニャントリアの事を知っているようニャス。
ならば話は早い。
そこのニンゲンよ、オマエを吾輩の惑星開拓システム………アストロキャッツになってもらうニャス!』
「………………は?」
開いた口が塞がらないとはこの事。
そもそもアストロキャッツとは何ぞや?
その前に、なんでそんなものにならなければならないのか佐之助には理解が追いつかなかった。
「え、普通にイヤだけど?
そんな事より元の場所に戻してくれよ!
俺の後輩、俺のゲームのテストプレイを楽しみに待ってくれてんだよ!」
『ニャハハ、それこそ無理ニャス!
あのゲート、一方通行故ニャス。
戻るのは諦めるニャスね。』
「フッざけんなぁぁぁぁぁ!!」
激高した佐之助はモニターに殴りかかる。
しかし、モニターには傷ひとつつかない。
「あいたたた……………。」
それどころかイタズラに自分の手を傷つけるだけで終わった。
『無駄ニャス。
吾輩はあくまでこのラストニャントリア号の中枢システムニャス。
仮にモニターを破壊しても吾輩はノーダメージニャス。』
「そんな…………」
佐之助はようやく理解する。
このあと、取り返しのつかない事態が待ち受けている事を。
[newpage]
『さて、無駄話は終いにするニャス。
貴様に拒否権などないニャス。
…………対象001を捕捉、システム変換シークエンスを開始する。』
さっきまでのおちゃらけた声は一変して機械的なものに変わる。
「うわっ!?」
佐之助の身体がふわりと宙を舞う。
まるで、周りの空間が無重力に変わったように。
「お、降ろせ、降ろしてくれぇ!」
そうみっともなく助けを乞うが届かない。
むしろ、異変はまだ佐之助に降りかかる。
「ふ、服が………俺の服が!」
佐之助が来ていたジャケットが、スボンが、そして靴や上着、パンツまでが順番に佐之助の身体から離れていく。
佐之助は一瞬にしてすっぽんぽんになり、かつ宙にふわふわ浮いている滑稽な姿にさせられてしまった。
「服を返してくれぇ!」
『衣類オブジェクト、変換開始。』
当然の如く佐之助の訴えは無視され、変化は続けられる。
佐之助が来ていた服はバチバチと電気を帯び、不可解な変化と変形を繰り返していく。
服は徐々に色を失い、やがてジャケットやスボンや靴もひとつの塊になっていき、最終的にある姿に落ち着いた。
それは宇宙服だった。
しかしそれは佐之助が知る宇宙服とは異なり、随所に猫のようなパーツがある、白くピンクのラインが入った猫型の宇宙服だった。
『変換完了。
対象001にスーツ装着を実行。』
「や、やめろ……………!」
佐之助は必死に拒むが、無重力空間ではどんな抵抗も児戯に等しい。
かつて佐之助の服だったそれは一瞬で身体に装着され、外見は猫型の宇宙飛行士のようなキュートかつファンシーな見た目になっていた。
「あ、あぁ………………。」
中の佐之助は恥ずかしさで顔を真っ赤に染めていた、が、ヘルメットは外からはマジックミラーのようになっていて見えなくなっていた。
だが、まだ変身は終わらない。
スーツを着せただけでは真の意味でアストロキャッツになったとは言えないのだ。
『スーツ装着完了。
スーツにアクセス開始、対象001の特殊改造開始。』
「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」
叫ぶ佐之助。
しかし、もう遅い。
佐之助の身体中を、甘くとろけるような快感が駆け巡っていた。
「おほぉぉぉぉぉぉ♡♡♡♡♡♡」
佐之助は抗えない快感にはしたない声をあげて喘ぐ。
「んほぉぉぉぉ♡♡♡♡♡♡
らめぇぇぇぇ♡♡♡♡♡♡
ンギモヂィィィィ♡♡♡♡♡♡」
おかげで佐之助の陰茎はスーツの中でバッキバキに屹立し、佐之助の変化は最終段階を迎えた。
『対象の特殊改造完了。
対象001の不要なメモリーを消去する。』
「あ、あぁ、それだけはんはぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡」
佐之助は勢いよくスーツの内部に射精した。
佐之助の身体はもう人間のものではなくなり、佐之助たらしめている記憶を不要なものと判断して精子と一緒に排出したのだ。
「あぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡♡
消えていく、俺の、俺の中の何かが……………だめだ頭がぁぁぁぁ♡♡♡♡♡」
必死に押し留めようとする佐之助だが、その身体が言うことを聞かない。
佐之助のザーメンは無情にもスーツ内にぶち撒けられ、更に自分を失っていく。
「おっ、俺はぁ、何か大事なことを…………何だっけ?
頭がぼんやりして、うまくまとまらない、俺の妻は………誰だ?
妻ってなんだあはぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡」
3回目の射精を迎え、佐之助は自分の妻を、そして後輩の記憶を失う。
「おれに家族なんていたのか?
違う、俺は誰だ?
俺は、俺は、ワタ、しは…………んはぁぁぁぁぁ♡♡♡♡♡♡」
ついに人格さえアストロキャッツに置き換わりはじめる。
佐之助はもう次の射精で完全にアストロキャッツになってしまうだろう。
「ワタシハ………ニャダム様……マスターノ指令ヲ………やめろ、俺は俺だ!?
マスター、マスター、ワタシニゴ命令ヲ………ニャントリア再興ノ夢ヲ………やめろぉぉぉぉぉ♡♡♡♡♡♡♡♡」
佐之助は最後に叫んだ。
彼は、増田佐之助という人間はもうどこにも存在しない。
『変換シークエンス、全工程完了。』
無重力空間が解け、佐之助だったものはふわりと床に横たわる。
そして…………
『目覚めよ、吾輩のアストロキャッツ。
吾輩のため、ニャントリアの再興の夢を果たすために。』
それは、ゆっくりと起き上がった。
そして…………
「ワタシハ、アストロキャッツ………CAT−001デス。
マスター、コレカラヨロシクオネガイシマス。
次ノゴ命令ヲ、マスター。」
猫型の宇宙服のようなスーツを全身に身に纏うアストロキャッツ、CAT−001は機械的な声と口調でそう宣言した。
これからは独立星間渡航システム『NYADAM』のもと、他の星を侵略、もとい開拓するためにアストロキャッツとしての能力を存分に振るうだろう。
『ニャハハ、大成功ニャス!
アストロキャッツ計画、これでついに完遂ニャス!
ただ、ここからが吾輩の計画の始まりニャス。
CAT−001、お前にはこの先にある惑星ルインの開拓を命ずるニャス!』
「オーダー、承諾シマシタ、マスター。」
宇宙船ラストニャントリアは、次なる惑星を目指し進む。
その先の、ニャントリア再興という光を求めて。
▶▶▶Episode2へ続く
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