Episode4 原生恐竜惑星ダイナソア

  [chapter:ドッグタグ]

  宇宙船ラストニャントリア号。

  惑星ルインを出発して一週間が経過した。

  その日、アストロキャッツ達は中央制御室に呼び出された。

  大きなモニターにはNYADAMの姿が映し出されていた。

  『よく来たな、吾輩のアストロキャッツ達よ。

  オマエ達を呼び出したのは他でもないニャス。

  ………そろそろ決めておかねばならぬ事があるニャスよ。』

  当のアストロキャッツ達は何のことか分からず首をかしげるのだが………

  『それはズバリ…………呼びやすい名前ニャス!

  というのも、アストロキャッツが二体以上になった以上は識別名だとどうしてもこんがらがるニャス………。

  そこで、オマエ達に吾輩が名前をつけてやるニャス!』

  識別名とはアストロキャッツ達が今まで名乗っていた、「CAT−01」という型式のような名前の事だ。

  この場合、違いは末尾の一桁の番号のみとなり、ややこしいのだ。

  それを憂いたNYADAMは個体ごとに固有の名前を付けようとしているのだ。

  「「ネーム更新…………了解シマシタ。」」

  『ニャハハ、実はもう決めてあるニャス。

  星を開拓するに相応しいニャス。

  では、まずはCAT−01。

  オマエはこれより「ステラ」と命名する。』

  「新ネーム、ステラ…………登録シマシタ。」

  『その証に、このタグを付けると良いニャス。』

  ステラの前に現れたのた、ピンクメタリックのドッグタグだった。

  タグには「STELLA」という文字とロケットのレリーフが刻まれており、それはステラの首に装着された。

  『次はCAT−02。

  オマエは「ポラリス」と命名するニャス。』

  「新ネーム、ポラリス………登録完了。」

  『それではオマエにもこのタグを授けるニャス。』

  ポラリスにはブルーメタリックのドッグタグが装着される。

  タグには「POLARIS」の文字と星のレリーフが刻まれている。

  『これで命名は完了ニャス!

  ステラとポラリス、吾輩のため、ニャントリアのためにこれからもその力を尽くすニャス!』

  「「了解シマシタ、マスター。」」」

  こうしてアストロキャッツ達は新しい名前を授かり、次の星の開拓に進むのだった。

  [newpage]

  [chapter:帰らぬ人、探す人]

  日本、某県、某所。

  増田佐之助の自宅前。

  「…………そう、ですか。

  先輩、どこに行ってしまったんでしょうか………?」

  彼の自宅を訪ねていたのは、佐之助のかつての後輩の進藤猛だった。

  それに応対していたのは、妻の陽子だった。

  「ごめんなさい…………主人がまさか、行方不明だなんて………私もまだ、信じられなくて………。」

  「そうですよね…………。

  俺もまだ探してみます。

  警察だけじゃ頼りないし……。」

  佐之助が失踪して一ヶ月が経っていた。

  あの日、彼が会社から出た姿は監視カメラには映っていなかった。

  佐之助の不可解な失踪。

  まるで神隠しにでも遭ったかのように、新作ゲームの最終調整を行っていたはずの佐之助が突然姿を消した。

  進藤をはじめとした同僚も、朝のあの挨拶のときに見た姿が最後だったという。

  何か事件に巻き込まれたにしろ、この失踪は常軌を逸していた。

  必死の捜索も虚しく、彼はいまだに見つかっていない。

  目撃情報も皆無だった。

  「あまり無理はなさらないで。

  気持ちは嬉しいけど、あなたまで何かあったら…………。」

  「俺、先輩に教えてほしい事がまだまだあるんです。

  他の人じゃダメなんです。

  俺は、先輩を諦めるつもりはありません。

  ………陽子さんもお身体に気をつけて。」

  そう締めくくり、進藤は佐之助の自宅を後にした。

  進藤はあの日を思い返していた。

  先輩は何か思い悩んでいた事があったのか?

  素人目だが、とてもそうは見えなかった。

  あの日はむしろ、新作の完成間近という事で張り切っていた。

  そして、あの時聞こえた、先輩の悲鳴にも似た最後の言葉。

  あれは、あの場で何か起きていたのではないのか?

  だとしたら…………

  「先輩のPCを調べてみよう。

  何か手がかりがあるかも…………。」

  そう呟き、進藤は家路についた。

  [newpage]

  [chapter:隕石危機一髪]

  宇宙船ラストニャントリア号。

  一方、こちらは船内が慌ただしい事になっていた。

  緊急で召集されたアストロキャッツ達は何事かとモニターを見た。

  『大変ニャス!

  隕石がこっちに近づいているニャス!

  全員、衝撃に備えるニャス!』

  なんと、宇宙船に隕石が接近しているのだ。

  回避を試みたが、直撃はせずとも衝突は免れられないようだ。

  この宇宙船は独立星間渡航システムであるNYADAMがすべて担っているため手動での操縦は不可能となっており、当のアストロキャッツ達にはどうしようもない。

  隕石は徐々に接近している。

  宇宙船は隕石から放たれるエネルギーにより小刻みに揺れはじめる。

  そして……………

  

  

  ドカーーーーーーーン!!!

  爆発のような強烈な音と共に、船内が大きく揺れた。

  NYADAMが咄嗟に発動させた無重力空間によりアストロキャッツ達は無事だったが、船内はけたたましい警報音が鳴り響く。

  『まずいニャス………エンジンと電気系統が破損したニャス。

  このままでは、航行不能で宇宙空間を彷徨う事になるニャス………。

  予定外ではあるが、手近な惑星に不時着するしかないニャス!』

  不時着。

  このまま何もせず宇宙空間を彷徨うよりは最善の選択だった。

  『幸いにも手頃な惑星があったニャス!

  そっちに緊急着陸するニャス!』

  宇宙船ラストニャントリア号は脇に見えた惑星に方向を変え、引力を利用して着陸を試みる。

  その星は、緑色に彩られていた。

  [newpage]

  [chapter:惑星ダイナソア]

  宇宙船ラストニャントリア号。

  それは、密林の最中に不時着していた。

  『ちょっと荒っぽくなったニャスが………アストロキャッツ達は大丈夫ニャス?』

  「問題アリマセン。

  ゴ命令を、マスター。」

  そう答えたのはステラ。

  ボディにピンクのラインが入っており、「01」の刻印があるアストロキャッツだ。

  「ノープロブレムデス。

  作戦行動、イケマス。」

  続くのはポラリス。

  こちらはボディに青のラインと「02」の刻印がある。

  『そうか、なら良かったニャス。

  オマエたちに早速指令ニャス。

  宇宙船の修復、ならびに可能な限りの惑星開拓を命ずるニャス。』

  「「了解シマシタ、マスター。」」

  阿吽の呼吸のように返答する二体のアストロキャッツ達。

  それはとても人間とは思えないほどの緻密な呼吸の合わせ方だった。

  もっとも、アストロキャッツは呼吸を必要としないのだが。

  

  『だが、その前にこの惑星について話すニャス。

  ここは惑星ダイナソア。

  ニャントリアのライブラリによれば、恐竜がいたようニャス。

  ただ、周囲をサーチしたところによると恐竜らしき影は確認できないニャス。』

  恐竜。

  現実の地球ではおよそ3億年前に存在したとされ陸上の生物の頂点に君臨していたが、その後は諸説あるが最終的には鳥類を除き絶滅している。

  この惑星ダイナソアにいたとされる恐竜は現実の地球と同じかは定かではない。

  しかし、宇宙船の修復においては警戒すべきものであることは間違いない。

  もし変わらず存在しているのならば、人間より小柄なアストロキャッツはひとたまりもない。

  『よって、周囲のサーチは怠らぬ事ニャス。

  異常があればすぐ帰還するニャス。

  では行くがよい吾輩のアストロキャッツ達よ!

  吾輩の命運はオマエ達にかかってるニャス!』

  「「イエス、マスター!」」

  こうして、アストロキャッツの一大作戦は決行された。

  [newpage]

  [chapter:恐竜達の都]

  ステラとポラリスは二手に分かれ、まずは宇宙船修理のための資源を探すことになった。

  それは鉱石。

  エンジンと電気回路の修復には様々な金属が必要となる。

  他の材料はロケットに残ったもので間に合うようだが、こればかりは現地調達でなければいけない。

  そのために、鉱脈の調査から始まる。

  周囲は見渡すばかりの木々。

  空から木漏れ日が降り注いでいるが、密林の中は鬱蒼として薄暗い。

  地形の把握にもそれなりの時間を要した。

  東側を担当したステラは中々鉱脈が見つけられないでいた。

  「鉱脈反応………周囲二、ナシ。」

  こんな事を数時間続けても飽きることなく捜索を続ける。

  アストロキャッツには『飽きる』という余分はないからだ。

  「捜索、続行シマス。」

  ステラは密林の奥へ進む。

  邪魔な障害物をツールを用いて除去しつつ進んでいく。

  数キロ進むと、奥から光が差し込んでいた。

  それは密林の出口だった。

  そして…………

  「ココ、ハ……………?」

  目の前に広がる景色に見入ってしまうステラ。

  そこは、どこからどう見ても街だった。

  現代的ではなく、石と土で造られた古代の街だった。

  

  

  その中央に聳えるように建つ大きな建築物。

  アステカ文明の神殿にもよく似た、ピラミッドのようなもの。

  周囲には大小様々な建物があり、また、大通りと思われる広い道の脇には露店らしきものがズラリと並んでいる。

  それより驚くべきはその住人。

  それは、恐竜だった。

  恐竜が独自の文明を築き上げ、部分的でありながら人間のように装飾品を身につけている、そんな光景だった。

  そして、会話らしき声も聞こえる。

  だが、何を言っているのかは聞き取れない。

  おそらくは恐竜達の間で確立した特殊な言語である事は推測できた。

  「マスター、ゴ報告デス。

  恐竜達ノ都市ヲ発見シマシタ。」

  ステラは体内通信で宇宙船のNYADAMに報告をする。

  『うむ、そのようニャス。

  しかし、彼奴らはいつの間にかこのような文明を築いていたとは………吾輩の想像以上ニャス。

  ステラ、オマエはそのまま都市の調査に向かうニャス。

  くれぐれも見つからんようにするニャス。』

  「了解シマシタ、マスター。」

  

  通信を切り、街の中に慎重に潜入する。

  幸いステラは恐竜達の体格よりかなり小さいため、よほどの事をしなければ見つかることはなさそうだった。

  建物の間を縫うようにして街を進んでいく。

  その傍らで恐竜達の会話を拾い、スパコンである高度演算処理能力の脳で言語の解析を進めていく。

  その間はいつもよりバッテリーの消耗も早くなるため、残量を適宜マネジメントしながら一時退却の判断も視野に入れておかねばならない。

  まず目指すのは中央の巨大建築物。

  恐竜達に踏まれないように避けながら進む。

  恐竜達の真下を通るようにすると案外気づかれないものだった。

  あまり地面には関心がないのかもしれないし、そもそも真下が見づらいのかもしれない。

  大通りのような広く見通しのよい道は極力避け、ひたすら目立たない場所を通っていく。

  時には物陰に隠れてやり過ごしたりして、進んでいく。

  そうして、遂に巨大な建物の前にたどり着いた。

  ただ、恐竜サイズ標準の建物のため登るのも一苦労だ。

  階段の一段一段があまりに高いため、通常であれば壁をよじ登らなければならない。

  だが、そこは開拓システムたるアストロキャッツの魅せ場。

  ステラは背中のツールバッグから小さな銃のようなものを取り出す。

  ポータルガンのような長い銃身ではなく、片手で持てるほどのコンパクトな代物。

  それを建築物の上方に向ける。

  そしてトリガーを引くと、アンカーのようなフックと自由自在に曲がる鋼鉄のワイヤーが射出される。

  それは建物の最上部に刺さり、巻き戻す作用でステラを上まで一気に引っ張り上げる。

  これはアストロキャッツのツールの一種である『フックショット』で、一気に高所や離れた場所に渡るときに便利なツール。

  同時に、広大な惑星を開拓するために欠かせないものでもある。

  建築物の最上部まで一気に登ったステラを待っていたのは、巨大な扉だった。

  王宮か、はたまた神殿のような荘厳な雰囲気を持った重い扉。

  いくらアストロキャッツといえど、それを力だけで開くのは無理だった。

  そう、力だけなら。

  

  フックショットをしまい取り出したのは、あのハンマー。

  かつて惑星ルインのシェルターに入口を造ったハンマーの力ならばアストロキャッツが通れる入口くらい朝飯前だ。

  「建築、開始シマス。」

  ハンマーで壁を叩いたが、一見するとそこには何もないように見えた。

  しかし、手で押してみるとドアのように開いた。

  恐竜達には見つけられない隠し扉であり、潜入するにはうってつけだ。

  ステラはその扉を抜けて、中に入っていった。

  [newpage]

  [chapter:大鉱脈]

  一方、西側のポラリスは密林を抜けて巨大な山を発見した。

  それは大昔に火山だった山で、今は内部は広大なカルデラ湖となっている。

  「前方ノ火山二、鉱脈反応アリ。

  調査後、採掘ヲ行イマス。」

  ポラリスは山に足を進める。

  麓まで着くと、ドリルで斜面から地下深くまで掘っていく。

  ドリルが通ったあとは階段が自動的に作られ、明るさのための松明が設置され崩落防止のための補強がされる。

  硬い岩石層すら容易に貫通するドリルによって地下深い場所まで潜っていく。

  地下1500mまで掘り進んだところで止まると、ドリルをしまい今度はピッケルを取り出した。

  それを目の前に振り下ろすと、一瞬で広大な坑道が出来上がる。

  しかも坑道の壁面に鉱石が顔を出すように坑道が作られており、搬送用のトロッコや線路まで敷いてあるという至れり尽くせりぶり。

  「宇宙船修理二適シタ鉱石ヲ確認。

  採掘ヲ開始シマス。」

  ここからは多少地道な作業になるが、表に顔を出した鉱石にピッケルを当てると自動的にブロック状に固められる。

  鉄鉱石や多数の天然鋼をはじめとした鉱石と、石炭等の燃料、エメラルド、ダイヤモンドなどの宝石を含んだ鉱石が次々と掘り出される。

  それらはトロッコに積まれ、一定の積載量になると自動的に外の麓まで運ばれていく。

  数時間採掘して、宇宙船修理に必要なぶんと余剰分の資源として鉱石を確保すると、地下から出た。

  採掘の時に開けた入口は元通りに塞ぎ、宇宙船まで延伸させた多数のトロッコの列を発進させる。

  ポラリスはその一番前に乗り込み、安全を確認しながらトロッコを進行させていく。

  宇宙船に採掘した資源が到達する。

  ステラはまだ帰還していないようだった。

  ここより東に恐竜達の都を発見したとの事で、今はそこを調査しているという。

  「デハ、ボクハ宇宙船ノ修理二取リ掛カリマス。」

  『うむ、頼んだニャス。

  吾輩が納得する出来を期待するニャス。』

  「了解シマシタ、マスター。」

  早速、ポラリスによる修理作業が開始される。

  まずは採掘した鉱石を精錬するための溶鉱炉を作成する。

  それはビルドハンマーではなく、あらゆるアイテムを[[rb:作成 > クラフト]]するツールを用いる。

  ツールバッグから取り出したのは、ハイテクな作業台のようなブロックだった。

  「クラフトファクトリー起動シマス。

  精錬用溶鉱炉、作成開始。」

  これがアイテムを作る際に使われる、アストロキャッツが誇るツールの一種。

  出来上がったものは小さな鋼鉄のブロック。

  それをポラリスが置くと大きな溶鉱炉になり、最終的に十台ほどが出来上がった。

  これに石炭などの燃料を投入する事でようやく稼働できる状態になった。

  そこに、採掘した鉱石を投入していき、それらは5分とかからず純度の高いインゴットに生まれ変わる。

  およそ1時間くらいで採掘した資源の精錬は完了し、あとは宇宙船の修理に取り掛かる段階になった。

  だが……………

  「……………?

  何デショウ…………?」

  東の方角がやけにざわついているのがポラリスには分かった。

  相方であるステラが向かった恐竜の都がある方角だ。

  [newpage]

  [chapter:暴君ティラノサウルス]

  時は少し戻り、一方のステラは大きな建造物に侵入していた。

  そこは、謁見の間という表現が正しい。

  あらゆる恐竜達が、玉座にいる大きな恐竜………ティラノサウルスに頭を垂れている。

  王らしきティラノサウルスは大きな口を開けて何か言っているが、相変わらず何を言っているかは分からない。

  しかし、ここが都の中心である王宮である事は分かった。

  隠れて様子を伺おうとするステラだが、謁見の間である広間には隠れられる場所がほとんどない。

  やがて、ティラノサウルスの鋭い目がステラの姿を捉えてしまった。

  「デンジャー。

  安全ヲ最優先シ撤退シマス。」

  広間は大騒ぎとなり、ステラを捕まえようと恐竜達が殺到する。

  しかし、体格がはるかに小さいステラはそれらをすり抜けるように交わす。

  巧みに恐竜達をぶつけ合わせ、見失っている隙に先程作った隠し扉で王宮内部から脱出した。

  しかし、追っ手はすぐさま王宮から出てきた。

  かなりの高さがある王宮、いくらアストロキャッツであっても飛び降りるのは無謀。

  徐々に追い詰められていく。

  だが、案ずることはない。

  その窮地に対する備えもアストロキャッツのツールに備わっているのだから。

  「敵対生物ヲ鎮圧シマス。

  スタンソード解禁………。」

  そうして選ばれたツールは、小さなブロックを多数組み合わせて形にしたような形状のピンクの剣だった。

  剣とは言っても何かを斬れるような鋭利なものではなく、どちらかと言えば叩くような厚さがある、そんな武器だった。

  恐竜達にとって、そんなものは豆鉄砲を喰らうものに等しい。

  …………それが、ただのおもちゃの剣ならば。

  ステラが跳躍する。

  恐竜達は、自分たちより小さきものがあっという間に視界から消える様に動揺する。

  そして、それは自分たちの頭上に落下してくる事に対応できない。

  先頭にいた一頭の恐竜が突然、気を失ったように倒れる。

  それは未知の恐怖。

  自分たちより弱いはずの存在に翻弄され、今何が起きたかすら理解できない。

  

  ステラはしゅたっと着地し、今度は混乱している恐竜達の懐に潜り込む。

  狭い足場にぎちぎちに詰められた恐竜達はうまく身動きがとれない。

  彼らはその巨体がアダとなり、数で圧倒的な有利であるはずが一方的に不利な状況に陥っていた。

  ようやくステラを捉えた恐竜は、頭に衝撃を感じそのまま倒れ込む。

  それは、先程取り出した剣だった。

  鈍器のような厚い形状だが、力で敵を倒す武器ではない。

  剣の内側に仕込まれた「電磁波機構」が対象の精神、神経に作用し一切傷つける事なく気絶させる。

  まさに鎮圧に特化したツールだ。

  次々に、ドミノ倒しのように恐竜達は力なく倒れていく。

  残った恐竜達もその光景に恐れ慄いたのか逃げ出す者が現れた。

  実に十分近くの出来事。

  袋小路に獲物を追い詰めたはずの狩人は、窮鼠猫を噛むように返り討ちにされた。

  ………とは言っても、恐竜達には一切の傷はない。

  遅れて現れた王のティラノサウルスはその光景を見て苛立ちの表情を浮かべていた。

  「■■■■■■■■■!!!」

  それは言語ですらない原始的な咆哮。

  大抵の恐竜であれば跪く王の怒声。

  しかし、ステラはそれに怯まない。

  怯む、という余分はアストロキャッツには存在しないのだ。

  「ーーーーー!?」

  怒声はやがて困惑へと変わる。

  王のティラノサウルスは、目の前の闖入者の態度に動揺を隠せない。

  それは、未知の恐怖。

  あるいは、自分たちの常識を超えた脅威。

  かの王には、そう映ったのかもしれない。

  未知なる武器を構えたまま動かないアストロキャッツ。

  だが認めるわけにはいかない。

  目の前の存在を蹴散らし、屈服させる。

  それこそが自らの威厳を守る手段だからだ。

  「■■■■■■■■■!!!」

  大地を揺らす咆哮を響かせ、目の前の不遜な闖入者を踏みにじらんと迫る王。

  それを迎え撃つように動くステラ。

  単純な力のみで迫る巨体に、矮小なステラはしなやかな動きでいなし、受け流す。

  王が気づいた時にはもう遅い。

  いかなる生物を気絶させるあの剣が王の脳天めがけて振り下ろされる。

  勝敗は決した。

  王はそのまま崩れ落ち、勢いのまま王宮から転げ落ちていった。

  しかし、勝利の余韻に浸る暇はない。

  「脅威ノ排除完了。

  宇宙船二撤退シマス。」

  ステラは王宮を降り、街を抜けて宇宙船へと駆け戻っていった。

  [newpage]

  [chapter:脱出]

  一方、宇宙船はポラリスの手で修復作業が進められていた。

  ついこの間までただの人間だったとは思えない手つきで様々な工具を巧みに使い分け、まるで子供の工作のように電気回路を直していく。

  そこに、恐竜達を振り切ってきたステラが戻ってきた。

  「マスター、タダイマ帰還シマシタ。」

  『うむ、よくぞ戻ったなステラ。

  吾輩に報告をするニャス。』

  「……マスター、悪イ知ラセデス。

  モウジキ、ココニ恐竜ガヤッテ来マス。」

  『………まずいな。

  ステラ、オマエも修復作業に加わるニャス。

  この星での開拓は断念し、なるべく早く脱出するニャス!』

  「了解シマシタ、マスター。」

  キビキビと修復作業に加わるステラ。

  ポラリスが採掘した資源と様々な工具を用いて損傷したエンジンを新品同様に修復していく。

  一方のポラリスも電気回路をほぼ完璧に修理し、正常に動く事を確認していた。

  2体のアストロキャッツにより、隕石で損傷した宇宙船は瞬く間にもとの姿を取り戻した。

  『うむ、ご苦労ニャス。

  これで……………ん?

  東の方からドスドスと音が響いているニャス!

  早く脱出するニャス!』

  「「了解シマシタ、マスター。」」

  アストロキャッツ達も宇宙船に乗り込む。

  エンジンを点火する頃には、宇宙船は夥しい数の恐竜達に囲まれていた。

  「■■■■■■■■■!!!」

  先ほど気絶させたはずの王のティラノサウルスが号令の咆哮をあげ一斉に宇宙船に襲い掛かる。

  同時に、宇宙船は音速で宙へ飛び出し、迂闊に近づいた恐竜達を跳ね飛ばしていった。

  惑星ダイナソアを後にする。

  次はどの星を目指すのか、それはこの宇宙船を牛耳る者にしか分からない。

  [newpage]

  [chapter:断章(序章)]

  現実の世界。

  それより20年後の世界。

  世界は飛躍的な発展を遂げ、街は未来の世界のようなオーバーテクノロジーを惜しげもなく随所に散りばめ、栄華を極めていた。

  スマホを片手に街を歩く少年。

  雰囲気はどこか佐之助に似ているが別人だ。

  街は未来的な意匠のビルが並び、ネオン風のLEDのきらびやかな光と、あちこちに電光の広告が流れている。

  その中をひとり歩いている。

  「…………ここか。」

  目の前には大きなビル。

  その一番下には電子的な青い照明が灯る通路の、その入口。

  奥は暗闇で見えない。

  少年はその通路に歩みを進めていく……。

  ……………何のために?

  

  ▶▶▶Episode5へ続く