天竺のお針子さん

  ベースは天竺×武道のみっち愛され、最終的にほんのりイザ武着地

  今はただ年下として可愛がられてる

  幻覚とか妄想とかを捏ねくり回した結果の産物

  タイムリープ能力は使ってません

  もしこの選択を最初の世界線で選んでいたらのIF世界

  死んでる人も生きてたり、人間関係だいぶ変わると思います

  みっちの趣味は裁縫、尚センスは……

  最終的にハッピーエンド予定

  6月でもう1冊コイツを本にする予定です

  が、書いててコレ面白いんか?とずっと頭から離れないからサンプル兼ねて上げていいんじゃね?とフレンズが言ってくれたので1話目をとりまアップ

  いっぬのアンケートに予想以上に多く答えて下さっててありがとうございます

  答えてくれた人に行き渡るくらいには刷りたいなと思うけど、一気には無理なんで再販も視野に入れつつ印刷考えてます

  有識者なフレンズに助けてもらいつつ、虎さんにも登録したので通販もやります

  今までの作品にコメント・スタンプやいいねにタグなどなどありがとうございます

  フォローもありがとうございます

  ちょっと原稿修羅ってるので落ち着いたら一気にコメントとか返したいです

  著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ

  2024/03/31 本と同じように加筆修正しました

  [newpage]

  一着目

  「なんでオメェ、腕はいいのにセンス死んでんだよ……」

  「流石にカリスマ的にそれはアウト」

  「タケミチ……オマエ、それ本気か?」

  「これでも一生懸命なんスよ! いつでも本気なの! でもオレのセンスは死んでるって最初に言ったじゃん!!」

  「ここまでとは誰も思わねェよ!!」

  とあるマンションの一室で、ヤンチャ(比喩)な少年達が一人の少年に文句を言っていた。

  広げられているのはスケッチブック。スケッチブックいっぱいに服のデザインが描かれているが、如何せんデザインがクソダサかった。スケッチブックに描いた本人は自己申告で自分のセンスの無さを訴えているが、周りが信じずに見てみたら想像以上だったらしい。

  これは、とある王様が率いる暴走族の特攻服を作ることになった天竺のお針子さんの話。

  ◇◆◇

  事の始まりは一本の電話。

  「なぁタケミチ、オレらのチームの特服作ってくれないか?」

  久しぶりの幼馴染からの電話は冒頭の言葉から始まった。

  風の噂では毎日喧嘩に明け暮れ『喧嘩屋』なんて二つ名が付いているとか、極悪の世代と呼ばれる不良達と共にチームを作るのではないかとか色々と物騒な噂は聞いていた。

  しかし幼馴染である武道にとって昔から仲の良い幼馴染に変わりはなく、引っ越したとしてもこうして電話をしたり共に何処かに出かけたりしているので、噂は半分しか信じていなかった。もう半分はきっと本当なんだろうなぁ……とも思っている。

  「特服って暴走族のチーム?」

  「今度イザナを総長に立ち上げるんだ」

  「イザナと」

  武道の頭に思い浮かんだのは銀髪にアメジストのような瞳を持つ、異国情緒漂う顔面偏差値がバカ高い男。黙っていればどこかのモデルよりも美人なのに、口を開けば天上天下唯我独尊を地でいく暴君。鶴蝶が唯一付き従う王様だ。

  今よりも昔に鶴蝶のいる施設に会いに行った時に知り合い、どこが気に入ったのか時折武道のことを下僕2号と呼んでくる王様だ。1号はもちろん鶴蝶である。

  その王様をトップにして族を作るというからなんとなくらしいなと思った。先程武道が半分は本当だと思う理由もイザナがいるからである。イザナならやりかねない。

  「でもオレなんかより裁縫うまいヤツいっぱいいると思うけど……」

  「オレもイザナもタケミチがいいんだ、頼む!」

  武道の趣味は裁縫だ。小物はもちろん大作となると服まで作り上げるくらいの力量を持っている。

  そのことを知っているのは母親以外に電話先の鶴蝶ともう一人の幼馴染である山本タクヤくらいで、知り合いや友人には知らせず母親経由で頼まれた物を細々と作っている。

  鶴蝶にも伝えたが、武道的にはうまいヤツはいっぱいいるからオレに頼まなくても……なんて常に思っている。何故なら比較対象が周りにいない。いるとしても相手はプロのため武道の自己評価は低かった。

  噂では、原宿で有名な不良で族に入ってて、腕の立つイケメンが特攻服を作っているという噂も聞く。

  初めてその噂を聞いた時はどこの漫画の主人公? 出来すぎでは? と思ったくらいだが、どうやら本当に実在しているらしい。不良に憧れて不良のことをよく調べている友人が言っていたから、間違いはないだろう。

  しかしソイツに頼めばもっと楽なはずだ。何せ同じ不良なのだから。

  いや、もしかしたら敵チームのため無理かもしれないなとふと思う。そのため裁縫が趣味と知っていて、かつ昔からの幼馴染だしあのイザナの許容範囲にも入れるとわかっているため、声をかけたのではないかとも。

  そして鶴蝶の頭が固いことをよく知っていた。一度こうだと思ったらとことん曲げない。どんなにこちらが言っても曲げないから、最終的にこちらが折れるしかない。

  武道はハァ……と大きく溜息をつく。

  「わかった。でもイザナが気に入らなかったらやらないからな」

  「ありがとな! 恩に着る‼︎」

  後日、予定の合う日を決めてその日の通話を終えた。

  「特服ねぇ……オレのセンスダセェって初めて言ってたのカクちゃんだけど覚えてるのかな?」

  少々の不安を残しつつ、武道はスケッチブックにどんな特攻服がいいのだろうかとガサガサと描き始めていた。

  センスがダサい自覚はあるが、用意しておかないと王様が怒る未来が見えているので。

  ◇◆◇

  「カクちゃーん」

  「お、タケミチこっちだ!」

  横浜の駅で頭一つ分大きい坊主頭に声をかける。すぐ武道に気がついて、大きくブンブンと手を振り返してくれた。

  鶴蝶の顔には大きな傷痕に特徴的なオッドアイ。身長はだいぶ抜かれたのが悔しいが、以前会った時同様に元気そうだ。

  片耳を揺れるピアス、以前イザナから貰ったと嬉しそうに本人を目の前に話してくれて、見事に蹴りを入れられていた。あまり鶴蝶にダメージが入っていないのか、終始ニコニコしていた顔が浮かぶ。イザナの顔は照れ隠しなのか不機嫌なのか、だいぶ人に見せられない顔をしていたが。

  鶴蝶の傷痕は両親と共に交通事故にあい、両親を亡くしたのと引き換えに大きく残ったという。引っ越す際に連絡先を交換していた武道は、後日連絡を貰い大慌てで鶴蝶のいる横浜の病院まで行き大泣きしたのもよく覚えている。

  武道としては大泣きしたのでちょっと恥ずかしい思い出だが、鶴蝶が事あるごとにそれに救われたとよく言ってくれるのが幸いか。

  「タケミチ、髪染めたんだな」

  「オレは染めるつもりなかったんだけど、美容師目指してるダチにやってもらったんだ」

  「いいな、似合ってると思うぞ」

  「ありがと」

  こうもストレートに相手のことを褒められるのは鶴蝶の美徳だ。近況を話しながら向かうのは高く聳え立つマンション。どうやら新しく立ち上げるチームの拠点の一つらしい。

  「すっげぇー……こんなのいくつも持ってんの?」

  「イザナと同年代ばっかだし、金はあるヤツらだからな」

  「なるほどね」

  ほえぇー……と言いながら間抜け面でマンションを見上げる。金があるというのは本当だ。

  カツアゲや恐喝、上納金という言葉が付いたりするがそこは説明しなくてもいいだろうと鶴蝶は自己完結する。

  ジッと武道を見つめる鶴蝶の瞳にはどこか不安や心配といった色が見えた。

  「何回も言うが、絡まれて嫌だと思ったらすぐオレかイザナのとこに来いよ」

  「わかってる。もう何回も聞いて耳にタコだって……」

  道中ずっと鶴蝶はイザナ以外の連中に気をつけろと警告していた。

  筆頭は灰谷兄弟、次点で斑目獅音。他に後二人おり比較的マシだが、深入りすると大変な目に合うと伝えていた。灰谷兄弟と斑目の信用の少なさが悲しいが自業自得なところもある。名前や人となりを武道は道中聞いているし、何なら噂でも聞いたこともある。

  だが顔も知らない、人柄も自分が知らなければ気をつけるも何もないだろうと武道は思っていた。

  武道は基本、自分が知り合ってその人となりを判断するため、噂や人の話をあまり気にしないというのもある。

  「タケミチはアイツらにも好かれそうだからなぁ」

  「そう?」

  「……イザナが気に入ってる時点で察するだろ、普通」

  「カクちゃん? よく聞こえなかったんだけど」

  「いい! 行くぞ!」

  鶴蝶の心配は気に入られるという点だった。鶴蝶然り、あのイザナですら気に入っているのだ。

  イザナが気に入っているということは、一癖も二癖もあるアイツらも気に入る可能性が高いことを示唆していた。

  十中八九、気に入られる未来しか見えないが、王様を待たせるとあとが怖い。無理やり鶴蝶は話を切り上げて二人はマンションの中へと入っていった。

  ◇◆◇

  「おせぇ」

  王様からの第一声は不機嫌そうな一言だった。腕時計で待ち合わせ時間を確認したが、時間は過ぎていないしむしろ早いくらいだ。遅刻していないのに理不尽極まりない。だが王様だから仕方ないかと二人は諦めている。

  「連れてきたのか?」

  「あぁ、ほらタケミチ」

  「久しぶり、イザナ」

  鶴蝶から隠れるように立っていた武道は、ひょこりと鶴蝶の横から顔を出す。

  「紛らわしい立ち方してんじゃねェよ」

  「デカくなりすぎたカクちゃんに言って」

  「確かにデケェな、縮め」

  「それは無理だイザナ……」

  イザナと似た身長の武道は鶴蝶にブーブーと文句を言い、それに乗っかる形でニヤニヤと笑うイザナがいる。和気藹々と会話する三人に、周りにいる奴らは動揺を隠せない。

  あの黒川イザナが、鶴蝶とは違う年下相手に楽しげに会話しているのだから。

  彼らの出会いは抗争中だったり対マンだったり、所謂喧嘩の最中。イザナによって一方的にボコられてオマエ、今日から下僕な……と決められた日から絶対君主なイザナに付き従ってきたが、何処にでもいるような少年と楽しげに会話をしているのだ。年下に対して兄貴っぽい感じだろうか。

  何にせよ興味を惹かれる者も居れば、気に食わない者が半々。そしてそれに吠えたのはただ一人、気に食わないと思った斑目獅音だった。

  「イザナッ! 何だよソイツは!」

  「獅音パイセンってば物騒〜」

  「獅子じゃなくて犬じゃん」

  「うっせ! 黙ってろ灰谷ズ!」

  灰谷兄弟は気に入る気に入らない以前に、面白いか面白くないかで決めているため、今回は面白そうと判断したのか見守るスタイルらしい。

  何かあれば揚げ足を取ったりからかったりするのは灰谷兄弟だから仕方ない。典型的な愉快犯。

  「コイツは下僕2号」

  「2号って……オレらより先に会ってたのか⁉︎」

  2号と聞いてすぐその考えに至るのは斑目くらいである。未だに黒龍のことを出すし、イザナを崇拝しているので瞬時にそこに思いつくのはある意味すごい。周りはまた始まったと言わんばかりに呆れた顔をしている。笑っているのは灰谷兄弟くらいだ。

  「タケミチはオレの幼馴染なんだ」

  「カクちゃんに会いに行った時にイザナとも知り合ったんだよなー」

  ポッと出のヤツにと思っていたら鶴蝶経由で知り合っていたと知りワナワナと震える。なんだかんだで斑目もこの年下は一目置いているので。

  「オマエ! 名前は!」

  「花垣武道っス」

  「じゃあオレの名前をよく刻んでおけよ! オレは九代目黒龍総長! 斑にぇ……!」

  「ウルセェ、後にしろ」

  勢いよく名乗ろうとしたがイザナの手により中止させられる。いつまで王を立たせておくのかとちょっぴりお怒りだ。

  思い切り頬を掌で抑えられたため名乗りもうまくいかず、灰谷兄弟には笑われる始末。頑張れ斑目。

  斑目が突っかかる一面もあったが、イザナがさっきまで座っていた椅子に再度ドカリと座る。鶴蝶と武道はそのサイドに立ったまま、イザナの言葉を待つ。

  黙って静観していた武藤泰宏と望月莞爾は慣れているなと思うと共に、イザナのお気に入りだと把握した。でなければ、サイドに立つことなどイザナは許さない。下僕2号というのはあながち嘘ではないようだ。

  「天竺を立ち上げるために色々と動いてるが、コイツには特服を作るために来てもらった。どっか別の族に入ってねェことは確認済みだ」

  「作るって……コイツが?」

  「カクちゃんにもお願いされて来たんスけど……」

  言い淀む武道にイザナの眉間に皺が寄る。少しばかり不機嫌そうな声で武道に文句を言う。

  「タケミチ、何か文句あるのか?」

  「文句じゃなくて、カクちゃんには散々言ってるしカクちゃんにも昔言われたけどさ……自分で言うのも何だけどオレのデザインクソダサいよ? センスが死んでるよ?」

  クソダサい? センスが死んでる? 一瞬、部屋に沈黙が落ちる。一同の脳みそに染み渡るまで少々の時間を要した。

  「服作るのに縫うのはいいんだけど、デザインがなー。誰か考えてくれたらいいんだけど自分で考えると色んな人にダメ出しされてる」

  「確かにその私服見るとな……」

  Tシャツと長袖が一緒になっているデザインの服、小学校低学年が着ていてもおかしくない。尚、武道は立派な中学生だ。

  胸には〝主食はパン〟とゆるい文字が書かれているのにイラストはお椀に入った米である。何をどうしたらそんな服をチョイスできるのか不思議でならない。むしろどこで買ったのか、はたまた作ったのか疑問が過る。

  「テメェの服はダセェがデザインはわかんねぇだろ、見せろ」

  「見せたところで変わらないと思うけどな……」

  シワシワの顔をしながら鞄に入れていたノートを取り出す。そうしてその会話は冒頭へと戻るのであった。