怪異奇譚

  こんな要素があります

  ・なんちゃってホラー

  ・ワカくんとの怪異退治バディもの

  ・そのためみっちにタイムリーパー以外の特殊能力あり

  ・カッコいいワカくんはいません

  ・始まりそうなところで終わる

  貰ったネタを元に、幻覚とか妄想を捏ねくり回した結果の産物です

  妖架さん([[jumpuri:users/1146743 > https://www.pixiv.net/users/1146743]])からネタを貰ったのを書き上げたぞ! ということで久しぶりに上げ

  私がホラー苦手なのにホラーです

  だからなんちゃってホラー

  ワカくんとの怪異退治バディものです

  書いてもギャグに転がりそうになるのを頑張って抑えたつもりが、ひょっこりギャグが覗いてます

  今までの作品にもコメント・スタンプやいいねにタグやフォローなどありがとうございます

  著作権は放棄してないんで無断転載とか止めてくだせぇ

  [newpage]

  昔から武道は変なモノをよく見る。

  妖怪? 神様? それならまだよかったが、武道が見るモノは悪意の塊。生きてる人に害をなす……所謂悪霊などと呼ばれる怪異が見えた。

  今よりもっと幼い頃は祖父母に守られていた。どうやら花垣家では、隔世遺伝で霊力と世間では呼ばれるモノがバカ高く持って産まれることがあるらしい。それが武道だった。

  これが生きるために必要な才能であれば喜んだのに、力がない幼い時の武道にはバッドステータスだ。

  いや、中学に上がってもメリットはないからずっとバッドステータスだなと思う。永久デバフは嬉しくない。

  幸いにも祖父母も霊力が強かったので守ってもらえたり、怪異と戦う術を授けられた。祖父からは戦い方、祖母からは札と意味のある数珠の組み方をだ。

  そのお陰で小学校高学年の時には一人で祓えるくらいにもなり、後々怪異祓いの相棒となる年上の友人と知り合ったのもそれくらい。

  年上の友人……今牛若狭も霊力が高く、同じ暴走族で尊敬できる総長兼友人である佐野真一郎が、びっくりするくらい怪異どころか色んなモノに好かれる性質だった。

  そのため、真一郎に寄ってきた怪異をブチギレながら蹴りで祓っているところに遭遇したのが武道との出会いである。

  最後の怪異をトドメとばかりにカカト落としで祓うと小学生の武道とバチリと目があった。

  ワカは武道と出会った時のことをよく語るが、ダラダラと冷や汗が止まらなかったといつも言う。

  確かに端から見たら、空に向かって足をブンブンぶん回している変人に見えてしまうのだから仕方ない。

  だが武道は同じ怪異が見える人に家族以外で初めて会えたため、キラキラした目で見ているのだから温度差がさぞかし激しかっただろう。

  ひょんなことから知り合った武道とワカ。

  武道は祖父母を紹介し、ワカに改めて怪異と戦う術を。ワカから武道へはパルクールを教えるようになり、そこから二人は長い付き合いになる。

  武道も中学に上がり、ワカも族は卒業したが怪異退治は減るどころかむしろ増えていった。

  中学に上がり知り合った仲のいい友人達は、怪異に好かれやすいのか黒いモヤみたいなのをよく付けている。

  また武道の幼馴染である鶴蝶も交通事故にあい、死にかけたからかこっちも怪異に好かれる。

  また鶴蝶経由で知り合った黒川イザナも、リンチで死にかけたせいで、二人揃うと怪異の遭遇率が倍々以上になる。

  ワカも変わらず真一郎を気にかけていないと死にかけたり、族仲間だった明司武臣が色んなヤツに恨まれているのか、常に真っ黒い靄に覆われていたりとこちらも忙しない。

  唯一、一緒にジム経営している荒師慶三ことベンケイはそういったものを一切寄せ付けないため、逆にジムがセーフゾーン的な役割を果たしているのが救いか……。

  そんな二人には友人達に危害を加える怪異を祓っていたが、どうにも二人が住んでいる渋谷はやたらと怪異が多いらしい。

  そのため迎え撃つだけではなく、今ではこっちから積極的に祓いに行っている。

  今日も夜もふけ、活動しているのが族くらいしかいないのではないかという時間帯。二人は公園で怪異に立ち向かっていた。

  [newpage]

  「無理ー! ムリムリムリ無理ー!!」

  「無理じゃない、タケちゃんならいける」

  「ワカくんそんな離れてないで一緒に祓ってよぉ! なんでそんなに距離空けてるの! こっち見て!!」

  「タケちゃんのためだから、1人でガンバレ。決して、虫みたいなヤツが、無理とかじゃないからサ」

  「答え言ってるよぉ!!」

  公園に居座っていた怪異は武道やワカよりもでかい蜘蛛。

  虫が苦手なワカは武道と怪異から距離を取り、少し遠くから声援を送っている。

  もしコレがゲジゲジだった場合、武道を置いてこの場から去っているか、サクッと意識を飛ばしていたかもしれない。

  武道は顔から出せるもの全部出しながら蜘蛛の怪異と戦っている。

  戦う術はあるとはいえ、基本怪異は苦手だ。

  そのため毎回顔をぐっちゃぐちゃにしながら戦うのは仕方ない。慣れることは永遠にないだろう。

  何せ怪異なんてものは、負の感情の塊だったりするのだからグロかったりキモかったりする。仕方ない。

  「ゔぇぇぇえぇ!!」

  蜘蛛の怪異からの攻撃を、ワカ直伝のパルクールの要領で躱し、すれ違いざまに脇差しで的確に足を切り落としていく。

  一本、また一本と切り落とされていく足に蜘蛛の怪異は怒りを露わにするが、そんなこと必死な武道には関係ない。

  ワカが戦力にならないのならば早めに決着をつけるに限る。

  そんなワカは現実を直視したくないのか、ひたすら酒を煽っている。酒カスに成り下がっているが、むしろこの場に残っているのが奇跡と言ってもいい。

  「さっさと、どっがいっで!!」

  足を全て切り落とし、怪異の胴体を足場に空中に高く飛び上がる。そのまま垂直に落下し、怪異の頭に脇差しを突き立てた。

  劈くような悲鳴、ビリビリと空気が震え鼓膜が痛いが、その悲鳴を最後に蜘蛛の怪異はサラサラと黒い砂となって消えていく。

  蜘蛛の怪異が完全に消滅するとすぐにその場を去らず、鞄から塩を出してパッパッとその場に撒いていく。

  このまま残滓を残しておくと別の怪異が引き寄せられるためだ。相変わらず顔はぐちゃぐちゃのままだが。

  「虫になると、ワカくんすぐ逃げるぅぅぅ! オレだって、オレだっでいやなのに!!」

  ワーン!! と幼児がギャン泣きするレベルで武道が泣き喚く。

  声もガビガビしているし、鼻水が出て鼻が詰まっているのか、何を言っているのか聞き取りづらい。

  シレッと苦手な虫から退避していたワカは、ティッシュとハンカチを手に武道へと近寄る。

  ソッとティッシュを鼻にあてて幼児のように鼻を擤ませてやり、せっせとハンカチで涙を拭ってやる。

  出てくるものも治まり、神妙な顔で武道に向くワカ。

  「タケちゃん……」

  「……なに」

  「ゴメンナ」

  「いっつもそう!!」

  悪びれず、真顔で小首を傾げる姿に若干イラッとする。

  これも二人が怪異退治で、特に虫形態の怪異に出会った際のお決まりにもなりつつあった。

  ◇◆◇

  怪異退治(今回は主に武道のみ)を終えて帰路へとつく二人。

  知人に遭遇した時にバレたら世間的に終わるので、身体のシルエットや特徴がバレにくいように変装し、流石に刀も手に持って歩けないため服の中に隠している。端から見たらヤンチャな青年と少年だ。

  「そういえば真ちゃんにあげた数珠、もうそろそろダメかも」

  「え! ちょっと前にあげたばっかなのに!?」

  「ソレ言ったら札もなんだよなァ。タケちゃん、また真ちゃん用に数珠組んでくれる?」

  札はイケるんだけどネーと遠い目をして言うワカ。

  力の込め方は何とかできるようになってきているが、やはりまだ武道の方が上だ。

  その分、身体能力が高いワカは怪異と遭遇した際の戦闘は強かったりする。今回は全く活躍しなかったが……。

  「オレらの友人、そんな悪いことしてねぇのに変なのに好かれやすいよね……いや、族してる時点で悪いことか」

  生きてるだけで丸儲け。そんな言葉が頭に浮かぶ。多少ヤンチャ(比喩)していても、元気に生きていればいいのだ。

  武道も鶴蝶やイザナに暴走族へと誘われたが、二人を襲う怪異を祓ったり、友人や周辺地域に現れる怪異を祓うため忙しい。

  イザナは不機嫌そうな顔を隠しもしなかったが、怪異には鶴蝶と共に何度も遭遇しているため、自分達を優先することを条件に許してもらっている。

  「やっぱ族? 族やって悪いことしてるから変なのに好かれるの?」

  「族上がっても好かれてるから関係ないんじゃない?」

  「そっか〜」

  あともう数人、怪異祓いをできる人数が増えればと思うが、あんな怖い思いはできるならしないほうがいい。

  それはワカも共通認識なため、二人だけでせっせと怪異を祓っている。

  「ん?」

  「どうしたのワカくん」

  「何か悲鳴聞こえない?」

  「悲鳴……?」

  耳を澄ますと叫び声のようなものが聞こえた。

  バッと互いに顔を見合わせると武道とワカは共に駆け出す。

  断続的に続く声を元に走る。何かに追いかけられているような、恐怖に滲んだ声だ。

  「タケちゃん、アッチ」

  ワカが指差したのは河川敷。

  草が覆い茂る坂を駆け上がり、暗闇で見えづらいところに目を凝らす。

  二人……いや三人が叫びながら必死に逃げている。

  後ろからは人の何倍もあるヘドロのような塊の怪異が三人を追いかけていた。

  「ちょっとデカすぎ」

  「う……うわぁ……あれ祓わないといけないの……?」

  「タケちゃんは3人を避難させて、オレはアッチ」

  「! わかった!」

  口から下げていたマスクをしっかりと付け直し、ワカと二手に別れる。

  ワカは武道よりも速い速度で三人とヘドロの怪異の間に入ると、背中に隠していた打刀で伸ばしてくるヘドロを切り落とす。

  突如現れた第三者に三人の足は止まるが、三人に武道は近寄りこの場から少しでも離れるよう促す。

  「足止めないで! 少しでも離れて!!」

  「何なんだ……あんたら」

  「死にたくなかったら早く!」

  呆気に取られていたが、既に泣き始めぐちゃぐちゃの顔で必死の説得をする武道の言葉に足を再度動かし始める3人。

  後ろではワカがヘドロの怪異と応戦しているが、身体がデカすぎて決定打を与えられない。

  「タケちゃん! ある程度避難させたらコッチ!」

  「ゔゔぅぅ……わかったよぉ。コレ持って、絶対に捨てないで! 声出さないでジッとしてて!!」

  長髪で黒髪の同い年くらいの男にお守りを手渡すと、踵を返してワカの元へと走る。

  走っている最中に背中に隠した脇差しを抜いてヘドロで覆われている足? らしき部分を一閃。

  ぐらりとバランス崩し、崩れた部分からゴミ山が出来上がるが、すぐにヘドロが再生する。

  「チッ! キリがない」

  「核があるんだろうけどさぁ! こうもヘドロに埋もれてると何にも見えないんだけどぉぉ……!」

  切っても切っても再生するヘドロ。このままいけば体力が先に尽きるのはこちらである。

  ここまででかいと札も効かない。いっそお経を唱えながら泣き叫ぶか!? と悩んでいる時だった。

  「背中と尻尾みてぇなとこの間! 見えるだろクソドブ!!」

  助けた三人のうち、睫毛が長い男が叫ぶ。

  え、クソドブってオレ? ヘドロ目の前にしてそんな悪口言う? と武道の動きは一瞬止まり、涙も止まる。

  どうやら核のことを言ってくれているようだ。口はクソ悪いけど。

  ワカと視線を合わせ、ワカが正面を陣取る。

  怪異の注意を引いてくれている間に武道は大きく回り込んだ。

  背中と尻尾みたいな間、確かにそこに怪異の核があった。

  「え、コレが見えたってこと!? スゴッ!!」

  言われなければわからないほど小さな核。さっさと祓うのがいいと脇差しを核に向かって突き刺した。

  パリンと何かが割れるのと同時に叫ぶ怪異。

  ヘドロを維持できないのかドロドロと崩れていき、トプンという音を最後に何も残らないで消滅した。

  最後に先程と同様に塩を撒いて祓う。これで暫くは変なものは出ないだろう。

  「タケちゃん……」

  「……どうしよう」

  怪異は無事に祓えたが、問題は助けた三人。

  長髪で黒髪の男、睫毛が長くて怪異が見える口の悪い美人、そして金髪ツーブロックの男だ。

  三人とも同じ服を着ており、それがいわゆる特攻服と呼ばれるものだと気づく。

  先程まで暴走族の話をしていたのにタイムリーすぎないだろうか。

  「……アイツら、真ちゃんの弟のとこだわ」

  「え、イザナのとこ?」

  「いや、もう1人の弟の方。真ちゃんの弟2人、両方族やって総長やってるから」

  「ヒェッ、物騒なだんご三兄弟じゃん……」

  コソコソとワカと話していると、金髪ツーブロックの男がこちらへとずかずか近寄ってくる。

  表情は険しい。そりゃあんな化け物に襲われて、見ず知らずのヤツに助けられたらそうなるよなと現実逃避。

  ワカが知ってるということは、相手もワカを知ってる可能性が高く、ワカは顔を見られないように背けてる。

  そのため、対応するのは必然的に武道一択だ。

  「オマエ……」

  気がつけば金髪ツーブロックの男が目の前にいた。他の二人は警戒しているのか動かず、ジッとコチラを伺っている。

  「すっげぇな!! 涙でべしゃべしゃだったけどチョーかっけぇじゃん!!」

  「……へっ?」

  目つきの悪さはどこへやら。キラキラとした瞳で武道を見つめてくる。

  両手はバシバシと遠慮なく肩を叩いて若干痛い。

  金髪ツーブロックの男は矢継ぎ早に言葉を言ってくるが、興奮しているのか支離滅裂だ。

  何とか拾えたのが、やれあのぼんやりとしか見えなかったがやたら臭かったモノだの、追いかけられた時はどうしようかと思っただのと言っているくらい。

  一瞬聞き逃しそうになるがぼんやりとだけど怪異が見えているし、臭いも感じることができてるじゃないか! と戦慄する。

  普通は怪異なんて見えない。

  武道やワカのように生まれつき霊力を持っているか、イザナや鶴蝶のように死の淵に立ったことがあるかだ。

  だがたまに波長が合ってしまう人もいる。恐らく彼は波長が合ってしまったのだろう。長髪で黒髪の男もおそらくそうだろう。

  睫毛が長い男は元から見えていて、おそらく武道と同類。

  一度波長が合ってしまうと元に戻すのは難しい。怪異が見えても素知らぬふりをしていれば、何れ波長がズレて感じなくなるかもしれないが、反応がある人間に対して積極的に襲ってくるのが怪異だ。

  このままでは確実に怪異に魅入られて、お亡くなりルート一択である。

  流石にそれは夢見が悪いので、武道は断りを入れて鞄を漁る。

  鞄から探しあてたのは三つの数珠。武道が霊力を込めて作った特別製。

  「あの……コレ」

  「ん? オレにか?」

  「正確にはキミと、向こうの2人にも……」

  あまり小難しいことを言っても混乱するだろうし、簡潔に説明する。

  コレを付けていればあの変な物が見えたり感じたりしなくなる。

  また逆にコレを付けていれば怪異には襲われない……と。

  「もしこの数珠が黒くなったら、溝中の花垣を訪ねて下さいっス」

  「……タケちゃん」

  流石にそれは面倒見過ぎだと、ワカからお咎めの言葉が入る。

  だがただ渡してはい終わり、数珠の効果が切れて亡くなりました……では後味も悪い。

  それに武道のことを気味悪がらなかった。それも大きい。

  なら武道の手で助けられるなら助けるまでだ。

  「ハァー……仕方ない」

  武道がこうと決めたのならワカは反対できない。

  少し離れてみている二人に身体をくるりと向け、ちょいちょいと手招きする。

  ワカの顔が見えた瞬間驚いた顔をし、慌ててコチラへと近寄ってきた。さっきまでの警戒はどこに?

  「ワカくん!?」

  「なんでワカくんが……?」

  やはりワカの予想通り顔見知りであった。関わりは少ないものの、真一郎の家で何度か会っている。

  「やっぱナー……見たことある顔だと思ったワ」

  驚く二人を余所に、ワカは武道が持っていた数珠を取ると二人へと投げた。

  「それ、絶対外さないコト」

  「……なんで」

  「死にたくないデショ」

  不服そうな顔をしたのは睫毛が長い男だったが、死にたくなければという言葉に目を見開く。

  ワカくん……もうちょっと優しく言ってあげて……と武道は思うが、そんなことは知らぬとばかりに、先程武道が言ったことをキツめにして伝える。

  「……ということだから、じゃあオレらはコレで。オマエらも早く帰れよ」

  説明が終わると武道をヒョイと抱える。いわゆるお米様抱っこスタイル。

  武道も三人も目を白黒させているうちに、ワカはスタスタとその場を去った。

  「えっ! ちょっ! ワカくぅん!?」

  武道の重さなんて感じない程、そこそこの速さで住宅街を抜け武道の家へと入る。

  玄関がパタリと閉じられると武道を降ろさずにその場に佇むワカ。

  未だにお米様抱っこ状態の武道からは、ワカの表情は見えない。

  「……ワカくん、言ってくれないとわかんないっス。オレバカだからさ」

  「タケちゃんはバカじゃないよ……ちょっとおっちょこちょいなだけ」

  「うーん……そこは否定してほしい」

  「ちょっと、ネ……嫉妬した」

  「へ!?」

  まさかの嫉妬発言。

  いつも飄々としていて、どこか猫みたいだけど頼りになる兄貴分がまさかの嫉妬。

  顔を見てみたい! だがしかし、武道から顔は見えず、ピアスまでしか見えない。

  「タケちゃん、今日泊まってってもイイ?」

  「え、いいけど……」

  「よし、風呂入ろう。一緒に入ろう」

  「アッ! コレは照れてる? 照れてるんスか!? ちょっと照れ方独特過ぎないワカくん!!」

  「タケちゃん……ウッサイ」

  「……っス!」

  うっかり零れた発言だったらしく。チラリと見える耳が少し赤くなっているのが見えた。

  [newpage]

  襲われていた三人を助けてから数日、武道は相変わらずの生活を続けている。

  昼は学生生活、夜は怪異退治。あれ以来襲われている人には遭遇していない。とても良いことだ。

  夜は忙しいものの昼は比較的平和……だった筈だった。

  「たのもー!」

  現れたのはいつぞやの金髪ツーブロック。あ、平和終わったわと思った瞬間。

  「花垣っている?」

  「えっと……オレっス」

  「あ、ほんとに居た! ちょうど良かった今すぐ来てくれ!!」

  「え?」

  椅子に座っていつものメンツと馬鹿なことを話していた中、周りを気にせずに武道の腕を取り、教室から出て行こうとする。

  何とか荷物を取らせて貰い、慌てて後をついて行く。

  「オレ、松野千冬って言うんだわ、オマエ名前は? フルネーム教えろよ」

  「花垣武道っス」

  「なるほど、だからタケちゃんな」

  「……いったい、どうしたんスか?」

  そういえば自己紹介していなかったとお互いにフルネームを告げる。だが千冬の足の速さは弱まらず、逆にどんどん速くなるくらいだ。

  「助けてもらった時に一緒に居た長髪で黒髪の人……覚えてるか?」

  「あぁ……あの八重歯が特徴的な?」

  「そう。その人、場地さんって言うんだけどさ……ちょっとヤバそうなんだわ」

  「ヤバいって暴走族的な?」

  「そっちじゃなくて、貰った数珠が既に真っ黒なんだよ」

  「エッ!!」

  彼らと会ってからたった数日しか経っていないのに、数珠が既に真っ黒とはかなりヤバい。

  慌てて武道もスピードを上げて千冬と並走する。向かう先は場地のいる場所。

  この日から武道は今まで生きてきた中で一番人と関わり、また一番怪異と出会うことになる。