「オペレーターさん! 本当にありがとう。ごめんね、急に来てもらっちゃって」
オリエントシティ、とあるマンションの一室。
玄関で出迎えてくれたのは柔和な顔の獣人型宇宙人、バロレイさんだ。
一緒に仕事して見知った仲だから、顔を合わせてすぐ笑顔になる。
「全然! 今は仕事落ち着いてますし。それに、ヒーローのみんなと繋がりを作っておきなさいって、会社でもいつも言われてるので」
「あなたの会社は、しっかりしてるんだねえ。さあ、入って入って」
招き入れてもらった部屋は、手前にキッチン、中央に机。奥にはたくさんの荷物と仮眠用らしき簡易ベッド……あんまり生活感はない。
「ここで暮らしてるんですか?」
「ううん。物置で借りてるの。こっちに買い出しに来た時とかにね、必要になるでしょう」
確かに言われてみればキャンプ用品が山積みだ。買い溜めしてるな、相変わらずの心配性さん。
「荷物見てニコニコしないの。……おほん、今お湯を沸かしてるけれど、コーヒーでよかった?」
「はい。ありがとうございます」
キッチンに立つバロレイさん、ワークズボンの後ろから出た短い尻尾をふりふりさせてる。ご機嫌みたい。
「お仕事、忙しいですか?」
「相変わらずね……前の仕事の報告も事務所にしないとだし」
「それで呼んだんですもんね」
「ん……うん、まあ」
ちょっぴり歯切れの悪いお返事。
「オペレーターさん、ミルクかお砂糖は?」
「あ、じゃあミルクを」
「わかった。私は……今日はブラックにしようっと」
「オトナですね」
「でしょう? ふふふ」
旅行用らしきステンレスのおっきなマグで淹れてくれるコーヒー。いい香り。
早速テーブルに座ってノートパソコンに向かえば、バロレイさんが横に立った。大きな体。感じる体温。あったかい地面みたいな匂いもする。
「ここの入力と……、こっちの簡単な所感の記入をお願いできるかな」
「わかりました」
お呼ばれした理由。簡単に言えば、先日の報告書作成の[[rb:お手伝い > アルバイト]]だ。
ざっと目を通して――これくらいなら結構すぐかも。
「もし他にも何かあったらやりますよ。何でも言ってください」
「あなたは本当に気が利いちゃうんだね……じゃあいくつかお願いしようかな。お礼も弾んじゃうからね」
「いえーい」
向かいに座って同じように取り掛かるバロレイさん。大きな手にパソコンが小さく見えてかわいい。見てたら目が合ってニコッとした。
「他に欲しいものあったら、遠慮なく言ってね」
「バロレイさんが欲しいです」
「うんわかっ――へぇっ!!!??」
のけ反ってひっくり返りそうになったので、さっと身を乗り出して腕をつかんであげた。あぶないあぶない。
座りなおしたバロレイさんは陸のお魚みたいに口をぱくぱくしてる。面白かったのでじっと見てたら、ぐいっとメガネを押し上げる動作。
「またおじさんをからかって、もう!」
「ごめんなさーい」
てへぺろ。ところで、かけてないですよメガネ。
そんなで入力作業を始めたら、少ししてからバロレイさんが顔をあげた。はっと何かに気づいたみたいに。
「口から心臓出ちゃうかと思ったよー!」
「[[rb:その発言 > それ]]は狙いすぎですねー」
今日もかわいいおじさんです。
◇◇◇
もちろん、午前中はしっかりお仕事をした。
向かい合って色々な情報交換――という名のおしゃべりをしながら。
バロレイさんはこちらの発言にいちいちうなずいてくれて、ニコニコしている。そんなのを見ているとこっちも嬉しくなる。
「火山でチョコ!? 鉱石が……それは食材ハンターとしても気になるね……えっ、あなたに皆が渡すところをライブ配信したら会社にクレームが…………そう……」
お昼になって、こちらの入力した内容をチェックしてバロレイさんが嬉しそうに、
「うん、うん……これなら午後には事務所に提出できそうだ。本当に助かったよー」
「今日はそれで終わりですか?」
「もちろんバイト代は一日分払うよ。心配しないで」
「そんなこと心配してないですけどっ」
笑っちゃう。入力作業なんて一日もかからないのわかってただろうに。
午前の電話で、[[rb:急遽 > きゅうきょ]]オリエントシティに買い出しに来たことを告げたバロレイさん。そこでアルバイトの話が出た一方、他の誰にも聞こえてないだろうに、電話の向こうで声を潜めて言ったのだ。
優しくて落ち着いた……でもそれだけじゃなく、ちゃんとオトナな色んな含みをもったあの声で。
「あのね……あなたとまた、おしゃべりがしたいんだ」なんて。
そんなことを思い出しつつこちら、端末で時間を見るふりをして、
「こっち今、仕事落ち着いてるので……有給もたまってるし」
「えっ? う、うん」
「午後半休の連絡、会社に入れちゃってもいいですか」
言葉の意味を考えるみたいにしてから、バロレイさんは思いっきり息を吸った。
砂色のシャツの下で、大きな胸板と丸いおなかがきれいに上下する。
「いい、よ……うん。先に、お昼にしようか。お腹すいたでしょう」
「はーい。手伝います」
「いいよいいよ座っ……うん、うん。じゃあ、お願いしようかな」
そそくさとキッチンに立つバロレイさん。
追ってその隣に立って――背後から抱きついた。広くて大きな背中がまた大きく上がる。くっついたところから伝わってくる熱と鼓動。
「おなかすいた、バロレイさん」
「……う、ん。今日は、ホットサンド作ってあげるね」
「出たホットサンドメーカー」
「出た、って言われるようなものなのー?」
そんな会話で薄く笑いあってから、自然と頬が寄る。
そっと手をまわしてこちらを向いてもらったら、その顔はすでにとろんとしてた。……えっちなおじさんヒーロー。
小さく口を開けてみせれば、呼応しておヒゲの下の口も開く。
そうしてわずかに覗かせた舌と舌を――。
と、そんな状況に先手を打つみたいに急に端末が震えた。
「あっ――げげっ」
「どうかしたの?」
「仕事……午後からお得意さんの商談が入って……同席できるかって」
「やあ、それは急だね」
「なんか自分が名指しされてるみたいでえ……」
「ふふふ、あなたは大人気なんだね。いいことだよ。これ、持っていきなさい。包んであげるから」
「まだ一時間くらいはありますからっ」
「じゃあ食べちゃおうか」
……それよりも。
抱き着きなおして、手をもっと伸ばした。お腹を撫でながら、下のほうに。
バロレイさんはすぐにコンロのスイッチを切った。
「……お腹、すいちゃうでしょう。おじさん、心配になっちゃうよ」
「……急げば大丈夫ですよ」
「…………急ぐって、どっちを?」
「…………どっちがいいです?」
もう、と呟きつつこちらの手を取るバロレイさん。
オペレーターさんはえっちだね……なんて言いながら、太くてしっかりした指でこっちの指をすりすりして、甘えるみたいに寄りかかってくる。
大きい身体の密着感。もっと強くぎゅっとしてあげたら、堪えきれなかったみたいに吐息が漏れた。
「はぁっ……。ねえ、オペレーターさん……さっきみたいに言って、ほしいな……」
もちろん。おねだりされたら、なおさら断る理由なんかない。
丸い耳に口を近づけて。
「バロレイさんが、欲しいです」
そっと言えば、大きな体がぶるっと震える。
◆◆◆
「んっ、ふぅっ……はむっ…………」
大きな身体が身じろぎしてる。スーツの脚の間で。
こちらを硬いベッドに座らせたバロレイさん、床に膝をついてそこに手早く顔を埋めた。
「っ……ね、バロレイさんも……」
生温かい感触にぞくりとしながらこちら、脚の付け根に置かれている両手をつつく。けど、首がふるふる。
「時間……本当に、本当にね。あなたが遅刻しちゃわないかとか、お腹空いちゃうなとか……心配なんだよ」
口を離して、上目遣いでそんなこと言ってくる。
柔和なその顔には心配性さんの性格がよく出ていて。
「だから……ね。今日はおじさんのワガママ、きいて」
「……えっちこと大好きなくせに」
「そういうこと、言わないの……」
ちょっとコホンとしてから、バロレイさんはまた[[rb:行為 > ・・]]に戻る。
「私は我慢できるから……それに、しばらくはこっちにいるから、また会えるよ」
伏し目がちに言う顔は、予定が狂うのにも慣れっこなオトナのそれでもあって。
……もちろん。もちろんそんなところも魅力的なわけだけど……。
そぅっと足を延ばした。靴下の足先。それで大きく張ったズボン前の膨らみを、つつく。
「っ、ぇ、あっ――――」
咥えたまま、びくりとするバロレイさん。
何をされてるのかすぐわかっただろうに――でも、動きを止めない。
我慢する気なのか、それか、もっとして欲しいのか。
さらに足の指でこしょこしょしてあげれば、内股になってぴくぴくしだす。
「っァ、ぅう…………あ、んッ、はぁ――――っ」
そしてついに我慢できなくなったみたいに、自分でズボンに手をかける。
膝立ちでやりにくいのか、もどかしげにベルトをガチャガチャ。下ろされるズボン。下着ごと。ずるんと飛び出す太い雄……しっかり上を向いているのが、大きな体に隠れていても見てとれた。
バロレイさん、お口は離さないまま自分で扱き出す。もう片方の掌で先っぽも覆って――。
「……そんな風にするんだ、バロレイさん」
「い、いいのっ……そういうことは言わなくてっ」
一生懸命な感じがかわいかったから言ったら、さすがに叱られた。太い眉がきゅっとしてる。
でも膝立ちでズボンを下ろしておしゃぶりしてるなんて恰好じゃ、全然こわくない。もともとこわいところなんてひとつもないけど。
手を伸ばして前髪や頬毛を撫でてあげれば、すぐ眼差しがとろとろになって濡れた甘い吐息を漏らす。
それで、甘えるみたいに頬ずりしだす。おちんちんに。
「っ……気持ちいい? バロレイさん」
「うん…………あなたは?」
「…………すっごく」
よかったと呟いてから、今度は大きく舌を出してベロリと舐め上げたり、先端をちゅぶちゅぶと口先で弄んだりしてくる。
ゾクゾクして反射的に脚を閉じそうになったら、両手で押し広げてくすぐってくる。獣毛の生えた太い指が、別の生き物みたいに内腿の間を淫らに這い回る。
「ふぁっ、ちょっ……バロレイさん……っ」
「……ふふ、いつもからかわれるから、おかえし」
脚の間でくすっと笑ってみせるおじさんヒーロー。若い雄の反応を楽しんでる。
しかも――見ないままこちらの靴下をずるんと脱がしてきた。両足とも。
……ほんとにえっち。
[[rb:したいこと > ・・・・・]]察して、両足の裏で挟んであげた。
外気にひんやりした裸足と対照的に熱いソレ。熱くて硬い。わずかに濡れてもいる。両側から、痛くしないように注意してそうっと上下すれば、
「おうっ……うぅんッ」
「あっごめんなさい、いたかった?」
「平気、続けて……いいよ……っ」
続きを促す声は上擦ってる。背徳感とか羞恥心とかそういう[[rb:感情 > もの]]に。もちろん、興奮も。
それで、そのまま続ける。見えないから、感覚だけで確かめるソコ。
足裏の凹んだ部分に沿う、熱く脈動してる竿。踵に当たるごわごわした毛。
手ほど器用に動かせない指の付け根が触れるのは、肉厚に張ったカリ部分で――。
「あぁっ……はぁ、んぉぅ……っ」
イイところに当たったのか、バロレイさんがたまらず喘ぎだす。
くにくにしてあげたら喘ぎが高く、舌の先が出て零れた唾液が口回りのヒゲを濡らしだす。
「気持ちいいの?」と目線で訊いてあげれば、こくんこくんうなずく。
更にこっちの下腹部に、付け根の茂みにマズルを押し付けてくる。
それで何度も匂いを嗅ぐ。わざと大きく音を立てて。まるで[[rb:躾 > しつけ]]の悪い犬みたいに。
「……おちんちん、大好きなんだ? バロレイさん」
「うぅっ…………う、うん……」
「ちゃんと、言って」
「うぅ……、――っ。は、あぅ……好き、好きだよお、あなたの、おちんちん……」
足指に込める力を少し強くしたら、喘ぎは泣き声に近い嬌声に変わる。
粘液にまみれた鼻面があちこちを這いまわって、最後にしゃぶりつく大好物。
「んぁ、あっ……!」
「気持ちいい? ね、オペレーターさんっ、おじさんに、おしゃぶりされるの……」
「う、ん……気持ちいい、です……」
「言って……」
「バロレイ、さんに……っ、おしゃぶり、してもらうのっ……気持ちいい……」
絞り出すように言ったら、バロレイさんがバッと身を起こした。
目線の高さが合って――キスする。互いの首に手を回して、深く深く。おヒゲ、くすぐったい。
カーテンを閉めたマンションの一室。の隙間からの光に埃が舞ってる。
お互いに下だけ脱いだ状態で交わす淫らなやり取り。
電話の時点で全く予感がなかったなんてウソだけど、先日知り合ったばかりのクライアントさんと、バイトを口実にこんなこと……。
同じことを考えたのかバロレイさんが口を開く。顔、真っ赤。ちょっと涙目だし。
「……こんなこと、し、し慣れてるなんて、思っちゃだめだからね……」
「……ほんと?」
「ほんとだよ……あなた以外と、こんな…………」
言いかけて、でもだったらそれはそれで、と思ったのかもしれない。
バロレイさんは言い訳をやめて、また床に膝をついて行為に専念しだす。そんな一生懸命なところも、らしい。
「……バロレイさん」
またお顔を撫でてあげながら、そっと囁いた。
「連絡くれて、うれしかった」
目を伏せて口に含んだまま、こくん、と彼はうなずいた。それから動きを早くしていく。ちゅっちゅと響く水音が早く、断続的に。
敏感なところを包む生温かさに痺れて力が抜ける。下半身にじわっと熱が集まる感覚。
身を固くしたのがわかったか、バロレイさんがほとんど抱え込むみたいにして腰に太い腕を回してきた。
だからこっちも頭部を全部抱きしめてあげる。くしゃくしゃにする。
そのまま腰を前後すれば、喉奥でじゅっぷじゅっぷと音が立って――、
「バロレイさ、でちゃう……!」
うなずきが何度も。だから、
「っ、アッ――イクっ、ううぅ――――っ!!」
「ふッ――!? んぐっ、んむ…………っ、んうぅう…………っ!」
そのお口の中に出していた。下半身を抜けるぞろりとした感覚に身体が震える。
呻きながら全部口内で受け止めるバロレイさん。お腹の下でのクチュクチュ音も早くなって――。
「んぅっ!! んんっ……んぅ…………フーっ、フーッ…………!!」
彼も達していた。快感に身体を震わせながら、喉も大きく上下させてる。熱く湿った鼻息がこちらのおへその下を濡らす。
しばらく、そのままでいる。下半身のビクビクが収まらないでいたら、濡れてないほうの大きな手が素肌の太腿や腰回りを何度もゆっくり撫でてくれる。
そうやって互いの息が落ち着ついてくるのを待ってから――口が離れた。
下を向くバロレイさん。口を開いて手で受ける。でも零れたのはほんの僅か。
「けほっ…………、いっぱい、だしたね……ちょっと、待って……」
さっと手を伸ばして、周りの荷物から取り出すタオルやウェットティッシュ。手早く拭いてくれて新しいのも渡してくれる。どこに何があるのか完全に把握してるの、さすが。
「まだ、時間大丈夫? ――うん。きれいにしたら、お昼にしちゃおうね」
そう言う顔は少しだけ照れくさそう。し慣れてない、なんて言った手前かも。
他にも見えるのは優しさや心配、それから……充足感。
そんな、やっぱり色々なものを含んだオトナな表情で、バロレイさんは微笑んだのだった。
◇◇◇
「さあさあオペレーターさん、遅刻しないように」
そんなで時間は結構ぎりぎりになっちゃった。
靴を履きかけてこちら、玄関でお見送りしてくれるバロレイさんを振り返る。
「バロレイさん、まだしばらくこっちにいるんですか?」
「うん、あと何日かは。……また、来る?」
バロレイさん、まだちょっと照れくさそうだけど、さすがに吹っ切れたのかそんなことも言ってくる。
……もちろんそうしたいけどー。
ちらっと見る部屋の中。物置代わりのマンション。床いっぱいのキャンプ用品。寝るのには到底適していない硬いベッド……。
「オリエントシティにいる間、うち、泊まりませんか」
「――えっ!!?」
それはまったく予想していなかったのか、ぴょんと伸びて目を丸くするバロレイさん。口から心臓は出なかった。
「一人暮らしだし、寝るとこくらいありますよ」
「う、うん」
「バロレイさんのごはん、また食べたいし」
「そ、ン…………わ、若いヒトのおうちにお邪魔するのなんて全然ないから、準備しないと……ええと、じゃあ明日か明後日……」
まーたそんなこと言って。何を準備するってんですか。そもそも今日はそっちから連絡くれたってのに。だから今度はこっちからお願いする。
「今日から来て。バロレイさん」
「――――」
「わがままきいて」
バロレイさんは、こちらをじっと見る。それから、おっきな手で自分の顔をつるりと撫でる。ふうっと呼吸する。
手を退けた時にはもう、そこにあるのは気持ちを固めたオトナの顔だ。
「――わかったよ。オペレーターさん」
「仕事終わったら」
「うん。電話して」
簡潔になる会話。それで充分。
靴を履きなおすこちらに彼が言う。
「気を付けてね」
「はい」
「急いで転ばないように」
「はーい」
「ハンカチは持った?」
「はー……って、それもう心配性ギャグでしょ!」
「ふふふ」
もう、わかってやってるんだからね、このヒト。
砂色のシャツをひっぱって、大きな体をこっちに寄せたらまたアワアワして――でも、すぐキスしてくれた。
優しくて心配性なおじさんヒーロー。口を離して、やっぱり照れくさそうに笑うのだ。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
部屋の外はまだお昼。喧噪の街中に戻る足取りも今は軽い。
バロレイさんとはその日の夜、仕事が終わってから約束通り合流する。
それからのことは、また別のお話である。
◆心配性のおじさんヒーローと、ヒミツのおしゃべり!
――了。